(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
超電導ケーブルの両端部に設けられ、電流リードを介して常電導電力機器と接続するための端末導体部を有する超電導ケーブルと、冷媒の冷却機構とを備える超電導ケーブルシステムであって、
前記超電導ケーブルは、
超電導導体層を有する導体部と、
前記導体部を収納し、前記超電導導体層を冷却する前記冷媒が流通する断熱管と、
前記断熱管の外側に設けられる主電気絶縁層と、
前記断熱管と前記主電気絶縁層との間に形成される外部常電導導電部材とを備える常温絶縁型超電導ケーブルであり、
前記両端末導体部は、
前記導体部と前記電力機器とを接続する第一電流リードと、
前記外部常電導導電部材と前記電力機器とを接続する第二電流リードと、
前記導体部及び前記外部常電導導電部材と前記電力機器との間の接続を遮断する遮断手段とを備え、
前記少なくとも一方の端末導体部における遮断手段は、
前記導体部側の接続を遮断する第一遮断手段と、前記外部常電導導電部材側の接続を遮断する第二遮断手段とを有することを特徴とする超電導ケーブルシステム。
前記一方の遮断手段において、前記第一遮断手段により前記導体部側を遮断状態にしたとき、前記他方の遮断手段では、前記導体部側を接続状態にすることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルシステム。
前記連通管の途中に、冷却機能喪失時に気化した前記冷媒の圧力を開放する放圧弁と、この気化した前記冷媒の温度を上昇させる熱交換部とのうち、少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項7に記載の超電導ケーブルシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したいずれの絶縁方式の超電導ケーブルであっても、冷凍機や冷媒の循環機構を含む冷却機構で冷媒を冷却・循環して、その冷媒により超電導導体層を極低温に冷却して超電導状態に維持する。そのため、天災などの不測の事態により、この冷媒の冷却機構が正常に動作しない場合、送電系統の制御システムにおいて、超電導導体層を超電導状態に維持することが困難と判断されると、警報が発信されると共に超電導ケーブル線路が送電系統から遮断される。勿論、別ルートによる送電が試みられるが、天災などで別ルートの確保も困難な場合、送電が停止する。その際、超電導ケーブル線路の送電停止から復旧に至る通常の手順は、次の通りである。
(1)保護装置により遮断器が動作し、超電導ケーブル線路が遮断され、同線路での送電が停止される。
(2)保護装置が動作した原因や異常の発生状況が確認され、「超電導ケーブル線路での再送電が可能かどうか」が判断される。
(3)別ルートや予備回線での送電が可能な場合は、その送電を継続しつつ、超電導ケーブル線路の異常確認を行うと共に、必要に応じて超電導ケーブル線路を速やかに改修し、復旧する。
【0006】
一方で、天災などで予備回線も使用不能に陥った場合、冷媒の冷却機構が正常に動作しなくても、端末やジョイントを含む超電導ケーブル線路全体が損傷していなければ、この超電導ケーブルの一部を非常用の送電線路として利用できれば便利である。特に、災害の復旧などのための緊急の送電が求められる場合、超電導ケーブル本来の送電容量を下回る容量であっても送電ができれば、貴重な電力として有効な場合が生じ得る。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、通常時は超電導ケーブル線路として利用でき、冷却機能喪失時はこの超電導ケーブル線路を常電導ケーブル線路として利用することができる超電導ケーブルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、超電導導体層を超電導状態に維持できない状況で、超電導ケーブル本体には外傷等の損傷が無い場合、超電導ケーブルを常電導ケーブルとして利用することを検討した。一般に、超電導ケーブルは、超電導導体層の他に、事故電流(例、短絡電流など)を分流する内部常電導導電部材を導体部に備えている。このような内部常電導導電部材の具体例としては、銅線を撚り合わせて形成したフォーマや、超電導線材の一部を構成する常電導導体が挙げられる。この内部常電導導電部材を冷却機能喪失時の主たる送電用導体として利用することを検討したところ、単にこの内部常電導導電部材に送電しただけでは、その発熱の影響を無視することが困難であるとの知見を得た。これは、通常、超電導導体層及び内部常電導導電部材は電気的に接続されると共に同じ断熱管内に収納されているため、送電によりこれら導体が発熱するが、その熱を断熱管の外部に放熱することが非常に困難だからである。そして、この発熱に伴う温度上昇により、超電導導体層など他の構成部材がダメージを受ける虞がある。従って、上記導体部材を送電用導体として継続的に利用することができない。本発明は、上記の知見に基づいて、断熱管の外側に常電導導電部材を配置すると共にこの常電導導電部材のみによる送電を可能にするようになされたもので、下記の構成を備える。
【0009】
本発明の超電導ケーブルシステムは、超電導ケーブルの両端部に設けられ、電流リードを介して常電導電力機器と接続するための端末導体部を有する超電導ケーブルと、冷媒の冷却機構とを備える超電導ケーブルシステムである。この超電導ケーブルシステムに使用される超電導ケーブルは、超電導導体層を有する導体部と、この導体部を収納し、超電導導体層を冷却する冷媒が流通する断熱管と、この断熱管の外側に設けられる主電気絶縁層と、断熱管と主電気絶縁層との間に形成される外部常電導導電部材とを備える常温絶縁型超電導ケーブルである。両端末導体部は、上記導体部と上記電力機器とを接続する第一電流リードと、上記外部常電導導電部材と上記電力機器とを接続する第二電流リードと、導体部及び外部常電導導電部材と電力機器との間の接続を遮断する遮断手段を備える。少なくとも一方の端末導体部における遮断手段は、導体部側の接続を遮断する第一遮断手段と、外部常電導導電部材側の接続を遮断する第二遮断手段とを有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、通常時は超電導ケーブルを超電導ケーブル線路として送電に利用し、冷却機能喪失時は上記超電導ケーブルを常電導ケーブル線路として送電に利用することができる。具体的には、通常時は、両端末導体部の各遮断手段において、導体部側及び外部常電導導電部材側を接続状態にして、導体部(超電導導体層)を主たる送電用導体に利用する。冷却機能喪失時は、一方の遮断手段において、第一遮断手段により導体部側を遮断状態にして、導体部への送電を停止すると共に、両端末導体部の各遮断手段において、外部常電導導電部材側を接続状態にして、外部常電導導電部材を主たる送電用導体に利用する。つまり、少なくとも一方の遮断手段が第一遮断手段と第二遮断手段とを有することで、外部常電導導電部材を含む導体部による送電と、外部常電導導電部材のみによる送電とを切り替え可能である。よって、超電導ケーブルの状態に基づいて、導体部による送電を停止した状態で、外部常電導導電部材による送電を行うことができる。また、両端末導体部の各遮断手段において、導体部側及び外部常電導導電部材側を遮断状態にすることで、系統制御システム側とは別に、超電導ケーブルシステム側で超電導ケーブルを送電系統から切り離すことが可能である。
【0011】
ここで、外部常電導導電部材は、断熱管の外側に設けられているため、既存の常電導ケーブルと同様に、送電により発熱しても許容温度の範囲内で送電が可能である。そのため、天災などの不測の事態により、冷媒の冷却機構が正常に動作せず、超電導導体層を超電導状態に維持できなくなり、導体部による送電ができなくなっても、外部常電導導電部材による送電が可能であり、非常用の送電線路として利用できる。また、冷却機構が復帰するまでの間、導体部による送電を停止することで、超電導導体層の過大な温度上昇を回避することができ、安全性が高い。さらに、導体部の送電を停止することで、短時間であれば断熱管内の温度上昇を抑制することができるので、冷却機構の復帰後、超電導ケーブル線路を速やかに復旧することができる。
【0012】
外部常電導導電部材は、例えば、銅やアルミニウム、銀などの金属及びその合金といった常電導材料で形成されている。また、外部常電導導電部材は、超電導ケーブルとして利用している通常時は、従来の内部常電導導電部材と同様、事故電流(例、短絡電流など)の分流路として機能させることができる。
【0013】
両端末導体部の各遮断手段は、導体部及び外部常電導導電部材と常電導電力機器との間の接続を遮断することができる。また、少なくとも一方の遮断手段は、第一遮断手段と第二遮断手段とを有し、導体部側の接続と外部常電導導電部材側の接続を個別に遮断することができる。遮断手段は、例えば、第一電流リードと第二電流リードとが結合され一本化されて上記電力機器に接続されている場合、一本化された電流リードの途中にスイッチを配置することで実現できる。スイッチ以外にも、一本化された電流リードの途中に取り外し可能にボンド線を配置することで実現してもよく、この場合、ボンド線の取り付け・取り外しにより接続・遮断することが可能である。このように、一本化された電流リードの途中にスイッチなどを配置することよって遮断手段を構成した場合、1つのスイッチなどで導体部側及び外部常電導導電部材側を遮断状態にすることができる。
