(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796783
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】複合紙ソリッドケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 9/06 20060101AFI20151001BHJP
H01B 3/52 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
H01B9/06 B
H01B3/52 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-160020(P2012-160020)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-22201(P2014-22201A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正幸
(72)【発明者】
【氏名】真山 修二
【審査官】
神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−224546(JP,A)
【文献】
特開昭58−028111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 9/06
H01B 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂とクラフト紙とが積層一体化された複合紙が導体の外周に巻回されてなる複合紙層に絶縁油が含浸された油浸絶縁層を具える複合紙ソリッドケーブルであって、
前記複合紙に絶縁油を含浸させる前後における前記樹脂の厚さの変化率を膨潤指標とするとき、
前記油浸絶縁層において導体側領域を構成する複合紙の膨潤指標が、前記油浸絶縁層において外周側領域を構成する複合紙の膨潤指標よりも大きい複合紙ソリッドケーブル。
【請求項2】
前記導体側領域を構成する複合紙の前記膨潤指標、及びこの複合紙に占める樹脂の割合の双方が、前記外周側領域を構成する複合紙の前記膨潤指標、及びこの複合紙に占める樹脂の割合よりも大きい請求項1に記載の複合紙ソリッドケーブル。
【請求項3】
前記油浸絶縁層の外周側から導体側に向かって、連続的に又は段階的に前記複合紙の膨潤指標が大きい請求項1又は2に記載の複合紙ソリッドケーブル。
【請求項4】
前記複合紙は、ポリオレフィン系樹脂とクラフト紙とが積層一体化されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合紙ソリッドケーブル。
【請求項5】
前記複合紙は、ポリプロピレン層の両面にクラフト紙が積層一体化されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合紙ソリッドケーブル。
【請求項6】
直流送電に用いられる請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合紙ソリッドケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体の外周に複合紙(半合成絶縁紙)を用いた油浸絶縁層を具える複合紙ソリッドケーブルに関する。特に、安定した絶縁性能を有する複合紙ソリッドケーブルや生産性に優れる複合紙ソリッドケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
長距離の海底電力線路を構成する電力ケーブルとして、導体の外周に絶縁紙が巻回され、この絶縁紙層に絶縁油が含浸された油浸絶縁層を具える直流用ソリッドケーブルがある。絶縁紙には、従来、クラフト紙が利用されている。特許文献1では、絶縁紙として、クラフト紙と、ポリオレフィン系樹脂とを複合した複合紙(半合成絶縁紙)、例えば、PPLP(住友電気工業株式会社の登録商標)を利用することを提案している。
【0003】
PPLP(登録商標)といった複合紙は、従来、OFケーブル用の絶縁紙として開発されたものである。OFケーブルは、複合紙を巻回してなる複合紙層に低粘度の絶縁油が常温で含浸され、運転時に絶縁油が加圧状態で使用される。そのため、OFケーブルは、安定した絶縁性能を得ることができる。
【0004】
