特許第5796878号(P5796878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5796878冷媒吸着材充填容器、それを備えたターボ冷凍機用抽気回収装置とターボ冷凍機及び冷媒回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796878
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】冷媒吸着材充填容器、それを備えたターボ冷凍機用抽気回収装置とターボ冷凍機及び冷媒回収装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 45/00 20060101AFI20151001BHJP
   F25B 43/04 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   F25B45/00 A
   F25B45/00 B
   F25B43/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2009-294519(P2009-294519)
(22)【出願日】2009年12月25日
(65)【公開番号】特開2011-133191(P2011-133191A)
(43)【公開日】2011年7月7日
【審査請求日】2012年6月28日
【審判番号】不服2014-11117(P2014-11117/J1)
【審判請求日】2014年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】503164502
【氏名又は名称】荏原冷熱システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096415
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 大
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼下 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃好
(72)【発明者】
【氏名】石山 健
(72)【発明者】
【氏名】仙田 卓寛
(72)【発明者】
【氏名】長岡 徹也
【合議体】
【審判長】 千壽 哲郎
【審判官】 田村 嘉章
【審判官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−120112(JP,A)
【文献】 特開2007−240145(JP,A)
【文献】 特開平8−313105(JP,A)
【文献】 実開平6−18861(JP,U)
【文献】 特開2008−128535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/04
F25B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心部を形成する中心部材と、断面形状が円形である外周部を形成する外周部材と、前記中心部材と外周部材とを相互に連結する中心点に対して点対称、又は、直径若しくは半径に対して線対称に形成した複数の板状のフィンとを備え、該板状のフィンを経由して中心部材まで届くようなヒータ取付穴を備えた冷媒吸着材充填容器であって、該充填容器は
、アルミ又はアルミ合金製の鋳物で前記中心部材と外周部材と板状のフィンとが一体に構成され、内部に前記中心部材と外周部材と複数の板状のフィンとにより冷媒吸着材収納スペースが形成され、さらに、気体の入口と出口とを有し、該入口と出口とが、前記冷媒吸着材収納スペースを兼ねた気体通路により相互に連絡され、該入口から出口に向かって気体が流動でき、且つ前記外周部材の外部から該充填容器を加熱及び冷却可能に構成すると共に、前記外周部材は、外部に板状のフィンをさらに備え、前記充填容器は、外周を覆うダクトを設け、該ダクト内に空気を導入する冷却ファンを設置したことを特徴とする冷媒吸着材充填容器。
【請求項2】
ターボ冷凍機中から冷媒ガスと共に抽出された不凝縮ガスを、該冷媒ガスと分離して大気中に排出するための冷媒ガス分離手段と冷媒吸着材を充填した冷媒吸着材充填容器とを備えた抽気回収装置であって、前記冷媒吸着材充填容器が、請求項に記載した冷媒吸着材充填容器であることを特徴とするターボ冷凍機用抽気回収装置。
【請求項3】
抽気回収装置を備えたターボ冷凍機において、前記抽気回収装置が、請求項に記載の抽気回収装置であることを特徴とするターボ冷凍機。
【請求項4】
不凝縮ガスを含有する冷媒ガスから冷媒ガスのみを吸着して回収し、不凝縮ガスを大気中に排出するための冷媒回収装置が、請求項に記載された冷媒吸着材充填容器に冷媒吸着材を充填したものであることを特徴とする冷媒回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導率が低く流動性に乏しい物質である冷媒吸着材を内部に密閉保持し、該物質を短時間で繰り返し加熱及び/又は冷却して使用するための冷媒吸着材充填容器、例えば、冷凍機の作動媒体として使用するフルオロカーボン等の揮発性ガスを、該容器内部に保持する冷媒吸着材に繰り返し吸着及び脱着させるために用いる冷媒吸着材充填容器、それを備えたターボ冷凍機用抽気回収装置とターボ冷凍機及び冷媒回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆる低圧冷媒を使用するターボ冷凍機においては、通常、冷凍機停止中には冷凍機全体の圧力が、冷凍機運転中には蒸発器側圧力が、それぞれ大気圧以下の値に低下する。前記ターボ冷凍機においては、事実上大気中から冷凍機内部への空気等の漏れこみを完全に阻止することは困難であり、漏れ込んだ空気は、さまざまな不具合を冷凍機に対して及ぼすので、漏入した空気を機外に排出しなければならない。このために、この種のターボ冷凍機は、通常抽気回収装置を備えている。
本発明者らは、先に出願した「抽気回収装置とその運転方法及びそれを備えたターボ冷凍機(特願2009−227165)」において、冷媒の大気中への排出量を抑制するために冷媒吸着材を用いて、ターボ冷凍機の抽気回収装置から大気中に漏れ出る冷媒量を、極限まで減少でき、冷媒を回収できる抽気回収装置とその運転方法を提案をした。
【0003】
しかし、冷媒吸着材は、例えば活性炭やゼオライトに代表されるように、多孔質材であることから一般的に熱伝導率が低く、加熱や冷却を速やかにかつ均一に実施することが難しく、このことが抽気回収装置や冷媒回収装置の好適な運転を困難にする一因となっている。即ち、冷媒が冷媒吸着材に対してある一定程度吸着されると、その冷媒吸着材は事実上冷媒吸着能力が無くなるので、再び冷媒吸着材として活用するためには冷媒を脱着する必要がある。しかし、一旦吸着された冷媒は、その状態のままでは冷媒を脱着させることができないから、例えば冷媒吸着材自体を加熱して昇温したり、環境圧力を下げて低圧状態下に暴露したりする必要があり、両方法を併用するのが効果的である。そして、このようにして冷媒を脱着してもそれだけでは冷媒吸着力を回復させることができず、そのあと冷媒吸着材を冷却して冷媒吸着材自体の温度を低下させる必要がある。このように、同一の冷媒吸着材を反復して使用するためには、冷媒吸着材充填容器中の冷媒吸着材を反復して加熱・冷却を繰り返す必要がある。従って、当然ながら冷媒吸着材を効果的に利用するためには、加熱及び冷却に要する時間を実用に適する程度にまで短縮する必要がある。
【0004】
しかし、上記のように一般に冷媒吸着材は熱伝導率が小さいので、加熱や冷却のために長時間を要するとか、又は、加熱・冷却時間を短時間とすれば十分な吸着能力を発揮させることができないなどの問題があった。さらに、冷媒吸着材自体の加熱後の温度及び冷却後の温度は、冷媒吸着材充填容器中でのそれぞれの場所によらず均一であることが好ましい。即ち、場所により相当程度温度差が生じてしまう場合には、加熱時においては、冷媒吸着材の平均温度を冷媒脱着のために好適な温度まで昇温することになるので、冷媒吸着材の中でも相対的に高温になる部分では冷媒吸着材自体が過度に昇温される結果、劣化を促進させたり、低温部分では冷媒の十分な脱着が達成できないという不具合を生じるし、冷却時には、冷却不十分な場所にある冷媒吸着材は吸着能力が十分に回復しないなどの不具合がある。また、加熱の場合には平均温度を適当な値にするために、例えば冷媒吸着材の最高到達温度を高くする必要があるから、ヒータ等の所要エネルギーが大きくなり、冷却の場合には、例えば冷媒吸着材充填容器をファン等で長時間冷却する必要があるから、この場合にもまた所要エネルギーが大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