【0014】
第一遮断手段は、導体部側を遮断状態にすることができ、例えば、第一電流リードの途中にスイッチを設けたり、取り外し可能にボンド線を取り付けたりすることで実現できる。また、第二遮断手段は、外部常電導導電部材側を遮断状態にすることができ、第一手段と同様に、第二電流リードの途中にスイッチ機構を設けたり、取り外し可能にボンド線を取り付けたりすることで実現できる。
【0015】
両方の遮断手段がそれぞれ、第一遮断手段と第二遮断手段とを有する構成としてもよいが、一方の遮断手段が第一遮断手段と第二遮断手段とを有していれば、第一遮断手段によって導体部側を遮断して、導体部への送電を停止することができる。
【0016】
本発明の超電導ケーブルシステムの一形態としては、一方の遮断手段において、第一遮断手段により導体部側を遮断状態にしたとき、他方の遮断手段では、導体部側を接続状態にすることが挙げられる。
【0017】
この構成によれば、一方の遮断手段の第一遮断手段により導体部側を遮断して、導体部による送電を停止した状態で、外部常電導導電部材による送電を行う場合、他方の遮断手段では、導体部側を接続状態にすることで、導体部が浮遊電極となることを回避することができる。そのため、導体部と外部常電導導電部材との間に電位差が生じて絶縁破壊などの主電気絶縁層が損傷することを防止できる。
【0018】
ところで、冷媒の冷却機構が復帰するまでに長時間を要する場合や、常電導ケーブル線路として利用する冷却機能喪失時の送電容量を上げる場合は、安定した送電を行うため、断熱管内に収納されている導体部(内部常電導導電部材)も送電用導体に利用することが求められる。そこで、断熱管内の導体部の放熱を可能にするように、下記の構成を備えることが好ましい。
【0019】
本発明の超電導ケーブルシステムの一形態としては、超電導ケーブルの断熱管が断熱空間を有する真空断熱管であり、上記冷媒機構が動作不能で、超電導導体層を超電導状態に維持できない冷却機能喪失時に、少なくとも真空断熱管の断熱空間に熱伝導材料を充填する充填手段を取り付けるための充填手段取付部を備えることが挙げられる。
【0020】
この構成によれば、充填手段取付部を備え、この充填手段取付部に充填手段を取り付けることで、充填手段により真空断熱管の断熱空間に熱伝導材料を充填して、この断熱管の断熱性能を低下させ、真空断熱管を伝熱管とすることができる。そのため、常電導ケーブル線路として利用する冷却機能喪失時に、導体部を送電用導体に利用しても、導体部で発生した熱を伝熱管を通して放熱することができる。したがって、導体部が許容温度を超えて温度上昇することを抑制でき、常電導ケーブル運用時の送電容量を上げることができる。また、真空断熱管の断熱性能が確実に低下するまでの間は、上記第一遮断手段により導体部側を遮断状態にすることで、導体部による送電を停止して、安全性を確保することができる。例えば、断熱管内の冷媒がある程度低温の状態で断熱管の断熱性能を急激に低下させると、断熱管内外の温度差が大きく、急激な温度変化によって断熱管や断熱管に近接する常温の部材が破損するなど悪影響を及ぼす虞がある。
【0021】
この充填手段は、冷却機能喪失時に、導体部を送電用導体に利用する際に、事後的に充填手段取付部に取り付けてもよく、超電導ケーブルシステムの建設当初から、予め充填手段取付部に取り付けられていてもよい。充填手段を構成する構成部材の一部が充填手段取付部に予め取り付けられていてもよく、導体部を送電用導体に利用する際に、構成部材の残部を取り付けてもよい。真空断熱管の断熱空間とは、二重管構造の真空断熱管における内管と外管との間の空間のことである。
【0022】
充填手段を備える上記形態において、充填手段が、熱伝導材料となる気体を収容する気体供給源と、この気体供給源から上記断熱空間に気体を供給・停止する第一バルブとを備えることが挙げられる。
【0023】
この構成によれば、第一バルブの操作により、冷却機能喪失時に熱伝導材料となる気体を真空断熱管の断熱空間に供給し、充填することで、この断熱管の断熱性能を低下させることができる。これにより、通常時の真空断熱管を冷却機能喪失時に伝熱管とすることができ、導体部の発熱を放熱することができる。
【0024】
第一バルブを備える上記形態において、更に、上記断熱空間を真空引きする真空ポンプを備え、第一バルブは、気体供給源と真空ポンプとを断熱空間に対して選択的に連通させる開閉バルブであることが挙げられる。
【0025】
この構成によれば、開閉バルブの動作により、真空断熱管の断熱空間を気体供給源と連通させる。そして、断熱空間に気体を充填して非真空状態とすることで、通常時の超電導ケーブルを冷却機能喪失時に常電導ケーブルとして送電線路に利用することができる。一方、超電導導体層を超電導状態に維持できるように冷却機構が復帰してからは、開閉バルブの動作により、真空断熱管の断熱空間を真空ポンプと連通させる。そして、この真空ポンプで断熱空間を真空引きすることにより、冷却機能喪失時に常電導ケーブル線路として利用していた超電導ケーブルを、再度超電導ケーブル線路として利用することができる。また、真空ポンプで断熱空間を所定の真空度まで真空引きする間、即ち、常電導ケーブル運用時から超電導ケーブル運用時に移行するまでの間は、上記第一遮断手段により導体部側を遮断状態にすることで、導体部による送電を停止して、安全性を確保することができる。
【0026】
ここで、第一バルブを介して断熱管と接続される気体供給源や真空ポンプは接地電位にあり、一方、超電導ケーブルを送電線路に利用する際、断熱管は通常高電位にある。そのため、気体供給源や真空ポンプを断熱管に直接接続した場合、送電線路として運用できない問題があり、その場合、断熱管と気体供給源や真空ポンプとの間に所定の絶縁耐力を有する絶縁継手を設ける必要がある。
【0027】
充填手段を備える上記形態において、充填手段が、液体供給源と、供給管と、排出管と、第二バルブと、圧送手段とを備えることが挙げられる。液体供給源は、上記熱伝導材料となる液体を貯留する。供給管は、この液体供給源から上記断熱空間に液体を供給する。排出管は、断熱空間から液体を排出する。第二バルブは、供給管及び排出管の各々を連通・遮断する。圧送手段は、供給管、断熱空間及び排出管を流通経路として、液体を循環させる。
【0028】
この構成によれば、冷却機能喪失時に、熱伝導材料となる液体を真空断熱管の断熱空間に供給し、充填することで、この断熱管の断熱性能を低下させることができる。これにより、真空断熱管を伝熱管とすることができ、導体部の発熱を放熱することができる。また、断熱空間に供給した液体を圧送(循環)させ、この液体によって断熱管(伝熱管)を冷却することで、常電導ケーブル運用時の導体部の発熱に伴う温度上昇を効果的に抑制することもできる。
【0029】
充填手段を備える上記形態において、充填手段が、真空断熱管内の冷媒流路と真空断熱管の断熱空間とを連通させる連通管と、連通管を連通・遮断する第三バルブとを備えることが挙げられる。
【0030】
この構成によれば、冷却機能喪失時に、真空断熱管内の冷媒を侵入熱により気化させ、第三バルブの操作により、その気化した冷媒を、連通管を介して真空断熱管の断熱空間に導入することで、この断熱管の断熱性能を低下させることができる。これにより、真空断熱管を伝熱管とすることができ、導体部の発熱を放熱することができる。
【0031】
連通管と第三バルブとを備える上記形態において、連通管の途中に、冷却機能喪失時に気化した冷媒の圧力を開放する放圧弁と、この気化した冷媒の温度を上昇させる熱交換部とのうち、少なくとも一方を備えることが挙げられる。
【0032】
この構成によれば、放圧弁を備えることで、冷媒が気化する際の連通管内の急激な圧力上昇を緩和することができる。また、熱交換部を備えることで、気化した冷媒が過度に低温のまま真空断熱管の断熱空間に導入されることを防止し、この断熱管に近接する常温の部材が不必要に冷却されて悪影響を受けることを防止できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の超電導ケーブルシステムによれば、通常時は超電導ケーブル線路として利用していたケーブルを、冷却機能喪失時には常電導ケーブル線路として利用することができ、冷却機能喪失時において、安全に送電線路に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、各図において、同一又は相当の部材には同一の符号を用いる。
【0036】
超電導ケーブルシステムは、超電導ケーブルの両端部に設けられ、電流リードを介して常電導電力機器と接続するための端末導体部を有する超電導ケーブルと、冷媒の冷却機構とを備える。まず、
図1及び2を参照して、本発明の超電導ケーブルシステムに使用する超電導ケーブル(常温絶縁型超電導ケーブル)の構造を説明する。
【0037】
[常温絶縁型超電導ケーブル(1)]
図1は、常温絶縁型超電導ケーブルの一例を示す図である。
