(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796833
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ガスタービン・エンジンの構成要素
(51)【国際特許分類】
F02K 3/06 20060101AFI20151001BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20151001BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20151001BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
F02K3/06
F02C7/00 F
F01D9/02 104
F02C7/00 C
F01D25/00 L
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-536742(P2012-536742)
(86)(22)【出願日】2009年10月27日
(65)【公表番号】特表2013-508617(P2013-508617A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】SE2009000475
(87)【国際公開番号】WO2011053197
(87)【国際公開日】20110505
【審査請求日】2012年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】500204267
【氏名又は名称】ゲーコーエヌ エアロスペース スウェーデン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】サムエルソン,リキャルド
(72)【発明者】
【氏名】ライマース,ロベルト
【審査官】
佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05272869(US,A)
【文献】
米国特許第05320490(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02058476(EP,A1)
【文献】
国際公開第2008/121047(WO,A1)
【文献】
米国特許第02869821(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 3/06
F02C 7/00
F01D 9/02
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン・エンジンの構成要素(15)であって、
− リング・エレメント(14,27)と
− 複数の、円周方向に間隔が開けられた、前記リング・エレメント(14,27)の放射方向に延びる負荷担持ベーン(12)とを包含し、前記ベーン(12)のうちの少なくとも1つが複合材料から作られ、かつ前記少なくとも1つの複合材ベーン(12)が前記リング・エレメント(14,27)に固着されており、
前記構成要素(15)が、さらに、
− 前記リング・エレメント(14,27)に関して固定され、かつ前記複合材ベーン(12)の対向する側面に配される第1および第2の壁部分(20,32)と、
− 前記第1の壁部分(20)、前記複合材ベーン(12)、および前記第2の壁部分(32)を通って延びる少なくとも第1の孔(61)とを包含し、前記第1の孔(61)が第1の挿入部材(63)を受入れるべく適合され、
前記構成要素(15)は、前記第1の挿入部材(63)が前記第1の孔(61)に位置するとき、前記第1の挿入部材(63)と前記第2の壁部分(32)との間に半径方向の遊びを伴う第1の緩い嵌り合い(66)が提供されるとともに、前記第1の挿入部材(63)と前記第1の壁部分(20)及び前記複合材ベーン(12)のそれぞれの間に第2のきつい嵌り合い(65a、65b)が提供され、前記第2のきつい嵌り合い(65a、65b)は前記第1の緩い嵌り合い(66)よりきつく配置され、
前記構成要素(15)が、前記第1の壁部分(20)、前記複合材ベーン(12)、および前記第2の壁部分(32)を通って延びる第2の孔(71)を包含し、前記第2の孔(71)が第2の挿入部材(73)を受入れるべく適合され、
前記第1および第2の孔(61,71)が、前記リング・エレメント(14,27)の軸方向から見たときに互いから距離を置いて位置決めされ、
