(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記解除用油路は前記チルト用シリンダ装置の下げ側給排油路に接続されており、この解除用油路の分岐点と前記チルト用シリンダ装置のシリンダとの間にパイロット操作形逆止弁が介設されていることを特徴とする請求項3に記載のキャブチルト装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に即して説明する。
【0010】
図1に示されているように、本実施形態に係るキャブチルト装置はキャブ1とフレーム2との間に介設され、油圧による伸縮作動によりキャブ1のチルト操作を行うチルト用シリンダ装置3を備えている。すなわち、キャブ1はフレーム2に支点1aによって前後方向に回動自在に支持されており、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の上端がリンク90を介してキャブ1に回動自在に枢着され、シリンダ5の下端がフレーム2に回動自在に枢着されている。
【0011】
図2に示されているように、チルト用シリンダ装置3の油圧駆動回路10は、上げ側給排油路(以下、上げ側油路という)11と、下げ側給排油路(以下、下げ側油路という)12と、モータ8によって駆動されるポンプ13と、タンク14と、手動切換弁(以下、切換弁という)15とを備えている。上げ側油路11はシリンダ5のフレーム側油圧室(以下、上げ側油圧室という)5aに流体的に接続されており、下げ側油路12はシリンダ5のキャブ側油圧室(以下、下げ側油圧室という)5bに流体的に接続されている。
【0012】
切換弁15は3ポート・2位置・手動操作形切換弁に構成されている。通常時には上げ側油路11の負荷ポート15aがタンクポートTに接続されており、ポンプポートPが閉じられている。切換時には上げ側油路11の負荷ポート15aがポンプポートPに接続され、タンクポートTが閉じられる。
上げ側油路11には上げ側パイロット操作形逆止弁(以下、上げ側パイロット逆止弁という)16が介設されており、下げ側油路12には下げ側パイロット操作形逆止弁(以下、下げ側パイロット逆止弁という)17が介設されている。上げ側パイロット逆止弁16および下げ側パイロット逆止弁17は油圧が予め設定されたパイロット圧力値未満であるときにシリンダ5側から切換弁15側への流れを阻止し、設定されたパイロット圧力値以上になるとその流れを許容するようにそれぞれ構成されている。
図2中、9はリリーフ弁、18はフィルタである。
【0013】
図3に示されているように、チルト用シリンダ装置3にはキャブ下降防止装置20が付設されている。キャブ下降防止装置20はストッパ(ステー)21を備えている。ストッパ21は剛性を有する金属材料が使用されて長いチャンネル型鋼形状の棒体に形成されており、上端部21aがチルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の上端部に枢着されている。ストッパ21の開口側端辺における中間部には複数の凹部22が切設されており、各凹部22は開口辺両端の一対の対辺22a、22aが互いに平行になった形状に形成されている。すなわち、凹部22の対辺22aと22aとはストッパ21の長手方向かつピストンロッド4の軸線方向と直角となって互いに対向している。
【0014】
図4および
図5に示されているように、シリンダ5にはブラケット23がキャブ側端部外周のストッパ21と反対側に配置されて跨設されており、ブラケット23のキャブ側端部には短いチャンネル型鋼形状の吊り具24がストッパ21を跨ぐように配置されて固定されている。吊り具24の内面とストッパ21の外面との間にはストッパ21が円滑に摺動し得るように適当なクリアランスをとって進退自在に挿通されており、吊り具24の底壁部にはストッパ21を案内するガイド25が設けられている。
【0015】
ブラケット23にはロック部材としてのロックレバー26が一対、互いに対向するように配置されて、凸部27側端部が開閉するようにピン28によって回動自在に枢支されている。ピン28にはロックレバー26を閉方向に付勢して凹部22に噛合させる弾性部材としてのトーションスプリング29が外装されている。すなわち、ピン28はシリンダ5の軸線と平行に延在するように配置されてブラケット23に架設されているとともに、一対のロックレバー26、26はピン28を挟んで対向するように配置されて、両者の一端部がピン28によって回動自在にそれぞれ支持されており、トーションスプリング29はピン28に外装されて両端部が一対のロックレバー26、26に両者を閉じる方向に付勢するようにそれぞれ係止されている。
