(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796713
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】セラミックハニカム構造体の表皮被覆
(51)【国際特許分類】
C04B 41/85 20060101AFI20151001BHJP
B01J 33/00 20060101ALI20151001BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
C04B41/85 D
B01J33/00 Z
B01J37/04
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-542113(P2011-542113)
(86)(22)【出願日】2009年12月8日
(65)【公表番号】特表2012-512128(P2012-512128A)
(43)【公表日】2012年5月31日
(86)【国際出願番号】US2009006427
(87)【国際公開番号】WO2010074711
(87)【国際公開日】20100701
【審査請求日】2012年12月7日
(31)【優先権主張番号】61/122,583
(32)【優先日】2008年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500421462
【氏名又は名称】ユニフラックス ワン リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100117352
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 裕子
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド ジョセフ エイ
(72)【発明者】
【氏名】ミラー ケネス ビー
【審査官】
延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0216466(US,A1)
【文献】
特開平01−286958(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/125667(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/116665(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0101747(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/80−41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性セラミック繊維または生体内溶解性無機繊維、
粘度調節剤、
コロイド状無機酸化物、並びに
E−ガラス繊維を含む第2の無機繊維、又は
E−ガラス繊維を含む第2の無機繊維及び無機結合剤、又は
E−ガラス繊維を含む第2の無機繊維及び無機微粒子
を含む、多孔性セラミック基体用表皮被覆材料。
【請求項2】
耐火性セラミック繊維または生体内溶解性無機繊維が、アルミノケイ酸塩繊維、アルカリ土類ケイ酸塩繊維、ケイ酸マグネシウム繊維、ケイ酸カルシウムマグネシウム繊維またはアルミン酸カルシウム繊維の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の表皮被覆材料。
【請求項3】
前記無機微粒子が、アルミナ、コーディエライト、ムライト、チタニア、チタン酸アルミニウム、または炭化ケイ素の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の表皮被覆材料。
【請求項4】
無機結合剤が、未仮焼クレイまたは仮焼クレイを含む、請求項1に記載の表皮被覆材料。
【請求項5】
粘度調節剤が、アルキルセルロースポリマー、ポリアルキレンオキシド、多糖、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、又はこれらの混合物の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の表皮被覆材料。
【請求項6】
