特許第5796847号(P5796847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796847
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】インサートチップおよびプラズマトーチ
(51)【国際特許分類】
   B23K 10/00 20060101AFI20151001BHJP
   H05H 1/34 20060101ALI20151001BHJP
   H05H 1/32 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   B23K10/00 504
   H05H1/34
   H05H1/32
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-52219(P2012-52219)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-184201(P2013-184201A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】302040135
【氏名又は名称】日鐵住金溶接工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076967
【弁理士】
【氏名又は名称】杉信 興
(72)【発明者】
【氏名】佐 藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】星 野 忠
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−177079(JP,U)
【文献】 特表2007−513763(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2532323(JP,Y2)
【文献】 実開平04−106651(JP,U)
【文献】 特開平08−118028(JP,A)
【文献】 特開平05−237665(JP,A)
【文献】 特開2011−031252(JP,A)
【文献】 特開昭50−074550(JP,A)
【文献】 特開2011−050982(JP,A)
【文献】 特開2001−259483(JP,A)
【文献】 実開平06−041854(JP,U)
【文献】 特許第5626994(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00
B23K 10/00
H05H 1/00 − 1/54
B23K 26/00 − 26/42
B05B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央にノズルが開いた笠部,該笠部に連続する幹部および該幹部に連続する雄ねじ部があって、前記幹部と雄ねじ部の間にシール材があり、内部に前記ノズルに連通する電極配置空間がある、複数のノズル部材;
各ノズル部材の前記雄ねじ部から幹部までが挿通する各ノズル部材挿入穴を有するチップ基体;
前記ノズル部材挿入穴に挿通した前記ノズル部材を前記チップ基体に固定する結合手段;
前記ノズル部材の前記笠部の側面を一部削除した切欠面を含み、前記チップ基体に対して前記ノズル部材の、中心軸を中心とする回転を阻止する係合手段;および、
前記チップ基体に対する前記ノズル部材の中心軸の軸振れを防止する軸振れ防止手段;
を備えるインサートチップ。
【請求項2】
前記結合手段は、前記チップ基体のノズル部材挿入穴に挿通したノズル部材の前記雄ねじ部に螺合しノズル部材と協働してチップ基体を締め付けるナットである;請求項1に記載のインサートチップ。
【請求項3】
前記軸振れ防止手段は、ノズル部材の前記笠部の、前記切欠面とは別の位置の側面に当接して、該側面の半径方向の振れを阻止する、対向突起である;請求項に記載のインサートチップ。
【請求項4】
前記対向突起が対向する前記側面は、ノズルに関して前記切欠面の反対側の円周面である;請求項に記載のインサートチップ。
【請求項5】
先行ノズル部材と後行ノズル部材の、ノズル部材の中心軸から前記切欠面までの距離は、チップ基体へのノズル部材の装着位置エラーを防止するために、異なった距離である;請求項1乃至4のいずれか1つに記載のインサートチップ。
【請求項6】
各ノズル部材には、前記切欠面とは別の、前記笠部の側面を一部削除した追加の切欠面があり;前記軸振れ防止手段は、該追加の切欠面に対向して、該追加の切欠面の回動を阻止する、対向突起である;請求項に記載のインサートチップ。
【請求項7】
前記切欠面と追加の切欠面の笠部円周方向の分布は、チップ基体へのノズル部材の装着位置エラーを防止するために、異なったパターンである;請求項に記載のインサートチップ。
【請求項8】
前記対向突起の、前記追加の切欠面に対向する面は、該追加の切欠面に当接する平面である;請求項に記載のインサートチップ。