凸部27はストッパ21の凹部22に噛合する長方形の平板形状に形成されており、ロックレバー26が閉じた状態で凹部22に噛合するようになっている。つまり、凸部27の対辺27aと27aとはピストンロッド4の軸線方向すなわち伸縮方向と直角で互いに平行になっている。ブラケット23の両側面にはガイド穴23a、23aがそれぞれ没設されており、一対のロックレバー26、26の一対の凸部27、27は両ガイド穴23a、23a内を、シリンダ5の外周面に接近離反する方向に揺動するようにそれぞれ嵌合されている。
ブラケット23のシリンダ5と反対側端面にはリミッタ23bが外向きに突設されており、リミッタ23bには一対のロックレバー26、26の凸部27側と反対側端部が両脇から突き当たるようになっている。
【0016】
ブラケット23にはロックレバー26の凹部22と凸部27の噛合を解除する解除用シリンダ装置30が設置されている。すなわち、解除用シリンダ装置30はシリンダブロック31を備えており、そのシリンダブロック31がブラケット23と一体的に形成されている。
シリンダブロック31すなわちブラケット23にはシリンダ室32が、ピン28とシリンダ5との間においてピン28と直交する方向に配置されて開設されており、シリンダ室32の両端部には一対のプランジャ34、34の後端部がそれぞれ摺動自在に嵌入されている。一対のプランジャ34、34の先端面には一対のロックレバー26、26がトーションスプリング29によってそれぞれ押接されている。
シリンダブロック31すなわちブラケット23には解除用油路37が開設されており、解除用油路37の一端は一対のプランジャ34、34との間に形成されたシリンダ室32の圧力室33に接続されている。
【0017】
図2に示されているように、解除用油路37はチルト用シリンダ5の下げ側油路12の途中から分岐された状態になっている。そして、解除用油路37の下げ側油路12の分岐点37aとチルト用シリンダ5との間には下げ側パイロット逆止弁17が介装されており、分岐点37aと下げ側パイロット逆止弁17との間には絞り39が介装されている。
下げ側パイロット逆止弁17はキャブの重心がキャブチルトのデットポイントを越えて前方に傾いた状態でポンプの運転を停止したときにキャブが自重によってどんどん傾いて行くのを防止するために介設されている。
【0018】
図3に示されているように、チルト用シリンダ装置3のシリンダ5のフレーム側端部には弁ユニット40が設置されており、
図6に示されているように、弁ユニット40には上げ側パイロット逆止弁16および下げ側パイロット逆止弁17が形成されている。
【0019】
図6に示されているように、弁ユニット40のボデー40aの下部には上げ側パイロット逆止弁16の弁路41が横方向(以下、左右方向とする)に開設されており、弁路41には上げ側油路11の一次ポート42と二次ポート43とがそれぞれ直交するように接続されている。一次ポート42にはフィルタ18Aが介設されている。一次ポート42は上げ側油路11の切換弁15の負荷ポート15a側に接続されており、二次ポート43はシリンダ5の上げ側油圧室5aに接続されている(
図2参照)。
弁路41の一次ポート42と二次ポート43との間には弁口44が形成されており、弁口44の周りには弁座45が形成されている。弁座45にはボールからなる弁体46が離着座して弁口44を開閉するように配置されており、弁体46はバルブスプリング47によって弁座45に着座する方向に常時付勢されている。バルブスプリング47は弁路41の一端部(以下、右端部とする)に螺入されたプラグ48に反力をとって、弁体46を左方に付勢している。
【0020】
ボデー40aにはシリンダ室50が弁路41の延長線上に形成されている。シリンダ室50にはパイロット通路49が接続されており、パイロット通路49は下げ側油路12に接続されている。パイロット通路49には解除用油路37の一端部が分岐点37aで接続されている。解除用油路37の他端は解除用シリンダ装置30のシリンダ室32に接続されている(
図5参照)。パイロット通路49にはフィルタ18Bおよび絞り39が介設されている。
