特許第5796923号(P5796923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5796923ポリエステル系合成繊維用処理剤、ポリエステル系合成繊維の処理方法及びポリエステル系合成繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5796923
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ポリエステル系合成繊維用処理剤、ポリエステル系合成繊維の処理方法及びポリエステル系合成繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/292 20060101AFI20151001BHJP
   D06M 13/165 20060101ALI20151001BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20151001BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20151001BHJP
【FI】
   D06M13/292
   D06M13/165
   D06M13/144
   D06M101:32
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-111621(P2015-111621)
(22)【出願日】2015年6月1日
【審査請求日】2015年6月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】竹内 浩純
(72)【発明者】
【氏名】小室 利広
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−108361(JP,A)
【文献】 特開平1−239165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M11/00〜15/715
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のアルキルリン酸エステル類を40〜80質量%、下記の界面活性剤を10〜50質量%及び分子中に炭素数12〜22のアルキル基を有する1価脂肪族アルコールを0.01〜10質量%(合計100質量%)の割合で含有して成ることを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤。
アルキルリン酸エステル類:分子中に炭素数12〜22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル及びその塩から選ばれる少なくとも一つであって、酸価が0.01〜80KOHmg/gであるもの
界面活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも一つ
【請求項2】
1価脂肪族アルコールのアルキル基及びアルキルリン酸エステル類のアルキル基が、炭素数16〜18のものである請求項1記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項3】
アルキルリン酸エステル類を40〜80質量%、界面活性剤を10〜50質量%及び1価脂肪族アルコールを0.01〜6質量%(合計100質量%)の割合で含有して成る請求項1又は2記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項4】
アルキルリン酸エステル類を50〜70質量%、界面活性剤を25〜45質量%及び1価脂肪族アルコールを0.01〜4質量%(合計100質量%)の割合で含有して成る請求項1〜3のいずれか一つの項記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項5】
ポリエステル系合成繊維が、ポリエチレンテレフタレート繊維である請求項1〜4のいずれか一つの項記載のポリエステル系合成繊維用処理剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの項記載のポリエステル系合成繊維用処理剤を、ポリエステル系繊維に対し、0.05〜0.5質量%となるように付着させることを特徴とするポリエステル系合成繊維の処理方法。
【請求項7】
請求項6記載のポリエステル系合成繊維の処理方法により得られることを特徴とするポリエステル系合成繊維。
【請求項8】
ポリエステル系合成繊維が、ポリエチレンテレフタレート繊維である請求項7記載のポリエステル系合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系合成繊維用処理剤、かかる処理剤を用いるポリエステル系合成繊維の処理方法及びかかる処理方法により得られるポリエステル系合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル系合成繊維用処理剤として、アルキルリン酸エステルカリウム塩を用いた各種の油剤が提案されている。かかる処理剤には、1)アルキルリン酸エステルカリウム塩とアルキルアミノエーテル型ノニオンのリン酸中和物との2成分系(例えば、特許文献1参照)、2)アルキルリン酸エステルカリウム塩と高分子量のポリオキシエチレン化合物との2成分系(例えば、特許文献2参照)、3)アルキルリン酸エステルカリウム塩とパラフィンワックス乳化物とカチオン型界面活性剤との3成分系(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。しかし、これら従来のポリエステル系合成繊維用処理剤には、乳化安定性、耐熱性、紡績工程でのカード工程における制電性及び練条工程における耐スカム堆積性が不充分になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−224867号公報
