特許第5796799号(P5796799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796799
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】防水コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   H01R13/52 301H
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-554508(P2014-554508)
(86)(22)【出願日】2013年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2013084729
(87)【国際公開番号】WO2014104122
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2014年11月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-284662(P2012-284662)
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯星 真治
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−43649(JP,A)
【文献】 特開2006−24435(JP,A)
【文献】 特開2005−243606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフード部を有する第2ハウジングと、
前記フード部が前方から外嵌されるハウジング本体を有し、前記ハウジング本体の外面に径方向に沿った当て止め部を有する第1ハウジングと、
前記ハウジング本体の外面に嵌着されて、後端が前記当て止め部に当て止めされ、さらに、前後方向の途中部位に、前記ハウジング本体に前記フード部が外嵌された場合に前記フード部の内面に弾性的に密着するリップが周設されたシールリングとを備えた防水コネクタであって、
前記シールリングは、前記リップを挟んだ前後両側に、ほぼ前後方向に沿って延びる前側のリング部と後側のリング部とを有し、
前記第1ハウジングは、前記ハウジング本体との間に前記後側のリング部を径方向に挟み込み、且つ、前記ハウジング本体に前記フード部が外嵌された場合に、前記フード部の開口縁部が被さる突部を有し、
前記突部の外面には、前方へ向けてハウジング本体側に近づく方向に傾斜する第1斜面が設けられ、前記フード部の開口縁部の内面には、前記ハウジング本体に前記フード部が外嵌された場合に、前記第1斜面と対面して配置される第2斜面が設けられていることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項2】
筒状のフード部を有する第2ハウジングと、
前記フード部が前方から外嵌されるハウジング本体を有し、前記ハウジング本体の外面に径方向に沿った当て止め部を有する第1ハウジングと、
前記ハウジング本体の外面に嵌着されて、後端が前記当て止め部に当て止めされ、さらに、前後方向の途中部位に、前記ハウジング本体に前記フード部が外嵌された場合に前記フード部の内面に弾性的に密着するリップが周設されたシールリングとを備えた防水コネクタであって、
前記シールリングは、前記リップを挟んだ前後両側に、ほぼ前後方向に沿って延びる前側のリング部と後側のリング部とを有し、
前記第1ハウジングは、前記ハウジング本体との間に前記後側のリング部を径方向に挟み込み、且つ、前記ハウジング本体に前記フード部が外嵌された場合に、前記フード部の開口縁部が被さる突部を有し、
前記シールリングには、前記第1ハウジングに係止されてこのシールリングの前方への抜けを規制する抜け止め部が径方向に突出して形成され、前記シールリングが前記ハウジング本体の外面に嵌着された場合に、前記突部は前記抜け止め部と対向する位置には形成されず、前記抜け止め部の外側には前記第1ハウジングの外側壁が配置されていて、前記外側壁と前記ハウジング本体との間に前記抜け止め部が径方向に挟み込まれるようになっていることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項3】
前記突部は、前記抜け止め部を係止する部分を除いて、ハウジング本体の周りを取り囲む形態とされていることを特徴とする請求項2記載の防水コネクタ。
【請求項4】
筒状のフード部を有する第2ハウジングと、
