特許第5796818号(P5796818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796818
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】湯水混合水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20151001BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20151001BHJP
   F16K 35/00 20060101ALI20151001BHJP
   F16K 11/072 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   E03C1/042 C
   E03C1/044
   F16K35/00 C
   F16K11/072 B
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-203119(P2011-203119)
(22)【出願日】2011年9月16日
(65)【公開番号】特開2013-64261(P2013-64261A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2014年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒木 一文
(72)【発明者】
【氏名】杉本 武志
(72)【発明者】
【氏名】岡本 満
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−189842(JP,A)
【文献】 特開2007−031994(JP,A)
【文献】 特開2007−231591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00 − 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯と水の混合比を調整することで吐水温度を変更する湯水混合手段と、
この湯水混合手段による吐水温度を設定するために回転操作される温度調節ハンドルと、
この温度調節ハンドルの半径方向に移動可能であって、付勢手段によって外周から突出する方向に付勢された安全ボタンと、
前記温度調節ハンドルの取付面に設けられ、前記温度調節ハンドルが低温設定側から高温設定側へと回転操作される途中で、前記付勢手段によって突出した状態の前記安全ボタンの一部と当接して回転を規制する回転規制壁と、
を備えた湯水混合水栓において、
前記温度調節ハンドルの取付面には、前記安全ボタンの一部が前記回転規制壁に当接している状態から前記温度調節ハンドルを低温設定側に回転すると、前記安全ボタンを前記付勢手段の付勢力に抗して前記温度調節ハンドル内に収納する方向に移動させる突出量規制壁が形成されているとを特徴とする湯水混合水栓。
【請求項2】
前記湯水混合水栓は、前記温度調節ハンドルの周面の一部を覆い、一部を露出するカバーを備えており、
前記安全ボタンは、前記突出量規制壁によって前記温度調節ハンドル内に収納する方向に移動している間は前記カバーに覆われ、前記突出量規制壁による規制を外れて突出して前記回転規制壁に当接するまでの間は前記カバーより露出することを特徴とする、請求項1記載の湯水混合水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯と水を混合して吐水する湯水混合水栓に係り、特に高温時の吐水に対する安全性を高めるために、高温吐水設定時に操作を必要とする安全ボタンを備えた湯水混合水栓に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の湯水混合水栓においては、使用者が温度調節ハンドルを高温側へ回転操作する際に、一気に高温側へ回転してしまうと危険を伴うため、温度調節ハンドル外周面から突出する安全ボタンが具備されており、温度調節ハンドルの高温側への回転途中で回転が規制され、その規制の解除のためには安全ボタンの操作を必要とすることで、一気に高温側へ回転する誤操作を防止している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この安全ボタンの突出量は、安全ボタンの押し込み操作による規制解除を行って、温度調節ハンドルを高温側に回転させた状態では小さくなるが、一方、適温、低温側においては安全ボタンは温度調節ハンドル外周面から大きく突出したままとなっている。
