特許第5796859号(P5796859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴェルサリス ソシエタ ペル アチオニの特許一覧

特許5796859ナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法
<>
  • 特許5796859-ナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796859
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 31/02 20060101AFI20151001BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20151001BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20151001BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20151001BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C01B31/02 101Z
   C08L101/00
   C08K7/00
   C08K3/04
   C08J9/04CES
   C08J9/04CET
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-537452(P2012-537452)
(86)(22)【出願日】2010年10月27日
(65)【公表番号】特表2013-510065(P2013-510065A)
(43)【公表日】2013年3月21日
(86)【国際出願番号】IB2010002762
(87)【国際公開番号】WO2011055198
(87)【国際公開日】20110512
【審査請求日】2013年7月30日
(31)【優先権主張番号】MI2009A001920
(32)【優先日】2009年11月3日
(33)【優先権主張国】IT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512115977
【氏名又は名称】ヴェルサリス ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】フェリザーリ リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティノ オルガ
(72)【発明者】
【氏名】カサリーニ アレッサンドロ
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/106507(WO,A2)
【文献】 特表2008−527078(JP,A)
【文献】 特表2011−513167(JP,A)
【文献】 特表2009−511415(JP,A)
【文献】 特開2003−231098(JP,A)
【文献】 特表2011−510906(JP,A)
【文献】 N. A. ASRIAN et al.,IR Study of Ozone Modified Graphite Matrix,Mol. Cryst. and Liq. Cryst.,2000, 340, 331-336.
【文献】 F. CATALDO,Ozone Reaction with Carbon Nanostructures 2: The Reaction of Ozone with Milled Graphite and Different Carbon Black Grades,Journal of Nanoscience and Nanotechnology,2007, 7, 1446-1454.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B31/00−31/36
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/16
C08J9/00−9/42
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノスケールグラフェンプレートレットを製造する方法であって、
(a)黒鉛材料を素又はオゾンと接触させることによって、酸素基で官能化した黒鉛材料(FOG)から成る、8:1より高い炭素/酸素モル比を特徴とする前駆体を得る工程、
(b)続いて前記FOG前駆体を化学的又は物理的に還元することによって、20:1より高い炭素/酸素モル比を特徴とするナノスケールグラフェンプレートレットを得る工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
(a)酸素基で官能化した前記黒鉛材料(FOG)が、10:1より高い炭素/酸素モル比を特徴とし、
(b)前記ナノスケールグラフェンプレートレットが、50:1より高い炭素/酸素モル比を特徴とする、請求項1に記載のナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法。
【請求項3】
前記黒鉛材料に接触させる物質が酸素である、請求項1又は2に記載のナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法。
【請求項4】
前記素又はオゾンが、液体又はガス状の水を最高で50体積%含む、請求項1、2又は3に記載のナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法。
【請求項5】
前記接触が−200〜600℃の温度で起きる、請求項1〜のいずれかに記載のナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法。
【請求項6】
前記接触が−200〜10℃の温度で起きる、請求項に記載のナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法。
【請求項7】
前記黒鉛材料が、天然若しくは合成黒鉛又は膨張黒鉛である、請求項1〜のいずれかに記載のナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法。