前記フード部が前方から外嵌されるハウジング本体を有し、前記ハウジング本体の外面に径方向に沿った当て止め部を有する第1ハウジングと、
前記ハウジング本体の外面に嵌着されて、後端が前記当て止め部に当て止めされ、さらに、前後方向の途中部位に、前記ハウジング本体に前記フード部が外嵌された場合に前記フード部の内面に弾性的に密着するリップが周設されたシールリングとを備えた防水コネクタであって、
前記シールリングは、前記リップを挟んだ前後両側に、ほぼ前後方向に沿って延びる前側のリング部と後側のリング部とを有し、
前記第1ハウジングは、前記ハウジング本体との間に前記後側のリング部を径方向に挟み込み、且つ、前記ハウジング本体に前記フード部が外嵌された場合に、前記フード部の開口縁部が被さる突部を有し、
前記シールリングには、前記第1ハウジングに係止されてこのシールリングの前方への抜けを規制する抜け止め部が径方向に突出して形成され、前記抜け止め部は、前記第1ハウジングの係止受け面に前後方向で対面する係止面を有し、前記係止面は、前記後側のリング部の後面と前後方向について同じ位置に配置され、前記後側のリング部の後面及び前記係止受け面によって金型のパーティングラインが形成されることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項5】
前記後側のリング部は、前記前側のリング部よりも前後方向に長く設定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の防水コネクタ。
【請求項6】
前記突部の内面は、前記ハウジング本体の外面と対向する位置に配置され、前記後側のリング部に外側から当接して前記後側のリング部のめくれ上がりを規制可能な規制面とされていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の防水コネクタ。
【請求項7】
前記第1ハウジングは、前記ハウジング本体の周りを取り囲む外側壁と、前記外側壁と前記ハウジング本体とをつなぐ径方向に沿った連結部とを有し、前記ハウジング本体と前記外側壁との間で且つ前記連結部の前方には、前記フード部が嵌合される嵌合空間が開放され、前記突部が、前記連結部の前面に突設されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の防水コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された防水コネクタは、互いに嵌合可能な雌雄一対のハウジングを備えている。このうち、雌ハウジングは、内筒部とその周りを取り囲む外筒部とを有している。内筒部の外面には、環状のシール部材が嵌着されている。一方、雄ハウジングは、内筒部に前方から外嵌可能な筒状のフード部を有している。また、シール部材には前後方向に複数条のリップが周設されており、両ハウジングの嵌合時には、各リップがフード部の内面に弾性的に密着して、両ハウジング間のシールがとられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4193711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、金型成形上の理由等の事情により、シール部材の後端部が最後尾のリップから後方へ細長く延びた形態になることがあった。一方、両ハウジングの嵌合過程では、フード部の開口縁部が各リップと摺接することにより、シール部材に、フード部の進行方向へのずれ力が作用するため、上記のようにシール部材の後端部が長く延びた形態であると、シール部材の後方に位置する縦壁に沿ってシール部材の後端部がめくれたり座屈することがあり、所定のシール性を得ることができないおそれがあった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ハウジング間のシール性が低下するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筒状のフード部を有する第2ハウジングと、前記フード部が前方から外嵌されるハウジング本体を有し、前記ハウジング本体の外面に径方向に沿った当て止め部を有する第1ハウジングと、前記ハウジング本体の外面に嵌着されて、後端が前記当て止め部に当て止めされ、さらに、前後方向の途中部位に、前記ハウジング本体に前記フード部が外嵌された場合に前記フード部の内面に弾性的に密着するリップが周設されたシールリングとを備えた防水コネクタであって、前記シールリングは、前記リップを挟んだ前後両側に、ほぼ前後方向に沿って延びる前側のリング部と後側のリング部とを有し、前記第1ハウジングは、前記ハウジング本体との間に前記後側のリング部を径方向に挟み込み、且つ、前記ハウジング本体に前記フード部が外嵌された場合に、前記フード部の開口縁部が被さる突部を有しているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