コロイド状無機酸化物が、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、コロイド状ジルコニア、またはこれらの混合物の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の表皮被覆材料。
【請求項7】
前記第2の無機繊維が、ガラス繊維、溶脱型シリカ繊維、高アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミノケイ酸マグネシウム繊維、S−2繊維、バサルト繊維、または微細直径アルミナ−ケイ酸塩繊維の少なくとも1種を更に含む、請求項1に記載の表皮被覆材料。
【請求項8】
耐火性セラミック繊維または生体内溶解性無機繊維、
粘度調節剤、
コロイド状無機酸化物、
無機結合剤、
無機微粒子、および
E−ガラス繊維を含む第2の無機繊維
を含む、多孔性セラミック基体用表皮被覆材料。
【請求項9】
有機結合剤繊維、有機結合剤、または樹脂の少なくとも1種をさらに含む、請求項1又は8に記載の表皮被覆材料。
【請求項10】
請求項8に記載の表皮被覆材料であって、
(i)前記粘度調節剤がメチルセルロースであり、前記コロイド状無機酸化物がコロイド状シリカであり、前記無機微粒子がコーディエライトであり、且つ該無機結合剤が仮焼されたカオリン、ベントナイトクレイ、またはボルクレイの少なくとも1種を含む、または
(ii)前記粘度調節剤がメチルセルロースであり、前記コロイド状無機酸化物がコロイド状シリカであり、前記無機微粒子が炭化ケイ素であり、且つ該無機結合剤がボルクレイを含む、
表皮被覆材料。
【請求項11】
耐火性セラミック繊維または生体内溶解性無機繊維、粘度調節剤、コロイド状無機酸化物、並びにE−ガラス繊維を含む第2の無機繊維、又はE−ガラス繊維を含む第2の無機繊維及び無機結合剤、又はE−ガラス繊維を含む第2の無機繊維及び無機微粒子、又はE−ガラス繊維を含む第2の無機繊維、無機結合剤及び無機微粒子の混合物を形成するステップを含む、多孔性セラミック基体の表皮被覆の製造方法。
【請求項12】
混合物を形成する前記ステップが、
セラミック繊維または生体内溶解性無機繊維、及び粘度調節剤の乾燥混合物を形成すること;
コロイド状無機酸化物と水との湿潤混合物を形成すること;および
乾燥混合物と湿潤混合物とを混合すること
を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
触媒コンバーターおよびディーゼル微粒子フィルター(DPF)として使用されるようなセラミックハニカム構造体は、種々の方法で製造される。一般に、ハニカム構造体は、押出しによって製造され、ハニカム構造体の壁で仕切られた多数の貫通孔または通路を生じる。各通路は、構造体の入口端または出口端のどちらかで封止され、構造体は高温度で焼成される。隣接した通路は交互に蓋をされ、市松模様を形成し、そのため、構造体の中を通る流体は、該構造体を通り抜ける前に、構造体の壁を通過することを余儀なくされる。この方式で、流体がハニカム構造体の壁を通過する際に、構造体を通過する流体を触媒と接触させること、あるいは流体中の粒子を濾過することができる。
【0002】
触媒コンバーター中でそれらのハニカム構造体と共に使用される触媒は、効率的な触媒作用速度を確保するため、高温かつ高多孔度のハニカム壁を必要とする。したがって、構造体は、始動したばかりのエンジンからの排気を効率的に浄化するために、急速に加熱され得ることが必須である。DPFは、排気がDPF、次いで独立の触媒コンバーターを通過する状況下で利用されるのが通常なので、DPFとして使用されるそれらの構造体は、排気がフィルターを通過する際の圧力損失の小さいことが要求される。
したがって、このようなハニカム構造体は、内燃機関に付随する極端な温度に抵抗できると同時に、小さな熱容量を有し、かつ構造体中での圧力損失を最小にすることが望ましい。これらの特性を達成するためには、高い多孔度および薄い壁厚が望ましい。しかし、高い多孔度および薄い壁厚は、製造中に種々の問題を引き起こす低い機械的強度をもたらす。
これらの問題を矯正する試みにおいて、現在のところ、構造体に高められた機械的強度、振動からの保護を付与し、かつ構造体を缶に納めた場合に、排気ガスが構造体とそのハウジングとの間を通過しないように該構造体を密閉する、セラミックのペーストまたはマット内にハニカム構造体を閉じ込めることが最新技術である。
また、多数のより小さいハニカム構造体を製造し、セラミック接着材料を使用してそれらを一緒に結合して単一構造体を作り出すことが提案されているが、それらの単一構造体も、やはり、外側表面の均一性を確保するため、構造体の外周での表皮被覆の使用を必要とする。これらの単一ハニカム構造体は、それら自体の質量をより効率的に支えることができ、いったんモノリスが焼成されると、接着材料は構造体に高められた機械的強度を付与する。