【請求項8】
前記FOG前駆体の化学的還元が、水性ガス、水素、ヒドラジン、メチルヒドラジン等の還元分子又は化合物によって行われる、請求項1〜のいずれかに記載のナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法。
【請求項9】
前記FOG前駆体の物理的還元が、1分あたり10℃を超える温度勾配で少なくとも600℃にまで加熱することによって熱的に行われる、請求項1〜のいずれかに記載のナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法。
【請求項10】
前記加熱が、1分あたり50℃を超える温度勾配で少なくとも900℃まで行われる、請求項に記載のナノスケールグラフェンプレートレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極性が低いポリマーマトリックス中での高分散性を備えたナノスケールグラフェンプレートレット(graphene platelet)を製造する方法及び関連するポリマー組成物に関する。
より具体的には、後述の方法で得られるナノスケールプレートレットは概して、既に知られている他の方法で得られるナノスケールプレートレットより簡単に大規模に且つ環境への影響を抑えて製造することができる。本発明の目的である方法で得られるナノスケールプレートレットは、驚くべきことに、改善された電子伝導性、並びに、当該分野で既知の方法で得られるナノスケールプレートレットと比較すると、中遠赤外線レンジ内でのより高い吸収力及び放射線放出を有する。
このナノスケールプレートレットは、驚くべきことに、従来のナノスケール充填材より、無極性又は極性がごくわずかなポリマーマトリックスに容易に分散可能である。
【0002】
本発明のナノスケールグラフェンプレートレットは1枚以上のグラフェンシートの形態であり、場合によっては官能化又は化学的に修飾され、各シートは一般に炭素原子の二次元の六方格子から成る。ナノスケールグラフェンプレートレットは、300nm以下の厚さ(即ち、グラフェンシートに直角の方向の寸法、より広い意味ではデカルト座標での最も小さい寸法)、50μm以下の平均長さ、幅又は直径及び40〜2000m2/gの表面積を有する。
本発明の目的は、このナノスケールプレートレットを使用して得られる熱可塑性ポリマー組成物にも関し、ナノスケールプレートレット含有量は、ポリマーの質量に対して例えば30%以下である。
このナノコンポジット組成物から得られる最終産物は、典型的には、添加剤を含有していないポリマー又は従来の充填材を同じ濃度で含有させさえしたポリマーを使用した類似の配合物より改善された機械抵抗、導電性及び断熱性を有する。この最終産物は、高い熱的、電気的及び機械的性能を有するプラスチック製品の分野で特に有用である。
【0003】
したがって、本発明は、ポリマーの質量に対してある濃度(例えば、30%以下)でナノスケールグラフェンプレートレットを充填した発泡性熱可塑性ポリマー(例えば、発泡性スチレンのポリマー)をベースとした顆粒/ビーズにも関する。このビーズ/顆粒から得られる発泡最終産物は、典型的には、黒鉛、石炭(カーボンブラック)等の従来の充填材を使用した類似の配合物より優れた機械抵抗、改善された断熱性及び帯電防止能を有する。これらの最終産物は、建築産業向けの断熱分野で特に有用である。
【背景技術】
【0004】
高分子ナノコンポジット組成物の近年の工業規模での開発、及び市場での需要の高まりにより、高性能であり且つポリマーマトリックス中で容易に分散可能な新しいナノ材料の合成に科学的な関心が集まっている。特に、このナノ材料は、ポリマー鎖に匹敵する寸法及び高いアスペクト比(L/D>100)を有する。
【0005】
例えば、カーボンナノチューブ(carbon nanotube:CNT)はグラフェン系ナノ材料であり、高アスペクト比(L/D)並びにひときわ優れた電気的性質、機械的性質及び他の性質のおかげで、高分子ナノコンポジットの分野で広く応用されている(US2009/030090、US2009/200517、WO2006/114495、CA2647727)。
特許出願CA2647727は、改善された機械的性質を備えた、カーボンナノチューブ(MWNTとDWNTとの組み合わせ)及びエポキシマトリックスをベースとした高分子ナノコンポジット組成物に関する。
国際特許出願WO2006/114495パンフレットには、60質量%未満の濃度でナノチューブを含有する、気泡寸法(cell dimension)<150μmの高分子発泡体(熱可塑性及び熱硬化性)が記載されている。これらの発泡体は食品包装、断熱、膜等の分野で使用される。
【0006】
CNTは概して2つの主要グループに分類される。単層ナノチューブ(single−walled nanotube:SWNT)と多層ナノチューブ(multi−walled nanotube:MWNT)である。理想的なSWNTは、2つのフラーレン半球(semi-fullerene)で端部が閉じられた管状構造を形成する丸められたグラフェンシートとして表わすことができる。SWNTは典型的には1〜10nmの直径及びミクロンオーダーの長さを有し、アスペクト比は>1000である。グラフェンシートの巻き方向に応じて、キラル(螺旋)構造と非キラル構造とを区別可能である。
【0007】
SWNTの電気的性質についての研究は、直径及びキラリティに従ってSWNTが金属的挙動と半導体的挙動の両方を有し得ることを示している。
弱いファンデルワールス力で繋がれた同心のグラフェンチューブとして表わされるMWNTは、典型的にはSWNTと同様の電子的性質を有する。
カーボンナノチューブは現在でも依然として極めて高コストであり、また界面での十分な接着性及びポリマーマトリックス中での良好な分散度を保証するためには複雑な化学的及び/又は機械的操作を必要とすることが多い。
近年、グラフェン(炭素原子で構成される二次元の六方格子)及びナノスケールグラフェンプレートレット(1枚以上のグラフェンシートを重ね合わせることで得られる)が、カーボンナノチューブに代わる効果的且つより経済的な代替物であると判明している。
【0008】
