【実施例】
【0063】
本発明に関連し、大きく分けて2つの実験(実験1、2)を行った。以下に、これら実験について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
−実験1−
(比較例1)
比較例1として、
図11に示すような腸骨動脈用ステントLUMINEXX(BARD社)(ステント11)を用いた。LUMINEXXの外径は8.0mm、全長は40.0mmであった。
【0065】
(実施例1)
重量比でNi:Ti=55:45のNiTi合金のパイプを冷間加工し、外径2.2mm、肉厚170μm、長さ約1mの超弾性金属パイプを作製した。また、作製したパイプを使用して、レーザーによるステント加工を行い、展開状態で
図1に示す展開図の構造を有するステント1を作成した。尚、
図2、3、4は、それぞれステント1の略波形構成要素、連結部、環状セクションの部分拡大図である。
【0066】
レーザーによるステント加工には、数値制御加工機械を用い、
図1に示すようなステントの展開図を読み込ませ、ステントに対するレーザーの位置を、それに対応する数値情報で指令することにより加工を行った。レーザーの電圧は197Vとした。次に切り出したステントに対して、ステント内面のバリの除去、平滑化をするために内面研磨作業(ホーニング)を行った。ホーニングにはステント内径よりも細い径のダイヤモンドバーを使用した。次にステントの拡径作業を実施した。ステントの内腔に直径3.0mmの芯材を通し、熱処理炉に入れ、数分間熱をかけた後、水中に浸すことで急冷し拡径した形状を記憶させた。ここで、熱処理炉は酸化雰囲気炉、電気炉、塩浴炉の中から選ばれることが好ましく、熱処理の温度は480〜520℃であることが好ましく、熱処理時間は5〜15分であることが好ましく、芯材の材質として、真鍮若しくはステンレス鋼であることが好ましい。上記熱処理工程を4.0mm、6.0mm、8.0mmの各径にて行い、目標とする径まで拡張させた。
【0067】
次にブラスト工程を行った。ブラストは数値制御加工機械を用い、約17μmの酸化アルミナ粉末をノズルから吹き出し、ステント外表面、内表面の酸化皮膜、バリを除去する工程である。その後、電解研磨工程を行うことで表面を平滑化すると共に、光沢を持たせた。
【0068】
環状セクション中の略波形構成要素2の数は12個であり、環状セクション4に含まれる連結部3の数は3個である。また、隣り合う略波形構成要素2を形成するストラット間の内側曲率半径の中心軸が円周方向で同一直線上であり、略波形構成要素2のストラット内側曲率半径中心201と、外側曲率半径中心202との間の距離は100μmである。また、略波形構成要素2のストラット間の外側曲率半径204は110μmであり、内側曲率半径203は30μmである。略波形構成要素2の頂点の幅206は180μmであり、ストラットの幅205は80μmであり、ストラットの肉厚は160μmである。また、作成されたステントの外径は8.0mm、全長は40.0mmであった。
【0069】
(実施例2)
重量比でNi:Ti=55:45のNiTi合金のパイプを冷間加工し、外径2.2mm、肉厚220μm、長さ約1mの超弾性金属パイプを作製した。作製したパイプを使用して、レーザーによるステント加工を行い、展開状態で
図12に示す展開図の構造を有するステント12を作成した。尚、
図13、14、15は、それぞれステント12の略波形構成要素、連結部、環状セクションの部分拡大図である。
【0070】
レーザーによるステント加工には、数値制御加工機械を用い、
図12に示すようなステントの展開図を読み込ませ、ステントに対するレーザーの位置を、それに対応する数値情報で指令することにより加工を行った。レーザーの電圧は197Vとした。次に切り出したステントに対して、ステント内面のバリの除去、平滑化をするために内面研磨作業(ホーニング)を行った。ホーニングにはステント内径よりも細い径のダイヤモンドバーを使用した。次にステントの拡径作業を実施した。ステントの内腔に直径3.0mmの芯材を通し、熱処理炉に入れ、数分間熱をかけた後、水中に浸すことで急冷し拡径した形状を記憶させた。ここで、熱処理炉は酸化雰囲気炉、電気炉、塩浴炉の中から選ばれることが好ましく、熱処理の温度は480〜520℃であることが好ましく、熱処理時間は5〜15分であることが好ましく、芯材の材質として、真鍮若しくはステンレス鋼であることが好ましい。上記熱処理工程を4.0mm、6.0mm、8.0mmの各径にて行い、目標とする径まで拡張させた。
