特許第5796780号(P5796780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5796780-ワーク圧入方法及び装置 図000002
  • 特許5796780-ワーク圧入方法及び装置 図000003
  • 特許5796780-ワーク圧入方法及び装置 図000004
  • 特許5796780-ワーク圧入方法及び装置 図000005
  • 特許5796780-ワーク圧入方法及び装置 図000006
  • 特許5796780-ワーク圧入方法及び装置 図000007
  • 特許5796780-ワーク圧入方法及び装置 図000008
  • 特許5796780-ワーク圧入方法及び装置 図000009
  • 特許5796780-ワーク圧入方法及び装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796780
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ワーク圧入方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 21/00 20060101AFI20151001BHJP
   B23P 19/02 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   B23P21/00 303B
   B23P19/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-21426(P2012-21426)
(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公開番号】特開2013-158863(P2013-158863A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸二
(72)【発明者】
【氏名】今井 靖典
【審査官】 谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−072329(JP,U)
【文献】 実開平03−011529(JP,U)
【文献】 特開2010−082753(JP,A)
【文献】 特開平08−150520(JP,A)
【文献】 特開平09−174358(JP,A)
【文献】 特開昭61−228182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 21/00
B23P 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の減速装置や変速装置に配置される軸部材に環状ワークを圧入するワーク圧入装置であって、
前記軸部材には、段差部が形成され、該段差部に当接して位置決めされる第1環状ワークを基台上に支持する台座が設けられ、
該台座に支持された前記第1環状ワークの外周を覆い、且つ該第1環状ワークの上方に形成されて上面に第2環状ワークの下端面が当接支持される支持面を形成すると共に、該支持面には前記軸部材の下端が挿通可能な挿通孔を形成した受台と、
前記軸部材の上端に係合して前記軸部材を下方へ押し下げて圧入力を付与する押圧治具を備え、
前記受台は、2分割されてそれぞれが前記基台に形成されたガイド部にガイドされ、相対移動手段により水平方向に開閉して支持位置と退避位置とに移動可能に構成されることを特徴とするワーク圧入装置。
【請求項2】
前記軸部材の下端部には所定深さの中空状のガイド穴が形成され、前記台座には前記ガイド穴に挿通可能な垂直支持軸が立設していることを特徴とする請求項1に記載のワーク圧入装置。
【請求項3】
前記基台上には複数の軸部材が設置され、複数の軸部材のそれぞれに対して同時に前記第1環状ワークおよび第2環状ワークの圧入が行われることを特徴とする請求項1に記載のワーク圧入装置。
【請求項4】
自動車の減速装置や変速装置に配置される軸部材に環状ワークを圧入するワーク圧入方法であって、
基台上に固定された台座上に第1環状ワークを支持する工程と、
前記第1環状ワークの外周を覆い、且つ該第1環状ワークの上方に形成され受台の支持面に第2環状ワークを支持する工程と、
前記受台の支持面に支持された第2環状ワークの挿通孔に前記軸部材の下端を挿入して軸部材の段差部に当接するまで圧入する工程と、
前記第2環状ワークの挿通孔に前記軸部材を圧入した後に、前記受台を前記軸部材の軸方向と直角方向に移動させて退避させる工程と、