冷媒吸着材充填容器の構造の参考になる例として、従来技術を検討してみると、例えば特開2008―270297号公報に示されるように、平行に向かい合った平板部で構成された容器内に、複数のフィンを有する放熱容器が開示されている。この公開公報は、半導体チップを備えるパワーユニットに関するものであるが、この態様を冷媒吸着材充填容器に応用しようとするとき、平板状の容器形状では耐圧性、気密性を保持したまま大型化することになるが、そのことは容器の内圧と外圧とに一定程度以上の圧力差を見込む必要がある。冷媒吸着材充填容器にとって、例えば構成部材に印加される応力やその結果生じる歪の大きさ等を考慮すると設計上不利である。
さらに、内部に冷媒吸着材等の流動性に乏しい物体を収容しつつ、繰り返しの加熱と冷却サイクルを受ける容器にあっては、外周部即ち外形を構成する部材が平板で構成されている場合、例えば直方体形状などでは、角(かど)の部分と平板部中央とでは温度差が発生しやすく、従って熱膨張量や熱収縮量が均一ではなくなり、内部に収容された冷媒吸着材との接触による熱応力や歪も発生し易いから、結果として実用に耐えうるような容器を実現することは困難である。
【0006】
以上において、低圧冷媒を使用したターボ冷凍機の例について説明したが、前記低圧冷媒に限らず、いわゆる高圧冷媒を使用する冷凍機においても、例えば分解整備時などの冷媒充填時に混入した不凝縮ガスは、冷凍機の運転に際して効率の低下や材料の腐食など様々な不都合をもたらすため、機外に抽出する必要がある。一旦冷凍機内に混入した不凝縮ガスを機外に抽出する際には、高圧冷媒使用冷凍機においては、例えば冷媒回収装置を用いて冷媒ガスを凝縮させ、冷媒ガスから前記不凝縮ガスのみを分離して大気に放出するのが一般的である。従って、冷媒からの不凝縮ガスの分離をできるだけ短時間で行い、且つ分離した不凝縮ガス中に残留する冷媒成分を可能な限り微少量に抑えることは、低圧冷媒、高圧冷媒に関わらず共通の問題であった。
【特許文献1】特開2008―270297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の背景技術に鑑み、少なくともその外部からの加熱又は冷却により、その内部の充填物質が、熱伝導率の小さい冷媒吸着材であっても、速やかに、当該冷媒吸着材自体を前記充填容器の場所によらず、均一な温度に、且つ少ないエネルギーで、加熱又は冷却できると共に、繰り返しの温度上昇及び温度下降のサイクルに耐えうる冷媒吸着材充填容器、それを備えたターボ冷凍機用抽気回収装置とターボ冷凍機及び冷媒回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、中心部を形成する中心部材と、断面形状が円形である外周部を形成する外周部材と、前記中心部材と外周部材とを相互に連結する中心点に対して点対称、又は、直径若しくは半径に対して線対称に形成した複数の板状のフィンとを備え、該板状のフィンを経由して中心部材まで届くようなヒータ取付穴を備えた冷媒吸着材充填容器であって、該充填容器は、アルミ又はアルミ合金製の鋳物で前記中心部材と外周部材と板状のフィンとが一体に構成され、内部に前記中心部材と外周部材と複数の板状のフィンとにより冷媒吸着材収納スペースが形成され、さらに、気体の入口と出口とを有し、該入口と出口とが、前記冷媒吸着材収納スペースを兼ねた気体通路により相互に連絡され、該入口から出口に向かって気体が流動でき、且つ前記外周部材の外部から該充填容器を加熱及び冷却可能に構成すると共に、前記外周部材は、外部に板状のフィンをさらに備え、前記充填容器は、外周を覆うダクトを設け、該ダクト内に空気を導入する冷却ファンを設置したことを特徴とする冷媒吸着材充填容器としたものである

【0009】
また、本発明では、ターボ冷凍機中から冷媒ガスと共に抽出された不凝縮ガスを、該冷媒ガスと分離して大気中に排出するための冷媒ガス分離手段と冷媒吸着材を充填した冷媒吸着材充填容器とを備えた抽気回収装置であって、該冷媒吸着材充填容器が、前記した本発明の冷媒吸着材充填容器としたターボ冷凍機用抽気回収装置としたものであり、また、抽気回収装置を備えたターボ冷凍機において、抽気回収装置として前記したターボ冷凍機用の抽気回収装置を用いたターボ冷凍機としたものである。
さらに、本発明では、不凝縮ガスを含有する冷媒ガスから冷媒ガスのみを吸着して回収するし、不凝縮ガスを大気中に排出するための冷媒回収装置が、前記した本発明の冷媒吸着材充填容器に冷媒吸着材を充填したものであることを特徴とする冷媒回収装置としたものである。
【発明の効果】
【0010】
冷媒吸着材充填容器を本発明のように構成することにより、一般に熱伝導率が低く加熱・冷却が行いにくい冷媒吸着材でも、速やかで且つ均一な加熱・冷却を行うことができるから、少ないエネルギーで冷媒を冷媒吸着材から必要十分に脱着でき、吸着材の冷媒吸着力を常に高いレベルに維持できる。加えて、冷媒吸着材充填容器の加熱や冷却に伴う熱応力や、該充填容器内外圧力差による応力、歪を小さく且つ均一化することができるから、温度の上昇や下降の繰り返しサイクルに強く、且つ該充填容器の気密性を好適に維持できる。従って、本発明による冷媒吸着材充填容器を用いれば、環境特性に優れた抽気回収装置、冷媒回収装置さらにターボ冷凍機及び冷媒回収装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
冷媒吸着材は、一般的に熱伝導率が低く、事実上流動性が無く、加熱時及び冷却時に速やかにかつ均一に温度を上昇又は下降させることが難しい。そこで、本発明では、冷媒吸着材を収容すると共にこれを加熱又は冷却する役割を兼ねた冷媒吸着材充填容器において、冷媒吸着材の単位体積あたりの冷媒吸着材充填容器表面と冷媒吸着材とが、相互に接触する面積即ち伝熱面積を増大すると共に、冷媒吸着材の積層厚さ、即ち冷媒吸着材と充填容器表面とのあるひとつの接触面と、その接触面に隣り合う接触面との間の距離を小さくすることにより、冷媒吸着材中の伝熱抵抗を減少させて、冷媒吸着材と充填容器表面との平均温度差を小さくでき、当該充填容器を加熱又は冷却することで、より少ない加熱又は冷却エネルギーにより、冷媒吸着材を所望の温度に且つ均一に加熱又は冷却できる。
【0012】
このため、本発明の冷媒吸着材充填容器の断面の態様としては、容器内部を外部と気密性を持って仕切ると共に、容器としての強度を保持する外周部材を設けた。そして、冷媒吸着材収容スペースを兼ねた気体の通路を構成すると共に、充填容器表面積を拡大するための手段として充填容器中央部に中心部材を配設し、且つ前記外周部材と中心部材との間に複数のフィンを設け、これらのフィンにより前記外周部材と中心部材とを接続した。
このように充填容器断面を構成することにより、中心部材やフィンの無い従来型の充填容器に比べて、充填容器表面と冷媒吸着材との接触面積、即ち伝熱面積を飛躍的に増大させることができ、冷媒吸着材の積層厚さも画期的に減少できる。
【0013】
なお、このような断面形状を備える冷媒吸着材充填容器の全体形状は、例えば前記断面形状を有する円筒形の容器構成部材を充填容器本体として有し、該円筒形充填容器本体の両端の開口部をそれぞれ覆うと共に、気体の入口又は出口を有する円板状カバーとを備え、充填容器本体内に形成された気体通路を兼ねた冷媒吸着材収納スペースに冷媒吸着材を充填したのち、冷媒吸着材が脱落しないように保持するための適当な大きさのメッシュを有する金網を、充填容器本体の両開口部と円板状カバーとの間に備えるようにしても良い。因みに、この場合には気体を入口部から充填容器本体内の気体通路に導くため、又は充填容器本体の気体通路から出口部に導くために、円板状カバーの内面側は凹形状に加工するのが好ましい。また、円板状カバーに代えて、鏡板や半球形状体などを用いることができるのは言うまでも無い。また、上記のような冷媒吸着材充填容器の形態ならば、例えば該充填容器加熱用ヒータを、該充填容器に加工されたヒータ挿入用穴に挿入して取り付けることや、該充填容器表面の所要の位置に接するように設けることなどに特段の支障は無く、また同様に、該充填容器表面から、例えば環境空気の自然対流やファン等による強制空気流と接触させることにより、放熱させることにも支障はないから、該冷媒吸着材充填容器の外周部材の外部から、該充填容器を加熱、冷却することができる。