シリンダ室50の内部にはパイロットピストン51がシールリング55によってシールされた状態で左右方向に摺動自在に嵌入されている。シリンダ室50の右側にはガイド孔53が形成されており、ガイド孔53にはパイロットピストン51の右端に一体的に突設されたパイロットピストンロッド(以下、ロッドという)52が挿入されて弁体46に対向されている。シリンダ室50の右端面とパイロットピストン51の左端との間にはピストンスプリング56が蓄力状態で介設されている。ピストンスプリング56はボデー40aに反力をとってパイロットピストン51を弁体46から離反する方向に常時付勢するようになっている。パイロットピストン51の左端限はシリンダ室50の左端部に螺入されたプラグ57によって規定されている。
【0021】
ボデー40aにおける上げ側パイロット逆止弁16の上部位置には、下げ側パイロット逆止弁17が平行に形成されている。下げ側パイロット逆止弁17の弁路(以下、下げ側弁路という。上げ側パイロット逆止弁16の弁路は上げ側弁路という。他の要素についても同様とする)61には、下げ側一次ポート62と下げ側二次ポート63とが互いに離れた位置でそれぞれ接続されている。下げ側一次ポート62は下げ側油路12の切換弁15のポンプポートPに接続されており、下げ側二次ポート63はシリンダ5の下げ側油圧室5bに接続されている(
図2参照)。
下げ側弁路61における下げ側一次ポート62と下げ側二次ポート63との間には下げ側弁口64が形成されており、下げ側弁口64の周りには下げ側弁座65が形成されている。下げ側弁座65にはボールからなる下げ側弁体66が離着座して下げ側弁口64を開閉するように配置されており、下げ側弁体66は下げ側バルブスプリング67によって下げ側弁座65に着座する方向に常時付勢されている。下げ側バルブスプリング67は下げ側弁路61の左端部に螺入されたプラグ68に反力をとって、下げ側弁体66を右方に付勢している。下げ側シリンダ室70にはタンク油路89の一端が接続され、タンク油路89の他端はタンク14に接続されている。
【0022】
ボデー40aには下げ側シリンダ室70が下げ側弁路61の延長線上に形成されており、下げ側シリンダ室70には下げ側パイロットピストン71が収納されている。下げ側パイロットピストン71の左端には下げ側パイロットピストンロッド(以下、下げ側ロッドという)72が突設されており、下げ側ロッド72は下げ側弁路61と下げ側シリンダ室70との間に形成されたガイド孔73を挿通して下げ側弁体66に対向されている。
下げ側シリンダ室70の内部には下げ側ピストンスプリング76が下げ側パイロットピストン71を下げ側弁体66から離反する方向に常時付勢するように介設されており、下げ側パイロットピストン71の右端限は下げ側シリンダ室70の右端部に螺入されたプラグ77によって規定されている。
下げ側シリンダ室70の下げ側パイロットピストン71の右側には下げ側パイロット通路69が接続されており、下げ側パイロット通路69は上げ側油路11における上げ側弁路41に接続されている。上げ側二次ポート43の一端は下げ側パイロット通路69に接続され、他端は上げ側油圧室5aに接続されている。
【0023】
下げ側シリンダ室70は大径室70aと小径室70bとの二つの室を有し、パイロットピストン71は大径部71aと小径部71bとを有する。下げ側シリンダ室70の大径室70aにはパイロットピストン71の大径部71aが、下げ側シリンダ室70の小径室70bにはパイロットピストン71の小径部71bがそれぞれ、シールリング75、78によってシールされた状態で左右方向に摺動自在に嵌入されている。
パイロットピストン71の大径部71aが下げ側シリンダ室70の大径室70aにシールリング75によってシールされ、かつ、小径部71bが下げ側シリンダ室70の小径室70bにシールリング78によってシールされた状態で摺動自在に嵌入され、さらに、下げ側シリンダ室70の大径室70aがタンク油路89によりタンク14に接続されていることにより、下げ側シリンダ室70の大径室70aと小径室70bの断面積差はパイロットピストン71の有効受圧面積を構成していることになる。
つまり、下げ側シリンダ室70の大径室70aの断面積がAa、小径室70bの断面積がAb、ピストンスプリング76の弾発力がF、バルブスプリング67の弾発力やシールリング75、シールリング78等の抵抗力の和をαとすると、パイロットピストン71を動かすために必要な下げ側シリンダ室70の大径室70aの圧力すなわちパイロット圧力Pは、次式(1)によって設定されることになる。
P=(F+α)/(Aa−Ab)・・・(1)
【0025】
運転者がキャブ1をチルトアップしようとするときは、まず、
図1のキャブロック装置94のキャブロックを手動レバー94aによって解除する。そして、切換弁15のレバー15cをチルトアップ側に切り換える(
図1 参照)。このとき、
図2においては、切換弁15のポンプポートPが負荷ポート15aに接続され、タンクポートTが閉じられる。