【特許文献2】特開平3−174067号公報
【特許文献3】特開平6−108361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、乳化安定性、耐熱性、紡績工程でのカード工程における制電性及び練条工程における耐スカム堆積性を同時に満足し、且つ経日的な繊維強度の低下を生じないポリエステル系合成繊維用処理剤、かかる処理剤を用いるポリエステル系合成繊維の処理方法及びかかる処理方法により得られるポリエステル系合成繊維を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の3成分を特定割合で含有して成るポリエステル系合成繊維用処理剤が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記のアルキルリン酸エステル類を40〜80質量%、下記の界面活性剤を10〜50質量%及び分子中に炭素数12〜22のアルキル基を有する1価脂肪族アルコールを0.01〜10質量%(合計100質量%)の割合で含有して成ることを特徴とするポリエステル系合成繊維用処理剤に係る。また本発明は、かかるポリエステル系合成繊維用処理剤を用いるポリエステル系合成繊維の処理方法、かかる処理方法により得られるポリエステル系合成繊維に係る。
【0007】
アルキルリン酸エステル類:分子中に炭素数12〜22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル及びその塩から選ばれる少なくとも一つであって、酸価が0.01〜80KOHmg/gであるもの
【0008】
界面活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩から選ばれる少なくとも一つ
【0009】
先ず本発明に係るポリエステル系合成繊維処理剤(以下、本発明の処理剤という)について説明する。本発明の処理剤に用いるアルキルリン酸エステル類は、分子中に炭素数12〜22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル及びその塩から選ばれるものであり、これには例えば、ラウリルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、セチルリン酸エステル、セトステアリルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル、イソステアリルリン酸エステル、ベヘニルリン酸エステル及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。なかでもアルキルリン酸エステル類としては、分子中に炭素数16〜18のアルキル基を有するものが好ましく、これには例えば、セチルリン酸エステル、セトステアリルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。これらのアルキルリン酸エステル類は、脂肪族1価アルコールと無水リン酸に代表されるリン酸化剤との反応によって得られ、更にはその後のアルカリ金属水酸化物との中和反応により得られるが、用いる脂肪族1価アルコールは単一成分でも2種以上の混合物でもよい。また一般にアルキルリン酸エステル類は、モノエステル、ジエステル及びP−O−P結合を含むポリ体からなる混合物であるが、その構成比率に関しては特に制限されない。アルキルリン酸エステルのアルカリ金属塩としてはナトリウム塩やカリウム塩等が挙げられるが、カリウム塩が好ましい。合成原料に含まれる不純物については、一般的な原料規格内であれば許容される。これには例えば、水酸化カリウムに含まれるナトリウム成分、リン酸化剤の一つである無水リン酸に含まれる重金属やヒ素化合物等の各種不純物及び副生物が該当する。
【0010】
本発明の処理剤に供するアルキルリン酸エステル類は、酸価が0.01〜80KOHmg/gのものである。酸価が高すぎると、乳化不良を引き起こし易くなり、また酸価が低すぎると、繊維強度の経時低下を引き起こし易くなる。本発明において酸価とは、アルキルリン酸エステル類をエタノール/キシレン=1/2(容量比)の混合溶媒に溶解させ、電位差滴定装置にセットして、0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液で滴定し、下記の数1から算出される値である。
【0011】
【数1】
【0012】
数1において、
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液のファクター
S:試料採取量(g、固形分換算量)
R:変曲点までの0.1mol/Lの水酸化カリウムメタノール標準溶液の使用量(mL)
【0013】
本発明の処理剤に用いる界面活性剤としては、1)2−エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の炭素数8〜18の飽和又は不飽和の脂肪族1価アルコールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、2)カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、リシノール酸等の炭素数8〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸にアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エステル、3)オクチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノールにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、4)オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の炭素数8〜18の飽和又は不飽和の脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)アミノエーテル、5)前記のようなポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)アミノエーテルと例えばリン酸のような無機酸との塩等が挙げられる。以上例示したいずれについても、ポリオキシアルキレン基としては、特に制限されないが、オキシアルキレン基の平均繰り返し数は2〜150のものが好ましく、またオキシアルキレン基がオキシエチレン基のみ或いはオキシエチレン基とオキシプロピレン基との混合が好ましい。