【0014】
前記で述べた伝熱という側面からの評価の他に、冷媒吸着材充填容器の強度的側面においても、本発明によれば優れた効果を奏する。即ち前述の通り、冷媒吸着材に冷媒を吸着させ又は脱着させるために、冷媒吸着材自体を加熱又は冷却する必要があり、そのために冷媒吸着材充填容器を加熱又は冷却する。この場合、充填容器内収容物である冷媒吸着材と充填容器とでは、熱膨張率が異なるのが普通で、通常充填容器の値のほうが大きいから、冷却の都度両者の接触部分において熱応力が発生する可能性がある。ここで、例えば充填容器が直方体形状であった場合には、角(かど)部分と平面部分とで、変位が一様ではなく熱応力も不均一で、局所的に過大な値も生じうるが、前記のように断面形状が円形ならば発生する熱応力に大きな偏りが無くなり、過大な応力や不均一な歪の発生を回避しやすく、結果として充填容器の気密性を保持しやすくなる。
【0015】
また、中心部材や板状フィンは、例えば円形の中心点に対して、点対称又は直径若しくは半径に対して線対称に形成することにより、上記と同様に熱応力や歪発生の均一性を維持できる。さらに、熱応力のほかに、充填容器の内外圧力差によって発生する応力及び歪に対しても均一化しやすく、過大な値を避けることができる。なお、断面形状については、前記の通り外周部材は円形がもっとも好ましく、中心部材や板状フィンは、前記円形の中心点に対して点対称又は直径若しくは半径に対して線対称であることが好ましい。なお、外周部材については多角形でも良く、特に角の多い正多角形が好ましい。なお、冷媒吸着材充填容器の全体形状は、球形状や回転楕円体形状などであっても良いが、製作の容易さなど実用性を考慮すると前記の形状が好ましい。
【0016】
また、前記冷媒吸着材充填容器の材質は、熱伝導率が高く、内部に収容する冷媒吸着材や冷媒等と化学反応を生じないものを選定する必要があり、一般的には、アルミ製さらにはアルミ鋳物製とすることが好ましい。これにより、フィン効率の向上、軽量化及び効果的なフィン形状及び配置の実現が容易となり、一体で製作可能となるから経済的にも有利となる。ただし、例えば高圧ガス保安法の冷凍保安規則関係例示基準においては、フルオロカーボンに対しては2%を超えるマグネシウムを含有したアルミニウム合金の使用が禁止されているため、特にフルオロカーボンを冷媒として使用する冷凍装置に使用する場合には、高圧ガスに該当する冷媒に限らずこれに準拠することが好ましい。なぜならば、フルオロカーボン冷媒は、マグネシウムを含むアルミニウム合金に対しては腐食性を生ずるからであり、マグネシウムは含まないことが最も好ましく、マグネシウム含有率が多くても2%以下のアルミニウムであることが好ましいからである。
【0017】
また、本発明は、前記冷媒吸着材充填容器の前記外周部材は、外部に板状のフィンをさらに備えた冷媒吸着材充填容器とすることができる。
冷媒吸着材を加熱して冷媒を脱着した後、再び冷媒吸着能力を回復させるために冷媒吸着材を冷却する必要があり、このため冷媒吸着材充填容器の外部を、例えば冷却用ファンなどを用いて周囲の大気の強制流を当て、速やかに冷却することが好ましい。なお、微細な水滴を充填容器外部に直接吹き付けて、水の蒸発潜熱を併用するなどの方法も考えられるが、水分は材料の腐食、電気配線のショート等の原因となるため用いないほうが好ましい。また、容器外周部もしくは内部に流通経路を設けて、水などの冷却媒体を流して冷却する方法も考えられるが、例えば容器の加熱時には冷却媒体も同時に加熱されるために、冷却媒体の加熱に要する余分なエネルギーを消費するだけでなく、加熱温度が100℃を超えるような場合には例えば水では沸騰が起こり、冷却時に流路に通水できなくなる事態が想定されるため好ましくない。 充填容器の外表面からの冷却のためには、表面積が大きいほうが有利であることから、充填容器の外周部材にはフィンを備えることが好ましいが、熱的効果と製作の容易性及び機械的強度を考慮すると、その形状は板状のフィンを備えることが好ましい。
【0018】
充填容器中の冷媒吸着材が保有している熱は、直接外周部材を経由して周囲環境に放熱されるだけでなく、特に充填容器の中心部付近の冷媒吸着材からの熱は、冷媒吸着材から中心部材や板状フィンを経由して外周部材に伝熱されて放熱されるから、中心部材や板状フィンは、放熱経路を形成しているということもでき、外周部材に板状フィンを備えることで、充填容器の内部・外部共に効果的に冷却することができる。
因みに、冷媒吸着材の加熱時には、例えばヒータ等を外部の板状フィンを含む外周部材の外表面に接触させるように設けて外周部材を加熱することで、伝熱により中心部材や該中心部材と外周部材とを連結する板状フィンによって、充填容器の中心部等容器内部側からも加熱することができるから、中心部材や前記板状フィンは給熱経路を形成するということもできる。さらに、加熱の際には、ヒータ等の発熱体が外周部材だけでなく、中心部材や該中心部材と外周部材とを連結する板状フィンを直接加熱できるように、例えば棒状ヒータを、前記板状フィンを経由して中心部材まで届くような穴に差し込むように充填容器を構成すれば、更に好ましい加熱が実現できる。
【0019】
また、本発明は、前記冷媒吸着材充填容器は、前記中心部材、外周部材、前記二者を連結する板状フィン及び外周部材外部の板状フィンのうちの少なくとも2つを一体に形成することができる。
中心部材、外周部材、中心部材と外周部材とを連結する板状フィンや、さらには外周部材に板状フィンが備えられる時には該板状フィンを、例えばアルミニウム鋳物製として一体に構成すれば、上記部材相互間でそれらが別体で構成されるときに比べ伝熱抵抗を低く抑えることができ、冷媒吸着材の効果的な加熱や冷却ができる。さらに、製造コストの低減や充填容器としての強度の向上を図ることができる。
なお言うまでもなく、上記部材の全てを一体に形成しなくても良く、また例えば中心部材と、中心部材と外周部材とを連絡する板状フィンとを一体として形成し、外周部材とは、ろう付けなどで接続しても良いが、少なくとも伝熱の面から上記部材の全てを一体に形成するのが最も好ましい。
【0020】
さらに、本発明は、前記冷媒吸着材充填容器は、前記中心部材及び外周部材のいずれか一方側から他方側に向かって延伸する板状のフィンを備え、前記フィンは他のいずれかのフィンと互いに平行に形成することができる。
本発明のように、冷媒吸着材充填容器の断面形状を、代表的には外周部材を円形に形成し、中心部材とそれらを連結する複数の板状フィンを備え、さらに外周部材側及び中心部材側の少なくともいずれか一方から他方に向かって延伸した板状フィンを備えて、該板状フィンが他のいずれかの板状フィンと平行に形成させると、互いに向かい合った板状フィン相互間にはさまれた冷媒吸着材は、双方のフィン表面から加熱時には均一に給熱され、冷却時には双方のフィン表面に均一に放熱することができるので、冷媒吸着材充填容器内部の冷媒吸着材温度を全体的に均一に変化させることができる。
【0021】
なお、上記板状フィンは、必ずしも相互に完全に平行で無くても良く、例えば互いに斜めの位置関係にあっても互いに向き合っていれば、上記のように給熱や放熱に寄与するから、冷媒吸着材全体の温度の均一化に貢献することができる。したがって、本発明で「平行」とは、完全なる平行のほか、経験則に基づき上記の給熱や放熱に対する実質的効果が認められる程度の大よその平行という意味をも含むものである。
ところで、平行に向かい合った平板部で構成された放熱容器内に複数のフィンを密に配すること自体は容易であるが、冷媒吸着材は、例えば粉末状固体、顆粒状固体、繊維状固体、ゲル等であり、一般的に流動性に乏しい物質であるから、上記のような放熱容器に充填することは困難である。しかし、本発明のように冷媒充填容器を構成すれば、十分で且つ効果的な伝熱フィンを備え、しかも例えば円筒状冷媒充填容器の開口端から容易に冷媒吸着材を充填することができる。
【0022】
