(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796885
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】光伝送方式における偏波多重信号分離方法および該方法による受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/60 20130101AFI20151001BHJP
H04J 14/00 20060101ALI20151001BHJP
H04J 14/04 20060101ALI20151001BHJP
H04J 14/06 20060101ALI20151001BHJP
H04J 3/00 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
H04B9/00 600
H04B9/00 F
H04J3/00 Q
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-108033(P2011-108033)
(22)【出願日】2011年5月13日
(65)【公開番号】特開2012-239102(P2012-239102A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2014年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100084870
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 香樹
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英憲
(72)【発明者】
【氏名】森田 逸郎
【審査官】
後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−117922(JP,A)
【文献】
特表2009−512366(JP,A)
【文献】
特開2009−296596(JP,A)
【文献】
K. Takeshima 他,「Experimental Evaluation of Tolerable Polarization Change in PDM-OFDM Systems with Training Symbols」,ACP 2010,2010年12月,p.3-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
H04J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各偏波に対して周期的に挿入されたトレーニングシンボルの送受信に基づいて推定される伝送路の伝達関数をデータシンボルに適用して偏波分離を行う光伝送方式の偏波多重信号分離方法において、
複数の異なる時点で送受信されたトレーニングシンボルから、それぞれの時点での伝達関数を推定する第1の推定ステップと、
あるトレーニングシンボルが送受信された時点を含む前記複数の異なる時点での複数の伝達関数間での伝達関数の変化を関数で表して、前記あるトレーニングシンボルに続くm番目のデータシンボルに適用する伝達関数を推定する第2の推定ステップと、
前記第2の推定ステップで推定された伝達関数を、前記m番目のデータシンボルに適用し偏波分離を行う偏波分離ステップと、
を有することを特徴とする光伝送方式の偏波多重信号分離方法。
【請求項2】
前記第2の推定ステップは、z+1個の伝達関数が前記第1の推定ステップで推定された場合、前記複数の伝達関数間での伝達関数の変化をz次関数で表し、該z次関数を用いて前記m番目のデータシンボルに適用する伝達関数を推定することを特徴とする請求項1に記載の光伝送方式の偏波多重信号分離方法。
【請求項3】
前記第1の推定ステップは、n番目のトレーニングシンボルから、n番目の伝達関数H(n)を推定し、該トレーニングシンボルからn+1番目のトレーニングシンボルまでに受信したデータシンボルを保存し、n+1番目のトレーニングシンボルから、n+1番目の伝達関数H(n+1)を推定し、
前記第2の推定ステップは、前記n番目の伝達関数H(n)と前記n+1番目の伝達関数H(n+1)間での伝達関数の変化を表す関数から、n番目のトレーニングシンボルに続くm番目のデータシンボルに適用する伝達関数H_in(n,m)を推定し、