前記構成要素(15)は、前記第2の挿入部材(73)が前記第2の孔(71)に位置するとき、前記第2の挿入部材(73)と前記第1の壁部分(20)との間に半径方向の遊びを伴う第3の緩い嵌り合い(76)が提供されるとともに、前記第2の挿入部材(73)と前記第2の壁部分(32)及び前記複合材ベーン(12)のそれぞれの間に第4のきつい嵌り合い(75a、75b)が提供され、前記第4のきつい嵌り合い(75a、75b)は前記第3の緩い嵌り合い(76)よりきつく配置されていることを特徴とする、ガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項2】
前記構成要素(15)が、前記第1および第2の壁部分(20,32)の相対的な位置の調整を可能にするべく構成されることを特徴とする、請求項1に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項3】
前記壁部分のうちの少なくとも1つ(32)が、前記リング・エレメント(14)および前記複合材ベーン(12)に固着される独立したブラケット部材の部分を形成することを特徴とする、請求項2に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項4】
前記独立したブラケット部材(32)が、該ブラケット部材(32)の位置の調整を可能にする固着デバイス(51,52,53)を使用して前記リング・エレメント(14)に固着されることを特徴とする、請求項3に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項5】
前記第1の挿入部材(63)が、前記第1の孔(61)の中において、該第1の孔(61)の軸方向に沿って延びることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項6】
前記第1の挿入部材がブッシング部材(63)であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項7】
前記構成要素(15)が、前記第1の孔(61)を通って軸方向に延びる固着部材(62)を包含すること、および前記ブッシング部材(63)が少なくとも部分的に前記固着部材(62)の周囲に、かつ該固着部材(62)に沿って延びることを特徴とする、請求項6に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項8】
前記第1の挿入部材(63)が、ボルトまたはリベット等の細長い固着部材であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項9】
前記第1の孔と第2の孔(61,71)の間に第3の孔が配され、前記第3の孔は、第3の挿入部材を受入れるべく適合され、かつ前記構成要素(15)は、前記第3の挿入部材が前記第3の孔に位置するとき、前記第3の挿入部材と前記複合ベーン部材(12)との間に第5のきつい嵌り合いが提供されるとともに、前記第3の挿入部材と前記第1の壁部分(2)及び前記第2の壁部分(32)のそれぞれの間に半径方向の遊びを伴う第6の緩い嵌り合いが提供され、前記第5のきつい嵌り合いは前記第6の緩い嵌り合いよりきつく配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項10】
前記きつい嵌り合いが0.1mm以下の半径方向の遊びに対応し、前記緩い嵌り合いが0.3mm以上の半径方向の遊びに対応することを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項11】
前記構成要素(15)が、前記複数の円周方向に間隔が開けられた負荷担持ベーン(12)によって接続される内側リング・エレメント(27)および外側リング・エレメント(14)を包含することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項12】
前記構成要素(15)が、ターボジェット・エンジン等のガスタービン・エンジン内においてガス流を定義するべく構成されることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項13】
前記第1および第2の壁部分(20,32)が金属材料から作られることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のガスタービン・エンジンの構成要素(15)。
【請求項14】
ガスタービン・エンジンであって、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の構成要素(15)を包含することを特徴とする、ガスタービン・エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のガスタービン・エンジンの構成要素に関する。特に本発明は、リング・エレメントへの負荷担持複合材ベーンの固着に関する。また本発明は、その種の構成要素を包含するガスタービン・エンジンにも関係する。
【背景技術】
【0002】
