特許第5796894号(P5796894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796894
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】パッケージの封止装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20151001BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20151001BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20151001BHJP
   B23K 11/06 20060101ALI20151001BHJP
   B23K 11/30 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   H01L23/02 C
   H03H3/02 A
   H03H3/08
   H01L23/02 Z
   B23K11/06 540
   B23K11/30 340
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-273362(P2011-273362)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-125835(P2013-125835A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木田 英孝
(72)【発明者】
【氏名】矢萩 勝己
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−100613(JP,A)
【文献】 特開2006−086463(JP,A)
【文献】 特開平6−224315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
B23K 11/06
B23K 11/30
H03H 3/02
H03H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容し、キャリアボードに形成した複数の凹所に搭載されたパッケージの上面開口部に対し、リッドをシーム接合することで前記パッケージの開口部を封止するパッケージの封止装置であって、
回転軸が平行又は一致するように設けられた一対のローラ電極と、
前記一対のローラ電極それぞれを独立して上下動可能に支持する電極支持部と、
前記キャリアボードを載置してこのキャリアボードを水平方向に移動させるステージとを有し、
前記一対のローラ電極がシーム接合を終えて被接合物の一方であるリッドから離隔するときに、前記一対のローラ電極の間隙に位置する作用端を用いて前記リッドをローラ電極から離隔させる方向に押圧する押圧部を設けたことを特徴とするパッケージの封止装置。
【請求項2】
前記押圧部の作用端は、前記一対のローラ電極がシーム接合のためにリッドに転接しているときには、このリッドから離隔していることを特徴とする請求項1に記載のパッケージの封止装置。
【請求項3】
前記押圧部は、その作用端と一体的に設けられた支え部を有し、この支え部の先端が前記キャリアボードの上面に当接して下降が制限されることで、前記作用端の下降が制限されることを特徴とする請求項2に記載のパッケージの封止装置。
【請求項4】
前記押圧部は、前記電極支持部のいずれか一方に回転可能に支持され、この回転軸を中心として前記作用端と前記支え部の先端とが一体的に円弧状に回転することを特徴とする請求項3に記載のパッケージの封止装置。
【請求項5】
シーム接合時の前記支え部の先端は、前記キャリアボードの上面であって、このキャリアボードに形成された前記複数の凹所のうち、前記キャリアボードのシーム接合時の移動方向と直交する方向に並んで隣接する凹所の間隙を通過してこのキャリアボードと相対的に移動することを特徴とする請求項3又は4のいずれかに記載のパッケージの封止装置。
【請求項6】
前記押圧部は、前記リッドに対する前記作用端の押圧力を調節する押圧力調整手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のパッケージの封止装置。
【請求項7】
