特許第5796870号(P5796870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本マイクロニクスの特許一覧

特許5796870半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ
<>
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000002
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000003
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000004
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000005
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000006
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000007
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000008
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000009
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000010
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000011
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000012
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000013
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000014
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000015
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000016
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000017
  • 特許5796870-半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796870
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   H01L21/66 B
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-265792(P2011-265792)
(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公開番号】特開2013-118320(P2013-118320A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108486
【弁理士】
【氏名又は名称】須磨 光夫
(72)【発明者】
【氏名】安田 勝男
(72)【発明者】
【氏名】増田 光
(72)【発明者】
【氏名】根井 秀樹
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111834(WO,A1)
【文献】 特開2008−101944(JP,A)
【文献】 特開2011−138865(JP,A)
【文献】 特開平05−333098(JP,A)
【文献】 特開2007−121015(JP,A)
【文献】 特開2003−100821(JP,A)
【文献】 特開2004−311799(JP,A)
【文献】 特開2012−058225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブと、前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブに対して相対的に移動可能なチャックステージと、前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブのそれぞれと電気的に接続されるテスタとを有する検査装置であって、前記チャックステージの上面には、検査対象となるウエハを保持するウエハ保持部と、前記ウエハ保持部に保持される最大のウエハと同形かつ同大の領域であって、前記ウエハ保持部ではない領域を包含し、かつ、前記裏面電極用プローブが相対的に移動する導電性のプローブコンタクト領域とが、互いの領域が重ならないように隣接して配置されており、前記ウエハ保持部におけるウエハ裏面との接触部が導電性であり、前記プローブコンタクト領域は前記ウエハ保持部における前記接触部と電気的に導通しており、前記チャックステージを移動させて前記表面電極用プローブが検査対象ウエハ内を相対的に移動したときに、前記テスタと前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブとの位置関係が不変のまま、前記裏面電極用プローブが前記プローブコンタクト領域内を相対的に移動するように、前記表面電極用プローブと前記裏面電極用プローブとが水平方向に互いに距離を隔てて配置されている半導体デバイスの検査装置。
【請求項2】
前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブが、それぞれ1又は複数本のフォース用プローブと1又は複数本のセンス用プローブとを有している請求項1記載の半導体デバイスの検査装置。
【請求項3】