【0003】
モノリスがより小さなハニカム構造体から組み立てられるか、あるいは単一ユニットとして押し出されるかにかかわらず、構造体の外側は、焼成ステップの後に、構造体の形状における円形度および真の直径に関する厳しい仕様許容差に合致させ、かつ表皮被覆に付着する表面を作り出すための機械加工を必要とする。一部の例において、この機械加工は、部分的にむき出しのハニカムセルを生じさせ、これらのハニカムセルを、表皮被覆、通常、これらの例ではセラミックペーストによって充填する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミックペーストを含む表皮被覆は望ましい。なぜなら、それらの表皮皮膜をセラミックハニカム構造体と類似の材料から作って類似の熱容量をもたらすことができ、かつそれらを使用して構造体の形状を仕上げることができるからである。マットをペーストと共に使用して、使用中の構造体に対する振動損傷からのさらなる保護を提供することができる。望ましくは、ペーストは、亀裂形成、剥離形成、および酸性触媒物質の吸収による分解に耐える。以前に提案されたセラミックペーストのいずれも、これらの目標のすべてを十分には達成していない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】主題の表皮被覆配合物の例の未焼成密度を、市販セラミックペースト表皮被覆製品と比較してグラフで表した図である。
【
図2】主題の表皮被覆配合物例の粘度を、市販セラミックペースト表皮被覆製品と比較してグラフで表した図である。
【
図3】主題の表皮被覆例の種々の条件下での破断モジュラスを、市販セラミックペースト表皮被覆製品と比較してグラフで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明者らは、第2の繊維の添加が、セラミックハニカム構造体の製造において乾燥および焼成段階中での表皮被覆の亀裂形成を最小にすることができることを明らかにするに至った。これらの第2の繊維は、必ずしも耐高温繊維であることを必要とせず;高温に対してとりわけ耐性ではない繊維が、表皮被覆の乾燥および焼成段階中の亀裂形成を防ぐ上で極めて十分に機能する。用語「ハニカム構造体」は、触媒コンバーター、ディーゼル微粒子フィルター、選択的触媒還元ユニット、NO
xトラップなどの排ガス処理デバイス中で利用される任意の多孔性セラミック構造体を包含する。
さらに、本発明者らは、乾燥段階中に、非吸収性の硬く密な卵殻様表面が、本明細書に記載のような表皮被覆の表面上に生じることを明らかにした。理論によって限定されるものではないが、この表面は、乾燥段階中のシリカ種の移動によって形成されると考えられる。この表面は、酸性触媒の被覆が表皮被覆中に吸収されることを防止する。吸収を防止することは望ましい。なぜなら、前記のように、表皮被覆は、酸性触媒の被覆への暴露によって分解される可能性があるからである。吸収を防止することは、また、より少ない量の触媒被覆の使用を可能にし、総合的な生産コストを低減する。
殻が硬く、強固で、耐酸、耐アルカリ、耐剥離性があり、汚染抑制触媒が表皮被覆中に吸収されることに抵抗するセラミックハニカム構造体被覆を提供するセラミックハニカム構造体用表皮被覆、ならびに該セラミック構造体表皮被覆の製造方法が提供される。
【0007】
一実施形態において、多孔性セラミック(例えば、ハニカム)基体用のセラミック表皮被覆材料は、耐火性セラミック繊維または生体内溶解性無機繊維、粘度調節剤、コロイド状無機酸化物、任意選択で無機結合剤、任意選択で無機微粒子、および任意選択で第2の無機繊維を含む。
耐火性セラミック繊維または生体内溶解性繊維は、アルミノケイ酸塩繊維、アルカリ土類ケイ酸塩繊維、またはアルミン酸カルシウム繊維の少なくとも1種を含むことができる。耐火性セラミック繊維(RCF)は、限定はされないが、アルミノケイ酸塩繊維を含むことができる。アルカリ土類ケイ酸塩繊維は、限定はされないが、ケイ酸マグネシウム繊維、またはケイ酸カルシウムマグネシウム繊維を含むことができる。
これらの主たる繊維(RCFまたは生体内溶解性無機繊維)は、「そのまま」(製造されたまま)から実質上すべてのショットが除去された高指数の空気分級された繊維までにわたる種々のショット含有度で利用できる。特定の実施形態において、主たる繊維は、ボールミルで粉砕されてもよい。