ターボジェット・エンジンは、複数のエア案内ベーンによって接続される外側リング(外側ケーシング)および内側リング(内側ケーシング)、およびこれらの2つのリングの間において放射方向に延びる構造的な負荷担持ベーンによって定義されるガス/エア・チャンネルを伴うファン部品をしばしば包含する。通常、エンジン・マウントもまた提供され、それを使用して航空機の翼等のフレーム内にエンジンを懸架することが可能になる。エンジン・マウントは、一般に上記の外側リングに取り付けられる。上記のタイプの構造は、エンジンの動作時に大きな機械的な力を受けることになり、その種の条件に耐えるべく設計されなければならない。
【0003】
従来より、ベーンおよびリング・エレメントは、金属から作られ、リング・エレメントへのベーンの固着は、ボルトまたはリベット摩擦ジョイントを使用して達成されてきた。しかしながら、重量を削減する目的から、ファイバ強化ポリマ等の複合材料から作られたベーンならびにリング・エレメントの使用への関心が高まっている。
【0004】
複合材料の構成要素の固着は、概して、金属の構成要素の固着より複雑である。それの1つの理由は、複合材料が、それの寿命の間にわたって機械的に弛緩する傾向を有することであり、その結果として、当初に印加された締付け力が時間とともに減少しがちとなる。もう1つの理由は、ファイバ強化材料が異なる方向において異なる機械的特性を一般に呈し、それが、固着アレンジメントを通じた力の伝達に関して特定の考慮を必要とすることである。したがって、従来的な摩擦ジョイントは、一般に、たとえばリング・エレメントへの負荷担持複合材ベーンの固着に適していない。
【0005】
特許文献1は、リング・エレメント硬化構造およびブラケット部材を使用してリング・エレメントへの負荷担持複合材ベーンの固着を行なうためのアレンジメントを開示しており、それにおいては力の方向の問題に対して特定の注意が払われている。
【0006】
この分野においては、たとえば、複合材料の、それの寿命の間にわたって機械的に弛緩する傾向に関係した問題に関する改善のための必要性が未だに存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/121047号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来的なガスタービン・エンジンおよび構成要素との比較において、リング・エレメントに対する複合材負荷担持ベーンの固着に関して、より改善された特性を呈するガスタービン・エンジンの構成要素およびガスタービン・エンジンを提供することである。この目的は、独立請求項1および15内に含まれる技術的な特徴によって定義されるデバイスによって達成される。従属請求項は、本発明の有利な実施態様、追加の開発、および変形を含む。
【0009】
本発明は、ガスタービン・エンジンの構成要素に関し、当該構成要素は、リング・エレメント、および複数の、円周方向に間隔が開けられた、リング・エレメントの放射方向に延びる負荷担持ベーンを包含し、それにおいて前記ベーンのうちの少なくとも1つが複合材料から作られ、かつそれにおいて当該少なくとも1つの複合材ベーンがリング・エレメントに固着されており、さらに前記構成要素が、リング・エレメントに関して固定され、かつ複合材ベーンの対向する側面に配される第1および第2の壁部分、および第1の壁部分、複合材ベーン、および第2の壁部分を通って延びる少なくとも第1の孔を包含し、それにおいて前記第1の孔は、第1の挿入部材を受入れるべく適合される。
【0010】
本発明は、構成要素が、第1の孔に関して、第1の壁部分内をはじめ複合材ベーン内において第1の挿入部材のためのきつい嵌り合いを提供するように、かつ第2の壁部分内において半径方向の遊びを伴った緩い嵌り合いを提供するようにアレンジされることを特徴とする。
【0011】
この発明性のある設計においては、第1の孔内に位置決めされたブッシングまたはボルト等の挿入部材の間において達成されるきつい嵌り合いが、第1の壁部分に関して固定されたベーンの位置を提供する。それによって、剛直な負荷経路が大きな締付け力の印加を必須とすることなしに提供される。剛直な負荷経路は、結果として滑りおよび剛性の低下をもたらすことがあるギャップ/遊びを回避するために重要であり、滑りおよび剛性の低下は、エンジンの動作の間における機能を制限する。それに加えて、第2の壁部分内における緩い嵌り合いの半径方向の遊びによって許容度を吸収することが可能である。このように、これらの壁部分の相対的な位置を調整することによって許容度を吸収することができる。このことは、第2の壁部分に関してベーンの対応する固定された位置を(たとえば、上記のきつい嵌り合いアレンジメントによって)提供するとき、およびベーンおよび壁部分をリング・エレメントに固着させるときに有用である。
【0012】