図1に示す超電導ケーブル101は、超電導導体層12を有する1つの導体部10と、導体部10を収納する断熱管14とを備え、断熱管14の内側には、超電導導体層12を冷却する冷媒が流通する。また、断熱管14の外側に主電気絶縁層15が設けられており、常温にて絶縁を行う構造である。さらに、断熱管14と主電気絶縁層15との間には、外部常電導導電部材16が形成されている。
【0038】
導体部10は、代表的には、中心から順にフォーマ11、超電導導体層12、保護層13を有する。フォーマ11は、超電導導体層12を支持する部材であり、例えば、エナメルなどの絶縁被覆を有する複数の金属線を撚り合わせた撚り線などの中実体、絶縁パイプや金属パイプ、金属帯を螺旋状に巻回して筒状に形成されたスパイラル帯などの中空体を利用することができる。このフォーマ11を、事故電流(短絡電流など)を分流する内部常電導導電部材とする場合は、銅やアルミニウムといった金属の常電導材料で形成するとよい。金属パイプなどの中空体とした場合は、その内部空間も冷媒流路に利用することが可能である。本例では、絶縁被覆を有する金属線を撚り合わせた中実体とした。
【0039】
超電導導体層12としては、例えば、酸化物超電導導体を用いたテープ状の超電導線材が好適に利用できる。超電導線材には、例えば、Bi2223系銀シース超電導線材(Ag-MnやAgなどの安定化金属中に酸化物超電導導体からなるフィラメントが配されたシース線線材)、RE123系薄膜超電導線材(RE:希土類元素(例えばY、Ho、Nd、Sm、Gdなど)。金属基板上に酸化物超電導相が成膜された積層線材)を使用することができる。超電導導体層12は、複数の超電導線材をフォーマ11の外周に螺旋状に巻回して形成した単層又は多層構造とすることができる。本例では、多層構造の超電導導体層12とした。超電導導体層12において、上記した超電導線材の安定化金属や金属基板も、事故電流を分流する内部常電導導電部材として機能する。さらに、フォーマ11と超電導導体層12との間にクッション層(図示せず)を介在させてもよく、クッション層はクラフト紙などを巻回することで形成することができる。
【0040】
超電導導体層12の外周には保護層13が形成されている。保護層13は、その内側に配された超電導導体層12などを断熱管14と電気的に絶縁すると共に、機械的に保護する。保護層13は、クラフト紙などを巻回することで形成している。ここで、導体部10(超電導導体層12)と断熱管14とは、ケーブル線路の端末やジョイントなどの任意の箇所で電気的に繋がれており、同電位である。超電導導体層12の外側に設けられた保護層13による電気的な絶縁は、超電導導体層12に流れる主電流を断熱管14に分流させない(断熱管14との不安定な接触点を形成させない)ためのものであり、絶縁に必要な厚さを有していなくてもよい。超電導ケーブルの主絶縁は、断熱管14の外側に設けられた主電気絶縁層15により確保される。
【0041】
断熱管14は、導体部10を内部に収納する内管14aと、内管14aを内部に収納する外管14bとを有する二重管構構造の真空断熱管である。内管14aは、その内部に冷媒20が流通する冷媒流路として機能する。この冷媒20により、導体部10の超電導導体層12が超電導状態に維持される。冷媒20の代表例としては、液体窒素や液体ヘリウム、ヘリウムガスなどが挙げられる。この内管14aと、内管14aを覆う外管14bとで断熱管14を構成することで、外部からの侵入熱などによって冷媒20の温度が上昇することを抑制する。内管14aと外管14bとの間の断熱空間は真空引きされ、それにより通常時は真空断熱層が形成されている。その他、断熱空間にスーパーインシュレーションといった断熱材や、内管14aと外管14bとを離隔させるスペーサを配置すると、断熱管14の断熱性能をより高められる。
【0042】
本例では、断熱管14を構成する内管14aと外管14bとは、コルゲート管である。両管14a,14bをコルゲート管とすることで、断熱管14(即ち、超電導ケーブル)の曲げ剛性を小さくすることができ、管路内などへの超電導ケーブルの布設をより容易にすることができる。なお、両管14a,14bはストレート管であってもよい。常温絶縁型超電導ケーブルでは、断熱管14の外側に主電気絶縁層(後述)が設けられているため、断熱管14は電圧印加部位である。断熱管14(内管14a及び外管14b)は、ステンレス、アルミニウムやその合金などで形成されている。
【0043】
断熱管14(外管14b)の外側には、主電気絶縁層15が形成されている。この主電気絶縁層15は、ケーブル線路として要求される電気的絶縁性能を満足する。この主電気絶縁層15には、既存の常電導ケーブルで実績がある電気絶縁強度に優れる材料、代表的にはCVケーブルに使用されている架橋ポリエチレン(XLPE)などの絶縁性樹脂を利用することができる。架橋ポリエチレンなどの絶縁性樹脂であれば、断熱管14の外側、具体的には、後述する外部常電導導電部材16の外周に絶縁性樹脂を押出しにより被覆することで主電気絶縁層15を容易に形成することができる。なお、主電気絶縁層15の内側又は外側には、常電導ケーブルと同様に、内部半導電層又は外部半導電層(図示せず)を主電気絶縁層15と同時に押出しにより形成してもよい。また、主電気絶縁層15の外周には、代表的には、銅やアルミニウムなどの常電導材料で形成された外側遮蔽層(図示せず)が設けられる。外側遮蔽層は、主電気絶縁層15の外側の電位を与えるもので、従来の電力ケーブルと同様に常電導材料を利用することができる。また、外側遮蔽層の外周には、外気の水分を遮断する遮水層(図示せず)や、所定の絶縁特性を有し、外側遮蔽層を保護する防食層(図示せず)が設けられる。
【0044】
断熱管14(外管14b)と主電気絶縁層15との間には、外部常電導導電部材16が形成されている。この外部常電導導電部材16は、冷媒機能喪失時に送電用導体に利用され、例えば、銅やアルミニウム、銀などの金属及びその合金といった常電導材料から形成されている。また、外部常電導導電部材16は、超電導ケーブル線路として利用する通常時に、事故電流の分流路として機能させることも可能である。外部常電導導電部材16は、例えば、銅撚り線からなるセグメント導体など、既存の常電導ケーブルの導体に準じた部材を外管14bの外周に巻回することで形成することができる。
【0045】
外部常電導導電部材16の導体断面積を大きくすることで、常電導ケーブル線路として利用する冷却機能喪失時の送電容量や、事故電流の分流路を十分に確保することができる。外部常電導導電部材16が事故電流の分流路として機能する際、外部常電導導電部材16の導体断面積を十分に確保しておくことで、大きな事故電流が流れることによる導体部10(フォーマ11及び超電導導体層12)の温度上昇を低減し、断熱管14内の冷媒20の温度上昇を抑制することができる。
【0046】
さらに、超電導ケーブル101の最外周には、布設用のテンションメンバーを設けもよい(図示せず)。
【0047】
[常温絶縁型超電導ケーブル(2)]
図2は、常温絶縁型超電導ケーブルの別の一例を示す図である。
図2に示す超電導ケーブル102は、管状支持部材17を備える点が、
図1に示す上記した超電導ケーブル101と異なり、基本的な構成は超電導ケーブル101と同じであるので、以下では相違点を中心に説明する。
【0048】
超電導ケーブル102では、断熱管14(外管14b)に主電気絶縁層15が形成されておらず、断熱管14(外管14b)の外側に配置される管状支持部材17の外側に外部常電導導電部材16や主電気絶縁層15が形成されている。つまり、管状支持部材17は、その外側に形成される外部常電導導電部材16や主電気絶縁層15を支持する部材であり、所定の機械強度(機械特性)を有することが重要である。また、超電導ケーブル102に可撓性を持たせるために、管状支持部材17も所定の可撓性を有することが好ましい。これらの点を考慮して、管状支持部材17には、アルミニウム(その合金を含む)製のストレート管や、ステンレス製のコルゲート管などが好適に利用できる。その他、管状支持部材17は、樹脂などの非金属材料で形成してもよい。ここで、この管状支持部材17を常電導材料で形成した場合、上記した外部常電導導電部材16と同様に、冷媒機能喪失時の送電用導体や通常時の事故電流の分流路としての機能の一部を管状支持部材17に分担させることができる。
【0049】
管状支持部材17を備える場合、
図2に例示するように、管状支持部材17と主電気絶縁層15との間に外部常電導導電部材16が形成されることになる。
【0050】
このような管状支持部材17を備えることで、導体部10を収納した断熱管14と、外部常電導導電部材16や主電気絶縁層15が設けられた管状支持部材17とを別個に取り扱うことができる。
【0051】
(実施形態1)
次に、
図3、4を参照して、実施形態1に係る超電導ケーブルシステムの全体の概略構成、及び超電導ケーブルシステムにおける端末の構造の概略構成を説明する。
【0052】
このシステムは、超電導ケーブル100と冷媒の冷却機構200とを備え、超電導ケーブル100の両端部には、ケーブル線路において、常電導電力機器(例、遮断器)と接続するための端末150a,150bが設けられている。超電導ケーブル100は、例えば
図1や
