特許第5796836号(P5796836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5796836ピタバスタチンまたはその塩の中間体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796836
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ピタバスタチンまたはその塩の中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/06 20060101AFI20151001BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20151001BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C07D405/06
   A61K31/4709
   A61P3/06
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-514094(P2013-514094)
(86)(22)【出願日】2011年3月11日
(65)【公表番号】特表2013-529223(P2013-529223A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】KR2011001704
(87)【国際公開番号】WO2011155689
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年1月7日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0053631
(32)【優先日】2010年6月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510058874
【氏名又は名称】エイチ.エル.ジェノミクス
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンギュ
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/132482(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0052230(KR,A)
【文献】 特開平05−310700(JP,A)
【文献】 特開2004−099540(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/152086(WO,A1)
【文献】 特開2003−238566(JP,A)
【文献】 特表2006−511618(JP,A)
【文献】 社団法人日本化学会,化学便覧応用化学編第6版,丸善株式会社,2003年 1月30日,第178頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(c)ジメチルスルホキシドを反応溶媒として、化学式2の化合物1kgに対して3ないし7Lの比率で使用し、塩基存在下で、化学式2の化合物を化学式3の化合物と反応させる段階、及び
(d)段階(c)の反応混合物を20ないし25℃に冷却して沈殿物を形成させた後、前記沈殿物をジメチルスルホキシドとヘキサンとの混合溶媒で洗浄した後乾燥させてジメチルスルホキシド溶媒和物形態の化学式4の化合物を得る段階
を含む、結晶型固体状の化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物の製造方法。
【化1】
【化2】
【化3】
(式中、Rは−C直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルまたはベンジルである。)
【請求項2】
前記塩基が、アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
(e)請求項1または請求項2に記載の製造方法によって、化学式4の化合物(式中、Rは−C直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルまたはベンジルである。)のジメチルスルホキシド溶媒和物を製造する段階、
【化4】
(f)前記化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物に酸(acid)を加えて化学式5の化合物(式中、Rは−C直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルまたはベンジルである。)を製造する段階、
【化5】
(g)前記化学式5の化合物に水酸化ナトリウムを加えて遊離塩基形態のピタバスタチンを製造する段階、及び