そのため、適温、低温側において大きく突出している安全ボタンを押し込んで一気に高温側まで回転させることが可能であり、その場合には意図せずに高温水が吐水される恐れがあった。
また、使用頻度の高い適温や低温に設定された状態で温度調節ハンドル外周に安全ボタンが大きく突出しているため、温度調節ハンドルの意匠性や清掃性の面でも問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−302772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、安全ボタンを操作する必要がない状態における温度調節ハンドルからの突出量を小さくすることで、誤って安全ボタンを操作したまま高温吐水されてしまうことを防止し、また、温度調節ハンドルの意匠性や清掃性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、湯と水の混合比を調整することで吐水温度を変更する湯水混合手段と、この湯水混合手段による吐水温度を設定するために回転操作される温度調節ハンドルと、この温度調節ハンドルの半径方向に移動可能であって、付勢手段によって外周から突出する方向に付勢された安全ボタンと、前記温度調節ハンドルの取付面に設けられ、前記温度調節ハンドルが低温設定側から高温設定側へと回転操作される途中で、前記付勢手段によって突出した状態の前記安全ボタンの一部と当接して回転を規制する回転規制壁と、を備えた湯水混合水栓において、前記温度調節ハンドルの取付面には、前記安全ボタンの一部が前記回転規制壁に当接している状態から前記温度調節ハンドルを低温設定側に回転すると、前記安全ボタンを前記付勢手段の付勢力に抗して前記温度調節ハンドル内に収納する方向に移動させる突出量規制壁が形成されていることを特徴とする。
【0007】
従って、温度調節ハンドルの高温設定側への回転規制を行う必要が無い回転領域では、安全ボタンの温度調節ハンドルから突出量を小さくすることで、誤って安全ボタンを押し込で高温設定領域まで回転されることがなく、意図せずに高温吐水されてしまうことを防止できる。また、温度調節ハンドルから安全ボタンが大きく突出する回転範囲が減ることで、温度調節ハンドルの意匠性や清掃性を向上させることができる。
【0008】
また、請求項2記載の発明によれば、前記湯水混合水栓は、前記温度調節ハンドルの周面の一部を覆い、一部を露出するカバーを備えており、前記安全ボタンは、前記突出量規制壁によって前記温度調節ハンドル内に収納する方向に移動している間は前記カバーに覆われ、前記突出量規制壁による規制を外れて突出して前記回転規制壁に当接するまでの間は前記カバーより露出することを特徴とする。これにより、温度調節ハンドルの高温設定側への回転規制を行う必要が無い回転領域では、安全ボタンがカバーによって覆われるので、使用者は安全ボタンに触ることができなくなり、より確実に誤って安全ボタンを押し込で高温設定領域まで回転されることを防止できる。また、温度調節ハンドルの天面をカバーから突出させる必要がないので、意匠性に優れた湯水混合水栓を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温度調節ハンドルの高温設定側への回転規制を行う必要が無い回転領域では、安全ボタンの温度調節ハンドルから突出量を小さくすることで、誤って安全ボタンを押し込で高温設定領域まで回転されることがなく、意図せずに高温吐水されてしまうことを防止できる。また、温度調節ハンドルから安全ボタンが大きく突出する回転範囲が減ることで、温度調節ハンドルの意匠性や清掃性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の湯水混合水栓の正面図である。
図2】本発明の湯水混合水栓の右側面図である。
図3】本発明の湯水混合水栓の斜視図である。
図4】本発明の湯水混合水栓の分解斜視図である。
図5】押し釦ユニットの詳細を示す図である。
図6】温度調節ハンドルによって操作される温度調節弁の断面図である。
図7図6の温度調節弁の分解斜視図である。
図8】温度調節ハンドルの断面図である。
図9】回転規制部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の湯水混合水栓1の正面図、図2はその右側面図である。この湯水混合水栓1は設置面である壁面2から突出するように設けられている。壁面2としては、ユニットバスを構成する側壁面である。
