特許第5796684号(P5796684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796684
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】レーザ測定による支持物検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   G01B11/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-529477(P2014-529477)
(86)(22)【出願日】2013年8月5日
(86)【国際出願番号】JP2013071099
(87)【国際公開番号】WO2014024812
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-173650(P2012-173650)
(32)【優先日】2012年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】庭川 誠
(72)【発明者】
【氏名】渡部 勇介
(72)【発明者】
【氏名】松原 一隆
【審査官】 神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−284535(JP,A)
【文献】 特開2005−70840(JP,A)
【文献】 特開2005−147879(JP,A)
【文献】 特開2006−248411(JP,A)
【文献】 明電架線検測装置 カテナリーアイ CATENARY EYE,日本,株式会社明電舎,2013年 9月24日,URL,http://www.meidensha.co.jp/catalog/jp/ba/ba523-3049a.pdf
【文献】 小柴信行,東京急行電鉄(株)納入架線検測装置 CATENARY EYE (カテナリー アイ),明電時報,日本,株式会社明電舎,2011年,No.4,通巻333号,pp. 49-54,URL,http://www.meidensha.co.jp/pages/tech/tech01/review-201104/article-201104-0049.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
B60M 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
鉄道車両の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両上方の、屋外用支持物、トンネル用支持物及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井を走査する、スキャン式レーザ距離計と、
前記スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物またはトンネル用支持物を検知する支持物検知部とを備え、
前記支持物検知部は、
2台以上の前記スキャン式レーザ距離計が各々の走査によって得た前記距離d及び前記角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の前記距離d、前記角度θ及び前記時間tに関する座標上のデータを作成する処理回路と、
前記処理回路にて作成された前記座標上のデータから、下記数式を用いて、前記時間t及び鉛直方向のy軸についての投影面へプロットする(t,y)投影処理部と、
前記(t,y)投影処理部から入力した情報を基に、既知である前記トンネル天井の高さと前記トンネル用支持物及びトロリ線の高さの値を用いて、プロットされた前記投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する直線検出部と、
前記直線検出部から入力した情報を基に、前記y軸の値が大きい方の集合が前記トンネル天井の前記データの集合、前記y軸の値が小さい方の集合が前記トンネル用支持物及び前記トロリ線の前記データの集合であると分別する直線判定部とを備える
ことを特徴とするレーザ測定による支持物検知装置。
y=d・cosθ
【請求項3】
鉄道車両の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両上方の、屋外用支持物、トンネル用支持物及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井を走査する、スキャン式レーザ距離計と、
前記スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物またはトンネル用支持物を検知する支持物検知部とを備え、
前記支持物検知部は、
2台以上の前記スキャン式レーザ距離計が各々の走査によって得た前記距離d及び前記角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の前記距離d、前記角度θ及び前記時間tに関する座標上のデータを作成する処理回路と、
前記処理回路にて作成された前記座標上のデータから、下記数式を用いて、前記時間t及び前記車両の進行方向に対し平行なx軸の絶対値についての投影面へプロットする(t,x)投影処理部と、
前記(t,x)投影処理部から入力した情報を基に、既知である前記車両の走行速度の値を用いて、プロットされた前記投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する直線検出部と、
前記直線検出部から入力した情報を基に、前記2つの集合のうち、前記直線の傾斜角度が急な方の集合が前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合、緩やかな方の集合が前記トロリ線の前記データの集合であると分別する直線判定部とを備える
ことを特徴とするレーザ測定による支持物検知装置。
x=d・sinθ
【請求項4】
鉄道車両の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両上方の、屋外用支持物、トンネル用支持物及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井を走査する、スキャン式レーザ距離計と、
前記スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物またはトンネル用支持物を検知する支持物検知部とを備え、
前記支持物検知部は、
2台以上の前記スキャン式レーザ距離計が各々の走査によって得た前記距離d及び前記角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の前記距離d、前記角度θ及び前記時間tに関する第1座標上のデータを作成する処理回路と、
前記処理回路から入力した情報を基に、下記数式を用いて、前記第1座標上の前記データを、前記車両の進行方向に対し水平なx軸、前記車両の進行方向に対し垂直なy軸及び前記時間tに関する第2座標へ変換する(x,y,t)座標変換部と、
前記(x,y,t)座標変換部から入力した情報を基に、前記第2座標上の前記データを、前記時間t及び前記y軸についての第1投影面へプロットする(t,y)投影処理部と、
前記(t,y)投影処理部から入力した情報を基に、既知である前記トンネル天井の高さと前記トンネル用支持物及びトロリ線の高さの値を用いて、プロットされた前記第1投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する第1直線検出部と、
前記第1直線検出部から入力した情報を基に、前記y軸の値が大きい集合が前記トンネル天井の前記データの集合、前記y軸の値が小さい集合が前記トンネル用支持物及び前記トロリ線の前記データの集合であると分別する第1直線判定部と、
前記(x,y,t)座標変換部及び前記第1直線判定部から入力した情報を基に、前記トンネル天井の前記データの集合を排除した上での、前記第2座標上の前記データを、前記時間t及び前記x軸の絶対値についての第2投影面へプロットする(t,x)投影処理部と、
前記(t,x)投影処理部から入力した情報を基に、既知である前記車両の走行速度の値を用いて、プロットされた前記第2投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する第2直線検出部と、
前記第2直線検出部から入力した情報を基に、前記第2直線検出部にて処理された前記2つの集合のうち、前記直線の傾斜角度が急な方の集合が前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合、緩やかな方の集合が前記トロリ線の前記データの集合であると分別する第2直線判定部とを備える
ことを特徴とするレーザ測定による支持物検知装置。
x=d・sinθ
y=d・cosθ
【請求項5】
前記支持物検知部は、さらに、
前記直線判定部から入力した情報を基に、前記車両が起点を出発してから前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物を検知した回数をカウントし、現在検知している前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物が、起点より何番目のものであるかを判断する支持物カウント部と、