(h)任意で実施してもよい、前記遊離塩基形態のピタバスタチンをその薬学的に許容可能な塩に転換する段階
を含む、ピタバスタチンまたはその薬学的に許容可能な塩の製造方法。
【請求項4】
(i)塩基存在下で、化学式2の化合物を化学式3の化合物と反応させる段階、
(ii)段階(i)の反応混合物にC−Cアルコールを加えて沈殿物を形成させた後、前記沈殿物を水で洗浄した後乾燥させて結晶型固体状の化学式4の化合物を得る段階、
(iii)段階(ii)で得られた結晶型固体状の化学式4の化合物に酸(acid)を加えて化学式5の化合物を製造する段階、
(iv)前記化学式5の化合物に水酸化ナトリウムを加えて遊離塩基形態のピタバスタチンを製造する段階、及び
(v)任意で実施してもよい、前記遊離塩基形態のピタバスタチンをその薬学的に許容可能な塩に転換する段階
を含む、ピタバスタチンまたはその薬学的に許容可能な塩の製造方法。
【化6】
【化7】

【化8】
【化9】
(式中、RはC−C直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルまたはベンジルである。)
【請求項5】
前記塩基が、アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記C−Cアルコールが、メタノール、エタノール及び2−プロパノールからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記沈殿物を形成させる工程が、前記化学式2の化合物と化学式3の化合物との反応混合物に、40ないし45℃でC−Cアルコールを加えた後、得られた反応混合物を5ないし15℃に冷却することによって遂行されることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピタバスタチンまたはその塩の中間体の改善された製造方法に係り、さらに詳細には、本発明は、ピタバスタチンまたはその塩の中間体である(4R,6S)−(E)−6−[2−(2−シクロプロピル)−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル)−ビニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル]酢酸エステル誘導体の改善された製造方法に関する。また、本発明は、前記中間体の新規の溶媒和物、及び前記中間体を使用したピタバスタチンまたはその塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピタバスタチンまたはその塩は、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル−補酵素A(HMG−CoA)還元酵素の競合的阻害を介して、人体内でコレステロール生合成を阻害することから、高コレステロール血症の治療のために有用に使われる。ピタバスタチンの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、ヘミカルシウム塩、マグネシウム塩などが知られており、ヘミカルシウム塩が臨床で使われている。ピタバスタチンまたはその塩の化学構造は、次の通りであり、下記化学式でMは、水素、Na、K、Mg+2、Ca+2などを示す。
【化1】
【0003】
ピタバスタチンまたはその塩の製造方法は、米国特許第5,011,930号明細書、同第5,856,336号明細書及び同第5,872,130号明細書などに開示されている。国際特許公開WO2003/042180号パンフレットは、ピタバスタチンまたはその塩の改善された製造方法を開示している。しかし、これらの特許に開示された製造方法は、非常に多い反応段階を含み、収率が低く、爆発の危険性から量産に適用し難いリチウム試薬を使うため、産業的規模の量産に適用し難い。また、高価な原料であるクロロトリメチルシランを多量に使うため、これが製造コストを押し上げることになる。
【0004】
一方、国際特許公開WO2007/132482号パンフレットは、穏やかな条件下で、比較的少ない反応段階の遂行を介して、ピタバスタチンまたはその塩を製造する方法を開示している。この特許に開示された製造方法は、下記反応式1に示すように、化学式2の化合物とtert−ブチル−2−((4R,6S)−6−ホルミル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル)アセテートとをウィッティヒ反応(Wittig reaction)によって反応させて、ジオキサン構造を有する中間体を得る段階、前記中間体をジヒドロキシ構造を有する中間体のアミン塩形態に転換する段階、及びピタバスタチンまたはその塩を製造する段階を含む。
【化2】
【0005】