【0012】
図3図1図2と同じ本発明の湯水混合水栓1の斜視図、図4は分解斜視図である。この湯水混合水栓1は水栓本体10を備え、この水栓本体10に押し釦ユニット11、温度調節ハンドル12、流量調整レバー13がそれぞれ設けられている。また、水栓本体10は押し釦ユニット11、温度調節ハンドル12、流量調整レバー13を露出させた状態で上カバー14、下カバー15で覆われている。
【0013】
図5は押し釦ユニット11の詳細を示す図である。この押し釦ユニット11はカラン吐水用のカラン用押し釦11a、シャワー吐水用のシャワー用押し釦11b、これらの押し釦の誤操作を防止するロック機構11cおよびこれら押し釦およびロック機構が取付けられるベースプレート11dから構成されている。そして、湯水混合水栓1の水栓本体10にはカラン吐水用押し釦11a、シャワー吐水用押し釦11bそれぞれに連動されたパイロット式の開閉弁(図示せず)が設けられ、各押し釦を押すことで開閉弁を機構的に開き、再度押すことで開閉弁を機構的に閉じる構成となっている。
【0014】
湯水混合水栓1の前方下面側にはカラン吐水口16が設けられ(図2参照)、また、シャワー吐水用押し釦11b側の湯水混合水栓1の側面にはシャワー吐水口17が設けられており(図1参照)、シャワー吐水口17には図示しないシャワーヘッドに連通したシャワーホースが接続されている。使用者は、温度調節ハンドル12により所望の温度に設定するとともに、カラン吐水を得たい場合はカラン用押し釦11aを、シャワー吐水を得たい場合はシャワー用押し釦11bを押すことにより、直ちに、所望の温度の湯水混合水を得ることができる。そして、各押し釦を再度押すと止水されるようになっている。
【0015】
なお、湯水混合水の水勢は湯水混合水栓1の正面下方部に設けられた流量調整レバー13を横方向にスライド操作することにより調整する。水勢の調整は各吐水口からの吐水時でも調整可能であるし、止水時でも流量調整レバー13をスライド操作することで調整可能となっている。流調調整レバー13と各吐水口へ吐水する押し釦が別々に構成されているため、使用者は一度所望の水勢に調整しておけば、各吐水口への押し釦を操作するだけで所望の水勢の湯水混合水を得ることができる。
【0016】
ここで、カラン用押し釦11aおよびシャワー用押し釦11bは上カバー上面14aと略同一面に第一操作面11e、11fが設けられているとともに、上カバー前面14bと略同一面に第二操作面11g、11hが配されている。そのため使用者は、湯水混合水栓1の上面側に設けられた第一操作面11e、11fおよび前面側に設けられた第二操作面11g、11hどちらでも操作できるため、風呂イスなどに腰かけた状態でも、またシャワー浴や浴槽の掃除の際などの立ち上がった状態でも容易に操作できるよう構成されている。
【0017】
また、カラン用押し釦11aおよびシャワー用押し釦11bの第二操作面11g、11hにはそれぞれを識別するため、凸形状による触覚記号が設けられており、目を閉じた状態でもカラン用押し釦11aとシャワー用押し釦11bを確認することができるため、より安全で快適に湯水混合水栓1を使用することが可能となっている。上記触角記号は第一操作面に設けることも可能であるし、第一操作面、第二操作面の双方に設けることもできる。
【0018】
次いで温度調節ハンドル12について説明する。
図6は、温度調節ハンドル12によって操作される湯水混合手段としての温度調節弁18の断面図であり、図7は分解斜視図である。温度調節弁18はサーモスタット式の湯水混合弁であり、給水管及び給湯管を通じて供給された湯と水は、温度調節ハンドル12によって所望に設定された温度となるように湯と水の混合比が自動調節される。温度調節ハンドル12は水栓本体10に内蔵された温度調節弁18のスピンドル19先端に取付けビス24によりネジ止めされ、スピンドル19と供回りしてスピンドル19の軸心周りに回転自在となるよう取付けられ、ネジ止め箇所はキャップ20により被覆されている。
【0019】
温度調節ハンドル12の前面12aは上カバー前面14bと略同一面となるよう構成されるとともに、温度調節ハンドル12の周面の一部は上カバー14により覆われている。 また、温度調節ハンドル12の前面12aには、温度調節ハンドル12の操作を容易にするための操作レバー21が湯水混合水栓1の前面に突出するように設けられている。
【0020】