ボルトまたはそのほかの挿入部材と、接合されるべき複数の部品を通って延びる孔の間においてきつい嵌り合いを達成する周知の方法は、直線穿孔であり、言換えると接合されるべき部品を合体させて1つの操作によって穿孔する方法である。しかしながら、その種の直線穿孔は、比較的時間を要し、したがってコスト高であること、部品が固有のものとなり、概して交換可能でないこと、さらには、1つの部品が金属からなり、別の部品が複合材料からなる場合において加工作業が複雑なものとなり得ることという欠点を有する。この発明性のある設計においては、きつい嵌り合いが直線穿孔を伴うことなく提供される。
【0013】
きつい嵌り合い、および緩い嵌り合いという用語は、当業者に良好に認識されている用語である。きつい嵌り合いは、孔が、挿入部材と同じか、もしくはわずかにそれより大きいサイズ(直径)を有することを意味し、本件の場合においては、0.1mm以下、典型的には0.015mm乃至0.1mmの半径方向の遊びを伴う。緩い嵌り合いは、接合されるべき特定の部品について期待されるあらゆる許容度条件において自由な遊びを可能にする充分なクリアランスを意味する。本件の場合における緩い嵌り合いは、挿入部材に対する半径方向の遊びが0.3mm以上、典型的には0.4mm乃至0.6mmであることを意味する。
【0014】
本発明の有利な実施態様においては、構成要素が、第1の壁部分、複合材ベーン、および第2の壁部分を通って延びる第2の孔を包含し、それにおいて前記第2の孔は、第2の挿入部材を受入れるべく適合され、前記第1および第2の孔が、リング・エレメントの軸方向から見たときに互いから距離を置いて位置決めされ、それにおいて構成要素が、さらに、第2の孔に関して、第2の壁部分内をはじめ複合材ベーン内において第2の挿入部材のためのきつい嵌り合いを提供するように、かつ第1の壁部分内において半径方向の遊びを伴った緩い嵌り合いを提供するようにアレンジされる。
【0015】
したがって、この実施態様においては、第1の孔内の挿入部材と比較したときに、第2の孔内の挿入部材が、断面方向において反対となるきつい嵌り合い−緩い嵌り合いを有する。この場合におけるきつい嵌り合いは、第1および第2両方の壁部分に関するベーンの固定された位置を(合体させて穿孔することを必須とせずに)提供する。許容度は、両方の壁部分内における緩い嵌り合いによって吸収されることが可能であり、このことは、それが必要とされる場合に、第1および第2の孔それぞれへの第1および第2の挿入部材の挿入を両方ともに可能にするべく、2つの壁部分の相対的な位置を調整できることを意味する。リング・エレメントの軸方向から見たときに互いから距離を置いて位置決めされる2つの孔および対応する2つの挿入部材を包含する固着アレンジメントは、さらに、リング・エレメントへのベーンの固定に良好に適合される。
【0016】
本発明の追加の実施態様においては、固着アレンジメントが、第1および第2の壁部分の相対的な位置の調整を可能にするべく構成される。好ましくは壁部分のうちの少なくとも1つが、リング・エレメントおよび複合材ベーンに固着される独立したブラケット部材の部分を形成する。その種の独立したブラケット部材は、構成要素の組立て時における容易な位置調整および固着が可能である。好ましくは、独立したブラケット部材が、それの位置の調整を可能にする固着デバイスを使用してリング・エレメントに固着される。その種のアレンジメントは、ブラケット部材とリング・エレメントにおけるそれの取り付けポイントとの間の距離を調整するための充分な許容度および/またはシムを伴う、たとえばボルト孔を含むことが可能である。
【0017】
本発明の追加の実施態様では、第1の挿入部材が、第1の孔の中において、それの軸方向に沿って延びる。1つの実施態様においては、第1の挿入部材がブッシング部材になる。好ましくは構成要素が、第1の孔を通って軸方向に延びる固着部材を包含し、それにおいては、ブッシング部材が少なくとも部分的に、固着部材の周囲に、かつそれに沿って延びる。別の実施態様においては、第1の挿入部材が、ボルトまたはリベット等の細長い固着部材である。
【0018】
本発明の追加の実施態様においては、第1の孔と第2の孔の間に第3の孔が配され、それにおいて前記第3の孔は、第3の挿入部材を受入れるべく適合され、かつそれにおいては構成要素が、第3の孔に関して、第1および第2の壁部分内における第3の挿入部材のための半径方向の遊びを伴う緩い嵌り合いを提供するように、かつ複合材ベーン内におけるきつい嵌り合いを提供するようにアレンジされる。その種の設計は、振動の低減のために有用である。
【0019】
本発明の追加の実施態様においては、構成要素が内側リング・エレメントおよび外側リング・エレメントを包含し、それらが前記複数の円周方向に間隔が開けられた負荷担持ベーンによって接続される。
【0020】
