特許第5796695号(P5796695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796695
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】タッチ式入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20151001BHJP
   G06F 3/0488 20130101ALI20151001BHJP
【FI】
   G06F3/041 500
   G06F3/041 602
   G06F3/041 620
   G06F3/048 620
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-525335(P2015-525335)
(86)(22)【出願日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2014075354
(87)【国際公開番号】WO2015046287
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-202197(P2013-202197)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正道
(72)【発明者】
【氏名】加納 英和
(72)【発明者】
【氏名】北田 宏明
【審査官】 松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−053974(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2624107(EP,A2)
【文献】 特開昭63−219030(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/122070(WO,A1)
【文献】 特開2010−157060(JP,A)
【文献】 特開2004−046792(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0100053(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/077359(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/041
G06F 3/0488
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面と、
前記操作面に対するタッチ操作および当該タッチ操作がなされた位置を検出し、検出した位置に対応する位置検出信号を出力するタッチセンサと、
を備えたタッチ式入力装置であって、
該タッチ式入力装置に対する変形操作を検出する変形検出センサと、
前記変形検出センサが検出した前記変形操作に対応する変形検出信号を、前記位置検出信号に変換して出力する制御部と、
を備えたタッチ式入力装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記変形検出信号を、タッチ位置を変化させる操作に対応する位置検出信号に変換して出力する請求項1に記載のタッチ式入力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記変形検出信号を、複数のタッチ位置間の距離を変化させる操作であるピンチ操作に対応する位置検出信号に変換して出力する請求項1または請求項2に記載のタッチ式入力装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記変形検出信号を検出した後、前記タッチセンサでタッチ位置を変化させる操作に対応する位置検出信号の出力があった場合に、前記変形検出信号を、複数のタッチ位置間の距離を変化させる操作であるピンチ操作に対応する位置検出信号に変換して出力する請求項3に記載のタッチ式入力装置。
【請求項5】
前記変形検出センサは、変形量をさらに検出し、
前記制御部は、前記変形検出センサが検出した前記変形量に応じて、前記ピンチ操作における距離の変化量を制御する請求項3または請求項4に記載のタッチ式入力装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記変形検出信号の検出時間の長さに応じて、前記ピンチ操作における距離の変化量を制御する請求項3または請求項4に記載のタッチ式入力装置。
【請求項7】
前記変形操作は、押圧操作、曲げ操作、またはねじり操作である請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のタッチ式入力装置。
【請求項8】
前記変形検出センサは、前記操作面に対する変形操作を検出する請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のタッチ式入力装置。
【請求項9】
前記操作面を保持する筐体を備え、
前記変形検出センサは、前記筐体に対する変形操作を検出する請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のタッチ式入力装置。
【請求項10】
前記変形検出センサは、キラル高分子からなる圧電フィルムを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のタッチ式入力装置。
【請求項11】
前記キラル高分子は、ポリ乳酸からなることを特徴とする請求項10に記載のタッチ式入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者のタッチ操作を検出するタッチ式入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利用者のタッチ操作を検出するものとして、静電容量センサを備えたタッチ式入力装置が普及している。タッチ式入力装置は、静電容量センサの検出容量が所定の閾値を超えた場合にタッチ操作がなされたものとして、当該タッチ操作がなされた位置を検出し、検出した位置を示す位置検出信号を出力する。