一方、従来のソリッドケーブルは、クラフト紙を巻回してなるクラフト紙層に高粘度の絶縁油が含浸され、運転時に絶縁油が加圧されない。そのため、運転時の温度変化に伴う絶縁油の体積変化に起因して、温度の低下時に負圧状態となり、ボイドといった絶縁油の欠乏空間が生じて絶縁性能が低下し得る。そこで、上記ボイドなどが生じても所望の絶縁性能を維持可能な電界(ストレス)を設定すると共に、運転時の温度上昇に伴って絶縁油の粘度が低下することで絶縁油が移動し、この移動により生じ得る欠陥を抑制するために絶縁油が所定の高粘度状態を維持できるように、従来のクラフト紙ソリッドケーブルは、最高使用温度を規定している。従来のクラフト紙ソリッドケーブルでは、運転時の電界がOFケーブルよりも小さく、運転温度も低い。
【0005】
OFケーブルやソリッドケーブルのような油浸紙ケーブルでは、絶縁紙を所定のピッチで、かつ所定の隙間をあけて螺旋状に巻回し、ラジアル方向に積層させて絶縁紙層を形成する。より詳しくは、絶縁紙層は、絶縁紙の巻回方向が右巻の層と左巻の層とがラジアル方向に交互に積層されて構成される。上記隙間は、ケーブル製造時から線路運転時においてケーブルが受ける曲げ等の機械的履歴に対して、絶縁紙(ここでは複合紙)が動くためのスペースに相当する。上記隙間が無いと、絶縁紙が座屈したり、皺が生じたりし、上記隙間が広過ぎると、電気絶縁上の弱点となる。そのため、上記隙間の大きさは、ケーブル製造時に管理されている。
【0006】
ソリッドケーブルでは、絶縁紙層の外側から絶縁油が加圧含浸される。複合紙ソリッドケーブルでは、
図3に示すように隙間gと複合紙30を構成するクラフト紙3bとで絶縁油の含浸経路を構築する。複合紙30を構成する樹脂3aは、絶縁油の流路を分断する。つまり、複合紙層では、樹脂3aによって複合紙層のラジアル方向の絶縁油の移動を抑制でき、脱油の影響を低減できる。そのため、複合紙ソリッドケーブルでは、運転時の電界や運転温度をOFケーブルと同等程度にまで高めることができ、送電容量の向上を図ることができると期待される。また、このような複合紙ソリッドケーブルは、既存のクラフト紙ソリッドケーブルに比較して、海底電力線路の小型化にも寄与すると期待される。なお、
図3に示す黒破線矢印は、絶縁油の含浸方向を示す。
【0007】
複合紙に利用されるポリプロピレン(PP)などの樹脂の絶縁抵抗(体積抵抗率と等価)は、クラフト紙や絶縁油に比較して非常に大きい。また、直流電圧は抵抗分圧される。従って、直流用ソリッドケーブルの絶縁紙に複合紙を適用すると、直流電圧のほとんどを樹脂部分によって負担できる。この点から、複合紙ソリッドケーブルは、既存のクラフト紙ソリッドケーブルよりも耐電圧特性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11-224546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非常に長距離(例えば、数百km)に及ぶ大容量の海底電力線路を構築する場合、直流用ケーブルの適用が必須となる。そして、大容量の直流用ケーブルには、上述の複合紙ソリッドケーブルが適すると考えられる。また、運転時の許容温度の更なる向上が望まれることから、高温使用であっても、絶縁油の移動を抑制して、最も温度が上昇する導体近傍で脱油に伴う欠陥の形成を防止すること、即ち、導体近傍に絶縁油が常時存在して、安定した絶縁性能が得られることが望まれる。そのためには、温度が高くなる導体近傍に存在する絶縁油が高粘度であればよい。
【0010】
例えば、高粘度の絶縁油を複合紙ソリッドケーブルに適用することが考えられる。しかし、この場合、上述のように複合紙における樹脂部分が絶縁油の流路を分断することによって、複合紙層への絶縁油の含浸期間が長期化し易く、生産性の低下を招く恐れがある。また、上述の分断によって、含浸の不良箇所が生じ得る恐れもある。
【0011】
複合紙の樹脂として、絶縁油の含浸によって樹脂の厚さが増加する膨潤特性を有するものが用いられる場合がある。膨潤特性は、絶縁油中の低分子量成分(絶縁油の分子量分布をとったとき、分子量が低い側の成分)が上記樹脂に吸収されることで生じる特性であることが知られている。上述のように絶縁紙層の外側から絶縁油が含浸されるソリッドケーブルに対して、絶縁紙に、上記膨潤特性を有する樹脂を含む複合紙を用いると、含浸過程の初期の絶縁油(先頭の絶縁油)は、複合紙層の外周側領域を構成する複合紙(以下、外側複合紙と呼ぶ)中の樹脂に接触することで、絶縁油中の低分子量成分が上記樹脂に吸収されて徐々に減じられ、高分子量成分の割合が相対的に高まり、粘度が上昇する(増粘する)。そして、増粘した絶縁油が導体側に向かう(含浸していく)。この含浸過程では、順次、低分子量成分が減じられていない絶縁油(以下、フレッシュな油と呼ぶ)が複合紙層の外側から供給されて、外側複合紙は常にフレッシュな油が接触して膨潤し、絶縁油の増粘が生じる。フレッシュな油が常に接触し得る外側複合紙は、含浸過程の早い段階で所定の膨潤が完了し、膨潤完了後にフレッシュな油が接触しても膨潤は進行せず、絶縁油の増粘も生じ無い。増粘した絶縁油とフレッシュな油とがある程度混ざり合いながら複合紙層の導体側に絶縁油が含浸される。そのため、複合紙層の導体側領域に含浸された絶縁油の粘度は、順次供給される絶縁油(フレッシュな油)よりも高くなる。そして、絶縁油の含浸後、油浸絶縁層に含浸された絶縁油は、フレッシュな油の粘度に対して、外周側から導体側に向かって粘度が高い。