予め設けられた、前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物に起点から順番に付された番号と走行距離との相関関係より、前記支持物カウント部から入力した情報を基に、前記走行距離を算出する車両位置算出部とを備える
ことを特徴とする請求項3に記載のレーザ測定による支持物検知装置。
【請求項6】
前記支持物検知部は、さらに、
前記第2直線判定部から入力した情報を基に、前記車両が起点を出発してから前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物を検知した回数をカウントし、現在検知している前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物が、起点より何番目のものであるかを判断する支持物カウント部と、
予め設けられた、前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物に起点から順番に付された番号と走行距離との相関関係より、前記支持物カウント部から入力した情報を基に、前記走行距離を算出する車両位置算出部とを備える
ことを特徴とする請求項4に記載のレーザ測定による支持物検知装置。
【請求項7】
鉄道車両の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両上方の、屋外用支持物、トンネル用支持物及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井を走査する、スキャン式レーザ距離計と、
前記スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物またはトンネル用支持物を検知する支持物検知部とを備え、
前記支持物検知部は、
2台以上の前記スキャン式レーザ距離計が各々の走査によって得た前記距離d及び前記角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の前記距離d、前記角度θ及び前記時間tに関する座標上のデータを作成する処理回路と、
前記処理回路にて作成された前記座標上のデータから、下記数式を用いて、前記時間t及び前記車両の進行方向に対し平行なx軸の絶対値についての投影面へプロットする(t,x)投影処理部と、
前記走行速度が既知でない場合に、前記(t,x)投影処理部から入力した情報を基に、設計速度を用いて、プロットされた前記投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する直線検出部と、
前記直線検出部から入力した情報を基に、前記2つの集合のうち、前記直線の傾斜角度が急な方の集合が前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合、緩やかな方の集合が前記トロリ線の前記データの集合であると分別する直線判定部と、
前記直線検出部及び前記直線判定部から入力した情報を基に、前記投影面において、前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合の前記直線の傾斜角度を測定する傾斜角度測定部と、
前記傾斜角度測定部から入力した情報を基に、前記傾斜角度と前記走行速度との相関関係に基づき、当該走行速度を算出する車両速度算出部とを備える
ことを特徴とするレーザ測定による支持物検知装置。
x=d・sinθ
【請求項8】
鉄道車両の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両上方の、屋外用支持物、トンネル用支持物及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井を走査する、スキャン式レーザ距離計と、
前記スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物またはトンネル用支持物を検知する支持物検知部とを備え、
前記支持物検知部は、
2台以上の前記スキャン式レーザ距離計が各々の走査によって得た前記距離d及び前記角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の前記距離d、前記角度θ及び前記時間tに関する第1座標上のデータを作成する処理回路と、
前記処理回路から入力した情報を基に、下記数式を用いて、前記第1座標上の前記データを、前記車両の進行方向に対し水平なx軸、前記車両の進行方向に対し垂直なy軸及び前記時間tに関する第2座標へ変換する(x,y,t)座標変換部と、
前記(x,y,t)座標変換部から入力した情報を基に、前記第2座標上の前記データを、前記時間t及び前記y軸についての第1投影面へプロットする(t,y)投影処理部と、
前記(t,y)投影処理部から入力した情報を基に、既知である前記トンネル天井の高さと前記トンネル用支持物及びトロリ線の高さの値を用いて、プロットされた前記第1投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する第1直線検出部と、
前記第1直線検出部から入力した情報を基に、前記y軸の値が大きい集合が前記トンネル天井の前記データの集合、前記y軸の値が小さい集合が前記トンネル用支持物及び前記トロリ線の前記データの集合であると分別する第1直線判定部と、
前記(x,y,t)座標変換部及び前記第1直線判定部から入力した情報を基に、前記トンネル天井の前記データの集合を排除した上での、前記第2座標上の前記データを、前記時間t及び前記x軸の絶対値についての第2投影面へプロットする(t,x)投影処理部と、
前記走行速度が既知でない場合に、前記(t,x)投影処理部から入力した情報を基に、設計速度を用いて、プロットされた距離データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する第2直線検出部と、
前記第2直線検出部から入力した情報を基に、前記第2直線検出部にて処理された前記2つの集合のうち、前記直線の傾斜角度が急な方の集合が前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合、緩やかな方の集合が前記トロリ線の前記データの集合であると分別する第2直線判定部と、
前記第2直線検出部及び前記第2直線判定部から入力した情報を基に、前記第2投影面において、前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合の前記直線の傾斜角度を測定する傾斜角度測定部と、
前記傾斜角度測定部から入力した情報を基に、前記傾斜角度と前記走行速度との相関関係に基づき、当該走行速度を算出する車両速度算出部とを備える
ことを特徴とするレーザ測定による支持物検知装置。
x=d・sinθ
y=d・cosθ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ測定による支持物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、レーザ距離計を鉄道車両に設置し、地上から線路上方に設置された支持物を車両から検出するものであり、走行中に取得するレーザ距離計の距離データを変換して外乱と支持物とを分離するものである。ここで、支持物とは、鉄道におけるトロリ線等を固定する器具である。図1に示すように、支持物には屋外用(明かり区間)支持物12とトンネル用支持物13とがあり、いずれも枕木方向に設置されるものである。但し、図1に示すように、車両14の進行方向(図中の白抜き矢印の指す方向。以下同様)に対して、屋外用支持物12はトロリ線11の左右に設置されており、トンネル用支持物13はトロリ線11を横切るように設置される。
【0003】
鉄道における架線検測装置では、走行中の自車両の位置を把握する必要がある。当該位置の把握には、地上に設置された支持物の位置を検知する方法が用いられるため、支持物検知は非常に重要である。支持物検知手段としては、走行中の車両からレーザ距離計で検知する手段が最も精度が良い。レーザ距離計を用いた位置測定に関連する従来技術としては、以下に挙げるものがある。
【0004】
下記特許文献1に記載の技術は、レーザ距離計からの取得データを含む位置観測データに基づいて送電線の位置とその支持物の位置とを特定するレーザ離隔計測システムにおいて、デジタルスチルカメラを、その撮像範囲がレーザ距離計の走査範囲に対して所定の関係となるように設け、デジタルスチルカメラからの静止画像データとレーザ距離計からの取得データとを時刻情報に基づいて関連付けることにより、位置観測データに基づいて特定された支持物の位置を、静止画像データに基づく画像上に表示するものである。
【0005】
下記特許文献2に記載の技術は、トンネル方向の軸を回転軸として回転しトンネル内壁面をレーザ距離計によって周方向に走査し、トンネル内壁面までの距離または当該距離の変位を表す位置データを測定するものであり、支持物も測定可能である。
【0006】
また、下記特許文献3には、車両に設置したカメラでパンタグラフ近傍を撮像し、当該カメラの映像出力に画像処理を用いて支障物を検知する技術が記載されている(ここでの支障物とは、所定の範囲以下でパンタグラフと接近し、パンタグラフと衝突する恐れのある物を指している)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−58255号公報
【特許文献2】特開2002−168617号公報