【0014】
本発明の処理剤に用いる分子中に炭素数12〜22のアルキル基を有する1価脂肪族アルコールとしては、1)ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の直鎖アルコール、2)イソトリデシルアルコール、イソステアリルアルコール等の分岐アルコールが挙げられる。なかでも1価脂肪族アルコールとしては、炭素数16〜18のものが好ましく、これにはセチルアルコール、ステアリルアルコール及びこれらの混合物が挙げられる。
【0015】
本発明の処理剤を構成する各成分の割合は、前記したアルキルリン酸エステル類を40〜80質量%、前記した界面活性剤を10〜50質量%及び分子中に炭素数12〜22のアルキル基を有する1価脂肪族アルコールを0.01〜10質量%(合計100質量%)とするが、なかでもアルキルリン酸エステル類を40〜80質量%、界面活性剤を10〜50質量%及び分子中に炭素数12〜22のアルキル基を有する1価脂肪族アルコールを0.01〜6質量%(合計100質量%)とするのが好ましく、アルキルリン酸エステル類を50〜70質量%、界面活性剤を25〜45質量%及び分子中に炭素数12〜22のアルキル基を有する1価脂肪族アルコールを0.01〜4質量%(合計100質量%)とするのがより好ましい。
【0016】
次に本発明に係るポリエステル系合成繊維の処理方法(以下、本発明の処理方法という)について説明する。本発明の処理方法は、本発明の処理剤を、ポリエステル系合成繊維に対し0.05〜0.5質量%となるように付着させる方法である。付着工程は、紡糸工程、延伸工程、捲縮工程等のいずれでもよいが、紡糸工程、捲縮工程の前又は後が好ましい。付着方法は、浸漬給油法、スプレー給油法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法等のいずれでもよいが、浸漬給油法、スプレー給油法又はローラー給油法が好ましい。
【0017】
最後に本発明に係るポリエステル系合成繊維(以下、本発明の合成繊維という)について説明する。本発明の合成繊維は、本発明の処理方法により得られるポリエステル系合成繊維である。合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリプロピレンテレフタレート繊維等ポリエステル系合成繊維が挙げられるが、なかでもポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した本発明によると、乳化安定性、耐熱性、紡績工程でのカード工程における制電性及び練条工程における耐スカム堆積性を同時に満足し、且つ経日的な繊維強度の低下を生じないという効果がある。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0020】
試験区分1 (ポリエステル系合成繊維用処理剤の水性液の調製)
・ポリエステル系合成繊維用処理剤(実施例1)の水性液の調製
ステアリルリン酸エステルカリウム塩(酸価:10KOHmg/g)(A−1)66.5部及びα−ノニルフェニル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10、nはオキシエチレン単位の数、以下同じ)とα−ドデシルアミノ−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)の70:30(質量比)の混合物(B−1)30部及びステアリルアルコール(C−1)3.5部をビーカーに入れ、よく混合し、80℃に加熱した所定量の半量のイオン交換水を加えて撹拌し、完全に溶解させた。溶解後、残りの半量のイオン交換水を一気に加えて均一になるまで撹拌し、ポリエステル系合成繊維用処理剤(実施例1)の5%水溶液を調製した。
【0021】
・ポリエステル系合成繊維用処理剤(実施例2〜10及び比較例1〜6)の水性液の調製
ポリエステル系合成繊維用処理剤(実施例1)の5%水性液の調製方法と同様にして、ポリエステル系合成繊維用処理剤(実施例2〜10及び比較例1〜6)の5%水性液を調製した。調製した水性液中の各例のポリエステル系合成繊維用処理剤の内容を表1にまとめて示した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1において、
A−1:ステアリルリン酸エステルカリウム塩(酸価:10KOHmg/g)
A−2:セトステアリルリン酸エステルカリウム塩(酸価:5KOHmg/g)
A−3:セチルリン酸エステルカリウム塩(酸価:10KOHmg/g)
A−4:ステアリルリン酸エステルカリウム塩(酸価:25KOHmg/g)
A−5:ベヘニルリン酸エステルカリウム塩(酸価:10KOHmg/g)
A−6:ラウリルリン酸エステルカリウム塩(酸価:50KOHmg/g)
a−7:オクチルリン酸エステルカリウム塩(酸価:20KOHmg/g)
a−8:ステアリルリン酸エステルカリウム塩(酸価:90KOHmg/g)
a−9:ステアリルリン酸エステルカリウム塩(酸価:0KOHmg/g)
【0024】
B−1:α−ノニルフェニル-ω-ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)/α−ドデシルアミノ−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)=70/30