この製造方法で、ジオキサン構造を有する中間体は、トルエンを使用した抽出、濃縮などの単離工程を遂行することによって単離される。しかし、このような単離工程は、前記中間体をオイル状(すなわち、濃縮残渣の形態)で提供することから、取り扱いが困難である。また、得られるジオキサン構造を有する中間体は、非常に低い純度を有する(約75%のHPLC純度、図1参照)。また、ウィッティヒ反応により生成されるトリフェニルホスフィンオキシドも2%ほど残留する。このような低純度の問題を解決するために、前記製造方法は、次に得られる反応生成物、すなわち、ジヒドロキシ構造を有する中間体をアミン塩形態に転換する精製工程を必要とする。しかし、アミン塩形態への追加の転換工程は、工程を長くするとともに収率を低減させる。また、アミン塩形態から得られるピタバスタチン及びその塩の純度は、HPLC純度で最大でも95%に過ぎず、依然として満足できるものではない。
【0006】
従って、短い反応段階を介して、穏やかな条件下で、ピタバスタチンまたはその塩を製造する改善された製造方法、特に、ピタバスタチンまたはその塩を高純度に製造する改善された製造方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有機溶媒を使用した抽出のような煩雑な後処理工程を遂行することなく、簡単な方法でジオキサン構造を有する中間体を結晶型固体状に製造するための改善された方法を提供する。特に、本発明は、前記中間体を99%以上の高純度に製造するための改善された方法を提供する。また、本発明は、前記改善された方法を利用して、ピタバスタチンまたはその塩を高純度に製造する方法を提供する。
【0008】
従って、本発明は、ピタバスタチンまたはその塩の製造に有用な、結晶型固体状の中間体の改善された製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記結晶型固体状の中間体の新規の溶媒和物及びその製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記結晶型固体状の中間体またはその溶媒和物を利用したピタバスタチンまたはその塩の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によって、(a)塩基存在下で、化学式2の化合物を化学式3の化合物と反応させる段階、及び(b)段階(a)の反応混合物にC−Cアルコールを加えて沈殿物を形成させた後、前記沈殿物を水で洗浄した後乾燥させて化学式4の化合物を得る段階を含む、結晶型固体状の化学式4の化合物の製造方法が提供される:
【化3】
【化4】
【化5】
式中、Rはカルボン酸保護基である。
【0012】
前記製造方法において、前記塩基は、アルカリ金属塩であってもよい。前記C−Cアルコールは、メタノール、エタノール及び2−プロパノールからなる群から選択される1種以上であってもよい。また、前記沈殿物を形成させる工程は、前記化学式2の化合物と化学式3の化合物との反応混合物に、40ないし45℃でC−Cアルコールを加えた後、得られた反応混合物を5ないし15℃に冷却することによって遂行される。
【0013】
本発明の他の態様によって、(c)ジメチルスルホキシドを反応溶媒として、化学式2の化合物1kgに対して3ないし7Lの比率で使用し、塩基存在下で、化学式2の化合物を化学式3の化合物と反応させる段階、及び(d)段階(c)の反応混合物を20ないし25℃に冷却して沈殿物を形成させた後、前記沈殿物をジメチルスルホキシドとヘキサンとの混合溶媒で洗浄した後乾燥させてジメチルスルホキシド溶媒和物形態の化学式4の化合物を得る段階を含む、結晶型固体状の化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物の製造方法が提供される。前記製造方法において、前記塩基は、アルカリ金属塩であってもよい。
【0014】
本発明のさらに他の態様によって、下記化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物が提供される:
【化6】
式中、Rはカルボン酸保護基である。
【0015】
本発明のさらに他の態様によって、(e)上述した製造方法によって、結晶型固体状の化学式4の化合物(式中、Rはカルボン酸保護基である)またはそのジメチルスルホキシド溶媒和物を製造する段階、
【化7】
(f)前記結晶型固体状の化学式4の化合物またはそのジメチルスルホキシド溶媒和物に酸(acid)を加えて化学式5の化合物(式中、Rはカルボン酸保護基である)を製造する段階、
【化8】
(g)前記化学式5の化合物に水酸化ナトリウムを加えて遊離塩基形態のピタバスタチン(化学式1の化合物)を製造する段階、及び
【化9】