また、本発明は、ターボ冷凍機中から冷媒ガスと共に抽出されたのち、該冷媒ガスと分離された不凝縮ガスを、冷媒吸着材を充填した冷媒吸着材充填容器中を通過させた後に大気中に排出するように構成されたターボ冷凍機用抽気回収装置において、前記冷媒吸着材充填容器として、前記した本発明の冷媒吸着材充填容器を用いている。
いわゆる低圧冷媒を使用するターボ冷凍機においては、該冷凍機内部に漏入した空気等の不凝縮ガスを機外に排出するために、通常抽気回収装置を備えている。この抽気回収装置により、冷凍機内の不凝縮ガスを冷媒ガスと共に抽出し、該抽出したガスを、例えば冷却することで冷媒ガスと不凝縮ガスとに分離し、分離した冷媒を冷凍機に回収すると共に不凝縮ガスを機外に排出する。ここで、上記のように冷却によりガス分離を行った場合には、不凝縮ガスの中に、前記冷却時の温度の飽和圧力に相当する分圧で冷媒ガスも含まれているのが通常であり、この時点での不凝縮ガスは、言わば混合ガスの状態にある。そこで、第2段階のガス分離を行い、前記混合ガスからさらに大部分の冷媒ガスを除去したのち、冷媒ガスを殆ど同伴することなく、ほぼ完全な不凝縮ガスだけを機外、即ち通常は大気中に排出することが、特に環境対策として求められている。なお、前記第2段階で混合ガスから分離、除去された冷媒ガスも、通常は該冷凍機に回収される。
【0023】
前記第2段階の冷媒ガスと不凝縮ガスとの分離のために、前記混合ガスを冷媒吸着材を充填した冷媒吸着材充填容器の中を通過させることにより、該混合ガス中から冷媒ガスを吸着して除去し、残留した不凝縮ガスだけを機外へ排出するように構成された抽気回収装置において、冷媒吸着材充填容器として本発明による充填容器を使用すれば、冷媒吸着材の必要十分な加熱及び冷却が速やかにできるから、冷媒を吸着した冷媒吸着材から冷媒を速やかに且つ十分に脱着でき、冷媒吸着材が好適に再生できるので、同一の冷媒吸着材を繰り返し使用でき、冷媒吸着材交換などの手間がかからず経済的で、さらに冷媒の機外への放出を極めて減少できる優れた抽気回収装置を実現できる。
【0024】
また、本発明は、抽気回収装置を備えたターボ冷凍機において、抽気回収装置として、前記した本発明の抽気回収装置を備えることとした。
前記の抽気回収装置を備えたターボ冷凍機においては、仮に空気等の不凝縮ガスが機内に漏入したとしても、該抽気回収装置により不凝縮ガスは抽気により除去され、しかも不凝縮ガスと共に抽気された冷媒ガスは、冷凍機に回収することも可能であるから、冷媒充填量の減少が極めて僅かである。即ち、不凝縮ガスが例え漏入したとしても、事実上該不凝縮ガスだけを機内から除去でき、冷媒量の減少が極めてわずかで、事実上大気中に冷媒を排出することのない、環境対策に優れたターボ冷凍機を提供することができる。
【0025】
さらに、本発明は、不凝縮ガスを含有する冷媒ガスから冷媒ガスのみを吸着して回収し、不凝縮ガスを大気中に排出する冷媒回収装置として、前記した本発明の冷媒吸着材充填容器に冷媒吸着材を充填して用いている。
冷凍機から冷媒を回収する冷媒回収装置においては、該冷凍機内部に漏入していたり、又は冷媒回収作業中に漏入した空気等の不凝縮ガスも、同時に該冷媒回収装置に一旦回収してしまう場合がある。この場合、冷媒回収装置に一旦取り込まれた不凝縮ガスを該冷媒回収装置外に排出するために、冷凍機から取り込んだ不凝縮ガスを含む全ての冷媒ガスを、例えば冷却することで冷媒ガスと不凝縮ガスとに分離し、分離した冷媒だけを冷媒充填容器に移送し保存すると共に、不凝縮ガスを冷媒回収装置外に排出する。ここで、例えば上記のように冷却によりガス分離を行った場合には、不凝縮ガスの中に前記冷却時の温度の飽和圧力に相当する分圧で冷媒ガスも含まれているのが通常であり、この時点での不凝縮ガスは、言わば混合ガスの状態にある。そこで、第2段階のガス分離を行い、前記混合ガスからさらに大部分の冷媒ガスを除去したのち、冷媒ガスを殆ど同伴することなく、ほぼ完全な不凝縮ガスだけを冷媒回収装置外、即ち通常は大気中に排出することが特に環境対策として求められている。
【0026】
前記第2段階の冷媒ガスと不凝縮ガスとの分離のために、上記混合ガスを冷媒吸着材を充填した冷媒吸着材充填容器の中を通過させることにより、該混合ガス中から冷媒ガスを吸着して除去し、残留した不凝縮ガスだけを冷媒回収装置外へ排出するように構成された冷媒回収装置において、冷媒吸着材充填容器として本発明による充填容器を使用すれば、冷媒吸着材の必要十分な加熱及び冷却が速やかにできるから、冷媒を吸着した冷媒吸着材から冷媒を速やか且つ十分に脱着でき、冷媒吸着材が好適に再生できるので同一の冷媒吸着材を繰り返し使用でき、冷媒吸着材交換などの手間がかからず経済的で、さらに冷媒の冷媒回収装置外への放出を極めて減少できる優れた冷媒回収装置を実現できる。また、本発明による冷媒回収装置の適用範囲はターボ冷凍機に限られることなく、他の蒸気圧縮式冷凍機にも当然に適用可能である。
【0027】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明にかかる代表的な冷媒吸着材充填容器の一例を示す断面構成図である。図1において、円筒状の外周部材である壁面1により容器を形成し、内部に冷媒吸着材等を収容可能なスペース6を形成しつつ、一体に形成された内部フィン2ないし4により、内部空間距離を短縮しかつ伝熱面積を拡大させ、内部の収納スペース6に収容した冷媒吸着材等の加熱及び冷却に際して、温度むらを低減しかつ伝熱に要する時間を短縮することができる。
冷媒吸着材の粉末や顆粒・ゲルの代表的粒子径は、2メッシュないし200メッシュ(約0.1mmないし約10mm)程度であり、繊維状固体は数mm角程度のチップが使用できる。このとき、前記内部フィン2ないし4の距離は、内部に充填する冷媒吸着材等の粒子径よりも大きいことが必要であり、冷媒吸着材等の粒子径の5倍以下、好ましくは2〜5倍とすることができる。フィン間の距離がこれよりも狭い場合には、冷媒吸着材等の粒子を内部に密に充填することが困難となり、冷媒吸着材等の充填率が減少するために、相対的に冷媒吸着材充填容器を大きくする必要が生じ、一方これより広い場合には、前記フィンに接しない粒子の割合が大半を占めるために伝熱促進効果が減少するからである。
【0028】
内部フィン2は、中心部材10と外周部材1との間を連携し、全体の形状の保持及び伝熱の均一化を高める効果があり、内部フィン3は外周部の伝熱の均一化を、内部フィン4は中心部の伝熱の均一化を各々高める効果がある。内部フィン3表面と内部フィン4表面及び内部フィン2表面が、各々平行するように配置することにより、内部の収納スペース6に充填した冷媒吸着材等の各部の伝熱距離を均一とし、速やかにかつ均一に(大きさにもよるが冷媒吸着材内の温度差として、例えば10℃以下程度)加熱及び冷却が可能となる。このとき、放射状フィン2の枚数は8ないし12枚が好ましい。なお、図には示さないが、内部フィン3又は4の数は放射状フィン2と必ずしも同数である必要はなく、内部の収納スペース6に充填する粒子径との相対的関係により、適切な伝熱距離が確保できる範囲で適宜選択することができ、例えば一組のフィン2と中心部材10及び外周部材1とで構成される一区画の冷媒吸着材収納スペース内に、複数のフィン3又はフィン4を交互に平行に互いの距離が適切な伝熱距離となるように配置することもできる。ただし、鋳造により冷媒吸着材充填容器を製造する場合には、製作の容易さを考慮すると、各区画の冷媒吸着材収納スペース6及びフィンの形状・寸法は同一であることが好ましく、このようにすることで鋳物の中子を同一形状で製作できるため、製作コストの削減を図ることができる。
【0029】
加熱手段として、例えばカートリッジ型のヒータ等を用いる場合には、フィン2に厚肉部を予め設け、ここに取り付け用穴8を設けておくことにより、容易に取り付けができる。なお、図には示さないが、ヒータを中心部材10の中央に紙面の垂直方向から挿入する方法でもよいが、この場合には後に述べるカバー及び金網を貫通して取り付け、かつカバー貫通部の気密を保持する必要があるため、注意が必要である。また、シート状のヒータを容器壁面1の外周面に貼り付ける方法でもよいが、この場合には、冷却時にヒータ自体が熱抵抗となりうるので冷却時間が長くなることに注意が必要である。
冷媒吸着材充填容器の材料としては、極力熱伝導率の高いことが好ましく、例えばアルミ合金鋳物を用いることにより、大きさにもよるが容器自体の温度むらは数℃以内の最小限に留めることができる。