前記表面電極用プローブと前記裏面電極用プローブとを結ぶ直線に沿って前記チャックステージの上面と平行に配置されたフォース用導電性部材を有し、前記フォース用導電性部材の前記表面電極用プローブ側の一端は前記表面電極用プローブにおける前記1又は複数本のフォース用プローブに接続され、他端は前記テスタに接続されている請求項2記載の半導体デバイスの検査装置。
【請求項4】
前記フォース用導電性部材が板状の導電性部材である請求項3記載の半導体デバイスの検査装置。
【請求項5】
前記チャックステージの上面が導電性の材料で構成されており、導電性の材料で構成されている前記上面の一部が前記ウエハ保持部における前記接触部を構成し、他の一部が前記プローブコンタクト領域を構成している請求項1〜4のいずれかに記載の半導体デバイスの検査装置。
【請求項6】
前記チャックステージの上面が導電性の材料で構成されており、導電性の材料で構成されている前記上面の一部が前記ウエハ保持部における前記接触部を構成し、他の一部の上に載置された導電性シートが前記プローブコンタクト領域を形成している請求項1〜4のいずれかに記載の半導体デバイスの検査装置。
【請求項7】
前記チャックステージの上面が前記ウエハ保持部から前記プローブコンタクト領域へと向かう互いに平行な複数の長尺状部分に分割されており、前記複数の部分は交互に配置された導電性部材と絶縁性部材とから構成され、複数の前記導電性部材の上面の一部が前記ウエハ保持部における前記接触部を構成し、他の一部が前記プローブコンタクト領域を構成している請求項1〜4のいずれかに記載の半導体デバイスの検査装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の半導体デバイスの検査装置に用いられるチャックステージであって、検査対象となるウエハを保持するウエハ保持部と、前記ウエハ保持部に保持される最大のウエハと同形かつ同大の領域であって、前記ウエハ保持部ではない領域を包含する導電性のプローブコンタクト領域とが、互いの領域が重ならないように、その上面に併設されており、前記ウエハ保持部におけるウエハ裏面との接触部が導電性で、前記プローブコンタクト領域が前記ウエハ保持部における前記接触部と電気的に導通しているチャックステージ。
【請求項9】
前記チャックステージの上面が前記ウエハ保持部から前記プローブコンタクト領域へと伸びる互いに平行な複数の長尺状部分に分割されており、前記複数の部分は交互に配置された導電性部材と絶縁性部材とから構成され、複数の前記導電性部材の上面の一部が前記ウエハ保持部における前記接触部を構成し、他の一部が前記プローブコンタクト領域を構成している請求項8記載のチャックステージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体デバイスの検査装置とそれに用いるチャックステージに関し、詳細には、ウエハ基板の両面に電極を備えた半導体デバイスの電気的特性をウエハ状態のままで検査する半導体デバイスの検査装置と、そのような検査装置に適したチャックステージに関する。
【背景技術】
【0002】
パワートランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの電力用半導体デバイスや、LED、半導体レーザなどの半導体デバイスは、電流がチップの上下に流れるように構成されており、ウエハ基板の表裏両面に電極を有している。このため、このような半導体デバイスの電気的特性をウエハ状態のままで検査するには、ウエハの表裏両面に測定用プローブを接触させる必要があり、被検査対象となる半導体デバイス直下の裏面に測定用プローブを接触させるべく、種々の検査装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウエハを保持するチャックステージ内に多数のプローブを配置し、これらのうち、被測定デバイスの裏面直下に位置するプローブを選択的にテスタへと接続することによって、ウエハ基板の両面に電極を有する半導体デバイスの電気的特性を測定するようにした検査装置が開示されている。
【0004】
しかし、この特許文献1に開示された検査装置においては、ウエハ上に形成されている全半導体デバイスを順次検査するために、上部に配置されているプローブに対してチャックステージを移動させる必要があり、チャックステージ内に配置されたプローブとテスタとを接続するケーブルの長さが必然的に長くなる傾向にある。プローブとテスタとを接続するケーブルの長さが長くなると、ケーブルによって構成される測定経路の寄生インダクタンスが大きくなり、検査対象である半導体デバイスの実力値に近い大電流測定や動特性試験に必要な過渡特性が得られないという欠点がある。このため、ウエハ状態での検査をパスした半導体デバイスであっても、その後、ボンディング、モールディング、バーイン工程等を経た後に行われる最終的なフルスペック検査において特性不良が発見される場合があり、ウエハ状態での検査後に行われる各種工程が無駄になり、製品コストの上昇や廃棄物量の増加といった不都合を招いている。
【0005】
一方、特許文献2、3においては、半導体デバイスを、半導体デバイスよりも大きな導電性の基台上に載置し、表面電極用のプローブを半導体デバイスの表面に接触させると同時に、裏面電極用のプローブを前記半導体デバイスが載置されていない前記基台の露出部分に接触させるようにした検査装置が開示されている。しかし、これら特許文献2、3に開示されている検査装置は、個別に存在する半導体デバイスを検査するものであって、半導体デバイスをウエハ状態のままで検査するものではなく、表裏両面に電極を有する半導体デバイスの特性をウエハ状態のままで如何に精度良く測定するかについて何らの示唆も与えるものではない。
【0006】