【請求項9】
前記対向突起は、前記追加の切欠面に接する回動阻止ピンである;請求項に記載のインサートチップ。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか1つに記載のインサートチップと、該インサートチップの各電極配置空間にそれぞれの先端部を挿入した電極と、を備えるプラズマトーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマトーチのインサートチップおよび該インサートチップを用いるプラズマトーチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の1トーチによるプラズマアーク溶接のプラズマアークの横断面は略円形である。板厚3mm未満ではプラズマアークによるキーホール溶接は不可能なため、なめ付け溶接(熱伝導型溶接)を採用するが、なめ付け溶接でも、高速化すると、
イ)アンダーカットが発生し、
ロ)広幅ビードによる高温割れが発生しやすい。高速溶接では電流が高電流で広幅アークとなるため、広幅浅溶け込みのビード形状となって、凝固時に高温割れが発生しやすい。
【0003】
従来の1トーチによるプラズマアーク溶接では、3〜10mmの板厚でキーホール溶接を高速化すると、ビード形状が、中央部が盛り上がった凸形状で縁部が下がったアンダーカットができるため、高速化が難しい。2本トーチによるワンプール高速化もあるが、ワンプールとするにはトーチ同士を大きく傾けなければならず、引き合うアーク力と傾けたことによる磁気吹きで、アークが乱れやすく、不安定であった。
【0004】
そこで、安定したアークで高温割れやアンダーカットのない高速溶接を実現することができるインサートチップおよびこれを用いるプラズマトーチが提供された(特許文献1)。これは、2個の電極配置空間と、同一直径線上に分布し各電極配置空間にそれぞれが連通し前記直径線と平行な溶接線に対向して開いた2個のノズルと、を備えるインサートチップおよび該チップを装備し各電極配置空間に各電極を挿入したプラズマトーチである。このインサートチップを装備したプラズマトーチによれば、2つのアークで1つの溶融プールを形成する、ワンプール2アークの溶接をすることができる。プラズマアークの横断面は、溶接の進行方向(y)に長細い熱源となるため、熱量に対するビード幅(x方向)は狭く抑えられ、高速化しても、高温割れが発生しない。また、ワンプール2アークとすることで、表ビードを平らにすることができる。ある程度距離を離した2本のプラズマトーチを用いる並行溶接でやや類似の効果を得ることは出来るが、溶接の進行方向のアーク間隔が広くなるため、短い溶接長のワーク(母材:溶接対象材)では、同一パスでの溶接が不可能であり、二パス溶接が必要となり、高速化は難しい。また、アーク間隔が広いため、後行アークは一度凝固したビードを再溶融しなければならず、後行溶接に高入熱が必要である。特許文献1に提示した、1チップに2個のノズルを備えるインサートチップを用いるワンプール2アーク溶接によれば、ノズル間隔が短いので、これらの問題が解消する。
【0005】
特許文献2には、チップ基体に1対のノズル部材を着脱可に結合したインサートチップを提示した。これによれば、高熱によりノズル部材の下端のノズル部分が変形又は熔損したとき、該ノズル部材を新品と取り替えて、チップ基体はそのまま使用して、メンテナンスコストを安くすることができる。また、ノズルの指向方向やノズル径が数種のノズル部材を備えて、用途に応じてノズル部材を選択できる。
【0006】
特許文献2の1実施例のインサートチップ1は、図10に示すように、チップ基体1に2個のノズル部材20a,20bを装着したものであり、各ノズル部材20a,20bには、中央にノズル3a,3bが開いた笠部21a,21b,該笠部に連続する幹部および該幹部に連続する雄ねじ部があって、前記幹部と雄ねじ部の間にシール材であるOリング23a,23bがあり、内部に前記ノズル3a,3bに連通する電極配置空間がある。チップ基体1には、各ノズル部材の前記雄ねじ部から幹部までが挿通する各ノズル部材挿入穴,各ノズル部材挿入穴に挿通した各ノズル部材の笠部が先端平面1d,1eに当接することにより閉じられる、ノズル部材挿入穴の一部をなし幹部との間に冷却水通流空間を形成する冷却水循環穴1f,1g、および、隣り合う冷却水循環穴をつなぐ横通水穴1jがある。ノズル部材20a,20bの雄ねじ部にナット25a,25bをねじ結合してチップ基体1に締め付けることにより、ノズル部材20a,20bをチップ基体1に結合している。
【0007】