【0071】
次にブラスト工程を行った。ブラストは数値制御加工機械を用い、約17μmの酸化アルミナ粉末をノズルから吹き出し、ステント外表面、内表面の酸化皮膜、バリを除去する工程である。その後、電解研磨工程を行うことで表面を平滑化すると共に、光沢を持たせた。
【0072】
環状セクション中の略波形構成要素13の数は12個であり、環状セクション15に含まれる連結部14の数は3個である。
【0073】
また、隣り合う略波形構成要素13を形成するストラット間の内側曲率半径の中心軸が円周方向で同一直線上であり、略波形構成要素13のストラット内側曲率半径中心1301と、外側曲率半径中心1302との間の距離は40μmである。また、略波形構成要素13のストラット間の外側曲率半径1304は160μmであり、内側曲率半径1303は40μmである。略波形構成要素13の頂点の幅1306は160μmであり、ストラットの幅1305は100μmであり、ストラットの肉厚は200μmである。また、作成されたステントの外径は8.0mm、全長は40.0mmであった。
【0074】
(参考例1)
重量比でNi:Ti=55:45のNiTi合金のパイプを冷間加工し、外径2.2mm、肉厚220μm、長さ約1mの超弾性金属パイプを作製した。作製したパイプを使用して、レーザーによるステント加工を行い、展開状態で
図16に示す展開図の構造を有するステント16を作成した。尚、
図17、18、19は、それぞれステント16の略波形構成要素、連結部、環状セクションの部分拡大図である。
【0075】
レーザーによるステント加工には、数値制御加工機械を用い、
図16に示すようなステントの展開図を読み込ませ、ステントに対するレーザーの位置を、それに対応する数値情報で指令することにより加工を行った。レーザーの電圧は197Vとした。次に切り出したステントに対して、ステント内面のバリの除去、平滑化をするために内面研磨作業(ホーニング)を行った。ホーニングにはステント内径よりも細い径のダイヤモンドバーを使用した。次にステントの拡径作業を実施した。ステントの内腔に直径3.0mmの芯材を通し、熱処理炉に入れ、数分間熱をかけた後、水中に浸すことで急冷し拡径した形状を記憶させた。ここで、熱処理炉は酸化雰囲気炉、電気炉、塩浴炉の中から選ばれることが好ましく、熱処理の温度は480〜520℃であることが好ましく、熱処理時間は5〜15分であることが好ましく、芯材の材質として、真鍮若しくはステンレス鋼であることが好ましい。上記熱処理工程を4.0mm、6.0mm、8.0mmの各径にて行い、目標とする径まで拡張させた。
【0076】
次にブラスト工程を行った。ブラストは数値制御加工機械を用い、約17μmの酸化アルミナ粉末をノズルから吹き出し、ステント外表面、内表面の酸化皮膜、バリを除去する工程である。その後、電解研磨工程を行うことで表面を平滑化すると共に、光沢を持たせた。
【0077】
環状セクション中の略波形構成要素17の数は12個であり、環状セクション19に含まれる連結部18の数は4個である。
【0078】
隣り合う略波形構成要素17を形成するストラット間の内側曲率半径の中心軸が円周方向で同一直線上であり、略波形構成要素17のストラット内側曲率半径中心1701と、外側曲率半径中心1702との間の距離は40μmである。
【0079】
また、略波形構成要素17のストラット間の外側曲率半径1704は160μmであり、内側曲率半径1703は40μmである。略波形構成要素17の頂点の幅1706は160μmであり、ストラットの幅1705は100μmであり、ストラットの肉厚は200μmである。また、作成されたステントの外径は8.0mm、全長は40.0mmであった。
【0080】
(評価)
上記比較例1、参考例1および実施例1、2に関して、以下の評価を実施した。
【0081】
(1)有限要素解析による疲労耐久性評価