【0003】
また、タッチ操作がなされた位置を検出するとともに、タッチパネルに対する押圧操作を検出することができるタッチ式入力装置も提案されている(例えば特許文献1、2を参照)。
【0004】
また、曲げ操作およびねじり操作を検出することができるタッチ式入力装置も提案されている(例えば特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/21835号公報
【特許文献2】特開平5−61592号公報
【特許文献3】国際公開第2013/122070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タッチ式入力装置の位置検出信号は、所定のホスト装置で受け付けられ、当該ホスト装置で実行されるアプリケーションソフトウェアで利用される。しかし、ホスト装置に搭載されるオペレーティングシステム(以下、OSと言う。)は、静電容量センサによる位置検出信号を処理することしか想定していない場合がある。この場合、OSは、上述の押圧操作、曲げ操作、およびねじり操作に対応する信号(以下、変形検出信号と言う。)を受け付けることができない。例えば、OSとしてWindows(登録商標)を搭載したホスト装置では、タッチ式入力装置から上記位置検出信号しか受け付けることができず、変形検出信号を受け付けることができない。
【0007】
このようなOSを搭載したホスト装置に対して変形検出信号を受け付けさせるためには、例えば当該変形検出信号を受け付けて処理することが可能である特殊なソフトウェア(ドライバ)を追加することが考えられる。しかし、このような特殊なドライバを開発するには時間および費用が多大に必要となる。また、このような特殊なドライバを追加することが認められていないOSもある。ドライバの追加が認められていないOSを搭載したホスト装置では、変形検出信号を受け付けることができない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、変形検出信号を受け付けることができないホスト装置に対して、当該変形検出信号を受け付けさせることができるタッチ式入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のタッチ式入力装置は、操作面と、前記操作面に対するタッチ操作および当該タッチ操作がなされた位置を検出し、検出した位置に対応する位置検出信号を出力するタッチセンサと、を備えている。そして、タッチ式入力装置は、該タッチ式入力装置に対する変形操作を検出する変形検出センサと、前記変形検出センサが検出した前記変形操作に対応する変形検出信号を、前記位置検出信号に変換して出力する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
このように、本発明のタッチ式入力装置は、変形検出信号を位置検出信号に変換して出力するため、位置検出信号しか受け付けることができないホスト装置に対して変形検出信号を受け付けさせることができる。例えば、タッチ操作を受け付けた時に撮影を行うアプリケーションソフトウェアを実行するホスト装置において、例えば曲げ操作の変形検出信号をタッチ操作の位置検出信号に変換して出力すれば、曲げ操作の変形検出信号を受け付けることができないホスト装置であっても、曲げ操作によって撮影の指示を行うことができる。
【0011】
また、本発明のタッチ式入力装置の制御部は、前記変形検出信号を、タッチ位置を変化させる操作に対応する位置検出信号に変換して出力することも可能である。
【0012】
例えば、タッチパネルをタッチ操作しながら横方向に移動させるスワイプ操作を受け付け、当該スワイプ操作を受け付けたときに表示画像を変更する処理を実行するホスト装置において、ねじり操作の変形検出信号をスワイプ操作の位置検出信号に変換して出力すれば、ねじり操作の変形検出信号を受け付けることができないホスト装置であっても、ねじり操作によって画像を変更する処理を実行させることができる。例えば、タブレット型PCのように両手で筐体を把持するホスト装置においては、画像の変更を行いたい場合に、いずれかの手を筐体から一旦離して指でスワイプ操作を行う必要があったが、本発明のタッチ式入力装置を適用することで、両手で把持したままねじり操作を行うことにより、画像の変更を行うことができる。
【0013】
また、本発明のタッチ式入力装置の制御部は、前記変形検出信号を、複数のタッチ位置間の距離を変化させる操作であるピンチ操作に対応する位置検出信号に変換して出力することも可能である。
【0014】
例えば、ピンチ操作により画像の拡大または縮小の処理を実行するホスト装置において、押圧操作の変形検出信号をピンチ操作の位置検出信号に変換して出力すれば、押圧操作の変形検出信号を受け付けることができないホスト装置であっても、押圧操作によって画像の拡大または縮小の処理を実行させることができる。例えば、ホスト装置がスマートフォンである場合、利用者は、いずれか一方の手で筐体を把持しながら他方の手でピンチ操作を行う必要があり、片手で筐体を把持しながらピンチ操作を行うことは困難である。しかし、本発明のタッチ式入力装置では、押圧操作がピンチ操作に変換されるため、筐体を把持した手の親指で押圧操作を行うだけで、ピンチ操作と同じ操作を実現することができる。
【0015】
また、本発明のタッチ式入力装置の制御部は、前記変形検出信号を検出した後、前記タッチセンサでタッチ位置を変化させる操作に対応する位置検出信号の出力があった場合に、前記変形検出信号を、複数のタッチ位置間の距離を変化させる操作であるピンチ操作に対応する位置検出信号に変換して出力することも可能である。