(h)任意で実施してもよい、前記遊離塩基形態のピタバスタチンをその薬学的に許容可能な塩に転換する段階を含む、ピタバスタチンまたはその薬学的に許容可能な塩の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明による製造方法は、中間体(すなわち、化学式4の化合物)またはそのジメチルスルホキシド溶媒和物を結晶型固体状で得ることができるので、オイル状の中間体を取り扱うことによる困難さを回避することができる。また、前記結晶型固体状の中間体またはそのジメチルスルホキシド溶媒和物は99%以上の高純度で得られるので、ジヒドロキシ構造を有する化学式5の化合物を高純度に製造することができる。従って、化学式5の化合物をアミン塩形態に転換する工程を遂行することなく、化学式5の化合物から直接ピタバスタチンまたはその塩を製造することができるので、本発明の製造方法は、反応工程を短縮させることができ、産業的規模の量産に適する。特に、従来の製造方法のようにトルエンを使用した抽出、濃縮などの単離工程を遂行せずに、低価のアルコールまたは少量の反応溶媒(すなわち、ジメチルスルホキシド)を使用し、温度調節及び洗浄工程を介して結晶化させることにより中間体を単離することができるので、本発明の製造方法は、簡単に遂行され、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】国際特許公開WO2007/132482号パンフレットの実施例3によって製造された生成物のHPLCによる分析結果を示した図であり、矢印は、ジオキサン構造を有する中間体のピークを示す。
図2】実施例1において製造された生成物(化学式4の化合物、R=tert−ブチル)のHPLCによる分析結果を示した図であり、矢印は、前記生成物のピークを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、(a)塩基存在下で、化学式2の化合物を化学式3の化合物と反応させる段階、及び(b)段階(a)の反応混合物にC−Cアルコールを加えて沈殿物を形成させた後、前記沈殿物を水で洗浄した後乾燥させて化学式4の化合物を得る段階を含む、結晶型固体状の化学式4の化合物の製造方法を提供する。
【化10】
【化11】
【化12】
式中、Rはカルボン酸保護基である。前記カルボン酸保護基は、C−C直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルまたはベンジルであり、望ましくは、tert−ブチルである。
【0019】
本発明による製造方法は、化学式4の化合物を結晶型固体状で得ることができるので、オイル状の中間体(すなわち、化学式4の化合物)を取り扱うことによる困難さを回避することができる。また、前記結晶型固体状の化学式4の化合物は99%以上の高純度で得られるので、ジヒドロキシ構造を有する化学式5の化合物を高純度に製造することができる。従って、従来の製造方法(国際特許公開WO2007/132482号)のように化学式5の化合物をアミン塩形態に転換する工程を遂行することなく、化学式5の化合物から直接ピタバスタチンまたはその塩を製造することができるので、本発明の製造方法は、反応工程を短縮させることができ、産業的規模の量産に適する。特に、従来の製造方法のようにトルエンを使用した抽出、濃縮などの単離工程を遂行せずに、低価のアルコールを使用して結晶化させることにより中間体を単離することができるので、本発明の製造方法は、簡単に遂行され、製造コストを抑えることができる。
【0020】
段階(a)は、従来の製造方法、すなわち、国際特許公開WO2007/132482号パンフレットに従って遂行される。すなわち、段階(a)は、塩基存在下で、化学式2の化合物を化学式3の化合物と反応させることによって遂行され、前記化学式2の化合物は、3−(ブロモメチル)−2−(1−シクロプロピル)−4−(4’−フルオロフェニル)キノリンとトリフェニルホスフィンとの反応から得られる。前記塩基は、アルカリ金属塩、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウムなどであってもよく、望ましくは、炭酸カリウムである。段階(a)は、50ないし90℃、望ましくは、約70℃の温度で遂行される。前記化学式2の化合物と化学式3の化合物との反応は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどの有機溶媒中で行われる。
【0021】
段階(b)で、前記C−Cアルコールは、メタノール、エタノール及び2−プロパノールからなる群から選択される1種以上であってもよく、望ましくは、メタノールまたはエタノールである。前記C−Cアルコールを段階(a)の反応混合物に加えることにより、沈殿物が形成され、前記沈殿物は、一般的な濾過方法によって単離することができる。前記C−Cアルコールを使用した沈殿物形成及び沈殿物の単離を介して、副産物であるトリフェニルホスフィンオキシドが簡単に除去されるため、結晶型固体状の化学式4の化合物を高純度に単離することができる。前記沈殿物を形成させる工程は、段階(a)の反応混合物に、40ないし45℃でC−Cアルコールを加えた後、得られた反応混合物を5ないし15℃に冷却することによって遂行される。