B−2:α−ドデシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)/α−ドデシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(m+n=10、mはオキシプロピレン単位の数)/α−ドデシルアミノ−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)=25/25/50(質量比)の混合物
B−3:α−ドデシル−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)/α−ドデシルアミノ−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)と燐酸の塩=50/50(質量比)の混合物
B−4:ヤシ脂肪酸−ポリオキシエチレン(n=10)/α−ドデシルアミノ−ω−ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(n=10)=50/50(質量比)の混合物
b−5:ポリエチレングリコール(数平均分子量:1000)
【0025】
C−1:ステアリルアルコール
C−2:セトステアリルアルコール
C−3:セチルアルコール
C−4:ベヘニルアルコール
C−5:ラウリルアルコール
c−6:オクチルアルコール
【0026】
試験区分2
・乳化安定性の評価
試験区分1で調製した各例のポリエステル系合成繊維用処理剤の5%水性液について、その安定性を肉眼観察し、下記の基準で評価した。結果を表2にまとめて示した。
【0027】
乳化安定性の評価基準
◎:潤みは全くなく、均一で、安定性極めて良好
〇:若干の潤みはあるが、全体として安定性良好
×:沈殿及び浮遊物が発生しており、安定性不良
【0028】
・耐熱性の評価
試験区分1で調製した各例のポリエステル系合成繊維用処理剤の5%水性液について、シャーレに10g採取し、105℃にて2時間乾燥した後、180℃に加温したときの発煙状況を肉眼観察し、下記の基準で評価した。結果を表2にまとめて示した。
【0029】
耐熱性の評価基準
◎:ほとんど発煙なし
〇:僅かに発煙があるが、問題ないレベル
×:明らかに発煙が認められる
【0030】
試験区分3(ポリエステルステープル繊維への処理剤の付着とその評価)
・ポリエステルステープル繊維への処理剤の付着
試験区分1で調製した各例のポリエステル系合成繊維用処理剤の5%水性液を更にイオン交換水で希釈して2%水性液を調製した。調製した2%水性液を、製綿工程で得られた繊度1.3×10−4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのセミダルのポリエステルステープル繊維に、ポリエステル系合成繊維用処理剤としての付着量が0.15%となるようにスプレー給油法で付着させ、80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した後、25℃×40%RHの雰囲気下に一夜調湿して、ポリエステル系合成繊維用処理剤を付着させた処理済みポリエステルステープル繊維を得た。
【0031】
・カード工程における制電性の評価
前記で得た処理済みポリエステルステープル繊維10kgを用い、25℃×40%RHの雰囲気下でフラットカード(豊和工業社製)に供し、紡出速度=140m/分の条件で通過させた。紡出されたカードウェブの静電気を測定し、制電性を下記の基準で判定した。結果を表2にまとめて示した。
【0032】
制電性の評価基準
◎:静電気発生量が0.3kV未満
〇:静電気発生量が0.3kV以上0.6kV未満
×:静電気発生量が0.6kV以上
【0033】
・練条工程における耐スカム堆積性の評価
前記で得た処理済みポリエステルステープル繊維10kgを用い、フラットカード(豊和工業社製)に供してカードスライバーを得た。得られたカードスライバーを、30℃で70%RHの雰囲気下にPDF型練条機(石川製作所社製)に供し、紡出速度=250m/分の条件で5回繰り返して通過させた。PDF型練条機のゴムローラー、レジューサー及びトランペットの各部分におけるスカムの程度を肉眼判定し、耐スカム堆積性を下記の基準で評価した。結果を表2にまとめて示した。
【0034】
堆積性の評価基準
◎:スカムの堆積殆ど無し
〇:僅かにスカムの堆積があるが、問題ないレベル
×:明らかにスカムの堆積が認められる
【0035】
・繊維強度の評価
前記で得た処理済みポリエステルステープル繊維の初期強度を強伸度測定機にて測定し、また同繊維を30℃で70%RHの雰囲気下に3カ月間置いた3カ月後の強度を強伸度測定機にて測定した。3カ月後の強度を初期強度と比較して、繊維強度を下記の基準で評価した。結果を表2にまとめて示した。
【0036】
繊維強度の評価基準
◎:初期強度に対して95%以上の強度
×:初期強度に対して95%未満の強度











【0037】
【表2】
【0038】
表1に対応する表2の結果からも明らかなように、本発明によれば、乳化安定性、耐熱性、紡績工程でのカード工程における制電性及び練条工程における耐スカム堆積性を同時に満足し、且つ経日的な繊維強度の低下を生じない。
【要約】
【課題】乳化安定性、耐熱性、紡績工程でのカード工程における制電性及び練条工程における耐スカム堆積性を同時に満足し、且つ経日的な繊維強度の低下を生じないポリエステル系合成繊維用処理剤、かかる処理剤を用いるポリエステル系合成繊維の処理方法及びかかる処理方法により得られるポリエステル系合成繊維を提供する。
【解決手段】ポリエステル系合成繊維用処理剤として、特定のアルキルリン酸エステル類を40〜80質量%、特定の界面活性剤を10〜50質量%及び分子中に炭素数12〜22のアルキル基を有する1価脂肪族アルコールを0.01〜10質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものを用いた。
【選択図】なし