図2に示す上記した常温絶縁型超電導ケーブルであり、断熱管(真空断熱管)14の外側に主電気絶縁層15が設けられており、断熱管14と主電気絶縁層15との間に外部常電導導電部材16が形成されている。ここでは、超電導ケーブル100の構成が、図に示す超電導ケーブル101と同様の構成である場合を例に説明する。
【0053】
超電導ケーブル100の両端部に設置された端末150a,150bの構造について、説明する。まず、
図4を参照して、端末150a,150bのうち、一方の端末150aの構造について説明する。
【0054】
[端末導体部]
端末150aは、超電導ケーブル100と常電導電力機器の接続導体60とを電流リードを介して電気的に接続するための端末導体部30を有する。この端末導体部30は、超電導ケーブル100の導体部10と電力機器の接続導体60とを接続する第一電流リード31と、超電導ケーブル100の外部常電導導電部材16と電力機器の接続導体60とを接続する第二電流リードを備える。
【0055】
この例では、超電導ケーブル100の端部の主電気絶縁層を除去する端部処理を行い、当該ケーブル100の端部を碍管51に挿入して端末絶縁部50を形成している。そして、端末絶縁部50から当該ケーブル100の断熱管14が外部に突出し、この断熱管14の端部から導体部10が引き出されている。導体部10と第一電流リード31との接続部は、端末絶縁部50の外部に設けられており、この接続部を収納するように、断熱容器40が形成されている。また、断熱管14の外側に形成された外部常電導導電部材16と第二電流リード32との接続部も端末絶縁部50の外部に設けられている。
【0056】
端末絶縁部50は、既存の常電導ケーブルの端末と同様であり、碍管51には、例えば、磁器製又は樹脂(例えばエポキシ樹脂)製のものを利用することができる。
【0057】
超電導ケーブル100の端部の端末絶縁部50から突出する箇所では、主電気絶縁層などが除去され、外部常電導導電部材16が露出しており、導体部10が断熱管14の端部から引き出されている。引き出された導体部10の端部は、端末処理によって保護層などが除去され、超電導導体層12が露出しており、露出した超電導導体層12の外側には端末金具(図示せず)が取り付けられている。断熱管14の端部は断熱容器40に接続され、断熱管14の内側の冷媒流路と断熱容器40の内部空間とが連通している。
【0058】
第一電流リード31は、一端側が断熱容器40に収納され、断熱管14の端部から引き出された導体部10(超電導導体層12)と端末金具を介して電気的に接続されており、他端側が断熱容器40の外部(常温側)に引き出され、電力機器60の接続導体60に接続される。一方、第二電流リード32は、一端側が断熱管14の外側に形成された外部常電導導電部材16と電気的に接続されており、他端側が電力機器の接続導体60に接続される。第一電流リード31及び第二電流リード32は、例えば、銅やアルミニウムなどの常電導材料で形成されている。また、第一電流リード31は、外周面に断熱部材36を有しており、この断熱部材36を断熱容器40に嵌合させ接続することで、冷媒の封止と外部からの侵入熱の低減を行っている。
【0059】
さらに、端末導体部30は、導体部10及び外部常電導導電部材16と電力機器の接続導体60との間の接続を遮断する遮断手段33aを備える。この遮断手段33aは、導体部10側の接続を遮断する第一遮断手段34と、外部常電導導電部材16側の接続を遮断する第二遮断手段35とを有する。そのため、導体部10側と外部常電導導電部材16側とをそれぞれ個別に接続・遮断することが可能である。この例では、第一電流リード31の途中に接続・遮断可能なスイッチを設けることで第一遮断手段34を構成し、第二電流リード32の途中に接続・遮断可能なスイッチを設けることで第二遮断手段35を構成している。第一遮断手段34や第二遮断手段35は、第一電流リード31や第二電流リード32を接続・遮断可能なスイッチで構成する他、第一電流リード31や第二電流リード32の途中に取り外し可能なボンド線を取り付けることで構成してもよく、この場合、ボンド線の取り付け・取り外しにより第一電流リード31や第二電流リード32を接続・遮断可能である。また、第一遮断手段34や第二遮断手段35の接続・遮断操作は、自動又は手動で行ってもよいし、ボンド線の取り付け・取り外しにより接続・遮断する場合は、作業員が手作業でボンド線の取り付け・取り外しを行ってもよい。
【0060】
断熱容器40は、その内側が断熱管14の内側と連通しており、断熱管14に流通する冷媒20が充填される。本例では、断熱容器40は、内容器と外容器とを有する二重構造の真空断熱容器であり、内容器と外容器との間の断熱空間が真空引きされ、真空断熱層が形成されている。断熱容器40(内容器及び外容器)は、ステンレス、アルミニウムやその合金などで形成されている。
【0061】
第一電流リード31と断熱容器40との間で電流が流れないように、第一電流リード31と断熱容器40との間には絶縁部材(図示せず)が介在されている。この絶縁部材は、第一電流リード31と断熱部材36との間に設けてもよい。例えば、現地で接続構造を組み立てる場合、予め工場などで、第一電流リード31の上に絶縁部材を形成し、その上に断熱部材36を形成しておき、現地では、この第一電流リード31を断熱容器40に設けられた嵌合部42に挿入して、第一電流リード31と断熱容器40とを嵌合させる。このように第一電流リード31が断熱部材36を有することで、現地での接続構造の組み立てが容易になる。また、図示するように、第一電流リード31の断熱部材36と断熱容器40の嵌合部42とを重複させることで、外部からの侵入熱を効果的に抑制することができる。断熱容器40と断熱管14との接続箇所や断熱容器40と分岐冷媒管53(後述)との接続箇所においても、同様に、断熱管14や分岐冷媒管53と断熱容器40とを嵌合させ、重複させている。断熱部材36の外周にフランジ部を形成しておき、このフランジ部を嵌合部42に当接させ、位置決めに利用したり、このフランジ部を断熱容器40(嵌合部42)に固定してもよい。
【0062】
断熱容器40には、断熱管14に流通する冷媒20を冷却機構200(後述、
図3参照)に送るための分岐冷媒管53が接続されている。常温絶縁型超電導ケーブルの場合、高電圧部である超電導導体層12と断熱管14との間に主電気絶縁層を有さないため、断熱管14が高電位である。よって、断熱管14が接続される断熱容器40や、断熱容器40に接続される分岐冷媒管53も高電位である。これに対し、冷凍機や冷媒の循環機構を含む冷却機構200は通常、接地部(低電圧部)に設けられるので接地電位(低電位)である。そのため、分岐冷媒管53を冷却機構200に直接接続した場合、電圧が印加できなくなる(地絡状態となり異常電流が流れる状態になる)ことにより、送電線路として成立しない問題がある。そこで、この例では、分岐冷媒管53と冷却機構200とを電気的に絶縁した状態で接続するため、分岐冷媒管53と冷却機構200との間に所定の絶縁耐力を有する絶縁継手55を設けている。分岐冷媒管53は、断熱管14と同様に、二重管構造の真空断熱管を利用することができる。なお、絶縁継手55は、その外側に断熱部56が設けられており、断熱容器40は、その外側に絶縁部材(図示せず)が設けられている。
【0063】
断熱容器40には、更に、液体冷媒20が気化して内圧が上昇したときに、気化した冷媒20を放出するための放出弁(図示略)を備えている。これにより、冷却機能喪失時、冷媒20が温度上昇により気化して内圧が規定の圧力以上になった場合、気化した冷媒を断熱容器40から排出することができ、断熱容器40及びそれに連通する断熱管14の内圧が過大になることを防止することができる。
【0064】
次に、
図3に示す他方の端末150bの構造について説明すると、
図4を用いて説明した一方の端末150aとほぼ同様の構成であり、端末導体部30が、第一電流リード31、第二電流リード32、及び遮断手段33bを備える。ただし、遮断手段33bは、第一電流リードと第二電流リードとが結合され一本化された電流リードの途中に接続・遮断可能なスイッチを設けることで構成している。この遮断手段33によって導体部10及び外部常電導導電部材16と電力機器の接続導体60との間の接続を遮断することができ、遮断手段33の接続・遮断操作により導体部10側及び外部常電導導電部材16側を同時に接続・遮断することが可能である。遮断手段33bは、上記した第一遮断手段34や第二遮断手段35と同様に、取り外し可能なポンド線を取り付けることで構成してもよい。また、遮断手段33bは、上記した遮断手段33aと同様に、第一遮断手段34や第二遮断手段35とを有する構成としてもよい。また、端末150bにおいても、端末150aと同様に、分岐冷媒管53と冷却機構200に接続される冷媒管300(後述、
図3参照)とを電気的に絶縁した状態で接続するため、分岐冷媒管53と冷媒管300との間に絶縁継手55(
図4参照)を設けている。
【0065】
[冷却機構]