【0016】
この場合、利用者は、押圧操作を行ったまま、所定の方向に指をずらすと拡大または縮小の処理が実行されることになる。例えば、押圧操作を行ったまま上方向に指をずらす操作を検出した場合にピンチアウトの位置検出信号を出力し、下方向に指をずらす操作を検出した場合にピンチインの位置検出信号を出力すれば、利用者は、押圧操作を行ったまま上方向に指をずらせば拡大、下方向に指をずらせば縮小の指示を行うことができる。
【0017】
なお、前記変形検出センサは、変形量をさらに検出し、前記制御部は、前記変形検出センサが検出した前記変形量に応じて、前記ピンチ操作における距離の変化量を制御する態様とすることも可能であるし、前記制御部は、前記変形検出信号の検出時間の長さに応じて、前記ピンチ操作における距離の変化量を制御する態様とすることも可能である。
【0018】
なお、変形検出センサは、操作面に対する変形操作を検出する態様とすることも可能であるし、筐体に対する変形操作を検出する態様とすることも可能である。
【0019】
また、変形検出センサは、キラル高分子からなる圧電フィルムを備えていることが好ましい。キラル高分子からなる圧電フィルムを備えることで、透明性の高い押圧センサとすることができる。また、キラル高分子は、ポリ乳酸であることがより好ましい。ポリ乳酸は、延伸等による分子の配向処理で圧電性が生じるため、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。また、ポリ乳酸は、焦電性がないため、操作面に近い位置に変形検出センサを配置することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、変形検出信号を受け付けることができない装置に対して、当該変形検出信号を受け付けさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】表示装置の外観斜視図である。
図2】表示装置の側面断面図である。
図3】静電容量センサおよび押圧検出センサの平面図である。
図4】表示装置のブロック図である。
図5】変形検出信号を位置検出信号に変換する概念を示した図である。
図6】制御部の動作を示したフローチャートである。
図7】応用例1に係る制御部の動作を示したフローチャートである。
図8】応用例2に係る制御部の動作を示したフローチャートである。
図9】応用例3に係る表示装置の側面断面図である。
図10】応用例3に係る制御部の動作を示したフローチャートである。
図11図11(A)は、タッチ式入力装置をタッチパッドとした場合の外観斜視図を示す図であり、図11(B)は、タッチ式入力装置を外付タッチパッドとした場合の外観斜視図を示す図である。
図12】曲げ操作またはねじり操作を検出する表示装置の側面断面図である。
図13】表示装置1Bの構成を示すブロック図である。
図14図14(A)は変位センサ10Cの平面図であり、図14(B)は側面図であり、図14(C)は裏面図である。
図15図15(A)は曲げ変位が0の状態での変位センサ10Cの概略側面形状を示す図であり、図15(B)は所定の曲げ変位が生じた状態での変位センサ10Cの概略側面形状を示す図である。
図16図16(A)は、変位センサ10Cの概略斜視形状を示す図であり、図16(B)は所定のねじれ変位が生じた状態での変位センサ10Cの概略斜視形状を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明のタッチ式入力装置を備えた表示装置について説明する。
【0023】
図1の外観斜視図に示すように、表示装置1は、外観上、直方体形状の筐体50と、筐体50の上面の開口部に配置された平面状のパネル40と、を備えている。パネル40は、利用者が指やペン等を用いてタッチ操作を行う操作面として機能する。
【0024】
なお、本実施形態では、筐体50の幅方向(横方向)をX方向とし、長さ方向(縦方向)をY方向とし、厚み方向をZ方向とする。
【0025】
図2に示すように、筐体50の内部には、静電容量センサ11D、押圧センサ11P、表示部30、および制御回路モジュール52が配置されている。パネル40、静電容量センサ11D、および押圧センサ11Pによりタッチ式入力装置45が構成されている。
【0026】
各構成部は、筐体50の開口部(パネル40)側から順にZ方向に沿って、静電容量センサ11D、押圧センサ11P、表示部30、および制御回路モジュール52の順で配置される。静電容量センサ11D、押圧センサ11P、および表示部30は、平板状であり、それぞれ筐体50の開口部(パネル40)と平行になるように、筐体50の内部に配置されている。
【0027】
筐体50の底面と表示部30との間には、回路基板(不図示)が配置されており、当該回路基板に制御回路モジュール52が実装されている。制御回路モジュール52は、図4に示す制御部20、処理部22、およびプログラム記憶部23を実現するモジュールである。
【0028】
制御部20には、静電容量センサ11D、押圧センサ11P、および処理部22が接続される。処理部22には、制御部20、プログラム記憶部23、および表示部30が接続される。
【0029】
表示装置1は、タッチ式入力装置45およびホスト装置47からなり、静電容量センサ11D、押圧センサ11P、および制御部20は、タッチ式入力装置45を構成する。処理部22、プログラム記憶部23、および表示部30は、ホスト装置47を構成する。なお、この例では、タッチ式入力装置45の制御部20と、ホスト装置47の処理部22およびプログラム記憶部23と、が同じ制御回路モジュール52により実現されている例を示しているが、異なる制御回路モジュールにより実現される態様であってもよい。
【0030】
静電容量センサ11Dは、本発明のタッチセンサに相当し、操作面であるパネル40に対するタッチ操作の位置に応じた位置検出信号Dsdを出力する。制御部20は、静電容量センサ11Dから出力された位置検出信号Dsdをそのまま処理部22に出力する。