ステントに負荷(曲げ、捩り、長軸方向圧縮)をかけたときの最大相当応力を調べるため、有限要素解析を実施した。最大相当応力は金属の疲労耐久性と相関があり、最大相当応力が高いほど、疲労による破損が起こりやすい。有限要素解析には汎用有限要素解析ソフトANSYS(ANSYS社)を使用した。ステントモデルは3次元8節点構造ソリッド要素にて作成し、厚み方向に2層のメッシュを切った。比較例1、参考例1、実施例1、2ともにモデルの寸法を外径8.0mm、全長30.0mmとした。
【0082】
(曲げ解析)
ステントの両端をビーム要素で拘束し、両端に9°の回転変位をかけ、そのときの最大相当応力を調べた。
【0083】
(捩り解析)
ステントの両端をビーム要素で拘束し、片端の全自由度を固定し、もう片端を長軸方向の軸に対して30°の回転変位で捩り、そのときの最大相当応力を調べた。
【0084】
(長軸方向の圧縮解析)
ステントの両端をビーム要素で拘束し、片端の全自由度を固定し、もう片端をステント全長の7%に相当する長軸方向の圧縮を加え、そのときの最大相当応力を調べた。
【0085】
各解析の最大相当応力を表1に示した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示した様に、曲げ、捩り、長軸方向の圧縮負荷をかけた時の最大相当応力は、総じて実施例1、2が低く、比較例1、参考例1は高い結果であった(但し、参考例1は比較例1に比べ、有意に低い値であった。)。その中でも、特に実施例1の最大相当応力値は低く、良好な結果であった。
【0088】
(2)物性評価
ステントの物性(柔軟性、長軸方向の柔軟性)を調べるために、3点曲げ試験及び長軸方向の圧縮試験を行った。疲労耐久性と物性には相関があり、荷重値が低いほど応力集中が少なくなり、耐久疲労性が向上する。引張り・圧縮試験機はEz−Test(株式会社島津製作所)を使用した。NiTi合金の場合、雰囲気温度によって物性が変化するため、人体内での使用を想定し、断熱材で引張り・圧縮試験機を囲い、37±2℃の雰囲気温度条件で試験を行った。
【0089】
(柔軟性)
図20に示すように引張り・圧縮試験機に押し込み治具2001を取り付け、支点間距離2002を36mmとして、50mm/minの速度でステントを2.4mm押し込んだ時の荷重を計測した。
【0090】
(長軸方向の柔軟性)
図21に示すように引張り・圧縮試験機にステント全体が縮径できるような圧縮治具2101を取り付け、その下に平板2102を置いて50mm/minの速度でステントを2.8mm押し込んだ時の荷重を計測した。
【0091】
各物性評価の結果を表2に示した。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示した様に、柔軟性、長軸方向の柔軟性は、総じて実施例1、2が高く(荷重が低く)、比較例1、参考例1は低い(荷重が高い)結果であった(但し、参考例1は比較例1に比べ、有意に柔軟性が高い結果であった。)。その中でも、特に実施例1の各柔軟性は低く、良好な結果であった。
【0094】
(3)回転曲げ疲労耐久試験機による疲労耐久性評価
ステントの疲労耐久性を評価するため、回転曲げ疲労耐久試験機を用いた疲労耐久試験を行った。回転曲げ疲労耐久試験は一定の曲げモーメントを作用させた丸棒を回転させ、圧縮、引張りの正弦波応力を繰り返し負荷することで、ステントの疲労耐久性を評価するものである。
図22に示すように、比較例1、参考例1および実施例1、2に示すステントを内径8.0mm、肉厚2mmのシリコンチューブ2201に挿入し、シリコンチューブの両端に9°の角度をつけて、500rpmの回転数で丸棒に接続したモーター2202を回転させて試験を行った。疲労耐久性評価はステントが破損するまでのサイクル数(破損サイクル数)で評価した。
【0095】
回転曲げ疲労耐久試験の結果を表3に示した。
【0096】
【表3】
【0097】
表3に示した様に、回転曲げ疲労耐久試験による疲労耐久性評価では、本発明に係る実施例1、2が比較例1、参考例1と比較しても破損が発生せず、良好な結果であった(参考例1は破損を生じたが、比較例1に比べその耐久回数は高く、有意に疲労耐久性が向上していることが確認される。)。
【0098】
(4)キンク時内径保持率
ステントを折り曲げた時(キンク)に、ステント内腔を保持する割合を評価した。比較例1、参考例1および実施例1、2に示すステントの両端を、ステント中央の外側Rが10mmとなるように曲げ、その時のステント内径をマイクロハイスコープ(KEYENCE VH−7000)で、倍率を20倍として計測した。内腔保持率を以下の式にて計算し、結果を表4に示した。