【0008】
粘度調節剤としては、限定はされないが、メチルセルロース(MC)などのアルキルセルロースポリマーおよび/またはその誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース(HECMC)、またはカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース(CMHEC)など)、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。特定の実施形態において、粘度調節剤の粘度は、約20cps〜約2000cpsの範囲内にある。
粘度調節剤のその他の非限定的例には、ポリアルキレンオキシド、特定の多糖、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、
又はこれらの混合物が含まれる。ポリアルキレンオキシドとしては、限定はされないが、約100万〜約400万g/モルの範囲の分子量を有するポリエチレンオキシドを挙げることができる。適切な多糖の実例には、ウェランガム(welan gum)、ジュータンガム(diutan gum)、キサンタンガム、およびこれらの混合物が含まれる。ポリアクリル酸は、約500,000g/モルまたはそれ以上の分子量を有することができる。
【0009】
コロイド状無機酸化物は、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、コロイド状ジルコニア、またはこれらの混合物でよい。Nalco Chemical社から入手できるようなコロイド状シリカは、ナノメートルの大きさのシリカ粒子の水またはその他の液体媒体中の安定な分散液である。コロイド状シリカ粒子の大きさは、直径が約4〜約100ナノメートルの範囲でよい。コロイド状シリカは、ナトリウムまたはアンモニウムイオンなどを用いて安定化することができ、約2〜約12のpH範囲を有することができる。
【0010】
無機微粒子は、限定はされないが、アルミナ、コーディエライト(コーディエライトグロッグなど)、ムライト、チタニア、チタン酸アルミニウム、または炭化ケイ素の少なくとも1種を含むことができる。無機微粒子は、表皮被覆が塗布される予定のセラミックハニカム基体の熱膨張率と適合性のある熱膨張率を有する少なくとも1種の成分を含むように選択することができる。無機微粒子の粒子径は、約300μm以下、特定の実施形態では約100μm未満でよい。
【0011】
無機結合剤は、粘土を含むことができる。粘土は、仮焼されていても、されていなくてもよく、限定はされないが、アタパルジャイト、ボールクレイ(ball clay)、ベントナイト、ヘクトライト、カオリナイト、カイアナイト、モンモリロナイト、パリゴルスカイト、サポナイト、セピオライト、シリマナイト、またはこれらの組合せを挙げることができる。無機結合剤の粒子径は、約150μm以下、特定の実施形態では約45μ未満でよい。
【0012】
第2の無機繊維としては、限定はされないが、ガラス繊維、溶脱型シリカ繊維、高アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミノケイ酸マグネシウム繊維、S−2ガラス繊維、E−ガラス繊維、または微細(サブミクロン)直径のアルミナ−ケイ酸塩繊維(HSA)、およびこれらの混合物を挙げることができる。
第2の無機繊維に加えて、表皮被覆配合物中に任意選択で有機結合剤繊維を含めることができる。結合剤繊維の適切な例には、ポリビニルアルコール繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレンおよびポリプロピレンなど)、アクリル繊維、ポリエステル繊維、酢酸エチルビニル繊維、ナイロン繊維、およびこれらの組合せが含まれる。これらの繊維は、全組成物の質量を100質量%として0〜約10質量%の範囲の量で使用することができる。
【0013】