図10に示すチップ基体1の先端の中心軸位置には先端突起1cがあり、溶接方向となるy方向で該先端突起1cの両側に、ノズル部材20a,20bの笠21a,21bの裏面をうける先端平面1d,1eがある。各先端平面1d,1eの中央位置に、ノズル部材挿入穴がある。該ノズル部材挿入穴に挿入されたノズル部材20a,20bの笠部21a,21bの、円弧の一部を直線状に削除した切欠面26a,26bが、先端突起1cの側面である係止面に接触する。すなわち係合する。これによりチップ基体1に対するノズル部材20a,20bの、中心軸を中心とする回転が阻止される。この係合は、ノズル部材20a,20bをチップ基体1に挿入してナット25a,25bでねじ締め付けして固定するときのノズル部材20a,20bの廻り止め、および、ノズル部材20a,20bをチップ基体1から取り外すためにナット25a,25bを緩め廻しするときのノズル部材20a,20bの廻り止め、として機能する。この係合は更に、ノズル軸がチップ基体中心軸(z)に対して傾斜したノズル部材20c,20dの該ノズル軸の傾斜方向を溶接方向(y)に固定(設定)する機能もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−50982号
【特許文献2】特願2011−17342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図10に示すチップ基体1の先端突起1cの表,裏平面と各平面に当接する、ノズル部材20a,20bの笠21a,21bの切欠面26a,26bとの間には、微視的に表現すると小さなギャップがあり、ナット25a,25bのねじ締めにより、ノズル部材20a,20bにその中心軸を中心とする旋回力が加わる。また、チップ基体1とノズル部材20a,20bの間には、Oリング23a,23bで遮断される隙間があってOリングが弾力性があるので、ノズル部材20a,20b(の中心軸)が僅かではあるが、チップ基体1に対して切欠面26a,26bの一端Apa,Apbを支点(中心)に回動するように振れることがある。該旋回力によるノズル部材20a,20bの回動と振れ(軸振れ)により、先端突起1cの表,裏平面と切欠面26a,26bとの間に、図10の(b)上に2点鎖線で示す、楔状のギャップすなわち捩りギャプGa,Gbが生じる。このギャップの楔状の角度分、ノズル3a,3bの中心軸(ノズル軸)が溶接の進行方向yに対して偏向(角度ずれ)し、プラズマアークの指向方向がずれる。特に、ノズルの傾き(前,後進角)および穴径を先行ノズル3a,後行ノズル3bのそれぞれにつき個別の値に設計した場合に、プラズマアークの指向方向の上記ずれが、意図した溶接品質を乱す原因の1つとなる。また、先行(後行)ノズル部材として設計したノズル部材を後行(先行)ノズル装着穴に装着するノズル部材取り付けミスがあると、溶接品質を大きく損なってしまう。
【0010】
本発明は、上述の如き複数のノズル部材を一つのチップ基体に着脱可に結合するインサートチップの改良に関し、各ノズル部材のノズル軸が溶接の進行方向yに対して偏向するのを防止することを第1の目的とし、先行(後行)ノズル部材として設計したノズル部材を後行(先行)ノズル装着穴に装着するノズル部材取り付けミスを防止することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)中央にノズル(3a,3b)が開いた笠部(21a,21b),該笠部に連続する幹部(22a,22b)および該幹部に連続する雄ねじ部(24a,24b)があって、前記幹部と雄ねじ部の間にシール材(23a,23b)があり、内部に前記ノズルに連通する電極配置空間(2a,2b)がある、複数のノズル部材(20a,20b);
各ノズル部材の前記雄ねじ部から幹部までが挿通する各ノズル部材挿入穴(18a,18b)を有するチップ基体(1);
前記ノズル部材挿入穴に挿通した前記ノズル部材を前記チップ基体に固定する結合手段(25a,25b);
前記ノズル部材(20a,20b)の前記笠部(21a,21b)の側面を一部削除した切欠面(26a,26b)を含み、前記チップ基体(1)に対して前記ノズル部材(20a,20b)の、中心軸を中心とする回転を阻止する係合手段(26a,26b,1c,1n);および、
前記チップ基体(1)に対する前記ノズル部材(20a,20b)の中心軸の軸振れを防止する軸振れ防止手段(1m,1c/28a,28b);
を備えるインサートチップ。
【0012】
なお、理解を容易にするために括弧内には、図面に示し後述する実施例の対応又は相当要素の記号もしくは対応事項を、例示として参考までに付記した。以下も同様である。
【発明の効果】
【0013】