【0012】
一方、複合紙の膨潤特性が示す通り、絶縁油において複合紙層中の樹脂が吸収する低分子量成分の量は、含浸温度によって変化するものの、有限である。そのため、複合紙層の導体側領域を構成する複合紙(以下、導体側複合紙と呼ぶ)は、外側複合紙を経ることで低分子量成分が減じられた絶縁油が接触することから、導体側複合紙が膨潤することは実質的に無い。このように複合紙ソリッドケーブルでは、絶縁油の含浸過程において、導体側複合紙の近傍に含浸される絶縁油は、上述のようにフレッシュな油よりも高い粘度になるものの、この増粘は、外側複合紙の膨潤特性によって生じ得るものであり、導体側複合紙自体の膨潤特性の寄与は小さい。以上のことから、導体及びその近傍に存在する絶縁油をより増粘可能な構成の開発、つまり、導体側複合紙における絶縁油の増粘への寄与の増大が望まれる。
【0013】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高温使用においても、より安定した絶縁性能を有する複合紙ソリッドケーブルや生産性に優れる複合紙ソリッドケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述のように油浸絶縁層を形成する複合紙層の導体側領域では、ある程度増粘した絶縁油が含浸されるものの、導体側複合紙の実際の膨潤量は小さい。複合紙層の外周側領域では、絶縁油の粘度は概ね含浸する絶縁油(フレッシュな油)の粘度であるものの、外側複合紙の膨潤量は、所定の膨潤特性に応じたものになる(外側複合紙の膨潤特性に相当する膨潤量を示す)。このことから、樹脂の膨潤特性に差がある複数の複合紙を用いて複合紙層を構成すれば、複合紙層の導体側領域に存在する絶縁油をより効果的に増粘できるといえる。
【0015】
そこで、本発明は、複合紙を構成する樹脂の膨潤に着目して、樹脂の膨潤特性(膨潤量)が異なる複合紙を用いた複合紙層を具えることを提案する。
【0016】
本発明の複合紙ソリッドケーブルは、樹脂とクラフト紙とが積層一体化された複合紙が導体の外周に巻回されてなる複合紙層に、絶縁油が含浸された油浸絶縁層を具える。この複合紙ソリッドケーブルは、上記複合紙に絶縁油を含浸させる前後における上記樹脂の厚さの変化率を膨潤指標とするとき、上記油浸絶縁層において導体側領域を構成する複合紙の膨潤指標が、上記油浸絶縁層において外周側領域を構成する複合紙の膨潤指標よりも大きい。
【0017】
膨潤特性が異なる複合紙を用いた複合紙層を具えることで、複合紙層の外周側領域を構成する複合紙:外側複合紙の樹脂が吸収しなかった絶縁油の成分中に、複合紙層の導体側領域を構成する複合紙:導体側複合紙の樹脂が吸収して膨潤し得る低分子量成分が存在し得る。この低分子量成分が導体側複合紙の樹脂に吸収されることで、導体近傍で、絶縁油の粘度をより効果的に向上できる。従って、本発明の複合紙ソリッドケーブルは、導体近傍の絶縁油の粘度を高められ、運転時に高温になっても絶縁油の移動や、移動によって生じ得る欠陥を抑制できる。そのため、本発明の複合紙ソリッドケーブルは、長期に亘り、安定した絶縁性能を有することができ、絶縁性能の信頼性を高められる。また、本発明の複合紙ソリッドケーブルは、運転温度を更に高くした場合でも、安定した性能を維持することができる。更に、本発明の複合紙ソリッドケーブルは、特に、導体側複合紙が膨潤することで径方向に隣り合う複合紙間を密着させることができる。このことからも、本発明の複合紙ソリッドケーブルは、絶縁油の移動を抑制でき、高温になっても、導体近傍に絶縁油が十分に存在した状態を維持できる。
【0018】
本発明の複合紙ソリッドケーブルでは、導体側複合紙に含浸される絶縁油が増粘される効果を見込み、含浸する絶縁油(フレッシュな油)の粘度をその分だけ低くすることもできる。この場合、含浸に要する期間を効果的に短縮できる。また、絶縁油の粘度を低くすることで、含浸温度を下げることもできる。この場合、絶縁紙に対する熱履歴の低減、及び絶縁油の含浸後の冷却に要する期間の短縮を図ることができる。このように本発明の複合紙ソリッドケーブルは、生産性に優れる構成とすることもできる。