【特許文献3】特許第40787798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、静止画像中に支持物が写る可能性があり、静止画像中から支持物を検知するための別の手段が必要である。また、この静止画像中の背景にはトンネル壁面の模様やビルなどが複雑に写ることも考えられるが、複雑な背景から正確に支持物を検知することは難しい。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の技術では、レーザの回転周期には上限があるため、高速走行する車両で測定する場合、レーザの回転周期の間に支持物が通過してしまい支持物が検知できない可能性がある。
【0010】
さらに、上記特許文献3に記載の技術では、カメラ映像に30fpsや60fps等撮像周期の制約があるため、特許文献2に記載の技術と同様に、高速走行する車両においては撮像周期の間に支障物が通過してしまい、支障物が検知できない可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、上述のように、従来技術では鉄道車両における支持物を正確に検知することが難しいという問題を解決するため、レーザ距離計を車両に設置し、地上から線路上方に設置された支持物を車両から検知するもので、走行中に取得するレーザ距離計の距離データを変換して外乱と支持物とを分別する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する第2の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置は、
鉄道車両の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両上方の、屋外用支持物、トンネル用支持物及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井を走査する、スキャン式レーザ距離計と、
前記スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物またはトンネル用支持物を検知する支持物検知部とを備え、
前記支持物検知部は、
2台以上の前記スキャン式レーザ距離計が各々の走査によって得た前記距離d及び前記角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の前記距離d、前記角度θ及び前記時間tに関する座標上のデータを作成する処理回路と、
前記処理回路にて作成された前記座標上のデータから、下記数式を用いて、前記時間t及び鉛直方向のy軸についての投影面へプロットする(t,y)投影処理部と、
前記(t,y)投影処理部から入力した情報を基に、既知である前記トンネル天井の高さと前記トンネル用支持物及びトロリ線の高さの値を用いて、プロットされた前記投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する直線検出部と、
前記直線検出部から入力した情報を基に、前記y軸の値が大きい方の集合が前記トンネル天井の前記データの集合、前記y軸の値が小さい方の集合が前記トンネル用支持物及び前記トロリ線の前記データの集合であると分別する直線判定部とを備えることを特徴とする。
y=d・cosθ
【0014】
上記課題を解決する第3の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置は、
鉄道車両の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両上方の、屋外用支持物、トンネル用支持物及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井を走査する、スキャン式レーザ距離計と、
前記スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物またはトンネル用支持物を検知する支持物検知部とを備え、
前記支持物検知部は、
2台以上の前記スキャン式レーザ距離計が各々の走査によって得た前記距離d及び前記角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の前記距離d、前記角度θ及び前記時間tに関する座標上のデータを作成する処理回路と、
前記処理回路にて作成された前記座標上のデータから、下記数式を用いて、前記時間t及び前記車両の進行方向に対し平行なx軸の絶対値についての投影面へプロットする(t,x)投影処理部と、
前記(t,x)投影処理部から入力した情報を基に、既知である前記車両の走行速度の値を用いて、プロットされた前記投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する直線検出部と、
前記直線検出部から入力した情報を基に、前記2つの集合のうち、前記直線の傾斜角度が急な方の集合が前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合、緩やかな方の集合が前記トロリ線の前記データの集合であると分別する直線判定部とを備えることを特徴とする。
x=d・sinθ
【0015】
上記課題を解決する第4の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置は、
鉄道車両の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両上方の、屋外用支持物、トンネル用支持物及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井を走査する、スキャン式レーザ距離計と、
前記スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物またはトンネル用支持物を検知する支持物検知部とを備え、
前記支持物検知部は、
2台以上の前記スキャン式レーザ距離計が各々の走査によって得た前記距離d及び前記角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の前記距離d、前記角度θ及び前記時間tに関する第1座標上のデータを作成する処理回路と、
前記処理回路から入力した情報を基に、下記数式を用いて、前記第1座標上の前記データを、前記車両の進行方向に対し水平なx軸、前記車両の進行方向に対し垂直なy軸及び前記時間tに関する第2座標へ変換する(x,y,t)座標変換部と、
前記(x,y,t)座標変換部から入力した情報を基に、前記第2座標上の前記データを、前記時間t及び前記y軸についての第1投影面へプロットする(t,y)投影処理部と、
前記(t,y)投影処理部から入力した情報を基に、既知である前記トンネル天井の高さと前記トンネル用支持物及びトロリ線の高さの値を用いて、プロットされた前記第1投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する第1直線検出部と、
前記第1直線検出部から入力した情報を基に、前記y軸の値が大きい集合が前記トンネル天井の前記データの集合、前記y軸の値が小さい集合が前記トンネル用支持物及び前記トロリ線の前記データの集合であると分別する第1直線判定部と、
前記(x,y,t)座標変換部及び前記第1直線判定部から入力した情報を基に、前記トンネル天井の前記データの集合を排除した上での、前記第2座標上の前記データを、前記時間t及び前記x軸の絶対値についての第2投影面へプロットする(t,x)投影処理部と、
前記(t,x)投影処理部から入力した情報を基に、既知である前記車両の走行速度の値を用いて、プロットされた前記第2投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する第2直線検出部と、
前記第2直線検出部から入力した情報を基に、前記第2直線検出部にて処理された前記2つの集合のうち、前記直線の傾斜角度が急な方の集合が前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合、緩やかな方の集合が前記トロリ線の前記データの集合であると分別する第2直線判定部とを備えることを特徴とする。
x=d・sinθ
y=d・cosθ
【0016】
上記課題を解決する第5の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置は、
上記第3の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置において、
前記支持物検知部は、さらに、
前記直線判定部から入力した情報を基に、前記車両が起点を出発してから前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物を検知した回数をカウントし、現在検知している前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物が、起点より何番目のものであるかを判断する支持物カウント部と、
予め設けられた、前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物に起点から順番に付された番号と走行距離との相関関係より、前記支持物カウント部から入力した情報を基に、前記走行距離を算出する車両位置算出部とを備えることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する第6の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置は、