内腔保持率(%)=キンク時内径×100/ステント内径
【0099】
【表4】
【0100】
表4に示した様に、キンク時内径保持率の評価では、本発明に係る実施例1、2が比較例1、参考例1に比べ内腔保持率が高い結果であった(但し、参考例1は比較例1に比べ、有意にキンク時内径保持率が高い結果であった。)。特に実施例1は高く、良好な結果であった。
【0101】
(5)ステントが血管と接触する面積率(Metallic surface area)
ステントが血管と接触する面積率(Metallic surface area)を算出することにより、病変部位をカバーする割合を評価した。比較例1、参考例1および実施例1、2に示すステントに関して、Auto CAD(Autodesk社)の面積計算機能を用いて、ステントの展開図から抜き取る面積を算出し、以下の式にて計算を行った。結果を表5に示した。
面積率(Metallic surface area)(%)
=(筒状管状表面−ステントから抜き取る面積)×100/筒状管状表面
【0102】
【表5】
【0103】
表5に示した様に、ステントが血管と接触する面積率の算出の評価では、本発明に係る実施例1が、実施例2、比較例1、参考例1と比較して大きく、良好な結果であった。
【0104】
−実験2−
(比較例11)
重量比でNi:Ti=55:45のNiTi合金のパイプを冷間加工し、外径2.2mm、肉厚220μm、長さ約1mの超弾性金属パイプを作製した。作製したパイプを使用して、レーザーによるステント加工を行い、非拡張状態で
図23に示す展開図の構造を有するステント23を作成した。尚、
図24、25、26、27は、それぞれステント23の略波形構成要素、連結部、環状セクションの部分拡大図、及び拡張状態における展開図である。
【0105】
レーザーによるステント加工には、数値制御加工機械を用い、
図23に示すようなステントの展開図を読み込ませ、ステントに対するレーザーの位置を、それに対応する数値情報で指令することにより加工を行った。レーザーの電圧は197Vとした。次に切り出したステントに対して、ステント内面のバリの除去、平滑化をするために内面研磨作業(ホーニング)を行った。ホーニングにはステント内径よりも細い径のダイヤモンドバーを使用した。次にステントの拡径作業を実施した。ステントの内腔に直径3.0mmの芯材を通し、熱処理炉に入れ、数分間熱をかけた後、水中に浸すことで急冷し拡径した形状を記憶させた。ここで、熱処理炉は酸化雰囲気炉、電気炉、塩浴炉の中から選ばれることが好ましく、熱処理の温度は480〜520℃であることが好ましく、熱処理時間は5〜15分であることが好ましく、芯材の材質として、真鍮若しくはステンレス鋼であることが好ましい。上記熱処理工程を4.0mm、6.0mmの各径にて行い、目標とする径まで拡張させた。
【0106】
次にブラスト工程を行った。ブラストは数値制御加工機械を用い、約17μmの酸化アルミナ粉末をノズルから吹き出し、ステント外表面、内表面の酸化皮膜、バリを除去する工程である。その後、電解研磨工程を行うことで表面を平滑化すると共に、光沢を持たせた。
【0107】
環状セクション中の略波形構成要素24の数は8個であり、環状セクション26に含まれる連結部25の数は2個である。
【0108】
また、隣り合う略波形構成要素24を形成するストラット間の内側曲率半径の中心軸が円周方向で同一直線上であり、略波形構成要素24のストラット内側曲率半径中心2401と、外側曲率半径中心2402との間の距離は100μmである。また、略波形構成要素24のストラット間の外側曲率半径2404は140μmであり、内側曲率半径2403は40μmである。略波形構成要素24のストラット間の内側曲率半径2404と外側曲率半径2403を形成する屈曲部の幅2406は200μmであり、ストラットの幅2405は100μmであり、ストラットの肉厚は200μmである。また、作成されたステントの外径は6.0mm、全長は60.0mmであった。
【0109】
(
参考例11)