そして、
図1のキャブロック装置94のキャブロックが手動レバー94aによって解除された後に、ポンプスイッチ(図示せず)がオンにされてモータ8が回転してポンプ13が駆動されると、
図2において、ポンプ13の圧油が切換弁15により上げ側油路11の負荷ポート15aに圧送されるとともに、下げ側油路12にも圧送される。
上げ側油路11の負荷ポート15aに圧送された圧油は上げ側パイロット逆止弁16を通じてチルト用シリンダ装置3のシリンダ5の上げ側油圧室5aに流入し、ピストンロッド4を伸長作動させる方向の力を発生させる。また、下げ側油路12に圧送された圧油は下げ側パイロット逆止弁17を通じてチルト用シリンダ装置3のシリンダ5の下げ側油圧室5bに圧力を伝え、ピストンロッド4を短縮作動させる方向の力を発生させる。
チルト用シリンダ装置3のシリンダ5の上げ側油圧室5aと下げ側油圧室5bの断面積を比較すると、下げ側油圧室5bの方がピストンロッド4の断面積分上げ側油圧室5aより小さいので、結果的にピストンロッド4の断面積と上げ側油圧室5aに圧送された圧油の圧力との積で表わされる力がピストンロッド4を伸長作動させる方向に働く。これにより、キャブ1をフレーム2から持ち上げて行きチルトアップさせて行く。
【0026】
この際、ピストンロッド4を伸長作動させるためには、シリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油を排出させる必要がある。
本実施形態においては、上げ側油路11の油圧が下げ側パイロット逆止弁17に設定されたパイロット圧力値(前記(1)式参照)以上になると、
図6において、下げ側パイロット通路69を経由して上げ側油路11に接続された下げ側シリンダ室70における下げ側パイロットピストン71が左方向に移動するため、下げ側弁体66が下げ側弁座65から離れて下げ側弁口64を開く。
図2において、下げ側パイロット逆止弁17が開くと、シリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油は下げ側油路12の下げ側パイロット逆止弁17および切換弁15を経由してシリンダ5の上げ側油圧室5aに流入する。したがって、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は伸長作動してキャブ1をチルトアップさせることができる。
【0027】
ちなみに、
図6に示されている下げ側パイロット逆止弁17において、下げ側二次ポート63から下げ側一次ポート62の方向に逆に流れる圧油は、下げ側二次ポート63、下げ側弁口64、絞り39を通過して絞られるため、チルト用シリンダ装置3のシリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油は徐々に排出される状態になる。
したがって、キャブの重心がキャブチルトのデットポイントを越えて前方に傾斜し、チルト用シリンダ装置に引張荷重が働いた場合でも、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の伸長作動は緩やかになり、キャブ1を安全にチルトアップさせて行くことができる。
【0028】
チルトアップの作動に際して、ストッパ21はキャブ下降防止装置20のロックレバー26の凸部27が、
図5(a)に示されているように開いた状態を維持しているので、シリンダ5に沿って移動して行く。すなわち、下げ側油路12の圧力が解除用シリンダ装置30のシリンダ室32に解除用油路37を経由して印加されることにより、一対のロックレバー26、26が一対のプランジャ34、34によって押し広げられているために、ストッパ21の一対の凹部22、22は一対のロックレバー26、26の凸部27、27に噛合することなく移動して行く。したがって、チルト用シリンダ装置3はキャブ下降防止装置20に妨げられることなく、キャブ1をチルトアップさせて行くことができる。
【0029】
以上のようにして、キャブ1がチルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の伸長作動によってチルトアップされて行き、所望の高さ(例えば、キャブが50度チルトされた高さ)に到達して、運転者がポンプスイッチをオフすると、ポンプ13が停止する。
ポンプ13が停止すると、上げ側パイロット逆止弁16の上げ側弁体46が上げ側弁座45に着座して上げ側弁口44を閉じる。すなわち、上げ側パイロット逆止弁16は閉となり、シリンダ5の上げ側油圧室5aの圧油は排出することができない。