前記偏波分離ステップは、前記伝達関数H_in(n,m)を、前記保存されたm番目のデータシンボルに適用し偏波分離を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の偏波多重信号分離方法。
【請求項4】
前記第1の推定ステップは、n−1番目のトレーニングシンボルから、n−1番目の伝達関数H(n−1)を推定し、n番目のトレーニングシンボルから、n番目の伝達関数H(n)を推定し、
前記第2の推定ステップは、前記n−1番目の伝達関数H(n−1)と前記n番目の伝達関数H(n)間での伝達関数変化を関数で表して、n番目のトレーニングシンボルに続くm番目のデータシンボルに適用する伝達関数H_in(n,m)を推定し、
前記偏波分離ステップは、前記伝達関数H_in(n,m)を、前記m番目のデータシンボルに適用し偏波分離を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の偏波多重信号分離方法。
【請求項5】
各偏波に対して周期的に挿入されたトレーニングシンボルの送受信に基づいて推定される伝送路の伝達関数をデータシンボルに適用して偏波分離を行う光伝送方式の受信装置において、
複数の異なる時点で送受信されたトレーニングシンボルから、それぞれの時点での伝達関数を推定する第1の推定手段と、
あるトレーニングシンボルが送受信された時点を含む前記複数の異なる時点での複数の伝達関数間での伝達関数変化を関数で表して、前記あるトレーニングシンボルに続くm番目のデータシンボルに適用する伝達関数を推定する第2の推定手段と、
前記第2の推定手段で推定された伝達関数を、前記m番目のデータシンボルに適用し偏波分離を行う偏波分離手段と、
を備えることを特徴とする光伝送方式の光伝送方式の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野に関するものである。より詳細には、光伝送方式における偏波多重信号分離方法および該方法による受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号の光ファイバ伝送において、偏波多重することで伝送容量を2倍にすることができる。しかし、光ファイバ伝送路中で偏波が変動することにより、受信器においては偏波間の信号が混ざった状態で到達するため、偏波多重信号を偏波分離する仕組みが必要である。そのため計算処理により偏波分離する偏波多重信号伝送方式が提案されている。その方式の一つとして、送受信器間で既知のパターンであるトレーニングシンボル(TS)を周期的に挿入することで、伝送路の伝達関数を算出し偏波推定を行うことで、偏波分離を行う方法がある。
【0003】
従来例は、非特許文献1のように、光直交周波数分割多重(OFDM)信号変調方式において用いられている。
図1は、光OFDM信号を用いた伝送前後における信号と時間の関係概念図であり、それを各偏波について示す。伝送前後において、受信した偏波多重信号を単純に2偏波に分けると、偏波多重信号が混合されて受信されるが、Multi-Input-Multi-output(MIMO)技術を用いて偏波分離することにより、送信時の偏波多重信号の通りに偏波分離することが可能となる。
【0004】
具体的には、2つのTS(TS_a、TS_b)の後に、k個のデータシンボル(DS)が続く。これらのTSのパターンは受信器も把握している。さらに、TSは片方の偏波のみ情報が搭載され、もう片方の偏波の信号パワーは0にする。つまり、偏波1でTS_aを送信する際、偏波2は何も送信せず、偏波2でTS_bを送信する際、偏波1は何も送信しない。
【0005】
受信側では、伝送前のトレーニングシンボルTS_a、TS_bと伝送後のトレーニングシンボルTS_a1、TS_b1、TS_a2、TS_b2から、
【数1】
により、TSにより得られた偏波の混合比率とファイバ中で受けた分散を把握し、伝達関数H(上記式で行列h
ij)を得る。そして、TS以後のDS’は、伝送前信号に対し伝達関数Hを与えた結果であるとして、
【数2】