冷媒の冷却機構200は、超電導ケーブル100の一方の端末150a側に設置されている。通常時、冷却機構200で冷却された冷媒20は、超電導ケーブル100の一方の端末150aから断熱管14に供給されて他方の端末150bから排出され、冷媒管300を通って再度冷却機構200に戻される。或いはその逆に冷媒20が循環される。具体的には、冷却機構200で冷却された冷媒20は、一方の端末150aの断熱容器40に分岐冷媒管53を介して充填され、断熱管14を通って、他方の端末150bの断熱容器40に充填される。その後、他方の端末150bの断熱容器40から分岐冷媒管53を介して冷媒管300に送られ、冷媒管300を通って冷却機構200に戻される。この冷媒20の循環により、断熱管14内に収納された導体部10の超電導導体層12を極低温に冷却して超電導状態に維持する。この例では、冷却機構200は、冷媒管300を介して冷却機構200に戻されて供給開始時に比べて温度上昇した冷媒20を再度所定の低温に冷却する冷凍機210と、冷凍機210で冷却された冷媒20を断熱管14と冷媒管300とを含む循環経路に圧送する循環機構(図示略)と、冷却塔215とを備える。冷凍機210には冷却塔215が連結され、冷凍機210自体の放熱側(高温側)を冷却する。循環機構にはポンプが好適に利用できる。なお、この冷却機構200は、冷媒の冷媒排出バルブ(図示略)を備えることが好ましい。冷却機能喪失時、液体の冷媒20が昇温して気化するため、冷媒排出バルブを開放することで、気化した冷媒20を循環経路から排出し、断熱管14、断熱容器40及び冷媒管300の内圧が過大にならないように制御することができる。
【0066】
[冷媒管]
冷媒管300は、超電導ケーブル100に並列して布設され、冷媒20の往路又は復路の一方を構成する。本例では、冷媒管300が冷媒20の復路を構成している。この冷媒管300は、超電導ケーブル100の断熱管14と同様に、二重管構造の真空断熱管が好適に利用できる。冷媒管300の一端側(
図4の左側)が冷却機構200に接続され、他端側(
図4の右側)が他方の端末150bの断熱容器40に分岐冷媒管53を介して接続されている。ここで、複数条の超電導ケーブルを備える場合、冷媒管を使用せず、いずれかの超電導ケーブルの断熱管を利用して冷媒の循環経路を構成してもよい。
【0067】
<システムの運用手順>
超電導ケーブル両端部に上述した端末導体部が設けられた実施形態1に係る超電導ケーブルシステムは、次のように運用する。
【0068】
(1)冷媒の冷却機構200が正常に動作している通常時、断熱管14内に流通する冷媒20により超電導導体層12が超電導状態に維持されることから、導体部10(超電導導体層12)を主たる送電用導体に利用し、超電導ケーブル100を超電導ケーブル線路として運用する。具体的には、各遮断手段33a,33bにおいて、第一電流リード31及び第二電流リード32を接続した状態とし、導体部10及び外部常電導導電部材16と電力機器の接続導体60との間を接続状態にする。
【0069】
(2)冷媒の冷却機構が正常に動作せず、超電導導体層12を超電導状態に維持できない冷却機能喪失時、超電導ケーブルシステムから警報が発信され、系統制御システム側の遮断器が動作して、超電導ケーブル100が送電系統から切り離される。またこのとき、冷却機構200の冷凍機210や循環機構(ポンプ)が停止し、冷媒20の温度が上昇すると、冷媒20が気化すると共に圧力が上昇する。昇温により気化した冷媒20は、断熱容器40に備える放出弁や、冷却機構200に備える冷媒排出バルブを開放することによって循環経路から排出される。
【0070】
超電導ケーブル100の状態を確認し、当該ケーブル100による送電が必要と判断された場合、超電導ケーブル100を常電導ケーブル線路として運用する。具体的には、一方の遮断手段33aにおいて、第一遮断手段34により第一電流リード31を遮断した状態とし、導体部10側を遮断状態にすると共に、第二遮断手段35により第二電流リード32を接続した状態とし、外部常電導導電部材16側を接続状態にする。また、他方の遮断手段33bでは、第一電流リード31及び第二電流リード32を接続した状態とし、導体部10側及び外部常電導導電部材16側を接続状態にする。これにより、導体部10への送電を停止できると共に、外部常電導導電部材16を主たる送電用導体に利用して、外部常電導導電部材16による送電が可能になる。遮断手段の操作完了後、系統制御システム側の遮断器を復帰させ、導体部10による送電を停止した状態で、外部常電導導電部材16による送電を行う。なお、常電導ケーブル運用時の送電容量は、超電導ケーブル運用時の送電容量に比較して小さくなるが、少しでも電力を供給することで、冷却機能喪失時の貴重な電力として有効に利用できる。
【0071】
(3)超電導ケーブル100を常電導ケーブル線路として運用している間に、冷却機構200が復帰したら、復帰した冷却機構200により冷媒20の供給を開始し、冷媒20を循環させる。また、系統制御システム側の遮断器によって一旦送電を停止し、超電導ケーブル100を送電系統から切り離す。超電導ケーブル100が超電導ケーブル線路として所定の機能を満足することを確認し、一方の遮断手段33aの第一遮断手段34を接続状態に切り替え、各遮断手段33a,33bにおいて、導体部10側及び外部常電導導電部材16側を接続状態にする。遮断手段の操作完了後、系統制御システム側の遮断器を復帰させ、導体部10を主たる送電用導体に利用して、超電導ケーブル100を再度超電導ケーブル線路として運用する。
【0072】
<作用効果>
上記した実施形態1に係る超電導ケーブルシステムによれば、通常時は超電導ケーブル100を超電導ケーブル線路として利用し、冷却機能喪失時にはそのケーブル100を常電導ケーブル線路として利用することができる。冷却機能喪失時に送電用導体に利用する外部常電導導電部材16は断熱管14の外側に設けられているため、既存の常電導ケーブルと同様に、送電により発熱しても放熱が可能であり、送電により発熱しても許容温度の範囲内であれば送電が可能である。そのため、災害時などにおいて、冷却機構200が動作不能であり、かつ予備回線も使用不能な場合などに、緊急避難的に常電導ケーブルとして送電を行うことができ、送電線路に利用することができる。また、冷却機構が復帰するまでの間、導体部10による送電を停止することで、送電による導体部10の発熱に伴う温度上昇を防止し、超電導導体層12の過大な温度上昇を回避することができる。さらに、導体部10の送電を停止することで、短時間であれば断熱管14内の温度上昇を抑制することができるので、冷却機構の復帰後、超電導ケーブル線路として速やかに復旧することができる。
【0073】
また、この実施形態1に係る超電導ケーブルシステムでは、冷却機能喪失時、一方の遮断手段33aにおいて、第一遮断手段34により導体部10側を遮断状態にすると共に、他方の遮断手段33bでは、導体部10側を接続状態にしている。そのため、常電導ケーブル運用時に、他方の遮断手段33bでは、導体部10側及び外部常電導導電部材16側が接続された状態となる。よって、導体部と外部常電導導電部材との間に電位差が生じることがなく、絶縁破壊などの主電気絶縁層が損傷することを防止できる。
【0074】
さらに、両方の遮断手段33a,34がそれぞれ、導体部側及び外部常電導導電部材側を遮断状態にすることができ、系統制御システム側とは別に、超電導ケーブルシステム側で超電導ケーブル100を送電系統から切り離すことが可能である。
【0075】
上記した実施形態1に係る超電導ケーブルシステムでは、断熱管14の外側に形成された外部常電導導電部材16のみを送電用導体に利用する実施形態を説明した。以下では、冷却機能喪失時に、断熱管14内に収納されている導体部10(フォーマなどの内部常電導導電部材)も送電用導体に利用する場合の実施形態を説明する。
図4〜6を参照して以下に説明する実施形態2〜4は、導体部10の放熱を可能にするため、真空断熱管14の断熱性能を低下させる構成を備えることを特徴としている。
【0076】
(実施形態2)
図5を参照して、実施形態2に係る超電導ケーブルシステムを説明する。このシステムは、真空断熱管14の断熱空間に連通する真空ポンプ410、気体供給源420、真空ポンプ410と気体供給源420の断熱空間に対する連通状態を選択する第一バルブ440及び開閉バルブ470を備える点で、
図3に示す実施形態1のシステムと異なる。
【0077】
冷媒の冷却機構200は、通常時、超電導導体層12を冷却する冷媒20を所定温度に冷却し、超電導ケーブル100の断熱管14と冷媒管300とを含む循環経路に冷媒20を圧送する。
【0078】
一方、冷却機構200が正常に動作しない冷却機能喪失時には、冷媒20の冷却・循環を行わず、気体供給源420から真空断熱管14の断熱空間に気体を充填し、真空断熱管14の断熱性能を低下させる。そして、導体部10の放熱を可能にして、導体部10の送電による発熱に伴う温度上昇を抑制することで、導体部10(内部常電導導電部材)を送電用導体に利用する。つまり、冷却機能喪失時に、外部常電導導電部材のみを送電用導体に利用して常電導ケーブル線路として運用する上述した実施形態1に比較して、導体部10の内部常電導導電部材も送電用導体に利用する。なお、このときは、各遮断手段33a,33bにおいて、導体部10側及び外部常電導導電部材16側を接続状態にする。
【0079】
以下、このシステムの各部の構成の詳細を
図5に基づいて説明する。
【0080】
[真空ポンプ]