【0019】
本発明の複合紙ソリッドケーブルは、上記導体側領域を構成する複合紙の上記膨潤指標、及びこの複合紙に占める樹脂の割合の双方を、上記外周側領域を構成する複合紙の上記膨潤指標、及びこの複合紙に占める樹脂の割合よりも大きい構成とすることができる。
【0020】
上記構成は、導体側複合紙が吸収する低分子量成分を外側複合紙よりも相対的に多くでき、導体側複合紙の樹脂量に比例して絶縁油の更なる増粘や樹脂の膨潤が期待できる。
【0021】
本発明の複合紙ソリッドケーブルは、上記油浸絶縁層の外周側から導体側に向かって、連続的に又は段階的に上記複合紙の膨潤指標が大きい構成とすることができる。
【0022】
上記構成は、膨潤指標が細かく異なっていることで、外周側から導体側に向かって、絶縁油の増粘を緻密に行えると期待される。
【0023】
本発明の複合紙ソリッドケーブルにおいて、上記複合紙は、ポリオレフィン系樹脂とクラフト紙とが積層一体化されたものとすることができる。
【0024】
上記複合紙は、絶縁特性に優れる複合紙を具えることで、小型化、大容量化に寄与することができる。
【0025】
本発明の複合紙ソリッドケーブルにおいて、上記複合紙は、ポリプロピレン層の両面にクラフト紙が積層一体化されたものとすることができる。
【0026】
この場合、PPLP(登録商標)に代表される絶縁特性に優れる複合紙を具えることから、絶縁層の厚さを薄くでき、ケーブル径を小さくできる上に、運転時の最高到達温度を高められ、大容量化が可能である。
【0027】
本発明の複合紙ソリッドケーブルは、直流送電に用いることができる。
【0028】
この場合、絶縁抵抗の高い複合紙層の樹脂部分が主として直流電圧を負担し、絶縁油の電界を低減すると共に、絶縁油の移動を抑制して脱油の影響を低減できる。従って、この複合紙ソリッドケーブルは、長距離海底電力線路の構成部材に好適に利用できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の複合紙ソリッドケーブルは、より安定した絶縁性能を有したり、生産性に優れたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態1の複合紙ソリッドケーブルの概略を示す断面図である。
【
図2】実施形態2の複合紙ソリッドケーブルの概略を示す断面図である。
【
図3】複合紙が巻回されてラジアル方向に積層された複合紙層において、絶縁油の含浸経路を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
[実施形態1]
(全体構成)
図1に示す実施形態1の複合紙ソリッドケーブル1Aは、基本的構成は従来のクラフト紙ソリッドケーブルと同様である。代表的には、中心から順に導体11、内部半導電層12、油浸絶縁層13A、外部半導電層14を具えるケーブルコアを具える。ケーブルコアは金属シース15に収納されている。金属シース15の外周には、防食層16、更にその外周には鉄線鎧装(図示せず)が形成される。金属シース15上、又は防食層16上にステンレステープなどで構成した補強層(図示せず)を具える形態とすることができる。
【0033】
油浸絶縁層13Aは、絶縁紙を巻回してなる絶縁紙層130Aと、この絶縁紙層130Aに含浸された絶縁油とから構成される。特に、複合紙ソリッドケーブル1Aでは、絶縁紙として、樹脂300とクラフト紙310とが積層一体化された複合紙(半合成絶縁紙)を用いる。
【0034】
複合紙ソリッドケーブル1Aは、代表的には、以下のようにして製造する。導体11の外周に、内部半導電層12、絶縁紙層130A、外部半導電層14を順に形成し、ケーブルコアを作製する。絶縁紙層130Aは、所望の仕様(膨潤指標(後述)、材質、複合紙の厚さ、複合紙の厚さに対する樹脂300の割合など)であってテープ状にした複合紙を所定のピッチで、かつ所定の隙間g(
図3参照)を設けて巻回して形成する。得られたケーブルコアをタンク内に巻き取って、コア中の水分や空気などを除去するために真空中で加熱乾燥する。この乾燥後、所望の特性の絶縁油をタンク内に充填して所定の含浸温度にして、絶縁紙層130Aに加圧含浸する。絶縁油の含浸後に所定の温度に冷却した後、この油浸絶縁層13Aを具えるケーブルコアの上に金属シース15、防食層16、鉄線鎧装などを順に形成する。
【0035】