【0031】
処理部22は、CPUを含み、ホスト装置47を統括的に制御する。すなわち、処理部22は、プログラム記憶部23に記憶されている動作用プログラムを読み出して各種処理を行う。例えば、処理部22は、表示部30を制御して画像を表示させるとともに、制御部20から入力された位置検出信号に応じて操作入力内容を決定し、表示されている画像を変更する。
【0032】
押圧センサ11Pは、操作面であるパネル40に対する押圧操作に応じた変形検出信号Dspを出力する。制御部20は、押圧センサ11Pから出力された変形検出信号Dspを位置検出信号Dsdに変換して処理部22に出力する。例えば、制御部20は、所定レベル以上の変形検出信号Dspが入力されたとき、複数のタッチ位置間の距離を変化させる操作であるピンチ操作に対応する位置検出信号Dsdに変換して出力する。これにより、処理部22は、入力されたピンチ操作に対応する位置検出信号に応じて、例えば表示されている画像の拡大処理を行う。
【0033】
表示部30は、例えば液晶表示素子からなる。この例では、表示部30は、液晶パネル301、表面偏光板302、裏面偏光板303、およびバックライト304を備えている。
【0034】
表面偏光板302および裏面偏光板303は、液晶パネル301を挟むように配置されている。バックライト304は、裏面偏光板303を挟んで、液晶パネル301と反対側に配置されている。
【0035】
バックライト304から出力された光は、裏面偏光板303で偏光され、液晶パネル301を経て表面偏光板302に達する。液晶パネル301は、制御部20の制御に応じて画素毎に偏光状態を変化させ、表面偏光板302を通過する光量を変化させる。表面偏光板302から出力された光は、押圧センサ11Pおよび静電容量センサ11Dを経てパネル40に出力される。これにより、パネル40に各種画像が表示される。
【0036】
静電容量センサ11Dは、平板状の絶縁性基板11D1、複数の静電容量検出用電極11D2、および複数の静電容量検出用電極11D3を備えている。絶縁性基板11D1は、透明性を有する材料からなり、例えばPETやCOP(シクロオレフィンポリマー)等からなるフィルム、PCやPMMA(アクリル樹脂)等からなるシートやプレート、或いは0.1mm〜0.7mm程度の薄いガラスからなる。
【0037】
絶縁性基板11D1の一方の主面には、複数の静電容量検出用電極11D2が形成されている。図3(A)に示すように、複数の静電容量検出用電極11D2は、平面視して一方向に長い長方形状であり、長尺方向がY方向に平行になるように配置されている。このような複数の静電容量検出用電極11D2は、X方向に沿って所定の間隔で配置されている。
【0038】
また、絶縁性基板11D1の他方の主面には、複数の静電容量検出用電極11D3が形成されている。図3(A)に示すように、複数の静電容量検出用電極11D3も、平面視して一方向に長い長方形状である。複数の静電容量検出用電極11D3は、長尺方向がX方向に平行になるように配置されている。このような複数の静電容量検出用電極11D3は、Y方向に沿って所定の間隔で配置されている。
【0039】
複数の静電容量検出用電極11D2および複数の静電容量検出用電極11D3は、全て透明性を有する材料からなり、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、ポリチオフェンを主成分とする材料を用いる。
【0040】
静電容量センサ11Dは、利用者の指が近接したり、接触したりした際に生じる静電容量の変化を、静電容量検出用電極11D2および静電容量検出用電極11D3で検出し、この検出に基づく位置検出信号Dsdを制御部20へ出力する。
【0041】
なお、静電容量検出用11D2および静電容量電極11D3の配置態様は、この例に限るものではない。
【0042】
押圧センサ11Pは、平膜状の圧電フィルム11P1を備える。圧電フィルム11P1の一方の主面には、押圧検出電極11P2が形成され、他方の主面には、押圧検出電極11P3が形成されている。図3(B)に示すように、押圧検出電極11P2および押圧検出電極11P3は、圧電フィルム11P1の主面の略全面に形成されている。
【0043】
押圧検出電極11P2および押圧検出電極11P3は、全て透明性を有する材料からなり、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、ポリチオフェンを主成分とする材料を用いる。
【0044】
圧電フィルム11P1は、利用者がパネル40を押圧することで法線方向に撓み、電荷を発生する。これにより、押圧操作に対応した変形検出信号Dspが制御部20に出力される。
【0045】
このような圧電フィルム11P1には、透明性の高いキラル高分子を用いることが好ましい。より好ましくは、一軸延伸されたポリ乳酸(PLA)、さらにはL型ポリ乳酸(PLLA)であることが好ましい。キラル高分子は、主鎖が螺旋構造を有し、一軸延伸されて分子が配向すると、圧電性を有する。そして、一軸延伸されたキラル高分子が発生する電荷量は、パネル40が法線方向へ変位する変位量によって一意的に決定される。
【0046】
一軸延伸されたPLLAの圧電定数は、高分子中で非常に高い部類に属する。すなわち、押圧操作を高感度に検出し、押圧量に応じた変形検出信号を高精度に出力することができる。
【0047】
また、キラル高分子は、延伸等による分子の配向処理で圧電性が生じるため、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。このため、PLLAの圧電定数は経時的に変動することがなく、極めて安定している。さらに、ポリ乳酸は、焦電性がないため、操作面に近い位置に押圧センサを配置し、利用者の指等の熱が伝わる場合であっても、検出される電荷量が変化することがない。本実施形態では、図3(B)に示すように、圧電フィルム11P1は、X方向およびY方向に対して、一軸延伸方向900が略45°の角度を成すように配置されている。このような配置を行うことで、より高感度に押圧操作を検出できる。