上記第4の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置において、
前記支持物検知部は、さらに、
前記第2直線判定部から入力した情報を基に、前記車両が起点を出発してから前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物を検知した回数をカウントし、現在検知している前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物が、起点より何番目のものであるかを判断する支持物カウント部と、
予め設けられた、前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物に起点から順番に付された番号と走行距離との相関関係より、前記支持物カウント部から入力した情報を基に、前記走行距離を算出する車両位置算出部とを備えることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決する第7の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置は、
鉄道車両の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両上方の、屋外用支持物、トンネル用支持物及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井を走査する、スキャン式レーザ距離計と、
前記スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物またはトンネル用支持物を検知する支持物検知部とを備え、
前記支持物検知部は、
2台以上の前記スキャン式レーザ距離計が各々の走査によって得た前記距離d及び前記角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の前記距離d、前記角度θ及び前記時間tに関する座標上のデータを作成する処理回路と、
前記処理回路にて作成された前記座標上のデータから、下記数式を用いて、前記時間t及び前記車両の進行方向に対し平行なx軸の絶対値についての投影面へプロットする(t,x)投影処理部と、
前記走行速度が既知でない場合に、前記(t,x)投影処理部から入力した情報を基に、設計速度を用いて、プロットされた前記投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する直線検出部と、
前記直線検出部から入力した情報を基に、前記2つの集合のうち、前記直線の傾斜角度が急な方の集合が前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合、緩やかな方の集合が前記トロリ線の前記データの集合であると分別する直線判定部と、
前記直線検出部及び前記直線判定部から入力した情報を基に、前記投影面において、前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合の前記直線の傾斜角度を測定する傾斜角度測定部と、
前記傾斜角度測定部から入力した情報を基に、前記傾斜角度と前記走行速度との相関関係に基づき、当該走行速度を算出する車両速度算出部とを備えることを特徴とする。
x=d・sinθ
【0019】
上記課題を解決する第8の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置は、
鉄道車両の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両上方の、屋外用支持物、トンネル用支持物及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井を走査する、スキャン式レーザ距離計と、
前記スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物またはトンネル用支持物を検知する支持物検知部とを備え、
前記支持物検知部は、
2台以上の前記スキャン式レーザ距離計が各々の走査によって得た前記距離d及び前記角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の前記距離d、前記角度θ及び前記時間tに関する第1座標上のデータを作成する処理回路と、
前記処理回路から入力した情報を基に、下記数式を用いて、前記第1座標上の前記データを、前記車両の進行方向に対し水平なx軸、前記車両の進行方向に対し垂直なy軸及び前記時間tに関する第2座標へ変換する(x,y,t)座標変換部と、
前記(x,y,t)座標変換部から入力した情報を基に、前記第2座標上の前記データを、前記時間t及び前記y軸についての第1投影面へプロットする(t,y)投影処理部と、
前記(t,y)投影処理部から入力した情報を基に、既知である前記トンネル天井の高さと前記トンネル用支持物及びトロリ線の高さの値を用いて、プロットされた前記第1投影面上の前記データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する第1直線検出部と、
前記第1直線検出部から入力した情報を基に、前記y軸の値が大きい集合が前記トンネル天井の前記データの集合、前記y軸の値が小さい集合が前記トンネル用支持物及び前記トロリ線の前記データの集合であると分別する第1直線判定部と、
前記(x,y,t)座標変換部及び前記第1直線判定部から入力した情報を基に、前記トンネル天井の前記データの集合を排除した上での、前記第2座標上の前記データを、前記時間t及び前記x軸の絶対値についての第2投影面へプロットする(t,x)投影処理部と、
前記走行速度が既知でない場合に、前記(t,x)投影処理部から入力した情報を基に、設計速度を用いて、プロットされた距離データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する第2直線検出部と、
前記第2直線検出部から入力した情報を基に、前記第2直線検出部にて処理された前記2つの集合のうち、前記直線の傾斜角度が急な方の集合が前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合、緩やかな方の集合が前記トロリ線の前記データの集合であると分別する第2直線判定部と、
前記第2直線検出部及び前記第2直線判定部から入力した情報を基に、前記第2投影面において、前記屋外用支持物または前記トンネル用支持物の前記データの集合の前記直線の傾斜角度を測定する傾斜角度測定部と、
前記傾斜角度測定部から入力した情報を基に、前記傾斜角度と前記走行速度との相関関係に基づき、当該走行速度を算出する車両速度算出部とを備えることを特徴とする。
x=d・sinθ
y=d・cosθ
【発明の効果】
【0021】
上記第2の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置によれば、鉄道車両の進行方向からみて左右両方の屋外用支持物を検知することができ、さらに、車両の進行方向に向けたスキャン式レーザ距離計の距離データを、時間tとy軸における投影面へ投影することで、外乱となるトンネル天井の距離データを排除し、トンネル用支持物及びトロリ線を検知することができる。
【0022】
上記第3の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置によれば、鉄道車両の進行方向からみて左右両方の屋外用支持物を検知することができ、さらに、車両の進行方向に向けたレーザ距離計の距離データを、時間tとx軸における投影面へ投影することで、外乱となるトロリ線の距離データを排除し、支持物のみを検出することができる。
【0023】
上記第4の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置によれば、鉄道車両の進行方向からみて左右両方の屋外用支持物を検知することができ、さらに、車両の進行方向に向けたレーザ距離計の距離データを、時間tとy軸における投影面及び時間tとx軸における投影面へ投影することで、外乱となるトンネル天井とトロリ線の距離データを排除し、支持物のみを検出することができる。
【0024】
上記第5,6の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置によれば、屋外用支持物またはトンネル用支持物に付された番号と走行距離との相関関係を用いることで、外乱となるトンネル天井及びトロリ線に影響されることなく、走行中の自車両の位置を算出することができる。
【0025】
上記第7,8の発明に係るレーザ測定による支持物検知装置によれば、鉄道車両の進行方向からみて左右両方の屋外用支持物を検知することができ、さらに、屋外用支持物またはトンネル用支持物のデータの集合の直線の傾斜角度を測定することで、外乱となるトンネル天井及びトロリ線に影響されることなく、自車両の走行速度を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例1〜3に係るレーザ測定による支持物検知装置を説明する概略図である。
図2】本発明の実施例1〜3に係るレーザ測定による支持物検知装置を説明する概略的側面図である。
図3】本発明の実施例1〜3に係るレーザ測定による支持物検知装置を説明する概略的平面図である。
図4】本発明に係るレーザ測定による支持物検知装置のブロック図である。(a)は実施例1に係るものであり、(b)は実施例2に係るものであり、(c)は実施例3に係るものである。