上記のような状況に鑑み、本出願人は特許文献4において、半導体デバイスをウエハ状態のままで検査する装置として、チャックステージの上面と電気的に接続されたポゴピンをチャックステージの周辺部に設け、このポゴピンを、上部に設けられたテスタに接続されたチャックリード板と接触させることにより、ウエハ基板の裏面電極とテスタ間の電気経路の短縮を図った検査装置を提案した。この検査装置は、電力用半導体デバイス等の基板の両面に電極を有する半導体デバイスの電気的特性をウエハ状態のままで精度良く測定することを可能にするものであり、好ましいものであるが、他の構造で、同様に精度良く測定することができる検査装置があれば、なお望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−333098号公報
【特許文献2】特開2007−40926号公報
【特許文献3】特開2008−101944号公報
【特許文献4】特開2011−138865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みて為されたもので、ウエハ基板の両面に電極を有する半導体デバイスの特性をウエハ状態のままで精度良く測定することを可能にする、構造が簡単な半導体デバイスの検査装置と、それに用いるチャックステージを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、前記特許文献5に開示したポゴピンとチャックリード板に代えて、チャックステージの形状に工夫を凝らすことによって、より簡単な構造で、テスタとプローブ間の電気経路を短縮し、ウエハ基板の両面に電極を有する半導体デバイスの電気的特定をウエハ状態のままで精度良く測定できることを見出して、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブと、前記表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブに対して相対的に移動可能なチャックステージとを有する検査装置であって、前記チャックステージの上面には、検査対象となるウエハを保持するウエハ保持部と、前記ウエハ保持部に保持される最大のウエハと同形かつ同大の領域を包含する導電性のプローブコンタクト領域とが、互いの領域が重ならないように隣接して配置されており、前記ウエハ保持部におけるウエハ裏面との接触部が導電性であり、前記プローブコンタクト領域は前記ウエハ保持部における前記接触部と電気的に導通しており、前記チャックステージを移動させて前記表面電極用プローブが検査対象ウエハ内を相対的に移動したときに、前記裏面電極用プローブが前記プローブコンタクト領域内を相対的に移動するように、前記表面電極用プローブと前記裏面電極用プローブとが水平方向に互いに距離を隔てて配置されている半導体デバイスの検査装置、及びそれに用いるチャックステージを提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0011】
本発明の検査装置においては、検査対象となるウエハを保持するチャックステージが、ウエハを保持するウエハ保持部に加えて、上記のようなプローブコンタクト領域を備えているので、ウエハ上の個々の半導体デバイスを順次検査するに際して表面電極用プローブに対してチャックステージを移動させても、裏面電極用プローブは常にプローブコンタクト領域と接触可能であり、裏面電極用プローブを移動させる必要がない。このため、テスタと表面電極用プローブとの電気的接続経路だけでなく、テスタと裏面電極用プローブとの電気的接続経路も常に一定の最短長さに維持することができ、測定経路に発生する寄生インダクタンスを最小にして、半導体デバイスの実力値に近い大電流測定や動特性試験に必要な過渡特性を得ることができる。
【0012】
また、本発明の検査装置においては、上記のとおり、表面電極用プローブと裏面電極用プローブの双方を、ウエハの上面側からウエハ上の半導体デバイス及びプローブコンタクト領域のそれぞれと接触させて電気的特性の検査を行うことができるので、検査装置の構造が簡単となり、各プローブと半導体デバイス或いはプローブコンタクト領域との接触状態の確認が容易であるとともに、プローブの交換作業や、ウエハ保持部を含めたチャックステージのメンテナンスが容易になるという利点が得られる。
【0013】
さらに、本発明の検査装置は、その好適な一態様において、前記表面電極用プローブ及び前記裏面電極用プローブは、それぞれ1又は複数本のフォース用プローブと1又は複数本のセンス用プローブとを有している。このように、本発明の検査装置が1又は複数本のフォース用プローブとセンス用プローブを有している場合には、半導体デバイスの電気的特性を四端子法によって精度良く測定することが可能となる。なお、本発明の検査装置における表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブが、フォース用及びセンス用以外のその他のプローブを有していても良いことは勿論であり、例えば、表面電極用プローブは、測定対象となる半導体デバイスの種類にも依るが、フォース用及びセンス用のプローブに加えて、ゲート用プローブ或いはベース用プローブを有していても良い。
【0014】
本発明の検査装置は、その好適な一態様において、前記表面電極用プローブと前記裏面電極用プローブとを結ぶ直線に沿って前記チャックステージの上面と平行に配置されたフォース用導電性部材を有している。前記フォース用導電性部材の前記表面電極用プローブ側の一端は前記表面電極用プローブにおける前記1又は複数本のフォース用プローブに接続され、他端はテスタに接続されている。本発明の検査装置がこのようなフォース用導電性部材を有している場合には、テスタから表面電極用プローブにおけるフォース用プローブに向かう電流経路と、ウエハ保持部における導電性の接触部からプローブコンタクト領域へと向かう電流経路とが、互いに平行で逆向きになるため、発生する磁界が相殺され、発生するインダクタンスをより低減することができる。
【0015】