前記支え部の先端には、前記キャリアボードの上面との摩擦軽減部材を設けたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のパッケージの封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子、弾性表面波フィルタ等の電子部品を収納したパッケージの開口部に金属製の蓋板であるリッドをシーム接合するパッケージの封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水晶振動子、弾性表面波フィルタ等の電子部品をパッケージの内部に気密封止する方法として、パラレルシーム接合法が広く用いられている。図7は従来からあるシールリング付きパッケージの断面図であり、まずセラミック基板51に金属製シールリング52をろう接してなるパッケージ53の内部に水晶振動子等の電子部品54を収納し、この電子部品54をワイヤ55によって外リード56に電気的に接続したものを準備する。このパッケージ53の開口部にはコバール等からなるリッド57が位置決めされて載置される。
【0003】
このとき、位置決めされたリッド57がシーム接合されるまでに何らかの外力で位置ずれしてしまったり、シーム接合を開始するためにローラ電極が接触することで位置ずれしてしまうことを避けるために、リッドは通常スポット接合によって仮付けされる。この仮付けは作業性の理由から一般に一対のローラ電極で行われることが多く、図8(a)で示すように、リッド57の対向する2辺、例えば対向する一対の短辺の略中央部に一対のテーパ付きのローラ電極58A,58Bを接触させ、転接させることなく電極間に通電し、そのままローラ電極58A,58Bを上昇させてリッド57から離隔させる。
【0004】
そして図8(b)で示すように、このリッド57の対向する一対の短辺の一端(符号イ)にローラ電極58A,58Bを一定の加圧条件の下で接触させ、この状態でパッケージ53をステージ59と共に矢印アの方向に移動させると同時にローラ電極58A,58Bにパルセーション通電を行い、このとき発生する抵抗発熱により前記リッド57の対向する一対の短辺をパッケージ53の上面にシーム接合する。このようにして一対の短辺のシーム接合が終了すると、ローラ電極58A,58Bを一旦上昇移動させて電極間隔を調整すると共に、図8(c)に示すようにパッケージ53をステージ59と共に水平面内にて90°回転させる。その後、再びローラ電極58A,58Bを下降させて他の対向する2辺、すなわち対向する一対の長辺を同様にシーム接合し、封止を完成させる。
【0005】
このように図7および図8に基づいて一つのパッケージ53の封止工程を説明したが、実際の製品の製造現場では図9に示すように、パッケージ53はキャリアボード60にマトリクス状に多数搭載される。このキャリアボード60の上面には、マトリクス状に複数の凹所60Aが設けられており、パッケージ53の下部をこれら凹所60Aに勘合させることでパッケージ53を位置決めする。そして電子部品を収容し、上面が開口した状態の複数のパッケージ53は、キャリアボード60に搭載された状態で、まず真空および加熱チャンバーに収納される。このチャンバー内の真空環境でパッケージ53が加熱されることで、品質の劣化の原因となる水分、酸素および溶剤が除去される。
【0006】
次にパッケージ53を搭載したキャリアボード60は仮付けステージに搬送され、搭載された全てのパッケージ53の開口部にリッドが仮付けされたのち短辺シームステージへと搬送される。ここで全てのリッドの短辺がパッケージ53の上面にシーム接合されたのち長辺シームステージへ搬送され、全てのリッドの長辺がシーム接合されることでパッケージ53の封止が完成する。ここで、仮付けステージ、短辺シームステージおよび長辺シームステージを、窒素等の不活性ガスで満たしたチャンバー内に収納する場合もあるが、最後の長辺シームステージのみを真空チャンバー内に収納することで、リッドの全周をシーム接合する前、つまり残された2辺である一対の対向する長辺をシーム接合する前に、電子部品の周囲環境であるパッケージ53の内部空間を真空環境にした状態で封止を完了することができる。なお、リッドのシーム接合において短辺と長辺とは、必ずしもこの順序で行わねばならないわけではない。
【0007】
このように行われるパッケージ53の封止作業において、リッド57の短辺のシーム接合終了時、または長辺のシーム接合の終了時に、接合を終えたローラ電極58A,58Bをリッドから離隔させるために上昇させる動作を行うが、このとき上昇するローラ電極58A,58Bにリッド57が付着することで、パッケージ53ごとキャリアボード60から浮き上がり、キャリアボード60の凹所60Aから位置ずれしてしまうという問題がある。これに対して特許文献1は、図10に示すように、リッド57の対向する2辺にローラ電極58A,58Bを転接させると共に通電してシーム接合を行い(図10(a))、シーム接合終了後ローラ電極58A,58Bへの通電を停止し(図10(b))、次にパッケージ53を接合方向とは反対の方向に微小距離移動させ(図10(c))、その後ローラ電極58A,58Bを上昇させてリッド57から離隔させる(図10(d))技術を開示している。