また、容器外面の外周部材1にはフィン5を設けることにより、冷却時に速やかに外部へ放熱する効果を高めることができる。
なお、外部フィン5の前後両端部に連なるフランジの張り出し部7に設けたビス穴9を用いて、両端にカバーを設置する。カバーの形状については、後述する図5を用いて説明する。
【0030】
図2〜4は、本発明にかかる冷媒吸着材充填容器の断面の他の一例を示す断面構成図である。
図2は、放射状に内部フィン2を配置した例であり、放射状のフィン枚数は12ないし16枚以内が好ましい。これよりフィンの枚数が少ないと、相対的にフィンによる伝熱促進効果が減少するため、適切な伝熱距離を保持したままでの大容量化を図ることが困難となる。
一方、適切な伝熱距離を保持したまま大容量化を図るべく、図2のフィンの数を相対的に増やした例(好ましくない例)が図3である。図3のように、内部空間の距離を短縮するためにフィンの枚数を極度に増やすと、相対的に中心部の無駄な体積が増大し、吸着材等を充填するための有効空間がかえって減少するため好ましくない。
【0031】
図4は、放射状のフィン2で構成された空間内に、外周部材1の内面から中心に向かってさらにフィン3を設けることにより、図2より大容量化と内部空間距離の短縮及び伝熱面積の拡大を図った例である。特に、容器壁面外周から加熱しかつ外周へ放熱させる場合には、このように外周側に重点的に内部フィンを配置することにより、速やかに加熱及び冷却が可能となる。このとき、放射状フィン2の枚数は8ないし16枚が好ましい。適切な伝熱距離を保持したままこれよりさらに大容量化を図る場合には、さらにフィンの枚数を増やす必要が生じ、図3の場合と同様の問題が生じるため、図4のようなフィンの構成、即ちフィン2及びフィン3のみによる構成では、対応が困難となる。そのため、前記図1に示すようなフィン4をさらに加えた配置が好適となる訳である。以上のことからわかるように、冷媒吸着材の粒子径及び充填量により、最適な内部フィンの構成配置は変化しうる。
【0032】
図5は、冷媒吸着材充填容器の全体形状の一例を示す縦断面構成図である。冷媒吸着材等を内部に充填し密閉容器として用いる際には、まず前記図1に示すような断面形状を有する円筒形の容器を構成する冷媒吸着材充填容器本体18、該円筒形充填容器本体の片端の開口部を覆うように、冷媒吸着材が脱落しないように保持するための適当な大きさのメッシュ(当然ながら冷媒吸着材粒子自体のメッシュ径よりも細かいことが必要である)を有する金網13を、その平面を維持しつつ吸着材の質量を保持可能な補強板及び/又は金網と共にあてがい、さらにこれを覆い収納しつつ支え、かつ内面中央が凹形状に気体通路を形成し、これに連通する気体の入口または出口を有する円板状カバー12を設置する。フランジ面には、気密のため例えばOリングなどのシール材14を設置する。これにより、片側のみが開放された充填容器本体内に形成された気体通路を兼ねた冷媒吸着材収納スペースに、冷媒吸着材を充填したのち、もう一端も前記同様に金網13、シール材14、カバー11を設置して密閉する。
【0033】
このようにして、カバー12及びカバー11には、各々入口19及び出口20を設け、入口19から導入した冷媒ガスを含む不凝縮ガスを、冷媒吸着材充填容器本体18内に充填した冷媒吸着材に全量通過させることにより冷媒ガスを冷媒吸着材に吸着させ、残りの殆ど冷媒ガスを含まない、主に不凝縮ガスのみを出口20から排出することができる。さらに、冷媒吸着材充填容器本体18には、ヒータ取付穴17を用いて所定の発熱容量のカートリッジヒータを取り付け可能であり、また、温度センサ取付穴16にはサーミスタなどの温度センサを取り付け可能であるから、冷媒吸着材に吸着された冷媒を脱着再生させるのに適する温度まで均一にかつ速やかに昇温し、所定の時間保持して脱着した冷媒ガスを再生回収することができる。また、再び冷却することにより冷媒吸着材の吸着性が復活するが、この際にも冷媒吸着材充填容器の内部まで均一にかつ速やかに冷却することができる。なお、下側のカバー12には、脚15を取り付けることで自立するから、所定の位置に設置固定することも可能である。また、外部(ここでは下部)に冷却ファン62を設置し、冷却時のみ運転することで冷却時間の短縮が可能である。さらに、外周には、ダクト61を設置することで加熱時間及び冷却時間の短縮と投入エネルギーの削減が可能である。
【0034】
図6は、本発明にかかる冷媒吸着材充填容器を用いた抽気回収装置を有するターボ冷凍機の概略構成図であり、抽気回収装置の詳細については図7による。図7は、本発明にかかる抽気回収装置の一例を示す全体構成図である。図6及び図7に記載の記号イ、ロ、ハ、ニ、ホは、同一の記号が付されている部分が相互に接続される部分であることを示している。
ターボ冷凍機と抽気回収装置との相互連絡部分から関連するバルブの開閉も含めて説明する。
【0035】
図7において、抽気回収装置50のパージコンデンサ31は、ターボ冷凍機の冷媒サイクルを構成する冷媒の一部を用いて冷却される。即ちターボ冷凍機の凝縮器41から液冷媒の一部を配管を用いて取り出し、この配管を蒸発器42の内部に引き回して、前記液冷媒を過冷却した後に、冷媒ポンプ43により冷媒フィルタ44を経由して、パージコンデンサ31内に設置された熱交換器である冷却コイル32に向けて圧送される(ロの経路である)。熱交換器である冷却コイル32のパージコンデンサ31入口部には、オリフィス45が配置されており、冷却コイル32の下流側は冷凍機の蒸発器に接続されているので、パージコンデンサ31内部は、ほぼ冷凍機の蒸発器と等しい程度の低温にまで液冷媒の気化潜熱によって冷却される。パージコンデンサを冷却したのち、前記冷媒は蒸発器42に戻る(ニの経路である)。前記パージコンデンサ冷却用冷媒は、冷凍機運転中常時流れているので、これによりパージコンデンサ31の圧力は凝縮器41の圧力よりも低く保たれる。
【0036】
凝縮器41とパージコンデンサ31との前記圧力差によって、凝縮器41から不凝縮ガスを含む冷媒ガスが、連絡配管37を通りオリフィス39を経由してパージコンデンサ31内に流入する(イの経路である)。コンデンサ室31aで、冷媒ガスは凝縮液化したのち、フロート弁室31bに流れる。該フロート弁室31bに、一定量以上の液冷媒が溜まるとフロート弁33が開いて、冷媒は冷凍機(蒸発器42)に戻る(ホの経路である)。一方、不凝縮ガスは、パージコンデンサ室31内に滞留し、次第に蓄積していく。
なお、凝縮器41の圧力とパージコンデンサ31の圧力との圧力差を検出するための導圧配管が凝縮器41から取り出されて差圧検出器34に接続されている(ハの経路である)。
【0037】
次に、本発明に係る抽気回収装置の構成と作用・効果等に関し順次説明する。
上述した通りターボ冷凍機運転中には、凝縮器41から連絡配管37とオリフィス39を経由して不凝縮ガスを含む冷媒ガスがパージコンデンサ31に流入し、その内の冷媒ガスは、コンデンサ室31aにおいて冷却コイル32により冷却・液化され、フロート弁室31bを経由して蒸発器42に戻る。一方、不凝縮ガスは、コンデンサ室31a内に次第に蓄積し、パージコンデンサの内圧が徐々に上昇する。
次に、不凝縮ガスの大気中への排出運転に関し、説明する。
パージコンデンサ31のコンデンサ室31aに不凝縮ガスが蓄積された結果、冷凍機の凝縮器41とパージコンデンサ31との圧力差が、所定の値以下になると差圧検出器34が作動し、制御部40へ信号が伝送される。その後、制御部40は電磁弁51を開く。これにより、パージコンデンサ31内部に蓄積された不凝縮ガスは、冷媒ガスと共に接続配管54とその途中に配置されたオリフィス57、電磁弁51を経由して、吸着タンク63に導入される。吸着タンク63の内部には、冷媒吸着材60が充填されており、冷媒ガスはその大部分がこの吸着材60に吸着される。
【0038】