前記フォース用導電性部材の長さなどにも依存するが、前記フォース用導電性部材を配置することによって発生するインダクタンスを配置しない場合の約1/4程度に低減することができる。前記フォース用導電性部材の形状は、ウエハ保持部における導電性の接触部からプローブコンタクト領域へと向かう電流経路が発生する磁界を相殺することができる限りどのような形状であっても良いが、例えば、板状の導電性部材を用いるのが好ましい。なお、前記フォース用導電性部材のテスタに接続される端部は、互いに平行で逆向きになる電流経路の長さをより長くするために、裏面電極用プローブに接近した位置とするのが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の検査装置は、その好適な一態様において、前記チャックステージの上面が導電性の材料で構成されており、導電性の材料で構成されている前記上面の一部が前記ウエハ保持部における前記接触部を構成し、他の一部が前記プローブコンタクト領域を形成している。この場合には、ウエハ保持部における導電性の接触部とプローブコンタクト領域とがチャックステージの上面を介して直接に電気的に導通するので、格別の導通手段を必要とせず、構造が簡単となるので好ましい。他の好適な一態様において、導電性のチャックステージの上面にさらに導電性シートを載置して前記プローブコンタクト領域を構成するようにしても良い。この場合には、裏面電極用プローブとの接触等によってプローブコンタクト領域が汚損した場合には、導電性シートだけを交換するだけで良く、チャックステージのメンテナンスが容易に行えるという利点が得られる。
【0017】
さらに、本発明の検査装置は、その好適な一態様において、前記チャックステージの上面が、前記ウエハ保持部から前記プローブコンタクト領域へと向かう互いに平行な複数の長尺状部分に分割されており、前記複数の部分は交互に配置された導電性部材と絶縁性部材とから構成され、複数の前記導電性部材の上面の一部が前記ウエハ保持部における前記接触部を構成し、他の一部が前記プローブコンタクト領域を構成している。チャックステージの上面が交互に配置された導電性部材と絶縁性部材とから構成されている場合には、ウエハの裏面から裏面電極用プローブへと向かう電路が、前記ウエハ保持部と前記プローブコンタクト領域の併設方向に沿った長尺状の導電性部分に限定されるので、発生する寄生インダクタンス及び寄生容量がより低減され、検査時の過渡特性が向上し、高速でより正確な検査が可能になるという利点が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の半導体デバイスの検査装置及び本発明のチャックステージによれば、ウエハ上の個々の半導体デバイスを順次検査するに際して表面電極用プローブに対してチャックステージを移動させても、裏面電極用プローブを移動させる必要がないので、テスタと表面電極用プローブ及びテスタと裏面電極用プローブとの電気的接続経路の長さを常に一定の最短長さに維持することができる。これにより、測定経路に発生する寄生インダクタンスを最小にすることができるので、半導体デバイスの実力値に近い大電流測定や動特性試験に必要な過渡特性を得ることができ、ウエハ状態での半導体デバイスの検査を精度良く行うことができるという利点が得られる。
【0019】
また、表面電極用プローブと裏面電極用プローブの双方を、ウエハの上面側からウエハ上の半導体デバイスの表面電極及びプローブコンタクト領域のそれぞれと接触させることができるので、検査装置の構造が簡単となり、各プローブと半導体デバイス或いはプローブコンタクト領域との接触状態の確認が容易であるとともに、プローブの交換作業や、ウエハ保持部を含めたチャックステージのメンテナンスが容易になるという利点が得られる。
【0020】
さらに、本発明の検査装置が、表面電極用プローブと裏面電極用プローブとを結ぶ直線に沿って前記チャックステージの上面と平行に配置されたフォース用導電性部材を有している場合には、テスタから表面電極用プローブにおけるフォース用プローブに向かう電流経路と、ウエハ保持部における導電性の接触部からプローブコンタクト領域へと向かう電流経路とが互いに平行で逆向きになるため、発生する磁界が相殺されて発生するインダクタンスが低減し、過渡特性の向上した、より精度の良い測定をすることができるという利点が得られる。
【0021】
さらに、本発明の半導体デバイスの検査装置におけるチャックステージの上面が、交互に配置された導電性部材と絶縁性部材とから構成されている場合には、ウエハ裏面から裏面電極用プローブへと向かう電路が長尺状の導電性部分に限定されるので、発生する寄生インダクタンス及び寄生容量がより低減されて、検査時の過渡特性が向上し、高速でより正確な検査が可能になるという利点が得られる。
【0022】
また、本発明の半導体デバイスの検査装置においては、チャックステージにおけるウエハ保持部の上面にウエハの裏面を接触させた状態でウエハを保持するので、ウエハの加熱が容易であるとともに、薄いウエハであっても、自重やプロービング時の圧力によって変形したり、破損したりする恐れがないという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の半導体デバイスの検査装置の一例を示す正面部分断面図である。
図2】本発明の半導体デバイスの検査装置の一例を示す平面図である。
図3】チャックステージとその周辺部だけを取り出して示す拡大正面図である。
図4図3の平面図である。
図5】表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブとチャックステージとの関係を示す正面図である。
図6図5の平面図である。
図7】表面電極用プローブと裏面電極用プローブの移動の様子を示す平面図である。
図8】フォース用導電性部材及びチャックステージ内を流れる電流の様子を示す概略図である。
図9】発生する磁界の様子を示す概略図である。
図10】表面電極用プローブの部分を拡大して示す部分断面図である。
図11】表面電極用プローブの部分を拡大して示す平面図である。
図12図11の一部を取り出して示す平面図である。
図13】チャックステージの他の一例を示す平面図である。
図14】チャックステージの他の一例を示す側面図である。