を逆算することによりDS’からDSを得ることができる。この際、伝達関数Hは次のTSまでの期間(TS間隔)において一定である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sander L.Jansen, Itsuro Morita, Tim C. W. Schenk, and Hideaki Tanaka, “Long-haultransmission of 16Ã52.5 Gbits/s polarization-divisionmultiplexedOFDM enabled by MIMO processing,” Vol. 7, No. 2 / February 2008 / JOURNAL OFOPTICAL NETWORKING 173-182.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、通常の光ファイバ伝送路は温度や圧力によって屈折率が変化するため、偏波状態は時間に応じて変化し偏波が回転する。即ち、TS間隔時間内において、偏波状態が変化するにも関わらず、一定値のHを用いて偏波分離してしまうため、結果として偏波推定誤差が大きくなってしまうことになる。この概念図を
図2上部に示す。時間に対し実線で示される偏波状態が変化しているが、丸で示された時刻においてTSにより得られた伝達関数Hである偏波推定値(点線)は、TS間隔内で一定のため、偏波推定誤差が大きくなる。
【0008】
図2下部に、シンボル列(時間、シンボル番号)と生じたエラーの関係を示す。ここでは、TS間隔に含まれるDSの数を200個とし、1シンボル当たりの時間は104.4nsであり、その時間内に発生した偏波の回転角の最大値は0.22[rad]である。信号生成条件の、FFTサイズは1024、サブキャリア数は520であり、サブキャリア変調は8QAMであり、偏波多重含めたビットレートは30.5Gbit/sである。TS直後はエラーは少ないものの、時間とともにエラーが増加する傾向がみられ、エラー増加を低減するために、TSの間隔を短くしなければならず、TSの増加により、帯域を浪費してしまう問題があった。
【0009】
したがって、本発明は、TSの間隔を短くすることなく、偏波推定誤差を低減し、エラーの発生を低減させることが可能な、光伝送方式における偏波多重信号分離方法および該方法による受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するため本発明による偏波分離方法は、
各偏波に対して周期的に挿入されたトレーニングシンボル
の送受信に基づいて推定される伝送路の伝達関数を
データシンボルに適用して偏波分離を行う光伝送方式の偏波多重信号分離方法において、複数の
異なる時点で送受信されたトレーニングシンボルから
、それぞれの時点での伝達関数を推定する第1の推定ステップと、
あるトレーニングシンボルが送受信された時点を含む前記複数の
異なる時点での複数の伝達関数
間での伝達関数の変化を関数で表して、
前記あるトレーニングシンボルに続くm番目のデータシンボルに適用する伝達関数を推定する第2の推定ステップと、
前記第2の推定ステップで推定された伝達関数を、前記m番目のデータシンボルに適用し偏波分離を行う偏波分離ステップとを有する。
【0011】
また、前記第2の推定ステップは、z+1個の伝達関数が前記第1の推定ステップで推定された場合、
前記複数の伝達関数間での伝達関数の変化をz次関数で表し、該z次関数を用いて前記m番目のデータシンボルに適用する伝達関数
を推定することも好ましい。
【0012】
また、前記第1の推定ステップは、n番目のトレーニングシンボルから、n番目の伝達関数H(n)を推定し、該トレーニングシンボルからn+1番目のトレーニングシンボルまでに受信したデータシンボルを保存し、n+1番目のトレーニングシンボルから、n+1番目の伝達関数H(n+1)を推定し、前記第2の推定ステップは、前記n番目の伝達関数H(n)と前記n+1番目の伝達関数H(n+1)
間での伝達関数の変化を表す関数から、n番目のトレーニングシンボルに続くm番目のデータシンボルに適用する伝達関数H_in(n,m)を推定し、前記偏波分離ステップは、前記伝達関数H_in(n,m)を、前記保存されたm番目のデータシンボルに適用し偏波分離を行うことも好ましい。
【0013】
また、前記第1の推定ステップは、n−1番目のトレーニングシンボルから、n−1番目の伝達関数H(n−1)を推定し、n番目のトレーニングシンボルから、n番目の伝達関数H(n)を推定し、前記第2の推定ステップは、前記n−1番目の伝達関数H(n−1)と前記n番目の伝達関数H(n)
間での伝達関数の変化を関数で表して、n番目のトレーニングシンボルに続くm番目のデータシンボルに適用する伝達関数H_in(n,m)を推定し、前記偏波分離ステップは、前記伝達関数H_in(n,m)を、前記m番目のデータシンボルに適用し偏波分離を行うことも好ましい。