本発明の追加の実施態様においては、構成要素が、ターボジェット・エンジン等のガスタービン・エンジン内においてガス流を定義するべく構成される。
【0021】
本発明の追加の実施態様においては、第1および第2の壁部分が金属材料から作られる。
【0022】
本発明はまた、上記のタイプのガスタービン・エンジンの構成要素を包含するガスタービン・エンジンにも関係する。
【0023】
以下の本発明の説明においては、次に示す図面に対する参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による構成要素が提供されたターボジェット・エンジンを示した概略図である。
【
図2】発明性のある構成要素の実施態様を示した斜視図である。
【
図3】本発明による固着アレンジメントの斜視図である。
【
図4】本発明による固着アレンジメントの斜視図である。
【
図5】発明性のある固着アレンジメントによる第1および第2の取り付けポイントの断面図である。
【
図6】発明性のある固着アレンジメントによる第1および第2の取り付けポイントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1にターボジェット・エンジンを示す。このターボジェット・エンジンは、中心本体1、環状の外側ケーシング2(ファン・ケーシング)、環状の内側ケーシング3(エンジン・ケーシング)、ファンまたはブロア4、低圧コンプレッサ5、高圧コンプレッサ6、燃焼室7、高圧タービン8、および低圧タービン9を包含する。さらにこれは、内側ケーシング3から外側ケーシング2の部分を形成する外側リング・エレメント14まで半径方向に延びるアーム10のセットを包含する。アーム10は、主として、エンジンの軸方向に、すなわち長さ方向に内側ケーシング3と外側ケーシング2の間の環状チャンネルを通過するエアのための案内ベーンとして提供される空気力学的ベーン11を包含する。さらにアーム10は、主として、構造の特定の機械的強度を保証するべく提供される構造アームまたは負荷担持ベーン12を包含する。これにおいて、空気力学的ベーン11および負荷担持ベーン12は、軸方向に分離されたアームのセット内にアレンジされる。しかしながら、まったく同一のアームのセット内においてそれらをインターリーブ関係でアレンジすることも同様に可能である。さらに、単一のアームが、空気力学的機能および負荷担持機能の両方を有することもできる。
【0026】
ターボジェット・エンジンを通る流れは2つの主要な気流に分割され、そのうちの第1の1つ気流は中心本体1と内側ケーシング3の間の環状チャンネルを通過して、コンプレッサ5、6、燃焼室7、およびタービン8、9を通る。第2の気流は、内側ケーシング3と外側ケーシング2の間の環状チャンネルを通過する。動作時の第2の気流の温度は第1の気流の温度より低いが、第2の気流は、ターボジェット・エンジンの推力を実質的に増加する。エンジン・マウント13(
図2参照)が外側リング・エレメント14上に配されており、それを使用してターボジェット・エンジンが航空機に取り付けられ、それに関して適正位置に保持される。
【0027】
図2乃至6は、本発明によるガスタービン・エンジンの構成要素15の実施態様を示している。
図2に示されているとおり、構成要素15は、外側ケーシング2の部分を形成する外側リング・エレメント14、内側ケーシング3の部分を形成する内側リング・エレメント27、および外側および内側リング・エレメント14、27の半径方向に延び、かつこれら2つのリング・エレメント14、27を接続する複数の円周方向に間隔が開けられた負荷担持ベーン12を包含する。
図2は、さらに、エンジン・マウント13も示している。外側リング・エレメント14は、半径方向に面する主表面を伴うシートの形式で壁構造を包含する。
【0028】
この実施態様においては、負荷担持ベーン12の延びる方向が構成要素15の半径方向と一致することが示されている。しかしながら、代替実施態様によれば、構成要素の半径方向に関して傾斜(好ましくは30°未満)を伴って負荷担持ベーンを配することができる。
【0029】
負荷担持ベーン12は、ファイバ強化軽量ポリマ材料から作られ、その密度は、たとえば、アルミニウムおよびチタニウム等の軽量材料より低い。このタイプのベーン自体は、当業者にとって周知である。さらに負荷担持ベーン12は、空気力学的に適合された断面を有し、軸方向から見たとき、すなわち外側リング・エレメント14と内側ケーシング3の間のチャンネルを通る流れの方向から見たときに上流側となる前縁および下流側となる後縁を伴う。本発明は、すべてのベーンが複合材料から作られることを必ずしも必要とせず、いくつかのベーンが金属から作られていてもよい。同様に、負荷担持ベーン12が空気力学的に適合された断面を有していることも必須ではない。
【0030】