真空ポンプ410は、真空断熱管14の断熱空間を真空引きするポンプである。例えば、冷却機能喪失時に超電導ケーブル100を常電導ケーブル線路として運用する際、断熱空間には気体が充填されて非真空となる。その後、冷却機構200が復帰するなどして、超電導ケーブル線路としての運用が可能になった場合、断熱空間を再度真空に戻すために、この真空ポンプ410が利用される。真空ポンプ410により真空引きして断熱空間を真空に戻せば、超電導ケーブル100を再度超電導ケーブル線路として利用することができる。
【0081】
[気体供給源]
気体供給源420は、真空断熱管14の断熱空間に供給する熱伝導材料となる気体を収容する。冷却機能喪失時、この気体供給源420は、例えばタンクなどの閉鎖容器でも良いし、単に連通管450(後述)の端部を開口端とし、その開口端につながる大気の開放空間としてもよい。気体供給源420をタンクとした場合、そのタンク内に熱伝導材料となる窒素ガスなどの気体を貯留する。大気の開放空間を気体供給源420とした場合、空気が熱伝導材料となる。断熱管14を再度真空引きすることによって超電導ケーブル線路として復旧させる場合、大気中の水分が断熱空間に侵入することは好ましくなく、含有水分の少ない窒素ガスや乾燥空気を気体供給源420内に収容しておくことが好ましい。また、断熱管14を大気開放する場合、連通管450の途中に大気中の水分を除去する脱気手段(図示略)を設けておくことも有効である。
【0082】
[第一バルブ]
第一バルブ440は、真空断熱管14の断熱空間に対し、真空ポンプ410及び気体供給源420を選択的に連通させるバルブである。本例では、断熱空間につながる連通管450(後述)を分岐させ、その一方の分岐管450Lに開閉バルブ440Aを、他方の分岐管450Rに開閉バルブ440Bを設けて、両開閉バルブ440A,440Bにより第一バルブ440を構成している。勿論、2つの開閉バルブ440A,440Bの代わりに、連通管440の分岐箇所に設けた三方弁により第一バルブ440を構成してもよい。さらに、連通管450のうち、断熱空間から分岐箇所までの途中にも元バルブとなる開閉バルブ470を設けている。本例のシステムを超電導ケーブル線路として運用する際は、真空断熱管14は真空封じ切りで運用されるのが通常であり、通常時には開閉バルブ470を閉として真空断熱管14を封じ切り、冷却機能喪失時には開閉バルブ470を開とする。
【0083】
[連通管]
連通管450は、真空断熱管14の断熱空間と真空ポンプ410又は気体供給源420とをつなぐ配管である。本例では、断熱空間から1本の連通管450を引き出し、その連通管450の途中を二股に分岐している。一方の分岐管450Lは真空ポンプ410につながり、他方の分岐管450Rは気体供給源420につながる。
【0084】
[コンプレッサー]
必要に応じて、気体供給源420と開閉バルブ440Bとの間における分岐管450Rの途中にコンプレッサー460を設けてもよい。このコンプレッサー460により気体を加圧して、速やかに真空断熱管14の断熱空間に気体を充填させることができる。
【0085】
上記した真空ポンプ410、気体供給源420、第一バルブ440、連通管450及びコンプレッサー460は、超電導ケーブルシステムの建設当初から設置されているか、事後的に設置されるかは問わない。例えば、真空ポンプ410、気体供給源420、第一バルブ440、連通管450及びコンプレッサー460を超電導ケーブルシステムの建設当初から設置しておいてもよいし、超電導ケーブルシステムにこれら部材を取り付けるための取付部を設けておき、冷却機能喪失時に事後的に設置してもよい。或いは、真空断熱管14に短い連通管と開閉バルブ470とを予め接続しておき、これを取付部として、冷却機能喪失時に残りの連通管、真空ポンプ410、気体供給源420及びコンプレッサー460を事後的に接続してもよい。この場合、通常時は、開閉バルブ470を閉として真空断熱管14を封じ切り、その状態で超電導ケーブル線路として運用することができる。なお、真空ポンプ410を超電導ケーブルシステムの建設当初から設置しておくことで、この真空ポンプ410を超電導ケーブルシステム建設時の真空断熱管14の真空引きにも使用することができる。
【0086】
真空ポンプ410や気体供給源420は接地電位にある。一方、超電導ケーブル100は常温絶縁型であり、送電線路に利用した際、真空断熱管14が高電位となるため、真空断熱管14と真空ポンプ410及び気体供給源420との間に絶縁継手455を設けている。本例では、連通管450における開閉バルブ470と真空ポンプ410及び気体供給源420との間に絶縁継手455を設けている。
【0087】
<システムの運用手順>
上述した実施形態2に係る超電導ケーブルシステムは、次のように運用する。
【0088】
(1)冷媒の冷却機構200が正常に動作している通常時、第一バルブ440(開閉バルブ440A,440B)及び開閉バルブ470が閉じられ、真空断熱管14の断熱空間を真空状態に保持する。また、断熱管14内に流通する冷媒20により超電導導体層12が超電導状態に維持されることから、導体部10(超電導導体層12)を主たる送電用導体に利用し、超電導ケーブル100を超電導ケーブル線路として運用する。具体的には、各遮断手段33a,33bにおいて、第一電流リード31及び第二電流リード32を接続した状態とし、導体部10及び外部常電導導電部材16と電力機器の接続導体60との間を接続状態にする。
【0089】
(2)冷媒の冷却機構200が正常に動作せず、超電導導体層12を超電導状態に維持できない冷却機能喪失時、実施形態1で説明したように、超電導ケーブル100が送電系統から切り離され、また、冷却機構200の冷凍機210や循環機構(ポンプ)が停止し、昇温により気化した冷媒20は循環経路から排出される。昇温に要する時間を短縮するため、窒素ガスを真空断熱管14の内部(冷媒流路)に導入してもよい。排出される冷媒20の温度が所定の温度に上昇したことを確認した後、気体供給源420から真空断熱管14の断熱空間に気体を供給する。具体的には、開閉バルブ440B及び開閉バルブ470を開放する。この開放以前の断熱空間は、真空状態に保持されているため、開閉バルブ440B及び開閉バルブ470の開放により、気体供給源420から断熱空間に気体を自然流入により供給し、断熱空間に熱伝導材料となる気体を充填する。この気体の充填により、真空断熱管14の断熱性能が低下し、断熱管14が伝熱管となる。ここで、冷媒の昇温を早くする別の手段として、気体供給源420から真空断熱管14の断熱空間に気体を少量供給し、断熱管14の断熱性能を若干低下させることも有効である。冷媒がある程度低温の状態で、断熱管14の断熱性能を下げ過ぎると、断熱管14の表面温度が低下して凍結などの問題が生じる可能性があるので、冷媒の温度状況、断熱管14への気体供給量の調整が必要となる。この気体の供給が過剰となった場合、真空ポンプ410で排気することが有効である。
【0090】
また、真空断熱管14の断熱性能が低下するまでの間、実施形態1で説明したように、一方の遮断手段33aの第一遮断手段34を遮断状態に切り替え、導体部10側の接続を遮断すると共に、一方の遮断手段33aの第二遮断手段35及び他方の遮断手段33bを接続状態にして、外部常電導導電部材16側を接続状態にする。遮断手段の操作完了後、系統制御システム側の遮断器を復帰させ、導体部10による送電を停止した状態で、外部常電導導電部材16による送電を行い、超電導ケーブル100を常電導ケーブル線路として運用する。
【0091】
(3)真空断熱容器14の断熱空間に熱伝導材料となる気体が充填され、真空断熱管14の断熱性能が低下し、導体部10の放熱が可能になったことを確認したら、系統制御システム側の遮断器によって一旦送電を停止し、超電導ケーブル100を送電系統から切り離す。そして、一方の遮断手段33aの第一遮断手段34を接続状態に切り替え、各遮断手段33a,33bにおいて、導体部10側及び外部常電導導電部材16側を接続状態にする。遮断手段の操作完了後、系統制御システム側の遮断器を復帰させ、外部常電導導電部材16だけでなく、導体部10(内部常電導導電部材)も送電用導体に利用して送電を行う。この場合、外部常電導導電部材のみを送電用導体に利用して常電導ケーブル線路として運用する場合に比較して、導体部10(内部常電導導電部材)も送電用導体に利用することで、常電導ケーブル運用時の送電容量を上げることができる。
【0092】
(4)超電導ケーブル100を、導体部10(内部常電導導電部材)も送電用導体に利用して常電導ケーブル線路として運用している間に、冷却機構が復帰したら、一旦送電を停止し、超電導ケーブル100を送電系統から切り離す。そして、一方の遮断手段33aの第一遮断手段34を遮断状態に切り替え、導体部10側の接続を遮断すると共に、一方の遮断手段33aの第二遮断手段35及び他方の遮断手段33bを接続状態にして、外部常電導導電部材16側を接続状態にする。遮断手段の操作完了後、系統制御システム側の遮断器を復帰させ、導体部10による送電を停止した状態で、外部常電導導電部材16による送電を行う。また、導体部10による送電を停止した後、開閉バルブ440Bを閉じて気体供給原420と真空断熱管14の断熱空間との連通を遮断し、さらに開閉バルブ440Aを開ける。そして、真空ポンプ410で真空断熱管14の断熱空間内の気体を排気して、断熱空間を所定の真空度まで真空引きする。