【0048】
なお、延伸倍率は3〜8倍程度が好適である。延伸後に熱処理を施すことにより、ポリ乳酸の延びきり鎖結晶の結晶化が促進され圧電定数が向上する。また、二軸延伸した場合はそれぞれの軸の延伸倍率を異ならせることによって一軸延伸と同様の効果を得ることが出来る。例えば、ある方向をX軸としてX軸方向に8倍、X軸に直交するY軸方向に2倍の延伸を施した場合、圧電定数に関してはおよそX軸方向に4倍の一軸延伸を施した場合とほぼ同等の効果が得られる。単純に一軸延伸したフィルムは延伸軸方向に沿って裂け易いため、前述したような二軸延伸を行うことにより幾分強度を増すことができる。
【0049】
なお、押圧センサとしては、本実施形態に示すような圧電センサに限るものではないが、圧電センサであれば、パネル40に対するわずかな押圧も検出することができる。なお、圧電フィルム11P1についても、PLLAを用いる態様に限るものではなく、PVDF等の透明性の低い材料を用いることが可能である。透明性の低い材料を用いる場合には、バックライト304よりも下面側に押圧センサ11Pを配置する。この場合、押圧検出電極11P2および押圧検出電極11P3には銀ペーストにより形成された電極や、蒸着やスパッタ、あるいはメッキなどにより形成された金属系の導体を用いることもできる。
【0050】
ここで、制御部20は、押圧センサ11Pから入力された変形検出信号Dspを位置検出信号Dsdに変換して処理部22に出力する。図5は、変形検出信号Dspを位置検出信号Dsdに変換する概念を示した図であり、図6は、制御部20の動作を示すフローチャートである。
【0051】
図6において、制御部20は、まず静電容量センサ11Dから位置検出信号Dsdを取得する(S101)。制御部20は、位置検出信号Dsdのレベルが閾値THSd以下であると判断した場合(S102:NO)、S101の処理を繰り返す。制御部20は、位置検出信号Dsdのレベルが閾値THSdを超えたと判断した場合に(S102:YES)、タッチ操作およびその位置を検出する(S103)。図5(A)に示すように、利用者がパネル40に指を近接させたり、接触させたりすると、タッチ操作がなされた位置(X1,Y1)が検出される。
【0052】
次に、制御部20は、押圧センサ11Pから変形検出信号Dsp取得する(S104)。制御部20は、変形検出信号Dspのレベルが閾値THsp以下であると判断した場合(S105:NO)、静電容量センサ11Dから入力された位置検出信号Dsdを処理部22に出力する(S106)。すなわち、制御部20は、検出された位置(X1,Y1)においてタッチ操作がなされたものとして、位置(X1,Y1)を示す位置検出信号Dsdを処理部22に出力する。
【0053】
一方、制御部20は、変形検出信号Dspのレベルが閾値THspを超えたと判断した場合(S105:YES)、ピンチ操作に対応する位置検出信号Dsdを処理部22に出力する(S107)。ピンチ操作とは、複数のタッチ位置間の距離を変化させる操作である。
【0054】
ここでは、制御部20は、図5(B)に示すように、S103で検出した位置(X1,Y1)と、当該位置(x1,Y1)とは別の位置(X2,Y2)で仮想的にタッチ操作がなされたものとして、当該位置(X1,Y1)を中心として、2つのタッチ位置(X1,Y1)および(X2,Y2)が互いに離間していくような位置検出信号Dsdを処理部22に出力する。このように、制御部20は、ピンチアウト操作に対応する位置検出信号Dsdを処理部22に出力する。
【0055】
なお、仮想的なタッチ操作がなされた位置(X2,Y2)は、どの位置であってもよいし、離間方向はどの方向であってもよい。ピンチアウト操作に対応する位置検出信号Dsdは、閾値THspを超える変形検出信号Dspが入力されている期間中、続けて出力される。これにより、利用者が押圧操作を続けている間は、ピンチアウト操作に対応する位置検出信号Dsdが出力され続ける。なお、制御部20は、変形検出信号Dspのレベル(パネル40の法線方向の変位量Z1)に応じて距離の変化量を制御してもよい。例えば、制御部20は、変形検出信号Dspのレベル(パネル40の法線方向の変位量Z1)変化に比例して、2つのタッチ位置の距離を変化させる。また、制御部20は、変形検出信号Dspのレベル(パネル40の法線方向の変位量Z1)変化に比例して、2つのタッチ位置の変化速度を制御させる。
【0056】
そして、処理部22は、ピンチアウト操作を受け付け、ピンチアウト操作に応じた処理を実行する。例えば、処理部22がピンチアウト操作を受け付けたときに表示部30に表示している画像の拡大の処理を実行する場合、利用者がパネル40に対して押圧操作を行うと、画像の拡大の処理を実行されることになる。利用者がパネル40に対して押圧操作を続けている間は、ピンチアウト操作に対応する位置検出信号Dsdが続けて出力されるため、拡大処理が続けてなされる。この場合、ホスト装置47としては、押圧操作の変形検出信号Dspを受け付けて、当該押圧操作の変形検出信号Dspに応じて画像の拡大の処理を実行したことと等価となる。
【0057】
なお、制御部20は、図6のS107の処理において、ピンチアウト操作ではなく、ピンチイン操作に対応する位置検出信号Dsdを処理部22に出力する態様としてもよい。この場合、制御部20は、最初に検出した位置(X1,Y1)と、当該位置(X1,Y1)とは別の位置(X2,Y2)で仮想的にタッチ操作がなされたものとして、当該位置(X1,Y1)を中心として、2つのタッチ位置(X1,Y1)および(X2,Y2)が互いに近づくような位置検出信号Dsdを処理部22に出力する。
【0058】