そして、複合紙ソリッドケーブル1Aは、膨潤指標が異なる複数の複合紙によって絶縁紙層(複合紙層)130Aが構成されていることを最大の特徴とする。具体的には、複合紙層における導体11の近傍の領域:導体側領域13iを構成する複合紙30Aiは、金属シース15寄りの領域:外周側領域13oを構成する複合紙30Aoよりも膨潤指標が大きい。ここでは、膨潤指標が異なる二種類の複合紙30Ai,30Aoによって複合紙層を構成している。
【0036】
(油浸絶縁層)
<複合紙>
複合紙30Ai,30Aoの基本的な構成は同様である。樹脂300(300i,300o)は、ポリオレフィン系樹脂が代表的である。ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン:PP、ポリエチレン:PE、ポリメチルペンテン:PMPなどが挙げられる。特に、PPは、絶縁特性に優れる。クラフト紙310(311i,312i,311o,312o)は、絶縁層に利用されている公知のものを利用できる。
【0037】
複合紙30Ai,30Aoの形態は、樹脂300からなる樹脂層の一面にのみクラフト紙310がラミネートされた(積層一体化された)形態、樹脂層の両面にクラフト紙310がラミネートされた(積層一体化された)形態が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂を具える複合紙として、ポリプロピレン層の両面にクラフト紙が積層された構造であるPPLP(登録商標)が好適に利用できる。
【0038】
複合紙30Ai,30Aoの厚さは、70μm以上200μm以下が実用的であり、80μm〜150μmが好ましい。複合紙30Ai,30Aoの厚さ:T
totalにおける樹脂300i,300oの厚さ:T
Rの割合:T
R/T
total(以下、この割合をk値と呼ぶ)は、適宜選択することができ、0.4〜0.8程度が利用し易い。
【0039】
ここでは、複合紙30Ai,30Aoの厚さを等しくしているが、異ならせることもできる。また、ここでは、複合紙30Ai,30Aoのk値を等しくしているが、異ならせることもできる(実施形態2参照)。複合紙30Ai,30Aoの厚さ及びk値を等しくすると、巻回条件などを調整し易く、製造性に優れる。
【0040】
<絶縁油>
絶縁油は、例えば、60℃における動粘度が500mm
2/s(500cst)以上の高粘度油、60℃における動粘度が10mm
2/s(10cst)以上500mm
2/s(500cst)未満である中粘度油などが挙げられる。具体的には、ナフテン系油(例えば、H&R社製商品名:T-2015)、ポリスチレン系絶縁油、鉱油、アルキルベンゼンやポリブデン系の合成油、及び重質アルキレートから選択される1種、又は、これら2種以上の混合油などが挙げられる。絶縁油は、粘度や膨潤指標、その他、経済性や供給性などを考慮して選択することができる。
【0041】
<膨潤指標>
膨潤指標とは、ここでは、複合紙に絶縁油を含浸させる前後における樹脂の厚さの変化率とする。膨潤指標は、樹脂内に絶縁油が含浸されることによる厚さの変化のみを対象とし、温度変化などに起因する厚さの変化などは排除する。具体的には、以下のように測定する。
【0042】
複合紙のクラフト紙部分を除去した樹脂の質量を樹脂の比重で除した値(体積)を求め、この除した値(体積)を単位面積あたりに換算した値(体積/面積)を初期の樹脂の厚さ:Tcとする。また、設定した含浸温度で絶縁油をこの樹脂に含浸して膨潤させる前後の樹脂の厚さ変化(膨潤後の樹脂の厚さと膨潤前の樹脂の厚さとの差)を膨潤による厚さ変化:Tppとする。
【0043】
上述のk値が分かっている場合、k値と複合紙の厚さとを利用して、初期の樹脂の厚さ:Tcを求めることができる。具体的には、初期の樹脂の厚さ:Tcは、絶縁油の含浸前における複合紙の厚さ:Tc
totalとk値との積:Tc
total×kによって求められる。
【0044】
初期の樹脂の厚さ:Tc及び絶縁油の含浸前後の厚さ変化:Tppの測定はいずれも、対象を1枚のみとしてもよいし、複数枚とし、複数枚の積層体の厚さを測定し、1枚あたりの厚さに換算してもよい。複数枚の積層体の厚さを測定する場合、厚さの変化の絶対値が1枚のときよりも大きくなることから、測定対象の厚さの測定が行い易く、かつ平均的な厚さを測定できる傾向にあることから、測定誤差を低減できると期待される。
【0045】
特に、上記含浸前後の厚さ変化は、複合紙の状態で測定することが合理的である。この場合、含浸前後の厚さ変化の測定は、代表的には、一定の荷重を複合紙に印加した状態で行う。ここで、荷重を印加した状態で複合紙の乾燥を行うと、複合紙中のクラフト紙において乾燥に起因する厚さ変化が生じる。この後に絶縁油の含浸を行うと、絶縁油の含浸前後でクラフト紙の厚さが実質的に変化しない。従って、クラフト紙の厚さの変化を伴わない樹脂のみの厚さ変化の測定を行える。