【0022】
段階(b)での水を使用した洗浄工程を介して、使用された塩基が除去される。前記水を使用した洗浄工程は、一般的な洗浄方法によって行われる。例えば、前記洗浄工程は、前工程で得られた沈殿物1kgに対して、5ないし30Lの比率で水を使用して遂行される。前記洗浄工程は1回以上行ってもよい。前記洗浄工程により得られた生成物は、一般的な乾燥方法、例えば、減圧乾燥法によって乾燥させることによって単離される。
【0023】
本発明は、また、結晶型固体状の化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物の製造方法を提供する。すなわち、本発明は、(c)ジメチルスルホキシドを反応溶媒として、化学式2の化合物1kgに対して3ないし7Lの比率で使用し、塩基存在下で、化学式2の化合物を化学式3の化合物と反応させる段階、及び(d)段階(c)の反応混合物を20ないし25℃に冷却して沈殿物を形成させた後、前記沈殿物をジメチルスルホキシドとヘキサンとの混合溶媒で洗浄した後乾燥させてジメチルスルホキシド溶媒和物形態の化学式4の化合物を得る段階を含む、結晶型固体状の化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物の製造方法を提供する。
【0024】
本発明による化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物の製造方法は、化学式4の化合物を結晶型固体状で得ることができるので、オイル状の中間体(すなわち、化学式4の化合物)を取り扱うことによる困難さを回避することができる。また、前記結晶型固体状の化学式4の化合物は99%以上の高純度で得られるので、ジヒドロキシ構造を有する化学式5の化合物を高純度に製造することができる。従って、従来の製造方法(国際特許公開WO2007/132482号)のように化学式5の化合物をアミン塩形態に転換する工程を遂行することなく、化学式5の化合物から直接ピタバスタチンまたはその塩を製造することができるので、本発明の製造方法は、反応工程を短縮させることができ、産業的規模の量産に適する。特に、従来の製造方法のようにトルエンを使用した抽出、濃縮などの単離工程を遂行せずに、少量の反応溶媒(すなわち、ジメチルスルホキシド)を使用し、温度調節及び洗浄工程を介して結晶化させることにより中間体を単離することができるので、本発明の製造方法は、簡単に遂行することができる。
【0025】
段階(c)は、反応溶媒として、ジメチルスルホキシドを少量、すなわち、化学式2の化合物1kgに対して3ないし7Lの比率で使用することを除いては、従来の製造方法、すなわち、国際特許公開WO2007/132482号パンフレットに沿って遂行される。使われる塩基は、アルカリ金属塩、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウムなどであり、望ましくは、炭酸カリウムである。段階(c)は、50ないし90℃の温度で遂行される。
【0026】
段階(c)の反応混合物を20ないし25℃に冷却することにより、沈殿物が形成され、前記沈殿物は、一般的な濾過方法によって単離される。前記沈殿物をジメチルスルホキシドとヘキサンとの混合溶媒で洗浄することにより、使用された塩基及び副産物であるトリフェニルホスフィンオキシドが除去され、結晶型固体状の化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物を高純度に単離することができる。前記混合溶媒において、ジメチルスルホキシドとヘキサンとの重量比は、例えば、1:0.5ないし1:5の範囲であってもよいが、これに限定されるものではない。得られた生成物、すなわち、結晶型固体状の化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物は、一般的な乾燥方法、例えば、減圧乾燥法によって乾燥させることによって単離される。
【0027】
前記結晶型固体状の化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物は、新規の化合物であり、ピタバスタチンまたはその薬学的に許容可能な塩の製造用中間体として有用である。従って、本発明は、化学式4の化合物のジメチルスルホキシド溶媒和物を含む。
【化13】
式中、Rはカルボン酸保護基である。前記カルボン酸保護基は、C−C直鎖状もしくは分枝鎖状アルキルまたはベンジルであり、望ましくは、tert−ブチルである。
【0028】