重量比でNi:Ti=55:45のNiTi合金のパイプを冷間加工し、外径2.2mm、肉厚220μm、長さ約1mの超弾性金属パイプを作製した。作製したパイプを使用して、レーザーによるステント加工を行い、非拡張状態で
図6に示す展開図の構造を有するステント6を作成した。尚、
図7、8、9、10は、それぞれステント6の略波形構成要素、連結部、環状セクションの部分拡大図、及び拡張状態における展開図である。
【0110】
レーザーによるステント加工には、数値制御加工機械を用い、
図6に示すようなステントの展開図を読み込ませ、ステントに対するレーザーの位置を、それに対応する数値情報で指令することにより加工を行った。レーザーの電圧は197Vとした。次に切り出したステントに対して、ステント内面のバリの除去、平滑化をするために内面研磨作業(ホーニング)を行った。ホーニングにはステント内径よりも細い径のダイヤモンドバーを使用した。次にステントの拡径作業を実施した。ステントの内腔に直径3.0mmの芯材を通し、熱処理炉に入れ、数分間熱をかけた後、水中に浸すことで急冷し拡径した形状を記憶させた。ここで、熱処理炉は酸化雰囲気炉、電気炉、塩浴炉の中から選ばれることが好ましく、熱処理の温度は480〜520℃であることが好ましく、熱処理時間は5〜15分であることが好ましく、芯材の材質として、真鍮若しくはステンレス鋼であることが好ましい。上記熱処理工程を4.0mm、6.0mmの各径にて行い、目標とする径まで拡張させた。
【0111】
次にブラスト工程を行った。ブラストは数値制御加工機械を用い、約17μmの酸化アルミナ粉末をノズルから吹き出し、ステント外表面、内表面の酸化皮膜、バリを除去する工程である。その後、電解研磨工程を行うことで表面を平滑化すると共に、光沢を持たせた。
【0112】
環状セクション中の略波形構成要素7の数は8個であり、環状セクション9に含まれる連結部8の数は2個である。
【0113】
また、隣り合う略波形構成要素2を形成するストラット間の内側曲率半径の中心軸が円周方向で同一直線上であり、略波形構成要素7のストラット内側曲率半径中心701と、外側曲率半径中心702との間の距離は100μmである。また、略波形構成要素7のストラット間の外側曲率半径704は140μmであり、内側曲率半径703は40μmである。略波形構成要素7のストラット間の内側曲率半径704と外側曲率半径703を形成する屈曲部の幅706は200μmであり、ストラットの幅705は100μmであり、ストラットの肉厚は200μmである。また、作成されたステントの外径は6.0mm、全長は60.0mmであった。
【0114】
(
参考例12)
重量比でNi:Ti=55:45のNiTi合金のパイプを冷間加工し、外径2.2mm、肉厚220μm、長さ約1mの超弾性金属パイプを作製した。作製したパイプを使用して、レーザーによるステント加工を行い、非拡張状態で
図28に示す展開図の構造を有するステント28を作成した。尚、
図29、30、31、32は、それぞれステント28の略波形構成要素、連結部、環状セクションの部分拡大図、及び拡張状態における展開図である。
【0115】
レーザーによるステント加工には、数値制御加工機械を用い、
図28に示すようなステントの展開図を読み込ませ、ステントに対するレーザーの位置を、それに対応する数値情報で指令することにより加工を行った。レーザーの電圧は197Vとした。次に切り出したステントに対して、ステント内面のバリの除去、平滑化をするために内面研磨作業(ホーニング)を行った。ホーニングにはステント内径よりも細い径のダイヤモンドバーを使用した。次にステントの拡径作業を実施した。ステントの内腔に直径3.0mmの芯材を通し、熱処理炉に入れ、数分間熱をかけた後、水中に浸すことで急冷し拡径した形状を記憶させた。ここで、熱処理炉は酸化雰囲気炉、電気炉、塩浴炉の中から選ばれることが好ましく、熱処理の温度は480〜520℃であることが好ましく、熱処理時間は5〜15分であることが好ましく、芯材の材質として、真鍮若しくはステンレス鋼であることが好ましい。上記熱処理工程を4.0mm、6.0mmの各径にて行い、目標とする径まで拡張させた。
【0116】
次にブラスト工程を行った。ブラストは数値制御加工機械を用い、約17μmの酸化アルミナ粉末をノズルから吹き出し、ステント外表面、内表面の酸化皮膜、バリを除去する工程である。その後、電解研磨工程を行うことで表面を平滑化すると共に、光沢を持たせた。