このインサートチップ(1)を装備したプラズマトーチによれば、複数アークで1つの溶融プールを形成する、ワンプール複数アークの溶接をすることができる。例えば2つのアークで1つの溶融プールを形成する、ワンプール2アークの溶接をする場合、プラズマアークの横断面は、溶接の進行方向(y)に長細い熱源となるため、熱量に対するビード幅(x方向)は狭く抑えられ、高速化しても、高温割れが発生しない。また、ワンプール2アークとすることで、板厚3〜10mmでは、先行アークでキーホール溶接し、後行アークで広幅なめ付け溶接して表ビードを平らにすることができる。板厚3mm未満では、先行アークで掘り下げ溶接をし、後行アークで表ビードを平らにすることができる。ある程度距離を離した2本のプラズマトーチを用いる並行溶接でやや類似の効果を得ることは出来るが、溶接の進行方向のアーク間隔が広くなるため、短い溶接長のワーク(溶接対象材)では、同一パスでの溶接が不可能であり、2パス溶接が必要となり、高速化は難しい。また、アーク間隔が広いため、後行アークは一度凝固したビードを再溶融しなければならず、後行溶接に高入熱が必要である。1チップに複数個のノズル部材を備える本発明のインサートチップを用いるワンプール複数アーク溶接によれば、ノズル間隔が短いので、これらの問題が解消する。高熱によりノズル部材の下端のノズル部分が変形又は熔損したとき、該ノズル部材を新品と取り替えて、チップ基体はそのまま使用して、メンテナンスコストを安くすることができる。
【0014】
係合手段(26a,26b,1c,1n)によりノズル部材(20a,20b)の回転を阻止し、しかも軸振れ防止手段(1m,1c/28a,28b)によってノズル部材(20a,20b)の軸振れを防止するので、プラズマアークの指向方向がずれることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施例のプラズマトーチの外筒の内部を見下ろした平面図である。
図2図1に示すプラズマトーチのII−II線断面図である。
図3図1に示すプラズマトーチのIII−III線断面図である。
図4】(a)は図2に示すプラズマトーチの先端を、IVa−IVa線方向に見上げた底面図、(b)は図3に示すIVb−IVb線方向に見上げた底面図、(c)は図2に示すIVc−IVc線方向に見下ろした横断面図である。
図5】(a)は、図2に示すプラズマトーチの先端のインサートチップおよびインナーキャップ6をトーチ本体から取り外して示す縦断面図、(b)は(a)に示すチップ基体1とインナーキャップ6のみを示す縦断面図、(c)は、(a)に示すナット25a,25bを先行,後行ノズル部材20a,20bから取り外してノズル部材をチップ基体1から抜き出しナット25a,25bとともに示す正面図(外観図)である。
図6】(a)は図5に示す先行ノズル部材20aと後行ノズル部材20bの縦断面図、(b)はノズル部材の先端を見上げた底面図である。
図7】第2実施例のプラズマトーチの先端のインサートチップを下から見上げた底面図、(b)は右側面図である。
図8】(a)は図7に示す第2実施例のインサートチップに装着されている先行ノズル部材20aと後行ノズル部材20bの縦断面図、(b)はこれらのノズル部材を下から見上げて示す底面図である。
図9】(a)は第3実施例のプラズマトーチの先端のインサートチップを下から見上げた底面図、(b)は第4実施例のプラズマトーチの先端のインサートチップを下から見上げた底面図である。
図10】(a)は特許文献2に提示された一形態のインサートチップおよびインナーキャップの縦断面図、(b)は下から見上げた底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(2)前記結合手段は、前記チップ基体(1)のノズル部材挿入穴(18a,18b)に挿通したノズル部材の前記雄ねじ部に螺合しノズル部材と協働してチップ基体を締め付けるナット(25a,25b)である;上記(1)に記載のインサートチップ。
【0017】
)前記軸振れ防止手段は、ノズル部材(20a,20b)の前記笠部(21a,21b)の、前記切欠面(26a,26b)とは別の位置の側面に当接して、該側面の半径方向の振れを阻止する、対向突起(1m,1c/28a,28b)である;上記(1)又は(2)に記載のインサートチップ。
【0018】
ノズル部材(20a,20b)に捩り力が作用し、図10の(a)に2点鎖線で示す捩りギャップGa,Gbを生ずる可能性があるとき、切欠面26a,26bの端(先端突起1c,1nに当接する端Apa:図10の(b))を中心に笠部21a,21bが捩れ回動しようとする。すなわち笠部21a,21bは左方に振れようとする。しかし本実施態様()によれば、対向突起(1m,1c/28a,28b)がこの捩り回動(振れ)を阻止するので、捩りギャップGa,Gbを生じない。つまり、ノズル3a,3bの中心軸(ノズル軸)が溶接の進行方向yに対して偏向(角度ずれ)せず、プラズマアークに指向ずれを生じない。
【0019】
)前記対向突起(1m,1c)が対向する前記側面は、ノズル(3a,3b)に関して前記切欠面(26a,26b)の反対側の円周面である;上記()に記載のインサートチップ(図4)。
【0020】
)先行ノズル部材(20a)と後行ノズル部材(20b)の、ノズル部材の中心軸から前記切欠面(26a,26b)までの距離は、チップ基体へのノズル部材の装着位置エラーを防止するために、異なった距離である;上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のインサートチップ(図4)。これによれば、先行ノズル部材(20a)(後行ノズル部材(20b))をチップ基体(1)の後行ノズル挿入穴(先行ノズル挿入穴)に誤装着することがなくなる。