該受台の退避後に前記台座上に支持された前記第1環状ワークの挿通孔に前記軸部材の下端を圧入する工程と、を有し、単一の圧入工程で前記第2環状ワークおよび第1環状ワークを連続して前記軸部材に圧入することを特徴とするワーク圧入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の減速装置や変速装置内の入・出力シャフトに装着される軸受や歯車の圧入に用いるワーク圧入方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される減速装置や変速装置等の組立ラインでは、インプットシャフトまたはカウンターシャフトに軸受や軸受等の構成部品を圧入するために圧入装置が使用されている。このような圧入装置として、特許文献1及び特許文献2が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示される圧入装置は、トランスミッション上のメインシャフトやカウンターシャフトに仮止めされた環状ワークである軸受や歯車をメインシャフトやカウンターシャフトの軸方向での所定位置に圧入するものである。
また、特許文献2に開示される圧入装置は、メインシャフト用軸受とカウンターシャフト用軸受(環状ワーク)を、それぞれトランスミッションケースの軸受取付孔に圧入するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−82753号公報
【特許文献2】特開平9−174358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載される圧入装置は、軸受や歯車となる環状ワークをメインシャフトやカウンターシャフトの軸方向で所定位置に圧入し、また、特許文献2に記載された圧入装置は、メインシャフト用軸受とカウンターシャフト用軸受となる環状ワークを、それぞれトランスミッションケースの軸受取付孔に圧入するものである。
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に開示される圧入装置は、1つの環状ワークをメインシャフトやカウンターシャフト、またはトランスミッションケースの軸受取付孔に圧入するものであり、複数の環状ワークを圧入する場合には、複数の圧入工程を必要とする。複数の圧入行程は組立工数が増加するため生産性が低下するだけでなくコスト高となることから、圧入工数の削減が可能となるような圧入装置または圧入方法が望まれていた。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、減速装置や変速装置に組込まれる軸部材に軸受や歯車などの複数の環状ワークを単一の圧入工程で圧入することで、圧入工数の削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るワークの圧入装置は、自動車の減速装置や変速装置に配置される軸部材に環状ワークを圧入するワーク圧入装置であって、前記軸部材には、段差部が形成され、該段差部に当接して位置決めされる第1環状ワークを基台上に支持する台座が設けられ、該台座に支持された前記第1環状ワークの外周を覆い、且つ該第1環状ワークの上方に形成されて上面に第2環状ワークの下端面が当接支持される支持面を形成すると共に、該支持面には前記軸部材の下端が挿通可能な挿通孔を形成した受台と、前記軸部材の上端に係合して前記軸部材を下方へ押し下げて圧入力を付与する押圧治具を備え、前記受台は、2分割されてそれぞれが前記基台に形成されたガイド部にガイドされ、相対移動手段により水平方向に開閉して支持位置と退避位置とに移動可能に構成されることを特徴とする。
【0009】
かかる発明によれば、前記軸部材には段差部が形成されており、該段差部に当接して位置決めされる第1環状ワークを基台上に支持する台座が設けられ、該台座に支持された前記第1環状ワークの外周を覆い、且つ該第1環状ワークの上方に形成されて上面に第2環状ワークの下端面が当接支持される支持面を形成すると共に、該支持面には前記軸部材の下端が挿通可能な挿通孔を形成した受台と、前記軸部材の上端に係合して前記軸部材を下方へ押し下げて圧入力を付与する押圧治具を備えるので、押圧治具を介して軸部材が下方に押圧されて、受台の支持面に支持された第2環状ワークの貫通孔に前記軸部材の下端を圧入することができる。すなわち、受台が第2環状ワークに対する押圧力を支持する。
【0010】
さらに、本発明によると、前記受台は、2分割されてそれぞれが前記基台に形成されたガイド部にガイドされ、相対移動手段により水平方向に開閉して支持位置と退避位置とに移動可能に構成されるので、第2環状ワークの挿通孔に軸部材の下端を圧入した後に、受台を相対移動手段により水平方向に開いて退避位置に移動することで、該受台が退避後に前記台座上に支持された第1環状ワークの挿通孔に前記軸部材の下端を圧入することができる。すなわち、この第1環状ワークに対する押圧力は基台上に台座で支持される。
以上の受台による支持と、台座による支持によって、単一の圧入工程で第2環状ワークおよび第1環状ワークを連続して軸部材に圧入することができるようになる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記軸部材の下端部には所定深さの中空状のガイド穴が形成され、前記台座には前記ガイド穴に挿通可能な垂直支持軸が立設していることを特徴とする。
かかる構成によれば、前記受台が相対移動手段により分割して退避位置に移動した場合は、台座に立設した垂直支持軸がガイド穴内に挿通保持され垂直支持軸に支持されるので、前記軸部材を安定に立設保持することができる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記基台上には複数の軸部材が設置され、複数の軸部材のそれぞれに対して同時に前記第1環状ワークおよび第2環状ワークの圧入が行われることを特徴とする。