これにより、ローラ電極58A,58Bが上昇する前に微小角度逆回転することで、ローラ電極58A,58Bへのリッド57の付着が引き剥がされるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−224315号公報(第2−3頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1で開示された技術は非常に有効であるが、大量生産の場で多数のパッケージ封止を行う過程において、ごく僅かな確率で、微小角度ローラ電極を逆回転させた後にもローラ電極にリッドが付着する事例がある。この原因は解明できていないが、大量生産を行う中で、僅かな確率であるにしろ、ローラ電極にリッドが付着することでパッケージがキャリアボードの凹所から飛び出してしまった場合には、この飛び出してしまったパッケージとローラ電極との意図せぬ干渉を引き起こす危険性があり、製品であるパッケージにダメージを与えるだけでなく、ローラ電極を含む封止装置にダメージを与えてしまう可能性がある。
【0010】
また前述したように、封止すべき複数のパッケージをキャリアボード上にマトリクス状に搭載し、短辺シーム接合と長辺シーム接合に工程を分けてシーム接合作業を行う場合、シーム接合のために移動するキャリアボードの移動方向は、一方向のみであるのが作業時間短縮の観点からも理想であるのに対し、特許文献1で開示された技術を適用すると、パッケージ1個毎にキャリアボードを接合のための移動とは反対の方向に移動せねばならず、さらにローラ電極を微小角度逆回転するまでにローラ電極への通電を停止して、リッドとパッケージとに介在する溶融したろう材が凝固するのを待たねばならないので、いっそう封止作業に時間を要してしまう。これらに要する時間が製品のコストアップにつながることは言うまでもない。
【0011】
そこで、本発明はこれらの課題を解決すべく、確実にシーム接合終了時のローラ電極とリッドとの付着を防止すると共に、シーム接合に要する時間の増加を招かないようにすることで、安定した生産とコストアップの回避とを両立可能なパッケージの封止装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は第1の態様として、電子部品を収容し、キャリアボードに形成した複数の凹所に搭載されたパッケージの上面開口部に対し、リッドをシーム接合することで前記パッケージの開口部を封止するパッケージの封止装置であって、回転軸が平行又は一致するように設けられた一対のローラ電極と、前記一対のローラ電極それぞれを独立して上下動可能に支持する電極支持部と、前記キャリアボードを載置してこのキャリアボードを水平方向に移動させるステージとを有し、前記一対のローラ電極がシーム接合を終えて被接合物の一方であるリッドから離隔するときに、前記一対のローラ電極の間隙に位置する作用端を用いて前記リッドをローラ電極から離隔させる方向に押圧する押圧部を設けたことを特徴とするパッケージの封止装置を提供する。
【0013】
これにより、シーム接合が終了して一対のローラ電極が上昇するときに、リッドがローラ電極に付着することでパッケージが持ち上がるのを防止することができる。また、一度のシーム接合動作毎にキャリアボードを接合方向とは反対の方向に移動させる必要がなくなり、シーム接合作業に要する時間が短縮できる。
【0014】
また本発明は第2の態様として、前記押圧部の作用端は、前記一対のローラ電極がシーム接合のためにリッドに転接しているときには、このリッドから離隔していることを特徴とする第1の態様として記載のパッケージの封止装置を提供する。
【0015】
これにより、一対のローラ電極がリッドに転接してシーム接合を行っている間、押圧部の作用端がリッドに接触することでリッドへ意図せぬ外力が加わる心配がない。
【0016】
また本発明は第3の態様として、前記押圧部は、その作用端と一体的に設けられた支え部を有し、この支え部の先端が前記キャリアボードの上面に当接して下降が制限されることで、前記作用端の下降が制限されることを特徴とする第2の態様として記載のパッケージの封止装置を提供する。
【0017】
これにより、キャリアボードの上面と被接合物の一方であるリッドの上面との高低差が分かれば、シーム接合時における押圧部の作用端とリッドとの接触を確実に防ぐことができる。
【0018】
また本発明は第4の態様として、前記押圧部は、前記電極支持部のいずれか一方に回転可能に支持され、この回転軸を中心として前記作用端と前記支え部の先端とが一体的に円弧状に回転することを特徴とする第3の態様として記載のパッケージの封止装置を提供する。
【0019】
これにより、押圧部が回転軸を支点として回転可能に支持されるので、押圧部の全自重が作用端の押圧力とならないため、押圧力の設定範囲を小さな押圧力からの設定範囲とすることができる。