図5】本発明の実施例1〜3におけるスキャン式レーザ距離計による走査方向を説明する概略的側面図である。
図6】距離データの投影面の概略図である。(a)は実施例1における(t,y)投影処理部によるものであり、(b)は実施例2における(t,x)投影処理部によるものである。
図7】本発明に係るレーザ測定による支持物検知装置の作動を説明するフローチャートである。(a)は、実施例1に係るものであり、(b)は実施例2に係るものであり、(c)は実施例3に係るものである。
図8】本発明に係るレーザ測定による支持物検知装置のブロック図である。(a)は、実施例4に係るものであり、(b)は実施例5に係るものである。
図9】本発明の実施例4における距離テーブルの一例である。
図10】本発明の実施例5における距離データの投影面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るレーザ測定による支持物検知装置を、実施例により図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0028】
本発明の実施例1に係るレーザ測定による支持物検知装置は、スキャン式レーザ距離計の回転軸を枕木方向に設置する構成と、測定した距離データを投影面に投影する構成を組み合わせることで、外乱となるトンネルの内壁面上部(以下、トンネル天井と記載)を排除して屋外用支持物またはトンネル用支持物を正確に分別し検出することが可能となるものである。
【0029】
図1は本装置を説明する概略図である。図1に表すように、本装置は、第1レーザ距離計15、第2レーザ距離計16及び支持物検知部21を備える。
【0030】
上述の第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16は、レーザを照射した走査箇所までの距離及び角度のデータを取得するものであり、枕木方向の回転軸を中心にして走査角度が回転し、車両14の上方を走査する。
【0031】
図2は本装置を説明する概略的側面図である。破線矢印Aは第1レーザ距離計15の走査角度の回転を示しており(図2には図示されていない第2レーザ距離計16も同様)、黒点は走査箇所を示している。これを見ればわかるように、第1レーザ距離計15が回転することでトンネル用支持物13及びトンネル天井17を走査している。
【0032】
図3の概略的平面図に示すように、本装置では、第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16が車両14の屋根上中央から枕木方向に左右均等に離間した位置に設けられている。
【0033】
上述ではレーザ距離計を車両14の屋根上の左右に1台ずつ合計2台設置しているが、これは、図3に示すように屋外用支持物12が車両14の進行方向から見てトロリ線11の左右に存在しており、レーザ距離計が1台では左右どちらか一方しか測定できないため、レーザ距離計を左右1台ずつ合計2台設置し、左右両方の屋外用支持物12を検知可能にしているものである。図3中では、レーザ距離計15の走査(走査方向は破線矢印B)によって、車両14の進行方向に対して右側に設置された屋外用支持物12を検知し、レーザ距離計16の走査(走査方向は破線矢印B´)によって、同左側に設置された屋外用支持物12を検知している状態を示している。
【0034】
但し、本装置ではレーザ距離計の台数を2台としているが、実際は2台以上であれば何台でも良く、特に台数を限定するものではない。
【0035】
上述の支持物検知部21は、第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16から入力した情報に基づき、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13を検知するものである。
【0036】
図4(a)は本発明の実施例1に係るレーザ測定による支持物検知装置のブロック図であるが、図4(a)に示すように、支持物検知部21は、処理回路22、(x,y,t)座標変換部23、(t,y)投影処理部24、直線検出部25及び直線判定部26を備える。以下、図5の概略的側面図を用いて説明する。
【0037】
上述の処理回路22は、レーザ距離計15とレーザ距離計16とが各々1回の走査(図5中では、破線矢印Cで表される走査方向が、破線矢印Aに従って回転する)によって得た放射状の距離データ(d,θ)(d:距離、θ:角度)をそれぞれ入力し、時間を合わせることで同一の(θ,d,t)座標(t:時間)上の距離データに変換し、(x,y,t)座標変換部23へ出力する。尚、図5中の黒点は、図2と同様、レーザ距離計15(またはレーザ距離計16)による走査箇所を表している。
【0038】
上述の(x,y,t)座標変換部23は、処理回路22から入力した情報を基に、下記数式を用いて、(θ,d,t)座標上の距離データを(x,y,t)座標(x:車両14の進行方向に対し平行な水平軸、y:鉛直方向に延びる鉛直軸)へ変換し、(t,y)投影処理部24へ出力する。
【0039】
x=d・sinθ
y=d・cosθ
【0040】
上述の(t,y)投影処理部24は、(x,y,t)座標変換部23から入力した情報を基に、(x,y,t)座標上の距離データを図6(a)のような(t‐y)投影面へプロットし、直線検出部25へ出力する(プロットされた点の位置についての説明は後述)。
【0041】
上述の直線検出部25では、(t,y)投影処理部24から入力した情報を基に、既知であるトンネル天井17の高さとトンネル用支持物13及びトロリ線11の高さの値を用いて、プロットされた距離データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似し、直線判定部26へ出力する。
【0042】
即ち、トンネル天井17と、トンネル用支持物13及びトロリ線11とでは、y軸の値が異なるため、図6(a)の(t‐y)投影面を見ると、プロットされた距離データの点の集合は、自ずとt軸に平行な2本の直線状のようになる(図中のaとb)。aの集合はトンネル天井17の距離データを、bの集合はトンネル用支持物13及びトロリ線11の距離データをそれぞれ表しているが、このとき、トンネル天井17の高さと、トンネル用支持物13及びトロリ線11の高さの値はそれぞれ既知であるため、当該値を用いてプロットされた距離データの点の集合a,bを直線近似するということである。
【0043】
上述の直線判定部26は、直線検出部25から入力した情報を基に、トンネル用支持物13及びトロリ線11を、トンネル天井17と分別する。つまり、上述のようにyの値が大きい(高さが高い)集合aがトンネル天井17の距離データの点の集合であり、yの値が小さい(高さが低い)集合bがトンネル用支持物13及びトロリ線11の距離データの点の集合と判断する。
【0044】
従って、支持物検知部21は、(θ,d,t)座標で表される距離データを、(t‐y)投影面へ投影することによって、トンネル天井17の距離データと、トンネル用支持物13及びトロリ線11の距離データとが別々の集合にプロットされ、それぞれを直線近似することで、2つの距離データに分別することができ、トンネル天井17と、トンネル用支持物13及びトロリ線11とを区別できるというものである。
【0045】
次に、本装置の作動手順について図7(a)のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
ステップS1では、レーザ距離計15とレーザ距離計16とが各々1回の走査によって得た放射状の距離データ(d,θ)を、処理回路22にて、時間を合わせることで同一の(θ,d,t)座標に変換する。
【0047】
ステップS2では、(x,y,t)座標変換部23にて、(θ,d,t)座標を(x,y,t)座標へ変換する。
【0048】
ステップS3では、(t,y)投影変換部24にて、(x,y,t)座標に変換された距離データを(t‐y)投影面へプロットする。
【0049】
ステップS4では、直線検出部25にて、既知であるトンネル天井17の高さとトンネル用支持物13及びトロリ線11の高さの値を用いて、プロットされた(t‐y)投影面上の距離データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する。
【0050】
ステップS5では、直線判定部26にて、トンネル天井17と、トンネル用支持物13及びトロリ線11とを分別する。
【0051】
ステップS6では、レーザ距離計15とレーザ距離計16による画像入力が終了していれば本装置の作動を終了し、終了していなければステップS1へ移行する。
【0052】
従来技術では、レーザ距離計の回転周期には上限があるため、高速走行中の車両においてはレーザ距離計の回転周期の間に支持物が通過してしまい、支持物が検知できない可能性がある。これに対して本装置は、レーザ距離計の回転軸を枕木方向に向けて、支持物の距離データを点列データ上に多数取得し、さらに図6(a)に示す投影面に投影することで、支持物とトンネル天井とを正確に分別し検出することが可能となる。
【0053】