図15】チャックステージの他の一例を示す正面図である。
図16図13の部分拡大図である。
図17】ウエハの裏面電極と裏面電極用プローブとの間に形成される電気的導通経路を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の検査装置が対象とする半導体デバイスの一例として、電力用半導体デバイスの一つであるIGBTを例に、図面を用いて本発明を説明するが、本発明の検査装置の対象がIGBTに限られないこと、また、本発明の検査装置が図示のものに限られないことは勿論である。
【0025】
図1は、本発明の半導体デバイスの検査装置の一例を示す正面部分断面図、図2はその平面図である。図1図2において、1は本発明の半導体デバイスの検査装置であり、2はチャックステージ、3はチャックステージ2をその上に載置、保持する絶縁板、4は断熱板である。絶縁板3と断熱板4との間には後述するヒータが介挿されている。5は、チャックステージ2を絶縁板3及び断熱板4と共にXYZ及びθ方向に移動させるXYZ−θステージ、6は表面電極用プローブを保持するマニュピレータ、7は裏面電極用プローブを保持するマニュピレータ、8はテスタである。表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブは、それぞれマニュピレータ6及び7によって、XYZ方向に微小範囲で移動可能である。
【0026】
Wは検査対象となるウエハ、9はウエハWを収容するウエハカセット、10はウエハカセット9からウエハWを取り出してチャックステージ2上の後述するウエハ保持部に載置するとともに、検査が終了したウエハWをウエハ保持部から外部へと搬出するウエハ搬送装置である。ウエハ搬送装置10がウエハWを搬送する機構に関しては、ウエハWを搬送することができる限り特段の制限はなく、例えば、ベルヌーイ方式のウエハ搬送装置などを好適に用いることができる。
【0027】
11は検査装置1の上部ベースプレートであり、上部ベースプレート11には、長円形の穴12が設けられている。マニュピレータ6、7は、上部ベースプレート11における長円形の穴12の縁部近傍に取り付けられ、片持ち式に伸ばした腕と、その腕の先端部から長円形の穴12を通過して下方に突出した保持部によって、後述する表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブを上部ベースプレート11よりも下方の位置に保持している。なお、後述する表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブは、マニュピレータ6、7によって、それぞれXYZ方向に移動可能である。13はフォース用導電性部材、14、14は導電性ケーブルであり、後述する表面電極用プローブは、フォース用導電性部材13及び導電性ケーブル14を介してテスタ8に、裏面電極用プローブは導電性ケーブル14を介してテスタ8に接続されている。なお、検査装置1は、上記部材以外に、アライメント用の図示しない顕微鏡や撮像装置を備えている。
【0028】
図3はチャックステージ2とその周辺部だけを取り出して示す拡大正面図である。図3において、15は絶縁板3と断熱板4との間に介挿されたヒータであり、図示しない電力源から電力の供給を受けてチャックステージ2と、チャックステージ2のウエハ保持部上に載置されるウエハWとを加熱する。ウエハ保持部には図示しない温度センサが取り付けられており、その温度センサからの信号に基づいてヒータ15に供給する電力を加減することによって、チャックステージ2と、ウエハ保持部上に載置されるウエハWとを所定の温度に加熱することができる。
【0029】
図4図3の平面図である。図に示すとおり、チャックステージ2の上面には、αで示されるウエハ保持部と、βで示されるプローブコンタクト領域が、互いの領域が重ならないように隣接して配置されている。ウエハ保持部αには、例えば、負圧源に接続された吸引溝などの図示しない適宜の吸引機構が設けられており、これにより、ウエハ保持部αは、その上面をウエハWの裏面と接触させた状態でウエハWを吸引、保持する。
【0030】
ウエハ保持部αの大きさに特段の制限はなく、検査装置1で検査することを予定している最大のウエハWを保持できる大きさであれば良い。また、ウエハ保持部αの形状は、検査対象となるウエハWは通常円形であるので、ウエハWの形状に合わせて、通常、円形であるが、ウエハWを保持することができるのであれば必ずしも円形に限られる訳ではなく、楕円形や、長円形、多角形状であっても良い。
【0031】
本例の検査装置1においては、チャックステージ2は防錆メッキ処理された銅などの導電性材料で構成されており、チャックステージ2の上面の一部の領域がウエハ保持部αを構成しているので、ウエハ保持部αの上面も導電性である。したがって、ウエハ保持部α上にウエハWを載置すると、ウエハ保持部αの導電性の上面がウエハWの裏面と接触することになり、このウエハ保持部αにおけるウエハWの裏面と接触する部分が導電性の接触部となる。
【0032】
一方、プローブコンタクト領域βは、後述する裏面電極用プローブが接触する領域であり、チャックステージ2の上面に、ウエハ保持部αと隣接して設けられており、チャックステージ2の上面の一部がプローブコンタクト領域βを構成している。本例の検査装置1においては、前述したとおり、チャックステージ2は防錆メッキ処理された銅などの導電性材料で構成されているので、プローブコンタクト領域βは導電性であり、チャックステージ2におけるウエハ保持部α及びプローブコンタクト領域β以外の部分を介して、ウエハ保持部αにおける前記接触部と電気的に導通している。
【0033】