図3乃至4は、複合材ベーン12を外側リング・エレメント14に固着するべく構成された固着アレンジメントを拡大図で示している。ここに示されている例においては、外側リング・エレメント14が、
図3乃至4に示される骨格構造17を含む多様な部品を包含する。一方、骨格構造17は、実質的に外側リング・エレメント14の軸方向に延び、実質的にリング・エレメント14の円周方向に面する表面を呈する壁部分20を包含し、当該表面は、ベーン12の外側の端においてそれの(湾曲された)側面にもたれ掛かることが意図されている。したがって壁部分20は、平行かつオーバーラップする関係で負荷担持ベーン12の外側の端の位置決めを可能にするべく構成される。さらに壁部分20は、負荷担持ベーン12のための剛直な取り付けポイントを形成するべく構成されている。端的に言えば、壁部分20は、外側リング・エレメント14に対して複合材ベーン12を固着するための第1のブラケット部材を形成する。
【0031】
独立したブラケット部材の部分を形成する第2の壁部分32が
図4に示されているが、この例においてはそれがL字形の断面を有する。第2の壁部分32は、負荷担持ベーン12の外側の端の側面と平行かつオーバーラップする関係で位置決めされるが、第1の壁部分20との比較においてベーン12の反対側となる。第1の壁部分20の場合と同様に、第2の壁部分32は、ベーン12の形状に適合するようにわずかに湾曲される。第2の壁部分32を構成する独立したブラケット部材は、ボルト51乃至53を使用して外側リング・エレメント14に固着される。したがって、この場合においては、第1の壁部分20が外側リング・エレメント14と(すなわち、骨格構造17と)1ピースのユニットを形成し、第2の壁部分32は、独立した(取り付け可能/取外し可能な)部品の部分を形成する。
【0032】
第1および第2の壁部分20、32をはじめ、骨格構造17および独立したブラケット部材の残りの部分は、この場合においては金属材料から作られている。
【0033】
複合材ベーン12は、第1および第2の壁部分20、32に固着され、それによってリング・エレメント14の軸方向に分配された第1、第2、および第3の取り付けポイント41乃至43においてリング・エレメント14に固着されるが、それにおいては第1のポイント41がベーン12の上流側前縁のもっとも近くに位置決めされ、第2のポイント42がベーン12の下流側後縁のもっとも近くに位置決めされ、第3のポイント43が第1と第2の取り付けポイント41、42の中間に位置決めされる。したがって、第1および第2の取り付けポイント41、42は、図示されているとおり、リング・エレメント14の軸方向において互いから距離を置いて位置決めされている。
【0034】
図5および6は、それぞれ第1および第2の取り付けポイント41、42の断面を示している。
図5に示されているとおり、固着アレンジメントの第1の取り付けポイント41は、第1の壁部分20、複合材ベーン12、および第2の壁部分32を通って延びるようにアレンジされた第1の孔(中心軸61によって示されている)を包含し、それにおいて前記第1の孔61は、第1のブッシング部材63の形式の第1の挿入部材を受入れるべく適合されている。さらにこれは、第1のブッシング部材63を通して挿入される第1のボルト部材62の形式の固着エレメント、および第1のボルト部材62の上に螺合される第1のナット部材64を包含する。同様に、
図6においては、固着アレンジメントの第2の取り付けポイント42が、第1の壁部分20、複合材ベーン12、および第2の壁部分32を通って延びるようにアレンジされた第2の孔(中心軸71によって示されている)を包含することが示されており、それにおいて前記第2の孔71は、第2のブッシング部材73の形式の第2の挿入部材を受入れるべく適合されている。さらにこれは、第2のブッシング部材73を通して挿入される第2のボルト部材72の形式の固着エレメント、および第2のボルト部材72の上に螺合される第2のナット部材74を包含する。このように前記第1および第2の孔61、71は、図示されているとおり、リング・エレメント14の軸方向において互いから距離を置いて位置決めされている。
【0035】
各第1および第2の孔61、71は、それぞれ、第1の壁部分20内、ベーン12内、および第2の壁部分32内に配される3つの一致した同軸の孔のセットを包含する。
【0036】
ブッシング部材63、73、ボルト部材62、72、およびナット部材64、74は、すべて金属材料から作られている。
【0037】