本発明によって得られた結晶型固体状の化学式4の化合物またはそのジメチルスルホキシド溶媒和物は、別の精製工程あるいはアミン塩転換工程を遂行することなく、後続の反応に直接使用できるため、ピタバスタチンまたはその薬学的に許容可能な塩を99%以上の高純度に製造することができる。
【0029】
従って、本発明は、(e)上述した製造方法によって、結晶型固体状の化学式4の化合物またはそのジメチルスルホキシド溶媒和物を製造する段階、(f)前記結晶型固体状の化学式4の化合物またはそのジメチルスルホキシド溶媒和物に酸(acid)を加えて化学式5の化合物を製造する段階、(g)前記化学式5の化合物に水酸化ナトリウムを加えて遊離塩基形態のピタバスタチン(化学式1の化合物)を製造する段階、及び(h)任意で実施してもよい、前記遊離塩基形態のピタバスタチンをその薬学的に許容可能な塩に転換する段階を含む、ピタバスタチンまたはその薬学的に許容可能な塩の製造方法を提供する:
【化14】
【化15】
【化16】
式中、Rはカルボン酸保護基である。
【0030】
段階(f)は、上述した製造方法によって製造された結晶型固体状の化学式4の化合物またはそのジメチルスルホキシド溶媒和物に酸(acid)を加えて化学式5の化合物を製造することによって行われる。前記酸処理によって、ジオキサン構造がジヒドロキシ構造に転換される。前記酸は、例えば、塩酸、酢酸、硫酸などであってもよく、望ましくは、塩酸である。前記酸は、化学式4の化合物またはそのジメチルスルホキシド溶媒和物1当量に対して、1ないし5当量、望ましくは、2ないし3当量の量で使用されるが、これに限定されるものではない。前記反応は、アセトニトリル、メタノール、エタノールなどの溶媒中で、2ないし3時間行われる。生成物は、中和、酢酸エチルとヘキサンとを使用した結晶化、濾過及び乾燥などを介して単離される。
【0031】
段階(g)で、水酸化ナトリウムを添加して脱保護することにより、化学式5の化合物が遊離塩基形態のピタバスタチンに転換される。水酸化ナトリウムは、化学式5の化合物1当量に対して、1ないし5当量の量で使用されるが、これに限定されるものではない。
【0032】
任意で選択可能な工程である段階(h)は、遊離塩基形態のピタバスタチンを薬学的に許容可能な塩に転換する段階である。この工程は、従来の製造方法、例えば、大韓民国特許登録第10−0208867号公報に沿って遂行される。ピタバスタチンの薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、ヘミカルシウム塩、マグネシウム塩のような一般的な塩を含み、望ましくは、ヘミカルシウム塩である。例えば、ヘミカルシウム塩への転換は、塩化カルシウムのようなハロゲン化カルシウムを反応させることによって行われる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について実施例によりさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は説明のためだけに提供されるものであり、よって本発明はそれらによって限定されるものではない。
【0034】
実施例1.(4R,6S)−(E)−6−[2−(2−シクロプロピル)−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル)−ビニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル]酢酸tert−ブチルエステル(化学式4の化合物、R=tert−ブチル)の製造
【化17】
tert−ブチル−2−((4R,6S)−6−ホルミル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル)アセテート(化学式3の化合物、R=tert−ブチル)(1.38kg)のジメチルスルホキシド(6L)の溶液に、化学式2の化合物(3kg)を加えた。反応混合物を撹拌しつつ、約35℃に加熱した。得られた濁りのない溶液に、KCO(1kg)を加え、DMSO(3L)で洗浄した。反応混合物を約70℃に加熱して4時間撹拌した。HPLCを利用して、出発物質がなくなったことを確認した後、反応を終了させた。反応混合物を約45℃に冷却した後、メタノール(18L)を加えた。反応混合物を約5℃にさらに冷却した後、2時間さらに撹拌した。生成された沈殿物を減圧濾過して単離し、水(3L)で洗浄し、約50℃で減圧乾燥させて白色結晶形態の標題化合物(1.82kg)を得た(収率:72.3%)。得られた生成物のHPLCによる分析結果を図2に示す。
融点: 113 ℃ - 116 ℃
HPLC%面積: 99.396%