この場合も、仮想的なタッチ操作がなされた位置(X2,Y2)は、どの位置であってもよいし、近づく方向はどの方向であってもよい。また、ピンチイン操作に対応する位置検出信号Dsdは、閾値THspを超える変形検出信号Dspが入力されている期間中、続けて出力される。また、制御部20は、変形検出信号Dspのレベル(パネル40の法線方向の変位量Z1)に応じて距離の変化量を制御してもよい。
【0059】
この場合、処理部22は、ピンチイン操作を受け付け、ピンチイン操作に応じた処理を実行する。例えば、処理部22がピンチイン操作を受け付けたときに表示部30に表示している画像の縮小の処理を実行する場合、利用者がパネル40に対して押圧操作を行うと、画像の縮小の処理を実行されることになる。利用者がパネル40に対して押圧操作を続けている間は、ピンチイン操作に対応する位置検出信号Dsdが続けて出力されるため、縮小処理が続けてなされる。この場合、ホスト装置47としては、押圧操作の変形検出信号Dspを受け付けて、当該押圧操作の変形検出信号Dspに応じて画像の縮小の処理を実行したことと等価となる。
【0060】
このように、タッチ式入力装置45は、押圧操作の変形検出信号Dspをピンチ操作の位置検出信号Dsdに変換して出力するため、ホスト装置47側に変形検出信号Dspを受け付けて処理することが可能である特殊なソフトウェア(ドライバ)を追加する必要はなく、当該変形検出信号Dspを受け付けて処理させることが可能になる。したがって、ホスト装置47のOSが、特殊なドライバの追加が認められていないOSを搭載している場合であっても、当該変形検出信号Dspを受け付けて処理させることが可能になる。
【0061】
また、利用者は、いずれか一方の手で筐体50を把持しながら他方の手でパネル40に対してピンチ操作を行うことも可能であるし、筐体50を把持した手の親指でパネル40に対して押圧操作を行うだけで、ピンチ操作と同じ操作を実現することができる。
【0062】
例えば、表示装置1がスマートフォンである場合、従来の装置では、利用者は、いずれか一方の手で筐体50を把持しながら他方の手でピンチ操作を行う必要がある。すわなち、片手で筐体50を把持しながらピンチ操作を行うことは困難である。しかし、本発明のタッチ式入力装置を適用することで、押圧操作がピンチ操作に変換されるため、利用者は、筐体50を把持した手の親指で押圧操作を行うだけで、ピンチ操作と同じ操作を実現することができる。
【0063】
なお、仮想的なタッチ操作がなされた位置(X2,Y2)は、以下のように設定してもよい。すなわち、制御部20は、変形検出信号Dspのレベルが閾値THspを超えたと判断した場合(S105:YES)、最初に検出した位置(X1,Y1)の近傍の(例えば5mm程度離れた)位置(X2,Y2)で仮想的にタッチ操作がなされたものとして、当該位置(X1,Y1)を中心として、2つのタッチ位置(X1,Y1)および(X2,Y2)が互いに離間していく(または近づく)ような位置検出信号Dsdをごく短時間(例えば50ms)だけ処理部22に出力する。そして、制御部20は、閾値THspを超える変形検出信号Dspが続けて入力されている場合に、再び最初に検出した位置(X1,Y1)の近傍(例えば5mm程度離れた)位置(X2,Y2)で仮想的にタッチ操作がなされたものとして、当該位置(X1,Y1)を中心として、2つのタッチ位置(X1,Y1)および(X2,Y2)が互いに離間していく(または近づく)ような位置検出信号Dsdをごく短時間(例えば50ms)だけ処理部22に出力する。制御部20は、閾値THspを超える変形検出信号Dspが続けて入力されている期間中、繰り返しこのような信号を出力する。
【0064】
例えば処理部22がピンチ操作を要求しないアプリケーションソフトを実行している場合に、ピンチ操作に対応する位置検出信号Dsdが入力されると、タッチパネルをタッチ操作しながら縦方向または横方向に移動させるスワイプ操作として受け付け、画像のスクロール処理を行う場合がある。ここで、利用者がパネル40を強くタップすると、押圧操作が検出されて、ピンチ操作に対応する位置検出信号Dsdが入力され、意図せずに画像がスクロールしてしまう場合がある。しかし、上述の例では、制御部20は、最初に検出した位置(X1,Y1)の近傍で微少な距離だけごく短時間のピンチ操作を行ったものと同様の信号を出力するため、パネル40を強くタップしただけでは画像がスクロールすることがない。一方で、処理部22がピンチ操作を要求する(例えば画像の拡大または縮小を行う)アプリケーションソフトを実行している場合に利用者が実際に押圧操作を行うと、ピンチ操作を行ったものと同様の信号が繰り返し出力されるため、拡大または縮小の処理が実行されることになる。
【0065】
次に、図7は、応用例1に係る制御部20の動作を示すフローチャートである。図6と共通する処理については同一の符号を付し、説明を省略する。応用例1に係る制御部20は、拡大モードと縮小モードとのいずれかを実行し、拡大モードの実行中には、押圧操作の変形検出信号Dspをピンチアウト操作に対応する位置検出信号Dsdとして処理部22に出力し、縮小モードの実行中には、押圧操作の変形検出信号Dspをピンチイン操作に対応する位置検出信号Dsdとして処理部22に出力する。
【0066】
この場合、制御部20は、変形検出信号Dspのレベルが閾値THspを超えたと判断した場合(S105:YES)、現在のモードが拡大モードであるか否かを判断する(S201)。制御部20は、拡大モードの実行中であると判断した場合には(S201:YES)、ピンチアウト操作に対応する位置検出信号Dsdを処理部22に出力する(S202)。一方、制御部20は、拡大モードの実行中ではない、すなわち縮小モードの実行中であると判断した場合には(S201:NO)、ピンチイン操作に対応する位置検出信号Dsdを処理部22に出力する(S203)。
【0067】
拡大モードと縮小モードとの切り替えは、例えば静電容量センサ11Dから所定時間(例えば1秒)以内に所定回数(例えば3回)のタッチ操作に対応する位置検出信号Dsdが入力された場合に行う。