【0020】
また本発明は第5の態様として、シーム接合時の前記支え部の先端は、前記キャリアボードの上面であって、このキャリアボードに形成された前記複数の凹所のうち、前記キャリアボードのシーム接合時の移動方向と直交する方向に並んで隣接する凹所の間隙を通過してこのキャリアボードと相対的に移動することを特徴とする第3又は第4のいずれかの態様として記載のパッケージの封止装置を提供する。
【0021】
これにより、シーム接合のためにキャリアボードを接合方向に移動しても、支え部の先端がパッケージやリッドに干渉する心配がない。
【0022】
また本発明は第6の態様として、前記押圧部は、前記リッドに対する前記作用端の押圧力を調節する押圧力調整手段を有することを特徴とする第1乃至第5のいずれかの態様として記載のパッケージの封止装置を提供する。
【0023】
これにより、押圧部の自重を調節せずとも、適当な押圧力で作用端がリッドを押圧するよう容易に調整することができる。
【0024】
さらに本発明は第7の態様として、前記支え部の先端には、前記キャリアボードの上面との摩擦軽減部材を設けたことを特徴とする第3乃至第5のいずれかの態様として記載のパッケージの封止装置を提供する。
【0025】
これにより、支え部の先端とキャリアボードの上面とで摩擦が繰り返されても、支え部の先端の磨耗を小さく抑えることができ、シーム接合時における作用端のキャリアボード上面からの高さを長時間精度良く維持することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ローラ電極をリッドに転接させつつ通電してリッドの対抗する2辺をシーム接合したのち、ローラ電極を微小角度逆回転させることなく上昇させてリッドから離隔させても、リッドがローラ電極に付着してパッケージが持ち上がる心配がない。したがって、確実にパッケージの持ち上がりを防ぐことが可能となるのに加えて、シーム接合に要する時間を短縮することができ、封止作業の品質の安定化と生産コストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係るパッケージの封止装置の構成を示す斜視図
図2】本発明の実施形態に係る押圧部の構成を示す斜視図
図3】本発明の実施形態に係る押圧部の動作を示す側面図
図4】本発明の実施形態に係る押圧部の動作を示す側面図
図5】本発明の実施形態に係る押圧部の動作を示す側面図
図6】本発明の実施形態に係る押圧部の構成を示す斜視図
図7】従来の技術を示すパッケージの断面図
図8】従来の技術を示すシーム接合動作の平面図
図9】従来の技術を示すシーム接合の工程図
図10】従来の技術を示すシーム接合動作の側面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、添付図面を参照して、本発明に係るパッケージの封止装置を詳細に説明する。図1は本発明に係るパッケージの封止装置の概略構成を示す斜視図である。図1において符号1は本発明に係るパッケージの封止装置であり、2は接合ヘッド、3はステージである。そして、接合ヘッド2は概略次の構成からなる。符合4はベースプレートであり、図示しないモーター駆動機構により上下方向に移動可能に支持されている。また、符号5A,5Bは一対の電極支持部であり、互いに間隙を空けてスライドレール6Aとスライドブロック6Bからなるリニアガイド6を介することで、ベースプレート4に対して一対の電極支持部5A,5Bがそれぞれ独立して上下方向に移動可能に支持されている。ここで、ベースプレート4の下部に突設したストッパー4Aに対し、一対の電極支持部5A,5Bの下部に設けた凸部が当接するようにすることで、ベースプレート4に対する電極支持部5A,5Bの上下移動の下死点を構成している。したがって、ベースプレート4が下降して電極支持部5A,5Bに設けたローラ電極がリッドに当接し、その後もベースプレート4が下降を続けることで、電極支持部5A,5Bはリニアガイド6のみに支持された上下動自在な状態になる。また、このとき一対の電極支持部5A,5Bは、それぞれ独立して上下動可能な状態となる。
【0029】
電極支持部5A,5Bそれぞれの下部には一対の絶縁ブロック7A,7Bが固定され、さらにその下部には一対の電極ホルダ8A,8Bが固定されている。そして電極ホルダ8A,8Bには、一対のローラ電極9A,9Bがその回転軸が平行または一致するように回転自在に支持され、さらにローラ電極9A,9Bに通電するための給電ケーブル10A,10Bが接続されて図示しない溶接電源の出力電流を導いている。ここで、ローラ電極9A,9Bの回転軸が平行又は一致とあるのは、ローラ電極9A,9Bは電極支持部5A,5Bと共に、それぞれが独立して上下動可能であるので、これらの上下位置が一致したとき回転軸も一致することを指すものである。