【0046】
上述のようにして求めた初期の樹脂の厚さTc及び含浸前後の厚さ変化:Tppを用いて、膨潤指標は、(Tpp/Tc)×100(%)とする。
【0047】
膨潤指標は、上述のように使用する複合紙に含まれる樹脂そのものの特性とすべきであり、含浸する絶縁油の種類、含浸温度に依存するものであって、乾燥温度と含浸温度との差に基づく熱膨張による厚さ変化を含めることは、合理的ではないと考えられる。また、膨潤指標の測定時における作業性の向上も考慮すると、膨潤指標は、乾燥温度と含浸温度とを同じ温度として測定することが好ましい、といえる。そこで、膨潤指標は、基本的には、絶縁油の含浸前後の温度を同じにして測定して、温度変化による熱膨張の影響(厚さの変化など)を含まないものとする。乾燥温度と絶縁油の含浸温度とが異なる場合には、熱膨張分を考慮して、この含浸温度における絶縁油の含浸前の厚さを換算して、膨潤指標を算出する。
【0048】
膨潤指標を測定するときの絶縁油と、実際に製造する複合紙ソリッドケーブルに用いる絶縁油とは、異なったものとすることができる。また、膨潤指標を測定するときの絶縁油の含浸温度は、実際のケーブルの含浸条件に応じて変更してもよい。代表的には、膨潤指標は、高い含浸温度で測定する。膨潤指標の測定に、例えば、上述のT-2015を利用することができる。膨潤指標の測定にT-2015を用いた場合、種々の絶縁油の中でも膨潤指標の値が比較的大きくなる傾向にある。膨潤指標の測定にあたり、含浸温度を高くすると樹脂が膨潤し易くなり、膨潤指標の値が大きくなる傾向にある。このように膨潤指標が高くなる油種を用いたり、含浸温度を高くしたりする手法は、膨潤指標の異同を確認し易い。そのため、これらの手法は、複合紙を構成する樹脂の膨潤特性の管理に有用である。例えば、以下の(1)〜(3)のいずれか一つを利用して膨潤指標を測定し、以下の(I)〜(III)のいずれか一つを利用して、実際のケーブルの膨潤指標を管理することができる。(1)T-2015などの膨潤量の大きい絶縁油を使用する、(2)含浸温度を高くする、又は(3)これらの組み合わせとする。(I)実際のケーブルの含浸温度を膨潤指標を測定した含浸温度よりも低くする、(II)実際のケーブルでは膨潤指標を測定した絶縁油よりも膨潤量が小さい絶縁油を利用する、又は(III)これらの組み合わせとする。また、測定した膨潤指標の値を利用することで、実際のケーブルの製造条件についての膨潤指標の管理の精度を高められる。更に、膨潤指標の管理精度を高めることで、例えば、(所定の管理範囲内において)膨潤指標が小さい製造ロット品を外側複合紙30Aoに、膨潤指標が大きい製造ロット品を導体側複合紙30Aiに適用することができる。この場合、絶縁紙層130Aの導体側に向かって、より緻密に絶縁油の増粘を行えると期待できる。
【0049】
膨潤指標の測定に用いる絶縁油と、実際に製造する複合紙ソリッドケーブルに用いる絶縁油とを同じものとすると、測定した膨潤指標の値は、そのまま実際のケーブルの値となる。従って、この形態は、実際のケーブルの膨潤指標を簡単に把握することができる。
【0050】
複合紙30Ai,30Aoの膨潤指標の値(絶対値)は、適宜設定することができる。膨潤指標は、複合紙を構成する樹脂の仕様(樹脂の結晶化度など)、絶縁油の材質、含浸温度などで変化する。なお、膨潤は、樹脂の非結晶部分に絶縁油が吸収されて生じるとされており、非結晶の割合が大きいほど膨潤が大きいとされている。上述の各パラメータを変化させたときの膨潤指標をそれぞれ予め測定し、この蓄積したデータを参照して、製造に用いる複合紙の仕様や絶縁油の材質、及び(選択される)絶縁油の含浸温度に応じて膨潤指標の値を決定するとよい。
【0051】
膨潤指標の値(絶対値)が大き過ぎると、複合紙が過度に膨潤して含浸の不良や含浸時間の増大による生産性の低下を招く。また、曲げなどの機械的特性を損ねる恐れもある。膨潤指標の値(絶対値)が低過ぎると、導体側近傍の絶縁油の粘度を所定の値にするために、含浸する絶縁油(フレッシュな油)の粘度を高くする必要が生じる。この場合、含浸期間の増大による生産性の低下を招く恐れがある。従って、実際のケーブルの製造に基づき、複合紙30Ai,30Aoの膨潤指標の値(絶対値)はいずれも、機械的特性を損ねない範囲で上限値・下限値を設定することが好ましい。また、含浸する絶縁油(フレッシュな油)の種類や含浸温度における絶縁油の粘度によって許容される膨潤指標の範囲も変わる。ここで、複合紙の膨潤特性(膨潤指標)は、絶縁油の含浸の際に問題の無い範囲において膨潤が有効であることを示したものといえる。そのため、導体側の複合紙30Aiの膨潤指標を外周側の複合紙30Aoよりも相対的に大きくすることは、絶縁油の含浸への影響は小さい。従って、外周側の複合紙30Aoの膨潤指標を敢えて小さくする必要はなく、導体側の複合紙30Aiの膨潤指標を相対的に大きくすればよい。