プローブコンタクト領域βの大きさは、ウエハ保持部αに保持される最大のウエハWと同形かつ同大の領域を包含する大きさに選ばれる。本例においては、ウエハ保持部αに保持されるウエハWが円形で、その径は最大でもウエハ保持部αの径を超えることがないと想定しているので、プローブコンタクト領域βは、ウエハ保持部αと同じ半径の円形の領域として設定されている。ただし、プローブコンタクト領域βの形状は円形に限られず、想定される最大のウエハWと同形かつ同大の領域を包含する限り、楕円、長円、多角形等、いかなる形状であっても良い。また、プローブコンタクト領域βの大きさは、ウエハ保持部αに保持される最大のウエハWと同形かつ同大の領域を包含していれば良く、極端な場合には、ウエハ保持部αに保持される最大のウエハWと同形かつ同大であっても良いが、余裕をみて、ウエハ保持部αに保持される最大のウエハWよりも大きな面積の領域をプローブコンタクト領域βとして設定するのが好ましい。
【0034】
また、本例においては、チャックステージ2の導電性の上面自体がウエハ保持部αとプローブコンタクト領域βの双方を構成しているが、チャックステージ2の上面に、ウエハ保持部αに保持される最大のウエハWと同大かつ同形の部分をカバーする大きさの導電性シートを載置して、その導電性シートの上面をプローブコンタクト領域βとしても良い。このように、導線性シートをプローブコンタクト領域βとする場合には、裏面電極用プローブが多数回接触することなどによってプローブコンタクト領域βが損傷を受けた場合には、導電性シートだけを交換すれば良く、メンテナンスの手間と費用を低減することができる。
【0035】
なお、図に示すとおり、チャックステージ2はXYZ−θステージ5上にあり、チャックステージ2の上面にウエハ保持部α及びプローブコンタクト領域βが形成されているので、XYZ−θステージ5を作動させてチャックステージ2を移動させると、当然のことながら、ウエハ保持部αとプローブコンタクト領域βとは一体となって同じ方向に移動する。
【0036】
図5は表面電極用プローブ及び裏面電極用プローブとウエハチャック2との関係を示す正面図、図6はその平面図である。便宜上、説明に必要な部材のみを抽出して図示してある。図5図6において、Pは表面電極用プローブ、Pは裏面電極用プローブ、Wはウエハ保持部αに保持されている検査対象ウエハである。表面電極用プローブPと裏面電極用プローブPとは、それぞれ図示しない複数本のフォース用プローブと複数本のセンス用プローブとを有している。フォース用プローブの数は1本であっても良いが、電力用半導体デバイスの検査に際しては大電流を流す必要があるので、フォース用プローブは複数本あるのが好ましい。同様に、センス用プローブの数も1本であっても良いが、複数本あると導通チェックができるので好ましい。なお、表面電極用プローブPは、検査対象となる半導体デバイスの種類にも依るが、通常、前記フォース用プローブとセンス用プローブに加えて、図示しないゲート用プローブ又はベース用プローブを有している。
【0037】
表面電極用プローブPと裏面電極用プローブPとは、水平方向に互いに距離Dを隔てて配置されており、チャックステージ2がXYZ−θステージ5によって上昇したときに、表面電極用プローブPはウエハ保持部αに保持されたウエハWと接触し、裏面電極用プローブPはプローブコンタクト領域βと接触する位置に配置されている。また、フォース用導電性部材13は、表面電極用プローブPと裏面電極用プローブPとを結ぶ直線に沿ってチャックステージ2の上面と平行に配置されている。本例の場合、フォース用導電性部材13は、剛性のある板状の導電性部材であり、その表面電極用プローブP側の一端は、表面電極用プローブPが有する複数本のフォース用プローブと電気的に接続され、他端は、導電性ケーブル14を介してテスタ8に接続されている。なお、裏面電極用プローブPは導電性ケーブル14を介してテスタ8に接続されている。
【0038】
図6に示すLは、ウエハ保持部αとプローブコンタクト領域βの中心間の距離であり、本例において、距離Dは距離Lと略同じになるように設定されている。このように距離Dが距離Lと略同じに設定されており、また、プローブコンタクト領域βが、ウエハ保持部αに保持される最大のウエハWと同形かつ同大の領域を包含する大きさになっているので、XYZ−θステージ5によってチャックステージ2が移動し、表面電極用プローブPがウエハ保持部α上に保持された検査対象ウエハW内を相対的に移動すると、裏面電極用プローブPはプローブコンタクト領域β内を相対的に移動する。
【0039】
図7は、表面電極用プローブPと裏面電極用プローブPの移動の様子を示す平面図であり、ウエハ保持部αに保持される最大のウエハとして、ウエハ保持部αと同じ半径の円形のウエハWがウエハ保持部α上に載置、保持されている場合を示している。図7の(a)〜(d)に示すとおり、チャックステージ2が図中左右上下に移動して、表面電極用プローブPがウエハ保持部α上に保持されているウエハW内を相対的に移動すると、その移動に対応して、裏面電極用プローブPは、表面電極用プローブPとの間に距離Dを保ちつつ、プローブコンタクト領域β内を相対的に移動する。
【0040】
このように、本発明の検査装置1によれば、ウエハW上に形成されている多数の半導体デバイスを順次検査すべくXYZ−θステージ5によってチャックステージ2を移動させる場合であっても、表面電極用プローブPが検査対象となる半導体デバイスの表面電極に接触するときには、裏面電極用プローブPは、検査対象となる半導体デバイスの裏面電極と電気的に導通するプローブコンタクト領域βに接触し、半導体デバイスに必要な電気信号を供給して、その電気的特性をウエハ状態のままで検査することが可能である。また、ウエハW上の半導体デバイスを順次検査する場合であっても、表面電極用プローブPと裏面電極用プローブPは移動させる必要がないので、テスタ8と表面電極用プローブP及び裏面電極用プローブPとの位置関係は不変である。このため、本発明の検査装置1によれば、半導体デバイスの検査をウエハ状態のままで行う場合であっても、テスタ8と表面電極用プローブP及びテスタ8と裏面電極用プローブPとの電気的接続経路の長さを常に一定の最短長さに維持することができるので、測定経路に発生する寄生インダクタンスを最小にすることができ、半導体デバイスの実力値に近い大電流測定や動特性試験に必要な過渡特性を得ることができるという利点が得られる。