表皮被覆配合物中には、その他の有機結合剤または樹脂を任意選択で含めることができる。適切な有機結合剤または樹脂の例には、限定はされないが、アクリル、スチレン−ブタジエン、ビニルピリジン、アクリロニトリル、塩化ビニル、ポリウレタンなどの水をベースにしたラテックスが含まれる。シリコーンラテックスも適している。その他の樹脂としては、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、およびポリビニルエステル(ポリ酢酸ビニルまたはポリ酪酸ビニルラテックスなど)などの低温で可撓性のある熱硬化性樹脂が挙げられる。約10質量%までの有機結合剤または樹脂を採用できる。結合剤用の溶媒(必要なら)としては、水、または利用する結合剤に適したアセトンなどの有機溶媒を挙げることができる。溶媒中での結合剤の溶液濃度は(使用するなら)、所望される結合剤負荷量および結合剤系の加工性(粘度、固形分など)に基づいて通常の方法によって決定することができる。
耐火性セラミック繊維は、典型的には実質上、アルミナおよびシリカを含み、典型的には、約45〜約60質量%のアルミナ、および約40〜約55質量%のシリカを含む。RCF繊維の長さは、典型的には、約5mm未満であり、それらの平均繊維直径は、約0.5μm〜約10.5μmの範囲でよい。FIBERFRAX(登録商標)耐火性アルミノケイ酸塩セラミック繊維(RCF)は、ニューヨーク州ナイアガラフォールズ市のUnifrax ILLC社から入手できる。
【0014】
用語「生体内溶解性無機繊維」は、生理学的媒体中で、または模擬肺液、生理食塩水溶液、緩衝化生理食塩水溶液などの生理学的模擬媒体中で実質的に分解可能である繊維を指す。繊維の溶解性は、生理学的模擬媒体中で繊維の溶解度を時間の関数として測定することによって評価することができる。生体内溶解性は、また、試験動物における繊維の直接埋め込みの効果を観察することによって、または繊維に暴露されていた動物またはヒトの検査、すなわち生体内残留性によって見積もることができる。生理学的媒体中での繊維の生体内溶解性の測定法は、Unifrax ILLCに譲渡された米国特許第5874375号中に開示されている。
繊維の生体内溶解性を見積もるためのもう1つの手法は、繊維の組成に基づく。例えば、ドイツでは、吸入性無機酸化物繊維を組成指数(KI値)に基づいて分類している。KI値は、無機酸化物繊維中のアルカリおよびアルカリ土類酸化物の質量パーセントを合計すること、およびアルミニウム酸化物の質量パーセントの2倍を控除することによって計算される。生体内溶解性である無機繊維は、典型的には、約40以上のKI値を有する。
【0015】
限定するものではないが、本発明の表皮被覆材料を調製するのに使用できる生体内溶解性無機繊維の適切な例は、そのそれぞれが参照により本明細書中に組み込まれる、米国特許第6953757号、6030910号、6025288号、5874375号、5585312号、5332699号、5714421号、7259118号、7153796号、6861381号、5955389号、5928975号、5821183号、および5811360号中に開示されている。
【0016】
生体内溶解性アルカリ土類ケイ酸塩繊維は、一般にはケイ酸マグネシウムと呼ばれる、マグネシウム酸化物とシリカとの混合物の繊維化生成物を含むことができる。ケイ酸マグネシウム繊維は、一般に、約60〜約90質量%のシリカ、0を超え約35質量%までのマグネシア、および5質量%以下の不純物からなる繊維化生成物を含む。特定の実施形態によれば、アルカリ土類ケイ酸塩繊維は、約65〜約86質量%のシリカ、約14〜約35質量%のマグネシア、0〜約7質量%のジルコニア、および5質量%以下の不純物からなる繊維化生成物を含む。他の実施形態によれば、アルカリ土類ケイ酸塩繊維は、約70〜約86質量%のシリカ、約14〜約30質量%のマグネシア、および5質量%以下の不純物からなる繊維化生成物を含む。
【0017】
生体内溶解性無機繊維の実例には、限定はされないが、ニューヨーク州ナイアガラフォールズ市のUnifrax ILLCから入手できる、約0.6μm〜約2.6μmの平均直径を有するISOFRAX(登録商標)アルカリ土類ケイ酸塩繊維が含まれる。市販のISOFRAX(登録商標)繊維は、一般に、約70〜約80質量%のシリカ、約18〜約27質量%のマグネシア、および4質量%以下の不純物からなる繊維化生成物を含む。
代わりにまたは付加的に、生体内溶解性アルカリ土類ケイ酸塩繊維は、カルシウム、マグネシウムの酸化物とシリカとの混合物からなる繊維化生成物を含むことができる。これらの繊維は、一般に、カルシア−マグネシア−ケイ酸塩繊維と呼ばれる。カルシア−マグネシア−ケイ酸塩繊維は、一般に、約45〜約90質量%のシリカ、0を超え約40質量%までのカルシア、0を超え約35質量%までのマグネシア、および10質量%以下の不純物からなる繊維化生成物を含む。
【0018】