ハウジング本体にフード部が外嵌されると、シールリングがフード部の進行方向に引きずられ、後側のリング部が当て止め部に沿ってめくれたり座屈したりする懸念がある。
【0008】
しかるに本発明によれば、第1ハウジングの突部がハウジング本体との間にシールリングの後側のリング部を径方向に挟み込むから、フード部の進行に伴って後側のリング部がめくれたり座屈したりする事態が回避される。しかも、ハウジング本体にフード部が外嵌されると、突部にフード部の開口縁部が被さるから、例えば、高圧洗浄時に後側のリング部が直接的に被水することがなく、後側のリング部が高圧水によって変形するのが防止される。
したがって、本発明によれば、ハウジング間のシール性が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の防水コネクタに係り、シールリングが装着された第1ハウジングの正面図である。
図2】第1、第2ハウジングが正規嵌合された状態を示す断面図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4】第1、第2ハウジングが正規嵌合された状態を示す一部破断平面図である。
図5】シールリングが装着された第1ハウジングにおいて抜け止め部と対応する位置で切った断面図である。
図6】シールリングが装着された第1ハウジングの一部破断平面図である。
図7】シールリングが装着された第1ハウジングの断面図である。
図8】第1ハウジングの正面図である。
図9】第1ハウジングの断面図である。
図10】第1ハウジングの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
前記後側のリング部は、前記前側のリング部よりも前後方向に長く設定されている。このような構成であれば、後側のリング部がめくれたり座屈したりする可能性がより高まるため、本発明を適用するメリットが大である。
【0011】
前記突部の内面は、前記ハウジング本体の外面と対向する位置に配置され、前記後側のリング部に外側から当接して前記後側のリング部のめくれ上がりを規制可能な規制面とされている。突部の規制面に後側のリング部が当接することで、後側のリング部のめくれ上がりが確実に防止される。
【0012】
前記第1ハウジングは、前記ハウジング本体の周りを取り囲む外側壁と、前記外側壁と前記ハウジング本体とをつなぐ径方向に沿った連結部とを有し、前記ハウジング本体と前記外側壁との間で且つ前記連結部の前方には、前記フード部が嵌合される嵌合空間が開放され、前記突部が、前記連結部の前面に突設されている。突部が連結部に突設されているため、突部として特有の構造になることがなく、全体の構成が簡素化される。
【0013】
前記突部の外面には、前方へ向けてハウジング本体側に近づく方向に傾斜する第1斜面が設けられ、前記フード部の開口縁部の内面には、前記ハウジング本体に前記フード部が外嵌された場合に、前記第1斜面と対面して配置される第2斜面が設けられている。突部にフード部の開口縁部が被さった場合に、突部の第1斜面とフード部の第2斜面とが対面するため、高圧洗浄時の高圧水が第1斜面と第2斜面との間を通して後側のリング部に到達しにくくなり、後側のリング部が被水するのがより確実に防止される。また、フード部が突部に被さる方向に関して、コネクタが大型になるのが回避される。
【0014】
前記シールリングには、前記第1ハウジングに係止されてこのシールリングの前方への抜けを規制する抜け止め部が径方向に突出して形成され、前記シールリングが前記ハウジング本体の外面に嵌着された場合に、前記突部は前記抜け止め部と対向する位置には形成されず、前記抜け止め部の外側には前記第1ハウジングの外側壁が配置されていて、前記外側壁と前記ハウジング本体との間に前記抜け止め部が径方向に挟み込まれるようになっている。突部は抜け止め部と対向する位置に形成されないが、抜け止め部は外側壁とハウジング本体との間に挟み込まれるため、後側のリング部と同様、抜け止め部もめくれたり座屈したりするのが回避される。
【0015】
前記突部は、前記抜け止め部を係止する部分を除いて、ハウジング本体の周りを取り囲む形態とされている。これにより、後側のリング部がめくれたり座屈したりする事態がより確実に回避されるとともに、後側のリング部が高圧水によって変形するのがより確実に防止される。
【0016】