近年、これらの材料の合成方法の最適化を目的として数多くの研究が行われている。第1の製造手順において、ナノスケールグラフェンプレートレットは、黒鉛酸化物(graphite oxide:GO)を前駆体として使用して得られる。黒鉛の酸化には3つの方法があり、これらは最も広く利用され(Brodie B.C.,Philos.Trans.R.Soc.London,149,249(1859);Staudenmaier L.,Ber.Dtsh.Chem.Ges,31,1481(1898);Hummers W.et al,J.Am.Chem.Soc.,80,1339(1958))、これらの方法に従うと、酸化が、カリウム塩の存在下、酸性環境(例えば、硫酸及び硝酸)で起きる。生成された黒鉛酸化物を水溶液中での連続した洗浄作業及び濾過に供し、最終的に真空下で乾燥させる。
【0009】
上記の方法の1つに従って得られる黒鉛酸化物は、
共有結合した酸素基(即ち、エポキシ、ヒドロキシル基、より度合いの低いカルボニル及びカルボン酸基)、
共有結合していない水(Stankovich et al,Carbon,45,1558−1565(2007))
を層間挿入(intercalated)した黒鉛層から成る材料である。
黒鉛酸化物は、X線回折(XRD)で特徴付けすることができる。GOに典型的なXRDスペクトルは一般に約0.71nmの格子面間距離(WO2008/045778)を示し、結果的にそのままの黒鉛に典型的な格子面間距離0.34nmより大きい。
GOの官能基がこの材料を高親水性にし、これによってこの材料は水溶液中で簡単に剥離可能となる。特に、特許出願WO2008/048295では、例えば水中で黒鉛酸化物を剥離するために、周波数約20kHzの音波を使用して最終的に安定したコロイド懸濁液を得ている。
【0010】
黒鉛酸化物は一般に電気絶縁性であり且つ中赤外線では光学的にあまり厚くない材料であり、更にその親水性のせいで、最も一般的な有機ポリマー、特にはわずかに極性又は無極性のポリマーには不相溶性である。
このような欠点を回避するために物理的及び化学的なものの両方を含めた様々な方法が文献で提案されていて、これらの方法では、高分子ナノコンポジットにおける可能性のある使用のために、前駆体としての黒鉛酸化物から開始してナノスケールグラフェンプレートレットを得る(WO2008/045778;Stankovich et al,Carbon,45,1558−1565(2007);Tung et al,Nature Nanotech.4,25−29(2008);WO2008/048295;Si and Samulski,Nano Letters,8,1679−1682(2008);WO2009/018204;WO2009/049375)。
【0011】
例えば、GOの急速な加熱は層間挿入物質の揮発につながり得て、結果的にグラフェンシートが膨張し、熱剥離する。特許出願WO2008/045778パンフレットには、GO(又はGO/水懸濁液)の不活性雰囲気(例えば、窒素、アルゴン、これら2種の混合物)中での急速な加熱(>2000℃/分)が黒鉛酸化物の膨張/離層につながることが明記されている。ナノスケールグラフェンプレートレット、より具体的には、典型的にはエポキシ、ヒドロキシル及びカルボキシル基を殆ど有さず、また改善された導電性及び最も一般的な熱可塑性及び弾性ポリマー中での分散性を特徴とする官能化グラフェン(本明細書ではFGSと省略)がこのようにして得られる。表面積〜1500m2/g及びそのままの黒鉛に典型的な結晶ピークも黒鉛酸化物に典型的な結晶ピークも存在しないXRDスペクトルを有するFGS材料は、2000℃/分オーダーの温度勾配に対応する。
【0012】
ナノスケールグラフェンプレートレットは、水溶液中に分散させたGOをヒドラジン水和物(H2NNH2−H2O)又は他の還元剤を使用して化学的に還元して製造することもできる(StanKovich et al.,Carbon,45,1558−1565(2007))。しかしながら、還元が進行するにつれて、還元された酸化物の水性環境における不溶性に関係した合体現象と、その結果としての、黒鉛のマクロ粒子形成につながる再凝集現象が起き得る。
Tungら(Nature Nanotech.4,25−29(2008))は、GOを純粋なヒドラジンで還元して導電性のヒドラジングラフェン(HG)を得ていて、これを乾燥させてジメチルスルホキシド(DMSO)又はN,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒に再懸濁させることができる。
【0013】
特許出願WO2008/048295パンフレットにおいて、GOの還元は、ポリマー材料(例えば、ポリ(ナトリウム4−スチレンスルホネート):PSSS)の存在下で、ポリマー材料を高濃度(質量比10:1=PSS:GO)で使用して行われる。これによってポリマー基(例えば、PSS)とグラフトしたナノスケールグラフェンプレートレットが得られ、このグラフトのおかげで還元中の合体現象が回避される。
ナノスケールグラフェンプレートレットを製造する代替の合成方法では、黒鉛又はその誘導体の、化学的及び/又は物理的方法による剥離を想定している(US2009/0026086;US2008/0206124;US2008/0258359;US2009/0022649;Hernandez et al.,Nat.Nanotechnol.3,N.9,pp.563−568(2008);Hernandez et al.,J.Am.Chem.Soc.,2009,131(10),pp.3611−3620;US2009/0155578;Li et al.,Science 319,1229−1232(2008);Li et al.,Nature Nanotech.3,538−542(2008))。Hernandezらは(“High−yield production of graphene by liquid−phase exfoliation of graphite”,Nat.Nanotechnol.3,N.9,pp.563−568,2008)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMEU)等の有機溶媒中での黒鉛の音波処理及びその結果としての剥離によって高品質の単層グラフェンシートのコロイド懸濁液を得る方法について記載している。
【0014】