【0021】
)各ノズル部材(20a,20b)には、前記切欠面(26a,26b)とは別の、前記笠部(21a,21b)の側面を一部削除した追加の切欠面(27a,27b)があり;前記軸振れ防止手段は、該追加の切欠面(27a,27b)に対向して、該追加の切欠面(27a,27b)の回動を阻止する、対向突起(1m,1n/28a,28b)である;上記()に記載のインサートチップ(図7図9)。
【0022】
)前記切欠面(26a,26b)と追加の切欠面(27a,27b)の笠部円周方向の分布は、チップ基体へのノズル部材の装着位置エラーを防止するために、異なったパターンである;上記()に記載のインサートチップ(図7図9)。これにより、先行ノズル部材(20a)(後行ノズル部材(20b))をチップ基体(1)の後行ノズル挿入穴(先行ノズル挿入穴)に誤装着することがなくなる。
【0023】
)前記対向突起(1m,1n)の、前記追加の切欠面(27a,27b)に対向する面は該追加の切欠面(27a,27b)に当接する平面である;上記()に記載のインサートチップ(図9の(a))。
【0024】
)前記対向突起は、前記追加の切欠面(27a,27b)に接する回動阻止ピン(28a,28b)である;上記()に記載のインサートチップ(図9の(b))。
【0025】
10)上記(1)乃至()のいずれか1つに記載のインサートチップと、該インサートチップの各電極配置空間(2a,2b)にそれぞれの先端部を挿入した電極(12a,12b)と、を備えるプラズマトーチ(図2)。
【0026】
本発明の他の目的および特徴は、図面を参照した以下の実施例の説明より明らかになろう。
【実施例】
【0027】
−第1実施例−
図1に、第1実施例であるプラズマトーチすなわち第1実施例のプラズマアークトーチの、外筒14の内部を上方から見下ろして示し、図2には図1上のII−II線方向の縦断面を示す。第1実施例のプラズマアークトーチは、プラズマ溶接を行う形態のものである。図2を参照すると、インサートチップのチップ基体1は、インサートキャップ6をチップ台5にねじ締めすることにより、チップ台5に固定されている。チップ基体1のチップ台5に当接する背面には位置合せピン1p(図4図5)があり、チップ台5に固定する前にこのピン1pをチップ台5の位置合せ穴に差し込むことにより、固定後には、チップ基体1は、図2に示された、トーチ本体の溶接方向yにノズル部材20a,20bのノズル3a,3bが並んだ姿勢となる。チップ台5は絶縁本体7に固定され、絶縁本体7に電極台10a,10bおよび絶縁スペーサ11が固定されている。
【0028】
シールドキャップ8は絶縁本体7に固定されている。2つ割で外筒14の直径方向に分離した第1電極台10aと第2電極台10bは、絶縁スペーサ11で分離されている。
【0029】
本実施例のインサートチップは、チップ基体1に、溶接方向yで先頭となる先行ノズル部材20aおよび後尾となる後行ノズル部材20bを装着したものであり、詳細を示す図5を参照すると、各ノズル部材20a,20bには、中央にノズル3a,3bが開いた笠部21a,21b,該笠部に連続する幹部22a,22bおよび該幹部に連続する雄ねじ部24a,24bがあって、前記幹部と雄ねじ部の間にシール材であるOリング23a,23bがあり、内部に前記ノズル3a,3bに連通する電極配置空間2a,2bがある。
【0030】
チップ基体1には、各ノズル部材の前記雄ねじ部から幹部までが挿通する各ノズル部材挿入穴18a,18b,各ノズル部材挿入穴に挿通した各ノズル部材の笠部が先端平面1d,1eに当接することにより閉じられる、ノズル部材挿入穴の一部をなし幹部との間に冷却水通流空間を形成する冷却水循環穴1f,1g,水受穴1h(図4),水出穴1i,隣り合う冷却水循環穴をつなぐ横通水穴1j,冷却水循環穴1fを水受穴1hにつなぐ横通水穴1k、および、冷却水循環穴1gを水出穴1iにつなぐ横通水穴1lがある。
【0031】
この実施例では、図5の(a)に示すように、ノズル部材20a,20bの雄ねじ部24a,24bにナット25a,25bをねじ結合してチップ基体1に締め付けることにより、ノズル部材20a,20bをチップ基体1に結合している。図6には、先行ノズル部材20aおよび後行ノズル部材20bの縦断面および底面を示す。
【0032】
図2を再度参照すると、ノズル部材20a,20bの電極配置空間2a,2bは、チップ基体1の中心軸(z)と直交する同一直径線(y)に分布し、該中心軸から等距離にあって中心軸(z)に平行に延びる。電極配置空間2a,2bに連続するノズル3a,3bはこの実施例では、電極配置空間2a,2bの中心軸と同心であって、図示しない母材に対向する。これらのノズル3a,3bも、本実施例では、チップ基体(外筒14)の中心軸(z)と直交する同一直径線(y)上に分布し、該中心軸に平行かつそれから等距離にある。
【0033】