【0117】
環状セクション中の略波形構成要素29の数は8個であり、環状セクション31に含まれる連結部30の数は2個である。
【0118】
また、隣り合う略波形構成要素29を形成するストラット間の内側曲率半径の中心軸が円周方向で同一直線上であり、略波形構成要素29のストラット内側曲率半径中心2901と、外側曲率半径中心2902との間の距離は100μmである。また、略波形構成要素29のストラット間の外側曲率半径2904は140μmであり、内側曲率半径2903は40μmである。略波形構成要素29のストラット間の内側曲率半径2904と外側曲率半径2903を形成する屈曲部の幅2906は200μmであり、ストラットの幅2905は100μmであり、ストラットの肉厚は200μmである。また、作成されたステントの外径は6.0mm、全長は60.0mmであった。
【0119】
(比較例12)
重量比でNi:Ti=55:45のNiTi合金のパイプを冷間加工し、外径2.2mm、肉厚220μm、長さ約1mの超弾性金属パイプを作製した。作製したパイプを使用して、レーザーによるステント加工を行い、展開状態で
図33に示す展開図の構造を有するステント33を作成した。尚、
図34、35、36は、それぞれステント33の略波形構成要素、連結部、環状セクションの部分拡大図である。
【0120】
レーザーによるステント加工には、数値制御加工機械を用い、
図33に示すようなステントの展開図を読み込ませ、ステントに対するレーザーの位置を、それに対応する数値情報で指令することにより加工を行った。レーザーの電圧は197Vとした。次に切り出したステントに対して、ステント内面のバリの除去、平滑化をするために内面研磨作業(ホーニング)を行った。ホーニングにはステント内径よりも細い径のダイヤモンドバーを使用した。次にステントの拡径作業を実施した。ステントの内腔に直径3.0mmの芯材を通し、熱処理炉に入れ、数分間熱をかけた後、水中に浸すことで急冷し拡径した形状を記憶させた。ここで、熱処理炉は酸化雰囲気炉、電気炉、塩浴炉の中から選ばれることが好ましく、熱処理の温度は480〜520℃であることが好ましく、熱処理時間は5〜15分であることが好ましく、芯材の材質として、真鍮若しくはステンレス鋼であることが好ましい。上記熱処理工程を4.0mm、6.0mm、8.0mmの各径にて行い、目標とする径まで拡張させた。
【0121】
次にブラスト工程を行った。ブラストは数値制御加工機械を用い、約17μmの酸化アルミナ粉末をノズルから吹き出し、ステント外表面、内表面の酸化皮膜、バリを除去する工程である。その後、電解研磨工程を行うことで表面を平滑化すると共に、光沢を持たせた。
【0122】
環状セクション中の略波形構成要素34の数は12個であり、環状セクション36に含まれる連結部35の数は4個である。
【0123】
隣り合う略波形構成要素34を形成するストラット間の内側曲率半径の中心軸が円周方向で同一直線上であり、略波形構成要素34のストラット内側曲率半径中心3401と、外側曲率半径中心3402との間の距離は40μmである。
【0124】
また、略波形構成要素34のストラット間の外側曲率半径3404は160μmであり、内側曲率半径3403は40μmである。略波形構成要素34のストラット間の内側曲率半径3404と外側曲率半径3403を形成する屈曲部の幅3406は160μmであり、ストラットの幅3405は100μmであり、ストラットの肉厚は200μmである。また、作成されたステントの外径は8.0mm、全長は70.0mmであった。
【0125】
(評価)
上記比較例11、12および
参考例11、12に関して、以下の評価を実施した。
【0126】
(1)有限要素解析による疲労耐久性評価
ステントに負荷(曲げ、捩り、長軸方向圧縮)をかけたときの最大相当応力を調べるため、有限要素解析を実施した。最大相当応力は金属の疲労耐久性と相関があり、最大相当応力が高いほど、疲労による破損が起こりやすい。有限要素解析には汎用有限要素解析ソフトANSYS(ANSYS社)を使用した。ステントモデルは3次元8節点構造ソリッド要素にて作成し、厚み方向に2層のメッシュを切った。比較例11、