しかしながら、Hernandezらが示すように、これらの方法の効率は概して制限され、執筆者は収率1〜12%を示している。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、官能化した黒鉛(又は黒鉛材料)(FOG)、官能化グラフェン前駆体(FOG)の剥離/還元から得られるナノスケールグラフェンプレートレット、ナノスケールプレートレットを充填した熱可塑性ポリマー組成物、特にはナノスケールグラフェンプレートレットを製造する方法にも関する。本発明は、添付の特許請求の範囲の項目により詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例で製造された試料に関する中赤外線(400〜4000cm-1)における透過率(T)対波長(λ)を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的であるナノスケールグラフェンプレートレットは官能化グラフェン前駆体から開始して合成され、また1枚以上のグラフェンシートの形態であり、場合によっては官能化され又は化学的に修飾され、各シートは一般に炭素原子の二次元の六方格子から成る。
【0018】
特に、本発明が関するところのナノスケールグラフェンプレートレットは、300nm以下の厚さ(グラフェンシートに対して直角)を有する。厚さは好ましくは100nm未満であり、より一層好ましくは厚さは0.3〜50nmである。このナノスケールプレートレットは、50μm以下、好ましくは10μm以下、より一層好ましくは2000nm以下の平均寸法(長さ、幅又は直径)も有する。本発明が関するところのナノスケールグラフェンプレートレットは表面積>40m2/gを有する。表面積は好ましくは40〜2000m2/gであり、より一層好ましくは表面積は90〜2000m2/gである。
ナノスケールプレートレットは、20/1より高い、より好ましくは40/1より高い、より一層好ましくは80/1〜1000/1の炭素/酸素(C/O)モル比(元素分析で測定)を有する。
【0019】
後述の方法を通じて得られるナノスケールプレートレットは概して、既に知られている他の方法の場合より簡単に大規模に且つ環境への影響を抑えて製造することができる。
特に、本発明の目的は、黒鉛酸化物の代わりにグラフェン前駆体から開始して得られるナノスケールグラフェンプレートレットに関する。
驚くべきことに、出願人は、黒鉛及び/又は黒鉛材料を、慣用的ではない物理的な処理を通じて、既知の他の方法より経済的に且つ環境への影響を抑えて、酸素基で選択的に官能化できることを発見した(Brodie B.C.,Philos.Trans.R.Soc.London,149,249(1859);Staudenmaier L.,Ber.Dtsh.Chem.Ges,31,1481(1898);Hummers W.et al,J.Am.Chem.Soc.,80,1339(1958))。
本発明において、この処理は、制御された雰囲気中での熱酸化から成る。
第1の手順は、酸化熱処理が様々な濃度の酸素の存在下で起きることを想定していて、好ましくはO2量は全体に対して0.5〜100体積%、より一層好ましくは全体に対して1〜30体積%である。窒素又は他の不活性ガス(ヘリウム、アルゴン等)を酸素の希釈に使用し得る。
【0020】
より具体的には、酸化は、黒鉛を入れる石英管から成る炉内で5時間未満、好ましくは1〜3時間にわたって適切な温度、好ましくは700℃未満、より一層好ましくは350〜600℃で行われる。
有利には、特定の量の水蒸気も酸化雰囲気に加え得る。水蒸気の濃度は、0.5〜50体積%、好ましくは0.5〜10体積%、より一層好ましくは0.5〜5体積%であり得る。
出願人は、驚くべきことに、黒鉛及び/又は黒鉛材料を、オゾン又はオゾンを含有するガスを使用しても酸素基で官能化できることも発見した。
【0021】
本発明で言及するところのこのオゾンを、例えば以下の手順の1つに従って発生させることができる。
・誘電体で隔てられた2つの電極間で発生する及び実際の放電領域からくる特定の放電(クラウン効果)を通す、酸素を含有するガスの使用。
・波長約185nmを有するUVランプの使用。
・誘電体バリア放電によって形成される冷たいプラズマの使用。
【0022】
酸素を含有するガスをランプの周囲に流すと、そのランプから発せられる紫外線によってオゾンが発生する。
ガスの酸素含有量は可変である。含有量が高いと、一般にオゾン発生量はより多い。特定のケースにおいて、ガスは空気(この場合、酸素は典型的には約20%)又は純粋な酸素であり得る。
オゾンを含有するガスを黒鉛材料上に流すことによって、黒鉛材料が官能化される。
オゾンを含有するガスを、黒鉛材料に1分より長い時間、好ましくは1時間より長い時間にわたって通す。
ガス及び/又は黒鉛材料を、−200〜600℃、好ましくは−30〜200℃の温度にすることができる。
【0023】
有利には、飽和又は過熱され得る水蒸気流も、オゾンを含有するガスと共に供給することができる。この水蒸気を、オゾン化前又は後にガス流に添加することができる。
本発明で使用する黒鉛材料は天然、合成又は膨張させたものであり得て、0.5〜50μm、好ましくは1〜15μmの粒径及び比表面積5〜20m2/gを有し得る。一例がKropfmuhl社の製品UF 2であり、4.5μmの粒径を有する。
あるいは、他の黒鉛材料を使用し得る。黒鉛材料又は黒鉛系材料は、IUPACによって記載されるものと意図される(IUPAC Recommendations(1995)の“RECOMMENDED TERMINOLOGY FOR THE DESCRIPTION OF CARBON AS A SOLID”を参照のこと)。
【0024】
本発明の目的である上記の酸化手順を適用することによって、官能化黒鉛又は官能化黒鉛材料(FOG)を、酸素基を共有結合させて(即ち、エポキシ、ヒドロキシル基〜より度合いの低いカルボニル及びカルボン酸基)、及び/又は共有結合していない水を含有させて得る。これらの官能基は黒鉛又は黒鉛材料中に均一に分布していて、酸素に対する炭素のモル比は8:1より高く、好ましくは10:1より高い。
この官能化黒鉛又は黒鉛材料は、驚くべきことに、ナノスケールグラフェンプレートレットの合成における黒鉛酸化物に代わる効果的な代替物であると判明している。