【0052】
例えば、複合紙の膨潤指標をT-2015やポリブデン系絶縁油で評価すると、120℃での含浸で、T-2015を用いた場合の膨潤指標が7%程度、ポリブデン系絶縁油を用いた場合の膨潤指標が5%程度が挙げられる。複合紙が同じ場合でも、含浸する絶縁油の種類によって膨潤指標に差が生じ得る。そのため、上述の膨潤指標の測定値の前後、望ましくは測定値以下で膨潤指標を管理することが適当である。そして、絶縁油の含浸温度を決定して、外側複合紙及び導体側複合紙のそれぞれについて、実際のケーブルにおける膨潤指標の範囲を設定すると共に、使用する複合紙の管理を目的とした膨潤指標の測定条件(使用絶縁油、含浸温度)を定め、この条件での膨潤指標の管理範囲を定めることが好ましい。
【0053】
そして、導体側領域13iを構築する複合紙30Aiの膨潤指標は、外周側領域13oを構築する複合紙30Aoの膨潤指標よりも大きいものとする。導体側領域13iとは、複合紙層の厚さの1/2よりも内周(導体)寄りとし、複合紙層の最内層から、複合紙層の厚さの1/4〜1/2ぐらいまでの範囲が挙げられる。
【0054】
複合紙層の外周側から導体11側に向かって、連続的に又は段階的に膨潤指標が異なる複合紙を用いた構成とすることができる。具体的には、導体11側を構成する複合紙ほど、膨潤指標が大きいものを用いる。この場合、絶縁油の増粘を緻密に行える(油浸絶縁層13Aの径方向における絶縁油の増粘状態を細かく調整できる)と期待できる。また、この場合、外周側の複合紙の膨潤指標と、導体11側の複合紙の膨潤指標との差を大きく取り易い。一方、本実施形態のように膨潤指標が大きい複合紙30Aiからなる領域と、膨潤指標が小さい複合紙30Aoからなる領域との二層構造とすると、製造性に優れて好ましい。
【0055】
複合紙層において導体側に配置される複合紙30Aiの膨潤指標と、外周側に配置される複合紙30Aoの膨潤指標との差は、適宜選択することができ、例えば、0.2%以上、更に0.3%以上、特に0.5%以上が挙げられる。ここで、長距離海底電力線路に利用するような複合紙ソリッドケーブルを製造する場合、複合紙が大量に必要であり、長期間に亘って製造された大量の製造ロット品を使用して長期間に亘ってケーブルを製造する必要がある。そこで、例えば、製造ロットごとに膨潤指標を測定して、導体11側の複合紙30Ai、外周側の複合紙30Aoのそれぞれが規定の膨潤指標の範囲にあるように管理することで、信頼性のより高い複合紙ソリッドケーブルを長期間に亘り良好に製造できる。
【0056】
(効果)
導体11側の複合紙30Aiの膨潤指標が外周側の複合紙30Aoよりも大きいため、複合紙30Aiは、外周側の複合紙30Aoに吸収されなかった成分のうち低分子量側の成分を吸収することができる。すなわち、導体11側の複合紙30Aiには、膨潤指標が相対的に小さい複合紙30Aoの樹脂300oに吸収されない成分を含有する絶縁油が主として含浸される。そのため、複合紙ソリッドケーブル1Aは、導体11近傍で、絶縁油中の低分子量物質の吸収による絶縁油の増粘をより効果的に得ることができる。従って、複合紙ソリッドケーブル1Aは、運転時に高温になっても、導体11近傍に存在する絶縁油の粘度を増粘前の絶縁油(フレッシュな油)が高温となったときの粘度よりも高い状態とすることができ、絶縁油の移動を抑制できる。その結果、複合紙ソリッドケーブル1Aは、常時、絶縁油を導体11近傍に留められる。また、膨潤指標が相対的に大きい複合紙30Aiが導体11近傍で膨潤して複合紙30Ai間が密着できることからも、複合紙ソリッドケーブル1Aは、絶縁油の移動をより抑制できる。これらのことから、複合紙ソリッドケーブル1Aは、運転時、より高温になっても絶縁油の移動を抑制でき、絶縁油の移動に伴う導体近傍における絶縁性能の低下を抑制できることから、安定した絶縁性能を維持できる。
【0057】
その他、複合紙ソリッドケーブル1Aは、複合紙への絶縁油の含浸過程での油増粘を考慮して、含浸する絶縁油(フレッシュな油)の粘度を低くすることができる。この場合でも導体11近傍の絶縁油の粘度を、絶縁油の移動に起因する欠陥の形成を抑制することが可能な粘度にすることができる。また、含浸する絶縁油の粘度を低く場合、(1)絶縁油を含浸させ易い、(2)絶縁油の含浸温度を低下することで、冷却時間の短縮を図ることができる、といった効果も奏する。この場合、複合紙ソリッドケーブル1Aは、生産性の向上を図ることができる。