各電極配置空間2a,2bに先端部が挿入された第1電極12a,第2電極12bが、絶縁本体7を貫通し各電極台10a,10bにねじ13a,13bで固定され、各電極配置空間2a,2bの軸心位置に、センタリングストーン9a,9bで位置決めされている。チップ基体1の、母材(図示せず)に対向する先端面(下端面)には、各電極配置空間2a,2bにつながったノズル3a,3bが開口している。ノズル3a,3bを結ぶ直線(y)が延びる方向が溶接方向である。チップ基体1は、該直線(y)が延びる方向(溶接方向)には図2に示すように広幅であるが、該直線(y)と直交する方向(x)すなわち溶接対象の開先の幅方向では楔状であって側面が傾斜面1a,1b(図4の(a))となっている。
【0034】
トーチ先端面(図2上ではノズルが開いた下端面)を示す図4の(a)も参照すると、
チップ基体1の先端の中心軸位置には先端突起1cがあり、溶接方向となるy方向で該先端突起1cの両側に、ノズル部材20a,20bの笠21a,21bの裏面をうける先端平面1d,1eがある。先端平面1d,1eは、チップ基体1の外周の手前で途切れ、これによりチップ基体1から対向突起1m,1nが下方に突出している。先端平面1dの、対向突起1mから半径Raの距離に先行ノズル部材挿入穴18aがあり、先端平面1eには、先端突起1cの右側面から半径Rbの距離に後行ノズル部材挿入穴18bがある(図5の(b))。
【0035】
ノズル部材挿入穴18aに挿入された先行ノズル部材20aの笠部21aの、円弧の一部を直線状に削除した切欠面26aが、先端突起1cの左側面である係止面にぴったり係合し、また、笠部21aの円周面が対向突起1mの右側面である阻止面にぴったり係合する。これによりチップ基体1に対する先行ノズル部材20aの、中心軸を中心とする回転が阻止される。これらの係合は、先行ノズル部材20aをチップ基体1に挿入してナット25aでねじ締め付けして固定するときのノズル部材20aの廻り止め、および、ノズル部材20aをチップ基体1から取り外すためにナット25aを緩め廻しするときのノズル部材20aの廻り止め、として機能する。これらの係合は更に、ノズル軸がチップ基体中心軸(z)に対して傾斜したノズル部材20aの該ノズル軸の傾斜方向(図5の(a),図6)を溶接方向(y)に固定(設定)する機能もある。先行ノズル部材20aをチップ基体1に挿入してナット25aでねじ締め付けして固定するとき、チップ基体1に対して切欠面26aの一端(図10のApaに相当する位置)を支点(中心)に回動させようとする振り力がノズル部材20aに作用するが、対向突起1mがこの回動を阻止する。このように、係合手段(26a,1c)によりノズル部材(20a)の回転を阻止し、しかも軸振れ防止手段(1m)によってノズル部材(20a)の軸振れを防止するので、先行ノズルから出るプラズマアークの指向方向がずれることがなくなる。
【0036】
ノズル部材挿入穴18bに挿入された後行ノズル部材20bの笠部21bの、円弧の一部を直線状に削除した切欠面26bが、対向突起1nの左側面にぴったり係合し、また、笠部21bの先端突起1cの右側面にぴったり係合する。これによりチップ基体1に対する後行ノズル部材20bの、中心軸を中心とする回転が阻止される。これらの係合は、後行ノズル部材20bをチップ基体1に挿入してナット25bでねじ締め付けして固定するときのノズル部材20bの廻り止め、および、ノズル部材20bをチップ基体1から取り外すためにナット25bを緩め廻しするときのノズル部材20bの廻り止め、として機能する。これらの係合は更に、ノズル軸がチップ基体中心軸(z)に対して傾斜したノズル部材20bの該ノズル軸の傾斜方向(図5の(a),図6)を溶接方向(y)に固定(設定)する機能もある。後行ノズル部材20bをチップ基体1に挿入してナット25bでねじ締め付けして固定するとき、チップ基体1に対して切欠面26bの一端を支点(中心)に回動させようとする振り力がノズル部材20bに作用するが、先端突起1cの右側面がこの回動を阻止する。係合手段(26b,1n)によりノズル部材(20b)の回転を阻止し、しかも軸振れ防止手段(1c)によってノズル部材(20b)の軸振れを防止するので、後行ノズルから出るプラズマアークの指向方向がずれることがなくなる。
【0037】
この実施例では、図4および図6に示す笠21a,21bの半径Ra,Rbは同一であるが、先行ノズル部材20aの中心軸からの切欠面26aの距離Daと後行ノズル部材20bの中心軸からの切欠面26bの距離Dbとは、Da>Dbと異なっているので、先行ノズル部材20aの笠部21aは、後行ノズル部材20bの笠部21bがぴったりと嵌り込む突起1c/1n間空間には入ることが出来ない。これにより、先行ノズル部材20aをチップ基体1の後行ノズル挿入穴18bに誤装着することがなくなる。
【0038】