【0025】
この官能化黒鉛又は黒鉛材料は、驚くべきことに、当該分野で既知の方法で得られる黒鉛酸化物より低い親水性を有する。FOGは、適切な非プロトン性有機溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン)において安定した分散物を形成することができ、またこの分散物中に対象のポリマーを溶解させることも可能であり、または、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート等の既知の界面活性剤を使用して水溶液中で安定した分散物を形成することができる。
【0026】
本発明の目的であるナノスケールグラフェンプレートレットは、黒鉛酸化物前駆体の剥離及び/又は還元に関して当該分野で既知のものと同じ手順を利用してこの官能化グラフェン前駆体(FOG)から開始して合成される(例えば、WO2008/045778パンフレット;Stankovich et al,Carbon,45,1558−1565(2007);Tung et al,Nature Nanotech.4,25−29(2008);WO2008/048295;WO2009/018204;WO2009/049375を参照のこと)。
【0027】
このようにして製造されたナノスケールプレートレットは、驚くべきことに、高い電子伝導性、並びに、等しい比表面積を有する黒鉛酸化物から開始して合成されるナノスケールプレートレットと比較すると、中遠赤外線レンジ内でのより高い吸収力及び放射線放出を特徴とする。
更に、このナノスケールプレートレットは、炭素量と比較すると、芳香族及び/又は脂肪族炭素に結合した酸素原子を殆ど含有しない。
従来の黒鉛酸化物の剥離/還元で得られるナノスケールプレートレットより、特に無極性又はわずかに極性のポリマーマトリックスにおける改善された分散性が得られる。
更に、ポリマーマトリックス中での分散性を更に改善するために、ポリマー鎖を本発明の目的であるナノスケールプレートレットに挿入し得る。
【0028】
本発明の目的は、このナノスケールグラフェンプレートレットを使用した高分子ナノコンポジット組成物にも関する。
本発明の目的であるナノスケールグラフェンプレートレットをその中に分散させ得る熱可塑性ポリマーマトリックスには、ビニルポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)、ビニル芳香族モノマー(例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリアルファメチルスチレン及びスチレン−アルファメチルスチレンコポリマー)が含まれる。
本発明の目的であるナノコンポジットポリマー組成物は、ポリマーの質量に対して30%以下のある含有量のナノスケールプレートレットを有する。
【0029】
好ましくは、ナノコンポジットポリマー組成物は、ポリマーの質量に対して、本発明の目的であるナノスケールプレートレットを0.004〜15質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、より一層好ましくは0.04〜2質量%含有する。
一般に従来の材料と共に使用される慣用の添加剤(顔料、安定剤、成核剤、難燃系、静電気防止剤、離型剤等)を、本発明の目的であるナノコンポジットポリマー組成物に添加し得る。
ナノコンポジット組成物は概して高い導電性を有し、これが帯電防止用途(ESD)及び電磁放射線からの保護(EMIシールド)への使用を可能にしている。
機械的特性、例えば弾性係数及び熱耐性(より高いガラス転移温度)も改善される。
【0030】
上記のナノスケールグラフェンプレートレットは、様々な手順を利用して本発明の目的であるポリマー組成物に取り込ませ得る。
ナノコンポジット組成物を製造方法するための第1の方法は、ポリマーを十分な溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン)に溶解させる溶解法である。次に、ナノスケールグラフェンプレートレットをこの溶液に加え、例えば音波流を利用して分散させる。代替の手順においては、ナノスケールグラフェンプレートレットを溶媒の一部に予備分散させ得て、この分散液を続いてポリマー溶液と混合する。多くの場合、溶媒は、蒸発によって生成物から除去できるように低沸点になり得る。沸点がより高い溶媒を使用する場合、コンポジットを、適切な溶媒での沈殿とそれに続く濾過及び/又は遠心分離によって回収することができる。溶液中での方法は、ナノスケールグラフェンプレートレットを適切な溶媒中の安定した懸濁液の形態で直接合成する場合に特に有用である。
【0031】
あるいは、本発明の目的である官能化グラフェン前駆体(FOG)を、その親水性の低さから、対象とするポリマー溶液(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド及びポリスチレン)に直接分散させ、また同時にジメチルヒドラジン又は他の還元剤で還元することができる。これによって、ポリマー内部でのナノスケールプレートレット分散度の高いナノコンポジット組成物が得られる。
ナノコンポジット組成物を製造方法するための第2の方法は、溶融状態での混合から成り、この方法ではポリマーを融点又は軟化点より高い温度にし、次にナノスケールグラフェンプレートレットと混合する。これを目的として使用されるナノスケールプレートレットは好ましくは粉末形態である。混合は、プラスチック材料の加工に一般に使用される装置で行うことができる(二軸押出機、ブラベンダー混合機等)。
【0032】
更なる代替の手順においては、粉末形態のポリマー及び同じく粉末形態のナノスケールグラフェンプレートレットを、ドライブレンド又はターボ混合によって予備混合し、続いて混合機内で溶融状態で加工することができる。この予備混合によって、ポリマーマトリックス内部でのナノ充填材のより良好な分散度が保証される。
別の代替の方法は現場での(in-situ)重合によって表わされ、この方法ではナノスケールグラフェンプレートレットをモノマーに分散させ、このモノマーを続いて重合する。このモノマーを適切な溶媒に溶解させることもでき、低粘度にすることで、ナノスケール装入材料の良好な分散度を確保することができる。この方法の間、ナノスケールプレートレットを分散させ続けるために、重合を撹拌条件下で行うこともできる。