前記シールリングには、前記第1ハウジングに係止されてこのシールリングの前方への抜けを規制する抜け止め部が径方向に突出して形成され、前記抜け止め部は、前記第1ハウジングの係止受け面に前後方向で対面する係止面を有し、前記係止面は、前記後側のリング部の後面と前後方向について同じ位置に配置され、前記後側のリング部の後面及び前記係止受け面によって金型のパーティングラインが形成される。このように、金型のパーティングラインが後側のリング部の後面と係止受け面とで規定されることにより、後側のリング部が長くなり易いという事情があるため、後側のリング部のめくれ等を突部によって回避することの意義が大きい。
【0017】
<実施例1>
本発明の実施例1を図1図10によって説明する。実施例1のコネクタは、互いに嵌合可能な第1、第2ハウジング10、60と、第1ハウジング10に装着されて第1、第2ハウジング10、60間のシールをとるシールリング80とを備えている。なお、以下の説明において、前後方向については、第1、第2ハウジング10、60の相互の嵌合面側を前方とする。
【0018】
第2ハウジング60は合成樹脂製であって、図2に示すように、ブロック状の端子装着部61と、端子装着部61の前端から前方に突出する筒状のフード部62とを有している。端子装着部61には、後方から雄端子金具5が挿入されて装着される。雄端子金具5は、電線6の端末部に圧着により接続され、端子装着部61に収容された状態でフード部62内に突出する雄タブ7を有している。
【0019】
フード部62の上壁上面には、ロック部63が突設されている。また、フード部62の前端(開口端)の内面には、テーパ状の第2斜面64が全周に亘って形成されている。
【0020】
第1ハウジング10は合成樹脂製であって、図8及び図9に示すように、ブロック状のハウジング本体11と、ハウジング本体11の周りを取り囲む筒状の外側壁12と、外側壁12とハウジング本体11とをつなぐ径方向に沿った連結部13とを有している。ハウジング本体11と外側壁12との間で且つ連結部13の前方には、フード部62が嵌合される嵌合空間14が開放されている。つまり、フード部62は、ハウジング本体11に外嵌されるようになっている。連結部13は、後述するように、ハウジング本体11の外面に嵌着されたシールリング80が当て止めされる当て止め部となっている。
【0021】
ハウジング本体11には、図8に示すように、複数のキャビティ15が形成されている。各キャビティ15には、後方から雌端子金具8が挿入されて収容される。図2に示すように、雌端子金具8は、電線4の端末部に圧着により接続され、前部に、第1、第2ハウジング10、60の嵌合に伴い雄タブ7が挿入されて接続される箱部9を有している。
【0022】
ハウジング本体11の上方には、図9に示すように、ロックアーム16が設けられている。
ロックアーム16は、図6及び図10に示すように、前後方向に延びる板状のアーム本体31と、アーム本体31の前後方向途中の幅方向両端部から側方に張り出して後述する保護壁34に一体に連結される一対の撓み支点部32とを備えている。アーム本体31は、撓み支点部32を支点としてその前後両端部を上下動させる向きに撓み変形可能とされている。そして、アーム本体31の後端部には、第1、第2ハウジング10、60の嵌合状態を解除する際に押圧される段状の解除操作部33が設けられている。
【0023】
ロックアーム16の前端部には、ロック孔17が貫設されている。図2に示すように、第1、第2ハウジング10、60の正規嵌合時に、ロックアーム16のロック孔17にロック部63が弾性的に嵌まり込むことにより、第1、第2ハウジング10、60が嵌合状態に保持されるようになっている。なお、外側壁12の上壁には、ロックアーム16を視認可能な窓部18が開設されている。
【0024】
また、図8及び図10に示すように、第1ハウジング10の幅方向両端部には、ロックアーム16を挟んだ両側に、一対の保護壁34が立設されている。両保護壁34は、上下方向に沿った縦壁状をなし、ハウジング本体11の前後方向の略全長に亘って形成されている。両保護壁34の後部は、ロックアーム16の両撓み支点部32に一体に連結されている。
【0025】
また、第1ハウジング10には、ロックアーム16の前端部を上方から覆う覆い壁35が設けられている。覆い壁35は、幅方向に沿った平板状をなし、両保護壁34の前端上部に一体に連結されて両保護壁34間に幅方向に架け渡された形態とされている。
【0026】
さらに、第1ハウジング10には、図10に示すように、ロックアーム16の幅方向両端部のうちロックアーム16の前端部から撓み支点部32の前端部に至るまでの部分を上方から覆う一対の庇壁36が設けられている。このため、ロックアーム16の前部の幅方向両端部と両保護壁34との間の隙間は、両庇壁36によって埋められる。