【0014】
上記目的を実現するため本発明による受信装置は、
各偏波に対して周期的に挿入されたトレーニングシンボル
の送受信に基づいて推定される伝送路の伝達関数を
データシンボルに適用して偏波分離を行う光伝送方式の受信装置において、複数の
異なる時点で送受信されたトレーニングシンボルから
、それぞれの時点での伝達関数を推定する第1の推定手段と、
あるトレーニングシンボルが送受信された時点を含む前記複数の
異なる時点での複数の伝達関数
間での伝達関数変化を関数で表して、
前記あるトレーニングシンボルに続くm番目のデータシンボルに適用する伝達関数を推定する第2の推定手段と、前記第2の推定手段で推定された伝達関数を、前記m番目のデータシンボルに適用し偏波分離を行う偏波分離手段とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の偏波分離方法によれば、DSに適用するHの値を2つ以上のTSの値に基づいて変化させることにより、偏波推定誤差を低減し、エラーの発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】光OFDM信号を用いた伝送前後における信号と時間の関係概念図。
【
図2】偏波変動が生じる際に光OFDM信号を用いた従来の偏波分離方式の問題点を示す。
【
図4】本発明の実施例1による、偏波変動が生じる際に光OFDM信号を用いた偏波分離時の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。
図3は、本発明による送受信システムの構成を示す。本送受信システムは、送信装置1と受信装置2を備える。送信装置1は、2つの送信器11、2つの変調器12、および合波器13を備える。受信装置2は、2つのコヒーレント光検出器(COD)21、MIMO処理器22、2つの受信器23、分波器24、および記憶部25を備える。
【0018】
送信装置1では、2つの送信器11で生成された2つの信号が、2つの変調器12で光OFDM信号の偏波1と偏波2に変調され、合波器13によって多重化され、伝送路に送信される。なお、偏波1と偏波2は、従来の偏波分離方式例と同じで
図1で示される。受信装置2では、分波器24で受信した光OFDM信号を分波する。ここで分波された信号は、送信時の偏波1と偏波2が混ざったものになっている。光信号の位相情報を保持するため、2つのコヒーレント光検出器21が光から電気への変換のため用いられる。MIMO処理器22によって、受信された信号が偏波分離され、2つの受信器23に送られる。なお、MIMO処理器22による処理の詳細は、以下に示される。記憶部25は、受信したDSを一時的に保存する。
【0019】
本発明の実施例1による偏波分離を示す。実施例1の受信装置2は、偏波1および偏波2のTS間隔のK個のDS’を一時保存するための記憶部25を備えている。受信装置2は、
図1の白四角で示された伝送後のトレーニングシンボルTS_a1、TS_b1、TS_a2、TS_b2から、従来技術と同様に伝達関数H(n)
【数3】
を求める。この後、受信装置2は、偏波1および偏波2のDS’をそれぞれK個受信する。MIMO処理器22は、DS’の偏波分離をすぐに行わずに、一時的に記憶部25に保存する。その後、
図1の黒四角で示された伝送後のトレーニングシンボルTS_a1、TS_b1、TS_a2、TS_b2から、同様にして伝達関数H(n+1)
【数4】
を求める。
【0020】
この2つの伝達関数H(n)とH(n+1)から、
図1の白四角で示されたTS後に受信されたm(1≦m≦K)番目のDS’に適用する伝達関数H_in(n,m)を、H(n)とH(n+1)間を一次関数で補間した値として、
【数5】
と求める。
【0021】
ここで求めたH_in(n,m)を用いて、記憶部25に保存されたDS’に偏波分離を行い、DSを得ることができる。この際、
図1の白四角で示されたTS直後のDS’には、H_in(n,1)を、その次のDS’には、H_in(n,2)を順次適用する。これにより、H(n)からH(n+1)にかけて変化する偏波変動に対し、追随するようにH_in(n,m)が変化するため、偏波推定誤差を小さくすることができる。
【0022】
図4に、実施例1を適用した場合を示す。
図4上は、