また、ポンプ13が停止すると、上げ側油路11の油圧がポンプ13等の内部油漏れで低下するため、下げ側パイロット逆止弁17における下げ側パイロット通路69の油圧が設定されたパイロット圧力値以下になる。その結果、
図6において、下げ側パイロットピストン71が右方向に戻るため、下げ側弁体66が下げ側弁座65に着座して下げ側弁口64を閉じる。すなわち、下げ側パイロット逆止弁17は閉となり、シリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油は排出することができない。上記のようにポンプ13が停止すると、上げ側パイロット逆止弁16も下げ側パイロット逆止弁17も閉となるため、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は伸長することも短縮することもできない。
なお、シリンダ5のピストンロッド4がフルストロークしてからポンプ13がオフされた場合、機械的にピストンロッド4の伸長作動が止められるため、下げ側パイロット逆止弁17の開閉にかかわらずピストンロッド4は伸長することができない。
【0030】
一方、下げ側油路12の下げ側パイロット逆止弁17とポンプ13間の圧力が低下すると、下げ側油路12と解除用油路37で接続された解除用シリンダ装置30のシリンダ室32の圧力も低下するので、一対のプランジャ34、34によって押し広げられている一対のロックレバー26、26はスプリング29の弾発力によって閉じられて、ストッパ21の側面に押接された状態になる。
上げ側パイロット逆止弁16に故障があった場合で、上記のような状態になったとき、チルト用シリンダ装置3にキャブ1からの圧縮荷重が働いていれば、その荷重によりチルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は除々に短縮を始める。同様な状態で、チルト用シリンダ装置3にキャブ1からの引張り荷重が働いていれば、その荷重によりチルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は除々に伸長を始める。
この状態で、一対のロックレバー26、26の凸部27、27がストッパ21の一対の凹部22、22に整合する位置に到達すると、一対の凸部27、27は一対の凹部22、22にスプリング29の弾発力によって自動的にそれぞれ噛合する。
凹部22の対辺22a、22aと凸部27の対辺27a、27aとは、ストッパ26の長手方向すなわちピストンロッド4の軸線(伸縮)方向と平行に設定されているので、噛合すると、伸長方向および短縮方向のいずれの方向にもロックレバー26とストッパ21の相対移動を阻止する状態になる。つまり、キャブ下降防止装置20はチルト用シリンダ装置3の伸長および短縮の双方を機械的に防止した状態になる。
なお、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4が停止したとき、一対のロックレバー26、26の凸部27、27がストッパ21の一対の凹部22、22に整合する位置になっていた場合は、その時点で、一対のロックレバー26、26の凸部27、27がストッパ21の一対の凹部22、22はトーションスプリング29の弾発力により自動的にそれぞれ噛合し、シリンダ装置3の伸長および短縮の双方を機械的に防止した状態になる。
【0031】
その後、運転者がキャブ1をチルトダウンさせようとするときは、切換レバー15cをチルトダウン側に切り換える。このとき、
図2に示されているように、切換弁15のポンプポートPが閉じられ、タンクポートTが負荷ポート15aに接続される。
次に、ポンプスイッチがオンされると、モータ8によりポンプ13が駆動され、
図2に示されているポンプ13の圧油が下げ側油路12に圧送される。下げ側油路12に圧送された圧油はチルト用シリンダ装置3のシリンダ5の下げ側油圧室5bに下げ側パイロット逆止弁17を通じて流入し、伸長したピストンロッド4を短縮作動させることにより、キャブ1をチルトダウンさせて行く。
【0032】
この際、ピストンロッド4が短縮作動するためには、シリンダ5の上げ側油圧室5aの圧油を排出させる必要がある。
本実施形態においては、上げ側パイロット通路49に接続されている上げ側シリンダ室50の油圧が上げ側パイロット逆止弁16に設定されたパイロット圧力値以上になると、
図6において、上げ側パイロットピストン51が上げ側シリンダ室50の圧力の作用力によって右方向に移動されるため、上げ側弁体46が上げ側弁座45から離れて上げ側弁口44を開く。