こうして冷媒ガスを含む不凝縮ガスが、パージコンデンサ31から吸着タンク63へ移動すると、パージコンデンサ31の内圧が低下するから、冷凍機の凝縮器41との間の圧力差が再び所定の値を超えて増大するので、前記差圧検出器34が切れる。これにより電磁弁51が閉じられ、パージコンデンサ31内に蓄積された不凝縮ガスの排出が完了する。ところで、前記差圧検出器34が作動し、電磁弁51を開くことにより、冷媒ガスを含む不凝縮ガスが冷媒吸着材60の充填された吸着タンク63内に導入されてから、冷媒ガスが冷媒吸着材60に吸着されて再び前記差圧検出器34が切れ、電磁弁51が閉じられ、パージコンデンサ31内に蓄積された不凝縮ガスの排出が完了するに要する時間(以降、“吸着時間”と称する)は、パージコンデンサ31及び吸着タンク63の大きさにもよるが概ね50秒ないし70秒あれば十分であることを確認した。従って、例えば前記吸着時間以上の値を予め設定した吸着完了確認タイマーなどを制御部40内に設けることにより、前記吸着動作の完了を検出できるから、前記吸着時間が経過してもなお前記差圧検出器34が切れない場合、即ち冷凍機の凝縮器41とパージコンデンサ31との圧力差が前記所定の値以下を維持したままである場合には、吸着タンク63内に相当量の不凝縮ガスが蓄積されたことを意味するため、パージポンプ36を起動すると共に電磁弁52を開く。このようにして、冷媒ガスが吸着材に吸着された結果、殆ど不凝縮ガスだけがパージポンプ36により吸引・吐出されて電磁弁52を経由して大気中に排出される。
【0039】
以上に説明したように、凝縮器41とパージコンデンサ31との差圧が所定の値以下になった時に、パージコンデンサ31から吸着タンク63へ冷媒ガスを含む不凝縮ガスを移送する。移送後には、上記差圧は再び所定の値を超え、電磁弁51は閉じられるので、パージコンデンサ31には再び不凝縮ガスの蓄積が始まる。このように、凝縮器41とパージコンデンサ31との差圧を検出することにより、パージコンデンサ31から吸着タンク63への冷媒ガスを含む不凝縮ガスの移送を繰り返す。そして、これを複数回繰り返すと、やがて吸着タンク63内の不凝縮ガス量が増大するので、前記の予め設定した吸着時間以内に前記差圧の値が所定値を超える値にまで回復しなくなる。このときは、相当量の不凝縮ガスが吸着タンク63内に蓄積されたことになるから、パージポンプ36を運転して電磁弁52を開いて不凝縮ガスを外部に排出するわけである。
【0040】
因みに、次に説明する冷媒脱着とも関係するが、吸着タンク63内の冷媒吸着材60が有する冷媒の吸着容量、即ち吸着可能冷媒質量は、パージコンデンサ31から1回あたりに排出される冷媒質量に対して必要十分に大きくすることが望ましい。即ち、冷媒吸着材の必要充填量が決まるので、冷媒吸着材充填容器の大きさはこれ以上の容量とする必要がある。その理由は、例えば冷媒吸着材60の吸着容量が小さすぎる場合、吸着タンク63で吸着される冷媒が、すぐに飽和(即ち吸着限界量)に達してしまい、吸着タンク63内の不凝縮ガス蓄積量が少ない場合であっても、前記の予め設定した吸着時間以内に、凝縮器41とパージコンデンサ31との圧力差が所定の値を超えるまでに回復せず、あたかも相当量の不凝縮ガスが吸着タンク63内に蓄積したのと同様な現象が出現してしまう。換言すれば、吸着タンク63を設置した効果が十分に発揮できないからである。
【0041】
なお、パージコンデンサから電磁弁51の開動作1回あたりに、吸着タンク63に向かって不凝縮ガスと共に排出される冷媒ガス質量と、吸着タンク63の冷媒吸着容量とが適切な関係にある場合、例えば冷媒吸着材60の実質的に可能な最大冷媒吸着質量が、パージコンデンサから電磁弁51の開動作1回あたりに不凝縮ガスと共に排出される冷媒ガス質量の数倍以上あるような場合は、冷媒吸着材60が冷媒で飽和する前に不凝縮ガスが吸着タンク63内に十分な量蓄積され、外部への不凝縮ガス排出工程が好適に行われる。このような不凝縮ガス排出工程が複数回行われるうちに、やがて冷媒吸着材60が吸着冷媒で飽和してくるので、冷媒脱着工程を行う必要が出てくる。
【0042】
次に、冷媒吸着材60からの冷媒脱着動作について説明する。
冷媒吸着材60は、吸着した冷媒を脱着することにより冷媒吸着能力が回復するので、冷媒吸着材60を再使用するためには、冷媒脱着工程(冷媒吸着材再生工程)を欠くことはできない。冷媒脱着工程の間、前記の抽気動作及び不凝縮ガス排出動作は同時に行うことができないため、できるだけ速やかに完了させる必要がある。この脱着工程においては、制御部40はヒータ58とパージポンプ36に運転指令を発すると共に、電磁弁53の開信号を発する。これにより冷媒吸着材60は、脱着に適切な温度レベルまでヒータ58により昇温されると共に、パージポンプ36によって脱着された冷媒ガスを吸引され、低圧条件下に曝されるので、温度的にも圧力的にも冷媒が脱着され易くなり、冷媒吸着材60からの冷媒の脱着は促進し、換言すれば冷媒吸着材の再生が進行する。この際、本発明による冷媒吸着材充填容器を用いることにより、内部まで均一にかつ速やかに加熱を行うことが可能となるため、抽気動作を停止する時間を最小限にできるだけでなく加熱に要する投入エネルギーも最小限とすることができ、環境への負荷も低く抑えることができる。
【0043】
冷媒吸着材60として活性炭を用いた場合には、その脱着時の冷媒吸着材60の温度を例えば120〜130℃程度に制御するのが好ましく、速やかにかつ均一に加熱する必要がある。本発明による冷媒吸着材充填容器を用いることにより、内部まで均一にかつ速やかに加熱をすることが可能となるため、効果的に冷媒の脱着を実現することが容易となる。また冷媒吸着材60の温度を検知又は制御できるサーモスタット59を容易に設置できるので、冷媒吸着材60の温度レベルを容易に所望の温度レベルに到達又は維持することができる。また、サーモスタットの代わりに熱電対、測温抵抗体やサーミスタ等の温度検出器を設置することももちろん可能であるため、温度コントローラ等の制御器との組み合わせで温度制御を行うこともできる。
ところで、冷媒吸着材60から脱着され、パージポンプ36により吸引・吐出された冷媒ガスは、接続配管54及び電磁弁53を経由してパージコンデンサ31に導入される。前述のように、パージコンデンサ31のコンデンサ室31aは、冷却コイル32により冷却されているので、冷媒ガスは凝縮・液化し、フロート弁室31bを経由して冷凍機の蒸発器42に戻る。
【0044】
次に、冷媒吸着材60の冷却操作について、説明する。
吸着した冷媒の脱着のため、冷媒吸着材60は前記のようにヒータ58により昇温されるが、再び冷媒吸着能力を取り戻すためには、冷媒吸着材60の温度をターボ冷凍機の周囲環境温度程度にまで冷やす必要がある。このため、次の操作が必要になる。本冷却工程においては、制御部40はファン62に対して起動指令を出す。冷媒吸着材60は、吸着タンク63の内部に収納されているので、ファン62により吸着タンク63の近傍に強制空気流を生じさせ、冷媒吸着材60の温度を速やかに低下させるようにする。前記強制空気流が、冷却に効果的に吸着タンク63表面近傍を流れるようにするため、例えばダクト61を吸着タンク63の周囲に設けるのが好ましい。
【0045】
この際にも、本発明による冷媒吸着材充填容器を用いることにより、該充填容器の内部まで均一にかつ速やかに冷却を行うことが可能となるため、抽気動作を停止する時間を最小限に出来るだけでなく、冷却に要する投入エネルギーも最小限とすることができ、環境への負荷も低く抑えることができる。こうして冷媒吸着材60は、再び冷媒吸着能力を取り戻すことができる(再生される)。
以上より、本発明によれば、抽気回収装置から大気中に排出される不凝縮ガスに同伴して大気中に漏れ出る冷媒量を冷媒吸着材を用いて極限まで減少でき、前記冷媒吸着材は速やかに且つ十分な冷媒吸着能力を回復するまでに再生されて反復使用でき、かつ冷媒吸着材を再生すると共に冷媒を回収して冷凍機に戻すことができる抽気回収装置を提供することができる。
また、本発明の冷媒吸着材充填容器を用いた抽気回収装置を搭載したターボ冷凍機を使用すれば、冷媒の損耗が微少であり、環境負荷が改善された冷房装置や冷凍装置等を実現することができる。
【0046】
図8は、本発明にかかる冷媒吸着材充填容器を用いた冷媒回収装置と圧縮式冷凍機及び冷媒回収容器の接続状況を示す図であり、冷媒回収装置の詳細については図9による。図9は、本発明にかかる冷媒吸着材充填容器を備えた冷媒回収装置の一例を示す全体構成図である。図8及び図9に記載の記号い、ろ、は、に、は、同一の記号が付されている部分が相互に接続される部分であることを示している。以下、関連するバルブの開閉も含めて説明する。