なお、後行ノズル20bの笠部21bは、先行ノズル部材20aの笠部21aが嵌り込む突起1m/1c間空間に入ることが出来るので、後行ノズル部材20bを最先にチップ基台1に装着する場合は、後行ノズル20bを誤装着する可能性がある。このような誤装着をすると、次に先行ノズル部材20aを装着しようとしても装着できないので、誤装着のまま溶接を行ってしまうことはない。しかし、最先に後行ノズル20bを装着するときの誤装着を防止する態様では、後行ノズル20bの笠部21bの半径Rbを先行ノズル20aの半径Raより大きくする。これにより、後行ノズル20bの笠部21bは、先行ノズル部材20aの笠部21aがぴったりと嵌り込む突起1m/1c空間に入らず、最先に後行ノズル部材20bをチップ基台1に装着する場合でも、誤装着を防止できる。このように、距離Da,Dbを異なった値とし、しかも半径Ra,Rbを異なった値にすることにより、先行ノズル部材20aおよび後行ノズル部材20bは、何れを最先に装着しても、装着位置エラーを生ずることはない。
【0039】
図4の(c)および図5の(b)に示すように、ノズル部材挿入穴18a,18bの、先端平面1d,1e側の部分は大径の冷却水循環穴1f,1gとなっており、冷却水循環穴1f,1gとその中を貫通した幹部22a,22bの外周面との間に冷却水通流空間(冷媒通流空間)が形成される。図4の(c)は、チップ基体1の横断面(図2上のIVc−IVc線断面)を示す。チップ基体1には、水受穴1h,水出穴1i,冷却水循環穴1f,1gをつなぐ横通水穴1j,冷却水循環穴1fを水受穴1jにつなぐ横通水穴1k、および、冷却水循環穴1gを水出穴1iにつなぐ横通水穴1lがある。
【0040】
図3に、図1上のIII−III線方向の縦断面を示す。チップ基体1の水受穴1hは水流管16aに、水出穴1iは水流管16bに連通している。図4の(c)も参照すると、水流管16aに注入された冷却水は、電極台10a,絶縁本体7およびチップ台5の水流路を通ってチップ基体1の水受穴1hに入って穴底に至り、そこから横通水穴1kを通って、水循環穴1fと幹部22aの外周面との間の冷却水通流空間に入り、つぎに横通水穴1jを通って、水循環穴1gと幹部22bの外周面との間の冷却水通流空間に入り、つぎに横通水穴1lを通って水出穴1iに入りそして水流管16bに流れ、そしてトーチ外部に流出する。
【0041】
冷却水が、水循環穴1fと幹部22aの外周面との間の冷却水通流空間と、水循環穴1gと幹部22bの外周面との間の冷却水通流空間を流れている間に、ノズル部材20a,20bの幹部22a,22bが効果的に冷却され、しかも冷却水が、水受穴1h,横通水穴1k,水循環穴1f,横通水穴1j,水循環穴1g,横通水穴1lおよび水出孔1iを流れている間に、チップ基体1が効果的に冷却されるので、インサートチップの冷却能力が高い。溶接時にはノズル部材20a,20bが最も加熱されるが、その外周面が直接に冷却水に触れて冷却されるので、ノズル部材20a,20bの使用寿命が長い。
【0042】
再度図1および図2を参照すると、パイロットガスは、パイロットガス管15a,15bおよび電極挿入空間を通って電極配置空間2a,2bに入り、電極先端部でプラズマとなってノズル3a,3bを通ってトーチの先端面から噴出する。シールドガスは、シールドガス管17を通って、インナーキャップ7とシールドキャップ8との間の円筒状の空間に入り、そしてトーチの先端から図示しない母材に向けて噴出する。
【0043】
図示しない各パイロット電源により各電極12a,12bとチップ1との間にパイロットアークを発生させて、電極12a,12bと母材の間に、電極側が負で母材側が正のプラズマアーク電流を流す、溶接方向で先行の電極12aに給電するプラズマ電源(溶接又は予熱用)および溶接方向で後行の電極12bに給電するプラズマ電源(なめ付け溶接又は本溶接用)により、溶接アーク(プラズマアーク)を発生させると、プラズマアーク電流が各電極12a,12bと母材の間に流れて、1プール2アーク溶接が実現する。この溶接態様では、電極12aのプラズマアークによる溶接又は予熱と、電極12bによるなめ付け溶接又は本溶接とが行われる。すなわち、先行する電極12aで溶接又は予熱で生成した溶融プールに後行する電極12bでなめ付け溶接又は本溶接のプラズマアークが当たって、例えばキーホール溶接で形成される溶融プールを後方に送り、キーホール溶接で形成される溶融ビードを後行のなめ付け溶接が均す。これにより、母材表面と滑らかにつながるなめ付け溶接ビードとなる。3mm未満の薄板の場合は、キーホール溶接が不可能なため、先行の溶接又は予熱によりビードが形成され、これが後行のなめ付け溶接により、滑らかなビードに変わる。従来のように、大電流ワンプール広幅溶接をするのとは違い、先行,後行ともそれぞれの機能に分け、必要最小限の低い電流で、ビード幅の狭い高速溶接ができる。また、先行アークを予熱として使い、後行アークで本溶接を行う方法でも高速化はできる。いずれの場合も、インサートチップ、特に焼損しやすいノズル部材、の冷却能力が高いので、溶接電力をアップしてより高速に溶接を行うことができる。
【0044】
−第2実施例−
