(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796790
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】女性用体形補整衣類
(51)【国際特許分類】
A41C 1/00 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
A41C1/00 G
A41C1/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-113452(P2013-113452)
(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-224331(P2014-224331A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2013年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501326218
【氏名又は名称】與芝 和子
(72)【発明者】
【氏名】與芝 和子
【審査官】
笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許出願公開第2968194(FR,A1)
【文献】
実公昭38−000762(JP,Y1)
【文献】
実開平01−062307(JP,U)
【文献】
実公昭04−012304(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 1/00 〜 1/20
A41D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性用上半身の体形を補整する為の衣類であって、脇の下袖ぐり部から裾部にわたる体幹側面に設けた調整部により、着用状態で胸囲や腹囲、背中を着用者の体型に合わせて固定することを可能にした体形補整衣類であって、前記調整部は、面ファスナーループ側で構成されて前身ごろと縫合され、後身ごろには面ファスナー鉤側が縫合されており、前記調整部の面ファスナーループ側上に前記後身ごろが重ねられる構成であり、更に、前記前身ごろに前身ごろ結合部を設け、前記前身ごろを左右に分離、結合を可能にした体形補整衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用して体形を補整する衣類に関し、特に中高年女性にとって、着易く、着心地が良く、しかも着用した時にシルエットを美しく見せるための衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、女性の上半身に用いる衣類としては、ブラジャー、ウエストニッパー、ボディスーツといったものが実用化されており、これらは着用した身体を引き締めて美しい体形を実現するための補整機能を備えている。
【0003】
これらは基本的に、収縮性のある素材で作られた帯状の織布を用い、体を締め付けて体形を形成するものである。
下記特許文献1は、部分的に締め付け部材を配置して、締め付け部材の存在が衣類表面に現れることを抑制することが可能な体形補整衣類に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−233286
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のブラジャーは、主に若年から中年初期の女性の体形を基準に作られている。その為中高年層の脂肪率が増加して弾力が低下した体形には殆ど適合せず、特に背中の脂肪肉については、部分的に圧迫されることからブラジャーの形が喰い込んだ様になり、より脂肪肉の存在を強調してしまう。
【0006】
これに対して、前記特許文献1に記載の衣料は、締め付け部材の存在が衣類表面に現れることを抑制する為に考えられたもので、
「着用者の上半身の体形補整を行うための体形補整衣類であって、着用状態において緊締力を作用させるように複数の身頃部材を左右方向に連結して形成された本体部と、複数の身頃部材の左右方向の異なる連結部分にそれぞれ連結され、本体部の緊締力を部分的に大きくする締め付け部材とを備える。
この締め付け部材は、上下方向の端部のうち少なくとも一端部が本体部に対して遊離するように本体部に連結されているので、締め付け部材の存在が衣類本体部に現れることを抑制することができる。したがって、着用者に抵抗感を与えることがない。」と記されている。
【0007】
しかし、これで体形を整えることができるのは、想定して作られた範囲内の体形をしている場合であり、多くの中高年女性にはその機能を活かすことは難しい。
