【文献】
Graeme I. et al.,Tumor-specific Expression of Cytochrome P450 CYP1B1,CANCER RESEARCH,1997年 7月15日,Vol.57, No.14,P.3026-3031
【文献】
Morag C. E. MCFADYEN et al.,Cytochrome P450 CYP1B1 protein expression: A novel mechanism of anticancer drug resistance,Biochem Pharmacol ,2001年 7月15日,Vol.62, No.2 ,Page.207-212
【文献】
大川清ほか,プロテアソーム阻害剤耐性株の性格と抗癌剤感受性の検討 ,日本癌学会総会記事 ,2004年 8月25日,Vol.63rd ,Page.191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者がプロテアソームインヒビター治療レジメンに反応性であるか、または非反応性であることの指標として、患者サンプルにおける予測マーカーの発現レベルを使用する方法であって、前記プロテアソームインヒビターは、ペプチジルボロン酸またはペプチジルボロン酸エステルであり、前記方法は、
a)腫瘍細胞を含む患者サンプルにおける予測マーカーの発現レベルを測定する工程であって、前記腫瘍は血液学的癌である、工程、および
b)前記予測マーカーの発現レベルと、対照の発現レベルとを比較検討し、前記予測マーカーの発現レベルが有益な発現レベルであるかどうかを判断する工程を含み、
前記予測マーカーが、表1Bのマーカー番号686(Rep公開ID:AU144855を持つシトクロムP450、ファミリー1、サブファミリーB、ポリペプチド1)で同定され、かつ、
前記a)およびb)の工程によって実施される、表1Bの前記予測マーカーの前記有益な発現レベルが、前記対照の発現レベルよりも高いことは、前記患者が前記プロテアソームインヒビター治療レジメンに反応性であることを示す、方法。
前記予測マーカーの発現レベルが、mRNAの検出により判断されるか、または、前記予測マーカーの発現レベルが、タンパク質の検出により判断される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(定義)
別段の定義がない限り、本明細書で使用する専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施または検査に際して、本明細書に記載するものと類似または等価の方法および材料を使用してもよいが、本明細書に記載する方法および材料が好ましい。また、本出願では、引用した(表を含む)データベースのアクセションの記録内容(アフィメトリクス(Affymetrix)HG133アノテーションファイル、アントレ(Entrez)、GenBank、RefSeqの代表的な公開アイデンティファイアIDなど)をすべて、本明細書にも援用する。アフィメトリクス(Affymetrix)HG−133Aプローブ配列およびHG−133Bプローブ配列(どちらも2003年6月9日付けのFASTAファイル(アフィメトリクス(Affymetrix)社、カリフォルニア州サンタクララ))を開示するファイルの内容も、本明細書に援用する。矛盾が生じた場合は、定義を含め、本明細書が優先するものとする。
【0019】
冠詞「a」および「an」は、本明細書で使用する場合、冠詞の文法上の目的である1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を意味する。たとえば、「an エレメント」とは、少なくとも1つのエレメントを意味し、2つ以上のエレメントを含む場合もある。
【0020】
「マーカー」は、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかに記載された、アフィメトリクス(Affymetrix)社プローブセットのアイデンティファイアに関連する核酸またはタンパク質の少なくとも1つに対応する自然発生のポリマーである。たとえば、マーカーは、アフィメトリクス社のプローブおよびプローブセットのアイデンティファイアにより認識される配列と、ゲノムDNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖(すなわち、その中で発生する任意のイントロンを含む)と、ゲノムDNAの転写(すなわち、スプライシングより前)により生成されるRNAと、ゲノムDNAから転写されるRNAのスプライシングにより生成されるRNAと、スプライスされたRNAの翻訳によって生成されるタンパク質(すなわち、膜貫通のシグナル配列など、正常に切断された領域の切断の前後双方のタンパク質を含む)とを含むが、これに限定されるものではない。本明細書で使用する場合、「マーカー」は、ゲノムDNAの転写により生成されるRNA(スプライスされたRNAを含む)の逆転写で作製されるcDNAを含んでもよい。「マーカーセット」は、本発明の2個以上の予測マーカーを含むマーカーの群である。本発明のマーカーは、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3に示す予測マーカーを含み;個々のプローブセットアイデンティファイア、代表的な公開アイデンティファイア、タイトル、遺伝子シンボルおよび/またはアントレ(Entrez)の遺伝子アイデンティファイアで示される、アイデンティファイアに対応する、代表的なヌクレオチドおよび/またはタンパク質配列もしくはそのフラグメントを含むものである。
【0021】
「予測マーカー」は、本明細書で使用する場合、患者の腫瘍細胞で差次的に発現すること、さらに、その発現がプロテアソームインヒビターレジメンおよび/または糖質コルチコイドレジメンによる処置に対して、陽性または陰性のどちらかで反応性を示す患者に特徴的であることが認められているマーカーを含むものである。たとえば、予測マーカーは、非反応性の患者において発現の上昇を示すマーカーを含み;あるいは、予測マーカーは、反応性の患者において発現の上昇を示すマーカーを含むものである。予測マーカーは同様に、非反応性の患者において発現の低下を示すマーカーと、反応性の患者において発現の低下を示すマーカーとを含むことを意図している。したがって、本明細書で使用する場合、予測マーカーは、こうした1つ1つの可能性を含むことを意図しており、個々のマーカーを個別に予測マーカーとしてさらに含めてもよく;あるいは、「予測マーカー」または「予測マーカーセット」という場合、1つまたは複数の特性、あるいは、すべての特性を集合的に含めてもよい。また、予測マーカーセットは、「クラシファイア」とも呼ばれることがある。
【0022】
本明細書で使用する場合、「自然発生の」とは、分子(RNA、DNA、タンパク質など)が自然発生する(天然タンパク質、自然に生成されるタンパク質等をコードするなど)ことをいう。
【0023】
「プローブ」という語は、本発明のマーカーなどの特定の標的分子と選択的に結合できる任意の分子をいう。プローブは、当業者によって合成されたものであってもよいし、適切な生物学的調製物に由来するものであってもよい。標的分子の検出の目的上、プローブは、本明細書に記載するように、標識する目的で特別に設計されよもよい。プローブとして使用できる分子の例としては、RNA、DNA、タンパク質、抗体および有機モノマーがあるが、これに限定されるものではない。
【0024】
マーカーの「正常な」発現レベルとは、類似の環境または反応状況における、癌を患っていない患者の細胞でのマーカーの発現レベルをいう。また、マーカーの正常な発現レベルは、「参照サンプル」(マーカーに関係する疾患を持たない健康な被検体のサンプルなど)の発現レベルをいうこともある。参照サンプルの発現は、参照データベースの1つまたは複数のマーカーの発現レベルから構成されてもよい。あるいは、マーカーの「正常な」発現レベルは、類似の環境または反応状況における、腫瘍が由来する同一患者の非腫瘍細胞でのマーカーの発現レベルである。
【0025】
マーカーの「差次的発現」とは、マーカーの発現のレベルが各患者で異なることをいう。さらに、本発明では、その発現レベルが処置に対する反応性または非反応性と相関する、あるいは、そうでなければ処置に対する反応性または非反応性を示す場合、マーカーを「差次的に発現される」という。
【0026】
「相補的」とは、2本の核酸鎖の領域間または同じ核酸鎖における2つの領域間の配列の相補性に関する広義の概念をいう。一方の核酸領域がアデニン残基であるとき、アデニン残基は、他方領域の残基がチミンまたはウラシルである場合、一方の領域と逆平行である他方の核酸領域の残基と、特異的な水素結合(「塩基対形成」)を形成できることが知られている。同様に、一方の核酸鎖がシトシン残基であるとき、シトシン残基は、他方の核酸鎖の残基がグアニンである場合、一方の核酸鎖と逆平行である他方の核酸鎖の残基と、塩基対を形成できることが知られている。核酸の一方の領域は、同一核酸または異なる核酸の他方の領域と相補的であり、この2つの領域が逆平行に配列されたとき、一方の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基は、他方領域の残基と塩基対を形成できる。好ましくは、一方の領域が第1の部分を含み、かつ他方の領域が第2の部分を含み、これにより、第1および第2の部分が逆平行に配列されたとき、第1の部分のヌクレオチド残基は、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%または少なくとも約95%が第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対を形成することができる。一層好ましくは、第1の部分のヌクレオチド残基がすべて、第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対を形成することができる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「有益な」発現は、反応性または非反応性に対応して、差次的に発現される予測マーカーの発現レベルを意味することを意図している。患者のマーカーの発現レベルは、発現の判定に用いるアッセイの標準誤差を超える量だけ、参照レベルよりも大きければ、「有益」である。あるいは、差次的に発現されるマーカーは、反応性または非反応性を予測する、典型的な発現レベルの範囲を有するものである。有益な発現レベルとは、発現の反応範囲内または非反応範囲内に収まるレベルである。なおさらに、あるマーカーのセットについては、その発現レベルの組み合わせが、本明細書に記載する方法によって判断される予測マーカーセットに対する所定のスコアを満たすか、あるいは、上回るか、下回る場合、まとめて「有益」としてもよい。
【0028】
マーカーによっては、反応性の患者と非反応性の患者の両方が分かることがあり、たとえば、本明細書に記載の予測マーカーの発現が一定の閾値(有益な発現レベルなど)を上回ると、本明細書に記載するように、反応性の患者であることが示唆され得る。このマーカーの発現が一定の閾値を下回る(有益なレベルを下回るなど)と、非反応性の患者であることが示唆され得る。
【0029】
癌または腫瘍は、本発明の方法に従って処置または診断される。「癌」または「腫瘍」は、初期の腫瘍および任意の転移など、患者のいかなる腫瘍性増殖も含むことを意図している。癌は、液体腫瘍タイプまたは固形腫瘍タイプの場合がある。液体腫瘍には、骨髄腫(多発性骨髄腫など)、白血病(ワルデンシュトレーム症候群、慢性リンパ球性白血病、その他の白血病など)およびリンパ腫(B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫など)などの血液由来の腫瘍がある。固形腫瘍は、臓器に発生する場合があり、肺、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓などの癌が挙げられる。本明細書で使用する場合、腫瘍細胞をはじめとする癌細胞とは、異常な(増加)ペースで分裂する細胞をいう。癌細胞には、扁平上皮癌、基底細胞癌、汗腺癌、皮脂腺癌、腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌、気管支原性癌、黒色腫、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌(bile duct carcinoma)、胆管癌(cholangiocarcinoma)、乳頭癌、移行上皮癌、絨毛癌、セモノーマ(semonoma)、胎児性癌、乳癌、消化管癌、結腸癌、膀胱癌、前立腺癌ならびに頚部および頭部の扁平上皮癌などの癌;線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫および中皮肉腫などの肉腫;骨髄腫、白血病(急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、顆粒球性白血病、単球性白血病、リンパ性白血病)およびリンパ腫(濾胞性リンパ腫、外套細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網肉腫またはホジキン病)などの血液癌;ならびに神経膠腫、髄膜腫(meningoma)、髄芽腫、シュワン腫またはエピディモーマ(epidymoma)などの神経系の腫瘍が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0030】
治療薬との接触がないときの増殖と比べて、治療薬との接触により、その成長率が阻害される場合、癌は、治療薬に対して「反応性」である。癌の成長については、様々な方法で測定可能であり、たとえば、腫瘍の大きさまたはその腫瘍タイプに適した腫瘍マーカーの発現を測定してもよい。たとえば、骨髄腫に関係するマーカーと、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療に対するマーカーの反応との同定に用いる反応性の定義には、Bladeら,Br J Haematol.1998年9月;102(5):1115〜23に記載されているように、サウスウェストオンコロジーグループ(Southwestern Oncology Group)(SWOG)基準を用いた(表Cなども参照のこと)。これらの基準により、骨髄腫において測定される反応のタイプと同時に、治療薬に対する腫瘍の感受性を示すもう一つの重要な尺度である、疾患の病勢進行までの期間に関するキャラクタリゼーションが定義される。プロテアソーム阻害治療剤および/または糖質コルチコイド治療に対する反応性の質には、ばらつきがあり、ある治療薬に対して、それぞれの癌が示す「反応性」レベルは、様々な条件下で、異なっている。なおさらに、患者の生活の質、転移の程度等など、腫瘍増殖の大きさ以外の付加的な基準を用いて、反応性の尺度を判定してもよい。加えて、適切な状況であれば、臨床予後のマーカーおよび変数(骨髄腫におけるMタンパク質、前立腺癌におけるPSAレベルなど)を判定することもできる。
【0031】
治療薬との接触がないときの増殖と比べて、治療薬との接触により、その成長率が阻害されない、あるいは、阻害の程度が極めて低い場合、癌は、治療薬に対して「非反応性」である。上記のとおり、癌の増殖は、様々な方法で測定可能であり、たとえば、腫瘍の大きさまたはその腫瘍タイプに適した腫瘍マーカーの発現を測定してもよい。本明細書に記載の実験例では、たとえば、治療薬に対する多発性骨髄腫の非反応に関係するマーカーの同定に用いる反応の定義には、Bladeらが論じたようなサウスウェストオンコロジーグループ(SWOG)基準を用いた。治療薬に対する非反応性の質は、非常にばらつきがあり、ある治療薬に対して、それぞれの癌が示す「非反応性」のレベルは、様々な条件下で、異なっている。なおさらに、患者の生活の質、転移の程度等など、腫瘍増殖の大きさ以外の付加的な基準を用いて、非反応性の尺度を判定してもよい。加えて、適切な状況であれば、臨床予後のマーカーおよび変数(骨髄腫におけるMタンパク質、前立腺癌におけるPSAレベルなど)を判定することもできる。
【0032】
「処置」とは、腫瘍の増殖が進むのを阻止または抑制すること、ならびに腫瘍を収縮させることを意味する。処置にはまた、腫瘍転移の予防を含めることを意図している。癌または腫瘍の少なくとも1つの症状(反応性/非反応性、病勢進行までの期間または当該技術分野において周知であり、本明細書に記載するインジケーターにより判断される)が緩和する、消滅する、下火になる、最小限に抑えられる、または阻止される場合、腫瘍は、「抑制される」または「処置される」。肉体的その他を問わず、本明細書に詳述する治療レジメン(プロテアソーム阻害レジメン、糖質コルチコイドレジメンなど)を用いた処置による、腫瘍のどんな症状の改善も、本発明の範囲内にある。
【0033】
本明細書で使用する場合、「薬剤」とは、治療プロトコルにおいて、腫瘍細胞をはじめとする癌細胞を曝露する可能性のある任意のものと広義に定義する。本発明の文脈では、そうした薬剤には、プロテアソーム阻害剤、糖質コルチコイドステロイド剤のほか、当該技術分野において周知であり、本明細書にさらに詳述する化学療法剤が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0034】
「キット」とは、特に、本発明のマーカーまたはマーカーセットの検出を目的としたプローブなど、少なくとも1つの試薬を含む物品(パッケージまたは容器など)をいう。本発明の方法を実施するためのユニットとして、この物品を販売促進、頒布または販売してもよい。このキットに含まれる試薬には、反応性マーカーおよび非予測マーカーの発現の検出で使用するプローブ/プライマーおよび/または抗体が含まれる。加えて、本発明のキットは、好ましくは、好適な検出アッセイを記述した説明書を含んでもよい。こうしたキットを、臨床設定などで相応に用いて、癌の症状を示している患者、特に、血液癌、骨髄腫(多発性骨髄腫など)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫など)、白血病および固形腫瘍(肺、乳房、卵巣等など)など、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療による処置の可能な癌が存在すると見込まれる患者の診断および評価を行うことができる。
【0035】
本発明の方法および組成物は、癌を患っている患者を対象とした診断学および治療学で使用できるように設計されている。癌は、液体腫瘍タイプまたは固形腫瘍タイプでもよい。液体腫瘍には、骨髄腫(多発性骨髄腫など)などの血液由来の腫瘍、白血病(ワルデンシュトレーム症候群、慢性リンパ球性白血病、その他の白血病など)およびリンパ腫(B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫など)が含まれる。固形腫瘍は、臓器に発生する場合があり、肺、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓などの癌が挙げられる。
【0036】
本発明は、患者の腫瘍の処置に合わせて、適切な癌治療レジメンの判断または判定を行うための方法を提供するものである。提供する方法または提供する方法との併用での使用に適した癌治療レジメンは、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療を含むものである。たとえば、プロテアソームインヒビター治療は、プロテアソームインヒビター(ボルテゾミブまたは本明細書で詳細に記載されるその他のプロテアソームインヒビターなど)単独、あるいは、1つまたは複数の付加的な薬剤との併用による患者の処置を含むものである。別の例では、糖質コルチコイド治療は、糖質コルチコイド(デキサメタゾンまたは本明細書で詳細に記載されるその他の糖質コルチコイドなど)単独、あるいは、1つまたは複数の付加的な薬剤との併用による患者の処置を含むものである。
【0037】
提供する方法は、患者の腫瘍における少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルの測定と、予測マーカー(単数または複数)の発現レベルに基づき、状況に応じて、腫瘍を処置できるように癌治療レジメンを判断することとを含むものである。本明細書に記載の予測マーカーまたはマーカーセットが反応性を示した場合、患者サンプルにおける予測マーカー(単数または複数)の有益な発現レベルから、患者が反応性の患者であり、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療が効果を発揮するであろうことが分かる。さらに、本明細書に記載の予測マーカー(単数または複数)がその非反応性を示した場合、患者における予測マーカー(単数または複数)の有益な発現レベルから、患者が非反応性の患者であり、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療が効果を発揮しないであろうことが分かる。
【0038】
本発明は、患者が、腫瘍を処置するための癌治療レジメンに対して反応性を示すかどうかを判断する方法をさらに提供するものである。この方法は、患者の腫瘍における少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルの測定と、予測マーカーまたはマーカーセットの発現レベルに基づき、腫瘍を処置するためのプロテアソーム阻害をベースにしたレジメンおよび/または糖質コルチコイドをベースにしたレジメンを判断することとを含むものである。患者サンプルにおける予測マーカーの有益な発現レベルから、患者が反応性の患者であり、プロテアソーム阻害および/または糖質コルチコイド治療が効果を発揮するであろうことが分かる。本明細書に記載の、あるマーカーまたは複数のマーカーが反応性を示した場合、患者における予測マーカーセットの有益な発現レベルから、患者が反応性の患者であり、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療が効果を発揮するであろうことが分かる。こうした方法で使用するために選択される予測マーカーは、反応性の患者における発現量の増加および/または疾患の病勢進行までの期間の延長を実証する予測マーカーを含むのである。
【0039】
本発明は、患者が悪性疾患であり、悪性疾患が明らかになってない患者よりも、疾患の進行が早くなるかどうかを判断するための方法を提供するものである。悪性疾患があることをうかがわせる患者は、腫瘍を処置するための癌治療レジメンに対しても非反応性であるかもしれない。この方法は、患者の腫瘍における少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルの測定と、予測マーカーまたはマーカーセットの発現レベルに基づき、患者を悪性疾患患者と同定することとを含むものである。患者サンプルにおける予測マーカーの有益な発現レベルから、患者が悪性疾患患者であり、病勢の進行する可能性が高く、プロテアソーム阻害をベースにしたレジメンおよび/または糖質コルチコイドをベースにしたレジメン治療が効果を発揮しない可能性があることが分かる。本明細書に記載され選択されるマーカーまたはマーカーセットがその疾患が悪性であることを示した場合、患者における予測マーカーセットの有益な発現レベルから、患者が悪性疾患患者であり、プロテアソーム阻害をベースにしたレジメンおよび/または糖質コルチコイドをベースにしたレジメンが効果を発揮しないであろうことが分かる。こうした方法で使用するために選択される予測マーカーは、非反応性の患者における発現量の増加および/または患者における疾患の病勢進行までの期間の短縮を実証し、かつプロテアソーム阻害治療または糖質コルチコイド治療による処置に対して特異的でない予測マーカーを含むものである。
【0040】
なおさらに、本発明は、腫瘍を処置するための癌治療レジメンに対して、患者が非反応性を示すかどうかを判断するための方法を提供するものである。こうした方法は、患者の腫瘍における少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルの測定と、予測マーカーまたはマーカーセットの発現レベルに基づき、腫瘍を処置するためのプロテアソーム阻害をベースにしたレジメンおよび/または糖質コルチコイドをベースにしたレジメンを判断することとを含むものである。患者サンプルにおける予測マーカーの有益な発現レベルから、患者が非反応性の患者であり、プロテアソーム阻害をベースにしたレジメンおよび/または糖質コルチコイドをベースにしたレジメン治療が効果を発揮しないであろうことが分かる。本明細書に記載され選択されるマーカーまたはマーカーセットが非反応性を示した場合、患者における予測マーカーセットの有益な発現レベルから、患者が非反応性の患者であり、プロテアソーム阻害をベースにしたレジメンおよび/または糖質コルチコイドをベースにしたレジメンが効果を発揮しないであろうことが分かる。こうした方法で使用するために選択される予測マーカーは、非反応性の患者における発現量の増加および/または疾患の病勢進行までの期間の短縮を実証する予測マーカーを含むものである。
【0041】