【0041】
図8はフォース用導電性部材13及びチャックステージ2内を流れる電流の様子を示す概略図、図9は発生する磁界の様子を示す概略図である。検査時においては、テスタ8から導電性ケーブル14、フォース用導電性部材13、表面電極用プローブPのフォース用プローブを経由して、ウエハW上の半導体デバイスを通過し、さらに、ウエハ保持部αの導電性の接触部、チャックステージ2、プローブコンタクト領域β、裏面電極用プローブP、導電性ケーブル14を経由してテスタ8へという回路が形成され、フォース用導電性部材13内には図中Iiで示す電流が、そして、チャックステージ2内には図中Ioで示す電流が流れる。このとき、フォース用導電性部材13は、表面電極用プローブPと裏面電極用プローブPとを結ぶ直線に沿ってチャックステージ2の上面と平行に配置されているので、電流Iiによって発生される磁界と電流Ioによって発生される磁界とは、図9に示すとおり向きが逆となり、互いに相殺される。したがって、表面電極用プローブPと裏面電極用プローブP間の電流経路における実効インダクタンスを低減することができ、より過渡特性の良い、精度の高い測定が可能となる。
【0042】
なお、フォース用導電性部材13は、表面電極用プローブPと裏面電極用プローブPとを結ぶ直線に沿ってチャックステージ2の上面と平行に配置することができるものであれば、必ずしも剛性のある板状の導電性部材に限られるものではなく、断面円形の線状部材であっても良い。しかし、電流Ioが流れるチャックステージ2が板状であるので、チャックステージ2との間に、誘電体としての空気を介在させた並列結合構造を形成すべく、フォース用導電性部材13は、フォース用導電性部材13とチャックステージ2との間隙の大きさよりも広い幅をもった板状部材とするのが好ましい。
【0043】
図10は、表面電極用プローブPの部分を拡大して示す部分断面図である。図10において、16はプローブブロック、17はブロック蓋であり、プローブブロック16は導電性材料で構成されており、フォース用導電性部材13と結合されることにより、フォース用導電性部材13と電気的に接続されている。18はフォース用プローブであり、フォース用プローブ18は、プローブブロック16に形成された取付用孔に挿入固定されることによってプローブブロック16に取り付けられ、前記取付用孔の内周と接触することによって、プローブブロック16及びフォース用導電性部材13と電気的に導通している。一方、19はセンス用プローブであり、センス用プローブ19も、プローブブロック16に形成された取付用孔に挿入固定されることによってプローブブロック16に取り付けられているが、センス用プローブ19と前記取付用孔の内周との間には絶縁部材20が介在しており、センス用プローブ19とプローブブロック16及びフォース用導電性部材13とは電気的に絶縁されている。
【0044】
フォース用プローブ18の先端部18及びセンス用プローブ19の先端部19は、各プローブ内に配置されている図示しない弾性手段によって下方に向かって付勢されており、先端部18及び19に上向きの外力が加わった場合には、その外力の大きさに応じて適宜上方に移動可能である。21はセンス用プローブ19とテスタ8とを接続する導電性ケーブルである。
【0045】
22はプローブブロック16に設けられた冷却室であり、23は冷却空気導入口、24は冷却空気噴出口である。冷却空気導入口23は図示しない適宜の冷却空気源に接続されており、冷却空気源から冷却空気導入口23を介して冷却室22内に導入された冷却空気は、プローブブロック16を介してフォース用プローブ18及びセンス用プローブ19、さらには後述するゲート用プローブを冷却するとともに、冷却空気噴出口24から表面電極用プローブPの下方に位置する検査対象である半導体デバイスを冷却する。このように、本例の表面電極用プローブPは各プローブ及び半導体デバイスの冷却手段を備えているので、半導体デバイスに大きな測定電流を流す場合でも、半導体デバイスやプローブの過度の温度上昇を防止することができ、より安定で正確な測定が可能である。なお、冷却媒体は空気に限られず、窒素ガスその他の適宜の気体を冷却媒体として用いても良いことは勿論である。
【0046】
図11は、ブロック蓋17を外した状態の表面電極用プローブPの部分を拡大して示す平面図であり、図12図11におけるプローブの部分だけを取り出して示す平面図である。25はゲート用プローブであり、ゲート用プローブ25とプローブブロック16との間にも絶縁部材20が介挿されており、ゲート用プローブ25はプローブブロック16及びフォース用導電性部材13とは電気的に絶縁されている。なお、ゲート用プローブ25は、図示しない接続ケーブルによってテスタ8に接続されている。
【0047】
図11及び図12に示すとおり、各プローブは碁盤目の各格子位置に配置されており、2本のセンス用プローブ19と1本のゲート用プローブ25に隣接する碁盤目の格子位置を除いて、合計14本のフォース用プローブ18が配置されている。なお、図11及び図12に示す各プローブの配置と数は一例であって、フォース用プローブ18、センス用プローブ19、及びゲート用プローブ25の配置と数は図示のものに限られない。
【0048】
以上は、表面電極用プローブPについての説明であるが、裏面電極用プローブPの構造も、ゲート用プローブ25を備えていない点、さらにはフォース用プローブ18及びセンス用プローブ19の大きさや配置が若干異なる点を除けば、基本的には表面電極用プローブPと同じである。
【0049】