かかる構成によれば、変速機を構成するインプットシャフトおよびアウトプットシャフト等の複数のシャフトを基台上に設置して、それぞれのシャフトに対して第1環状ワークおよび第2環状ワークを同時に圧入することで、一層圧入工数を削減することができる。
【0013】
また、本発明に係るワークの圧入方法は、自動車の減速装置や変速装置に配置される軸部材に環状ワークを圧入するワーク圧入方法であって、
基台上に固定された台座上に第1環状ワークを支持する工程と、前記第1環状ワークの外周を覆い、且つ該第1環状ワークの上方に形成され受台の支持面に第2環状ワークを支持する工程と、前記受台の支持面に支持された第2環状ワークの挿通孔に前記軸部材の下端を挿入して軸部材の段差部に当接するまで圧入する工程と、前記第2環状ワークの挿通孔に前記軸部材を圧入した後に、前記受台を前記軸部材の軸方向と直角方向に移動させて退避させる工程と、該受台の退避後に前記台座上に支持された前記第1環状ワークの挿通孔に前記軸部材の下端を圧入する工程と、を有し、単一の圧入工程で前記第2環状ワークおよび第1環状ワークを連続して前記軸部材に圧入することを特徴とする。
かかる発明によれば、前記装置発明で説明したように垂直軸線上に支持された第1、第2環状ワークに対して、軸部材を単一の圧入工程で順次圧入することができる。これにより、圧入工数を削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上記載のごとく本発明によれば、軸部材は、下方に押圧される際に第2環状ワークの上端面が前記段部に当接するまで移動する。次いで受台が相対移動手段の作用により、退避位置まで移動された状態で軸部材を下方に押圧する。これにより、軸部材の下端が第1環状ワークの挿通孔に挿嵌される。
このように、垂直軸線上に支持された第1、第2軸状ワークに対して、軸部材を単一の圧入工程で順次圧入することができる。言い換えれば、軸部材に第1、第2環状ワークを単一の圧入工程で順次圧入することができる。
【0015】
従って、減速装置や変速装置に組込まれる軸部材に軸受や歯車などの複数の環状ワークを単一の圧入工程で圧入することで、圧入工数の削減を図ることが可能になる。
【0016】
また、本発明に係るワークの圧入方法においても、前述のように、軸部材に第1、第2環状ワークを単一の圧入工程で順次圧入することができる。これにより、圧入工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る圧入対象となる環状ワークが組込まれた電気自動車の減速装置の部分断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るワーク圧入装置の断面を示し、軸部材に圧入対象となる第1〜第3環状ワークを圧入する圧入工程を示す説明図である。
図3図2のA−A断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るワーク圧入装置の平面図である。
図5図3のB−B断面図である。
図6図3のC−C断面図である。
図7図4のD−D断面図である。
図8】第3環状ワークを圧入する装着具の例である。
図9】第3環状ワークを圧入する装着具の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
図1は本発明に係る一実施形態に係る圧入対象となるワークが組込まれた電気自動車の減速装置の部分断面図、図2は本発明の一実施形態に係るワーク圧入装置の断面を示し、軸部材に圧入の対象となる第1〜第3環状ワークを圧入する圧入工程を示す説明図、図3図2のA−A断面図、図4はワーク圧入装置の平面図、図5図4のB−B断面図、図6図4のC−C断面図、図7図5のD−D断面図である。
【0020】
図1に示す部分断面図は、減速装置1の内部構造を示しており、減速装置1は、図示しないモータからの動力を伝えるインプットシャフト5と、減速装置1の出力軸(図示せず)と繋がるディファレンシャル6と、インプットシャフト5とディファレンシャル6を繋ぐカウンターシャフト4とがギアケース2内に組込まれている。
【0021】
また、カウンターシャフト(第1軸部材4)は、一端側に小歯車8が一体形成されており、両端は第3、第4軸受B3,B4により回転自在に支持されている。インプットシャフト(第2軸部材5)は、両端が第1、第2軸受B1,B2により回転自在に支持されており、中間には小歯車12が一体形成されている。この小歯車12は、カウンターシャフト4の中間に装着された歯車10に噛合している。
図2に示すワーク圧入装置において、15は基台であって、この基台15上面には一対のガイドレール20a〜20dが直線状に配置されており(図2においては不図示)、これらガイドレール20a〜20dにガイドされて矩形状のスライドベース22a,22bが夫々中間の分割部Sを境にして左右方向に相対移動可能に設けられている。