【0027】
両庇壁36は、覆い壁35と略面一で連なる平板状をなし、覆い壁35の後端及び両保護壁34の上端に一体に連なり、両保護壁34から幅方向内側に張り出す形態とされている。図10に示すように、両庇壁36と覆い壁35とは、平面視でU字形に連なり、その内側となる窓部18内に、ロック孔17が露出して配置されている。また、両庇壁36の後端には、平面視で前方へ向けて次第に近づく向きに傾斜する一対の斜縁部37が設けられている。
【0028】
また、第1ハウジング10の幅方向両端部には、図8に示すように、一対の抜け止め孔19が形成されている。図5に示すように、両抜け止め孔19は、外側壁12及び連結部13を貫通する形態とされ、内面後部に、前方を向いて径方向にほぼ沿って配置される当接受け面21を有しているとともに、内面前部に、後方を向いて径方向にほぼ沿って配置される係止受け面22を有している。
【0029】
また、図9に示すように、第1ハウジング10の連結部13には、突部23が前方に突出して形成されている。図8に示すように、突部23は、連結部13における抜け止め孔19と対応する部位を除いた残余の領域に、ハウジング本体11の周りを取り囲むように周方向に広範囲に延在する形態とされている。突部23の内面、連結部13の前面及びハウジング本体11の外面によって区画される内側空間24(図9を参照)には、シールリング80の後述する後側のリング部87が嵌合可能とされている。ハウジング本体11の外面から連結部13の前面に連なる部位には、後側のリング部87の後述する案内面88と密着可能なテーパ状の傾斜面25が形成されている。
【0030】
突部23の内面は、図3に示すように、ハウジング本体11の外面とほぼ平行に対向位置する規制面26とされている。突部23の規制面26は、後側のリング部87に外側から当接してこのリング部87のめくれ上がりを規制可能とされている。
【0031】
突部23の外面は、外側壁12の内面と対向位置して、前方へ向けて次第に縮径するテーパ状の第1斜面27を有している。ハウジング本体11にフード部62が外嵌されると、突部23の第1斜面27とフード部62の第2斜面64とが互いに対面して配置されるようになっている。さらに、突部23の外面は、第1斜面27と段付き状に連なったあと連結部13側に向けて前後方向にほぼ沿って延びる水平面28を有している(図3を参照)。
【0032】
シールリング80はシリコンゴム等のゴム製であって、図1及び図5に示すように、ハウジング本体11の外面に対応する環状のシール本体81と、シール本体81の幅方向両端部からいったん後方に突出したあと径方向外側に突出する抜け止め部82とを有している。
【0033】
図7に示すように、シール本体81の前後方向途中部には、内周リップ83及び外周リップ84を有するシール部85が形成されている。内周リップ83は、シール部85の内面に周設された突条の形態とされ、前後の谷部間に配置されている。外周リップ84は、シール部85の外面に周設された突条の形態とされ、前後方向に2条並んで配置されている。この場合、両外周リップ84間の谷部は、内周リップ83と同じ前後位置に配置されている。図3に示すように、第1、第2ハウジング10、60が正規嵌合された状態では、内周リップ83がハウジング本体11の外面に弾性的に密着するとともに、両外周リップ84がフード部62の開口縁側の内面に弾性的に密着し、これによって第1、第2ハウジング10、60間が液密にシールされるようになっている。
【0034】
また、シール本体81は、シール部85を挟んだ前後両側となる前後方向両端部に、前後方向にほぼ沿った前後夫々のリング部86、87を有している。前後夫々のリング部86、87は、シール部85よりも薄肉であってリップを有さず、ハウジング本体11の外面及びフード部62の内面に平坦に密着するようになっている。そして、前後夫々のリング部86、87のうち、後側のリング部87は、前側のリング部86よりも前後方向に長尺とされている。また、図3に示すように、後側のリング部87の後端内周には、テーパ状の案内面88が切り欠き形成されている。
【0035】
抜け止め部82は、図5に示すように、シール本体81側よりも厚肉の形態とされ、前端部の径方向外側に、断面略L字形の凹所91が切欠され、且つこの凹所91に、前方を向いて径方向にほぼ沿って配置される係止面92を有しているとともに、後端部の径方向内側に、後方を向いて径方向にほぼ沿って配置される当接面93を有している。係止面92は、後側のリング部87の後端面94と前後方向に関して同一位置に配置され、この係止面92と後側のリング部87の後端面94とにより規制される前後位置が成形時の金型のパーティングラインPLになっている。