ナノスケールプレートレットを場合によっては重合前に官能化させることもできる。特に、ビニル基を挿入し得る。このようにして、ナノスケールプレートレットを共重合することによって、ポリマーが融点を超えたとしても再凝集を防止することができる。
【0033】
出願人は、重合それ自体の最中にナノスケールグラフェンプレートレットを製造する方法も発見した。この方法は、本発明の目的である官能化グラフェン前駆体(FOG)を、界面活性剤(例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート)を使用して水性懸濁液中に分散させることを含む。次にモノマーを添加し、重合を懸濁下で行う。重合の開始と同時又はその前に、ただし水溶液中にモノマーを既に懸濁させた状態で、還元剤(例えば、ヒドラジン又はメチルヒドラジン)を添加してナノスケールグラフェンプレートレットの前駆体を還元する。次に、重合を、使用されている通常の方法に従って終了させ得る。これによって、ポリマーマトリックス中でのナノスケールプレートレットの最適な分散度が得られる。
【0034】
本発明の更なる目的は、例えば顆粒又はビーズ又は溶融混合物の形態の発泡性ビニル及びビニル芳香族ポリマーの組成物に関し、この組成物は、
(a)1種以上の重合性モノマー(例えば、ビニル及びビニル芳香族モノマー)を含むベースの重合によって生成されるポリマーマトリックスと、
(b)ポリマーマトリックスに球状に取り込まれた、ポリマー(a)に対して1〜10質量%の発泡剤と、
(c)ポリマー(a)に対して0.004〜15質量%、好ましくは0.01〜5質量%、より一層好ましくは0.04〜2質量%の、本発明の目的であるナノスケールプレートレットと、を含む。
【0035】
本発明の目的は、上記の発泡性組成物を使用して得られる発泡体又は発泡物品にも関し、したがって組成物は発泡剤をもはや含有しない又はその含有率は低い。
驚くべきことに、この発泡性コンポジットから得られる発泡体が、同じ密度でも、そのナノスケールプレートレットを含有していないポリマーの発泡体と比較すると、改善された断熱性を示すことが判明している。断熱性能は、驚くべきことに、他の不透熱性物質(例えば、石炭、黒鉛、アルミニウムフレーク)を使用して得られる発泡体より概して良好である。
【0036】
また、これらの革新的なナノコンポジット発泡体では、従来の難燃添加剤(ハロゲン誘導体等)をより低い濃度で使用しても難燃性を付与可能であることが判明している。
本発明の目的である発泡性ポリマー組成物は、以下でより詳細に説明するように、
(1)ナノスケールグラフェンプレートレット及び考えられる添加剤のモノマーへの溶解/分散とそれに続く水性懸濁液中での重合並びに発泡剤の添加を含む、懸濁液中での方法、
(2)ポリマーマトリックス及びナノスケールグラフェンプレートレットを含む予備生成されたポリマー組成物の懸濁(例えば、水性)とそれに続く発泡剤の添加及び取り込みを含む懸濁液中での方法、
【0037】
(3)以下の:
顆粒若しくは粉末の形態又は既に溶融状態にあるビニル又はビニル芳香族ポリマーをナノスケールグラフェンプレートレット(そのまま又はマスターバッチの形態)及び他の考えられる添加剤と混合し、
任意で、まだ溶融状態にないならば、ポリマー混合物をビニル芳香族ポリマーの融点より高い温度にし、
発泡剤を溶融したポリマーに、他の考えられる添加剤(少なくとも30質量%、好ましくは50〜90質量%の臭素を含有する、モノマーベースに対して0.1〜3質量%、好ましくは0.4〜2.2質量%の自消性臭素化添加剤及びモノマーベースに対して0〜1質量%、好ましくは0.01〜0.4質量%の、少なくとも1つのC−C又はO−O熱不安定性結合を有する相乗剤を含有する難燃系をベースとした防炎系等)と共に取り込ませ、
このようにして得られたポリマー組成物を静的又は動的混合要素によって混合し、
【0038】
このようにして得られたポリマー組成物を(例えば、米国特許第7320585号明細書に記載の手順に従って)圧力下でカッティングダイに送る
ステップを順番に含む連続塊状方法(continuous mass process)、あるいは
(4)直接押出成形方法、即ちビニル芳香族ポリマーの顆粒とナノスケールグラフェンプレートレット(そのまま又はマスターバッチの形態)との混合物を直接、押出機に送り、そこに発泡剤も送られる方法
によって製造方法することができる。あるいは、ポリマーは、溶液での重合プラントからの既に溶融状態にあるポリマーであり得る。
【0039】
本発明をより深く理解し、また具体化するために、以下に幾つかの例示的且つ非限定的な実施例を挙げる。
実施例では図1に言及し、図1は、
(a)実施例11のような化学酸化による黒鉛酸化物、
(b)実施例11のように黒鉛酸化物から得られるナノスケールプレートレット、
(c)実施例8のような熱酸化から得られるFOG及び
(d)実施例8のようにFOGから得られるナノスケールプレートレット
についての中赤外線(400〜4000cm-1)における透過率(T)対波長(λ)を表す。
【実施例】
【0040】
実施例1
オゾンから開始してのナノスケールグラフェンプレートレットの調製
UF2−96/97タイプの黒鉛粉末(Kropfmuhl社製)を酸化アルミニウムの管に入れ、石英ウールで端部を閉じる。この管を冷蔵庫に入れて−18℃に維持する。
酸素シリンダ式、マイクロラボタイプの一連のオゾン発生器(Biaccabi社製)を使用する。このようにして発生させたオゾンを、冷蔵庫内部に位置したコイル管に通すことによって予冷する。次に、このオゾンを、黒鉛の入った管のフラッシングに使用する。
オゾンでの24時間にわたるフラッシング後、ナノスケールグラフェンプレートレットの前駆体(FOG)が入った管を冷蔵庫から取り出し、次に1100℃に予熱したアルゴン雰囲気下のリンドバーグ炉に入れる。30秒後、この管を炉から取り出し、ここでもアルゴン流下で冷却する。
【0041】
得られたナノスケールプレートレットの量は、開始時の黒鉛の質量の約30%に等しい。炭素/酸素比(元素分析で測定)は1000であると判明した。
【0042】
実施例2
オゾンから開始してのナノスケールグラフェンプレートレットの調製