本発明は、プロテアソーム阻害をベースにしたレジメンおよび/または糖質コルチコイドをベースにしたレジメン治療により、患者の腫瘍を処置するための方法をさらに含むものである。こうした治療方法は、患者の腫瘍における少なくとも1つの予測マーカーの発現レベルの測定と;予測マーカー(単数または複数)の発現レベルに基づき、腫瘍を処置するためのプロテアソーム阻害をベースにしたレジメンおよび/または糖質コルチコイドをベースにしたレジメンが適切であるかどうかを判断することと、患者の発現レベルから、反応性の患者であることが分かった場合、プロテアソーム阻害をベースにした治療剤および/または糖質コルチコイドをベースにした治療剤により患者を処置することとを含むものである。本明細書に記載の予測マーカーまたはマーカーセットから、患者が反応性の患者であることが示された場合、患者サンプルにおける予測マーカーの有益な発現レベルから、患者が反応性の患者であり、プロテアソーム阻害をベースにしたレジメンおよび/または糖質コルチコイドをベースにしたレジメン治療が効果を発揮するであろうことが分かる。
【0042】
本発明の方法では、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかに記載する予測マーカーの少なくとも1つを用いる。さらに、記載の方法では、2個、3個、4個、5個、6個、あるいは、それ以上のマーカーを用いて、予測マーカーセットを組んでもよい。たとえば、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび/または表3のマーカーから選択されるマーカーセットは、本明細書に記載される方法を用いて作成してもよく、表1A、表1B、表2A、表2Bまたは表3に記載するマーカーの2個から全部までを含めてもよく、そのありとあらゆる組み合わせ(4個のマーカーの選択、16個のマーカーの選択、74個のマーカーの選択等など)を含めてもよい。いくつかの実施形態では、予測マーカーセットは、少なくとも5個、10個、20個、40個、60個、100個、150個、200個または300個、あるいは、それ以上のマーカーを含むものである。他の実施形態では、予測マーカーセットは、5個、10個、20個、40個、60個、100個、150個、200個、300個、400個、500個、600個または700個以下のマーカーを含むのである。いくつかの実施形態では、予測マーカーセットは、血液癌(多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等など)などの癌または固形腫瘍(肺、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓または肝臓などにおける)による癌に関係する複数の遺伝子を含むものである。いくつかの実施形態では、予測マーカーセットは、表1A、表1B、表2A、表2Bまたは表3に記載する複数のマーカーを含むものである。いくつかの実施形態では、予測マーカーセットは、表1B、表2A、表2Bまたは表3に記載するマーカーの少なくとも約1%、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%または約99%を含むものである。選択される予測マーカーセットについては、本明細書に記載の方法および当該技術分野において周知の類似の方法を用いて、本明細書記載の予測マーカーから組んでもよい。予測マーカーセットの実施例を表4にまとめておく。特定の態様では、マーカーは、表4に示すマーカーを含むものである。
【0043】
本発明の方法では、本明細書にさらに詳述される方法を用いて、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3に示す個々の予測マーカーからマーカーセットを構築することできる。さらなる態様では、本明細書記載の診断方法、予後方法および処置方法向けに、2つ以上のマーカーセットを併用して用いてもよい。
【0044】
プロテアソーム阻害治療剤および/または糖質コルチコイド治療剤に対して、患者が反応性を示すかどうかを同定するために、腫瘍治療に先立ち、予測マーカーの発現レベルの判断を行う目的で、本発明の方法を実施してもよい。
【0045】
加えて、患者が、現在のプロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療に対して反応しているか、あるいは、今後、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療を含む追加治療に対して反応性を示すかどうかを判断するために、進行中の腫瘍治療と同時に本発明の方法を実施してもよい。
【0046】
なおさらに、患者が、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療の将来の経過に対して反応性を示すかどうかを判定する目的で、腫瘍治療を実施した後に、本発明の方法を実施してもよい。
【0047】
こうした方法を進行中の腫瘍治療において実施するか、腫瘍治療経過後に実施するかを問わず、腫瘍治療は、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療を単独で含んでもよく、あるいは、癌治療代替療法を含んでもよい。こうした本明細書記載の方法は、追加または将来のプロテアソーム阻害および/または糖質コルチコイド治療が、患者に対して効果を発揮するどうかを判断できるように設計されており、プロテアソーム阻害および/または糖質コルチコイド治療を単独で、あるいは、付加的治療薬との併用で含んでもよい。
【0048】
特定の態様では、腫瘍のサンプルを単離し、この単離サンプルまたはその一部について解析を行うことで、患者の腫瘍における予測マーカーの発現レベルを測定する。別の態様では、インビボイメージング技法を用いて、患者の腫瘍における予測マーカーの発現レベルを測定する。
【0049】
特定の態様では、予測マーカーの発現レベルの判断には、mRNAの検出が含まれる。この検出については、適切な核酸を検出できるプローブを用いることにより、PCR、ノーザン、ヌクレオチドアレイ検出、インビボイメージングなど、関連するどのような方法で行ってもよい。他の態様では、予測マーカーの発現レベルの判断には、タンパク質の検出が含まれる。この検出については、適切なペプチドを検出できるプローブを用いて、ELISA、ウエスタンブロット、イムノアッセイ、タンパク質アレイ検出、インビボイメージングなど、タンパク質検出のための関連するどのような方法で行ってもよい。
【0050】
予測マーカーの発現レベルを判断するには、参照発現レベルとの比較検討を行う。たとえば、参照発現レベルは、マーカーまたはマーカーセットの発現が有益であるかどうかの評価を行うことと、患者が反応性であるか、それとも、非反応性であるかを判断するための判定を行うこととを目的とした所定の標準参照発現レベルであってもよい。さらに、予測マーカーの発現レベルを判断するには、内部参照マーカーの発現レベルとの比較検討を行ってもよい。この場合は、内部参照マーカーの発現レベルを、患者が反応性であるか、それとも、非反応性であるかの判断を判定する目的で、予測マーカーと同時に測定する。たとえば、本発明の予測マーカーではないが、一定の発現レベルを示す、特徴的なあるマーカーまたは複数のマーカーの発現を、内部参照マーカーレベルと判定してもよく、予測マーカーの発現レベルを、その参照マーカーレベルに照らして判断する。他の実施例では、非腫瘍サンプルである組織サンプルにおいて選択される、ある予測マーカーまたは複数の予測マーカーの発現を、内部参照マーカーレベルと判定してもよい。特定の態様では、あるマーカーまたは複数のマーカーの発現レベルを、発現の増加と判断することができる。他の態様では、あるマーカーまたは複数のマーカーの発現レベルを、発現の減少と判断することができる。参照レベルに照らして、発現レベルを、有益な変化が見られないものと判断してもよい。さらに他の態様では、発現レベルを、本明細書に記載の方法によって決定されるような所定の標準発現レベルと対照して判断する。
【0051】
本発明はまた、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療による癌患者(液体腫瘍または固形腫瘍の患者など)の診断、ステージング、予後、モニタリングおよび処置用の種々の試薬およびキットに関係するものである。マーカーおよびマーカーセットの検出用の試薬と、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3に示す、少なくとも2つの単離された予測マーカーを含む、本発明の方法で使用する試薬とを提供する。こうした試薬には、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3に示す当該予測マーカーの検出用の核酸プローブ、プライマー、抗体、抗体の誘導体、抗体フラグメントおよびペプチドプローブが含まれる。
【0052】
さらに、本明細書提供の方法で使用するキットを提供する。本発明のキットは、予測マーカー(少なくとも1つの予測マーカーなど)および予測マーカーセット(表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3から選択される少なくとも2個、3個、4個、あるいはそれ以上のマーカー)を判定するための試薬と、本明細書に記載する方法に従った使用説明書とを含むものである。特定の態様では、本明細書記載のキットは、予測マーカーを判定するための核酸プローブを含むものである。さらに他の態様では、本明細書記載のキットは、予測マーカーを判定するための抗体、抗体の誘導体抗体フラグメントまたはペプチド試薬を含むものである。
【0053】
(反応性マーカーおよび非反応性マーカーの同定)
本発明は、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療に対して反応性の腫瘍に発現し、かつ発現がその治療薬に対する反応性と相関するマーカーを提供するものである。本発明はまた、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療に対して非反応性の腫瘍に発現し、かつ発現がその治療に対する非反応性と相関するマーカーを提供するものである。これに伴い、1つまたは複数のマーカーを用いて、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療による処置が成功し得る癌を同定することができる。1つまたは複数の本発明のマーカーを用いて、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療を用いた処置が成功し得る患者を同定することができる。加えて、本発明のマーカーを用いて、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療による処置に対して反応しなくなっている、または、反応しなくなる恐れがある患者を同定することができる。本発明はまた、マーカーの組み合わせ(以下「マーカーセット」という)を特色とするものであり、マーカーセットは、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療レジメンに対して、患者が反応する可能性が高いか、それとも、反応しない可能性が高いかを予測できるものである。
【0054】
表1は、患者224名のサンプルに適用した統計解析を用いて同定された予測マーカーを示しており、この予測マーカーは、プロテアソーム阻害治療(ボルテゾミブなど)に対する反応または非反応に関する固有のアイデンティファイアである。表1のマーカーは、プロテアソームインヒビターであるボルテゾミブによる処置に対して反応性か、非反応性か、どちらかの患者のサンプルで差次的に発現される。したがって、予測モデルにおいて、同定されたマーカーが、ボルテゾミブまたは当該技術分野において周知のその他のプロテアソーム阻害治療剤および本明細書にさらに詳述される治療剤に対する反応性を含む、プロテアソーム阻害治療に対する患者の反応性を、先を見越して同定するのに役立つことが理解されるであろう。特に、表1のマーカーは、治療に対する陽性反応(以下「反応性、(R)」という);または、本明細書で詳述するように、Cox比例ハザード解析により判断する、疾患の病勢進行までの期間(TTP)が長いことと相関する。治療に対して陽性反応(完全、部分的または最小のいずれか;表Cを参照のこと)の患者を、以下「反応者」という。病勢進行までの期間が長いことを予知するものは、疾患の進行ペースが遅くなる可能性が高く、他の患者よりも治療に対して反応性を示す傾向が強くなり得る患者の付加的インジケーターとして有用である。さらに、表1の予測マーカーは、薬剤に対する陰性反応もしくは不十分な反応(以下「非反応性、(NR)」)または病勢進行までの期間(TTP)が短いことと相関する。処置に対する反応が不十分(進行性または抵抗性の疾患という;表Cを参照こと)な患者を、以下「非反応者」という。これらの同定された予測マーカーについては、疾患の進行ペースが速いことが予想され、かつ他の患者よりも治療に対する反応性を示しにくい患者の付加的インジケーターとして有用である。処置に対して無反応の患者を、以下「安定」という。
【0055】
表1Aには、非反応の上方制御インジケーターである予測マーカーおよび/または病勢進行までの期間の短縮と相関する予測マーカーを掲げる。表1Aのマーカー番号1〜547は、新たに同定された予測マーカーであり、予測マーカー番号548〜657は、非反応性の予測に関係および/または病勢進行までの期間の短縮との相関に関係するマーカーとして従来から同定されていたものである。2004年6月24日公開の国際特許公開第WO04053066号を参照されたい。表1Bには、反応の上方制御インジケーターである予測マーカーおよび/または病勢進行までの期間の延長と相関する予測マーカーを掲げる。表1Bのマーカー番号658〜876は、新たな関係予測マーカーであり、予測マーカー番号877〜911は、反応性の予測に関係および/または病勢進行までの期間の延長との相関に関係するマーカーとして従来から同定されていたものである。2004年6月24日公開の国際特許公開第WO04053066号を参照されたい。
【0056】
表2は、患者224名のサンプルに適用した統計解析を用いて同定された予測マーカーを示しており、予測マーカーは、糖質コルチコイド治療(デキサメタゾンなど)に対する反応または非反応に関する固有のアイデンティファイアである。表2のマーカーは、糖質コルチコイドステロイド剤であるデキサメタゾンによる処置に対して反応性か、非反応性か、どちらかの患者のサンプルで差次的に発現される。したがって、予測モデルにおいて、同定されたマーカーが、デキサメタゾンまたは当該技術分野において周知のその他の糖質コルチコイド治療および本明細書にさらに詳述される治療に対する反応性など、糖質コルチコイド治療に対する患者の反応を、先を見越して同定するのに役立つことが理解されるであろう。表1と同様に、表2は、同定された予測マーカーを示し、この予測マーカーは、糖質コルチコイド処置(デキサメタゾンなど)による治療を行う際に、反応もしくは病勢進行までの期間が長いこと;または非反応もしくは病勢進行までの期間が短いことを示す固有のアイデンティファイアである。
【0057】
表2Aには、非反応の上方制御インジケーターである予測マーカーおよび/または病勢進行までの期間の短縮と相関する予測マーカーを掲げる。表2Bには、反応の上方制御インジケーターである予測マーカーおよび/または病勢進行までの期間の延長と相関する予測マーカーを掲げる。
【0058】
表3は、プロテアソーム阻害治療に対する反応と、糖質コルチコイド治療に対する反応との区別を行う代わりに、どちらかの治療に関する反応/病勢進行までの期間の延長または非反応/病勢進行までの期間の短縮のインジケーター予測マーカーであり、かつ疾患の一般的な悪性度のインジケーターである、同定された予測マーカーを示す。表3のマーカー番号1203〜1423は、新規の関係予測マーカーであり、予測マーカー番号1424〜1474は、ボルテゾミブ処置に対する進行期の患者の反応に関する非反応/病勢進行までの期間の短縮との相関および/または反応/病勢進行までの期間の延長との相関を予測する関係マーカーとして従来から同定されていたものである。2004年6月24日公開の国際特許公開第WO04053066号を参照されたい。
【0059】
本発明の方法では、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3で確認されるマーカーからなる群から選択される、1つまたは複数の予測マーカーの発現レベルを判断する。本明細書で使用する場合、発現レベルまたは発現量とは、マーカーがコードするmRNAの絶対発現レベルまたはマーカーがコードするタンパク質の絶対発現レベル(すなわち、発現が癌細胞で起きているか否かを問わない)をいう。
【0060】
一般に、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3で確認される予測マーカーから選択される、同定された2個以上の反応性マーカーもしくは非予測マーカーまたは同定された3個以上の反応マーカーもしくは非予測マーカーまたは同定された、なおさらに多くの反応性マーカーおよび/または非予測マーカーのセットの発現を判断することが好ましい。たとえば、表4は、本明細書に記載の方法を用いて同定されたマーカーセットを示しており、本発明の方法に使用することができる。なおさらに、本明細書で同定される予測マーカーを含む、付加的および/または代替的マーカーセットについては、本明細書記載の方法および予測マーカーを用いて作成してもよい。したがって、本明細書に記載の方法および組成物を用いて、反応性マーカーと非予測マーカーとのグループの発現を判定することが可能である。
【0061】
選択されるマーカーの絶対発現レベルに基づく判断に代わるものして、正規化した発現レベルに基づき判断を行ってもよい。発現レベルの正規化は、予測マーカーの発現と、恒常的に発現されるハウスキーピング遺伝子など、予測マーカーではない参照マーカーの発現とを比較検討することにより、予測マーカーの絶対発現レベルを調整することで行われる。正規化のために好適なマーカーには、アクチン遺伝子などのハウスキーピング遺伝子がある。恒常的に発現される遺伝子は、当該技術分野において周知であり、患者の関連組織および/または状況ならびに解析方法に従って、同定し、選択することができる。こうした正規化を行うと、腫瘍サンプルなどのサンプルの発現レベルと、非腫瘍サンプルなどの別のサンプルとの比較検討、あるいは、出所が異なるサンプル間での比較検討が可能になる。
【0062】
さらに、この発現レベルを、相対発現レベルとすることもできる。マーカーまたはマーカーセットの相対発現レベルを判断するには、対象のサンプルの発現レベルを判断する前に、ベースラインを設定するために、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現レベルを、10種以上の個別サンプル、好ましくは50種以上の個別サンプルで判断する。ベースラインの測定を行うには、より多くのサンプルで定量される予測マーカーまたはマーカーセットそれぞれの平均発現レベルを判断し、これを、対象の予測マーカーまたはマーカーセットに対するベースライン発現レベルとして使用する。次いで、被検サンプル向けに決定されるこのマーカーまたはマーカーセットの発現レベル(絶対発現レベル)を、このマーカーまたはマーカーセットに対して得られる発現の平均値で除す。これが相対発現レベルであり、反応性または非反応性の極端なケースを同定する際に助けとなる。
【0063】
(薬剤に対する反応性または非反応性の判断)
反応性/非反応性の患者の、同定された予測マーカーの発現レベル(タンパク質レベルなど)を用いて:1)患者が薬剤または薬剤の併用により処置され得るかどうかを判断;2)患者が薬剤または薬剤の併用による処置に対して反応しているかどうかを判断;3)患者を処置するための適切な薬剤または薬剤の併用を選択;4)進行中の処置の有効性をモニター;5)癌治療の新しい処置(単独薬剤によるプロテアソームインヒビターおよび/または糖質コルチコイド剤、あるいは、プロテアソーム阻害および/または糖質コルチコイド剤の代わりに、またはプロテアソーム阻害および/または糖質コルチコイド剤との併用で使用できる補剤)を同定;6)癌の悪性度を同定;および7)癌の早期再発および遅発性再発を処置する際に、適切な薬剤または薬剤の併用を選択することができる。特に、同定された予測マーカーを用いて、適切な治療を判断し、臨床治療と有効性検査が行われているドラッグの臨床試験とをモニターし、新たな薬剤および併用治療を開発してもよい。
【0064】
表1B、表2Bおよび表3で確認される、1つまたは複数の予測マーカー(表3に(+)で示す)から、発現の増加が示される場合、癌は、このマーカーに対応する薬剤に対して反応しやすい可能性がある。本発明の特定の態様では、癌が薬剤に対して反応性である素因を本発明の方法によって判断するが、この場合、表4で確認されるマーカーセットの個々の予測マーカーに関する有益な発現を評価する。同様に、患者が薬剤に対して反応性である素因を、本発明の方法によって判断するが、この場合、本明細書に記載の方法を用いて作成されるマーカーセットを構成するマーカーは、表1B、表2Bおよび表3に示す予測マーカーを含むものである。そして、そのマーカーセットの発現の評価を行う。
【0065】
1つまたは複数の非予測マーカーが有益な発現レベルを示す場合、癌は、このマーカーに対応する薬剤に対して非反応性になりやすい可能性がある。表1A、表2Aおよび表3で確認される、1つまたは複数の予測マーカー(表3に(−)で示す)が発現の有益な増加を示す場合、癌は、このマーカーに対応する薬剤に対して非反応性になりやすい可能性がある。本発明の特定の態様では、癌が薬剤に対して非反応である素因を、本発明の方法によって判断するが、この場合、表4で確認されるマーカーセットの個々の予測マーカーに関する有益な発現を評価する。同様に、患者が薬剤に対して非反応である素因を、本発明の方法によって判断するが、この場合、本明細書に記載の方法を用いてマーカーセットを作成し、このマーカーセットを構成するマーカーは、表1A、表2Aおよび/または表3に示す予測マーカーを含むものであり、そのマーカーセットの発現を評価する。
【0066】
一態様では、治療剤に対して、癌が反応しやすいか、反応しにくいかを評価するための予測マーカーセットは、表1A表1B、表2A表2Bおよび表3のいずれかに示すマーカーから選択されるマーカーを含むものである。なおさらなる態様では、表1Aおよび表1Bだけに示すマーカーまたは表2Aおよび表2Bならびに/または表3におけるマーカーとの組み合わせ、あるいは、表2Aおよび表2Bだけに示すマーカーまたは表1Aおよび表1Bならびに/または表3との組み合わせについて検討する。さらに別の態様では、評価対象となる単数または複数の予測マーカーを、表3に示すマーカーから選択する。特定の態様では、マーカーセットを、表4に示すマーカーからから選択する。本明細書に記載の評価方法を用いて、発現特性から、反応性の継続または非反応性の低下が明らかになった場合、本発明の方法に従い、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療を継続することになるであろう。
【0067】
本発明は、腫瘍サンプルの少なくとも1つの予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現を評価し、その評価に基づき、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療が腫瘍の成長率を低下させるのに適切であるか否かを確認することを含む、プロテアソームインヒビターおよび/または糖質コルチコイド剤などの癌治療剤を用いて、腫瘍の成長率を低下させられるかどうかを判断するための方法を提供するものである。
【0068】
本発明は、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現特性を判断し、その発現特性に基づき、プロテアソーム阻害治療薬が骨髄腫細胞の成長率を低下させるのに適切であるか否かを確認することを含む、プロテアソーム阻害治療レジメン(プロテアソームインヒビター剤(ボルテゾミブなど)単独または他の化学療法剤との併用など)を用いて、腫瘍の成長率を低下させられるかどうかを判断するための方法を提供するものである。
【0069】
さらに、腫瘍細胞のサンプルの取得と、プロテアソーム阻害剤に曝露された腫瘍細胞とプロテアソーム阻害治療剤に曝露されたことのない腫瘍細胞両方における、1つまたは複数の個々のマーカーまたはマーカーセットの発現を評価し、その評価に基づき、薬剤が腫瘍を処置するのに適切であるか否かを確認することを含む、プロテアソームインヒビター治療剤を用いて、腫瘍の増殖を抑えられるかどうかを判断するための方法も提供するものである。
【0070】
本発明は、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現特性を判断し、その発現特性に基づき、糖質コルチコイド治療薬が腫瘍の成長率を低下させるのに適切であるか否かを確認することを含む、糖質コルチコイドレジメン(糖質コルチコイドステロイド剤(デキサメタゾンなど)単続、あるいは、他の化学療法剤との併用など)を用いて、腫瘍の成長率を低下させられるかどうかを判断するための方法を提供するものである。
【0071】
さらに、腫瘍細胞のサンプルの取得と、糖質コルチコイド剤に曝露された腫瘍細胞と糖質コルチコイド治療剤に曝露されたことのない腫瘍細胞両方における、1つまたは複数の個々のマーカーまたはマーカーセットの発現を評価し、その評価に基づき、薬剤が腫瘍を処置するのに適切であるか否かを確認することを含む、糖質コルチコイド治療剤を用いて、腫瘍の増殖を抑えられるかどうかを判断するための方法を提供するものである。