図2上と同様に、時間に対し偏波状態の変化を示している。丸で示された時刻においてTSのH(n)とH(n+1)間を数式5で補間して得られた伝達関数H_in(n,m)による偏波推定値(点線)は、
図2上と比べ、偏波推定誤差が小さくなることが分かる。
図4下に、シンボル列(時間、シンボル番号)と生じたエラーの関係を示す。実験条件は
図2下と同じである。
図2下と比較し、エラー数が大幅に減少していることが分かる。これにより良好な通信を行うことが可能となる。
【0023】
次に、本発明の実施例2による偏波分離を示す。
図5は、本発明の実施例2による動作の概念を示す。実施例1では、H(n)とH(n+1)間のH_in(n,m)を推定するため、精度よく推定できるものの、H(n+1)が得られるまで、記憶部25が全てのDSを記憶保持している必要がある。それに対し、
図5に示す実施例2は、全てのDSを記憶保持する機能を必要としないものである。
【0024】
実施例2では、まず適用するDSより2つ前に現れるTSからH(n−1)を得る。次に、1つ前に現れるTSからH(n)を得る。H(n)を得たTSに続くDSの偏波変動は、H(n−1)とH(n)の間に発生した傾向から線形近似できるとみなし、以下の式より、
【数6】
H(n)に続くDSに適用するH_in(n,m)を求める。
【0025】
この方法では、実施例1よりも誤差が増える可能性はあるものの、従来例の一定値のHよりも偏波推定誤差が小さくなる上、H(n)とH(n+1)間のDSを記憶しておく必要がなくなり、より実装が容易になる。
【0026】
次に、本発明の実施例3による偏波分離を示す。
図6は、本発明の実施例3による動作の概念を示す。実施例1および2がH(n)を含め2点からH_in(n,m)を推定したのに対し、実施例3は、H(n−2)、H(n−1)、及びH(n)の3点と、二次曲線を用いてH_in(n,m)を推定する。
【0027】
実施例2と同様に、H_in(n,m)を適用するDSより3つ前に現れるTSから順に、H(n−2)、H(n−1)、及びH(n)を得る。次に、H(n)を得たTSに続くDSの偏波変動は、H(n−2)、H(n−1)、及びH(n)の間に発生した2次関数に従うとみなし、2次関数で以下の式より、
【数7】
H(n)に続くDSに適用するH_in(n,m)を求める。
【0028】
なお、H(n−2)、H(n−1)、H(n)を代入することで、上式の係数a、bを得る。これによりH_in(n,m)を得ることができる。実施例3では、DSを記憶する機能が不要であることのほか、2次関数を用いることで、より精度の高い偏波推定が可能となる。
【0029】
また、実施例3では、H(n)、およびこれより前の2つの伝達関数H(n−1)、H(n−2)から、H_in(n,m)を推定した。実施例3の変形として、H(n)、これより1つ前の伝達関数H(n−1)、およびこれより1つ後ろの伝達関数H(n+1)から、H_in(n,m)を推定することもできる。この場合、H(n+1)が得られるまで、記憶部が全てのDSを記憶保持している必要があるが、実施例1よりもより精度の高い偏波推定が可能となる。
【0030】
さらなる実施例3の変形として、H(n)、およびこれより後ろの2つの伝達関数H(n+1)、H(n+2)から、H_in(n,m)を推定することもできる。
【0031】
なお、実施例3では、H(n)より前の2つの伝達関数H(n−1)、H(n−2)からH_in(n,m)を推定したが、同様に、H(n)より前のz個(zは1以上の整数)、即ちH(n)からH(n−z)を用い、z次関数を用いてH_in(n,m)を推定することで、より精度の高い偏波推定が可能となる。実施例3の変形も同様に、H(n)より前と後ろのz個、即ちH(n−(z−j))、H(n)、およびH(n+j)(1≦j≦z−1)を用い、z次関数を用いてH_in(n,m)を推定することも可能である。
【0032】
また、上記実施形態は、光OFDM伝送方式を用いて説明したが、TSを用いて偏波分離を行う光伝送方式全てに適用可能である。
【0033】
また、以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様および変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 送信装置
11 送信器
12 変調器
13 合波器
2 受信装置
21 コヒーレント光検出器
22 MIMO処理器
23 受信器
24 分波器
25 記憶部