換言すれば本装置は、鉄道車両14の屋根上中央から枕木方向に離間した位置に2台以上設けられ、それぞれ枕木方向の回転軸を中心として走査角度が回転し、前記車両14上方の、屋外用支持物12、トンネル用支持物13及びトンネルの内壁面上部のトンネル天井17を走査する、スキャン式レーザ距離計15,16と、スキャン式レーザ距離計からレーザを照射した走査箇所までの距離d及び角度θのデータに基づき、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13を検知する支持物検知部21とを備え、さらに、支持物検知部21は、2台以上のスキャン式レーザ距離計15,16が各々の走査によって得た距離d及び角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の距離d、角度θ及び時間tに関する座標上のデータを作成する処理回路22と、処理回路22にて作成された座標上のデータから、下記数式を用いて、時間t及び鉛直方向のy軸についての投影面へプロットする(t,y)投影処理部24と、(t,y)投影処理部24から入力した情報を基に、既知であるトンネル天井17の高さとトンネル用支持物13及びトロリ線11の高さの値を用いて、プロットされた投影面上のデータの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する直線検出部25と、直線検出部25から入力した情報を基に、y軸の値が大きい方の集合がトンネル天井17のデータの集合、y軸の値が小さい方の集合がトンネル用支持物13及びトロリ線11のデータの集合であると分別する直線判定部26とを備えるものである。尚、(x,y,t)座標変換部23については本装置にとって必須の構成要件ではないため、当該段落の記載では省略し、代わりに、処理回路22にて作成された座標上のデータから(t,y)投影処理部24において下記数式を用いて処理を行う旨を記載している。
【0054】
y=d・cosθ
【0055】
上述のようにして、車両の進行方向に向けたレーザ距離計の距離データを、時間tとy軸における投影面へ投影することで、外乱となるトンネル天井の距離データを排除し、トンネル用支持物及びトロリ線を検出することができる。
【実施例2】
【0056】
実施例1に係るレーザ測定による支持物検知装置が、トンネル天井の距離データを排除するものであるのに対し、本発明の実施例2に係るレーザ測定による支持物検知装置は、トロリ線の距離データを排除し、支持物(屋外用支持物とトンネル用支持物)を正確に検出するものである。
【0057】
図1に表すように、本装置は、第1レーザ距離計15、第2レーザ距離計16及び支持物検知部31を備える。第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16は、実施例1に係るレーザ測定による支持物検知装置と同様のため、説明は省略する。
【0058】
上述の支持物検知部31は、第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16から入力した情報に基づき、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13を検知するものである。
【0059】
図4(b)は本装置のブロック図であるが、当該図に示すように、支持物検知部31は、処理回路32、(x,y,t)座標変換部33、(t,x)投影処理部34、直線検出部35及び直線判定部36を備える。
【0060】
上述の処理回路32及び(x,y,t)座標変換部33については、実施例1に係るレーザ測定による支持物検知装置における処理回路22及び(x,y,t)座標変換部23と同様であるため説明は省略し、以下、(t,x)投影処理部34、直線検出部35及び直線判定部36について説明する。
【0061】
上述の(t,x)投影処理部34は、(x,y,t)座標変換部33から入力した情報を基に、(x,y,t)座標上の距離データを図6(b)のような(t‐x)投影面(x軸は絶対値)へプロットし、直線検出部35へ出力する(プロットされた点の位置についての説明は後述)。
【0062】
上述の直線検出部35では、(t,x)投影処理部34から入力した情報を基に、既知である車両14の走行速度の値を用いて、プロットされた距離データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似し、直線判定部36へ出力する。
【0063】
即ち、図6(b)の(t‐x)投影面を見ると、プロットされた距離データの点の集合は、自ずとV字状のようになり(図中のeとf)、eの集合は支持物(屋外用支持物12またはトンネル用支持物13)の距離データを、fの集合はトロリ線11の距離データをそれぞれ表しているが、このとき、車両14の走行速度の値は既知であるため、当該値を用いてプロットされた距離データの点の集合e,fを直線近似するということである。
【0064】
ここで、車両14は走査対象に段々と接近し、走査対象を通過した後は段々と遠ざかっていくが、図6(b)のx軸は絶対値を表すものであるため、プロットされた距離データの点の集合e,fは上述のようにV字状となる。
【0065】
図3では、例えばレーザ距離計16からの屋外用支持物12(トンネル用支持物13でも同様)は車両14に対して正対しているため、当該距離データは車両14の走行速度に対応して接近するが、これに対してトロリ線11は正対していないため、当該距離データは車両14の走行速度に対して遅く接近する。従って、図6(b)の(t‐x)投影面に示すように、支持物とトロリ線は、V字状の傾斜角度の大小の違いで投影される。
【0066】
上述の直線判定部36は、直線検出部35から入力した情報を基に、支持物とトロリ線11とを分別する。つまり、2つの集合のうち、上述のようにV字状の直線の傾斜角度が急な方の集合eは、支持物の距離データの点の集合であり、角度が緩やかな方の集合fは、トロリ線11の距離データの点の集合であると判断する。
【0067】
従って、支持物検知部31は、(θ,d,t)座標で表される距離データを、(t‐x)投影面へ投影することによって、支持物の距離データとトロリ線11の距離データとが別々の集合にプロットされ、それぞれを直線近似することで、2つの距離データに分別することができ、トロリ線11の距離データを除外することができる。
【0068】
本装置の作動手順について図7(b)のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
ステップS11では、レーザ距離計15とレーザ距離計16とが各々1回の走査によって得た放射状の距離データ(d,θ)を、処理回路32にて、時間を合わせることで同一の(θ,d,t)座標に変換する。
【0070】
ステップS12では、(x,y,t)座標変換部33にて、(θ,d,t)座標を(x,y,t)座標へ変換する。
【0071】
ステップS13では、(t,x)投影変換部34にて、(x,y,z)座標に変換された距離データを、(t‐x)投影面へプロットする。
【0072】
ステップS14では、直線検出部35にて、既知である車両14の走行速度の値を用いて、プロットされた(t‐x)投影面上の距離データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する。
【0073】
ステップS15では、直線判定部36にて、トロリ線11と、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13とを分別する。
【0074】
ステップS16では、レーザ距離計15とレーザ距離計16による画像入力が終了していれば本装置の作動を終了し、終了していなければステップS11へ移行する。
【0075】
従来技術では、レーザ距離計の回転周期には上限があるため、高速走行中の車両においてはレーザ距離計の回転周期の間に支持物が通過してしまい、支持物が検知できない可能性がある。これに対して本装置は、レーザ距離計の回転軸を枕木方向に向けて、支持物の距離データを点列データ上に多数取得し、さらに図6(b)に示す投影面に投影することで、支持物とトロリ線とを正確に分別し検出することが可能となる。
【0076】
換言すれば本装置は、実施例1と同一のスキャン式レーザ距離計15,16と、支持物検知部31とを備え、支持物検知部31は、2台以上の前記スキャン式レーザ距離計15,16が各々の走査によって得た距離d及び角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の距離d、角度θ及び時間tに関する座標上のデータを作成する処理回路32と、処理回路22にて作成された座標上のデータから、下記数式を用いて、時間t及び車両14の進行方向に対し平行なx軸の絶対値についての投影面へプロットする(t,x)投影処理部34と、(t,x)投影処理部34から入力した情報を基に、既知である車両14の走行速度の値を用いて、プロットされた投影面上のデータの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する直線検出部35と、直線検出部35から入力した情報を基に、2つの集合のうち、直線の傾斜角度が急な方の集合が屋外用支持物12またはトンネル用支持物13のデータの集合、緩やかな方の集合がトロリ線11のデータの集合であると分別する直線判定部36とを備えるものである。尚、(x,y,t)座標変換部33については本装置にとって必須の構成要件ではないため、当該段落の記載では省略し、代わりに、処理回路32にて作成された座標上のデータから(t,y)投影処理部34において下記数式を用いて処理を行う旨を記載している。
【0077】
x=d・sinθ
【0078】
上述のようにして、車両の進行方向に向けたレーザ距離計の距離データを、時間tとx軸における投影面へ投影することで、外乱となるトロリ線を排除し、支持物のみを検出することができる。
【実施例3】
【0079】