【0036】
次に、実施例1の防水コネクタの作用を説明する。
組み付けに際し、ハウジング本体11の外面に前方からシールリング80が装着される。シールリング80が正規装着されると、図5に示すように、両抜け止め部82が対応する抜け止め孔19に弾性的に嵌合されて、両抜け止め部82の当接面93が両抜け止め孔19の当接受け面21に当接してシールリング80のそれ以上の押し込みが規制され、且つ、両抜け止め部82の係止面92が両抜け止め孔19の係止受け面22に当接してシールリング80の前方への抜けが規制される。
【0037】
また、両抜け止め部82の径方向外端が外側壁12の内面に弾性的に密着するとともに、両抜け止め部82の径方向内端がハウジング本体11の外面に弾性的に密着して、抜け止め部82が外側壁12とハウジング本体11との間に径方向に挟み込まれた状態となる。これにより、抜け止め部82が抜け止め孔19内に位置決め固定され、シールリング80が正規状態に保持される。
【0038】
また、シールリング80がハウジング本体11に正規装着されると、図7に示すように、後側のリング部87が突部23とハウジング本体11との間の内側空間24に嵌合して挿入され、後側のリング部87の外面が突部23の規制面26と極僅かな隙間をあけた対向位置となる(図3を参照)。これにより、後側のリング部87が突部23とハウジング本体11との間に位置決め保持される。
【0039】
続いて、フード部62がハウジング本体11に外嵌されるようにして、第1、第2ハウジング10、60が互いに嵌合される。第1、第2ハウジング10、60の嵌合過程では、フード部62の第2斜面64が外周リップ84と摺接して、フード部62の押し込みとともにシールリング80に後方へのずれ力が作用する。この場合に、後側のリング部87が連結部13の前面に沿ってめくれ上がる懸念があるものの、実施例1によれば、後側のリング部87が突部23の規制面26に当接することにより、後側のリング部87がめくれたり座屈したりする事態が回避される。
【0040】
第1、第2ハウジング10、60が正規嵌合されると、図4に示すように、ロックアーム16のロック孔17にロック部63が弾性的に嵌り込み、その状態を窓部18を通して視認することが可能となっている。
【0041】
また、第1、第2ハウジング10、60が正規嵌合されると、図3に示すように、フード部62の開口端側の内面にシールリング80の両外周リップ84が弾性的に密着するとともに、フード部62の開口縁部66が突部23に外側から覆い被さるように位置して、フード部62の第2斜面64が突部23の第1斜面27と近接しつつ対面位置する。
【0042】
図3に示すように、突部23にフード部62の開口縁部66が被さることにより、フード部62の開口端と連結部13の前面との間に前後方向の隙間50が形成されても、該隙間50の内奥には突部23が位置して、後側のリング部87が径方向外側に露出することはない。このため、例えば、高圧洗浄時において洗浄水が隙間50に浸入しても、突部23の第1斜面27が被水することにより、後側のリング部87が直接的に被水することはない。その結果、後側のリング部87に高い水圧が作用することはなく、後側のリング部87が水圧によって変形する事態が防止される。
【0043】
また、ロックアーム16と両保護壁34との間のクリアランスが両庇壁36によって埋められることにより、上方から見ると、シールリング80がロックアーム16のアーム本体31と両庇壁36とにより覆い隠されるため、シールリング80に高圧の洗浄水が直接かかることはない。このため、シールリング80が変形する事態がより確実に防止される。
【0044】
しかも、ロックアーム16の前部周縁が覆い壁35と両庇壁36とによって覆われているため、例えば、後方からU字状に屈曲した電線4がロックアーム16の前側に回り込もうとしても、該電線4が両庇壁36に当接することにより、ロックアーム16の前端部に電線4が巻き込まれることはなく、ロックアーム16がめくれる事態が回避される。とくに、両庇壁36の後端が両斜縁部37によって逃がされた形態になっているため、電線4が両庇壁36に引っ掛かることも回避可能となる。
【0045】