【0022】
前記スライドベース22a,22bの両側は、基台15の上面に貼付けられた摩擦係数の少ないスライド板25a,25bにより摺動可能に支持されている。
図2において、26は第1軸部材4に第2環状ワーク(歯車G1)(後述する)を圧入する際に第2環状ワーク(歯車G1)の下端を支持する受台である。
この受台26は、中心部から半径方向に2分割された2つの分割受台26a,26bから成り(図4参照)、前記分割受台26a,26bは、前記スライドベース22a,22bの分割部Sを挟んで両側の上面にボルトによりそれぞれ取り付けられている。
【0023】
また、図3に示す28は、第2軸部材5に第2環状ワーク(歯車G2)(後述する)を圧入する際に第2環状ワークGの下端を支持する受台である。
この受台28は、中心部から半径方向に2分割された2つの分割受台28a,28bから成り、前記分割受台28a,28bは、前記スライドベース22a,22bの分割部Sを挟んで両側の上面にボルトによりそれぞれ取り付けられている。
尚、基台15上の第1軸部材4と第2軸部材5の軸間距離はワーク圧入装置における軸間距離であり、減速装置1に組込まれる第1軸部材4と第2軸部材5の軸間距離と同一とすることなく設置されている。
【0024】
次に、前記受台26、28を相対移動により分割部Sから左右に開閉する相対移動手段Rについて、図4図6を基に説明する。
図4図5図4のB−B断面図)、及び図6には相対移動手段が示されている。この相対移動手段Rは、ラックピニオン機構で構成されており、このラックピニオン機構は、基台15上に取付けられたブラケット32a、32bに2本のラックバー30a,30bが相対的に移動可能に例えばメタル軸受を介して摺動可能に支持されている。
【0025】
上下に対向して配置される2本のラックバー30a,30bの対向面にはラック歯が形成されており、両ラックバー30a,30bの中間部位にはピニオン歯車34が噛合している。
図5図7に示すように、基台15上にはガイドブロック37が固定されており、前記ピニオン歯車34は両側から突出した軸34a、34bにより回転自在に軸支されている。
従って、図5に示すように上下に配置された一対のラックバー30a,30bは、一方(下部)のラックバー30aを矢印方向(左方向)に押圧すると他方(上部)のラックバー30bは反対の矢印方向(左方向)に同じ距離相対移動する。そして、受台26、28は退避位置と支持位置とに移動する。
【0026】
また、図4図6において、前記一対のラックバー30a,30bには、軸方向と直交する方向に一対のアーム38,39がオフセット状態で取付けられている。
前記各アーム38,39の先端は、第2環状ワークGの下端を支持する受台26の分割部Sを基準として左右方向に配置されたスライドベース22a,22bの上面に取付けられている。
【0027】
同様に、前記一対のラックバー30a,30b(図5参照)にも軸方向と直交する方向に一対のアーム40,41がオフセット状態で取付けられており、前記各アーム40,41の先端は、第2環状ワークGの下端を支持する受台28の分割部Sを基準として左右方向に配置されたスライドベース22a,22bの上面に取付けられている。
また、基台15の左右に配置される第1、第2軸部材4、5を支持する受台26,28は、図4に示すように2つ割りに分割された分割部Sに微小な隙間が形成されている。
【0028】
また、図4において分割部Sを基準としてアーム38を取付けた下方ラックバー30aの軸方向内側には固定ブロック35aが、アーム39を取付けた上方ラックバー30bの軸方向内側には固定ブロック35bが夫々クランプにより取付けられている。
更に、分割部Sを基準としてアーム40を取付けた下方ラックバー30aの軸方向内側には固定ブロック36aが、アーム39を取付けた上方ラックバー30bの軸方向内側には固定ブロック36bが夫々クランプにより取付けられている。
このように、一対のアーム38,39は、固定ブロック35a,35bに対し当接ネジの頭部との当接により受台26の微小間隔を調整可能とされている。
また、一対のアーム40,41は、固定ブロック36a,36bに対し当接ネジの頭部との当接により受台28の微小間隔を調整可能とされている。
【0029】
次に、第1軸部材4に第1環状ワーク(第1軸受B1)、第2環状ワーク(歯車G1)、第3環状ワーク(第2軸受B2)を圧入する方法、並びに第2軸部材5に第1環状ワーク(第1軸受B1)、第2環状ワーク(歯車G1)、第3環状ワーク(第2軸受B2)を圧入する方法に付き図2を参照して説明する。
尚、図2図3において、中心線を基準として左側は第1工程、右側は第2工程を示している。
【0030】
先ず、第1軸部材4専用の台座23の凹状支持部には、第1軸受(第1環状ワーク)B1が支持されており、前記凹状支持部の底面の中央には垂直支持軸50が第1軸受B1の挿通口を通して立設している。
この垂直支持軸50は、第1軸部材4の下端に形成された所定深さのガイド穴4aに挿通させて、前記第1軸部材4を垂直に立設保持しており、前記台座23の凹状支持部には、第1軸受(第1環状ワーク)B1が支持されている。