参考例11〜12のモデルの寸法を外径6.0mm、全長30.0mm、比較例12のモデルの寸法を外径8.0mm、全長30.0mmとした。
【0127】
(曲げ解析)
ステントの両端をビーム要素で拘束し、両端に9°の回転変位をかけ、そのときの最大相当応力を調べた。
【0128】
(捩り解析)
ステントの両端をビーム要素で拘束し、片端の全自由度を固定し、もう片端を長軸方向の軸に対して30°の回転変位で捩り、そのときの最大相当応力を調べた。
【0129】
(長軸方向の圧縮解析)
ステントの両端をビーム要素で拘束し、片端の全自由度を固定し、もう片端をステント全長の7%に相当する長軸方向の圧縮を加え、そのときの最大相当応力を調べた。各解析の最大相当応力を表6に示す。
【0130】
【表6】
【0131】
表6に示した様に、曲げ、捩り、長軸方向の圧縮負荷をかけた時の最大相当応力は、本発明に係る
参考例11、12は比較例11と同様に良好な結果であった。一方、比較例12は最大相当応力がどの解析においても最も大きい結果となった。
【0132】
(2)拡張均一性評価
図37に示す様に、略波形構成要素中の連結部を形成しない頂点を除く、隣り合う環状セクションの中の略波形構成要素が略勘合する関係で配置された山及び谷同士の距離(円周方向ストラット間距離、3701)を、ステント全体のうち、任意の隣り合う2つの環状セクションにおいてそれぞれ測定し、平均値、標準偏差を算出した。拡張均一性評価の結果を表7に示した。
【0133】
【表7】
【0134】
表7に示した様に、拡張均一性評価は、本発明に係る
参考例11、12が比較例11と比較してもストラット間距離の平均値、標準偏差が小さく、均一に拡張されている結果となった。
【0135】
(3)軸圧縮疲労耐久試験機による疲労耐久性評価
ステントの疲労耐久性を評価するため、軸圧縮疲労耐久試験機を用いた疲労耐久試験を行った。軸圧縮疲労耐久試験は往復スライダクランク機構を利用して、モーターの回転を往復運動に変換し、一定変位量を繰り返し負荷することで、ステントの疲労耐久性を評価するものである。
図38に示すように、比較例11、比較例12、および
参考例11、12に示すステント3801を装置に取り付け、軸方向に12mmの変位(長軸方向の長さが60mmのステントの20%に相当)を加え、100rpmの回転数でモーター3802を回転させて試験を行った。軸圧縮疲労耐久性評価はステントが破損するまでのサイクル数(破損サイクル数)で評価した。
【0136】
【表8】
【0137】
表8に示した様に、軸圧縮疲労耐久試験による疲労耐久性評価では、本発明に係る
参考例11、12は比較例11と同様に破損が発生せず、良好な結果であった。一方、比較例12は途中で破損した。
【0138】
(4)クリンピング評価
ステントをクリンピング後のチューブの挿入性能を評価した。ステントのクリンピングには自己拡張型ステントクリンピング装置 SC900(MSI社)を使用した。チューブには外径2mm、内径1.7mmのシリコンチューブを使用した。最初に4mmのプレクリンプを行い、その後1.68mmまでポストクリンプを行い、チューブにステントを挿入した。ステントをチューブに全て挿入できた場合をクリンピング成功とし、全て挿入できなかった場合をクリンピング失敗として評価した。
【0139】
【表9】
【0140】
表9に示した様に、クリンピング評価では、本発明に係る
参考例11、12が比較例11と比較してもクリンピング成功率が高い結果であった。
【0141】
(5)ステントが血管と接触する面積率(Metallic surface area)
ステントが血管と接触する面積率(Metallic surface area)を算出することにより、病変部位をカバーする割合を評価した。比較例11、および
参考例11、12に示すステントに関して、Auto CAD(Autodesk社)の面積計算機能を用いて、ステントの展開図から抜き取る面積を算出し、以下の式にて計算を行った。結果を表10に示した。
面積率(Metallic surface area)(%)
=(筒状管状表面−ステントから抜き取る面積)×100/筒状管状表面
【0142】
【表10】
【0143】
表10に示した様に、ステントが血管と接触する面積率の算出の評価では、本発明に係る
参考例11、12が比較例11、12と比較して大きく、良好な結果であった。