適切なカルシア−マグネシア−ケイ酸塩繊維は、ニューヨーク州ナイアガラフォールズ市のUnifrax ILLCからINSULFRAXの登録商標で市販されている。INSULFRAX(登録商標)繊維は、一般に、約61〜約67質量%のシリカ、約27〜約33質量%のカルシア、および約2〜約7質量%のマグネシアからなる繊維化生成物を含む。その他の市販のカルシア−マグネシア−ケイ酸塩繊維は、約60〜約70質量%のシリカ、約25〜約35質量%のカルシア、約4〜約7質量%のマグネシア、および任意選択で痕跡量のアルミナを含むか、あるいは約60〜約70質量%のシリカ、約16〜約22質量%のカルシア、約12〜約19質量%のマグネシア、および任意選択で痕跡量のアルミナを含む。
生体内溶解性アルミン酸カルシウム繊維は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5346868号、米国特許出願公開第2007/0020454号、および国際公開第2007/005836号中に開示されている。
【0019】
第2の繊維に関して、高アルミナまたはムライトセラミック繊維などのその他のアルミナ/シリカセラミック繊維を、ゲルゾル処理によって作製することができ、それらは、50%を超えるアルミナを含むのが通常である。一例が、ニューヨーク州ナイアガラフォールズ市のUnifrax ILLCから入手できるFIBERMAX(登録商標)繊維である。S2−GLASSなどのマグネシア/アルミナ/ケイ酸塩繊維は、オハイオ州トリード市のOwens Corning社から市販されている。S2−GLASS繊維は、典型的には、約64〜約66%のシリカ、約24〜約25%のアルミナ、および約9〜約10%のマグネシアを含む。
溶脱型シリカ繊維は、任意の方式で、かつ当技術分野で既知の任意の技術を使用して溶脱することができる。一般に、溶脱は、ガラス繊維を、該繊維から非シリカ系酸化物およびその他の成分を抽出するのに適した酸溶液またはその他の溶液にさらすことによって完遂できる。シリカ含有量の多い溶脱型ガラス繊維を製造するための詳細な説明および方法は、そのすべての開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第2624658号中に含まれる。シリカ含有量の多い溶脱型ガラス繊維を製造するためのもう1つの方法が、欧州特許出願公開第0973697号中に開示されている。
【0020】
溶脱型ガラス繊維は、ドイツのBelChem Fiber Material社からBELCOTEXの商標で、カリフォルニア州ガーディーナ市のHitco Carbon Composites社からREFRASILの登録商標で、ベラルーシ共和国のPolotsk−Steklovolokno社からPS−23(R)の名称で入手できる。
【0021】
別の実施形態において、多孔性セラミック(ハニカム)構造体の表皮被覆を製造する方法は、セラミック繊維または生体内溶解性無機繊維、粘度調節剤、コロイド状無機酸化物、任意選択で無機結合剤、任意選択で無機微粒子、および任意選択で第2の無機繊維の混合物を形成することを含めて提供される。
【0022】
一実施形態において、乾燥成分を1つの部分として一緒に合わせ、かつ別個に、湿潤成分を第2の部分として一緒に合わせ、次いで、双方の部分を一緒に混合する。別の実施形態では、乾燥成分を湿潤成分に任意の順序で添加し、混合することができる。表皮被覆材料は、例えば、約50℃〜約100℃で約2時間、または完全に乾燥するまで乾燥してもよい。乾燥された表皮被覆材料は、例えば、約500〜1100℃で約1〜約5時間、任意選択で100℃/時間以下の加熱および冷却速度で焼成することができる。
排ガス処理デバイスの製造では、表皮を被覆されたセラミックハニカム構造体を焼成した後、ハニカムを、触媒を含む酸性または塩基性の溶液または分散液中に浸漬し、続いて乾燥し、再焼成することができる。
特定の実施形態では、多孔性セラミック(ハニカム)構造体のための表皮被覆材料が提供され、該材料は、耐火性セラミック繊維または生体内溶解性無機繊維、粘度調節剤、コロイド状無機酸化物、無機結合剤、無機微粒子、および第2の無機繊維を含む。
【実施例】
【0023】
種々の主題の表皮被覆配合物(例A、BおよびC)を下表1に示す。これらを、DPF用表皮被覆配合物として使用されている市販のセラミックペースト製品と比較して試験した。
【0024】
【表1】