UF2−96/97タイプの黒鉛粉末(Kropfmuhl社製)を酸化アルミニウムの管に入れ、石英ウールで端部を閉じる。この管を冷蔵庫に入れて−18℃に維持する。
酸素シリンダ式、マイクロラボタイプの一連のオゾン発生器(Biaccabi社製)を使用する。このようにして発生させたオゾンを、冷蔵庫内部に位置したコイル管に通すことによって予冷する。次に、このオゾンを、黒鉛の入った管のフラッシングに使用する。流出口で、ガスの一部をオゾン発生器の注入口の酸素流にベンチュリ管で再循環させる。黒鉛をオゾン流に12時間にわたって供する。次に、このようにして得られた前駆体(FOG)を、実施例1に従ってリンドバーグ炉に送る。
得られたナノスケールプレートレットの量は、開始時の黒鉛の質量の約40%に等しい。
炭素/酸素比は(元素分析で測定)700であると判明した。
【0043】
実施例3
ポリスチレン/ナノスケールグラフェンプレートレットコンポジットの調製
ナノスケールグラフェンプレートレットの前駆体(FOG)を、実施例2に従って製造する。
97.5部のポリスチレンを、N,N−ジメチルホルムアミドに溶解させる。ナノスケールグラフェンプレートレットの前駆体2.5部を、溶液に浸漬させた超音波ソノトロードの助けを借りて溶液中に分散させる。溶液を90℃にまで加熱し、次にジメチルヒドラジンを添加し、24時間にわたって作用させる。この溶液を、メタノールを満たした容器に滴加し、力強い撹拌下に維持する。遠心分離で分離した化合物を洗浄、乾燥させ、乳棒を使用して粉末形態に細分化する。
【0044】
このようにして得られた組成物を二軸押出機に送り、ここで溶融、混合する。このポリマー溶融物を、スパゲッティ状に切断することによって顆粒化する。押出機には脱ガスセクションがあり、ここで揮発性成分が真空吸引によって除去される。次に、顆粒形態のナノコンポジットを、プレス機(ホットプレス機。Saspol社。モデルTC50A)で熱成形する。成形した試料は、幅約2cm、長さ約2.5cm及び厚さ0.8±0.1mm(厚さはマイクロメータで測定した)を有する。次に、2つの金の共面電極(厚さ25nm、幅5mm、電極間距離約1mmを有する)を、スパッタリングによってプラーク上に堆積し、ナノコンポジットの導電性を最終的に測定する。導電性の測定は、2つの電極を有するSource Measurement Unit(Keithley 2400)を使用して室温で行われた。
測定された導電性は10-5s/mであると判明した。
【0045】
実施例4
ナノスケールグラフェンプレートレットを含有する発泡性ポリスチレンの調製
61部のポリスチレンN1782(Polimeri Europa社製)、2部のエチレン−ビス−ステレアミド(stereamide)、20部のSaytex HP900(ヘキサブロモシクロドデカン。Alberarle社が販売)、5部のPerkadox 30(2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン。Akzo Nobel社が販売)及び実施例3に従って製造したナノスケールグラフェンプレートレットのマスターバッチ12部を、二軸押出機で混合する。
n−ペンタン(75%)とイソペンタン(25%)との混合物5部を、一軸押出機の流出口のポリマー溶融物に添加する。このようにして得られた混合物を、一連の静的混合要素で混合する。ギアポンプで、このようにして得られた混合物の圧力を200bargにまで上昇させる。次に、混合物を混合交換器(SMR)で約170℃にまで冷却する。
【0046】
次に、組成物をダイに分配し、直径0.5mmを有する多数の孔を通して押出成形し、水流で速やかに冷却し、一連の回転ナイフで切断する(米国特許第7320585号明細書に記載の方法に従う)。
顆粒化チャンバ内の圧力は5バールである。水は冷却噴霧液として使用され、窒素はキャリアガスとして使用される。
得られる顆粒を遠心乾燥機で乾燥させ、次にコーティングで被覆する。このコーティングは、顆粒に、乾燥顆粒1000部あたり3部のモノステアリン酸グリセリン、1部のステアリン酸亜鉛及び0.2部のグリセリンを添加することによって調製される。コーティングの添加剤は、連続スクリュー混合機により顆粒と混合される。
【0047】
生成物を100℃の蒸気を使用して17g/lにまで発泡させ、1日かけてエージングに供し、一部をブロック(寸法1040x1030x550mmを有する)の成形に使用し、一部を再度発泡させ、次に密度12.5g/lを有するブロックに成形する。
次に、ブロックを切断して平坦なシートを作製し、この上で熱伝導性を測定する。
同じブロックから得られたシートの一部を70℃の炉内に2日間にわたって置く。次に、規格DIN 4102に準拠した耐火挙動試験用に試験試料(9cmx19cmx2cm)を採取する。試験試料は試験を通過する。
石炭含有量の分析によって、含有量が0.3質量%であると判明した。熱伝導性は、17g/lで32.0mW/mKであると判明した。EN ISO844に準拠して行われた10%の圧縮での応力は、同じく17g/lで110kPaであると判明した。
【0048】
実施例5
オゾンから開始してのナノスケールグラフェンプレートレットの調製
UF2−96/97タイプの黒鉛粉末(Kropfmuhl社製)を、酸化アルミニウムの管に入れる。
乾燥空気式のマイクロラボタイプの一連のオゾン発生器(Biaccabi社製)を使用する。このようにして発生させたオゾンを含有するガス流を、水蒸気で飽和させた空気流と体積比95:5で混合する。このようにして得られた混合物で、黒鉛を24時間にわたってフラッシングする。この混合物から出たガスの一部を、水蒸気を含有する空気の注入後に再循環させる。
【0049】
官能化黒鉛(FOG)の入った酸化アルミニウム管をアルゴン中で数分にわたってフラッシングし、次に、常にアルゴン雰囲気下に維持されたリンドバーグ管を有する炉に素早く入れる。炉は、1100℃に予熱される。30秒後、管を炉から取り出し、再度アルゴン流下で冷却する。
【0050】
実施例6
ポリスチレン/ナノスケールグラフェンプレートレットコンポジットの調製
980部のポリスチレンEDISTIR N1782(Mw180000g/モル、Mw/Mn=2.3、MFI(200℃、5kg)7.5g/10’を有するポリスチレン。Polimeri Europa社製)を、ミルで超微粉砕する。