以上説明したように、実施例1によれば、第1ハウジング10の突部23がハウジング本体11との間に後側のリング部87を径方向に挟み込むから、フード部62の進行に伴って後側のリング部87がめくれたり座屈したりする事態が回避される。また、ハウジング本体11にフード部62が外嵌されると、突部23にフード部62の開口縁部66が被さるから、高圧洗浄時に後側のリング部87が直接的に被水することがなく、後側のリング部87が高圧水によって変形するのが防止される。したがって、実施例1によれば、シールリング80のシール性能が良好に発揮される。とりわけ、実施例1の場合、金型のパーティングラインPLが抜け止め部82の係止面92と後側のリング部87の後端面94とで規定されるため、後側のリング部87が前側のリング部86より前後方向に長くなり易いという事情があるため、後側のリング部87のめくれや座屈を突部23によって回避することができるメリットは大きい。
【0046】
また、実施例1によれば、コネクタ低背化の要請等により、覆い壁35が薄肉とされても、一対の庇壁36が覆い壁35及び両保護壁34に一体に連結された形態で設けられているため、覆い壁35が庇壁36によって補強され、所定の強度を維持することができる。しかも、両庇壁36がロックアーム16の前端部から撓み支点部32側に延びてロックアーム16の幅方向両端部を覆う形態とされているため、ロックアーム16が電線4等の巻き込みに起因してめくれ上がる事態が回避される。したがって、両庇壁36が設けられても、コネクタの構成が無用に複雑になることはない。
【0047】
また、両庇壁36は、ロックアーム16の幅方向両端部のうち、ロックアーム16の前端部からロックアーム16の撓み支点部32に至る範囲を全体的に覆うように配置されているため、ロックアーム16がより確実に保護される。
【0048】
しかも、両庇壁36はロックアーム16のロック孔17を覆わない位置に配置されているため、第1、第2ハウジング10、60の嵌合時に、ロック部63がロック孔17に嵌り込んだ状態を視認することができ、第1、第2ハウジング10、60が嵌合状態にあることを検知することができる。
【0049】
さらに、シールリング80が上方から見てロックアーム16と両庇壁36とによって覆い隠されているため、例えば、高圧洗浄時に、シールリング80が被水するのが回避され、高圧水によってシールリング80が変形するのが防止される。その結果、シールリング80による所定のシール性が保たれる。
【0050】
なお、実施例1から以下の技術思想を抽出することができる。
コネクタは、第2ハウジング60と嵌合可能な第1ハウジング10を備え、前記第1ハウジング10には、前記第2ハウジング60との嵌合時に前記第2ハウジング60のロック部63を弾性的に係止して第1、第2ハウジング10、60を嵌合状態に保持するロックアーム16が撓み可能に設けられるとともに、前記ロックアーム16を挟んだ両側に一対の保護壁34が立設され、且つ、前記ロックアーム16の先端部を覆う覆い壁35が架設されており、さらに、前記第1ハウジング10には、前記覆い壁35及び前記両保護壁34に一体に連結されて前記ロックアーム16の先端部から撓み支点部32側に延びて前記ロックアーム16の幅方向両端部を覆う一対の庇壁36が突設されているところに特徴を有する。
【0051】
仮に、コネクタ低背化の要請を受けて、覆い壁35が薄肉とされても、一対の庇壁36が覆い壁35及び両保護壁34に一体に連結された形態で設けられているため、覆い壁35が庇壁36によって補強され、所定の強度を維持することができる。また、両庇壁36がロックアーム16の先端部から撓み支点部32側に延びてロックアーム16の幅方向両端部を覆う形態とされているため、ロックアーム16が電線4、6等の巻き込みに起因してめくれ上がる事態が回避される。したがって、両庇壁36が単に覆い壁35の補強のために設けられるのではなく、ロックアーム16のめくれ防止の機能を兼用するため、コネクタの構成が無用に複雑になることはない。
【0052】
また、前記覆い壁35が、前記両保護壁34間に幅方向に架け渡され、前記両保護壁34に一体に連結されている。これにより、覆い壁35がより強固に補強される。
【0053】
また、前記覆い壁35及び前記両庇壁36がいずれも幅方向に沿った平板状をなしている。これにより、コネクタが高背になるのを抑えることができる。
【0054】
また、前記両庇壁36は、前記ロックアーム16の幅方向両端部のうち、前記ロックアーム16の先端部から前記ロックアーム16の撓み支点部32に至る範囲を全体的に覆うように配置されている。このように、両庇壁36がロックアーム16の幅方向両端部を広範囲に亘って覆うことにより、ロックアーム16がより確実に保護される。
【0055】
また、前記ロックアーム16には、前記第2ハウジング60のロック部63が嵌り込むロック孔17が貫設され、前記両庇壁36は、前記ロック孔17を覆わない位置に配置されている。これにより、第1、第2ハウジング10、60の嵌合時に、第2ハウジング60のロック部63がロック孔17に嵌り込んだ状態を視認することができ、第1、第2ハウジング10、60が嵌合状態にあることを検知することができる。