図8は温度調節ハンドル12の断面図である。この温度調節ハンドル12の内周面には温度調節ハンドル12の回転を規制する安全ボタン22が温度調節ハンドル12の取付孔23を通じて半径方向に移動可能なように取付けられている。より詳細に説明すると、安全ボタン22は水栓本体10側と係合することで、温度調節ハンドル12の回転を規制するストッパー26、ストッパー26を温度調整ハンドル12の外径方向に付勢する付勢手段としての付勢バネ27とを介して、固定ビス28により温度調節ハンドル12に取付けられている。また、温度調節弁18側には、温度調節ハンドル12の回転規制部29がナット30により水栓本体10に固定されている。
【0021】
図9は、回転規制部29の断面図である。この回転規制部29には、低温設定側から高温設定側へと回転操作される途中において、付勢バネ27により温度調節ハンドル12の外径方向に押しつけられたストッパー26と当接して温度調節ハンドル12の回転を規制する回転規制壁25と、ストッパー26が回転規制壁25に当接した状態から温度調節ハンドル12を低温設定側に回転させた際に安全ボタン22の付勢バネ27の付勢力に抗して使用者が安全ボタン22を操作することなく温度調節ハンドル12内に徐々に収納する方向に移動させる突出量規制壁31が形成されている。
【0022】
具体的に温度調節ハンドル12を操作した時の動作について説明する。図9において安全ボタン22がAの位置(低温設定側)から、安全ボタン22がBの位置(適温設定側)となるように温度調節ハンドル12を回転操作した場合においては、安全ボタン22は突出量規制壁31に沿って温度調節ハンドル12の外周部へ突出する。そして、更に温度調節ハンドル12を回転させて安全ボタン22がCの位置となると、ストッパー26と回転規制壁25が当接することで、温度調節ハンドル12の回転は規制されて一気に高温設定側へ回転して意図せずに高温吐水される危険を回避することができる。
【0023】
高温吐水が必要な場合においては、使用者が意図して安全ボタン22を温度調節ハンドル12の内径側へ付勢バネ27の付勢力に抗して押し込み、ストッパー26と回転規制壁25の当接を解除しながら温度調節ハンドル12を高温設定側へ回転することで高温吐水を得ることができる。一方、温度調節ハンドル12を高温設定側から適温設定側へ回転操作して安全ボタン22がCの位置に戻す場合においては、使用者が安全ボタン22を操作する必要はない。
【0024】
そして、安全ボタン22がCの位置にある適温設定側から更に温度調節ハンドル12を回転させて安全ボタン22がAの位置となる低温設定側まで回転させる際には、突出量規制壁31の傾斜に沿って滑らかにストッパー26が移動する。このため、高温設定側から低温設定側へ回転操作する場合においては、回転規制部29に設けられた突出量規制壁31により付勢バネ27の付勢力に抗して温度調節ハンドル12内側へ収納する方向へ移動させ安全ボタン22の突出量を小さくすることができる。
【0025】
このように高温設定側へ回転規制を行う必要がない回転領域において安全ボタン22の温度調節ハンドル12からの突出量を小さくすることで、誤って安全ボタン22を押し込んで高温設定領域まで回転させてしまうことがなく、意図せずに高温吐水されることを防止できる。
【0026】
更に本実施例において、温度調節ハンドル12の外周面から安全ボタン22が大きく突出される回転領域においては上カバー14から安全ボタン22が露出するとともに、安全ボタン22の突出量が小さくなる回転領域では安全ボタン22が上カバー14で覆われるように構成されている。このため、使用者は操作が不要な位置において安全ボタン22に触れることができなくなり、誤って安全ボタン22を押し込んで高温設定領域まで回転されることをより確実に防止できる。また、安全ボタン22を温度調節ハンドル12の外周面に突出させるために温度調節ハンドル12を湯水混合水栓1の前面よりも突出させる必要がないので、意匠性に優れた湯水混合水栓1を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0027】
1…湯水混合水栓
2…壁面
10…水栓本体
11…押し釦ユニット
12…温度調節ハンドル
13…流量調整レバー
14…上カバー
15…下カバー
16…カラン吐水口
17…シャワー吐水口
18…温度調節弁(湯水混合手段)
19…スピンドル
20…キャップ
21…操作レバー
22…安全ボタン
23…取付孔
24…取付けビス
25…回転規制壁
26…ストッパー
27…付勢バネ(付勢手段)
28…固定ビス
29…回転規制部
30…ナット
31…突出量規制壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9