【0072】
こうした方法では、薬剤の存在下での予測マーカーの発現特性に従い、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現特性から、反応性の増加または非反応性の低下が示される場合、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療レジメンを、腫瘍を処置するのに適切であると判断する。
【0073】
本発明はまた、プロテアソームインヒビター治療剤による処置を、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳房癌患者および卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎臓癌患者ならびに肝臓癌患者から選択される患者で開始すべきかどうかを判断するための方法であって、1つまたは複数のサンプルを取得し、続いて、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認されるマーカーに対応する1つまたは複数のマーカーのサンプルでの発現レベルを判断し、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認される予測マーカーの発現特性から、この処置に対して、反応性の患者であることが示される場合に、プロテアソームインヒビター治療を開始することを含む、方法を提供するものである。また、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認される予測マーカーの発現特性から、処置に対して、非反応性の患者であることが示される場合、この処置を開始しない。
【0074】
本発明はまた、プロテアソーム阻害治療による処置を、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳房癌患者および卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎臓癌患者ならびに肝臓癌患者から選択される患者で開始すべきかどうかを判断するための方法であって、患者から1つまたは複数の腫瘍細胞のサンプルを取得し、続いて、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3で確認されるマーカーを含む予測マーカーセットのサンプルでの発現特性を判断し、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3で確認される予測マーカーの発現特性から、反応性の患者であることが示される場合、プロテアソームインヒビターによる処置を開始することを含む、方法を提供するものである。また、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび/または表3で確認される予測マーカーの発現特性から、非反応性の患者であることが示される場合、この処置を開始しない。
【0075】
本発明はまた、糖質コルチコイド治療剤による処置を、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳房癌患者および卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎臓癌患者ならびに肝臓癌患者から選択される患者で開始すべきかどうかを判断するための方法であって、1つまたは複数のサンプルを取得し、続いて、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認されるマーカーに対応する1つまたは複数のマーカーのサンプルでの発現レベルを判断し、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認される予測マーカーの発現特性から、この処置に対して、反応性の患者であることが示される場合、糖質コルチコイド治療を開始することを含む、方法を提供するものである。また、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認される予測マーカーの発現特性から、処置に対して、非反応性の患者であることが示される場合、この処置を開始しない。
【0076】
本発明はまた、糖質コルチコイド治療による処置を、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳房癌患者および卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎臓癌患者ならびに肝臓癌患者から選択される患者で開始すべきかどうかを判断するための方法であって、患者から1つまたは複数の腫瘍細胞のサンプルを取得し、続いて、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3で確認されるマーカーを含む予測マーカーセットのサンプルでの発現特性を判断し、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3で確認される予測マーカーの発現特性から、反応性の患者であることが示される場合、糖質コルチコイドによる処置を開始することを含む、方法を提供するものである。また、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび/または表3で確認される予測マーカーの発現特性から、非反応性の患者であることが示される場合、この処置を開始しない。
【0077】
(抗癌剤の有効性のモニタリング)
上記で論じたように、同定される反応性マーカーおよび非予測マーカーを薬理学マーカーとして用いて、進行中の処置(プロテアソーム阻害治療剤および/または糖質コルチコイド治療剤など)に対して、腫瘍が反応しなくなっているかどうかを判定することができる。癌が処置に対して反応していない場合、腫瘍細胞の発現特性、つまり、1つまたは複数の予測マーカー(表1A、表1B、表2A、表2B、表3で確認される予測マーカーなど)のレベルまたは相対的発現が変化するようになり、その発現特性から、非反応性の患者に該当することになる。
【0078】
こうした用途の一つでは、本発明は、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療を含む癌治療剤を、癌患者で継続すべきかどうかを判断するための方法であって、プロテアソーム阻害治療剤および/または糖質コルチコイド治療剤に曝露される患者の腫瘍サンプルでの、表1A、表1B、表2A、表2Bまたは表3のいずれかに示すマーカーから選択される少なくとも1つの予測マーカーまたはマーカーセットの発現を判断し、マーカーまたはマーカーセットの発現特性から、使用中の薬剤に対する反応性が示される場合、処置を継続することを含む、方法を提供するものである。
【0079】
別のこうした用途では、本発明は、癌患者におけるプロテアソーム阻害治療剤および/または糖質コルチコイド治療剤を、中断すべきかどうかを判断するための方法であって、プロテアソーム阻害治療剤および/または糖質コルチコイド治療剤に曝露される患者の腫瘍サンプルでの、表1A、表1B、表2A、表2Bまたは表3のいずれかに示すマーカーから選択される少なくとも1つの予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現を判断し、表1A、表1B、表2A、表2Bまたは表3のいずれかで確認されるマーカーの発現特性から、使用中の薬剤に対する非反応性が示される場合、処置を中断または変更することを含む、方法を提供するものである。
【0080】
本明細書で使用する場合、患者とは、癌処置のためのプロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療を受けている任意の被検体をいう。被検体は、治療薬を単独で用いるプロテアソーム阻害(ボルテゾミブまたはその他の関連薬剤など)治療および/または糖質コルチコイド(デキサメタゾンなど)治療を受けているヒトの患者であってもよい。被検体は、治療薬を別の薬剤(化学療法処置など)との併用で用いるプロテアソーム阻害(ボルテゾミブまたはその他の関連薬剤など)治療および/または糖質コルチコイド(デキサメタゾンなど)治療を受けているヒトの患者であってもよい。本発明はまた、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療を含む抗癌処置を受けている患者から取得する2種以上のサンプルを比較検討することを含むものである。一般に、治療を始める前に、患者から第1のサンプルを取得し、さらに処置中に1つまたは複数のサンプルを取得すると考えられる。こうした使用では、発現のベースラインを、治療に先立って判断し、次いで、治療の過程で、発現のベースライン状態における変化をモニターする。あるいは、処置中に2種以上のサンプルを逐次取得し、これを、処置前のベースラインサンプルなしで使用してもよい。こうした使用では、被検体から取得した第1のサンプルを、ある特定のマーカーまたはマーカーセットの発現が増加または低下しているかどうかを判断するためのベースラインとして用いる。
【0081】
一般に、治療処置の有効性をモニターする場合、患者の2つ以上のサンプルを調べる。別の態様では、少なくとも1つの処置前のサンプルを含め、3つ以上のサンプルを逐次取得し、これを使用する。
【0082】
本発明は、プロテアソームインヒビター治療レジメンによる処置を、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳房癌患者および卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎臓癌患者ならびに肝臓癌患者から選択される患者で、継続すべきかどうかを判断するための方法であって、プロテアソーム阻害治療レジメンの過程において異なる時間に、患者から2つ以上の腫瘍細胞のサンプルを取得し、続いて、この2つ以上のサンプルで、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認されるマーカーに対応する、1つまたは複数のマーカーの発現を評価し、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認される予測マーカーの発現特性から、処置の過程で、反応性の患者であることが示される場合、処置を継続することを含む、方法を提供するものである。こうした方法では、薬剤の存在下での予測マーカーの発現特性に照らして、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現特性から、反応性の増加または非反応性の低下が示される場合、プロテアソーム阻害治療剤およびレジメンを、患者を処置するのに適切なものと判断する。
【0083】
さらに、プロテアソームインヒビター治療レジメンによる処置を、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳房癌患者および卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎臓癌患者ならびに肝臓癌患者から選択される患者で、継続すべきかどうかを判断するための方法であって、抗癌治療処置の過程において異なる時間に、患者から2つ以上の腫瘍細胞のサンプルを取得し、続いて、この2つ以上のサンプルで、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認されるマーカーを含む予測マーカーセットの発現を評価し、処置の過程の発現に照らして、予測マーカーセットの発現特性から、反応性の増加または非反応性の低下が示される場合、処置を継続することを含む、方法を提供するものである。また、マーカーセットの発現特性から、処置の過程において反応性の低下および/または非反応性の増加が示される場合、処置を中断する。
【0084】
本発明は、糖質コルチコイド治療レジメンによる処置を、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳房癌患者および卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎臓癌患者ならびに肝臓癌患者から選択される患者で、継続すべきかどうかを判断するための方法であって、糖質コルチコイド治療レジメンの過程において異なる時間に、患者から2つ以上の腫瘍細胞のサンプルを取得し、続いて、この2つ以上のサンプルで、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認されるマーカーに対応する1つまたは複数のマーカーの発現を評価し、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認される予測マーカーの発現特性から、処置の過程において反応性の患者であることが示される場合、処置を継続することを含む、方法を提供するものである。こうした方法では、薬剤の存在下での予測マーカーの発現特性に照らして、予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現特性から、反応性の増加または非反応性の低下が示される場合、糖質コルチコイド治療レジメンを、患者を処置するのに適切なものと判断する。
【0085】
さらに、糖質コルチコイド治療レジメンによる処置を、多発性骨髄腫患者、リンパ腫患者、白血病患者、肺癌患者、乳房癌患者および卵巣癌患者、前立腺癌患者、結腸癌患者、腎臓癌患者ならびに肝臓癌患者から選択される患者で、継続すべきかどうかを判断するための方法であって、糖質コルチコイド治療レジメンの過程において異なる時間に、患者から2つ以上の腫瘍細胞のサンプルを取得し、続いて、この2つ以上のサンプルで、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3のいずれかで確認されるマーカーを含む予測マーカーセットの発現を評価し、処置の過程における発現に照らして、予測マーカーセットの発現特性から、反応性の増加または非反応性の低下が示される場合、処置を継続することを含む、方法を提供するものである。また、マーカーセットの発現特性から、処置の過程において反応性の低下および/または非反応性の増加が示される場合、処置を中断する。
【0086】
本発明の特定の態様では、本発明は、サンプルを用いた癌患者の処置および/または診断の方法に関連するものである。本発明の方法で使用する癌細胞の出所は、本発明の方法をどのように用いているかに基づき決定される。たとえば、患者の癌について、ある薬剤または薬剤の併用で処置できるかどうかを判断するために、本発明の方法を使用している場合、サンプルの好ましい出所は、患者の腫瘍から取得される癌細胞であると考えられ、たとえば、腫瘍生検(固形腫瘍または液体腫瘍など)、血液サンプル、血漿サンプル、尿サンプル、唾液サンプル、リンパサンプルまたはその他のサンプルなどを使用することができる。腫瘍から取得するサンプルを濃縮して、腫瘍細胞の解析の特異性を高めてもよい。分画遠心法、蛍光細胞選別解析(FACS)、基質付着とは別の増殖に基づく細胞単離、腫瘍マーカーに対する抗体など、選択薬剤との結合、さらに、その抗体と、そうして結合した腫瘍細胞とを固体支持体に付着させるなど、当該技術分野において周知の多様な方法を用いて、腫瘍細胞を濃縮することができる。あるいは、処置中の癌のタイプに類似した癌細胞系を定量してもよい。たとえば、多発性骨髄腫を処置している場合、骨髄腫細胞系を使用することができる。本発明の方法を、治療プロトコルの有効性について予測またはモニターするために使用している場合、出所としては、処置中の患者の組織サンプルまたは血液サンプルが好ましい。本発明の方法を、薬剤の活性、薬剤の有効性の判断または新規の治療薬もしくは併用剤の同定を行うために使用している場合、癌細胞系の細胞、動物モデルの腫瘍から単離された細胞など、どんな癌細胞も使用することができる。
【0087】
当業者であれば、本発明の方法で使用する適切な癌細胞を容易に選択し、取得することができる。癌細胞系の場合、国立癌研究所、NCI−60細胞などの出所が好ましい。患者から取得する癌細胞の場合、針生検などの標準的な生検方法を採用してもよい。
【0088】
本発明のマーカーの同定には、骨髄腫サンプルを使用した。さらに、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症(Waldenstroms macrogobulinemia)、脊髄形成異常症候群およびリンパ腫、白血病などのその他の血液癌ならびに種々の固形組織の腫瘍など、関連する血液細胞タイプの障害を含む、他の組織タイプで、マーカーの発現レベルを評価することができる。したがって、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトレーム症候群またはその他の白血病など、他の血液悪性腫瘍の細胞が、本発明の方法において有用となることが理解されるであろう。なおさらに、疾患の悪性度に加えて、固形腫瘍(肺、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓および肝臓など)におけるプロテアソーム阻害治療薬に対する反応性および非反応性を予測する予測マーカーも、本発明の方法において有用になり得るものである。
【0089】
好ましくは、使用するサンプルは、類似の腫瘍または対象の腫瘍と同じ組織起源の非癌性細胞に由来する。細胞源は、相対発現レベルのデータの使用に応じて選択される。たとえば、平均発現スコアを得るために、類似タイプの腫瘍を使用する場合、反応性または非反応性に関する極端なケースの同定が可能になる。正常な組織で確認される発現を平均発現スコアとして使用する場合、定量される反応性/非予測マーカーまたはマーカーセットが(正常な細胞と比べて)腫瘍特異的であるかどうかを確認する際に役立つ。こうしたその後の使用は、反応性マーカーもしくはマーカーセットまたは非予測マーカーまたはマーカーセットが標的マーカーまたはマーカーセットとして機能し得るかどうかを同定する際に特に重要である。加えて、より多くのデータが蓄積されると、発現の平均値を改定して、蓄積データに基づく相対的発現値を改善することができる。
【0090】
(検出アッセイ)
マーカーの発現を調べるには、遺伝子アレイ/チップ技術、RT−PCR、in−situハイブリダイゼーション、免疫組織化学法、イムノブロット法、FISH(蛍光(flouresence)in−situハイブリダイゼーション)、FACS解析、ノーザンブロット法、サザンブロット法または細胞遺伝学的解析など、種々の方法が利用できる。当業者であれば、マーカー(単数または複数)の性質、組織サンプルおよび対象の疾患に基づき、これらの方法または他の適切で利用可能な方法から選択を行うことができる。症例が異なる、すなわち、たとえば、固形腫瘍タイプまたは血液腫瘍タイプでは、別の方法または複数の方法の組み合わせが適切な場合もある。
【0091】
本発明の特定の態様では、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3で確認される予測マーカー(単数または複数)の発現を、予測マーカーまたはマーカーセットに対応するmRNAを測定することによって検出する。さらに本発明の別の態様では、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3で確認されるマーカーまたはマーカーセットに対応するマーカーの発現を、マーカーまたはマーカーセットに対応するタンパク質を測定することによって検出する。
【0092】
生物学的サンプル中の本発明のマーカーに対応する核酸またはポリペプチドの有無を検出するための方法の実施例は、被験者の生物学的サンプル(腫瘍サンプルなど)の取得と、生物学的サンプルとポリペプチドまたは核酸(mRNA、ゲノムDNAまたはcDNAなど)を検出可能な化合物または薬剤との接触とに関連するものである。したがって、本発明の検出方法を用いて、たとえば、インビトロおよびインビボでの生物学的サンプル中のmRNA、タンパク質、cDNAまたはゲノムDNAを検出することができる。たとえば、mRNA検出のためのインビトロ技法には、GLP認定の実験室条件下でのノーザンハイブリダイゼーション。in situハイブリダイゼーションおよびTaqManアッセイ(アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems))がある。本発明のマーカーに対応するポリペプチドを検出するのためのインビトロ技法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫沈降および免疫蛍光がある。ゲノムDNAを検出するためのインビトロ技法には、サザンハイブリダイゼーションがある。さらに、本発明のマーカーに対応するポリペプチドを検出するためのインビボ技法には、ポリペプチドに対して方向付けられる標識抗体の被検体への導入がある。たとえば、標準的なイメージング技法によって、この抗体を、被検体における存在および位置を検出可能な放射性マーカーで標識することができる。
【0093】
原則的に、こうした診断アッセイおよび予後アッセイでは、マーカーを含むことがあるサンプルまたは反応混合物と、プローブとを調製する必要があり、この調製は、適切な条件下で、マーカーとプローブが相互作用して結合することにより、反応混合物中で除去および/または検出され得る複合体を形成するのに十分な時間をかけて行うものである。これらのアッセイは、多様な方法で行うことができる。
【0094】
たとえば、こうしたアッセイを実施する方法の一つは、マーカーまたはプローブを、基質ともいう固相支持体にアンカーし、反応の最終段階で固相にアンカーされた標的マーカー/プローブの複合体を検出するものである。こうした方法の一例では、マーカーの存在および/または濃度に関して定量される予定の被検体のサンプルを、キャリアまたは固相支持体にアンカーしてもよい。別の例では、逆の状況が考えられ、この場合、プローブを固相にアンカーしてもよく、被検体のサンプルを、アッセイの非アンカー成分として反応させることもできる。こうした例の一例には、サンプルの発現解析用にアンカーされる予測マーカーまたはマーカーセットを含むアレイまたはチップの使用が含まれる。
【0095】
アッセイ成分を固相にアンカーするには、多くの確立した方法がある。こうした方法として、ビオチンとストレプトアビジンとのコンジュゲーションを介して固定化されるマーカー分子またはプローブ分子などがあるが、これに限定されるものではない。こうしたビオチン化アッセイ成分を、当該技術分野において周知の技法(ビオチン化キット、ピアスケミカル(Pierce Chemicals)、イリノイ州ロックフォードなど)を用いることにより、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシニミド)から調製したり、ストレプトアビジンコート済96ウェルプレート(ピアスケミカル(Pierce Chemical))のウェルに固定化したりしてもよい。特定の態様では、固定化されたアッセイ成分の表面を、予め調製し、保管することもできる。こうしたアッセイに好適なその他のキャリアまたは固相支持体には、マーカーまたはプローブが属する分子クラスに結合可能であれば、どんな物質も含まれる。よく知られた支持体またはキャリアには、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然セルロースおよび変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩ならびにマグネタイトなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0096】
上記のアプローチによるアッセイを実施するには、非固定化成分を固相に加え、この第2の成分を固相にアンカーする。反応の終了後、形成された任意の複合体が固相上に固定化された状態で維持されるような条件下で、複合体を形成していない成分を除処(洗浄などによる)することができる。固相にアンカーされたマーカー/プローブ複合体の検出については、本明細書で概説する多くの方法で実行することができる。一例では、プローブが非アンカーのアッセイ成分である場合、本明細書で論じ、当業者によく知られている検出可能な標識を用いて、直接間接を問わず、アッセイの検出および読み出しのために標識することができる。
【0097】
また、どちらの成分(マーカーまたはプローブ)も改めて操作または標識化することなく、たとえば、蛍光エネルギー移動(たとえば、Lakowiczら,米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulos,ら,米国特許第4,868,103号を参照のこと)という手法を利用して、マーカー/プローブの複合体形成を直接検出することもできる。第1の「ドナー」分子上にフルオロフォア標識を選択して、適切な波長の入射光により励起すると、その放射蛍光エネルギーを第2の「アクセプター」分子上の蛍光標識が吸収するようにして、次に、この標識が吸収したエネルギーを手がかりに、蛍光を発することができる。あるいは、「ドナー」タンパク質分子が、単純にトリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを利用してもよい。「アクセプター」分子の標識と、「ドナー」の標識とを識別できるように、異なる光の波長を放射する標識を選択する。標識間のエネルギー移動の効率は、この分子を隔てる距離に関係しているため、分子間の空間的関係を判定してもよい。分子間に結合が生じる状況では、このアッセイにおける「アクセプター」分子標識の蛍光発光は、最大になるはずである。FET結合現象については、従来技術においてよく知られた標準的な蛍光検出手段(蛍光光度計など用いる)により、手軽に測定することができる。