図13はチャックステージ2の他の一例を示す平面図、図14はその側面図、図15は正面図、図16図13の部分拡大図である。図に示すとおり、本例のチャックステージ2は、ウエハ保持部αからプローブコンタクト領域βへと伸びる互いに平行な複数の長尺状部分に分割されており、これらの複数の長尺状部分は、交互に配置された導電性部材26と絶縁性部材27とから構成されている(図16においては、分かり易くするために、便宜上、絶縁性部材27にハッチングを付してある)。導電性部材26の高さは、間に介在している絶縁性部材27よりも高く、複数の導電性部材26の上面によってチャックステージ2の上面が構成されている。そして、複数の導電性部材26の上面によって構成されるチャックステージ2の上面の一部がウエハ保持部αにおいてウエハWの裏面と接触する導電性の接触部を形成し、他の一部がプローブコンタクト領域βを形成している。なお、導電性部材26の間には必ず絶縁性部材27が存在するので、隣接する導電性部材26間は互いに絶縁されており、ウエハ保持部αにおけるウエハWの裏面と接触する導電性の接触部とプローブコンタクト領域βとは、それぞれ互いに絶縁された直線状の導電性部材26によって電気的に導通していることになる。
【0050】
本例におけるチャックステージ2は、図14及び図15に示すとおり、板状で薄い導電性部材26と、同じく板状で薄く、導電性部材26よりも一回り小さい絶縁性部材27とが交互に積層された構造を有しており、このような構造は、上記のような導電性部材26と絶縁性部材27とを交互に位置決めして積層し、互いに接着或いは融着して一体化することによって製造することができる。ただし、導電性部材26と絶縁性部材27とが交互に平行に配置されたチャックステージ2の構造は図示のものに限られず、例えば、絶縁性の板状部材の表面に、接着、融着、蒸着、メッキなどの適宜の方法によって、複数の長尺状の導電性部材26を互いに間隔をあけて平行に配置することによって導電性部材26と絶縁性部材27とが交互に平行に配置されたチャックステージ2を形成しても良いし、表面に複数の直線状の凹部を備えた絶縁性の板状部材を用意し、その凹部に導電性部材26をはめ込むことによって、導電性部材26と絶縁性部材27とが交互に平行に配置されたチャックステージ2を形成することもできる。
【0051】
図17は、図13に示したチャックステージ2を用いる場合に、ウエハWの裏面電極と裏面電極用プローブPとの間に形成される電気的導通経路を示す平面図である。図17において、28は検査対象となっている半導体デバイスであり、29は裏面電極用プローブPにおけるフォース用プローブ、30は裏面電極用プローブPにおけるセンス用プローブである。
【0052】
チャックステージ2における複数の導電性部材26の方向は、ウエハ保持部αからプローブコンタクト領域βへと向かう方向であり、この方向は表面電極用プローブPと裏面電極用プローブPとを結ぶ直線とほぼ一致しているので、表面電極用プローブPが検査対象となっている半導体デバイス28の表面電極と接触すると、その半導体デバイス28の直下に位置するウエハWの裏面電極と、裏面電極用プローブPにおけるフォース用プローブ29及びセンス用プローブ30とは、同じ複数の導電性部材26と接触することになる。つまり、半導体デバイス28直下に位置するウエハWの裏面電極と、裏面電極用プローブPにおけるフォース用プローブ29及びセンス用プローブ30との間には、ウエハ保持部αからプローブコンタクト領域βへと向かう長尺状の導電性部材26によって構成される直線的な電気的導通経路が形成されることになる。このように、図13に示すようなチャックステージ2を用いる場合には、ウエハWの裏面から裏面電極用プローブPへと向かう電気的導通経路が長尺状の導電性部材26の部分に限定されるので、発生する寄生インダクタンス及び寄生容量がより低減され、検査時の過渡特性が向上し、高速でより正確な検査が可能になるという利点が得られる。
【0053】
また、複数の導電性部材26は互いに絶縁されているので、フォース用プローブ29とセンス用プローブ30とが同一の導電性部材26と接触しない限り、ウエハWの裏面と裏面電極用プローブPにおけるフォース用プローブ29又はセンス用プローブ30とを結ぶ電気的導通経路は互いに絶縁されており、共通したプローブコンタクト領域βを使用しているにもかかわらず、ウエハWの裏面電極から、異なる電気的導通経路を介して、フォース用及びセンス用の電気信号をテスタ8に伝達することができるという利点が得られる。なお、フォース用プローブ29とセンス用プローブ30とが同一の導電性部材26と接触しないようにするには、例えば、フォース用プローブ29とセンス用プローブ30の導電性部材26と直交する方向の間隔を、導電性部材26の幅及び絶縁性部材27の幅よりも大きくすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したとおり、本発明の半導体デバイスの検査装置及びそれに用いるチャックステージによれば、電力用半導体デバイスなどのウエハの表裏両面に電極を有する半導体デバイスに対してウエハ状態のままで行う検査において、その半導体デバイスの実力値に近い大電流測定や動特性試験に必要な過渡特性を得ることができるので、ウエハ状態での半導体デバイスの検査を精度良く行うことができる。このため、本発明によれば、最終的なフルスペック検査において初めて半導体デバイスに特性不良が発見されるといった不都合が排除されるので、無駄な工程に起因する製品コストの上昇や廃棄物量の増加が有効に防止され、その産業上の利用可能性は多大である。
【符号の説明】
【0055】
1 検査装置
2 チャックステージ
3 絶縁板
4 断熱板
5 XYZ−θステージ
6、7 マニュピレータ
8 テスタ
9 ウエハカセット
10 ウエハ搬送装置
11 上部ベースプレート
12 長円形の穴
13 フォース用導電性部材
14、14、21 導電性ケーブル
15 ヒータ
16 プローブブロック
17 ブロック蓋
18、29 フォース用プローブ
19、30 センス用プローブ
20 絶縁部材
22 冷却室
23 冷却空気導入口
24 冷却空気噴出口
25 ゲート用プローブ
26 導電性部材
27 絶縁性部材
28 半導体デバイス
α ウエハ保持部
β プローブコンタクト領域
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17