図2において、上げ側パイロット逆止弁16が開くと、シリンダ5の上げ側油圧室5aの圧油は上げ側パイロット逆止弁16および切換弁15の負荷ポート15aを経由してタンク14に排出される。したがって、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は短縮作動してキャブ1をチルトダウンさせることができる。
【0033】
ちなみに、上げ側パイロット逆止弁16の二次ポート43から一次ポート42の方向に逆に流れる圧油は、
図6において、絞り39Aを通過して絞られるため、シリンダ5の上げ側油圧室5aの圧油は徐々に排出される状態になる。したがって、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の短縮作動は緩やかになり、キャブ1を安全にチルトダウンさせて行くことができる。
【0034】
以上のチルトダウン作動に際して、
図5(b)に示されているように、キャブ下降防止装置20のロックレバー26の凸部27がストッパ21の凹部22に噛合したままの状態であると、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は短縮することができない。したがって、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の短縮が始まる以前に、ロックレバー26のストッパ21との噛合を解除させる必要がある。
本実施形態においては、切換弁15がチルトダウン側に切り換えられると、
図5(a)に示されているように、ロックレバー26の凹部22との噛合が解除用シリンダ装置30によって自動的に解除されるため、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4はキャブ下降防止装置20に妨げられずに短縮することができる。
【0035】
すなわち、切換弁15がチルトダウン側に切り換えられることにより、下げ側油路12に解除用油路37を介して接続したシリンダ室32の油圧が解除用シリンダ装置30に関して予め設定された圧力以上になると、一対のプランジャ34、34が押し広げられるため、一対のロックレバー26、26がピン28を中心にトーションスプリング29に抗して押し開かれる、その結果、ロックレバー26の凸部27のストッパ21の凹部22との噛合は自動的に解除される。
【0036】
以上のようにして噛合が自動的に解除された後も、下げ側油路12の油圧が設定値以上を維持している限り、解除用シリンダ装置30はロックレバー26のストッパ21との噛合解除状態を維持することになる。つまり、チルト用シリンダ装置3はキャブ下降防止装置20に妨げられることなく、キャブ1をチルトダウンさせて行くことができる。
【0037】
以上のようにしてキャブ1がチルトダウンして行きキャブ1が所定位置まで下降すると、キャブロック装置94のロックピンにラッチが噛合する。
【0038】
次に、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4が最小短縮ストローク位置に達すると、ストロークスイッチ(図示せず)が自動的にオフになり、走行可能な通常時の状態に戻る。
【0039】
ところで、キャブチルト装置においては、チルトアップ操作時にキャブの重心がデットポイントを越えて前方に傾斜したチルトアップ状態で、チルト用シリンダ装置を途中停止可能とすることが要求される場合がある。
例えば、整備場のスペースが狭く、フルチルトアップすると、整備場の壁とキャブが接触してしまう場合である。
【0040】
このような場合において、キャブを側面から見た場合にキャブ1の回動の支点1aを通る垂線上をキャブ1の重心が通過する点をデッドポイントとすると、キャブ1がこのデッドポイントを越えて前方へ傾斜すると、チルト用シリンダ装置3に加わる荷重はキャブ1の自重により圧縮から引っ張りに変わる。このとき、下げ側油路12の圧力はこの引っ張り荷重によって上昇する。このため、下げ側油路12に接続された解除用油路37の圧力も上昇し、解除用シリンダ装置30の一対のプランジャ34、34が
図5(a)に示されている開いた状態になってしまう事態が発生する。
【0041】
本実施形態においては、解除用シリンダ装置30のシリンダ室32が接続されたチルト用シリンダ装置3の下げ側油路12に下げ側パイロット逆止弁17が介設されていることにより、チルトアップ操作の途中でポンプスイッチをオフにした場合、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の伸長を油圧的に防止することができるため、チルトアップの操作時にキャブ1の重心がデットポイントを越えて前方に傾斜したチルトアップ状態で、チルト用シリンダ装置3を途中停止することができる。