【0098】
別の実施例では、どちらのアッセイ成分(プローブまたはマーカー)も標識することなく、リアルタイムでの生体分子相互作用解析(BIA)などの技術を用いることで、プローブがマーカーを認識できるかどうかの判断を実行することができる(Sjolander,S.およびUrbaniczky,C.,1991,Anal.Chem.63:2338〜2345およびSzaboら,1995,Curr.Opin.Struct.Biol.5:699〜705などを参照のこと)。本明細書で使用する場合、「BIA」または「表面プラズモン共鳴」とは、どの反応体(BIAcoreなど)も標識せずに、リアルタイムで生体特異的相互作用を研究するための技術をいう。結合表面の質量に変化(結合現象を示唆)が起こると、表面付近の光の屈折率に変化が生じ(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)、検出可能なシグナルが生成されるため、これを、生体分子間のリアルタイムの反応を示すものとして使用することができる。
【0099】
あるいは、別の実施例では、マーカーおよびプローブを液相に加えた溶質として用いることで、類似の診断および予後アッセイを実施してもよい。こうしたアッセイでは、いくつかある標準的な技法のいずれかで、複合体のマーカーおよびプローブを、複合体を形成していない成分と分離する。標準的な技法には、分画遠心法、クロマトグラフィ、電気泳動および免疫沈降があるが、これに限定されるものではない。分画遠心法では、複合体の様々な大きさおよび密度に応じて沈降平衡が異なるため、一連の遠心ステップを通じて、マーカー/プローブの複合体を、複合体を形成していないアッセイ成分と分離することができる(たとえば、Rivas,G.,およびMinton,A.P.,1993,Trends Biochem Sci.18(8):284〜7を参照のこと)。また、標準的なクロマトグラフィの技法を利用しても、複合体分子と、複合体を形成していない分子とを分離することができる。たとえば、ゲル濾過クロマトグラフィで、大きさに応じて分子を分離し、カラムフォーマットに適切なゲル濾過樹脂を利用することで、たとえば、相対的に大きな複合体と、相対的に小さな複合体を形成していない成分とを分離することができる。同様に、マーカー/プローブ複合体の電荷特性が複合体を形成していない成分と比べて相対的に異なることを活用して、たとえば、イオン交換クロマトグラフィ樹脂の利用により、複合体と複合体を形成していない成分とを識別することができる。こうした樹脂およびクロマトグラフィ技法は、当業者にはよく知られている(Heegaard,N.H.,1998,J.Mol.Recognit.Winter 11(1〜6):141〜8;Hage,D.S.およびTweed,S.A.、J Chromatogr B Biomed Sci Appl 1997 Oct 10;699(1〜2):499〜525などを参照のこと)。また、ゲル電気泳動を採用しても、複合体アッセイ成分と複合体を非結合成分とを分離してもよい(Ausubelら,編,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,1987〜1999などを参照のこと)。この手法では、タンパク質または核酸の複合体を、たとえば、大きさまたは電荷に基づき分離する。電気泳動プロセスにおける結合相互作用を維持するには、非変性ゲルのマトリックス材料と還元剤のない条件が、一般に好ましい。特定のアッセイおよびその成分に対する適切な条件は、当業者によく知られることになる。
【0100】
当該技術分野において周知の方法を用いて、マーカーに対応するmRNAのレベルを、インサイツフォーマットとインビトロフォーマットと双方により、生物学的サンプル中で判断することができる。「生物学的サンプル」という語には、被検体から単離された組織、細胞、体液およびその分離株ならびに被検体内に存在する組織、細胞および液体を含めることを意図している。多くの発現の検出方法では、単離されたRNAを使用する。インビトロ方法の場合、mRNAの単離に不利な選択をしない、任意のRNA単離手法を利用して、腫瘍細胞からRNAを精製してもよい(Ausubelら,編,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York 1987〜1999などを参照のこと)。さらに、たとえば、チョムゼンスキー(Chomczynski)のシングルステップRNA単離プロセスなど、当業者によく知られている技法を用いても、組織サンプルの多くを、容易に処理することができる(1989,米国特許第4,843,155号)。
【0101】
mRNAレベルを検出するための診断方法の一つは、単離されたmRNAと、検出中の遺伝子がコードするmRNAとハイブリッド形成できる核酸分子(プローブ)との接触を伴うものである。核酸プローブは、たとえば、長さが少なくともヌクレオチド7、15、30、50、100、250または500個のオリゴヌクレオチドであり、ストリンジェントな条件下で、本発明のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAと特異的にハイブリッド形成するのに十分であるような全長cDNAまたはその一部であってもよい。本発明の診断アッセイで使用されるその他の好適なプローブについては、本明細書に記載されている。プローブによりmRNAのハイブリダイゼーションが行われると、対象のマーカーが発現されていることが分かる。
【0102】
一フォーマットでは、mRNAを固体表面上に固定化し、たとえば、この単離されたmRNAをアガロースゲル上で走らせ、mRNAをゲルからニトロセルロースなどの膜に移動させることで、プローブと接触させる。別のフォーマットでは、プローブ(単数または複数)を固体表面上に固定化し、たとえば、アフィメトリクス(Affymetrix)遺伝子チップアレイで、mRNAをプローブ(単数または複数)と接触させる。当業者であれば、本発明のマーカーがコードするmRNAのレベルを検出する際に使用する既知のmRNA検出方法を容易に適合させることができる。
【0103】
サンプル中で、本発明のマーカーに対応するmRNAレベルを判断するための別の方法は、核酸増幅のプロセスを伴うものであり、たとえば、rtPCR(Mullis,1987,米国特許第4,683,202号に記載の実験の記述)、リガーゼ連鎖反応(Barany,1991,Proc.Natl.Acad.Sci USA,88:189〜193)、自己支持配列複製(Guatelliら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci USA 87:1874〜1878)、転写増幅システム(Kwohら,1989,Proc.Natl.Acad.Sci USA 86:1173〜1177)、Qベータレプリカーゼ(Lizardiら,1988,Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardiら,米国特許第5,854,033号)または他の何らかの核酸増幅方法などによるもので、これに続き、当業者によく知られている技法を用いて、増幅分子を検出する。これらの検出スキームは、核酸分子の数が極めて少数である場合、そうした分子の検出で特に有用である。本明細書で使用する場合、増幅プライマーを、遺伝子の5’または3’領域(それぞれプラス鎖とマイナス鎖、あるいは、その逆)にアニールし、中間に短い領域を含むことができる一対の核酸分子と定義する。一般に、増幅プライマーの長さは、ヌクレオチド約10〜30個であり、長さがヌクレオチド約50〜200個の領域に隣接している。適切な条件下で適切な試薬を用いれば、こうしたプライマーにより、プライマーが隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子を増幅することができる。
【0104】
インサイツの方法では、検出に先立ち、mRNAを癌細胞から単離する必要がない。こうした方法では、既知の組織学的方法を用いて、細胞または組織サンプルを調製/処理する。次いで、一般には、そのサンプルをスライドガラスなどの支持体に固定化し、次いで、マーカーをコードするmRNAとハイブリッド形成できるプローブと接触させる。
【0105】
マーカーの絶対発現レベルに基づき判断する代わりに、正規化したマーカーの発現レベルに基づき、判断を行ってもよい。発現レベルについては、その発現と、恒常的に発現されるハウスキーピング遺伝子など、マーカーではない参照遺伝子の発現とを比較検討し、マーカーの絶対発現レベルを調整することで、正規化される。正規化に好適な遺伝子として、アクチン遺伝子などのハウスキーピング遺伝子または上皮細胞に特異的な遺伝子などがある。こうした正規化を行うことで、患者サンプルなどのあるサンプル中の発現レベルと、非癌性サンプルなどの別のサンプルとの比較検討、または出所が異なるサンプル間の比較検討が可能になる。
【0106】
あるいは、この発現レベルを、相対発現レベルとしてもよい。マーカーの相対発現レベルを判断するには、対象のサンプルの発現レベルを判断する前に、マーカーの発現レベルを、正常な分離株と癌細胞分離株との10種以上のサンプル、好ましくは50種以上のサンプルで判断する。比較的多くのサンプルで定量されるマーカーおよびマーカーセットそれぞれの平均発現レベルを判断し、これをマーカーに対するベースライン発現レベルとして使用する。次いで、被検サンプル向けに判断されるマーカーの発現レベル(絶対発現レベル)を、そのマーカーに対して得られる発現の平均値で除す。これが、相対発現レベルとなる。
【0107】
本発明の別の態様では、マーカーに対応するポリペプチドを検出する。本発明のポリペプチドの検出に好ましい薬剤として、本発明のマーカーに対応するポリペプチドと結合可能な抗体があり、好ましくは、検出可能な標識を持つ抗体である。抗体は、ポリクローナルであってもよく、一層好ましくは、モノクローナルである。無傷の抗体またはそのフラグメント(FabまたはF(ab’)
2など)を使用してもよい。プローブまたは抗体に関する「標識された」という語は、検出可能な物質とプローブまたは抗体とのカプリング(すなわち、物理的な結合)による、プローブまたは抗体の直接標識に加え、直接標識される別の試薬との反応度による、プローブまたは抗体の間接標識を包含することを意図している。間接標識の例として、蛍光標識二次抗体を用いた一次抗体の検出および蛍光標識ストレプトアビジンで検出できるような、ビオチンによるDNAプローブの末端標識などがある。
【0108】
サンプルが、一定の抗体と結合するタンパク質を含むかどうかを判断するには、多様なフォーマットを採用することができる。そうしたフォーマットの例として、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット解析および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)があるが、これに限定されるものではない。当業者であれば、癌細胞を含むサンプルが本発明のマーカーを発現するかどうかを判断する際に使用する、タンパク質/抗体の既知の検出方法を容易に適合させることができる。
【0109】
一フォーマットでは、発現タンパク質を検出するウエスタンブロット法または免疫蛍光法などの方法に、抗体または抗体フラグメントを用いてもよい。そうした使用では、一般に、抗体またはタンパク質のどちらかを固体支持体上に固定化することが好ましい。好適な固相支持体またはキャリアには、抗原または抗体と結合可能であれば、どんな支持体も含まれる。よく知られた支持体またはキャリアには、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩ならびにマグネタイトなどがある。
【0110】
当業者であれば、抗体または抗原に結合する、他の多くの好適なキャリアを理解し、本発明で使用するそうした支持体を適合させることができるであろう。たとえば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動で、腫瘍細胞から単離されたタンパク質を走らせ、ニトロセルロースなどの固相支持体上に固定化することができる。次いで、この支持体を、好適な緩衝液で洗浄し、続いて、検出可能な標識抗体により処置してもよい。次いで、この固相支持体に、好適な緩衝液で2度目の洗浄を行い、非結合抗体を除去することができる。次いで、固体支持体上の結合レベル量を、従来の手段によって検出してもよい。
【0111】
マーカーに対応するポリペプチドのレベルを判断するための別の方法として、質量分析法がある。たとえば、無傷のタンパク質またはトリプシンペプチドなどのペプチドを、1つまたは複数のポリペプチドマーカーを含む腫瘍サンプル、血液、血漿、尿等のサンプルから解析することができる。この方法は、この方法の感受性を高める目的で、血清アルブミンなどの大量タンパク質の量を減少させるサンプル処置をさらに含んでもよい。たとえば、液体クロマトグラフィを用いて、サンプルの複数の部分を、質量分析法により個別に解析できるよう、サンプルを分画してもよい。このステップについては、別々のシステムで実施してもよく、あるいは、液体クロマトグラフィ/質量分析法システムを組み合わせて実施してもよい(LC/MS、たとえば、Liao,らArthritis Rheum.50:3792〜3803(2004)を参照のこと)。質量分析法はまた、タンデム型(MS/MS)形態であってもよい。1つまたは複数のスキャンにより、タンパク質またはペプチドの混合物の荷電状態分布を入手し、LC/MSシステムの滞留時間および質量対電荷比(m/z)を用いるなど、統計方法によって解析して、プロテアソーム阻害および/または糖質コルチコイド治療に対して反応性であるか、または非反応性である患者のサンプルで、統計的に有意なレベルで差次的に発現するタンパク質を同定してもよい。使用できる質量分析計の例として、イオントラップシステム(サーモフィニガン(ThermoFinnigan)、カリフォルニア州、サンノゼ)または四重極飛行時間型質量分析計(アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)、カリフォルニア州、フォスターシティ)がある。この方法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法などのペプチドマスフィンガープリント法のステップをさらに含んでもよい。この方法は、1つまたは複数のトリプシンペプチドの配列決定のステップをさらに含んでもよい。この方法の結果を用いて、国立バイオテクノロジー情報センター(メリーランド州、ベセズダ)またはスイスバイオインフォマティクス研究所(スイス、ジュネーブ)などで保管されている一次配列データベースから、および質量分析法のトリプシンペプチドm/z基準ピークに基づき、タンパク質を同定することができる。
【0112】
(電子装置読み取り可能なアレイ)
本発明の少なくとも1つの予測マーカーを含む読み取り可能なアレイを備えた電子装置は、本発明の方法と同時に使用することも意図されている。本明細書で使用する場合、「電子装置読み取り可能な媒体」とは、電子装置で直接読み取り、アクセスできるデータまたは情報を保管、保有または収容するための任意の好適な媒体をいう。本明細書で使用する場合、「電子装置」という語には、任意の好適な計算装置もしくは処理装置またはデータもしくは情報を保管するために構成または適合されたその他の機器を含めることを意図している。本発明の使用および記録情報のモニタリングに好適な電子装置の例として、独立型の計算装置;ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)インターネット、イントラネットおよびエクストラネットなどのネットワーク;パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、ポケットベル等などの電子機器;ならびにローカル処理システムおよび分散処理システムなどがある。本明細書で使用する場合、「記録された」とは、電子装置読み取り可能な媒体に情報を保管または暗号化することをいう。当業者であれば、本発明のマーカーを含む製品を製造する情報を既知の媒体に記録するための、現在知られている方法を容易に採用することができる。
【0113】
たとえば、遺伝子発現の判定(RNA検出、タンパク質検出など)か、代謝産物産生の判定によるサンプルの判定などで、マイクロアレイシステムが当該技術分野において周知であり、使用されている。本発明に従って使用されるマイクロアレイは、本明細書に記載するような治療レジメンに対する反応および/または非反応を特徴とする、本発明の予測マーカー(単数または複数)の1つまたは複数のプローブを含むものである。一実施形態では、マイクロアレイは、反応性の患者における発現の増加を実証するマーカーと、患者の非反応を実証する遺伝子とからなる群から選択される、1つまたは複数のマーカーに対応する1つまたは複数のプローブを含むものである。マイクロアレイの作製に関する多くの様々な構成および方法は、当業者に公知であり、たとえば、米国特許第5,242,974号;第5,384,261号;第5,405,783号;第5,412,087号;第5,424,186号;第5,429,807号;第5,436,327号;第5,445,934号;第5,556,752号;第5,405,783号;第5,412,087号;第5,424,186号;第5,429,807号;第5,436,327号;第5,472,672号;第5,527,681号;第5,529,756号;第5,545,531号;第5,554,501号;第5,561,071号;第5,571,639号;第5,593,839号;第5,624,711号;第5,700,637号;第5,744,305号;第5,770,456号;第5,770,722号;第5,837,832号;第5,856,101号;第5,874,219号;第5,885,837号;第5,919,523号;第5981185号;第6,022,963号;第6,077,674号;第6,156,501号;第6261776号;第6346413号;第6440677号;第6451536号;第6576424号;第6610482号;第5,143,854号;第5,288,644号;第5,324,633号;第5,432,049号;第5,470,710号;第5,492,806号;第5,503,980号;第5,510,270号;第5,525,464号;第5,547,839号;第5,580,732号;第5,661,028号;第5,848,659号;および第5,874,219号;;Shena,ら,Tibtech 16:301,1998;Duggan,ら,Nat.Genet.21:10,1999;Bowtell,ら,Nat.Genet.21:25,1999;Lipshutz,ら,21 Nature Genet.20〜24,1999;Blanchard,ら,11 Biosensors and Bioelectronics,687〜90,1996; Maskos,ら,21 Nucleic Acids Res.4663〜69,1993;Hughes,ら,Nat.Biotechol.19:342,2001;に開示されており、それぞれを本明細書に援用する。組織マイクロアレイについては、タンパク質同定のために使用することができる(HansらBlood 103:275〜282(2004)を参照のこと)。ファージ−エピトープマイクロアレイを用いて、あるタンパク質または複数のタンパク質が患者の自己抗体を誘発するかどうかに基づき、サンプル中の1つまたは複数のタンパク質を同定してもよい(BradfordらUrol.Oncol.24:237〜242(2006))。
【0114】
したがって、マイクロアレイは、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3で確認される、1つまたは複数の予測マーカーに対応する、1つまたは複数のプローブを含むものである。マイクロアレイは、たとえば、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療に対する患者の反応を特徴とする、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個または少なくとも1000個の本発明の予測マーカーに対応する、プローブを含んでもよい。マイクロアレイは、本明細書に示すような1つまたは複数の予測マーカーに対応するプローブを含んでもよい。なおさらに、マイクロアレイは、本明細書に示し、かつ、本明細書に示す方法に従って選択または編集され得る完全なマーカーセットを含んでもよい。マイクロアレイを用いて、このアレイの1つまたは複数の予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現を定量することができる。一例では、アレイを用いて、サンプル中の2個以上の予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現を定量し、このアレイのマーカーの発現特性を確認してもよい。この仕方では、発現に関して、最大約44,000個のマーカーを同時に定量することができる。このため、特性が明らかにされ、一連のマーカーが1つまたは複数のサンプルで特異的に発現されることを示すことができる。なおさらに、こうして、特性が明らかにされ、1つまたは複数の治療剤(糖質コルチコイド治療またはプロテアソーム阻害治療など)に対する反応性を判定することもできる。
【0115】
このアレイはまた、正常な(サンプルなど)細胞および異常な(腫瘍など)細胞における1つまたは複数のマーカーの差次的発現パターンを確認するにも有用である。これは、反応性および非反応性の患者であることを同定しやすくするツールとして機能し得る一連の予測マーカーを提供するものである。さらに、このアレイは、参照発現レベルに対する参照マーカーの発現を確認するのに有用である。別の実施例では、このアレイを用いて、アレイの1つまたは複数の予測マーカーの発現の時間経過をモニターすることができる。
【0116】
こうした定性的な判断に加えて、本発明では、マーカー発現の定量化が可能となる。したがって、サンプルでの発現レベルを基準に、マーカーセットの示唆する内容または反応性および非反応性が示唆する内容に基づき、予測マーカーを分類することができる。これは、たとえば、本明細書に記載される方法に従って発現レベルをスコア化することで、サンプルの反応性または非反応の示唆する内容を確認する際に有用である。
【0117】
このアレイはまた、あるマーカーの発現が同一細胞または別の細胞における他の予測マーカーの発現に与える影響を確認する場合に有用である。これは、たとえば、プロテアソーム阻害レジメンおよび/または糖質コルチコイド治療レジメンが非反応性である場合、治療的介入のために分子標的の別の選択肢を提供するものである。
【0118】
(試薬およびキット)
本発明はまた、サンプル(腫瘍サンプルなど)中の本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットを包含するものである。このキットを用いて、被検体が抗癌治療レジメンに対して反応または非反応になりやすいかどうか判断することができる。別の態様では、本発明は、サンプルにおける化合物または治療上の有効性をモニターするための検査キットを提供するものである。たとえば、このキットは、生物学的サンプルにおける本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたはポリペプチドをコードするmRNAを検出可能な標識プローブと、サンプルにおけるポリペプチドまたはmRNAの量を判断するための手段(ポリペプチド、あるいは、ポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAに結合するオリゴヌクレオチドプローブを結合させる抗体など)とを含んでもよい。キットには、本明細書提供のキットの使用およびキットを使用して得られた結果の解釈に関する説明書と、本明細書記載の方法で使用するプローブの調製のための付加的な試薬と、単独の、あるいは、本明細書提供のプローブ(単数または複数)にコンジュゲートされる検出可能な標識とをさらに含んでもよい。
【0119】
抗体をベースにしたキットの場合、キットは、たとえば、(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合する第1の抗体(固体支持体に付着するなど)と、任意に(2)ポリペプチドまたは第1の抗体のどちらかに結合し、検出可能な標識にコンジュゲートされる第2の別の抗体とを含んでもよい。
【0120】