本発明の実施例3に係るレーザ測定による支持物検知装置は、実施例1に係るレーザ測定による支持物検知装置と実施例2に係るレーザ測定による支持物検知装置とを組み合わせたものである。
【0080】
図1に表すように、本装置は、第1レーザ距離計15、第2レーザ距離計16及び支持物検知部41を備える。第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16は、実施例1,2に係るレーザ測定による支持物検知装置と同様のため説明は省略する。
【0081】
上述の支持物検知部41は、第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16から入力した情報に基づき、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13を検知するものである。
【0082】
図4(c)は本装置のブロック図であるが、当該図に示すように、支持物検知部41は、処理回路42、(x,y,t)座標変換部43、(t,y)投影処理部44、第1直線検出部45、第1直線判定部46、(t,x)投影処理部47、第2直線検出部48及び第2直線判定部49を備える。
【0083】
上述の処理回路42、(x,y,t)座標変換部43、(t,y)投影処理部44、第1直線検出部45及び第1直線判定部46については、実施例1に係るレーザ測定による支持物検知装置における処理回路22、(x,y,t)座標変換部23、(t,y)投影処理部24、直線検出部25及び直線判定部26と同様であるため、説明は省略する。
【0084】
また、第2直線検出部48及び第2直線判定部49についても、実施例2に係るレーザ測定による支持物検知装置における直線検出部35及び直線判定部36と同様であるため、説明は省略する。
【0085】
上述の(t,x)投影処理部47は、(x,y,t)座標変換部43及び第2直線検出部46から入力した情報を基に、トンネル天井17の距離データを排除した上での、(x,y,t)座標上の距離データを、(t‐x)投影面(x軸は絶対値)へプロットし、第2直線検出部48へ出力する。
【0086】
このようにして、支持物検知部41は、(θ,d,t)座標で表される距離データを、図6(a)のような(t‐y)投影面と同図(b)のような(t‐x)投影面とに投影することによって、外乱となるトロリ線11とトンネル天井17を排除して支持物を正確に検出することができる。尚、(t‐y)投影面は、車両14との相対距離が変動しないトンネル天井17までの距離データの排除に用い、(t‐x)投影面は、車両14との相対距離が変動するトロリ線11の距離データの排除に用いる。
【0087】
本装置の作動手順について図7(c)のフローチャートを用いて説明する。
【0088】
ステップS21では、レーザ距離計15とレーザ距離計16とが各々1回の走査によって得た放射状の距離データ(d,θ)を、処理回路42にて、時間を合わせることで同一の(θ,d,t)座標に変換する。
【0089】
ステップS22では、(x,y,t)座標変換部43にて、(θ,d,t)座標を(x,y,t)座標へ変換する。
【0090】
ステップS23では、(t‐y)投影変換部44にて、(x,y,z)座標に変換された距離データを、(t‐y)投影面へプロットする。
【0091】
ステップS24では、第1直線検出部45にて、トンネル天井17の高さとトンネル用支持物13及びトロリ線11の高さの値を用いて、プロットされた(t‐y)投影面上の距離データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する。
【0092】
ステップS25では、第1直線判定部46にて、トンネル天井17と、トンネル用支持物13及びトロリ線11とを分別する。
【0093】
ステップS26では、(t,x)投影変換部47にて、トンネル天井17の距離データを排除した上での、(x,y,z)座標に変換された距離データを、(t‐x)投影面へプロットする。
【0094】
ステップS27では、第2直線検出部48にて、既知である車両14の走行速度の値を用いて、プロットされた(t‐x)投影面上の距離データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する。
【0095】
ステップS28では、第2直線判定部49にて、トロリ線11と、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13とを分別する。
【0096】
ステップS29では、レーザ距離計15とレーザ距離計16による画像入力が終了していれば本装置の作動を終了し、終了していなければステップS21へ移行する。
【0097】
換言すれば本装置は、実施例1と同一のスキャン式レーザ距離計15,16と、支持物検知部41とを備え、支持物検知部41は、2台以上のスキャン式レーザ距離計15,16が各々の走査によって得た距離d及び角度θをそれぞれ入力し、時間tを合わせることで、同一の距離d、角度θ及び時間tに関する第1座標上のデータを作成する処理回路42と、処理回路42から入力した情報を基に、下記数式を用いて、第1座標上のデータを、車両14の進行方向に対し平行なx軸、鉛直方向のy軸及び時間tに関する第2座標へ変換する(x,y,t)座標変換部43と、(x,y,t)座標変換部43から入力した情報を基に、第2座標上のデータを、時間t及びy軸についての第1投影面へプロットする(t,y)投影処理部44と、(t,y)投影処理部44から入力した情報を基に、既知であるトンネル天井17の高さとトンネル用支持物13及びトロリ線11の高さの値を用いて、プロットされた第1投影面上のデータの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する第1直線検出部45と、第1直線検出部45から入力した情報を基に、y軸の値が大きい集合がトンネル天井17のデータの集合、y軸の値が小さい集合がトンネル用支持物13及びトロリ線11のデータの集合であると分別する第1直線判定部46と、(x,y,t)座標変換部43及び第1直線判定部46から入力した情報を基に、トンネル天井17のデータの集合を排除した上での、第2座標上のデータを、時間t及びx軸の絶対値についての第2投影面へプロットする(t,x)投影処理部47と、(t,x)投影処理部47から入力した情報を基に、既知である車両14の走行速度の値を用いて、プロットされた第2投影面上のデータの点の2つの集合をそれぞれ直線近似する第2直線検出部48と、第2直線検出部48から入力した情報を基に、第2直線検出部48にて処理された2つの集合のうち、直線の傾斜角度が急な方の集合が屋外用支持物12またはトンネル用支持物13のデータの集合、緩やかな方の集合がトロリ線11のデータの集合であると分別する第2直線判定部49とを備えるものである。
【0098】
x=d・sinθ
y=d・cosθ
【0099】
上述のようにして、車両の進行方向に向けたレーザ距離計の距離データを、時間tとy軸における投影面及び時間tとx軸における投影面へ投影することで、外乱となるトンネル天井とトロリ線を排除し、支持物のみを検出することができる。
【実施例4】
【0100】
本発明の実施例4に係るレーザ測定による支持物検知装置は、自車両の位置を算出する構成を備えるものである。
【0101】
図1に表すように、本装置は、第1レーザ距離計15、第2レーザ距離計16及び支持物検知部51を備える。第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16は、実施例1〜3に係るレーザ測定による支持物検知装置と同様のため説明は省略する。
【0102】
上述の支持物検知部51は、第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16から入力した情報に基づき、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13を検知するものである。
【0103】
図8(a)は本装置のブロック図である。当該図に示すように、本装置の支持物検知部51は、処理回路52、(x,y,t)座標変換部53、(t,x)投影処理部54、直線検出部55、直線判定部56、支持物カウント部57及び車両位置算出部58を備える。
【0104】
上述の処理回路52、(x,y,t)座標変換部53、(t,x)投影処理部54、直線検出部55及び直線判定部56については、実施例2における支持物検知部31の処理回路32、(x,y,t)座標変換部33、(t,x)投影処理部34、直線検出部35及び直線判定部36と同様のため、説明は省略する。
【0105】
上述の支持物カウント部57は、直線判定部56から入力した情報を基に、車両14が起点を出発してから屋外用支持物12またはトンネル用支持物13を検知した回数をカウントすることで、現在検知している屋外用支持物12またはトンネル用支持物13が、起点より何番目のものであるかを判断し、車両位置算出部58へ出力する。
【0106】
上述の車両位置算出部58は、図9にその一例を示すように、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13に起点から順番に付された支持物番号と起点からの距離との相関関係を示す距離テーブルが予め設けられている。当該図中において、支持物番号「1」は、起点より1番目の屋外用支持物12またはトンネル用支持物13に付される番号であり、支持物番号「2」は、起点より2番目の屋外用支持物12またはトンネル用支持物13に付される番号である(以下同様)。図9によると、例えば、支持物番号「n」が付された屋外用支持物12またはトンネル用支持物13は、起点から330.030kmの位置にあることを示している。