図1は、例A、B、Cの主題の表皮被覆配合物の未焼成密度を市販のセラミックペースト表皮被覆製品と比較して試験した結果を表す。各表皮被覆材料の平板を数mmの厚さに調製した。板の容積および質量を測定し、それらの密度を計算した。各主題の表皮被覆配合物は、市販材料である対照サンプルに比べてより大きな未焼成密度を示した。より大きな密度は、強度、および触媒被覆材料の吸収に対する抵抗性の向上を提供する。
図2は、例A、B、Cの主題の表皮被覆配合物の粘度を市販のセラミックペースト表皮被覆製品と比較して試験した結果を表す。粘度は、7番のスピンドルを1rpmで使用する標準的なブルックフィールド粘度計を用いて試験した。グラフに示すように、この材料の粘度測定は、約±15%の変動性を有する可能性がある。それにもかかわらず、例示した主題の表皮被覆配合物のそれぞれは、市販材料である対照サンプルに比べてより低い粘度を示した。より低い相対粘度は、配合物の製造および基体への塗布における表皮被覆のより容易なポンプ輸送を可能にする。
【0025】
図3は、例A、B、Cの主題の表皮被覆配合物を種々の条件下で処理した後の破断モジュラス(MOR)を市販のセラミックペースト表皮被覆製品と比較して試験した結果を表す。
例A、BおよびCからのサンプルを、表皮被覆の塗布条件を模擬するように、かつ触媒被覆ステップ中の処理条件(酸/塩基処理および熱処理)を模擬するように熱処理した。ASTM C880に従って、4点MOR試験を実施した。具体的には、
図3を参照すると、各サンプルの1番目それぞれの棒は、各サンプルを未焼成で試験した場合のMOR試験の結果を示し、各サンプルの2番目の棒は、各サンプルを熱処理の後に試験した場合のMOR試験の結果を示し、各サンプルの3番目の棒は、各サンプルを熱処理、酸/塩基(アルカリ)洗浄処理および2回目の焼成処理をした後のMOR試験の結果を示す。
各主題の表皮被覆配合物は、未焼成で、熱処理後に、ならびに酸/塩基(アルカリ)処理および2回目の熱処理をした後に試験した場合に、市販材料である対照サンプルに比べてより大きな破断モジュラスを示した。
総合的なMOR強度は、熱処理後でさえも、比較製品に対して例A、BおよびCより大きかった。熱処理後の例BおよびCの配合物において、有意なMOR強度の降下は示されなかった。降下があった場合でさえも、MOR降下のパーセンテージは、熱処理の後に、比較製品と比較して例A、BおよびCではるかに低かった。
【0026】
総合的なMOR強度は、酸および塩基浸漬、それに続く熱処理の後に、比較製品と比較して例A、BおよびCでより高かった。MOR強度降下のパーセンテージは、酸および塩基浸漬、それに続く熱処理の後に、比較製品と比較して例A、BおよびCではるかに低かった。
熱膨張率は、20〜900℃で試験され、例BおよびCについて、それぞれ、市販のセラミックハニカム基体と適合性のある36×10
-7および40×10
-7と見積もられた。
【0027】
表皮被覆配合物の成分は、次の量で、すなわち、耐火性セラミック繊維または生体内溶解性繊維が約15〜約50質量%;粘度調節剤が約0.15〜約0.5質量%;コロイド状無機酸化物が約2〜約20質量%;無機微粒子が0〜約40質量%;無機結合剤(クレイ)が0〜約10質量%;第2の無機繊維が0〜約10質量%;そして水が約25〜約50質量%の量で存在することができる。特定の実施形態において、成分は、耐火性セラミック繊維または生体内溶解性繊維が約20〜約40質量%;粘度調節剤が0.25〜約0.4質量%;コロイド状無機酸化物が約5〜約10.5質量%、無機微粒子が約25〜約37質量%、無機結合剤(クレイ)が約1.5〜約5質量%;第2の無機繊維が約1.15〜約5質量%;そして水が約29〜約47質量%の量で存在することができる。
下記に示すさらなる表皮被覆材料配合物が成功理に調製された。表2〜5中に報告する。
【0028】
【表2】
上記の例DおよびEの主題の表皮被覆配合物について、ASTM C880に従って4点MOR試験を実施した。例Dの未焼成でのMORは603psiであり、酸/熱処理後のMORは606.5であった。例Eの未焼成でのMORは1147.9psiであり、酸/熱処理後のMORは479.8であった。
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
本明細書に記載の実施形態は単なる例示であり、当業者は本発明の精神および範囲から逸脱することなしに変更または修正をなし得ると解される。すべてのこのような変形および修正は、前記のような本発明の範囲に包含されると解釈される。さらに、所望の結果を得るために本発明の種々の実施形態を組み合わせることができるので、すべての開示された実施形態は、必ずしも二者択一ではない。