オリゴヌクレオチドをベースにしたキットの場合、キットは、たとえば、(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸配列とハイブリッド形成する、検出可能に標識されたオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチド、(2)本発明のマーカーに対応する核酸分子を増幅させるのに有用な一対のプライマーまたは(3)本発明のポリペプチド予測マーカーをコードする少なくとも2つの核酸配列とハイブリッド形成するオリゴヌクレオチドを含むマーカーセットを含んでもよい。キットはまた、緩衝剤、防腐剤またはタンパク質安定化剤などを含んでもよい。キットは、検出可能な標識(酵素または基質など)を検出するのに必要な成分をさらに含んでもよい。マーカーセットの場合、キットは、予測マーカーの検出で使用するマーカーセットアレイまたはチップを含んでもよい。このキットはまた、定量して、被検サンプルと比較検討できる、ある参照サンプルまたは一連の参照サンプルを含んでもよい。個々の容器内に、キットの各成分を入れてもよく、種々の容器はすべて、キットを使用して実施したアッセイ結果の解釈に関する説明書と共に、1つにパッケージ化されていてもよい。
【0121】
(治療薬)
本発明のマーカーおよびマーカーセットは一般に、プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療レジメンに対して、反応性または非反応性(感受性または抵抗性)のある患者を予測するものである。
【0122】
本発明の方法で使用する治療薬は、プロテオソームインヒビターと呼ばれるクラスの治療薬を含むものである。「プロテアソームインヒビター」とは、20Sまたは26Sプロテアソームまたはその活性を直接的または間接的に阻害する任意の物質を意味するものとする。好ましくは、こうした阻害は特異的であり、すなわち、プロテアソームインヒビターは、無関係の生物学的効果を新たに引き起こすのに必要とされるインヒビター濃度よりも低い濃度でプロテアソーム活性を阻害するものである。好ましくは、プロテアソーム阻害に必要なプロテアソームインヒビター濃度は、無関係の生物学的効果を引き起こすのに必要とされる濃度の少なくとも2分の1であり、一層好ましくは少なくとも5分の1であり、さらに一層好ましくは少なくとも10分の1であり、最も好ましくは少なくとも20分の1である。本発明のプロテアソームインヒビター化合物は、患者の腫瘍増殖(多発性骨髄腫の腫瘍増殖、本明細書でさらに詳述するようなその他の血液腫瘍または固形腫瘍など)の阻害に有用である化合物である。プロテアソームインヒビターにはまた、この化合物の薬学的に許容される塩を含めることを意図している。
【0123】
プロテアソーム阻害治療は一般に、細胞内のプロテアソーム活性を阻害する薬剤を少なくとも含むものであり、付加的な治療薬を含んでもよい。本発明の特定の応用例では、本発明の方法で用いられる薬剤は、プロテアソームインヒビターである。プロテオソームインヒビターの一例については、過去に少なくとも2度の治療を受けたことがあり、前回の治療で疾患の進行が実証されている多発性骨髄腫患者の処置として認められているが、現在、さらなる裏付けを目指して臨床試験の実施中であり、ボルテゾミブである。プロテアソーム阻害治療レジメンはまた、化学療法剤などの付加的な治療薬を含んでもよい。伝統的な化学療法剤の例の一部を表Aに示す。プロテアソーム阻害治療では、これらの化学療法剤に代わり、あるいは、これらの化学療法剤と併用して、より新しいクラスの化学療法剤を使用してもよい。
【0124】
本明細書に記載する例では、プロテアソームインヒビターN−ピラジンカルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、ボルテゾミブ((VELCADE(商標));旧称MNL341またはPS−341)を使用する必要がある。「プロテアソームインヒビター」という言葉には、ボルテゾミブ、ボルテゾミブおよび/またはボルテゾミブの類縁体に構造的に類似した化合物を含めることを意図している。「プロテアソームインヒビター」はまた、「擬態」を含んでもよい。「擬態」には、構造的にはボルテゾミブに類似していないが、ボルテゾミブの治療活性を模倣し得る化合物または構造的に類似した生体内化合物を含めることを意図している。
【0125】
本発明の実施に使用するプロテアソームインヒビターは、その全体をそれぞれ本明細書に援用する、Adamsら、米国特許第5,780,454号(1998)、米国特許第6,066,730号(2000)、米国特許第6,083,903号(2000)、米国特許第6,548,668号(2003)およびSimanら、WO 91/13904号で開示されたような付加的なペプチドボロン酸を含み、そこで開示された化合物および製剤もすべて含むものである。好ましくは、本発明で使用するボロン酸化合物は、N−(4−モルホリン)カルボニル−β−(1−ナフチル)−L−アラニン−L−ロイシンボロン酸;N−(8−キノリン)スルホニル−β−(1−ナフチル)−L−アラニン−L−アラニン−L−ロイシンボロン酸;N−(2−ピラジン)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸およびN−(4−モルホリン)カルボニル−[O−(2−ピリジルメチル)]−L−チロシン−L−ロイシンボロン酸からなる群から選択される。
【0126】
さらに、プロテアソームインヒビターは、その全体をそれぞれ本明細書に援用する、Steinら、米国特許第5,693,617号(1997)および1995年9月21日公開の国際特許公開第WO 95/24914号およびSimanらによる1991年9月19日公開のWO 91/13904号;Iqbalら、J.Med.Chem.38:2276〜2277(1995)、ならびにBougetら、Bioorg Med Chem 17:4881〜4889(2003)で開示されたようなペプチドアルデヒドプロテアソームインヒビターを含み、そこで開示された化合物および製剤もすべて含むものである。
【0127】
さらに、プロテアソームインヒビターは、その全体をそれぞれ本明細書に援用する、Fentanyら,米国特許第5,756,764号(1998)および米国特許第6,147,223号(2000),Schreiberら、米国特許第6,645,999号(2003)およびFenteanyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91:3358で開示されているラクタシスチンおよびラクタシクスチン類縁体を含むものであり、そこで開示された化合物および製剤もすべて含むものである。
【0128】
さらに、合成ペプチドビニルスルホンプロテアソームインヒビターおよびエポキシケトンプロテアソームインヒビターについても、すでに開示されており、本発明の方法において有用なものである。その全体をそれぞれ本明細書に援用する、Bogyoら,Proc.Natl.Acad.Sci.94:6629(1997);Spaltensteinet al.Tetrahedron Lett.37:1343(1996);Meng L,Proc.Natl.Acad Sci 96:10403(1999);およびMeng LH,Cancer Res 59:2798(1999)などを参照されたい。
【0129】
なおさらに、天然由来の化合物は、最近、プロテアソーム阻害活性を有することが知られており、本発明の方法に使用してもよい。たとえば、TMC−95A、環状ペプチドまたはグリオトキシン、双方の菌代謝物、あるいは、緑茶に含まれるポリフェノール化合物については、プロテアソームインヒビターと確認されている。その全体をそれぞれ本明細書に援用する、Koguchi Y,Antibiot(Tokyo)53:105.(2000);Kroll M,Chem Biol 6:689(1999);およびNam S,J.Biol Chem 276:13322(2001)などを参照されたい。
【0130】
本発明の方法で使用する付加的な治療薬は、糖質コルチコイドステロイドを含む、既知のクラスの治療薬を含むものである。糖質コルチコイド治療は一般に、少なくとも1つの糖質コルチコイド剤(デキサメタゾンなど)を含む。本発明の特定の応用例では、本発明の方法で用いられる薬剤は、糖質コルチコイド剤である。多発性骨髄腫患者およびその他の癌治療剤での処置に用いられる糖質コルチコイドの一例がデキサメタゾンである。血液および固形腫瘍の併用治療の処置で用いられる付加的な糖質コルチコイドには、ヒドロコルチゾン、プレドイゾロン、プレドニゾンおよびトリアムシノロンが含まれる。糖質コルチコイド治療レジメンについては、単独で用いてもよく、あるいは、付加的な化学療法剤と同時に用いてもよい。化学療法剤は、当該技術分野において周知であり、本明細書でさらに詳述する。化学療法剤の例を表Aに示す。プロテアソーム阻害治療の場合と同様、新しいクラスの癌治療剤が開発されるのに伴い、これを、糖質コルチコイド治療レジメンと併用することができる。最後に、本発明の方法は、他の薬剤を使用しない、または追加の薬剤と同時の、プロテアソーム阻害治療と糖質コルチコイド治療との併用を含むものである。
【0131】
一態様では、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび/または表3のいずれかに記載の1つまたは複数のマーカーを用いて、患者に反応を引き起こす処置レジメンで使用する候補薬剤を同定することができる。たとえば、この方法を用いると、プロテアソームインヒビターとして有用な薬剤または薬剤の併用を同定することができる。別の例では、この方法を用いると、糖質コルチコイドの薬剤または併用を同定することができる。別の例では、この方法を用いると、現在の治療剤に対して非反応性になる可能性が高い患者団を同定し、したがって、非反応性の患者のまだ対処されてないニーズを満たすことを目指して、ドラッグの臨床試験に加えるべき望ましい候補を同定することができる。たとえば、ボルテゾミブに対する非反応性と関係するマーカーまたはマーカーセットを用いて、このマーカーまたはマーカーセットを発現する能力を備えた患者または検査システムを同定してもよい。この方法を用いると、そうした患者または検査システムで反応を示す候補薬剤を同定することができる。この方法では、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび/または表3のいずれかに記載の、あるマーカーまたは複数のマーカーを発現する能力がある腫瘍細胞などの細胞を含むアッセイ組成物を、たとえば、被検薬がマーカーのレベルに影響を及ぼす程度の時間、被検薬と接触させ、マーカーのレベルを検出して、そのレベルと、既知のプロテアソームインヒビター(ボルテゾミブなど)もしくは糖質コルチコイド(デキサメタゾンなど)と接触した細胞または正常な細胞などの参照細胞のレベルとを比較検討して、この被検薬により、反応性の患者に特有の、マーカーまたは複数のマーカーの有益な発現レベルが生じる場合、この被検薬を、プロテアソームインヒビターまたは糖質コルチコイド候補の薬剤として同定する。逆に、この方法で使用して、非反応性の患者に特有の有益な発現レベルが生じた場合、この被検薬を候補薬剤として同定することはできない。アッセイ組成物は、血液癌(多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等など)または(肺、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓または肝臓などにおける)固形腫瘍の癌などの癌患者から単離された腫瘍細胞を含んでもよい。あるいは、アッセイ組成物は、腫瘍細胞系を含んでもよい。この細胞を含むこの組成物は、免疫無防備状態のマウスまたは皮下もしくは腹水などの異所性の腫瘍を持つラット、ヒト腫瘍など、生体内腫瘍モデルであってもよい。アッセイ組成物は、ヒト被検体であってもよい。
【0132】
上記に加えて、プロテアソーム阻害治療レジメンおよび/または糖質コルチコイド治療レジメンという言葉は、プロテアソーム阻害剤に加えて、化学療法剤など、付加的な薬剤を含んでもよい。「化学療法剤」には、増殖性細胞または組織の増殖が望ましくない場合、そうした細胞または組織の増殖を阻害する化学試薬を含めることを意図している。化学療法剤には、Ara AC、5−FUおよびメトトレキセートなどの代謝拮抗剤、タキサン、ビンブラスチンおよびビンクリスチンなどの有糸分裂阻害剤、メルファンラン、BCNUおよびナイトロジェンマスタードなどのアルキル化剤、VW−26、トポテカンおよびブレオマイシンなどのトポイソメラーゼIIインヒビター、ドキソルビシンおよびDHADなどの鎖開裂剤、シスプラチンおよびCBDCAなどの架橋剤、放射線ならびに紫外線といったものがある。好ましい実施形態では、この薬剤は、プロテアソームインヒビター(ボルテゾミブまたはその他の関連化合物など)であり、従来技術において周知のもの(Gilman A.G.,ら,The Pharmacological Basis
of Therapeutics,第8版,Sec 12:1202〜1263(1990)などを参照のこと)であり、腫瘍性疾患の処置に一般的に使用されている。化学療法の処置で一般に採用される化学療法剤を、以下の表Aにまとめておく。
【0133】
本発明の方法で検査される薬剤は、薬剤単独または薬剤の併用であってもよい。たとえば、本発明の方法を用いて、メトトレキセートなどの単独の化学療法剤を使用して癌を処置できるかどうか、または、プロテアソームインヒビター(ボルテゾミブなど)および/または糖質コルチコイド剤(デキサメタゾンなど)との併用で、2種以上の薬剤の組み合わせを使用することができるかどうかを判断することができる。好ましい併用は、有糸分裂阻害剤と、アルキル化剤およびプロテアソームインヒビターとの併用を用いるなど、異なる作用機序を有する薬剤を含むものであろう。
【0134】
本明細書に開示する薬剤については、皮内、皮下、経口、動脈内または静脈など、いかなる経路で投与してもよい。好ましくは、静脈内経路で投与する。好ましくは、非経口投与をボーラスまたは注入によって行う。
【0135】
薬学的に許容される混合物として開示した化合物の濃度は、化合物の投与量、採用する化合物(単数または複数)の薬物動態的特性および投与経路といった複数の要因によって異なる。薬剤については、単一用量または反復投与で投与することができる。処置については、患者の健康全般ならびに選択される化合物(単数または複数)の製剤および投与経路など、いくつかの要因に応じて、毎日、あるいは、もっと頻繁に施してもよい。
【0137】
【化2】
(単離された核酸分子、ベクターおよび宿主細胞)
本発明の一態様は、本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドまたはそのポリペプチドの一部をコードする核酸など、本発明の予測マーカーに対応する単離された核酸分子に関するものである。本発明の単離された核酸はまた、本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸と、核酸分子の増幅または突然変異のPCRプライマーとしての使用に適したフラグメントなどの核酸分子のフラグメントとを含む、本発明の予測マーカーに対応するそうした核酸分子を同定するハイブリダイゼーションプローブとして使用するのに十分な核酸分子を含むものである。本明細書で使用する場合、「核酸分子」という語には、DNA分子(cDNAまたはゲノムDNAなど)と、RNA分子(mRNAなど)と、ヌクレオチド類縁体を用いて生成されるDNAまたはRNAの類縁体とを含めることを意図している。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってもよいが、好ましくは、二本鎖DNAである。
【0138】
標準的な分子生物学的技法および本明細書に記載のデータベースレコードの配列情報を用いて、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび/または表3のいずれかに記載のマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸など、本発明の核酸分子を単離および操作(増幅、クローン、合成等など)することができる(Sambrookら,編,Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989になどに記載)。
【0139】
さらに、本発明の核酸分子は、核酸配列の一部しか含まなくてもよく、この場合、全長核酸配列が、本発明の予測マーカーを含むか、あるいは、本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする。たとえば、プローブまたはプライマーとして、こうした核酸を用いてもよい。プローブ/プライマーについては一般に、1つまたは複数の実質的に精製されたオリゴヌクレオチドとして使用する。オリゴヌクレオチドは一般に、ストリンジェントな条件下で、少なくとも約7個、好ましくは約15個、一層好ましく約25個、50個、75個、100個、125個、150個、175個、200個、250個、300個、350個もしくは400個またはさらに連続した本発明の核酸のヌクレオチドとハイブリッド形成するヌクレオチド配列領域を含む。
【0140】
本発明の核酸分子配列に基づくプローブを用いて、1つまたは複数の本発明の予測マーカーに対応する転写物またはゲノム配列を検出することができる。プローブは、それに付着した標識群、たとえば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素または酵素の補助因子などを含むものである。こうしたプローブについては、たとえば、mRNAレベルを検出する、あるいは、タンパク質をコードする遺伝子が突然変異するか、それとも、欠失するかを判断するなど、被検体の細胞サンプル中のタンパク質をコードする核酸分子のレベルを測定することで、タンパク質を発現する細胞または組織を同定するための診断検査キットの一部として使用してもよい。
【0141】
本明細書に記載するデータベースレコードに記載されたヌクレオチド配列に加えて、アミノ酸配列に変化をもたらすDNA配列多型が母集団(ヒト母集団など)内に存在し得ることを、当業者であれば、理解するであろう。こうした遺伝子多型は、対立遺伝子変異が自然発生するため、母集団内の個体間に存在する可能性がある。対立遺伝子は、ある遺伝子座で選択的に生じる遺伝子群の1つである。加えて、RNA発現レベルに影響を与えるDNA多型も存在する場合があり、その遺伝子の発現レベル全体に影響(制御または分解に影響を与えるなど)を与える可能性があることも理解されるであろう。
【0142】
本明細書で使用する場合、「遺伝子」および「組換え遺伝子」という語は、遺伝コードの縮重により、本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列と異なるため、同一のタンパク質をコードする配列などを含む、本発明のマーカーに対応するポリペプチドをコードする読み枠を含む核酸分子をいう。
【0143】
本明細書で使用する場合、「対立遺伝子変異体」という語句は、ある座で生じるヌクレオチド配列またはそのヌクレオチド配列がコードするポリペプチドをいう。こうした対立遺伝子変異が自然発生することで、一般に、ある遺伝子のヌクレオチド配列における分散は1〜5%になる場合がある。異なる多くの個体において、目的の遺伝子の配列を決定することにより、代わりとなる対立遺伝子を同定することができる。多様な個体において、同じ遺伝子座を同定するハイブリダイゼーションプローブを用いることで、これを容易に実施することができる。自然発生する対立遺伝子変異の結果であり、機能活性を変化させない、こうした一切のヌクレオチド変異およびその結果生じるアミノ酸多型または変異は、本発明の範囲内にあることを意図している。
【0144】
本発明は、アンチセンス核酸分子、すなわち、たとえば、本発明のマーカーに対応する二本鎖cDNA分子のコード鎖に対して相補的であるか、または、本発明のマーカーに対応するmRNA配列に対して相補的である、本発明のセンス核酸に対して相補的である分子などを包含するものである。これ合わせて、本発明のアンチセンス核酸は、本発明のセンス核酸と水素結合する(すなわち、アニールする)ことができる。アンチセンス核酸は、タンパク質コード領域(または、読み枠)の全部または一部など、コード鎖全体またはその一部だけに対して相補的であってもよい。アンチセンス核酸分子はまた、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域の全部または一部に対してアンチセンスであってもよい。非コード領域(「5’および3’非翻訳領域」)は、コード領域に隣接し、アミノ酸に翻訳されない5’および3’配列である。
【0145】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、たとえば、長さ約5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個または50個以上のヌクレオチドである。当該技術分野で周知の手法を用いて、化学合成および酵素的連結反応により、本発明のアンチセンス核酸を構築することができる。たとえば、天然由来のヌクレオチド、あるいは、この分子の生物学的安定性を増大させる、または、アンチセンス核酸とセンス核酸との間で形成される二重鎖の物理的安定性を増大させるように設計される種々の修飾ヌクレオチドを用いて、アンチセンス核酸(アンチセンスオリゴヌクレオチドなど)を化学合成してもよい。たとえば、ホスホロチオネート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンス核酸の生成に使用できる修飾ヌクレオチドの例として、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリンがある。あるいは、核酸をアンチセンス方向(すなわち、以下のサブセクションで詳述するように、挿入核酸から転写されるRNAは、目的の標的核酸に対してアンチセンス方向を向く)にサブクローニングした発現ベクターを用いて、アンチセンス核酸を生物学的に生成してもよい。
【0146】
分子の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解度などを改善するため、本発明の核酸分子を、塩基部分、糖成分またはホスフェートバックボーンで修飾してもよい。たとえば、核酸のデオキシリボースホスフェートバックボーンを修飾して、ペプチド核酸を生成することができる(Hyrupら,1996,Bioorganic & Medicinal Chemistry 4(1):5〜23を参照のこと)。本明細書で使用する場合、「ペプチド核酸」または「PNA」とは、核酸の擬態をいい、たとえば、デオキシリボースホスフェートバックボーンがプソイドペプチドバックボーンに置き換えられ、4つの天然核酸塩基だけが保持されるDNAの擬態などがある。PNAの中性バックボーンについては、低イオン強度条件下で、DNAおよびRNAに対する特異的ハイブリダイゼーションを可能にすることが示されている。Hyrupら(1996),上掲;Perry−O’Keefeら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci USA 93:14670〜675に記載されるような標準的な固相ペプチド合成プロトコルを用いて、PNAオリゴマーの合成を実施することができる。
【0147】
PNAは、治療および診断の分野に応用できる。たとえば、PNAに向けられたPCRクランピングなどによる、遺伝子の一塩基対突然変異の解析において;S1ヌクレアーゼなどの他の酵素との組み合わせで用いる場合、人工制限酵素として、(Hyrup(1996)、上掲;または、DNA配列およびハイブリダイゼーションのためのプローブまたはプライマーとして(Hyrup,1996,上掲;Perry−O’Keefeら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci USA 93:14670〜675)、PNAを使用することができる。
【0148】
別の態様では、PNAを修飾して、たとえば、親油基またはその他のヘルパー基をPNAに付着させ、PNA−DNAキメラを作成することで、または、リポソームまたは当該技術分野において周知のその他のドラッグ送達技法を用いることで、PNAの安定性または細胞取り込みを強化することができる。たとえば、PNAとDNAとの有利な性質を兼ね備えたPNA−DNAキメラを作成することができる。こうしたキメラを用いると、RNASEおよびDNAポリメラーゼなどのDNA認識酵素がDNA部分と相互作用できるようになると同時に、PNA部分では、結合の親和性および特異性が高まると考えられる。塩基の積み重ね、核酸塩基間の結合数および配向の観点から選択される適切な長さのリンカーを用いて、PNA−DNAキメラをつなぐこともできる(Hyrup、1996、上掲)。Hyrup(1996),上掲およびFinnら(1996)Nucleic Acids Res.24(17):3357〜63に記載のように、PNA−DNAキメラの合成を実施してもよい。たとえば、標準的なホスホラミダイトカプリング化学物質および修飾ヌクレオシド類縁体を用いて、固体支持体上でDNA鎖を合成することができる。5’−(4−メトキシトリチル)アミノ−5’−デオキシ−チミジンホスホラミダイトなどの化合物については、PNAとDNA5’末端との結合に使用することができる(Magら,1989,Nucleic Acids Res.17:5973〜88)。次いで、PNAモノマーを段階的に結合させて、5’PNAセグメントおよび3’DNAセグメントを持つキメラ分子を生成することができる(Finnら,1996,Nucleic Acids Res.24(17):3357〜63)。あるいは、キメラ分子と、5’DNAセグメントおよび3’PNAセグメントとを合成してもよい(Peterserら,1975,Bioorganic Med.Chem.Lett.5:1119〜11124)。