多くの中高年女性に求められているのは、体形に合わせて調整することができる圧迫感のない衣類である。
【0008】
また、前記特許文献1には一定の力で圧迫し成形する方法は記されているが、体形に合わせて調整する機能や方法については記されていない。加えて、特許文献1の
図2には前部で左右を合わせて留める手段は記されているが、体幹側面に於いて体形を整えるために調整する機能は記されていない。
【0009】
中高年女性の体形の特徴は、胸囲や腹囲上部の脂肪肉が背中から腹囲にわたって多く付着する事である。 このため「0005」で示す通り、これらの脂肪肉は衣類表面に現れてしまう。つまり、体の一部を圧迫することでは補整機能を発揮することはできない。この為、部分的ではなく広範囲に脂肪肉を包み込むような衣類を、多くの中高年女性から求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の女性用体形補整衣類は、前身ごろと後身ごろを分離して、着用者の胸囲や腹囲、背中を体形に合わせて着用状態で固定可能とする為、体幹側面に調整部を設ける。
左右の脇の下袖ぐりから裾部にわたる前記調整部は、面ファスナーループ側で形成され、前身ごろに縫合されている。後身ごろには面ファスナー鉤側が左右の脇の下袖ぐりから裾部まで縫合され前記調整部と後身ごろは分離している。
前記調整部の面ファスナーループ側と、後身ごろに縫合されている面ファスナー鉤側を使用して、後身ごろとの重なり具合、または前身ごろとの直接の結合で着用者の胸囲や腹囲、背中を着用状態でズレもなくピッタリ固定する事を可能とした。
また、前記後身ごろには、化学繊維で作られた収縮性のあるパワーネットを使用し、着用時の姿勢を補整する事を可能とした。
更に、前記前身ごろ中央部に前身ごろ結合部を設け、前身ごろを左右に分離、結合を可能とした。
【0011】
このときに用いる素材は一定の収縮性を求めるが、補整機能が体幹の一部ではなく広範囲にわたるため、脂肪肉の存在を強調させる事は無い。
【0012】
また、着脱は前記前身ごろ結合部で行い、体形に合わせて固定した体幹側面の前記調整部は再度調整する必要は無い。
【発明の効果】
【0013】
本発明を実施することにより、中高年女性の弾力性が低下した脂肪肉の存在が衣類表面に強調することなく、美しいシルエットを保つことができる。また、着脱も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】 本発明の実施例裾部からみた断面図と拡大図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至
図3を用いて本発明の実施例を説明する。
本実施例は、上半身の女性用肌着1であり、肩部2、襟ぐり3、袖ぐり4、左右に分離可能な右前身ごろ5、左前身ごろ6、裾部7、前身ごろ結合部8を、
図1の正面図に示す。この場合、身体にフィットさせるためには、襟ぐり3と袖ぐり4の間の肩部2は広めにとる。袖ぐり4は大きくせず、調整部9.10は脇の下袖ぐりから裾部7まで長めに構成する。
【0016】
調整部9.10は前身ごろ5.6に縫合されていて、後身ごろ11.12とは分離している。裾部7は腹囲の最も細くなる部分よりも更に下に、末広がりに延ばすことによりめくり上がるのを防いでいる。調整部9.10と後身ごろ11.12に用いる面ファスナーは、ループ面と鉤面の組み合わせで使用するが、この上に着用する衣類を傷めない様調整部9.10には表面が柔らかいループ側を使用し、表面が固い鉤側は後身ごろ11.12に縫合されている。着用して自分の体形に合わせるには、後身ごろ11.12の面ファスナー鉤側を前方に引っ張って調整部9.10の面ファスナーループ側に押し当てて固定する。
【0017】
調整部9.10は、着用のまま体形に合わせる事ができる面ファスナーループ側で作られ、前身ごろ5.6に縫合されているが、しかしこれに限ったことではなく、フック留めなどを用いる事もできる。また、前身ごろ5.6と後身ごろ11.12は、着用の状態で調整部9.10を使わず直接重ね合わせても良く、間隔を開けて紐などで結んでも良い。
【0018】
以上は、調整部9.10と後身ごろ11.12が分離可能に構成されている例であるが、必ずしも分離可能ではなく、素材の収縮機能を利用すれば前身ごろ5.6と後身ごろと11.12を接続しておいても良い。
【符号の説明】
【0019】
1 女性用下着
2 肩部
3 襟ぐり
4 袖ぐり
5 右前身ごろ
6 左前身ごろ
7 裾部
8 前身ごろ結合部
9 右調整部
10 左調整部
11 右後身ごろ
12 左後身ごろ
13 背部パワーネット
14 裾部から見た調整部断面図と拡大図