前記台座23の外周を覆う分割受台26a,26bの支持面29には、第2環状ワーク(歯車G1)が支持されており、前記歯車G1の挿通孔には前記垂直支持軸50が挿通している。
【0031】
次に、前記歯車G1の挿通孔から上方に挿通した垂直支持軸50が第1軸部材4下端のガイド穴4aに挿入されると、前記第1軸部材4は上端に装着された装着具J1を介して押圧治具Hにより上方から押圧する。この押圧力は受台26の支持面29で支持される。そして押圧力により、前記第1軸部材4の下端が第2環状ワーク(歯車G1)の挿通孔に圧入される。
前記第2環状ワーク(歯車G1)の挿通孔に圧入された第1軸部材4は、小歯車52の下端面(段差部)が当接するまで下方に移動する。尚、第1軸部材4の上端に挿嵌されている第3環状ワーク(第2軸受B2)の圧入動作は図8、9を参照して後述する。
【0032】
一方、第2軸部材5専用の台座27の中央上面には垂直支持軸50が第3軸受B3の挿通口を通して立設している。
この垂直支持軸50は、第2軸部材5の下端に形成された所定深さのガイド穴5aに挿通させて、前記第2軸部材5を垂直に立設保持しており、前記台座27の凹状支持部には、軸受B3(第1環状ワーク)が支持されている。
そこで、第2軸部材5は、下端部に装着された第3軸受B3(第1環状ワーク)が台座27の上面に支持された状態で、外周が2つ割りの受台28に覆われると共に2つ割りの受台28上面の支持面29には第2環状ワーク(歯車G2)が支持されている。
【0033】
次に、第2軸部材5の下端を歯車G2の挿通孔に挿入した状態で、前記第2軸部材5の上端に装着された装着具J2を介して押圧治具Hにより上方から押圧することで第2軸部材(インプットシャフト)5の下端が圧入される。
【0034】
次の工程では、歯車G2の挿通孔内に第2軸部材5の下端を移動させつつ、第2軸部材5の中央に一体形成される小歯車53の下端面(段差部)が当接するまで圧入する。
【0035】
尚、第2軸部材5の上端に挿嵌されている第3環状ワーク(第4軸受B4)の圧入工程は図8図9で説明する。図8は第3環状ワーク(第4軸受B4)を第2軸部材5に圧入する際に採用される装着具の例、図9は第3環状ワーク(第4軸受B4)を第2軸部材5に圧入する際に採用される装着具の変形例である。
【0036】
図8において、第2軸部材5の上端に装着される押圧治具Hの外周には、装着具J3が上下に摺動可能に摩擦力で保持されており、この状態では軸受B4の上面に装着具J3のスリーブ下端が当接した状態にある。
そこで、装着具J3を別の駆動源により下方に押圧することで、第4軸受B4は第2軸部材5の上方に形成された段差部53aに当接するまで下方に圧入される。すなわち、この例では、装着具J2による押圧移動によって第3軸受B3および歯車G2に圧入された後に、装着具J3によって、第4軸受B4が圧入される。
【0037】
また、図9に示す変形例の装着具J4は、前述した装着具J2のスリーブ長さを少し延長したものである。
この装着具J4は、第2軸部材5の上端と押圧治具Hの下端により有底部が挟持されており、この状態での装着具J4の下端は、第4軸受B4の上端に対し僅かの隙間を形成して対向している。
【0038】
まず、押圧治具Hにより装着具J4を下方に押圧移動させることにより、第4軸受B4は摩擦力に抗して前記第4軸受B4の下面が第2軸部材5の段差部53aに当接するまで移動する。さらに、押圧移動させると歯車G2が小歯車53の下端面(段差部)に当接するまで圧入される。
【0039】
そして、次の工程で、第2軸部材5の受台28を、分割部Sを境にして左右方向の退避位置に相対移動させる。このように開放した状態で第2軸部材5を更に下方に移動することで、第2軸部材5の下端に第3軸受B3が圧入されて、第2軸部材5へ第3軸受B3、歯車G2及び第4軸受B4の圧入作業が完成する。
【0040】
このように、第2軸部材5を軸方向下方に移動する単一の圧入工程で第3軸受B3、歯車G2及び第4軸受B4を連続的に圧入することができる。これにより、圧入工数を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、減速装置や変速装置に組込まれる軸部材に軸受や歯車などの複数の環状ワークを単一の圧入工程で圧入することで、圧入工数の削減できるので、電気自動車の減速装置に限らず、鉄道車両や船舶、航空機等における減速装置や変速装置の軸部材に対する環状ワークの圧入にも適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 減速装置
4 第1軸部材(カウンターシャフト)
4a,5a ガイド穴
5 第2軸部材(インプットシャフト)
8,12 小歯車
15 基台
23,27 台座
26,28 受台
29 支持面
50 垂直支持軸
53a 段差部
B1 第1軸受(第1環状ワーク)
B2 第2軸受(第3環状ワーク)
B3 第3軸受(第1環状ワーク)
B4 第4軸受(第3環状ワーク)
G1、G2 歯車(第2環状ワーク)
H 押圧治具
J1,J2,J3,J4 装着具
R 相対移動手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9