【0051】
実施例5に記載するように製造したナノスケールグラフェンプレートレット20部を、高せん断粉末混合機(Plasmec社の混合機TRL 10)において30秒にわたって2000rpmで980部の超微粉砕されたポリスチレンと共に混合する。
得られた粉末を、押出成形し、プレス機で熱成形する。2つの金電極を得られたプラーク上に堆積し、ナノコンポジット組成物の導電性を最終的に実施例3に記載するように測定する。測定された導電性は10-6s/mであると判明した。
【0052】
実施例7
ポリエチレン/ナノスケールグラフェンプレートレットコンポジットの調製
液体窒素で冷却したミルに、800部のFlexirene FG30タイプの線状低密度ポリエチレン(Polimeri Europa社製。密度0.925g/l、MFI(190°、2.16kg)1.0g/10’)及び実施例5で得られた組成物200部を送る。このようにして得られた組成物を二軸押出機に送り、ここで溶融、混合する。ポリマー溶融物を、水中カッティングで顆粒化する。
このようにして得られた顆粒を、プレス機で熱成形する。次に、2つの金電極を得られたプラーク上に堆積し、ナノコンポジット組成物の導電性を最終的に実施例3に記載するように測定する。測定された導電性は10-3s/mであると判明した。
【0053】
実施例8
熱酸化から開始してのナノスケールグラフェンプレートレットの調製
UF2−96/97タイプの黒鉛粉末(Kropfmuhl社製)を酸化アルミニウムの管に入れ、石英ウールで端部を閉じる。
この管を、窒素雰囲気下、550℃に予熱したマッフル炉に入れる。10部の空気と、40部の窒素と50部の水蒸気との混合物を、マッフル炉内部に位置したコイル管に通すことで加熱し、次に黒鉛の入った管に入れる。550℃での4時間後、依然としてフラッシングを維持しながらマッフル炉の加熱を停止する。酸素基で官能化した黒鉛(FOG)の入った管を、1100℃に予熱したリンドバーグ管状炉に30秒にわたって入れる。
このようにして得られた粉末を、中赤外線透過率分光法(MIR 400〜4000cm-1)によって、FT−IR BRUKER分光器(モデルTensor 27)を使用して特徴付けした。試料を測定のために粉末化し、臭化カリウム(KBr)中に濃度0.1質量%で分散させた。13mmのディスクを最終的に加圧焼結した。熱酸化から開始して得られたFOG及びナノスケールグラフェンプレートレットのMIRスペクトル(透過率の観点から)を図1に示す。
【0054】
実施例9
ポリスチレン/ナノスケールグラフェンプレートレットコンポジットの調製
900部のポリスチレンEDISTIR N2982(Mw130000g/モル、Mw/Mn=2.3、MFI(200℃、5kg)25g/10’を有するポリスチレン。Polimeri Europa社製)を、ミルで超微粉砕する。
実施例8に記載するように調製したナノスケールグラフェンプレートレット100部を、高せん断粉末混合機(Plasmec社の混合機TRL 10)において、30秒にわたって2000rpmで900部の超微粉砕されたポリスチレンと共に混合する。
このようにして得られた組成物を二軸押出機に送り、ここで溶融、混合する。このポリマー溶融物を、スパゲッティ状に切断することによって顆粒化する。押出機には脱ガスセクションがあり、ここで揮発性成分が真空吸引によって除去される。
このようにして得られた顆粒を、プレス機で熱成形する。次に、2つの金電極を得られたプラーク上に堆積し、ナノコンポジット組成物の導電性を最終的に実施例3に記載するように測定する。測定された導電性は10-4s/mであると判明した。
【0055】
実施例10(比較例)
0.4部のナトリウムドデシルベンゼンスルホネートを1000部の脱イオン水に、磁気アンカーで撹拌することによって分散させる。
次に、5部の黒鉛「UF1 98.5」(Kropfmuhl社製)を、一定の撹拌下に維持しながら溶液に添加する。
約5時間後、このようにして得られた生成物を遠心分離に供する。濾液を上澄み相から分離し、上澄み相を8時間にわたって60℃の炉で窒素流下で乾燥させる。上澄み相には0.2部、即ち、最初に分散させた黒鉛の4質量%の黒鉛しかない。
【0056】
実施例11(比較例)
ナノスケールグラフェンプレートレットを、ハマーズ法(Hummers method)に従って黒鉛酸化物から開始して製造する。このようにして得られた黒鉛酸化物をセラミック管に入れ、石英ウールで端部に固定する。次に、この管を、1100℃に予熱したアルゴン雰囲気下のリンドバーグ炉に入れる。30秒後、この管を炉から取り出し、再度アルゴン流下で冷却する。
このようにして得られた粉末を、実施例8に記載の手順に従って、中赤外線透過率分光法(MIR 400〜4000cm-1)によって特徴付けした。化学的に得られた黒鉛酸化物及び黒鉛酸化物から開始して熱剥離で得られたナノスケールグラフェンプレートレットのMIRスペクトル(透過率の観点から)を図1に示す。比較すると、図1において、中赤外線吸収における上昇が、実施例8の記載に従って調製されたFOG試料及び関連するナノスケールプレートレットの場合に観察することができる。
【0057】
ナノスケールプレートレットにおいて、炭素/酸素比(元素分析で測定)は10/1であると判明した。
980部のポリスチレンEDISTIR N1782(Mw180000g/モル、Mw/Mn=2.3、MFI(200℃、5kg)7.5g/10’を有するポリスチレン。Polimeri Europa社製)を、ミルで超微粉砕する。
20部のナノスケールグラフェンプレートレットを、高せん断粉末混合機(Plasmec社の混合機TRL 10)において、30秒にわたって2000rpmで980部の超微粉砕されたポリスチレンと共に混合する。
このようにして得られた混合物を二軸押出機に送り、ここで溶融、混合する。このポリマー溶融物を、スパゲッティ状に切断することによって顆粒化する。押出機には脱ガスセクションがあり、ここで揮発性成分が真空吸引によって除去される。
【0058】
このようにして得られた顆粒を、プレス機で熱成形する。次に、2つの金電極を得られたプラーク上に堆積し、ナノコンポジット組成物の導電性を最終的に実施例3に記載するように測定する。測定された導電性は10-8s/mであると判明した。
図1