【0068】
次に、図8は、応用例2に係る制御部20の動作を示すフローチャートである。図6と共通する処理については同一の符号を付し、説明を省略する。応用例1に係る制御部20は、変形検出信号Dspのレベルが閾値THspを超えたと判断した場合(S105:YES)、最初に検出した位置(X1,Y1)からタッチ位置が変化したか否かを判断する(S301)。制御部20は、タッチ位置が変化しない場合、すなわち、利用者が押圧操作を行っただけである場合には、S101から処理を繰り返す。一方で、制御部20は、タッチ位置が変化した場合、すなわち、利用者が押圧操作を行いながら指をいずれかの方向に移動させた場合、さらにその移動方向が上方向であるか否かを判断する(S302)。ここで言う上方向とは、パネル40のY方向であり、上記位置(X1,Y1)のY座標が正側に変化した場合に、上方向に移動したと判断する。そして、制御部20は、上方向に変化があったと判断した場合(S302:YES)、ピンチアウト操作に対応する位置検出信号Dsdを処理部22に出力する(S303)。一方、制御部20は、上方向に変化があったと判断した場合(S302:NO)、さらにその移動方向が下方向であるか否かを判断する(S304)。下方向とは、パネル40の−Y方向であり、上記位置(X1,Y1)のY座標が負側に変化した場合に、下方向に移動したと判断する。制御部20は、上方向にも下方向にも変化がない場合(S304:NO)、S101から処理を繰り返す。制御部20は、下方向に変化があったと判断した場合(S304:YES)、ピンチイン操作に対応する位置検出信号Dsdを処理部22に出力する(S305)。これにより、利用者は、直感的な操作で拡大または縮小の指示を行うことができる。
【0069】
次に、図9は、応用例3に係る表示装置1Aの側面断面図であり、図10は、応用例3に係る制御部20の動作を示すフローチャートである。図9においては、図2と共通する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。図10においては、図6と共通する処理については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0070】
応用例3に係る表示装置1Aでは、図9に示すように、筐体50の裏面側に、当該筐体50の裏面側への押圧操作を検出するための押圧センサ11P’がさらに設けられている。その他の構成は、表示装置1と同様である。ただし、制御部20は、パネル40側の押圧センサ11Pの出力する変形検出信号Dspと筐体50の裏面側の押圧センサ11P’の出力する変形検出信号Dspとをそれぞれ個別に入力する。制御部20は、図10に示すように、変形検出信号Dspのレベルが閾値THspを超えたと判断した場合(S105:YES)、パネル40側の押圧センサ11Pの出力する変形検出信号Dspが閾値THspを超えたか否か、すなわち、パネル40(表示部30)側に対する押圧操作がなされたか否かを判断する(S401)。制御部20は、パネル40(表示部30)側に対する押圧操作がなされたと判断した場合には(S401:YES)、ピンチアウト操作に対応する位置検出信号Dsdを処理部22に出力する(S402)。一方、制御部20は、パネル40(表示部30)側に対する押圧操作ではなく、筐体50の裏面側に対する押圧操作がなされたと判断した場合には(S401:NO)、ピンチイン操作に対応する位置検出信号Dsdを処理部22に出力する(S403)。この場合も、利用者は、直感的な操作で拡大または縮小の指示を行うことができる。
【0071】
なお、上述においては、タッチ式入力装置の例として、表示装置1に内蔵され、パネル40(表示部30)に対する押圧操作を検出する態様を示したが、図11(A)に示すように、パネル40とは別のタッチパッド451を設け、当該タッチパッド451に対する押圧操作を検出する態様としてもよい。また、図11(B)に示すように、外付けのタッチパッド452として、外付けのタッチパッド452に対する押圧操作を検出する態様も可能である。
【0072】
なお、上述の例では、変形操作として、押圧操作を検出する場合を示したが、曲げ操作またはねじり操作を検出することも可能である。図12は、曲げ操作またはねじり操作を検出する表示装置1Bの側面断面図であり、図13は、表示装置1Bの構成を示すブロック図である。図12においては、図2と共通する構成については同一の符号を付し、説明を省略する。図13においては、図4と共通する処理については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
表示装置1Bでは、図12に示すように、筐体50の裏面側に、当該筐体50に対する曲げ操作またはねじり操作を個別に検出することができる変位センサ10Cが設けられている。図13に示すように、制御部20は、変位センサ10Cから曲げ操作に対応する変形検出信号Dsbおよびねじり操作に対応する変形検出信号Dstを入力する。その他の構成は、表示装置1と同様である。なお、筐体50に対する曲げ操作またはねじり操作を検出するのではなく、パネル40側に変位センサ10Cを設けて、パネル40に対する曲げ操作またはねじり操作を検出することも可能である。
【0074】
図14(A)は、変位センサ10Cの平面図であり、図14(B)は側面図であり、図14(C)は裏面図である。
【0075】
変位センサ10Cは、弾性体300と、弾性体300の一方の主面に取り付けられた第1圧電素子35と、弾性体300の他方の主面に取り付けられた第2圧電素子36を備えている。第1圧電素子35は、矩形状の圧電性シート350を備えている。圧電性シート350は、上述したキラル高分子(特にPLLA)により構成されている。圧電性シート350は、一軸延伸方向と長手方向とが45°を成すように形成されている。圧電性シート350の両主面にはそれぞれ電極351および電極352が略全面に形成されている。