【0030】
符号11は錘であり、電極支持部5A,5Bの上面に搭載する錘11の数量を調節することで、一対のローラ電極9A,9Bがリッド15に加える荷重を調整できるようにしている。さらに、符号12は押圧部であり、一対の電極支持部5A,5Bの一方(図1では5A)に支持された一連の機構である。この押圧部12の構成の詳細は後述するが、押圧部12の一部である作用端は押圧片13の下端であって、一対のローラ電極9A,9Bの間隙に位置している。そして、キャリアボード14を載置するステージ3は水平方向に移動可能に設けられ、キャリアボード14の凹所に搭載され、リッド15が載置された状態でマトリクス状に並んだパッケージ16をローラ電極の位置を基準に位置決めし、シーム接合のために移動させる。
【0031】
次に図1に符号12で示した押圧部を図2に基づいて説明する。図2において符号12は押圧部、17は固定部材、18は回転フレーム、19は回転範囲調整部、13は図1でも示した押圧片、20,20は一対の支え部である。ここで、固定部材17は図1に示す一方の電極支持部5Aに固定され、回転することなく電極支持部5Aと一体的に上下に移動する。また、回転フレーム18は回転軸である支点21を中心として回転自在に固定部材17に支持されており、回転範囲調整部19が制限する角度範囲内で回転可能に支持されている。
【0032】
また、回転フレーム18に固定された押圧片13は、ポリアセタール等絶縁性を有する薄板からなり、その下端13Aは直接リッドの上面を押圧する作用端である。さらに、回転フレーム18に固定された一対の支え部20,20は、ステンレス製の丸棒からなり、それぞれの先端にはテフロン(デュポン社の登録商標)製の摩擦軽減部材20A,20Aがキャップ状に取り付けられている。このような構成であるので、作用端13Aを含む押圧片13と一対の支え部20,20とは、回転フレーム18を介して一体的に支点21を中心として回転するものである。なお、回転範囲調整部19の詳細な説明は後述する。
【0033】
次に図3に基づいて押圧部12の動作について詳細に説明する。図3にはキャリアボード14に設けた凹所14Aにパッケージ16が搭載され、さらにパッケージ上面にはリッド15が載置された状態が側面図で示されている。また、図を見て手前側のローラ電極9Bの図示を省略して奥側のローラ電極9Aのみを図示し、このローラ電極9Aがリッド15に転接しつつシーム接合を行っている状態、つまりキャリアボード14が後方(矢印ウの方向)に移動している状態を示している。
【0034】
このとき、支え部20の先端がキャリアボード14の上面に当接することで、押圧片13は支え部20および回転フレーム18と共に一体的に回転する。この回転は支点21を中心にして図を見て反時計方向の回転であり、押圧片13の下端である作用端13Aがリッド15の上面から寸法X上方に離隔する。支え部20の先端に設けた摩擦軽減部材20Aの耐磨耗性やシーム接合の無調整連続稼動時間も考慮する必要があるが、この寸法Xは50μm程度となるように設定すれば十分である。
【0035】
次に回転範囲調整部19の構成と機能について説明する。回転範囲調整部19は板状部材をコの字状に折り曲げて成形し、固定部材17に固定したものであり、上板19Aと下板19Bが回転フレーム18の上下に延出している。そして、上板19Aと回転フレーム18の上面に凹設した凹所18Aの底面との間隙に押圧力調整手段である圧縮コイルバネ22を嵌め込み、回転フレーム18が図を見て時計方向に回転するように付勢させる。このようにすれば異なる反発力の圧縮コイルバネ22が選択可能であるから、後述する作用端13Aによるリッド15の上面に対する押圧力を調整することができる。一方回転範囲調整部19の下板19Bには調整ねじ23が螺着されており、この調整ねじの上端が回転フレーム18に当接することで、回転フレーム18の時計方向の回転範囲が制限できるようになっている。
【0036】
次に図4に基づいて、図3で示したシーム接合が最終端まで行われ、ローラ電極9Aへの通電を停止した状態について説明する。この時点までキャリアボード14の後方(矢印ウの方向)への移動が継続されていたことから、支え部20の先端に設けた摩擦軽減部材20Aの下端がキャリアボード14の上面を摺動し続けることで、作用端13Aとリッド15の上面との離隔を維持する。また、図4の状態はローラ電極9Aの中心がリッド15の端部よりも前側に位置しているので、ローラ電極9Aが若干下方に位置を変化させるのに伴い支点21も僅かに下降する。その結果作用端13Aとリッド15との間隔も厳密には寸法Xから寸法Yに変化するが、この変化は微小であり前述の寸法Xで例示した50μmがキャンセルされて作用端13Aがリッド15と接触するような心配はない。
【0037】