構成要素15の固着アレンジメントは、第1の孔61に関して、第1の挿入部材のための、すなわちこの場合の第1のブッシング部材63のためのきつい嵌り合い65aおよび65bを、第1の壁部分20内をはじめ複合材ベーン12内において提供するように、かつ半径方向の遊びを伴う緩い嵌り合い66を第2の壁部分32内において提供するようにアレンジされる。それに加えて、この固着アレンジメントは、第2の孔71に関して、第2の挿入部材のための、すなわちこの場合の第2のブッシング部材73のためのきつい嵌り合い75aおよび75bを、第2の壁部分32内をはじめ複合材ベーン12内において提供するように、かつ半径方向の遊びを伴う緩い嵌り合い76を第1の壁部分20内において提供するようにアレンジされる。このように第2の孔71内に配される第2のブッシング部材73は、第1の孔61内に配される第1のブッシング部材63と比較したときに、反対側においてきつい嵌り合い−緩い嵌り合いを有する。
【0038】
嵌り合いがきついということは、原則的に、対応する挿入部材、すなわちこの場合においては対応するブッシング部材の挿入を(過度に)困難としない程度に可能な限り孔の直径が小さいことを意味する。きつい嵌り合いには、通常、小さい半径方向の遊びが存在することになる。典型的なきつい嵌り合いの半径方向の遊びは、この応用においては約0.015mm乃至0.1mmである。半径方向の遊びは、さらに、挿入前の挿入部材の冷却/収縮によって低減できることがある。嵌り合いが緩いということは、許容度を吸収するためのゆとりが存在することを意味し、これは、このタイプのねじジョイントをアレンジする標準的な方法である。典型的な緩い嵌り合いの半径方向の遊びは、この応用においては約0.4mm乃至0.6mmである。半径方向の遊びについて与えられたこれらの値は、孔の半径方向における総合的な遊びを基準にしており、言換えると挿入部材が孔の中心にある場合には、孔の特定の側における半径方向の遊びが上に与えられた値と同じになる。
【0039】
きつい嵌り合いは、この場合において、第1および第2の壁部分20、32の両方に関するベーンの固定された位置を提供する。これは、ベーン12とリング・エレメント14の間における剛直な負荷経路を提供する。互いに締付けられる部品が金属材料から作られているため、複合材料の寿命の間にわたってそれが機械的に弛緩する傾向に関係した問題はまったく存在しない。
【0040】
許容度は、2つの壁部分20、32における緩い嵌り合い66、76によって吸収される。このことは、2つの壁部分20、32の相対的な位置が、第1および第2の孔61、71のそれぞれへの第1および第2の挿入部材63、73の挿入をともに可能にするべく調整されることが、それが必要とされる場合に可能であることを意味する。この場合においては、第1の壁部分20がリング・エレメント14の部分を形成するが、このことは、実際上、構成要素15の組立て時において第1の壁部分/ブラケット部材20に関して位置調整が行なわれることになる部材が第2の、独立したブラケット部材32であることを意味している。当然のことながら、それに代えて両方の壁部分20、32が、ベーン12およびリング・エレメント14に対して直接または間接的に取り付けられる独立したブラケット部材を形成することもできる。重要なことは、壁部分20と32の間における相対的な位置調整が、それらをベーン12に固着させるときに可能となることである。
【0041】
リング・エレメント14に関する、独立したブラケット部材の壁部分の位置調整は、たとえば、ブラケットおよび/またはリング・エレメント内の固着のために使用される孔(たとえば、ボルト・ジョイント51乃至53のための孔)に充分な許容度を持たせることによって、および/またはシムを使用してブラケット部材とリング・エレメント14の間の距離を調整することによって行うことができる。
【0042】
構成要素15は、第1および第2の孔61、71が、第1および第2の挿入部材63、73のための特定の嵌り合いを提供するような方法でアレンジされ、この場合においてはそれらがブッシング部材になる。各ブッシング部材63、73は、それの対応する孔のサイズに適合する細長い挿入部材であり、対応する孔の少なくとも相当量を通って軸方向に延びる。さらに、各ブッシング部材63、73は、固着エレメント、すなわち対応するボルト部材62、72に沿って、少なくとも部分的にそれの周囲に延び、それらのボルト部材もまた、対応する孔を通って軸方向に延びる。より複雑な、たとえば特許文献1の開示に従ったブッシング・アレンジメントを使用することもできる。その一方において、ここで述べている本発明にとってブッシング部材は必須ではない。いずれかの孔への挿入時に特定の嵌り合いを提供するべく適合されている挿入部材は、ボルトまたはリベット等の細長い固着エレメントとすることができる。
【0043】
第3の取り付けポイント43は、この例においては第1および第2の取り付けポイント41、42と原理的に類似であり、ベーン12および壁部分20、32を通って延びる第3の孔をはじめ、その第3の孔を通って挿入される細長い挿入部材を包含する。しかしながら、第3の取り付けポイントでは、ベーン12内においてのみきつい嵌り合いが提供され、第1および第2の壁部分20、32内における嵌り合いは、いずれも緩い。したがって、ブラケット部材20、32の相対的な位置の何らかの調整の後においても第3の孔を通して第3の挿入部材(たとえば、第3のブッシングまたはボルト部材)を挿入することが可能である。第3の取り付けポイントの機能は、主として振動の低減である。