圧縮式冷凍機及び冷媒回収容器と冷媒回収装置との相互連絡部分から説明する。冷媒回収装置70の小形凝縮器71は、圧縮式冷凍機の熱源を構成する冷却水の一部を用いて冷却される。即ち、圧縮式冷凍機の凝縮器101の冷却水配管104から冷却水の一部を連絡配管82を用いて取り出し、ポンプ77により小形凝縮器71内に設置された熱交換器である冷却コイル72に向けて圧送される(ろの経路である)。なお、上記冷却コイル72に導入する冷却媒体は圧縮式冷凍機の冷却水の代わりに圧縮式冷凍機の冷水や一般水道水その他を用いても良いが、ここでは圧縮式冷凍機の冷却水を用いた例で説明する。
【0047】
熱交換器である冷却コイル72の下流側は、圧縮式冷凍機の凝縮器101の冷却水配管105に再び接続されているので、冷却コイル72はほぼ冷凍機の冷却水と等しい程度の低温にまで冷却水によって冷却される。小形凝縮器71を冷却したのち、前記冷却水は圧縮式冷凍機の凝縮器101の冷却水配管105に戻る。(はの経路である。)前記小形凝縮器71の冷却用冷却水は、ポンプ77の運転中常時流れているので、これにより小形凝縮器71の温度は、小形圧縮機又は真空ポンプ76の出口温度よりも低く保たれる。なお、本発明においては「小形圧縮機又は真空ポンプ」という語は、吸込側に対しては真空ポンプとして作用し、吐出側に対しては圧縮機として作用することを意味する。
小形圧縮機又は真空ポンプ76によって、冷凍機100から不凝縮ガスを含む冷媒ガスが連絡配管79を通り小形凝縮器71内に流入する(いの経路である)。コンデンサ室71a内で、冷媒ガスは凝縮液化したのちフロート弁室71bに流れる。該フロート弁室71bに一定量以上の液冷媒が溜まると、フロート弁73が開いて冷媒は冷媒回収容器106に回収される(にの経路である)。一方不凝縮ガスは、コンデンサ室71a内に滞留し、次第に蓄積し小形凝縮器71の内圧が徐々に上昇する。
なお、小形凝縮器71の圧力を検出するための導圧配管が、小形凝縮器71から取り出されて圧力スイッチ74に接続されている。
【0048】
次に、本発明について冷媒回収装置の運転状況ごとに、構成と作用・効果等に関し順次説明する。
上述した通り、冷媒回収運転中には、冷凍機100から連絡配管79を経由して小形圧縮機又は真空ポンプ76により、不凝縮ガスを含む冷媒ガスが小形凝縮器71に圧送され、その内の冷媒ガスはコンデンサ室71aにおいて冷却コイル72により冷却・液化され、フロート弁室71b、フロート弁73、連絡配管81を経由して冷媒回収容器106に回収される。一方、不凝縮ガスは、コンデンサ室1a内に次第に蓄積し、小形凝縮器1の内圧が徐々に上昇する。
【0049】
次に、不凝縮ガスの大気中への排出運転に関し説明する。
小形凝縮器71のコンデンサ室71aに不凝縮ガスが蓄積された結果、小形凝縮器71の圧力が所定の値以上になると圧力スイッチ74が作動し、制御部84へ信号が伝送される。その後、制御部84は電磁弁75を開く。これにより小形凝縮器71内部に蓄積された不凝縮ガスは、冷媒ガスと共に接続配管89とその途中に配置されたオリフィス90、電磁弁75を経由して吸着タンク63に導入される。吸着タンク63の内部には、冷媒吸着材60が充填されており、冷媒ガスはその大部分がこの吸着材60に吸着される。冷媒吸着材60としては、例えば活性炭を用いることができる。吸着タンク63内に導入された冷媒ガスは、冷媒吸着材60に吸着されるため、小形凝縮器71内の圧力よりも常に吸着タンク63内の圧力は低く、また吸着タンク63内の圧力は吸着作用が進むにつれ時間経過と共に低下し、吸着タンク内に蓄積された不凝縮ガスの分圧に近づく。
【0050】
こうして冷媒ガスを含む不凝縮ガスが小形凝縮器1から吸着タンク63へ移動すると、小形凝縮器1の内圧が低下するから、前記圧力スイッチ74が切れる。これにより電磁弁75が閉じられ、小形凝縮器71内に蓄積された不凝縮ガスの排出が完了する。ところで、例えば前記吸着時間以上の値を予め設定した吸着完了確認タイマーなどを制御部84内に設けることにより、前記吸着動作の完了を検出できるから、所定の吸着時間(小形凝縮器71及び吸着タンク63の大きさにもよるが、概ね50秒ないし70秒)が経過してもなお前記圧力スイッチ74が切れない場合、即ち小形凝縮器71の圧力が前記所定の値以上を維持したままである場合には、吸着タンク63内に相当量の不凝縮ガスが蓄積されたことを意味するため、電磁弁93を開く。このようにして冷媒ガスが吸着材に吸着された結果、殆ど不凝縮ガスだけが電磁弁93を経由して大気中に排出され、冷媒の排出量は極めて微少量に抑えられる。
【0051】
以上に説明したように、小形凝縮器71の圧力が所定の値以上になった時に、小形凝縮器71から吸着タンク63へ冷媒ガスを含む不凝縮ガスを移送する。移送後には上記圧力は再び所定の値を下回り、電磁弁75は閉じられるので、小形凝縮器71には再び不凝縮ガスの蓄積が始まる。このように小形凝縮器71の圧力を検出することにより、小形凝縮器71から吸着タンク63への冷媒ガスを含む不凝縮ガスの移送を繰り返す。そして、これを複数回繰り返すとやがて吸着タンク63内の不凝縮ガス量が増大するので、前記の予め設定した吸着時間以内に前記圧力の値が所定値を下回る値にまで回復しなくなる。このときは、相当量の不凝縮ガスが吸着タンク63内に蓄積されたことになるから、電磁弁93を開いて不凝縮ガスを外部に排出するわけである。
【0052】
因みに、次に説明する冷媒脱着とも関係するが、吸着タンク63内の冷媒吸着材60が有する冷媒の吸着容量、即ち吸着可能冷媒質量は、小形凝縮器71から1回あたりに排出される冷媒質量に対して、必要十分に大きくすることが望ましい。即ち、小形凝縮器71の容量から冷媒吸着材の必要充填量が決まるので、冷媒吸着材充填容器の大きさはこれ以上の容量とする必要がある。その理由は、例えば冷媒吸着材60の吸着容量が小さすぎる場合、吸着タンク63で吸着される冷媒がすぐに飽和(即ち吸着限界量)に達してしまい、吸着タンク63内の不凝縮ガス蓄積量が少ない場合であっても、上記の予め設定した吸着時間以内に小形凝縮器71と吸着タンク63との圧力差が所定の値を超えるまでに回復せず、あたかも相当量の不凝縮ガスが吸着タンク63内に蓄積したのと同様な現象が出現してしまう。換言すれば、吸着タンク63を設置した効果が十分に発揮できないからである。なお、小形凝縮器71から電磁弁75の開動作1回あたりに、吸着タンク63に向かって不凝縮ガスと共に排出される冷媒ガス質量と、吸着タンク63の冷媒吸着容量とが適切な関係にある場合、例えば冷媒吸着材60の実質的に可能な最大冷媒吸着質量が小形凝縮器71から電磁弁75の開動作1回あたりに不凝縮ガスと共に排出される冷媒ガス質量の数倍以上あるような場合は、冷媒吸着材60が冷媒で飽和する前に不凝縮ガスが吸着タンク63内に十分な量蓄積され、外部への不凝縮ガス排出工程が好適に行われる。このような不凝縮ガス排出工程が複数回行われるうちに、やがて冷媒吸着材60が吸着冷媒で飽和してくるので、冷媒脱着工程を行う必要が出てくる。
【0053】
なお、冷媒の吸着時には発熱を伴うため、一時的に冷媒吸着材60の温度が上昇する。特に冷凍機の気密不良が原因で冷媒回収を行なうような場合には、冷凍機内に漏入した不凝縮ガスを頻繁に排出するため、同伴される冷媒ガスを短時間に大量に吸着させることから、温度上昇が無視できないほど大きくなる場合がある。このようなときには、冷媒吸着材60の温度が上昇することによって冷媒を吸着できる容量が減少するから、吸着に適する温度以上に冷媒吸着材60の温度が上昇することがない様に、冷却が必要となる場合がある。このため、後述する脱着再生処理工程後の冷却工程における場合と同様に、不凝縮ガスの排出工程における吸着時においても次の操作が必要になる。本排出工程においては、制御部84はファン62に対して起動指令を出す。冷媒吸着材60は、吸着タンク63の内部に収納されているので、ファン62により吸着タンク63の近傍に強制空気流を生じさせ、冷媒吸着材60の温度を速やかに低下させるようにする。前記強制空気流が、冷却に効果的に吸着タンク63表面近傍を流れるようにするため、例えばダクト61を吸着タンク63の周囲に設けるのが好ましい。ファン62の運転は、例えば吸着タンク63表面温度を、冷媒吸着材60の温度の代わりに温度検出器などで検出したり、冷媒吸着材60の中に温度検出器を直接埋め込んでその温度を検出し、所定の温度以上で起動し、所定の温度以下になるまで継続した後停止するようにしても良いし、排出動作と同時に起動し、予め冷却に必要な時間を計測しておき、タイマー等を用いて当該時間だけ運転を継続した後停止するようにしても良い。
【0054】
次に、冷媒吸着剤60からの冷媒脱着動作について説明する.