【0149】
オリゴヌクレオチドは、ペプチド(たとえば、宿主細胞の生体内レセプターを標的する)などのその他の付加基または細胞膜を横断する輸送を促進する薬剤(Letsingerら,1989,Proc.Natl.Acad.Sci USA 86:6553〜6556;Lemaitreら,1987,Proc.Natl.Acad.Sci USA 84:648〜652;国際出願公開第WO 88/09810号などを参照のこと)もしくは血液脳関門(国際出願公開第WO 89/10134号などを参照のこと)を含んでもよい。加えて、ハイブリダイゼーション誘発切断剤(Krolら,1988,Bio/Techniques 6:958〜976などを参照のこと)または挿入剤(Zon,1988,Pharm.Res.5:539〜549などを参照のこと)で、オリゴヌクレオチドを修飾することができる。このため、オリゴヌクレオチドを、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発切断剤等の別の分子にコンジュゲートしてもよい。
【0150】
本発明はまた、本発明のマーカーに対して相補的である、少なくとも1つの領域を有する分子ビーコン核酸を含んでおり、この分子ビーコンがサンプル中の本発明の予測マーカーの存在を定量化するのに有用なものとなっている。「分子ビーコン」核酸は、一対の相補的な領域を含み、かつ、フルオロフォアおよびそれと関連した蛍光クエンチャーを有する核酸である。フルオロフォアとクエンチャーは、相補的領域が互いにアニールされていると、フルオロフォアの蛍光がクエンチャーによって消光されるような配向で、核酸の異なる部分に関係している。核酸の相補的な領域が互いにアニールされていない場合、フルオロフォアの蛍光の消光は弱まる。分子ビーコン核酸については、たとえば、米国特許第5,876,930号に記載されている。
【0151】
本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドをコードする核酸を含む、発現ベクターなどのベクター関しては、本発明の予測マーカーに対応する核酸およびタンパク質の生成;および予測マーカーに関連する組成物の生成に使用することができる。有用なベクターは、目的の予測マーカーに対応する核酸および/またはタンパク質を効果的に発現するためのプロモーターおよび/または制御配列をさらに含むものである。特定の実例では、プロモーターは、必要に応じて、構成的プロモーター/制御配列、誘導性プロモーター/制御配列、組織特異的プロモーター/制御配列または目的の予測マーカーに対応する、自然発生的な内在性プロモーター/制御配列を含んでもよい。当該技術分野において、種々の発現ベクターがよく知られており、発現の特定のシステムに合わせて適合させることができる。たとえば、原核生物細胞(E.coliなど)または真核細胞(昆虫細胞{バキュロウイルス発現ベクターを用いる}、酵母菌または哺乳動物細胞など)中で本発明のマーカーに対応するポリペプチドを発現するように、本発明の組換え発現ベクターを設計してもよい。好適な宿主細胞は、当該技術分野において周知であり、Goeddel,上掲で論じられたものなどが挙げられる。あるいは、たとえば、T7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼなどを用いて、組換え発現ベクターを、インビトロで転写および翻訳することができる。当該技術分野において周知の通常の手法を用いて、ベクターおよび宿主細胞を生成してもよい。さらに、ベクターおよび宿主細胞の使用については、本発明のマーカーに対応する核酸、ポリペプチドおよびそのフラグメントの生成に利用することができる。
【0152】
(単離されたタンパク質および抗体)
本発明の一態様は、本発明の予測マーカーに対応する単離されたタンパク質およびその生物活性部分、ならびに本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドに指向する抗体を産生する免疫原として使用するのに好適なポリペプチドフラグメントに関連するものである。本明細書に記載の遺伝子同定情報と当該技術分野においてよく知られた通常の分子生物学、タンパク質精製および組換えDNAの技法とを組み合わせて用いて、本発明で使用するポリペプチドを、単離、精製または生成することができる。
【0153】
好ましいポリペプチドは、本明細書に記載するGenBankおよびアントレ(Entrez)のデータベースレコードのどちらかに記載されるアミノ酸配列を有する。その他の有用なタンパク質は、これらの配列の1つと実質的に同一(たとえば、少なくとも約70%、好ましくは80%、90%、95%または99%)であり、対応する天然由来のタンパク質におけるタンパク質の機能活性を保持しているものの、天然の対立遺伝子の変異または突然変異誘発により、アミノ酸配列が異なっている。
【0154】
2つの配列間の一致率の判断については、2つの配列間で共有する同一部分の数を判断する数学的アルゴリズムを用いて行う。同一性および類似性の比較検討時には、当該技術分野において既知の方法のうち、いずれの方法を用いて判断しても構わない。使用する方法の例には、2つの配列の比較検討に利用される数学的アルゴリズムがあり、たとえば、Karlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci USA 87:2264〜2268のアルゴリズムであり、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873〜5877で修正されている。こうしたアルゴリズムは、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403〜410のNBLASTおよびXBLASTのプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、語長=12で実行すると、本発明の核酸分子に相同的なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、BLASTプログラム、スコア=50、語長=3で実行すると、本発明のタンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得ることができる。比較検討目的のためにギャップのある整列を得るには、Altschulら(1997)Nucleic Acids Res.25:3389〜3402に記載されているように、Gapped BLASTを利用してもよい。あるいは、PSI−Blastを用いて、分子間の距離関係を検出する繰り返し検索を実行してもよい。BLAST、Gapped BLASTおよびPSI−Blastのプログラムを利用する場合、各プログラムのデフォルトパラメータ(XBLASTおよびNBLASTなど)を使用してもよい。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。配列の比較検討のために利用される数学的アルゴリズムの別の例は、Myers and Miller,(1988)CABIOS 4:11〜17のアルゴリズムである。このアルゴリズムは、GCG配列整列ソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列の比較検討のためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用することができる。局所配列類似性および整列の領域を同定するための、さらに別の有用なアルゴリズムとして、Pearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA 85:2444〜2448に記載されているようなFASTAアルゴリズムがある。ヌクレオチドまたはアミノ酸の配列の比較検討にFASTAアルゴリズムを使用する場合、PAM120重量残基表を、たとえば、k−tuple値2で使用することができる。ギャップを考慮するか否かを問わず、上述の技法と類似した技法を用いて、2つの配列間の一致率を判断してもよい。一致率を算出する際は、完全に一致したものしか計算しない。
【0155】
本発明はまた、本発明のマーカーに対応するキメラタンパク質または融合タンパク質を提供するものである。本明細書で使用する場合、「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、本発明のマーカーに対応し、かつ、異種ポリペプチド(すなわち、マーカーに対応するポリペプチド以外のポリペプチド)に操作可能に結合されるポリペプチドの全部または一部(好ましくは生物活性部分)を含むものである。融合タンパク質において、「操作可能に結合される」という語は、本発明のポリペプチドおよびその異種ポリペプチドが互いにインフレームで融合していることを示すことを意図している。異種ポリペプチドについては、本発明のポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に融合してもよい。有用な融合タンパク質には、GST、c−myc、FLAG、HAおよび融合タンパク質の生成に使用する、よく知られた他の異種のタグを含めてもよい。こうした融合タンパク質は、本発明の組換えポリペプチドの精製を促進することができる。
【0156】
加えて、融合タンパク質は、gp67、メリチン、ヒト胎盤アルカリホスファターゼおよびphoAなどの別のタンパク質のシグナル配列を含んでもよい。さらに別の態様では、融合タンパク質は、本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドの全部または一部と、免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバーに由来する配列とが融合する、免疫グロブリン融合タンパク質である。本発明の免疫グロブリン融合タンパク質については、被検体内の本発明のポリペプチドに指向する抗体を産生する免疫原、リガンドを精製する免疫原、およびスクリーニングアッセイにおいて、レセプターとリガンドとの相互作用を阻害する分子を同定する免疫原として用いることができる。
【0157】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製のための標準的な技法を用いて、本発明の予測マーカーに対応する単離されたポリペプチドまたはそのフラグメントを、抗体を産生する免疫原として使用することができる。たとえば、免疫原は一般に、ウサギ、ヤギ、マウスもしくはその他の哺乳動物または脊椎動物といった好適な(すなわち、免疫応答性を有する)被検体を免役することで、抗体を調製するために使用される。適切な免疫原の調製は、たとえば、組換え発現ポリペプチドまたは化学合成ポリペプチドを含んでもよい。調製には、フロイント完全アジュバントもしくはフロイント不完全アジュバントまたは類似の免疫賦活剤などのアジュバントをさらに含めもよい。
【0158】
これに伴い、本発明の別の態様は、本発明のポリペプチドに指向する抗体に関係するものである。本明細書で同義に使用される場合、「抗体」および「抗体物質」という語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、本発明のポリペプチドのエピトープといった、本発明のポリペプチドなど、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子をいう。本発明の一定のポリペプチドに特異的に結合する分子は、ポリペプチドを天然に含む生物学的サンプルなどのサンプル中で、ポリペプチドに結合するが、実質的に他の分子には結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分の例として、抗体をペプシンなどの酵素で処理することで生成することができるF(ab)フラグメントおよびF(ab’)
2フラグメントが挙げられる。本発明は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を提供するものである。上記のいずれかの合成変異体および遺伝子操作変異体(米国特許第6,331,415号を参照のこと)も、本発明が意図しているものである。Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション手法といった従来のマウスのモノクローナル抗体手法、ヒトB細胞ハイブリドーマ手法(Kozborら,1983,Immunol.Today 4:72)、EVB−ハイブリドーマ手法(Coleら,pp.77〜96 In Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,1985)またはトリオーマ技法などの多様な技法によって、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を産生することができる。Harlow、E. and Lane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;およびCurrent Protocols in Immunology,Coliganら編,John Wiley & Sons,New York,1994の全体を参照されたい。診断分野へ応用する場合、抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。さらに、インビボ用途で使用する場合、本発明の抗体は、好ましくはヒトまたはヒト化抗体である。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞については、標準的なELISAアッセイを用いるなど、目的のポリペプチドに結合する抗体のハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることで、検出する。
【0159】
必要に応じて、被検体から(被検体の血液または血清から)抗体分子を採取または単離し、さらに、タンパク質Aクロマトグラフィなどのよく知られた技法により精製して、IgG画分を得ることができる。あるいは、本発明のタンパク質またはポリペプチドに対して特異的な抗体を選択して、あるいは(一部を精製するなど)、または、アフィニティークロマトグラフィなどにより精製して、実質的に精製された抗体および精製抗体を得ることができる。実質的に精製された抗体組成物とは、本明細書の文脈では、抗体サンプルが、本発明の所望のタンパク質またはポリペプチドのエピトープ以外のエピトープに指向する混入抗体が多くても30%(乾燥重量ベース)しか含まれず、好ましくは多くても20%、さらに一層好ましくは多くても10%しか含まれないものであり、最も好ましくはサンプル全体の多くても5%(乾燥重量ベース)が混入抗体である。精製抗体組成物とは、組成物中の抗体の少なくとも99%が本発明の所望のタンパク質またはポリペプチドに指向しているものをいう。
【0160】
さらに、標準的な組換えDNA技法を用いて作製することができ、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含むキメラ抗体およびヒト化モノクローナル抗体などの組換え抗体も、本発明の範囲内である。キメラ抗体は、マウスのmAbに由来する可変領域と、ヒト免疫グロブリンの定常領域とを持つ分子など、様々な部分が異なる動物種に由来する分子である。(その全体を本明細書に援用する、Cabillyら,米国特許第第4,816,567号;およびBossら,米国特許第4,816,397号などを参照のこと。)ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域とを持つ非ヒト種由来の抗体分子である。(その全体を本明細書に援用する、Queen,米国特許第5,585,089号などを参照のこと。)こうしたキメラ抗体およびヒト化モノクローナル抗体については、当該技術分野で公知の組換えDNA技法、たとえば、国際出願公開第WO 87/02671号;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;国際出願公開第WO 86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Betterら(1988)Science 240:1041〜1043;Liuら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439〜3443;Liuら(1987)J.Immunol.139:3521〜3526;Sunら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214〜218;Nishimuraら(1987)Cancer Res.47:999〜1005; Woodら(1985)Nature 314:446〜449;およびShawら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553〜1559); Morrison(1985)Science 229:1202〜1207;Oiら(1986)Bio/Techniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesら(1986)Nature 321:552〜525; Verhoeyanら(1988)Science 239:1534;およびBeidlerら(1988)J.Immunol.141:4053〜4060に記載の方法を用いて、作製することができる。
【0161】
ヒト抗体を作製するための方法は、当該技術分野において周知である。ヒト抗体を作製する方法の1つは、トランスジェニックマウスなどのトランスジェニックアニマルの使用を採用したものである。これらのトランスジェニックアニマルは、それ自体のゲノムに挿入されるゲノムを産生するヒト抗体を相当部分で含むものであり、その動物自体の内在性抗体産生では、抗体の産生が不足している。こうしたトランスジェニックアニマルを作製するための方法は、当該技術分野において周知である。XENOMOUSE(商標)技術または「ミニローカス」アプローチを用いて、こうしたトランスジェニックアニマルを作製することができる。XENOMICE(商標)を作製するための方法については、本明細書に援用する米国特許第6,162,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598号および同第6,075,181号に記載されている。「ミニローカス」アプローチを用いたトランスジェニックアニマルの作製方法については、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号および同第5,625,825号に記載されており;国際公開第WO93/12227号も参照されたい。これらの公報をそれぞれ、本明細書に援用する。
【0162】
抗体フラグメントは、上記のどの抗体に由来するものであってもよい。たとえば、抗原結合フラグメントのほか、上記の抗体に由来する全長の単量体ポリペプチド、二量体ポリペプチドまたは三量体ポリペプチドは、それ自体が有用なものである。このタイプの有用な抗体ホモログには、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋で結合された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント,(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら,Nature 341:544〜546(1989));(vii)VHHドメインからなる単一ドメイン機能的重鎖抗体(ナノボディと呼ばれる)Cortez−Retamozo,ら,Cancer Res.64:2853〜2857(2004)およびそこで引用された参考資料などを参照されたい;および(vii)抗原結合フラグメントを提供するのに十分なフレームワークを伴った1つまたは複数の単離されたCDRなど、単離された相補性決定領域(CDR)がある。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは、別の遺伝子によりコードされるが、組換え方法を用いて、VL領域およびVH領域が対になり、一価分子を形成する単一タンパク質鎖として生成することを可能にする合成リンカーにより、この2つのドメインを結合することができる(単一鎖Fv(scFv)と呼ばれる;BirdらScience 242:423〜426(1988);およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879〜5883(1988)などを参照されたい。また、こうした単鎖抗体も、抗体の「抗原結合フラグメント」という語に包含することを意図している。当業者に公知の従来の技法を用いて、これらの抗体フラグメントを得て、無傷の抗体の場合と同じ仕方で、このフラグメントの有用性についてスクリーニングする。プロテアーゼ切断または化学切断によるなど、無傷のタンパク質の切断により、Fv、F(ab’)
2およびFabなどの抗体フラグメントを調製することができる。
【0163】
本発明の予測マーカーに対応するポリペプチドに指向する抗体(モノクローナル抗体など)を用いて、予測マーカーの発現のレベルおよびパターンを評価するために、予測マーカー(細胞サンプル中など)を検出することができる。また、この抗体を診断向けに用いて、臨床試験手法の一環として、組織または体液(腫瘍サンプル中など)のタンパク質レベルをモニターし、たとえば、ある処置レジメンの有効性を判断することもできる。抗体と検出可能な物質とをカプリングすることで、検出を円滑に行うことができる。検出可能な物質の例として、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、蛍光物質、生物発光物質および放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例として、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;好適な補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;好適な蛍光物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアン酸塩、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが挙げられ;蛍光物質の例として、ルミノールが挙げられ;生物発光物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ、ならびに好適な放射性物質の例として、
125I、
131I、
35Sまたは
3Hが挙げられる。
【0164】
これに応じて、一態様では、本発明は、その抗体またはフラグメントが本明細書で確認される予測マーカーによりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドと特異的に結合する、実質的に精製された抗体またはそのフラグメントおよび非ヒト抗体またはそのフラグメントを提供するものである。本発明の実質的に精製された抗体またはそのフラグメントは、ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体および/またはヒト化抗体であってもよい。
【0165】
別の態様では、本発明は、その抗体またはフラグメントが本発明の予測マーカーの核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する、非ヒト抗体またはそのフラグメントを提供するものである。こうした非ヒト抗体は、ヤギ抗体、マウス抗体、ヒツジ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ウサギ抗体またはラット抗体であってもよい。あるいは、本発明の非ヒト抗体は、キメラ抗体および/またはヒト化抗体であってもよい。加えて、本発明の非ヒト抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよい。
【0166】
なおさらなる態様では、本発明は、その抗体またはフラグメントが本発明のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと、本発明のcDNAによりコードされるアミノ酸配列と、本発明のアミノ酸配列の少なくとも15個のアミノ酸残基のフラグメントと、本発明のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列(この場合、GCGソフトウェアパッケージのALIGNプログラムを用いて、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4で、一致率を判断する)と、6×SSC、45℃でのハイブリダイゼーションおよび0.2×SSC、0.1%SDS、65℃での洗浄という条件下で、本発明の核酸分子またはその相補体からなる核酸分子とハイブリッド形成する核酸分子によりコードされるアミノ酸配列とに特異的に結合するモノクローナル抗体またはそのフラグメントを提供するものである。モノクローナル抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラおよび/または非ヒト抗体であってもよい。