【0093】
(5)真空断熱管14の断熱空間が所定の真空度に達したら、開閉バルブ440A及び開閉バルブ470を閉じ、復帰した冷却機構200により冷媒20の供給を開始し、冷媒20を循環させる。また、系統制御システム側の遮断器によって一旦送電を停止し、超電導ケーブル100を送電系統から切り離す。超電導ケーブル100が超電導ケーブル線路として所定の機能を満足することを確認し、一方の遮断手段33aの第一遮断手段34を接続状態に切り替え、各遮断手段33a,33bにおいて、導体部10側及び外部常電導導電部材16側を接続状態にする。遮断手段の操作完了後、系統制御システム側の遮断器を復帰させ、導体部10を主たる送電用導体に利用して、超電導ケーブル100を再度超電導ケーブル線路として運用する。
【0094】
<作用効果>
上記した実施形態2に係る超電導ケーブルシステムによれば、実施形態1の作用効果に加えて、次の作用効果を奏する。この構成によれば、冷却機能喪失時には真空断熱管14の断熱性能を低下させ、通常時の真空断熱管14を伝熱管とすることができる。よって、超電導ケーブル100を常電導ケーブル線路として運用する際、導体部10(内部常電導導電部材)も送電用導体に利用しても、導体部10の発熱を放熱して、導体部10の温度上昇を抑制することができる。そのため、導体部10の温度上昇を回避しつつ、常電導ケーブル運用時の送電容量を上げることができる。
【0095】
また、真空ポンプ410と気体供給源420とを選択的に真空断熱管14の断熱空間に連通することで、冷却機構200の復帰後、真空ポンプ410で真空断熱管14の断熱空間を再度真空に戻し、超電導ケーブル100を再度超電導ケーブル線路として運用することができる。特に、真空断熱管14の断熱空間や冷媒流路に気体を導入することで、冷却機能喪失時のケーブルの昇温を効率的に行うことができる。
【0096】
さらに、第一遮断手段34により第一電流リード31を選択的に接続・遮断して導体部10への送電を制御することで、冷却機能喪失時に真空断熱管14の断熱性能が確実に低下するまでの間、並びに、冷却機構復帰時に真空ポンプ410で所定の真空度まで真空引きする間は、導体部10による送電を停止した状態で、外部常電導導電部材16による送電を行うことができる。
【0097】
上記した実施形態2のシステムでは、真空断熱管14の断熱空間に真空ポンプ410及び気体供給源420を連通管450を介して接続し、真空断熱管14の断熱空間に気体を供給したり、真空断熱管14の断熱空間を真空引きする場合を説明した。さらに、真空断熱容器40の断熱空間にも、真空断熱管14と同様に、連通管を介して真空ポンプ410及び気体供給源420を接続してもよい。このように構成することで、真空断熱容器40の断熱空間にも気体を供給して断熱容器40の断熱性能を低下させ、断熱容器40内の導体部10の発熱を放熱することができる。また、真空断熱容器40の断熱空間も真空引きして断熱空間を再度真空に戻し、再度超電導ケーブル線路として利用することができる。
【0098】
なお、天災などの不測の事態により、冷媒の冷却機構200が正常に動作しなくなった場合、超電導ケーブル100の状態の確認や、必要に応じて超電導ケーブルを改修する必要がある。そこで、真空ポンプ410や気体供給源420などが超電導ケーブルシステムの建設当初から設置されていない場合、この期間を活用して、事後的に設置しても、問題は少ない。むしろ、通常時(超電導ケーブル運用時)に高電圧となる真空断熱管40に連通管450などを接続しておく方が危険な場合もあり、安全面から送電を停止した状態で、事後的に設置することが好ましい。
【0099】
(実施形態3)
次に、冷却機能喪失時に、超電導ケーブルの真空断熱管の断熱空間に液体を充填して、超電導ケーブルを常電導ケーブル線路として運用する実施形態3に係る超電導ケーブルシステムを
図6に基づいて説明する。このシステムの基本的な構成は、
図5に示す実施形態2と共通であるため、主に相違点を説明する。このシステムは、熱伝導材料となる液体を貯留する液体供給源520と、この液体供給源520から真空断熱管14の断熱空間に液体を供給する供給管522と、真空断熱管14の断熱空間から液体を排出する排出管524と、液体供給源520と真空断熱管14の断熱空間とを連通・遮断する第二バルブ526とを備える。
【0100】
[液体供給源]
液体供給源520は、真空断熱管14の断熱空間に供給する熱伝導材料となる液体を貯留する。通常、タンクが液体供給源520として好適に利用できる。液体の具体例としては、安価で入手が容易な水が利用できる。本例では、この液体供給源520にポンプ528(圧送手段)を併設している。このポンプ528は、液体を加圧して断熱空間に圧送する。さらに、必要に応じて、液体供給源520には放熱機構(図示略)を設けてもよい。放熱機構は、排出管524から液体供給源520に戻された液体を再度冷却するもので、液体供給源520を構成するタンクの外周に放熱フィンを設けたり、ラジエータなどの構成が利用できる。
【0101】
[供給管・排出管]
液体供給源520と真空断熱管14の断熱空間とは、供給管522及び排出管524を介して連通されている。この液体供給源520、供給管522、真空断熱管14及び排出管524を流通経路として冷媒20を循環させる。本例では、真空断熱管14の一端側(
図6の左側)に供給管522を接続し、断熱管14の他端側(
図6の右側)に排出管524を接続している。
【0102】
[第二バルブ]
上記した供給管522及び排出管524の各々には、開閉バルブ526,526が設けられ、その両開閉バルブで第二バルブ526が構成される。この第二バルブ526を開放することで、液体供給源520から液体を真空断熱管14の断熱空間に供給でき、同バルブ526、526を閉じることで、液体供給源520と真空断熱管14の断熱空間とを遮断する。
【0103】
実施形態3のシステムにおいても、実施形態2と同様に、上記した液体供給源520、供給管522、排出管524及び第二バルブ526は、超電導ケーブルシステムの建設当初から設置されているか、事後的に設置されるかは問わない。例えば、液体供給源520などの構成部材を超電導ケーブルシステムの建設当初から設置しておいてもよいし、超電導ケーブルシステムにこれら部材を取り付けるための取付部を設けておき、冷却機能喪失時に事後的に設置してもよい。或いは、真空断熱管14に短い供給管522及び排出管524と第二バルブ526とを予め接続しておき、これを取付部として、冷却機能喪失時に残りの供給管522及び排出管524や液体供給源520などを事後的に接続してもよい。
【0104】
液体供給源520(ポンプ528を含む)は接地電位にある。一方、超電導ケーブル100は常温絶縁型であり、送電線路に利用した際、真空断熱管14が高電位となるため、真空断熱管14と液体供給源520との間に絶縁継手455を設けている。本例では、供給管522及び排出管524における開閉バルブ526,526と液体供給源520との間に絶縁継手455を設けている。
【0105】
<システムの運用手順>
(1)通常時、超電導ケーブル100を超電導ケーブル線路として運用する点は、上述した実施形態2と同様である。その際、第二バルブ526(開閉バルブ526,526)は閉じられている。
【0106】
(2)冷却機能喪失時、実施形態2と同様に、超電導ケーブル100が送電系統から切り離され、また、冷却機構200の冷凍機210や循環機構(ポンプ)が停止し、昇温により気化した冷媒20は循環経路から排出される。気化した冷媒20が外部に排出された後、第二バルブ526(開閉バルブ526,526)を開いて、液体供給源520から真空断熱管14の断熱空間に水を導入する。真空断熱管14の断熱空間に水が充填されることにより、真空断熱管14の断熱性能が低下し、断熱管14が伝熱管となる。
【0107】
また、真空断熱管14の断熱性能が低下するまでの間、実施形態2と同様に、一方の遮断手段33aの第一遮断手段34を遮断状態に切り替え、導体部10側の接続を遮断すると共に、一方の遮断手段33aの第二遮断手段35及び他方の遮断手段33bを接続状態にして、外部常電導導電部材16側を接続状態にする。遮断手段の操作完了後、系統制御システム側の遮断器を復帰させ、導体部10による送電を停止した状態で、外部常電導導電部材16による送電を行い、超電導ケーブル100を常電導ケーブル線路として運用する。
【0108】
(3)真空断熱管14の断熱性能が低下し、導体部10の放熱が可能になったことを確認したら、系統制御システム側の遮断器によって一旦送電を停止し、超電導ケーブル100を送電系統から切り離す。そして、一方の遮断手段33aの第一遮断手段34を接続状態に切り替え、各遮断手段33a,33bにおいて、導体部10側及び外部常電導導電部材16側を接続状態にする。遮断手段の操作完了後、系統制御システム側の遮断器を復帰させ、外部常電導導電部材16だけでなく、導体部10(内部常電導導電部材)も送電用導体に利用して送電を行う。このとき、真空断熱管14の断熱空間に液体を循環させ、断熱管14を冷却することで、送電による導体部10(内部常電導導電部材)の発熱に伴う温度上昇を効果的に抑制することもできる。