1H-NMR (CDCl3): 0.9〜1.0(m, 2H), 1.0〜1.03(m, 1H), 1.2〜1.3(m, 2H), 1.3〜1.38(s, 6H), 1.38〜1.4(m, 1H), 1.45(s, 9H), 2.2〜2.3(dd, 1H, J=0.015, J=0.038), 2.3〜2.4 (m, 2H), 4.1〜4.2(m, 1H), 4.3〜4.4(m, 1H), 5.5〜5.6(dd, 1H, J=0.015, J=0.04), 6.5(d, 1H, J=0.04), 7.0〜7.3(m, 6H), 7.5(t, 1H), 7.9(d, 1H, J=0.021)
【0035】
実施例2.(4R,6S)−(E)−6−[2−(2−シクロプロピル)−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル)−ビニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル]酢酸tert−ブチルエステル(化学式4の化合物、R=tert−ブチル)の製造
【化18】
tert−ブチル−2−((4R,6S)−6−ホルミル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル)アセテート(化学式3の化合物、R=tert−ブチル)(1.38kg)のジメチルホルムアミド(4L)の溶液に、化学式2の化合物(3kg)を加えた。反応混合物を撹拌しつつ、約35℃に加熱した。得られた濁りのない溶液に、KCO(1kg)を加え、ジメチルホルムアミド(1.5L)で洗浄した。反応混合物を約90℃に加熱して2時間撹拌した。HPLCを利用して、出発物質がなくなったことを確認した後、反応を終了させた。反応混合物を約45℃に冷却した後、メタノール(10L)を加えた。反応混合物を約5℃にさらに冷却した後、2時間さらに撹拌した。生成された沈殿物を減圧濾過して単離し、水(3L)で洗浄し、約50℃で減圧乾燥させて白色結晶形態の標題化合物(1.58kg)を得た(収率:63.0%)。
【0036】
実施例3.(4R,6S)−(E)−6−[2−(2−シクロプロピル)−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル)−ビニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル]酢酸tert−ブチルエステル(化学式4の化合物、R=tert−ブチル)の製造
【化19】
tert−ブチル−2−((4R,6S)−6−ホルミル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル)アセテート(化学式3の化合物、R=tert−ブチル)(1.38kg)のジメチルスルホキシド(6L)の溶液に、化学式2の化合物(3kg)を加えた。反応混合物を撹拌しつつ、約35℃に加熱した。得られた濁りのない溶液に、KCO(1kg)を加え、DMSO(3L)で洗浄した。反応混合物を約70℃に加熱して4時間撹拌した。HPLCを利用して、出発物質がなくなったことを確認した後、反応を終了させた。反応混合物を約45℃に冷却した後、エタノール(18L)を加えた。反応混合物を約5℃にさらに冷却した後、2時間さらに撹拌した。生成された沈殿物を減圧濾過して単離し、水(3L)で洗浄し、約50℃で減圧乾燥させて白色結晶形態の標題化合物(1.76kg)を得た(収率:70.1%)。
【0037】
実施例4.(4R,6S)−(E)−6−[2−(2−シクロプロピル)−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル)−ビニル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル]酢酸tert−ブチルエステルのDMSO溶媒和物(化学式4の化合物、R=tert−ブチル)の製造
【化20】
tert−ブチル−2−((4R,6S)−6−ホルミル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4−イル)アセテート(化学式3の化合物、R=tert−ブチル)(1.38kg)のジメチルスルホキシド(10L)の溶液に、化学式2の化合物(3kg)を加えた。反応混合物を撹拌しつつ、約35℃に加熱した。得られた濁りのない溶液に、KCO(1kg)を加え、DMSO(8L)で洗浄した。反応混合物を約70℃に加熱して4時間撹拌した。HPLCを利用して、出発物質がなくなったことを確認した後、反応を終了させた。反応混合物を約25℃まで徐々に冷却した後、6時間撹拌した。生成された沈殿物を減圧濾過して単離し、ジメチルスルホキシドとヘキサンとの混合溶媒(2:1、重量比)(5L)で洗浄し、約50℃で減圧乾燥させて白色結晶形態の標題化合物(DMSO溶媒和物)(2.15kg)を得た(収率:65.7%)。
融点: 97 ℃ - 103 ℃
HPLC%面積: 99.221%