【0167】
実質的に精製された抗体またはそのフラグメントは、シグナルペプチド、分泌配列、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインまたは本発明のポリペプチドの細胞質膜に特異的に結合する場合がある。本発明の実質的に精製された抗体もしくはそのフラグメント、非ヒト抗体もしくはそのフラグメントおよび/またはモノクローナル抗体もしくはそのフラグメントは、本発明のアミノ酸配列の分泌配列または細胞外ドメインに特異的に結合するものである。
【0168】
本発明はまた、検出可能な物質にコンジュゲートされる本発明の抗体と、使用説明書とを含むキットを提供するものである。本発明のなお別の態様は、本発明の抗体と、薬学的に許容されるキャリアとを含む診断用組成物である。特定の態様では、この診断用組成物は、本発明の抗体と、検出可能な成分と、薬学的に許容されるキャリアとを含むものである。
【0169】
(感受性アッセイ)
癌性細胞のサンプルについては、患者から採取する。表1A、表1B、表2A、表2Bおよび/または表3に示す少なくとも1つの予測マーカーに対応するマーカーの発現レベルを、サンプルで測定する。好ましくは、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび/または表3で確認されるマーカーを含むマーカーセットを利用し、本明細書に記載する方法を用いて、マーカーセットにまとめる。たとえば、マーカーセットは、表4で確認されるマーカーセットまたは類似の方法で作成されるどんなマーカーセットを含んでもよい。こうした解析を用いて、患者の腫瘍の発現特性を得ることができる。次いで、発現特性の評価を用いて、患者が反応性の患者であり、プロテアソーム阻害治療(プロテアソームインヒビター(ボルテゾミブなど)による単独の処置、あるいは、付加的な薬剤との併用処置)および/または糖質コルチコイド治療(糖質コルチコイド(デキサメタゾンなど)による単独の処置、あるいは、付加的な薬剤との併用処置)が効果を発揮すると考えられるかどうかを判断する。評価には、本明細書記載の方法または当該技術分野において周知のその他の類似したスコア化方法(重み付き投票、CTFなど)のいずれかを用いて作成した1つのマーカーセットの使用を含めてもよい。なおさらに、評価には、作成した2つ以上のマーカーセットの使用を含めてもよい。プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療は、評価結果から、この薬剤の存在下で、非反応性の低下または反応性の増加が示されれば、癌の処置として適切なものとみなされるものとする。
【0170】
一態様では、本発明の特徴は、プロテアソーム阻害および/または糖質コルチコイド治療レジメンによる処置に対する反応性または非反応性について、血液癌(多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等など)または(肺、乳房、前立腺、卵巣、結腸、腎臓または肝臓などにおける)固形腫瘍の癌等の癌患者など、患者を評価する方法にある。この方法は、患者の予測マーカーセットのマーカーにおけるマーカーの発現について評価を行うことを含むものであり、この予測マーカーセットは、以下の性質を有しており:予測マーカーセットは複数の遺伝子を含み、この遺伝子それぞれが、プロテアソーム阻害および/または糖質コルチコイド治療レジメンによる処置に対して反応性か非反応性である患者と、癌を患っていない被検体との場合と同様に、差次的に発現され、かつ、差次的に発現される十分な数のマーカーを含むため、被検体の予測マーカーセットにおける各マーカーの差次的発現(癌を患っていない参照サンプルのレベルと比較するなど)から、偽陽性(この場合、偽陽性とは、被検体が反応性または非反応性でないときに、患者が反応性または非反応性であると予測することをいう)約15%、約10%、約5%、約2.5%または約1%以下で反応性または非反応性が予測され;および患者の予測マーカーセットにおけるマーカーそれぞれの発現と、参照値とを比較検討し、これにより、患者を評価する。
【0171】
プロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド処置の過程で、患者から採取した腫瘍サンプルにおいて同定された1つまたは複数のマーカーまたはマーカーセットの発現を調べると、治療薬が引き続き効果を上げるかどうか、または、処置プロトコルに対して癌が非反応(反応しない)になるかどうかを判断することもできる。たとえば、ボルテゾミブの処置を受けた患者は、腫瘍細胞を除去してもらい、マーカーまたはマーカーセットの発現についてモニターしてもらう。表1A、表1B、表2A、表2Bおよび/または表3で確認される1つまたは複数のマーカーセットの発現特性から、薬剤の存在下で反応性の増加が示される場合、プロテアソームインヒビターによる処置が継続されるであろう。しかしながら、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび/または表3で確認される1つまたは複数のマーカーセットの発現特性から、薬剤の存在下で非反応性の増加が示される場合、癌がプロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療に対して抵抗性になっている恐れがあり、患者を処置するための別の処置プロトコルを開始すべきである。
【0172】
重要な点は、患者ごとにまたは薬剤ごとに(もしくは、薬剤の併用)、これらの判断を行えることにある。このため、ある特定のプロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療がある特定の患者または患者の群/クラスに役立つ可能性が高いか否か、あるいは、ある特定の処置を継続すべきかどうかを判断することができる。
【0173】
(情報の使用)
一方法では、たとえば、患者のマーカー発現レベル(本明細書に記載する予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価結果など)またはプロテアソーム阻害治療および/または糖質コルチコイド治療に対して、患者が反応性または非反応性であると考えられるかどうかに関する情報を、病院、診療所、政府機関、補償当事者または保険会社(生命保険会社など)といった第三者に提供する(電子的な伝達等の伝達など)。たとえば、医療手法の選択、医療手法に対する支払い、補償当事者による支払いまたはサービスもしくは保険の費用は、この情報によって決まる場合がある。たとえば、第三者は情報を受け取り、少なくとも一部はその情報に基づき判断し、任意にその情報を伝達するか、情報に基づき、手法、支払い、支払いの水準、保険契約等の選択を行う。この方法では、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3から選択されるか、またはそれに由来する予測マーカーまたは予測マーカーセットの有益な発現レベルについて判断を行う。
【0174】
一実施形態では、予測マーカーまたは予測マーカーセットなどの1つまたは複数のマーカーの発現レベルに関する情報、たとえば、プロテアソーム阻害治療剤および/または糖質コルチコイド治療剤に対する反応性または非反応性に関連する発現レベル(有益な発現レベルなど)に応じて、保険料(生命または医療など)を評価する。たとえば、本明細書に記載する、患者のマーカーまたは患者の予測マーカーセットのマーカーが、付保された候補者(または付保を求めている候補者)と、参照値(癌を患っていない人など)との間で差次的に発現される場合、保険料を増額(一定の割合など)してもよい。別の例として、プロテアソームインヒビターまたは糖質コルチコイドによる処置後に、予測マーカーまたは予測マーカーセットのレベルが維持される(本明細書に記載するように)場合、保険料を減額してもよい。また、本明細書に記載する予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価結果など、マーカーの発現レベルに応じて、保険料を増減させることできる。たとえば、本明細書に記載する予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価結果など、マーカーの発現レベルに応じて、リスクを分配する目的で保険料を判定してもよい。別の実施例では、反応の高まった、または、反応の高まらなかった患者から得られた保険数理データに応じて、保険料を判定する。
【0175】
本明細書に記載する予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価結果(有益な発現レベルなど)など、マーカーの発現レベルに関する情報を、生命保険の引き受けプロセス等で使用することができる。この情報を被検体のプロフィールに加えることもできる。プロフィールに関する他の情報には、たとえば、生年月日、性別、配偶者関係、銀行情報、信用情報、子供などがある。プロフィール情報に含まれる1つまたは複数の他の項目と一緒に、本明細書に記載する予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価結果など、マーカーの発現レベルに関する情報に応じて、保険の契約内容を推奨してもよい。また、予測マーカーまたは予測マーカーセットの情報に応じて、保険料またはリスクアセスメントを評価することもできる。一実施例では、プロテアソーム阻害治療剤および/または糖質コルチコイド治療剤に対して反応性または非反応性であるかに基づき、ポイントを割り当てる。
【0176】
一実施形態では、本明細書に記載する予測マーカーまたは予測マーカーセットの評価結果など、マーカーの発現レベルに関する情報について、被検体に提供されるサービスまたは処置に対する支払い資金の送金を認めるかどうかを判断する(あるいは、本明細書に記載の別の判断をする)関数によって解析する。たとえば、本明細書に記載する予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現の解析結果から、プロテアソーム阻害治療剤および/または糖質コルチコイド治療剤に対して、被検体が反応性または非反応性であることが示され、処置過程を必要とすることがうかがわれ、これにより、被検体に提供されるサービスまたは処置に対する支払いの承認を示唆する、または、承認の原因となる結果がもたらされる場合がある。一実施例では、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3から選択される、または、それに由来する予測マーカーまたは予測マーカーセットの有益な発現レベルを判断して、有益な発現レベルから、反応性の患者であることが確認された場合、支払いを認める。たとえば、病院、介護者、政府機関または保険会社もしくは医療費を支払う、または、払い戻す、その他の事業体などの事業体は、本明細書に記載する方法の結果を使用して、被検体である患者以外の当事者など、ある当事者が、患者に提供されたサービス(ある特定の治療剤など)または処置の代金を支払うかどうかを判断する場合がある。たとえば、保険会社などの第1事業体は、本明細書に記載する方法の結果を使用して、患者に、または、患者に代わって金銭的な支払いを行うかどうか、たとえば、物品またはサービスのベンダー、病院、医師またはその他の介護者といった第三者に対して、患者に提供されたサービスまたは処置に対する払い戻しをすべきかどうかを判断する場合がある。たとえば、保険会社などの第1事業体は、本明細書に記載する方法の結果を使用して、健康保険プランもしくはプログラムまたは生命保険プランもしくはプログラムといった、個人の保険プランまたはプログラムを継続するか、中断するか、加入させるかどうかを判断してもよい。
【0177】
一態様では、開示の特徴が、データを提供する方法にある。この方法は、たとえば、本明細書に記載する方法により作成される、本明細書に記載するデータの提供を含み、支払いを行うかどうかについて判断できるように、本明細書に記載する記録などの記録を提供するものである。いくつかの実施形態では、このデータを、コンピュータ、コンパクトディスク、電話、ファクシミリ、電子メールまたは書面で提供する。いくつかの実施形態では、第1当事者がこのデータを第2当事者に提供する。いくつかの実施形態では、この第1当事者を、被検体、ヘルスケア提供者、処置を行う医師、保健維持機構(HMO)、病院、政府機関またはドラッグを販売または提供する事業体から選択する。いくつかの実施形態では、この第2当事者は、第三者支払人、保険会社、雇用者、雇用者後援された健康プラン、HMOまたは政府機関である。いくつかの実施形態では、第1当事者は、被検体、ヘルスケア提供者、処置を行う医師、HMO、病院、保険会社またはドラッグを販売または提供する事業体から選択され、第2当事者は、政府機関である。いくつかの実施形態では、第1当事者は、被検体、ヘルスケア提供者、処置を行う医師、HMO、病院、保険会社またはドラッグを販売または提供する事業体から選択され、第2当事者は、保険会社である。
【0178】
別の態様では、本開示の特徴は、患者の予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現リストと発現値とを含む記録(コンピュータ読み取り可能記録など)である。いくつかの実施形態では、この記録は、マーカーごとに2つ以上の値を含むものである。
【実施例】
【0179】
フェーズ1臨床試験における多発性骨髄腫の陽性結果に基づき(Orlowski,J
Clin Oncol.2002年11月15日;20(22):4420〜7.,Aghajanian,Clin Cancer Res.2002年8月;8(8):2505〜11,)、これまでよりも均一な患者の母集団において、ボルテゾミブの抗腫瘍活性をより正確に予測できるように、フェーズ2骨髄腫研究を実施した。2つのフェーズ2臨床研究、M34100−024(初回再発の被検体)およびM34100−025(2回目またはそれ以上の再発被検体および直近の治療に対して反応しない被検体)で、多発性骨髄腫の被検体内のボルテゾミブの安全性および有効性を調査した。研究M34100−025では、ボルテゾミブ単独でのCR+PR率は27%(患者193名のうち53名)であり、ボルテゾミブ単独での全奏功率(CR+PR+MR)は、35%(患者193名のうち67名)であった。Richardson PG,らN Engl J Med.,348:2609〜17(2003)を参照されたい。研究M34100−024では、ボルテゾミブ1.0mg/m
2および1.3mg/m
2で処置を受けた再発性多発性骨髄腫の患者の中で、CR+PR率はそれぞれ、30%および38%であった。Jagannath,Br J Haematol.127:165〜72(2004)を参照されたい。処置に対する患者の反応に関係するマーカーを同定する薬理遺伝学的解析で用いるため、これらの研究に参加している患者の患者サンプルおよび反応基準ばかりでなく、以下に記載する後続の追加研究を追跡した。
【0180】
(非盲検研究での再発性および難治性骨髄腫患者におけるボルテゾミブと高容量デキサメタゾンとの比較検討)
再発性または難治性多発性骨髄腫の登録患者627名からなる多施設、非盲検、無作為化研究を実施した(プロトコルM34101−039)。Richardsonら,N.Engl.J.Med,.352:2487〜2498(2005)を参照されたい。患者については、ボルテゾミブ(患者315名)または高容量デキサメタゾン(患者312名)のどちらかで処置した。
【0181】
(処置用量および投与)
(ドラッグの供給および貯蔵)
ボルテゾミブ2.5mgおよびマンニトールUSP25mgを含むバイアルで、再構成向け無菌凍結乾燥粉末である注射用ボルテゾミブ(ベルケイド(VELCADE)(商標) ミレニアムファーマシューティカルズインク(Millennium Pharmaceuticals,Inc.)、マサチューセッツ州ケンブリッジ)を供給した。再構成溶液がボルテゾミブを濃度1mg/mLで含むように、各バイアルを生理(0.9%)食塩水(Sodium Chloride Injection USP)2.5mLで再構成した。再構成溶液は透明かつ無色で、最終pHは5〜6であった。
【0182】
デキサメタゾン(Dexamethasome)錠(デカドロン(DECADRON)(登録商標) メルク(Merck&Co.,Inc.))。
【0183】
【化3】
比率1:1でボルテゾミブまたは高容量デキサメタゾンを投与されるように、ランダム割り付けにより患者を割り振った。ランダム化については、過去の治療の回数(過去の治療が1回対2回以上)と、処置に対する病勢進行の期間(病勢進行が直近の治療時、もしくは直近の治療中止後6カ月以内、または再発が直近の治療を受けてから>6カ月)と、β
2−ミクログロブリンレベルのスクリーニング(>2.5mg/L対<2.5mg/L)とに基づき、層別化を行うことができた。
【0184】
ボルテゾミブ群に割り振られた患者は、最大で273日間の処置を受けた。この処置群の患者は、ボルテゾミブによる3週間の処置を最大8サイクル、続いて、5週間の処置を最大3サイクル受けた。3週間の処置サイクルごとに、患者は、21日間サイクルのうち2週間にわたり週に2度(1、4、8および11日目に)、静脈内ボーラス(IV)注射でボルテゾミブ単独で1.3mg/m
2/用量を投与された。5週間の処置サイクルごとに、患者は、35日間サイクルのうち週に1度(1、8、15および22日目に)、ボーラス(IV)注射でボルテゾミブ単独で1.3mg/m
2/用量投与された。
【0185】
高容量デキサメタゾン群に割り振られた患者は、最大で280日間の処置を受けた。この処置群の患者は、5週間の処置を最大4サイクル、続いて、4週間の処置を最大5サイクル受けた。5週間の処置サイクルごとに、患者は、35日間サイクルの1〜4日目、9〜12日目および17〜20日目に1日に1度、デキサメタゾン40mg/日をPO投与された。4週間の処置サイクルごとに、患者は、28日間サイクルで1〜4日目に1日1度、デキサメタゾン40mg/日をPO投与された。姉妹研究では、このプロトコルにより、進行(PD)の確認されたデキサメタゾン群の患者がボルテゾミブの投与を受けた(高容量デキサメタゾンの投与を受けた、または、過去に少なくとも4つの治療を受けてから進行を経験した、多発性骨髄腫の患者に投与されたPS−341の国際的、非比較、非盲検研究、(プロトコル M34101−040)。この研究に参加しなかったが、姉妹研究に登録し、このプロトコルに従った別の患者240名は、過去に少なくとも4度の治療を受けていたと考えられる。こうした240名の患者も対象に、薬理遺伝学的サンプルを追跡した。
【0186】
この研究中、表Cに示すような欧州血液骨髄移植グループ(EMBT)基準に従って、疾患の反応を判定した。
【0187】
【化4】
【0188】
【化5】
患者は、治験薬を少なくとも1回投与され、疾患がベースラインで測定可能である場合、反応を評価することができた(患者総数627名:ボルテゾミブ群が315名およびデキサメタゾン群が312名)。欧州血液骨髄移植グループ(EBMT)基準に従って、ボルテゾミブまたはデキサメタゾンによる処置に対して確認された反応の評価については、表Dにまとめてある。Bladeの基準(表C)に従って、中央検査室と、各臨床現場からの症例報告書とからのデータを統合したコンピュータアルゴリズムにより、反応および疾患進行の期日を判断した。ボルテゾミブ群の奏功率(完全奏功プラス部分奏功(CR+PR)は38パーセントであり、デキサメタゾン群では18パーセント(P<0.0001)であった。完全奏功は、ボルテゾミブを投与された患者20名(6パーセント)、デキサメタゾンを投与された患者2名(<1パーセント)(P<0.001)で認められ、完全奏功プラスほぼ完全奏功は、ボルテゾミブおよびデキサメタゾンを投与された患者でそれぞれ、13パーセントおよび2パーセント(P<0.0001)であった。これらのデータは、すでに投稿済みである。Richardson PG,らを参照されたい[NEJMに投稿]。
【0189】
【化6】
疾患の進行については、表Cおよび上記で説明したように、Bladeの基準により判断した。ボルテゾミブ群における疾患の病勢進行までの期間中央値は、6.2カ月(189日)であり、また、デキサメタゾン群では3.5カ月(106日)(危険率0.55、P<0.0001)であった。コンピュータアルゴリズムにより、病勢進行の日付を判断した。ログランク検定のP値に関しては、実際のランダム化要因によって調整した。投稿済みのRichardsonら,New Engl J Med.,を参照されたい。
【0190】
反応までの期間中央値は、2つの群のどちらの患者も43日であった。反応の持続期間中央値は、ボルテゾミブ群で8カ月、デキサメタゾン群で5.6カ月であった。
【0191】
ボルテゾミブを受けた患者の方が、全生存率が優れていた。1年生存率は、ボルテゾミブで80%、デキサメタゾンで66%(P<0.0030)であった。これは、登録から最初の1年間におけるボルテゾミブ群の死亡リスクが41%低下したこと示す。全生存率の危険率は0.57(P<0.0013)であり、ボルテゾミブの方が良かった。全生存率の解析には、姉妹研究で、疾患の進行があり、後でボルテゾミブの投与に切り替えたデキサメタゾン群の患者147名(44パーセント)のデータを含めてある。
【0192】
生活の質の判定を解析して、治療に対する反応と同時に、生活の質が測定可能な改善を示したかどうかを判断してもよい。データベースロックに先立ち作成される公式の統計解析プランの中で概説される指定の解析方法で、サマリースコアおよび個別項目に関して解析を実施する。
【0193】
(薬理遺伝学的サンプルの採取)
全体的なmRNAレベルの発現を評価するため、患者から薬理遺伝学的腫瘍サンプル(骨髄穿刺液)を採取した。
【0194】
(統計手法)
観察数、平均値、標準偏差、連続変数の中央値、最小値および最大値ならびにカテゴリーデータのカテゴリーごとの数および割合を示す集計表を示した。集計のカテゴリーは、割り振られた2つの処置群であった。
【0195】
公式の統計解析プランを作成し、データベースロックに先立ちまとめた。包括解析(ITT)母集団について、主要有効性解析を実施した。表Cで予め設定しておいた基準を用いて、反応者を、CR、PR、またはMRと定義し、反応者の比率について、主要有効性解析を実施した。片側下限95%に対応する、各投与群の反応者の比率の両側90%信頼限界を設定した。
【0196】
この研究の薬理遺伝学的部分に参加した患者については、RNA発現レベルと治療に対する反応との相関性を記述的に評価した。加えて、要因としてRNA発現を用いて、反応の持続期間、疾患の病勢進行までの期間、生活の質および患者の全生存を解析することもできる。
【0197】
【化7】
薬理遺伝学的解析を目的として、合計224名の患者サンプルを判定した。これらの患者サンプルを、多発性骨髄腫の処置を対象としたボルテゾミブの臨床試験で採取した表Eを参照されたい。この組の患者のボルテゾミブに対する全奏功率は、46.4%(CR+PR率は35%)であった。デキサメタゾンに対する全奏功率は、39.7%(CR+PR率は22.2%)であった。薬理遺伝学的解析はすべて、反応カテゴリーの欧州血液骨髄移植グループ(EBMT)基準に依拠した。
【0198】
(反応性マーカーおよび非予測マーカーの同定)
多発性骨髄腫患者224名の生検を行ったため、予測マーカーの同定に使用する高品質の遺伝子発現データを作成できた。プロテアソーム阻害(ボルテゾミブなど)治療または糖質コルチコイド(デキサメタゾンなど)治療に対する多発性骨髄腫患者の結果と相関する候補マーカーについては、マーカーランキングアルゴリズムを組み合わせて用いて選択した。次いで、教師付き学習アルゴリズムおよび特徴選択アルゴリズムを使用して、本発明のマーカーを同定した。
【0199】
224名の発見サンプルと、病勢進行までの期間に関するデータと、短期的反応分類とから構成されるデータセットを用いて、2つの処置(ボルテゾミブまたはデキサメタゾン)に対する患者の結果に関係する遺伝子を同定した。データセットについては、最大反応と疾患の病勢進行までの期間の観点とから、患者の結果と整合する発見サンプルで構成された。最大反応では、各患者を反応者(N
R)、安定(N
S)または進行(N
P)に分類した。マーカーの同定では、この3つの反応クラスをさらに分類して、反応者対非反応者(安定と進行)(N
P+S)、反応者対進行または進行対その他(安定と反応者)(N
R+S)とした。患者が受けた処置に基づき解析を行い、患者をさらに分別した。ボルテゾミブの解析では、N
R=79、N
S=43およびN
P=41であった。したがって、反応者対非反応者の解析では、79対84のサンプルを利用した。反応者対進行の解析では、79対41のサンプルを利用し、進行対その他の解析では、41対122のサンプルを利用した。デキサメタゾンの解析では、N
R=25、N
S=16およびN
P=21であった。これに伴い、反応者対非反応者の解析では、25対37のサンプルを利用した。反応者対進行の解析では、25対21のサンプルを利用し、進行対その他の解析では、21対41のサンプルを利用した。
【0200】