【0044】
外側リング14は、ファイバ強化複合材等の軽量材料を包含することができる。外側リング14は、図示されている実施態様におけるように、環状の形状であり、長さ方向に、すなわちエンジンの軸方向に長さを有することができ、前記軸方向におけるアーム12のそれぞれの延長に対応する。リング14は、さらに、上流と下流のガスタービンの構成要素の間における軸方向負荷の伝達のために構成することもできる。
【0045】
これまでは、ガスタービン・エンジンにおける静的な応用について述べてきた。しかしながら、本発明は、ファン等の回転構成要素においても同様に適用でき、それにおいては、エンジンのバイパス・チャンネル内における気体の案内のための空気力学的案内ベーンが提供される。また本発明は、任意の組立て済み/作成済みの金属/複合材構造のために使用することができる。
【0046】
本発明は、広い意味において、リング・エレメントに接続される複数のアーム、通常は、ベーンまたは負荷担持ベーンが存在するターボジェット・エンジン内のすべての種類の構造に関係する。たとえば、その種の構造ベーンは、エンジンのコア・ガス・チャンネル内だけでなく、コア・ガス・チャンネルおよびバイパス・ガス・チャンネル内への分配の上流の共通ガス・チャンネル内にファン・セクションが配されるタイプのエンジンのファン・セクション内に配することもできる。
【0047】
用語『リング・エレメント』は、この中で参照する場合に、リングの部分、すなわち扇形だけを包含すること、あるいは完全につながったリングを包含することができる。さらにリング・エレメントが、ハウジング、ケーシング、またはそのほかの類似した構成要素の部分を形成することもある。
【0048】
本発明がこれまで述べてきた実施態様によって限定されることはなく、むしろ、請求の範囲内となる多様な方法において修正することが可能である。たとえば、第1の孔61が、それの全長に沿って同一の直径を有することは必ずしも必須でない。たとえば、ベーン12を通って延びる第1の孔61の一部が、より小さい直径を有することができる。その種の場合においては、本発明のきつい嵌り合い−緩い嵌り合いを、長さ方向に沿って第1の孔61の直径と対応する形で直径が変化する挿入部材を提供することによって達成することが可能である。類似の代替が、第2の孔71についても同様に可能である。
【0049】
この中で説明した実施態様においては、発明性のある固着アレンジメントがガスタービン・エンジンの構成要素15の外側リング・エレメント14に対する負荷担持ベーン12の固着に使用されてきた。しかしながら本発明は、内側リング・エレメント27への負荷担持ベーン12の固着のために適用することも可能であり、言換えると内側および/または外側リング・エレメント上においてそれを使用することが可能である。
【0050】
第2の壁部分32を提供するブラケット部材等の独立したブラケット部材は、異なる方法でリング・エレメント14に固着させることができる。たとえば、これまで述べてきたものに対する代替または補足として、独立したブラケット部材を、リング・エレメント14の軸方向に配される固着エレメントを用いて、たとえばボルトを用いてリング・エレメント14のフランジに固着させることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 中心本体
2 環状の外側ケーシング、外側ケーシング、ファン・ケーシング
3 環状の内側ケーシング、内側ケーシング、エンジン・ケーシング
4 ファンまたはブロア
5 低圧コンプレッサ
6 高圧コンプレッサ
7 燃焼室
8 高圧タービン
9 低圧タービン
10 アームのセット、アーム
11 ベーン、空気力学的ベーン
12 構造アーム、負荷担持ベーン、複合材ベーン、ベーン
13 エンジン・マウント
14 外側リング・エレメント、外側リング、リング・エレメント
15 ガスタービン・エンジンの構成要素
17 骨格構造
20 第1の壁部分
27 内側リング・エレメント
32 第2の壁部分
41 第1の取り付けポイント
42 第2の取り付けポイント
43 第3の取り付けポイント
51 ボルト
52 ボルト
53 ボルト
61 中心軸、第1の孔
62 第1のボルト部材
63 第1のブッシング部材、第1の挿入部材
64 第1のナット部材
65a きつい嵌り合い
65b きつい嵌り合い
66 緩い嵌り合い
71 中心軸、第2の孔
72 第2のボルト部材
73 第2のブッシング部材、第2の挿入部材
74 第2のナット部材
75a きつい嵌り合い
75b きつい嵌り合い
76 緩い嵌り合い