次に図5に基づいて、図4で示した位置からローラ電極9Aを上昇させた状態について説明する。ローラ電極9Aを上昇させることで、これに伴って支点21が上昇し、支え部20の先端もキャリアボード14の上面から離隔する(図5で示す寸法Z)。これにより押圧片13は支え部20および回転フレーム18と共に回転する。この回転は支点21を中心にして図を見て時計方向の回転であり、押圧片13の下端である作用端13Aが図5で示す符号エの位置でローラ電極9Aよりも下方に突出し、リッド15の上面を下方に押圧する。したがって、リッド15がローラ電極9A(および/又は9B)に付着している場合にも、これを作用端13Aが引き離す。
【0038】
また、ローラ電極9Aと共に押圧部が上昇すると、支え部20の先端はキャリアボード14の上面から直ちには離隔せず、押圧部12全体の重心が支点21の直下に位置するまで支点21を中心として図を見て時計方向に回転しようとする。これに対し、回転範囲調整部19の下板19Bに螺着された調整ねじ23の上端が回転フレーム18に当接することで、押圧部12の図を見て時計方向の余分な回転動作を制限するようにしている。作用端13Aの作用点(図5に示す符号エ)はローラ電極9Aよりも50μm程度下方に突出すれば十分であるから、前記調整ねじ23を調整してこれ以上押圧部が回転しないように制限することができる。
【0039】
次に、図6に基づいて押圧部12と複数のパッケージ16を搭載したキャリアボード14との位置関係について説明する。通常シーム接合を行う場合、図6に示すようにマトリクス状に設けたキャリアボード16上面の凹所に複数のパッケージ16を搭載し、これらパッケージ16の上面にはリッド15が載置される。そして、前後方向に一列に並んだリッド15を次々とパッケージ16にシーム接合(図6の場合対向する一対の長辺を接合)し、この一列のシーム接合が全数終了したらキャリアボード14を左右方向に移動させ、隣接する他の一列のシーム接合を行う。
【0040】
この場合全数の接合を最も短時間で終えるには、ある一列はキャリアボード14を後方に向けて移動させつつシーム接合を行い、次に隣接する他の一列は前方に向けてキャリアボード14を移動させつつシーム接合を行い、これを繰り返す方法を選択する。このような動作でシーム接合する場合も、前後方向のいずれかのみにキャリアボード14を移動させつつシーム接合する場合も、押圧片13がリッド15の幅方向(図6では左右方向)の略中央に位置することで、一対のローラ電極によるリッド15の対向する2辺のシーム接合が可能となるが、このとき一対の支え部20,20の先端が、図6における左右方向に並んで隣接するパッケージ16の間隙を移動するようにすることで、これら支え部20,20とパッケージ16との干渉を避けることができる。換言するとシーム接合時の支え部20,20の先端が、キャリアボード14の上面であって、このキャリアボード14に形成された凹所のうち、キャリアボード14のシーム接合時の移動方向と直交する方向に並んで隣接する凹所の間隙を通過するように押圧部12を構成するものである。
【0041】
これまで支点21を中心として円弧状に回転する押圧部12を実施の形態として説明した。これを押圧部が電極支持部5A,5Bのいずれかに上下方向に摺動可能に支持されたスライド式の押圧部としてもよいが、この場合、押圧部の全質量が下方への押圧力(支え部20,20の先端のキャリアボード14の上面に対する押圧力)として作用してしまうので、極めて軽量の部材を選択して構成するか、または構成が複雑になってしまうが全質量のうち所定の質量をキャンセルする機構を追加するとよい。また本実施形態では、押圧片13がポリアセタール等絶縁性を有する薄板からなるものと説明したが、これをステンレス等導電性を有する金属板の表面に絶縁皮膜のコーティングを施したものに代えても、近接する一対のローラ電極9A,9Bとの短絡を防止することができるため使用可能である。さらに本実施形態では支え部20の先端に摩擦軽減部材としてテフロン(デュポン社の登録商標)製のキャップ状の部材を設けたが、この先端部にキャスターを設けることで、滑り接触ではなく転がり接触となるようにしても摩擦軽減部材として成立する。
【符号の説明】
【0042】
1 パッケージの封止装置
2 接合ヘッド
3 ステージ
4 ベースプレート
5A,5B 電極支持部
6 リニアガイド
7A,7B 絶縁ブロック
8A,8B 電極ホルダ
9A,9B ローラ電極
10A,10B 給電ケーブル
11 錘
12 押圧部
13 押圧片
14 キャリアボード
15 リッド
16 パッケージ
図1
図2
図3
図4
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図6
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