冷媒吸着材60は、吸着した冷媒を脱着することにより冷媒吸着能力が回復するので、冷媒吸着材60を再使用するためには冷媒脱着工程(冷媒吸着材再生工程)を欠くことはできない。冷媒脱着工程の間、前記の冷媒回収動作及び不凝縮ガス排出動作は同時に行うことができないため、できるだけ速やかに完了させる必要がある。この脱着工程においては、切替弁85を閉じ、切替弁92を開くことにより、吸着タンク63から小形圧縮機又は真空ポンプ76を経由して、小形凝縮器71へ連絡する接続配管94を通じさせておき、制御部84は、ヒータ58と小形圧縮機又は真空ポンプ76に運転指令を発する。これにより、冷媒吸着材60は脱着に適切な温度レベルまでヒータ58により昇温されると共に、小形圧縮機又は真空ポンプ76によって脱着された冷媒ガスを吸引され低圧条件下に曝されるので、温度的にも圧力的にも冷媒が脱着され易くなり、冷媒吸着材60からの冷媒の脱着は促進し、換言すれば冷媒吸着材の再生が進行する。この際、本発明による冷媒吸着材充填容器を用いることにより、内部まで均一にかつ速やかに加熱を行うことが可能となるため、冷媒回収動作を停止する時間を最小限にできるだけでなく、加熱に要する投入エネルギーも最小限とすることができ、環境への負荷も低く抑えることができる。
【0055】
冷媒吸着材60として活性炭を用いた場合には、その脱着時の冷媒吸着材60の温度を例えば120〜130℃程度に制御するのが好ましく、速やかにかつ均一に加熱する必要がある。本発明による冷媒吸着材充填容器を用いることにより、内部まで均一にかつ速やかに加熱をすることが可能となるため、効果的に冷媒の脱着を実現することが容易となる。また、冷媒吸着材60の温度を検知又は制御できるサーモスタット59を容易に設置できるので、冷媒吸着材60の温度レベルを容易に所望の温度レベルに到達又は維持することができる。また、サーモスタットの代わりに、熱電対、測温抵抗体やサーミスタ等の温度検出器を設置することももちろん可能であるため、温度コントローラ等の制御器との組み合わせで温度制御を行うこともできる。
ところで、冷媒吸着材60から脱着され、小形圧縮機又は真空ポンプ76により吸引・吐出された冷媒ガスは、接続配管94を経由して小形凝縮器71に導入される。前述のように、小形凝縮器71のコンデンサ室71aは冷却コイル72により冷却されているので、冷媒ガスは凝縮・液化しフロート弁室71bを経由して冷媒回収容器106に回収される。
【0056】
次に、冷媒吸着材60の冷却操作について説明する。
吸着した冷媒の脱着のため、冷媒吸着材60は、上記のようにヒータ58により昇温されるが、再び冷媒吸着能力を取り戻すためには、冷媒吸着材60の温度を冷媒回収装置の周囲環境温度程度にまで冷やす必要がある。このため、次の操作が必要になる。本冷却工程においては、制御部84はファン62に対して起動指令を出す。冷媒吸着材60は、吸着タンク63の内部に収納されているので、ファン62により吸着タンク63の近傍に強制空気流を生じさせ、冷媒吸着材60の温度を速やかに低下させるようにする。前記強制空気流が、冷却に効果的に吸着タンク63表面近傍を流れるようにするため、例えばダクト61を吸着タンク63の周囲に設けるのが好ましい。
この際にも、本発明による冷媒吸着材充填容器を用いることにより、内部まで均一にかつ速やかに冷却を行なうことが可能となるため、冷媒回収動作を停止する時間を最小限にできるだけでなく、冷却に要する投入エネルギーも最小限とすることができ、環境への負荷も低く抑えることができる。
【0057】
以上より本発明によれば、冷媒回収装置から大気中に排出される不凝縮ガスに同伴して大気中に漏れ出る冷媒量を、冷媒吸着材を用いて極限まで減少でき、前記冷媒吸着材は、速やかに且つ十分な冷媒吸着能力を回復するまでに再生されて反復使用でき、かつ冷媒吸着材を再生すると共に冷媒を回収することができる冷媒回収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明にかかる冷媒吸着材充填容器の一例を示す断面構成図。
図2】本発明にかかる冷媒吸着材充填容器の他の一例を示す断面構成図。
図3】本発明にかかる冷媒吸着材充填容器の他の一例を示す断面構成図。
図4】本発明にかかる冷媒吸着材充填容器の他の一例を示す断面構成図。
図5】本発明にかかる冷媒吸着材充填容器の全体形状の一例を示す縦断面構成図。
図6】本発明にかかる冷媒吸着剤充填容器を用いた抽気回収装置を有するターボ冷凍機の一例を示す概略構成図。
図7】本発明にかかる抽気回収装置の一例を示す全体構成図。
図8】本発明にかかる冷媒回収装置と圧縮式冷凍機及び冷媒回収容器の接続状況の一例を示す概略構成図。
図9】本発明にかかる冷媒吸着材充填容器を用いた冷媒回収装置の一例を示す全体構成図。
【符号の説明】
【0059】
1:外周部材、2:内部フィン(放射状)、3:内部フィン(内向き)、4:内部フィン(外向き)、5:外部フィン、6:吸着材収納スペース、7:フランジ部、8:ヒータ取付穴、9:ビス穴、10:中心部材、11:タンク上カバー、12:タンク下カバー、13:セパレーター((例えば金網))、14:シール材((例えばO−リング))、15:脚、16:センサ取付穴、17:ヒータ取付穴、18:冷媒吸着材充填容器本体、19:入口ノズル、20:出口ノズル、31:パージコンデンサ、31a:コンデンサ室、31b:フロート弁室、32:冷却コイル、33:フロート弁、34:差圧スイッチ、36:抽気ポンプ、37:接続配、38:圧縮機(ターボ冷凍機の)、39:オリフィス、40:制御部、41:凝縮器(ターボ冷凍機の)、42:蒸発器(ターボ冷凍機の)、43:冷媒ポンプ(ターボ冷凍機の)、44:冷媒フィルター(ターボ冷凍機の)、45:オリフィス、50:抽気回収装置、51:電磁弁、52:電磁弁、53:電磁弁、54:接続配管、55:リリーフ弁、56:リリーフ弁、57:オリフィス、58:ヒータ、59:サーモスタット、60:冷媒吸着材、61:ダクト、62:ファンモータ、63:吸着タンク(冷媒吸着材充填容器)、65:不凝縮ガス排出口、70:冷媒回収装置、71:小形凝縮器、71a:コンデンサ室、71b:フロート弁室、72:冷却コイル、73:フロート弁、74:圧力スイッチ、75:電磁弁、76:圧縮機又は真空ポンプ、77:冷却水ポンプ、78:リリーフ弁、79:連絡配管、80:接続配管、81:連絡配管、82:連絡配管、83:連絡配管、84:制御部、85:切替弁、86:切替弁、87:切替弁、88:切替弁、89:接続配管、90:オリフィス、91:電磁弁、92:切替弁、93:不凝縮ガス排出口、94:接続配管、95:接続配管、100:圧縮式冷凍機、101:凝縮器(冷凍機の)、102:蒸発器(冷凍機の)、103:圧縮機(冷凍機の)、104:冷却水配管(冷凍機の)、105:冷却水配管(冷凍機の)、106:冷媒回収容器
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9