【0109】
<作用効果>
上記した実施形態3に係る超電導ケーブルシステムでも、実施形態2と同様に、冷却機能喪失時には真空断熱管14の断熱性能を低下させることができる。よって、超電導ケーブル100を常電導ケーブル線路として運用する際、導体部10(内部常電導導電部材)も送電用導体に利用しても、導体部10の発熱を放熱して、導体部10の温度上昇を抑制することができる。特に、真空断熱管14の断熱空間に水を循環させることで、常電導ケーブル運用時の導体部10(内部常電導導電部材)の発熱に伴う温度上昇を効果的に抑制することもできる。
【0110】
上記した実施形態3のシステムでは、真空断熱管14の断熱空間に液体供給源520を供給管522及び排出管524を介して接続し、真空断熱管14の断熱空間に水を供給する場合を説明した。さらに、真空断熱容器40の断熱空間にも、真空断熱管14と同様に、供給管522及び排出管524を介して液体供給源520を接続してもよい。このように構成することで、真空断熱容器40の断熱空間にも液体を供給して断熱容器40の断熱性能を低下させ、断熱容器40内の導体部10の発熱を放熱することができる。
【0111】
(実施形態4)
次に、冷却機能喪失時に、真空断熱管の冷媒流路内の冷媒を気化させ、その気化冷媒を真空断熱管の断熱空間に充填して、超電導ケーブルを常電導ケーブル線路として運用する実施形態4に係る超電導ケーブルシステムを
図7に基づいて説明する。このシステムの基本的な構成は、
図5に示す実施形態2と共通であるため、主に相違点を説明する。このシステムは、真空断熱管14の冷媒流路と断熱空間とを連通させる連通管610、放圧弁620、熱交換部630及び第三バルブ640を備える。
【0112】
[連通管]
連通管610は、真空断熱管14の冷媒流路と断熱空間とを連通する配管である。冷却機能喪失時、冷却機構200が正常に動作しないため、冷媒20の温度が上昇し、液体の冷媒20は気化する。連通管610は、気化した冷媒20を真空断熱管14の冷媒流路から断熱空間に導入させる。
【0113】
[放圧弁]
上記した連通管610の途中には、放圧弁620が設けられている。冷却機能喪失時、冷媒20は気化する際に急激な体積膨張を伴うため、放圧弁620を開放することで、連通管610内の圧力が過大にならにように制御することができる。
【0114】
[熱交換部]
上記した連通管610の途中には、熱交換部630も設けられている。冷媒20は気化しても相当な低温である。例えば液体窒素の場合、1気圧では約77K(-196℃)で気化して窒素ガスになるが、気化した窒素ガスも極低温の気体である。このような低温の気化冷媒が直ちに真空断熱管14の断熱空間に導入されると、断熱管14が急激に冷却され、断熱管14に近接する他の部材に対して悪影響を及ぼす虞がある。そのため、気化冷媒を熱交換部630で昇温してから断熱空間に導入することで、上記の悪影響を受けることを防止できる。熱交換部630の具体的な構成としては、連通管610の途中に気化した冷媒20を貯留できる適宜な容器を設けることが挙げられる。この容器はフィンを設けるなどして外気との接触面積を増やすことで、気化した冷媒20の昇温をより効率的に行うことができる。或いは、連通管610を長くすることも熱交換部630として利用できる。
【0115】
[第三バルブ]
さらに、連通管610の途中には、第三バルブ640が設けられている。本例では、熱交換部630と真空断熱管14の断熱空間との間の連通管610の途中、並びに、熱交換部630と真空断熱管14の冷媒流路との間の連通管610の途中に、開閉バルブ640,640がそれぞれ設けられ、その両開閉バルブで第三バルブ640が構成される。通常時、真空断熱管14の断熱空間は真空であるため、この第三バルブ640を開放すれば、気化した冷媒20が真空断熱管14の断熱空間に導入される。本例では、熱交換部630と真空断熱管14の冷媒流路との間の連通管610の途中に開閉バルブ640を設けるようにしているが、この開閉バルブは省略してもよい。
【0116】
実施形態4のシステムにおいても、実施形態2と同様に、上記した連通管610、放圧弁620、熱交換部630及び第三バルブ640は、超電導ケーブルシステムの建設当初から設置されているか、事後的に設置されるかは問わない。例えば、熱交換部630などの構成部材を超電導ケーブルシステムの建設当初から設置しておいてもよいし、超電導ケーブルシステムにこれら部材を取り付けるための取付部を設けておき、冷却機能喪失時に事後的に設置してもよい。或いは、真空断熱管14に連通管610の一部と第三バルブ640とを予め接続しておき、これを取付部として、冷却機能喪失時に残りの連通管や熱交換部630などを事後的に接続してもよい。
【0117】
熱交換部630は接地電位にあることから、実施形態2と同様に、真空断熱管14と熱交換部630との間に絶縁継手455を設けている。本例では、連通管610における開閉バルブ640,640と熱交換部630との間に絶縁継手455を設けている。
【0118】
<システムの運用手順>
(1)通常時、超電導ケーブル100を超電導ケーブル線路として運用する点は、上述した実施形態2と同様である。その際、第三バルブ640は閉じられている。
【0119】
(2)冷却機能喪失時、実施形態2と同様に、超電導ケーブル100が送電系統から切り離され、また、冷却機構200の冷凍機210や循環機構(ポンプ)が停止し、冷媒20の温度が上昇する。液体冷媒20が昇温して気化すると、第三バルブ640を開放して、真空断熱管14の冷媒流路から連通管610を介して真空断熱管14の断熱空間に気化した冷媒を導入する。その際、必要に応じて、放圧弁620を開放し、連通管610内の圧力が過大にならにように制御する。気化した冷媒20は、連通管610を通って熱交換部630に一旦導入され、そこで、昇温される。そして、昇温された気化冷媒が断熱空間に導入される。この気化冷媒の導入により、真空断熱管14の断熱性能が低下し、断熱管14が伝熱管となる。
【0120】
また、真空断熱管14の断熱性能が低下するまでの間、実施形態2と同様に、一方の遮断手段33aの第一遮断手段34を遮断状態に切り替え、導体部10側の接続を遮断すると共に、一方の遮断手段33aの第二遮断手段35及び他方の遮断手段33bを接続状態にして、外部常電導導電部材16側を接続状態にする。遮断手段の操作完了後、系統制御システム側の遮断器を復帰させ、導体部10による送電を停止した状態で、外部常電導導電部材16による送電を行い、超電導ケーブル100を常電導ケーブル線路として運用する。
【0121】
(3)真空断熱管14の断熱性能が低下し、導体部10の放熱が可能になったことを確認したら、系統制御システム側の遮断器によって一旦送電を停止し、超電導ケーブル100を送電系統から切り離す。そして、一方の遮断手段33aの第一遮断手段34を接続状態に切り替え、各遮断手段33a,33bにおいて、導体部10側及び外部常電導導電部材16側を接続状態にする。遮断手段の操作完了後、系統制御システム側の遮断器を復帰させ、外部常電導導電部材16だけでなく、導体部10(内部常電導導電部材)も送電用導体に利用して送電を行う。
【0122】
<作用効果>
上記した実施形態4に係る超電導ケーブルシステムでも、実施形態2と同様に、冷却機能喪失時には真空断熱管14の断熱性能を低下させることができる。よって、超電導ケーブル100を常電導ケーブル線路として運用する際、導体部10(内部常電導導電部材)も送電用導体に利用しても、導体部10の発熱を放熱して、導体部10の温度上昇を抑制することができる。特に、真空断熱管14の冷媒流路内の気化した冷媒20を熱伝導材料として真空断熱管14の断熱空間に導入するため、上記冷媒20とは別に断熱空間に充填する熱伝導材料を用意しておく必要がない。また、放熱弁620を設けることで、気化した冷媒20によって、連通管610内が過大な圧力になることを防止できる。さらに、熱交換部630を設けることで、気化した冷媒20が過度に低温のまま断熱空間に導入されることを防止し、断熱管14に近接する部材に悪影響が及ぶことも回避できる。
【0123】
上記した実施形態4のシステムでは、真空断熱管14の冷媒流路と断熱空間とを連通管610を介して連通させ、気化した冷媒を真空断熱管14の断熱空間に充填する場合を説明した。さらに、真空断熱容器40の断熱空間にも、真空断熱管14と同様に、冷媒流路と真空断熱容器40の断熱空間とを連通管610を介して連通させてもよい。このように構成することで、真空断熱容器40の断熱空間にも気化した冷媒を充填して断熱容器40の断熱性能を低下させ、断熱容器40内の導体部10の発熱を放熱することができる。
【0124】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、第一電流リード、第二電流リード、遮断手段(第一遮断手段や第二遮断手段)の配置やその形態を適宜変更してもよい。また、上述した実施形態2〜4の各実施形態において、冷却機能喪失時に断熱空間に熱伝導材料を充填するための構成を個々に設けているが、これら個々の構成を組み合わせて利用してもよい。その他、超電導ケーブルのフォーマを非導電材料で形成してもよい。