図7に、第2実施例のインサートチップを示し、図8には、それに装着された先行ノズル部材20aおよび後行ノズル部材20bを拡大して示す。第2実施例では、ノズル部材20a,20bの笠部21a,21bには、切欠面26a,26bの他に、追加の切欠面27a,27bがある。先行ノズル部材20aの追加の切欠面27aは、先行ノズル部材20aの中心軸の位置にあってもとからある切欠面26aに平行な断面で笠部21aを左右に2分割すると、左半分の領域にある(切欠面26aは右半分の領域にある)。しかし、追加の切欠面27bは、もとからある切欠面26bが存在する右半分の領域にある。すなわち、先行ノズル部材20aの切欠面26aと追加の切欠面27aの、笠部21aにおける分布パターンと、後行ノズル部材20bの切欠面26bと追加の切欠面27bの、笠部21bにおける分布パターンとは、異なっている。そして、図7の(a)を参照すると、追加の切欠面27aに端部が当たるように、対向突起1mが「く」の字型に形成され、また、追加の切欠面27bに端部が当たるように、対向突起1nも「く」の字型に形成されている。
【0045】
先行ノズル部材20aをチップ基体1に挿入してナット25aでねじ締め付けして固定するとき、チップ基体1に対して切欠面26aの一端(図10のApaに相当する位置)を支点(中心)に回動させようとする振り力が先行ノズル部材20aに作用するが、追加の切欠面27aの回動を、対向突起1mの「く」の字型の先端が阻止する。すなわち、先行ノズル部材20aの軸振れを防止する。同様に、後行ノズル部材20bをチップ基体1に挿入してナット25bでねじ締め付けして固定するとき、チップ基体1に対して切欠面26bの一端を支点(中心)に回動させようとする振り力が後行ノズル部材20bに作用するが、追加の切欠面27bの回動を、対向突起1nの「く」の字型の先端が阻止する。すなわち、後行ノズル部材20bの軸振れを防止する。
【0046】
また、もとの切欠面26a,26bと追加の切欠面27a,27bの分布パターンが先行ノズル部材20aと後行ノズル部材20bとは異なって、追加の切欠面27a,27bの位置に対向突起1m,1nの「く」の字型の先端があるので、後行ノズル部材20bを装着すべき位置に先行ノズル部材20aを装着することは出来ないし、先行ノズル部材20aを装着すべき位置に後行ノズル部材20bを装着することは出来ない。各ノズル部材を間違った位置に装着することがなくなる。第2実施例のその他の構造および機能は、第1実施例と同様である。
【0047】
−第3実施例−
図9の(a)に、第3実施例のインサートチップを示す。第3実施例では、追加の切欠面27a,27bに当接する対向突起1m,1nの「く」の字型の先端が、追加の切欠面27a,27bの傾斜と同等の斜面となっており、軸振れ防止精度が高い。第3実施例のその他の構造および機能は、第2実施例と同様である。
【0048】
−第4実施例−
図9の(b)に、第4実施例のインサートチップを示す。第4実施例では、追加の切欠面27aに当たるように、軸振れ防止ピン28aが先端平面1dに立てられ、追加の切欠面27bに当たるように、軸振れ防止ピン28bが先端平面1eに立てられている。先行ノズル部材20aをチップ基体1に挿入してナット25aでねじ締め付けして固定するとき、チップ基体1に対して切欠面26aの一端(図10のApaに相当する位置)を支点(中心)に回動させようとする振り力が先行ノズル部材20aに作用するが、追加の切欠面27aの回動を、軸振れ防止ピン28aが阻止する。すなわち、先行ノズル部材20aの軸振れを防止する。同様に、後行ノズル部材20bをチップ基体1に挿入してナット25bでねじ締め付けして固定するとき、チップ基体1に対して切欠面26aの一端を支点(中心)に回動させようとする振り力が後行ノズル部材20bに作用するが、追加の切欠面27bの回動を、軸振れ防止ピン28bが阻止する。すなわち、後行ノズル部材20aの軸振れを防止する。第4実施例のその他の構造および機能は、第2実施例と同様である。
【符号の説明】
【0049】
1:チップ基体
1a,1b:傾斜面
1c:先端突起
1d,1e:先端平面
1f,1g:水循環穴
1h:水受穴
1i:水出穴
1j,1k,1l:横通水穴
1m,1n:対向突起
1p:位置合せピン
2a〜2d:電極配置空間
3a〜3d:ノズル
5:チップ台
6:インナーキャップ
7:絶縁本体
8:シールドキャップ
9a,9b:センタリングストーン
10a,10b:電極台
11:絶縁スペーサ
12a,12b:電極
13a,13b:押さえねじ
14:外筒
15a,15b:パイロットガス管
16a,16b:水流管
17:シールドガス管
18a,18b:ノズル部材挿入穴
20a:先行ノズル部材
20b:後行ノズル部材
21a,21b:笠部
22a,22b:幹部
23a,23b:Oリング
24a,24b:雄ねじ部
25a,25b:ナット
26a,26b:切欠面
27a,27b:追加の切欠面
28a,28b:軸振れ防止ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10