【0058】
また、外周側の複合紙30Aoの膨潤指標をより低くした場合には、導体11側の複合紙30Aiの膨潤及び絶縁油の増粘効果が大きい複合紙ソリッドケーブルとすることができる。加えて、この場合、絶縁油の含浸時、絶縁油は、金属シース15側で増粘が抑制され、複合紙層の外周側から内周側に向かっての含浸が容易となる。従って、この複合紙ソリッドケーブル1Aは、絶縁油を含浸させ易く、絶縁油の含浸時間を短縮できて、生産性に優れる。更に、この複合紙ソリッドケーブル1Aは、外周側領域13oの膨潤量が少ないことで、導体側領域13iを構成する複合紙30iが膨潤可能な尤度を十分に確保できる。
【0059】
[実施形態2]
次に、
図2を参照して、実施形態2の複合紙ソリッドケーブル1Bを説明する。実施形態2の複合紙ソリッドケーブル1Bの基本的構成は、実施形態1と同様であり、導体11の外周に油浸絶縁層13Bを具える。油浸絶縁層13Bは、複合紙を巻回してなる絶縁紙層(複合紙層)130Bに絶縁油が含浸されてなる。また、複合紙層の導体側領域13iを構成する複合紙30Biの膨潤指標は、外周側領域13oを構成する複合紙30Boの膨潤指標より大きい。そして、実施形態2における実施形態1との相違点は、複合紙30Bi,30Boに占める樹脂320i,320oの割合が異なる点にある。具体的には、導体11側の複合紙30Biに占める樹脂320iの割合が、外周側の複合紙30Boに占める樹脂320oの割合よりも大きい。以下、この相違点及びその効果を中心に説明し、その他の構成及び効果は、実施形態1と共通するため、説明を省略する。樹脂320i,320oの占める割合は、複合紙30Bi,30Boの樹脂比率(k値)に相当する。
【0060】
各複合紙30Bi,30Boのk値は、例えば、上述の範囲:0.4〜0.8から選択することができる。複合紙30Bi,30Boの厚さが等しい場合、樹脂320i,320oの占める割合に応じて、クラフト紙331i,332i,331o,332oの厚さを選択するとよい。
【0061】
複合紙層の最内側から最外側に向かって、連続的に又は段階的に樹脂の占める割合が異なる複合紙を用いた形態とすることができる。複合紙30Bi,30Boの厚さが等しく、k値が異なる複合紙とすることで、上記形態を容易に構成することができる。
図2に示すように、樹脂320iの占める割合が大きい複合紙30Biからなる領域(ここでは導体側領域13i)と、樹脂320oの占める割合が小さい複合紙30Boからなる領域(ここでは外周側領域13o)との二層構造とすると、製造性に優れて好ましい。
【0062】
(効果)
複合紙ソリッドケーブル1Bは、実施形態1の複合紙ソリッドケーブル1Aと同様に導体11の近傍の絶縁油の移動を抑制でき、長期に亘り安定した絶縁性能を有したり、生産性に優れたりする。特に、この例に示す複合紙ソリッドケーブル1Bでは、導体側の複合紙30Biの膨潤指標及び樹脂が占める割合(比率)の双方が外周側(金属シース15側)の複合紙30Boの膨潤指標及び樹脂が占める割合(比率)よりも大きい。そのため、ソリッドケーブル1Bは、導体11側の複合紙30Biが導体11側に到達した絶縁油中の低分子量成分を吸収することによる膨潤及び絶縁油の増粘をより大きくできることから、導体11の近傍で絶縁油をより増粘させ易く、かつ複合紙30Bi同士を密着させ易い。
【0063】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、複合紙の厚さ、絶縁油の材質などを適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の複合紙ソリッドケーブルは、長距離・大容量の電力供給線路、特に海底電力線路の構成部材に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1A,1B 複合紙ソリッドケーブル 130A,130B 絶縁紙層(複合紙層)
11 導体 12 内部半導電層 13A,13B 油浸絶縁層 13i 導体側領域
13o 外周側領域 14 外部半導電層 15 金属シース 16 防食層
30,30Ai,30Ao,30Bi,30Bo 複合紙 3a,300,300i,300o,320i,320o 樹脂
3b,310,311i,312i,311o,312o,331i,332i,331o,332o クラフト紙 g 隙間