1H-NMR (CDCl3): 0.9〜1.0(m, 2H), 1.0〜1.03(m, 1H), 1.2〜1.3(m, 2H), 1.3〜1.38(s, 6H), 1.38〜1.4(m, 1H), 1.45(s, 9H), 2.2〜2.3(dd, 1H, J=0.015, J=0.038), 2.3〜2.4 (m, 2H), 2.5〜2.7(m, 12H), 4.1〜4.2(m, 1H), 4.3〜4.4(m, 1H), 5.5〜5.6(dd, 1H, J=0.015, J=0.04), 6.5(d, 1H, J=0.04), 7.0〜7.3(m, 6H), 7.5(t, 1H), 7.9(d, 1H, J=0.021)
【0038】
実施例5.(4R,6S)−(E)−6−[2−(2−シクロプロピル)−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル)−ビニル−2,2−ジメチル−1,3−ジヒドロキシ−4−イル]酢酸tert−ブチルエステル(化学式5の化合物、R=tert−ブチル)の製造
【化21】
実施例1で製造された化合物(1.5kg)を、アセトニトリル(16L)に加えた。この混合物に、撹拌しながら35%HCl溶液(0.91kg)と精製水(9.5kg)との混合液を2時間かけて徐々に加えた。反応混合物を1時間さらに撹拌した。HPLCを利用して、出発物質がなくなったことを確認した後、反応を終了させた。重炭酸ナトリウムを使用して反応混合物を中和した後、酢酸エチルで抽出した。分離した有機層を、塩化ナトリウム水溶液(1.5kg)で洗浄した後、減圧濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル(1.5L)に溶解させた後、ヘキサン(9L)を徐々に加えた。反応混合物を約10℃に冷却し、2時間撹拌した。生成された沈殿物を減圧濾過して単離した後、約50℃で減圧乾燥させて白色結晶形態の標題化合物(1.22kg)を得た(収率:88.4%)。
HPLC%面積: 98.555%
【0039】
実施例6.(4R,6S)−(E)−6−[2−(2−シクロプロピル)−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル)−ビニル−2,2−ジメチル−1,3−ジヒドロキシ−4−イル]酢酸tert−ブチルエステル(化学式5の化合物、R=tert−ブチル)の製造
【化22】
実施例4で製造された化合物(DMSO溶媒和物)(2.15kg)を、アセトニトリル(16L)に加えた。この混合物に、撹拌しながら35%HCl溶液(1.1kg)と精製水(12.9kg)との混合液を2時間かけて徐々に加えた。反応混合物を1時間さらに撹拌した。HPLCを利用して、出発物質がなくなったことを確認した後、反応を終了させた。重炭酸ナトリウムを使用して反応混合物を中和した後、酢酸エチルで抽出した。分離した有機層を、塩化ナトリウム水溶液(2.15kg)で洗浄した後、減圧濃縮した。得られた残渣を酢酸エチル(2.15L)に溶解させた後、ヘキサン(12.9L)を徐々に加えた。反応混合物を約10℃に冷却し、2時間撹拌した。生成された沈殿物を減圧濾過して単離した後、約50℃で減圧乾燥させて白色結晶形態の標題化合物(1.56kg)を得た(収率:78.79%)。
HPLC%面積: 98.615%
【0040】
実施例7.ピタバスタチンのヘミカルシウム塩の製造
【化23】
実施例5で製造された化合物(1.2kg)を精製水(19kg)に加えた。この混合物に、精製水(1kg)中に水酸化ナトリウム(0.08kg)を含む溶液を撹拌しながら徐々に加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。精製水(1kg)中に塩化カルシウム(0.28kg、純度:95%)を含む溶液を、反応混合物に室温で2時間かけて徐々に加えた後、同一の温度で1時間さらに撹拌した。生成された沈殿物を減圧濾過して単離した後、約40℃で減圧乾燥させて白色固体状のピタバスタチンのヘミカルシウム塩(1.0kg)を得た(収率:88.5%)。
HPLC%面積: 99.826%
【0041】
実施例8.ピタバスタチンのヘミカルシウム塩の製造
【化24】
実施例6で製造された化合物(1.56kg)を精製水(25kg)に加えた。この混合物に、精製水(1.5kg)中に水酸化ナトリウム(0.26kg)を含む溶液を撹拌しながら徐々に加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。精製水(1.5kg)中に塩化カルシウム(0.36kg、純度:95%)を含む溶液を、反応混合物に室温で2時間かけて徐々に加えた後、同一の温度で1時間さらに撹拌した。生成された沈殿物を減圧濾過して単離した後、約40℃で減圧乾燥させて白色固体状のピタバスタチンのヘミカルシウム塩(1.2kg)を得た(収率:83.3%)。
HPLC%面積: 99.776%
図1
図2