【0056】
また、前記両庇壁36が、前記両保護壁34から幅方向内側に張り出す形態とされ、前記両庇壁36の張り出し端が、平面視で前記覆い壁35へ向けて互いに近づく方向に傾斜する斜縁部37とされている。これによれば、ループ状に回曲した電線4、6が庇壁36に引っ掛かるのが回避され、電線4、6の取り回し性の向上を図ることができる。
【0057】
また、前記第1ハウジング10は、前記第2ハウジング60のフード部62が外嵌可能なハウジング本体11を有し、前記ハウジング本体11には、前記第2ハウジング60との嵌合時に前記ハウジング本体11と前記フード部62との間に弾性的に挟まれて前記第1、第2ハウジング10、60間を液密にシールするシールリング80が設けられ、前記シールリング80は、前記ロックアーム16の位置する側において、前記ロックアーム16と前記両庇壁36とにより覆い隠されている。シールリング80がロックアーム16に加えて両庇壁36によって覆い隠されているため、例えば、高圧洗浄時に、シールリング80が被水するのが回避され、高圧水によってシールリング80が変形するのが防止される。
【0058】
ここで、上記構成に至った背景事情を説明する。例えば、特開2005−216614号公報に開示のコネクタは、相手側の雄ハウジングと嵌合可能な雌ハウジングを備えている。雌ハウジングには、片持ち状のロックアームが撓み可能に設けられている。雌雄の両ハウジングが正規嵌合されると、ロックアームが雄ハウジングのロック部を弾性的に係止して、両ハウジングが嵌合状態に保持されるようになっている。また、雌ハウジングには、ロックアームを挟んだ両側に一対の保護壁(上記文献では「起立壁」と呼称)が立設され、且つ、両保護壁と一体に連結されてロックアームの先端部を覆う覆い壁(上記文献では「保護壁」と呼称)が架設されている。雌ハウジングに覆い壁及び両保護壁が設けられることにより、雌ハウジングの単体時にも、ロックアームの先端部が異物から保護された状態に保たれるようになっている。
【0059】
上記従来のコネクタの場合、ロックアームの先端部を覆うことが可能な高さ位置に覆い壁を設けなければならないため、コネクタ全体として高背化するという事情がある。これに鑑み、覆い壁を薄肉にして低背化を図ろうとすると、覆い壁が脆弱になって異物との干渉時に変形するおそれがある。このため、覆い壁を補強する必要があるものの、単に補強するだけでは、コネクタの構成が無用に複雑になって好ましくないという問題がある。これに対し、上記構成に至ったわけである。
【0060】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)シールリングがハウジングに正規装着された場合に、後側のリング部の外面が突部の規制面に当接する構成であってもよい。
(2)シールリングのシール部から内周リップを省略してシール部の内面を平坦に形成してもよい。
(3)第1斜面、第2斜面及び傾斜面の少なくとも1つを省略して前後方向に沿ったストレート面としてもよい。
(4)第2ハウジングがプリント回路基板に実装される基板用のハウジングとされ、雄端子金具が基板に半田接続可能なピン状の形態とされるものであってもよい。
(5)シールリングから抜け止め部を省略することも可能である。その場合、ハウジング本体に前方から装着されるフロント部材の周壁によってシールリングの抜け止めを行えばよい。
(6)両庇壁は、ロックアームの幅方向両端部のうち、ロックアームの前端部から撓み支点部の前端に至るまでの範囲を覆う形態であってもよい。
(7)両庇壁は、ロックアームの幅方向両端部のうち、ロックアームの前端部から撓み支点部の後端を越えてさらに後方の範囲を覆う形態であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…第1ハウジング
11…ハウジング本体
12…外側壁
13…連結部(当て止め部)
16…ロックアーム
17…ロック孔
22…係止受け面
23…突部
31…アーム本体
32…撓み支点部
34…保護壁
35…覆い壁
36…庇壁
60…第2ハウジング
62…フード部
63…ロック部
66…開口縁部
80…シールリング
81…シール本体
82…抜け止め部
84…外周リップ(リップ)
85…シール部
86…前側のリング部
87…後側のリング部
92…係止面
PL…パーティングライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10