44,928個の遺伝子転写物(アフィメトリクス(Affymetrix)プローブセット)については、製造者の指示に従い、2つのアフィメトリクス(Affymetrix)U133マイクロアレイ(AおよびB)で、サンプルごとに特性を明らかにした。TriazolTM(ライフテクノロジーズインク(Life Technologies,Inc.))により、全RNAを、ホモジナイズされた患者の腫瘍組織から単離し、製造者の推奨に従い、80℃で保管した。サンプルの標識と、これに続くアレイのハイブリダイゼーションとを行うための詳細な方法は、アフィメトリクス(Affymetrix)(CA、サンタクララ)から入手可能できる。手短にいうと、全RNA1.5μgを、二本鎖cDNA(スーパースクリプト(Superscript);ライフテクノロジーズインク(Life Technologies,Inc.))に変換し、T7ポリメラーゼプロモーター(アフィメトリクスインク(Affymetrix Inc.))を含むT7−(dT)24プライマーでこの1本鎖合成物を初回刺激した。引き続き、インビトロ転写システム(メガスクリプト(Megascript)キット;アンビオン(Ambion)ならびにBio−11−CTPおよびBio−16−UTP;エンゾ(Enzo))において、このT7プロモーター組み入れ配列を用いて、二本鎖cDNAのすべてを、ビオチン化cRNAを生成するためのテンプレートとして使用した。参照オリゴヌクレオチドおよびスパイクを、cRNA6〜10μgに加え、次いで、これを、45℃で16時間、一定のローテーションで、U133AおよびU133Bオリゴヌクレオチドアレイとハイブリッド形成させた。次いで、このアレイを洗浄し、EUKGE−WS1プロトコルを用いて、アフィメトリクス(Affymetrix)fluidics stationで染色し、アフィメトリクスジーンアレイ(Affymetrix GeneArray)スキャナーで走査した。
【0201】
(正規化および対数転換)
各マイクロアレイ上のすべてのマーカーの発現値を、トリム平均150に正規化した。発現値については、MAS5遺伝子発現解析データプロセシングソフトウェア(アフィメトリクス(Affymetrix)、カリフォルニア州サンタクララ)を用いて判断した。このセクションでは、これ以降、これらの値を「正規化した発現」という。さらなるプロセシングステップでは、番号1を正規化した発現値それぞれに加えた。その結果得られる数字から、2を底とする対数を取り、この値を、このセクションでは、これ以降、「対数発現」という。
【0202】
(分散成分の解析。)
患者ごとに、最大で6つの複製ハイブリダイゼーションすなわち、2つのT7RNA標識それぞれに3つの複製ハイブリダイゼーションがあった。各複製について、患者それぞれの強度に対する単一の推定値にまとめるため、線形混合効果モデルを用いた。各プローブセットでは、強度の全体平均からの乖離を表す、患者サンプルに特異的なランダム効果と、複製ハイブリダイゼーションランダム効果との条件を含む、モデルがフィットした。これらのランダム効果については、モデルの分散成分という。モデルフィッティングには、この2つのランダム効果を原因とする分散を判定し、患者サンプルの分散と複製の分散とを推定することが含まれる。
【0203】
(複製全体にわたる発現の概要。)
各プローブセットにおけるサンプルごとの発現値の最終的な概要については、最良線型不偏予測量(BLUP)を推定して得た。BLUPは、分散成分の線形結合に反比例するウェイトによる、各被検体の複製の加重平均とみなすことができる。このウェイトは、各被検体の強度推計が、全体平均からどの程度乖離するかに影響を与えるものである。混合効果モデルおよびBLUP推定の計算の詳細については、線形混合効果モデルおよび分散成分を論じたほとんどの手引書で確認することができる。たとえば、Searle、CasellaおよびMcCulloch著「Variance Components」を参照されたい。Wiley Series in Probability and Mathematical Statistics,1992 John Wiley &
Sons。
【0204】
(患者間の分散が小さい遺伝子の排除。)
患者サンプルの分散を勘案して、分散が75%を超えるプローブセットだけを含むように、プローブセットの数を減らした。44,928個のプローブセットのうち、7,017個がこのフィルターを通過し、次の解析が実施された。
【0205】
(任意の逆対数変換。)
t検定による差次的発現の解析には、BLUP発現値を用いた。差次的発現のデジタルスコアの計算では、累乗して、最終概要値xを最初のスケールに再び変換することで、対数変換を逆変換した:
y=2
x−1
(単一マーカーの選択。)
患者の反応カテゴリーまたは患者の病勢進行までの期間に関係すると思われる単一遺伝子の転写物については、以下に記載する特徴ランキングおよびフィルタリングの手法を用いて同定することができる。本明細書に記載する手法を用いた、予測マーカーにおける単一マーカーの同定内容を、表1(表1Aおよび表1B)、表2(表2Aおよび表2B)ならびに表3に示す。
【0206】
(モデルの選択。)
サンプルを感受性群と抵抗性群(もしくは、反応性と非反応性)または予測TTPにまとめて分類する1つまたは複数の遺伝子転写物のセットを、ある特定のクラシファイアアルゴリズムの文脈では、「モデル」という。遺伝子転写物については、「フィーチャー」という。どの遺伝子転写物(単数または複数)の組み合わせでサンプルを感受性群と抵抗性群とに最もうまく分類できるかを判断することを、「モデル選択」という。以下のセクションでは、本発明のモデルをいかに同定したかのプロセスについて説明する。実施例のモデルを表4に示す。単一マーカーの同定または予測マーカーと共に本明細書に記載する方法を用いて、本発明のマーカーを含む追加モデルを同定することができる。
【0207】
(フィーチャーランキングおよびフィルタリング)
予測モデルの選択の第1のステップは、7,017個のフィーチャーをフィルタリングして、サンプル分類と一致する数まで減らすることである。フィルタリングは、まず、スコア化方法によりフィーチャーをランク付けし、次いで、次の解析に備えて、最も高ランクのフィーチャーだけを選ぶものである。本発明で用いたフィルタリングのアルゴリズムは、(1)t検定、(2)プール倍率変化(「PFC)であった。特定の態様では、レベルは小さいものの一貫した変化を示す遺伝子を同定するにはt検定を用いて、一方のクラスでは「オフ」だが、他方のクラスの一部では「オン」となる遺伝子を同定するには、PFCを用いた。病勢進行までの期間のデータでは、Cox比例ハザードモデルを用いて、病勢進行までの期間のフィーチャーと関係するp値を判断した。
【0208】
t検定は、正規分布をなすと推定される二組の点間の平均値の有意差を検定するための標準的な統計方法である。これは、クラスの平均をクラスの標準偏差の和で除した商の差である差次的発現のSNR(信号雑音比)という暫定的な尺度と密接な関係があり、以前、発現データの解析に用いられたことがあり、たとえば、その内容を本明細書に援用する、Golubら,”Molecular Classification of Cancer: Class discovery and class prediction by marker expression monitoring,” Science、286:531〜537(1999)における、遺伝子gとクラスベクターcとの発現間の相関性の尺度であるP(g,c)の定義を参照されたい。
【0209】
プール倍率変化(「PFC」)方法は、2つの群のサンプル間における差次的発現の尺度であり、「対照」および「テスター」を任意に指定するものである。PFCは、対照サンプルに比べテスターで発現の高い遺伝子を見つけ出す。本発明に記載する2つのクラスを比較検討するために、各クラスを順番にテスターとして用いた。発現が高いと認められるには、テスターサンプルは、対照サンプルのkパーセンタイルを上回らなければならない。テスターサンプルの倍率変化値には、ユーザー指定の漸近線まで高くなる非線形変換が施され、中レベルの倍率変化は区別できるが非常に大きな倍率変化間で区別が起きないようにする。過剰発現テスターサンプルの、この圧縮された倍率変化値を平均して、POOFスコアを得る。特に、一定のテスターサンプルsおよび遺伝子gのPFCについては、圧縮テスターのテスターサンプル全体の平均として以下の式で計算される。対照比R(s,g):R(s,g)=C(x
gs/(k+x
gQ))、式中、C(x)は、圧縮関数C(z)=A(l−e
−z/A)であり、ここで、z≧およびC(z)=0、z<Tであり、この場合のTは1.0以上の閾値である。Aは、倍率変化値の上方漸近線、kは、データの付加雑音を反映した定数、すなわち、繰り返し測定における分散の固定成分である。x
gsは、サンプルsにおける遺伝子gの発現値、x
gQは、対照サンプルの発現値のQパーセンタイルである。
【0210】
テスターサンプルの最小画分は、R(s,g)が0よりも大きくなければならず、これが該当しない場合は、R(s,g)を0に設定する。
【0211】
本願発明者らは、このアルゴリズムを適用するに当たり、以下のパラメータを使用した。
パラメータ Q f T A k
ラン1の値 0.9 0.3 1.2 5 0.25
224名の患者サンプル全体の差次的発現を対象に、上記のt検定およびPFC方法を用いて、7,017個のプローブセットを使用するマーカーを解析した。t検定でP値が0.01未満となり、有意であると分かった、あるいは、PFCスコアが0以外であったプローブセットについては、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3に報告する。以下に例証するように、マーカーセットを構築する際に、これらのプローブセットを用いてもよい。
【0212】
再発性および難治性多発性骨髄腫患者の処置後における疾患の病勢進行までの期間(TTP)の予測因子を判断するため、Cox比例ハザード解析を実施した。この手法は、データの一部が検閲される場合がある、事象データの期間を解析するように設計されている(E.T.Lee,Statistical Methods for Survival Data Analysis,第2版 1992,John Wiley& Sons,Inc.を参照のこと)。ボルテゾミブ群の疾患の病勢進行までの期間の中央値は、6.2カ月(189日)、デキサメタゾン群では、3.5カ月(106日)(危険率0.55、P<0.0001)であった。進行日については、コンピュータアルゴリズムによって判断した。統計パッケージSASを用いて、この解析を行った;どんなパラメータを判定に使用したかなど。
【0213】
本願発明者らは、分散のフィルターを通過した7017個の転写物ごとに、Cox比例ハザードモデルを推定した。つまり、各モデルが1個の転写物を含む7,017個のモデルについて、推計を行った。各モデルから、相対危険性と、95%信頼区間と、各転写物がTTPに関係するp値との推定値を得た。ボルテゾミブによる処置を受けた患者162名の解析においては、7017個のモデルのうち、294個の転写物でP値が0.01未満であった。デキサメタゾンによる処置を受けた患者63名の解析においては、187個の転写物でP値が0.01未満であった。つまり、これらの転写物は、TTPと有意に関係していた。これらのプローブセットを、表1A、表1B、表2A、表2Bおよび表3にまとめてある。
【0214】
表の1A、1B、2A、2Bおよび3に報告するランクについては、マーカーの様々なスコアを独自にランク付けすることで判断している。TTP、PD対R、PD対NC+R、NR対Rを対象に、ランクを作成している。反応の比較検討では、t検定とデジタルスコア両方をランク付けしている。したがって、プロテアソームインヒビター特異的予測マーカーの処置結果に対して、最大で7通りの第1位ランクがあり得る。
【0215】
(表に記載したデータの概要)
表では、以下の用語を使用する:
「番号(No.)」または「番号(Number)」は、予測マーカーの同定番号に対応するものである。
【0216】
「プローブセットID」は、使用したヒトゲノムU133A、Bセットのオリゴヌクレオチドアレイのアフィメトリクス(Affymetrix)(カリフォルニア州サンタクララ)アイデンティファイアに対応するものであり、
「Rep公開ID」とは、プローブセットに対応する遺伝子の代表的な公開アイデンティファイアをいい、2005年4月12日付けのHG−U133AおよびHG−U133Bのアノテーションファイルから取得したものであり、これは、アフィメトリクス(Affymetrix)のウェブサイト(www.affymetrix.com/support/technical/byproduct.affx?product=hgu133)の遺伝子チップサポートエリアで閲覧およびダウンロードでき、
「タイトル」は、一般的な説明に対応するものであり、入手可能なときに、これもアフィメトリクス(Affymetrix)アノテーションファイルから取得し、
「遺伝子シンボル」は、遺伝子が一般に呼ばれているシンボルに対応するもので、これもアフィメトリクス(Affymetrix)アノテーションファイルから取得し、
「アントレ(Entrez)遺伝子ID」は、NCBI Unigene独自の遺伝子アイデンティファイアに対応するものであり、
「TTPマーカー」は、病勢進行までの期間の延長と相関するサンプル中で、有意に上方制御される(+)、または病勢進行までの期間の短縮と相関するサンプル中で、有意に上方制御される(−)予測マーカーを示すものであり、
「反応マーカー」は、治療に対して反応性であるサンプル中で有意に上方制御される(+)、または治療に対して非反応性であるサンプル中で有意に上方制御される(−)予測マーカーを示すものであり、
「特異性のタイプ」は、予測マーカーの重要なインジケーターとしてのTTPおよび/または反応インジケーターの重要性を示し、
「ランク」は、どの個別マーカーが、群と併用して使用できるか、または、たとえば、反応性または非反応など、サンプルを分類できるかを判断するプロセスに対応するものである。予測マーカーごとに、すべての方法の中で同定されたランクスコアが最も低いものとして、ランクを示してある。表3では、予測マーカーから、プロテアソーム阻害または糖質コルチコイド治療に対する反応性または非反応が示され、そのランクは、ボルテゾミブまたはデキサメタゾンにより処置されたサンプルに対する様々な方法全体で、最低ランクを示している。最高のクラシファイアおよびランクの決定を判断するには、(1)t検定、(2)プール倍率変化(「PFC」)、(3)ウィルコクソンの順位和検定という3通りのフィーチャー選択方法を利用した。
【0217】
本発明の予測マーカーを表1A、1B、2A、2Bおよび3にまとめてある。表1は、プロテアソーム阻害治療(ボルテゾミブなど)に対する反応性または非反応性の特異的アイデンティファイアである、同定された予測マーカーを示す。表1Aは、上方制御された非反応性インジケーターであり、および/または病勢進行までの期間の短縮と相関する予測マーカーを提供する。表1Aのマーカー番号1〜547は、新規の関連予測マーカーであり、予測マーカー番号548〜657は、非反応性および/または病勢進行までの期間の短縮との相関を予測する関連マーカーとして従来から同定されていたものである。2004年6月24日公開の国際特許公開第WO04053066号を参照されたい。表1Bは、上方制御された反応性インジケーターであり、および/または病勢進行までの期間の延長と相関する予測マーカーを提供する。表1Bのマーカー番号658〜876は、新規の関連予測マーカーであり、予測マーカー番号877〜911は、反応および/または病勢進行までの期間の延長との相関を予測する関連マーカーとして従来から同定されていたものである。2004年6月24日公開の国際特許公開第WO04053066号を参照されたい。表2は、糖質コルチコイド治療(デキサメタゾンなど)に対する反応または非反応の特異的アイデンティファイアである、同定された予測マーカーを示す。表2Aは、上方制御された非反応インジケーターであり、および/または病勢進行までの期間の短縮と相関する予測マーカーを提供する。表2Aのマーカー番号912〜1062は、新規の関連予測マーカーであり、予測マーカー番号1063〜1070は、ボルテゾミブ処置に対する進行期の患者の非反応と関連した非反応および/または病勢進行までの期間の短縮との相関を予測する関連マーカーとして従来から同定されていたものである。2004年6月24日公開の国際特許公開第WO04053066号を参照されたい。表2Bは、上方制御された反応インジケーターであり、および/または病勢進行までの期間の延長と相関する予測マーカーを提供する。表2Bのマーカー番号1071〜1185は、新規の関連予測マーカーであり、予測マーカー番号1186〜1202は、ボルテゾミブ処置に対する進行期の患者の反応と関連した反応および/または病勢進行までの期間の延長との相関を予測する関連マーカーとして従来から同定されていたものである。2004年6月24日公開の国際特許公開第WO04053066号を参照されたい。表3は、プロテアソーム阻害治療または糖質コルチコイド治療に対して特異的でなく、むしろ、どちらかの治療に関する反応/病勢進行までの期間の延長(+)または非反応/病勢進行までの期間の短縮(−)のインジケーター予測マーカーであり、一般の疾患の悪性度のインジケーターである、同定された予測マーカーを示す。表3のマーカー番号1203〜1423は、新規の関連予測マーカーであり、予測マーカー番号1424〜1474は、非反応/病勢進行までの期間の短縮との相関および/または進行期の患者のボルテゾミブ処置に対する反応に関連した反応/病勢進行までの期間の延長との相関を予測する関連マーカーとして従来から同定されていたものである。2004年6月24日公開の国際特許公開第WO04053066号を参照されたい。
【0218】
【化8】
【0219】
【化9】
【0220】
【化10】
【0221】
【化11】
【0222】
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【0230】
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【0260】
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【0264】
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【化58】
【0269】
【化59】
【0270】
【化60】
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【化61】
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【化66】
【0277】
【化67】
【0278】
【化68】
【0279】
【化69】
【0280】
【化70】
【0281】
【化71】
【0282】
【化72】
【0283】
【化73】
【0284】
【化74】
【0285】
【化75】
【0286】
【化76】
【0287】
【化77】
【0288】
【化78】
【0289】
【化79】
【0290】
【化80】
【0291】
【化81】
【0292】
【化82】
【0293】
【化83】
【0294】
【化84】
【0295】
【化85】
【0296】
【化86】
【0297】
【化87】
(分類方法)
現在、種々のアルゴリズムが利用可能であり、それを使用し、一定のフィーチャーにより、患者サンプルを分類することができる。したがって、利用可能などんなアルゴリズムでも、フィーチャーの選択プロセスを経て選択されるマーカーの組み合わせを用いて、患者サンプルが感受性または抵抗性であるかどうかの予測式を導くことができる。患者サンプルの分類(clasdification)に複数のマーカーが使用できることを例証するために、本発明で用いた分類方法は、1)線形予測スコア(「LPS」)、2)k近傍法であった。
【0298】
その内容を本明細書に援用する、Wrightら,”A gene−expression based method to diagnose clinically distinct groups of diffuse large B cell lymphoma.”PNAS 100(17):9991〜9996(2003)に記載されているような線形予測スコアを実行した。Wrightらが記載したように、ベクターXのLPSスコアを以下のように計算した。
【0299】
【化88】
式中、X
jは、セットのj番目のフィーチャーの対数発現値を表し、a
jは、j番目のフィーチャーが予測される結果と関係する程度を表す倍率である。Wrightらの場合と同様、本願発明者らは、倍率にはフィーチャーのt統計量を使用した。LPSスコアを考慮して、サンプルが2つのクラスの一方となる尤度を、以下の式を用いて判断した。
【0300】
【化89】
式中、φ(x;μ、σ
2)は、平均μおよび分散σ
2の通常の密度関数を表し、
【0301】
【化90】
および
【0302】
【化91】
は、カテゴリー1およびカテゴリー2のLPSスコアの観察された平均および分散である。本願発明者らの事例では、たとえば、カテゴリー1は、反応者であり、カテゴリー2は、非反応者であると考えられる。次に、新規のサンプルの予測では、新規サンプルは、確率P(X∈S
1)で一方のクラス、確率P(X∈S
2)=1−P(X∈S
1)で他方のクラスになると考えられる。
【0303】
k近傍分類法では、あるクエリー特性と、その訓練セットにおける各特性との類似性を計算する[Introduction to Machine Learning by
Ethem ALPAYDIN,The MlT Press,2004年10月,ISBN 0−262−01211−1]。非常に類似した特性kを選択し、クラス標識の中で票決を行い、クエリー特性の予測を判断する。ここで、本願発明者らは、k=1を用いた。
【0304】
(フィーチャーの選択)
フィーチャーの選択は、データセットで利用可能な何千ものフィーチャーのサブセットを判断し、マーカーセットまたはモデルを形成するフィーチャーを組み合わせて、処置結果で患者を分類するプロセスである。フィーチャーを選択するには、たくさんのアプローチがある。ここでは、マーカーセット例を作成する2つのアプローチを報告する:(1)上位N最重要フィーチャー、および(2)標準的なフィーチャーの選択方法である逐次前方フィーチャー選択(Dash and Liu,「Feature Selection for Classification,」Intelligent Data Analysis 1:131〜156,1997を参照のこと)。次に、フィーチャーの選択を、データセットにどのように適用するかについて説明する。
【0305】
第1のステップとして、結果変数と関連するフィーチャーだけをフィーチャーセットの候補と考える。LPSモデルモデルでは、複数検査で調整済みのp値が0.05未満のすべてのフィーチャーについて判断を行った。k近傍モデルでは、上位100個のPFCマーカーについて判断を行った。どちらの場合も、逐次前方の選択は、セットのマーカーを0にして始める。各反復時に、評価関数により選択されるフィーチャーを加えて、新規のフィーチャーセットを作成する。評価関数を改善するフィーチャーを加えることができなくなったときに、反復は終了する。評価関数は、(1)すべてのサンプルで構築されるモデルまたは(2)リーブワンアウトクロスバリデーション(DashおよびLiu、1997)のどちらかで正確に予測されたサンプル数である。同順位については、結果変数と一変量の関係が強いフィーチャーを用いて決定する。既に選択されたフィーチャーを除外するたびに、フィーチャーの選択を繰り返すことで、複数のマーカーセットを作成することができる。
【0306】
(クラス予測の特定応用)
(線形予測子スコア(LPS))
ボルテゾミブで処置され、反応性群または非反応性群に分類された患者162名を用いた以下の表は、本願発明者らがデータセットから構築した最初のLPS予測セットのマーカーを示す。さらに、このマーカーが、反応性(R)または非反応性(N)の患者で発現が高いかどうかも分かる。プローブセットのアノテーションは、アフィメトリクス(Affymetrix)が提供するものである。
【0307】
【化92】
【0308】
【化93】
モデルを同定するための本明細書に記載の方法および当該分野の標準的な方法を採用することで、追加のマーカーセットを得られることが理解されるであろう。各モデルには、お互いに取り替えてもよいような、相関性の高いフィーチャーがたくさんあり、これらについては、すべてを記載しているわけではない。類似の方法を採用して、同定された本発明のマーカーセットから1つまたは複数のマーカーを利用することで、予測マーカーセットを作成してもよい。
【0309】
本発明の範囲は、本発明の態様の例証として意図している、本明細書記載の特定の実施形態により、限定されるべきものではない。本明細書に示し、記載した方法および成分に加え、機能的に等価な方法および成分は、本発明の範囲内であり、通常の実験法を用いることで、前述の説明から当業者に明らかになるであろう。そうした等価物については、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図している。
【0310】
学術論文、特許およびデータベースなど、本明細書に引用した参考資料はすべて、明示的に本明細書に援用する。