【0076】
第2圧電素子36は、矩形状の圧電性シート360を備える。圧電性シート360は、キラル高分子(特にPLLA)により構成されている。ただし、圧電性シート360は、一軸延伸方向と長手方向とが平行(成す角=0°)になるように形成されている。圧電性シート360の両主面にはそれぞれ電極361および電極362が略全面に形成されている。
【0077】
第1圧電素子35は、図15に示すように、曲げ操作を検出できる。図15(A)は曲げ変位が0の状態での変位センサ10Cの概略側面形状を示す図であり、図15(B)は所定の曲げ変位が生じた状態での変位センサ10Cの概略側面形状を示す図である。
【0078】
図15(A)に示すように、曲げ変位が0の場合、すなわち筐体50(変位センサ10C)に対して曲げを生じさせる力が外部から加わっていない場合、弾性体300は、主面が平坦な状態となる。この場合、第1圧電素子35および第2圧電素子36は伸縮せず、電圧が生じない。そして、曲げ変位が所定値の場合、すなわち変位センサ10Cに対して曲げを生じさせる力が外部から加わった場合、弾性体300は、図15(B)に示すように、主面の長手方向に沿って湾曲した状態となる。この場合、第1圧電素子35は、曲げ量に応じて長手方向に沿って伸びる。これにより、第1圧電素子35の電極351および電極352間に、伸張量に応じた電圧が発生する。変位センサ10Cは、この電圧を検出することで、第1圧電素子35の伸張、すなわち変位センサ10Cの曲げ操作およびその曲げ量を検出することができる。
【0079】
一方、図16(A)は、変位センサ10Cの概略斜視形状を示す図であり、図16(B)は所定のねじれ変位が生じた状態での変位センサ10Cの概略斜視形状を示している。ただし、図16(A)および図16(B)においては、説明のために第2圧電素子36のみを配置した例を示している。
【0080】
図16(A)に示すように、ねじれ変位が0の場合、すなわち筐体50(変位センサ10C)に対してねじれを生じさせる力が外部から加わっていない場合、弾性体300は、主面が平坦な状態となる。この場合、第2圧電素子36は伸縮せず、第2圧電素子36の両面の電極間に電圧が生じない。そして、ねじれ変位が所定値の場合、すなわち弾性体300に対してねじれを生じさせる力が外部から加わって弾性体300がねじれる場合、弾性体300は、図16(B)に示すように、固定角部Aおよび固定角部Bに対向する角部Cおよび角部Dが平坦状態と比較して、法線方向へ所定距離離間した状態となる。この際、角部Cおよび角部Dは、主面を基準として、互いに逆方向へ移動する。
【0081】
この場合、第2圧電素子36は、角部Dおよびその付近においては一軸延伸方向に対して+45°の方向へ伸張し、角部Cおよびその付近においては一軸延伸方向に対して−45°の方向へ収縮する。したがって、第2圧電素子36を構成する圧電性シート360の一軸延伸方向に対して−45°および+45°の方向に沿って収縮または伸張(図16(B)の実線太矢印記号参照)が発生するので、この収縮または伸張の量に応じた電圧が、第2圧電素子36を構成する電極361および電極362間に発生する。変位センサ10Cは、この電圧を検出することで、ねじれ操作およびそのねじれ量を検出することができる。
【0082】
なお、この構成においては、角部Cと角部Dとが互いに逆方向へ等量変位するため、図15に示したような曲げ操作に応じて発生した電圧は相殺され、曲げ操作によって変形検出信号Dstが出力されることはない。また、逆に、第1圧電素子35の圧電性シート350は、一軸延伸方向と長手方向とが45°になるように形成されているため、ねじり操作によって変形検出信号Dsbが出力されることはない。したがって、変位センサ10Cは、曲げ操作および捩り操作を個別に、高精度に検出することができる。
【0083】
そして、制御部20は、変位センサ10Cから出力される曲げ操作に対応する変形検出信号Dsbおよびねじり操作に対応する変形検出信号Dstをそれぞれ位置検出信号Dsdに変換して処理部22に出力する。例えば、制御部20は、曲げ操作の変形検出信号Dsbをタッチ操作の位置検出信号Dsdに変換して出力する。この場合、例えば、処理部22がタッチ操作を受け付けた時に撮影を行うアプリケーションソフトウェアを実行していれば、利用者は、曲げ操作によって撮影の指示を行うことができる。この場合も、ホスト装置47側は、特殊なドライバを追加する必要なく、曲げ操作による撮影の指示を受け付けることができる。
【0084】
また、例えば、処理部22がタッチ操作しながら横方向に移動させるスワイプ操作を受け付け、当該スワイプ操作を受け付けたときに表示部30の画像を変更するアプリケーションソフトウェアを実行する場合において、制御部20が、ねじり操作の変形検出信号Dstをスワイプ操作の位置検出信号Dsdに変換して出力する。すると、利用者は、ねじり操作によって画像を変更する指示を行うことができる。この場合も、ホスト装置47側は、特殊なドライバを追加することなく、ねじり操作による画像変更の指示を受け付けることができる。例えば、タブレット型PCのように両手で筐体を把持する装置においては、画像の変更を行いたい場合に、いずれかの手を筐体から一旦離して指でスワイプ操作を行う必要があったが、本発明のタッチ式入力装置を適用することで、装置側に特殊なドライバを追加することなく、両手で把持したままのねじり操作によって画像変更の処理を実行させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1…表示装置
11D…静電容量センサ
11P…押圧センサ
20…制御部
22…処理部
23…プログラム記憶部
30…表示部
40…パネル
45…タッチ式入力装置
47…ホスト装置
50…筐体
52…制御回路モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16