【0107】
そして、車両位置算出部58は、支持物カウント部57から入力した情報を基に、上述の距離テーブルを参照して、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13の起点からの距離を算出する。現在検知している屋外用支持物12またはトンネル用支持物13の起点からの距離は、そのまま走行距離となる。このようにして、車両位置算出部58は車両位置を算出する。
【0108】
従来は、車両14の車輪にエンコーダを付けることで、自車両の位置を把握していたが、本装置では、上述の構成とすることで、車輪にエンコーダを付けずに自車両の位置を算出することができる。
【0109】
なお、上述では、支持物検知部51が、実施例2の処理回路32、(x,y,t)座標変換部33、(t,x)投影処理部34、直線検出部35及び直線判定部36と同様の構成(上述の処理回路52、(x、y、t)座標変換部53、(t、x)投影処理部54、直線検出部55及び直線判定部56)に、支持物カウント部57及び車両位置算出部58を付加したものとして説明したが、本実施例はこれに限定されるものではなく、実施例3の処理回路42、(x,y,t)座標変換部43、(t,y)投影処理部44、第1直線検出部45、第1直線判定部46、(t,x)投影処理部47、第2直線検出部48及び第2直線判定部49と同様の構成に、支持物カウント部57及び車両位置算出部58を付加するものとしてもよい。その場合、支持物カウント部57は、第2直線判定部49と同様の構成から入力した情報を基に処理を行うこととなる。
【0110】
換言すれば本装置の支持物検知部51は、実施例2と同様の構成に、さらに、車両14が起点を出発してから屋外用支持物12またはトンネル用支持物13を検知した回数をカウントし、現在検知している屋外用支持物12またはトンネル用支持物13が、起点より何番目のものであるかを判断する支持物カウント部57と、予め設けられた、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13に起点から順番に付された番号と走行距離との相関関係より、支持物カウント部57から入力した情報を基に、走行距離を算出する車両位置算出部58とを備えるものである。
【0111】
あるいは本装置の支持物検知部51は、実施例3と同様の構成に、さらに、車両14が起点を出発してから屋外用支持物12またはトンネル用支持物13を検知した回数をカウントし、現在検知している屋外用支持物12またはトンネル用支持物13が、起点より何番目のものであるかを判断する支持物カウント部57と、予め設けられた、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13に起点から順番に付された番号と走行距離との相関関係より、支持物カウント部57から入力した情報を基に、走行距離を算出する車両位置算出部58とを備えるものとしてもよい。
【0112】
上述のようにして、本装置では、屋外用支持物またはトンネル用支持物に付された番号と走行距離との相関関係を用いることで、外乱となるトンネル天井及びトロリ線に影響されることなく、走行中の自車両の位置を算出することができる。
【実施例5】
【0113】
実施例2,3では、車両14の走行速度が既知であるものと記載しているが、この走行速度は、速度センサやエンコーダ等により計測されるものであり、この点に関しては従来と同様であった。本発明の実施例5に係るレーザ測定による支持物検知装置は、速度センサやエンコーダを用いず、走行速度が既知でない場合に、この走行速度を算出する構成を付加したものである。
【0114】
図1に表すように、本装置は、第1レーザ距離計15、第2レーザ距離計16及び支持物検知部61を備える。第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16は、実施例1〜4に係るレーザ測定による支持物検知装置と同様のため説明は省略する。
【0115】
上述の支持物検知部61は、第1レーザ距離計15及び第2レーザ距離計16から入力した情報に基づき、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13を検知するものである。
【0116】
図8(b)は本装置のブロック図である。当該図に示すように、本装置の支持物検知部61は、処理回路62、(x,y,t)座標変換部63、(t,x)投影処理部64、直線検出部65、直線判定部66、傾斜角度測定部67及び車両速度算出部68を備える。
【0117】
上述の処理回路62、(x,y,t)座標変換部63、(t,x)投影処理部64及び直線判定部66については、実施例2における支持物検知部31の処理回路32、(x,y,t)座標変換部33、(t,x)投影処理部34及び直線判定部36と同様のため、説明は省略する。
【0118】
上述の直線検出部65は、所定範囲の値を有する、予め設定された設計速度(例:0〜80km/h)の値を用いて、(t,x)投影処理部64から入力した情報を基に、プロットされた距離データの点の2つの集合をそれぞれ直線近似し、直線判定部66及び傾斜角度測定部67へ出力する。
【0119】
即ち、図10の(t‐x)投影面を見ると、プロットされた距離データの点の集合は、自ずとV字状のようになり(図中のeとf)、eの集合は支持物(屋外用支持物12またはトンネル用支持物13)の距離データを、fの集合はトロリ線11の距離データをそれぞれ表しているが、このとき、車両14の設計速度の値を用いて、プロットされた距離データの点の集合e,fを直線近似するということである(プロットされた距離データの点の集合がV字状になる理由は、実施例2における直線検出部35についての説明を参照)。なお、支持物とトロリ線は、V字状の傾斜角度の大小の違いで投影される。
【0120】
上述の傾斜角度測定部67は、直線検出部65及び直線判定部66から入力した情報を基に、図10の(t‐x)投影面において、eの集合(屋外用支持物12またはトンネル用支持物13の前記データの集合)の直線の傾斜角度である支持物接近角度αまたは支持物離隔角度α´を測定し、車両速度算出部68に出力する。なお、支持物接近角度αとは、車両14が屋外用支持物12またはトンネル用支持物13に接近している間のeの集合の直線の傾斜角度であり、支持物離隔角度α´とは、車両14が屋外用支持物12またはトンネル用支持物13から離隔していく間のeの集合の直線の傾斜角度であり、通常はα=α´となる。
【0121】
上述の車両速度算出部68は、傾斜角度測定部67から入力した情報を基に、αと車両14の走行速度との相関関係に基づき、当該速度を算出する。
【0122】
既に説明したように、従来は、車両14に速度センサを付けたり、車輪にエンコーダを付けたりすることにより、走行速度を把握していたが、本装置では、上述の構成とすることで、速度センサやエンコーダを用いずに、車両14の走行速度を算出することができる。
【0123】
なお、上述では、車両14の走行速度が既知でない場合を想定し、支持物検知部61が、実施例2における支持物検知部31のうち直線検出部35を変更した(直線検出部65とした)構成に、さらに、傾斜角度測定部67及び車両速度算出部68を付加したものとして説明したが、本実施例はこれに限定されるものではなく、実施例3における支持物検知部41のうち第2直線検出部48を変更した構成に、傾斜角度測定部67及び車両速度算出部68を付加するものとしてもよい。その場合、傾斜角度測定部67は、第2直線検出部48及び第2直線判定部49と同様の構成から入力した情報を基に処理を行う。
【0124】
そして、上述の「変更した」とは、速度センサやエンコーダによる既知の走行速度ではなく、予め設定された設計速度を用いて、プロットされた(t、x)投影面上のデータの点の2つの集合をそれぞれ直線近似するものとしたということであり、また、傾斜角度測定部67は、(t、x)投影面において、屋外用支持物12またはトンネル用支持物13のデータの集合の直線の傾斜角度を測定するものであり、車両速度算出部68は、傾斜角度測定部67から入力した情報を基に、傾斜角度と走行速度との相関関係に基づき、走行速度を算出するものである。
【0125】
上述のようにして、屋外用支持物またはトンネル用支持物のデータの集合の直線の傾斜角度を測定することで、外乱となるトンネル天井及びトロリ線に影響されることなく、自車両の走行速度を算出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、レーザ測定による支持物検知装置として好適である。
【符号の説明】
【0127】
11 トロリ線
12 屋外用支持物
13 トンネル用支持物
14 車両
15 第1(スキャン式)レーザ距離計
16 第2(スキャン式)レーザ距離計
17 トンネル天井
21,31,41,51,61 支持物検知部
22,32,42,52,62 処理回路
23,33,43,53,63 (x,y,t)座標変換部
24,44 (t,y)投影処理部
25,35,55,65 直線検出部
26,36,56,66 直線判定部
34,47,54,64 (t,x)投影処理部
45 第1直線検出部
46 第1直線判定部
48 第2直線検出部
49 第2直線判定部
57 支持物カウント部
58 車両位置算出部
67 傾斜角度測定部
68 車両速度算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10