すなわち、
図2において、ピストンロッド4がキャブ1の自重によって左方向に引っ張られたとしても、シリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油が下げ側パイロット逆止弁17によって閉じ込められることによって、ピストン4aは左方向に移動することができない状態になるため、ピストンロッド4は途中停止した状態になる。
【0042】
本実施形態においては、解除用シリンダ装置30のシリンダ室32に圧油を供給する解除用油路37が下げ側パイロット逆止弁17の一次ポート62よりもタンク14側で下げ側油路12に接続されているので、チルトアップ操作時にキャブ1の重心がデットポイントを越えて前方に傾斜したチルトアップ状態で、チルト用シリンダ装置3が途中停止されたときに、解除用シリンダ装置30のシリンダ室32にチルト用シリンダ装置3の下げ側油圧室5bの油圧が作用するのは回避される。
したがって、解除用シリンダ装置30はロックレバー26とストッパ21との噛合を維持するので、チルト用シリンダ装置3はチルトアップ操作時にキャブ1の重心がデットポイントを越えて前方に傾斜した後であっても、キャブ下降防止装置20はチルト用シリンダ装置3の伸長を機械的に停止させることができる。
【0043】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。
【0044】
1) キャブ下降防止装置において、互いに噛合するストッパの凹部およびロックレバーの凸部の対辺を平行に形成することにより、ストッパとロックレバーとの相対移動を伸長方向および短縮方向のいずれの方向にも阻止することができるので、下げ側パイロット逆止弁17または上げ側パイロット逆止弁16に失陥が発生した場合でも、キャブ下降防止装置によってチルト用シリンダ装置の伸長および短縮の双方を防止することができる。
【0045】
2) キャブ下降防止装置によってチルト用シリンダ装置の伸長および短縮の双方を防止することにより、キャブの重心がキャブチルトのデットポイントを越える前であっても、また、越えて前方に傾斜したときにも、キャブの自重でキャブが下降または前傾して行くのを機械的に防止することができる。
【0046】
3) ロックレバーのストッパとの噛合および解除を実行する解除用シリンダ装置をキャブ下降防止装置に設けることにより、解除用レバーの操作なしにキャブ下降防止作動および解除を実行することができるため、キャブ下降防止作業環境および解除作業を自動化することができるとともに、操作忘れや操作不完全による故障を防止することができる。
【0047】
4) ロックレバーが開いた状態で、チルトシリンダ装置を伸縮作動させることにより、ロックレバーの凸部がストッパの複数の凹部を通過する際の衝突音の発生を防止することができる。
【0048】
5) チルト用シリンダ装置の下げ側給排油路に下げ側パイロット逆止弁を介設することにより、非作動時におけるチルト用シリンダ装置のピストンロッドの伸長作動を油圧的に防止することができるため、チルトアップ操作時にキャブの重心が支点を越えて前方に傾斜したチルトアップ状態でチルト用シリンダ装置を途中停止させることができる。
【0049】
6) 解除用シリンダ装置のシリンダ室を下げ側パイロット逆止弁の一次ポート側に接続することにより、チルトアップ操作時にキャブの重心が支点を越えて前方に傾斜したチルトアップ状態でチルト用シリンダ装置が途中停止されたときに、解除用シリンダ装置のシリンダ室にチルト用シリンダ装置の下げ側油圧室の油圧が作用するのを回避することができるため、解除用シリンダ装置をしてロックレバーのストッパとの噛合を維持させることができる。
【0050】
図7および
図8は本発明の第二実施形態を示している。
本実施形態が前記実施形態と異なる主な点は、チルト用シリンダ装置3の油圧駆動回路10Aにおける切換弁15Aおよび弁ユニット40Aである。
【0051】
図7に示されているように、切換弁15Aは4ポート・2位置・手動操作形切換弁に構成されている。通常時には上げ側油路11の負荷ポート15aがタンクポートTに接続されており、下げ側油路12の負荷ポート15bがポンプポートPに接続されている。切換ときには上げ側油路11の負荷ポート15aがポンプポートPに接続され、下げ側油路12の負荷ポート15bがタンクポートTに接続される。
【0052】
図8に示されているように、弁ユニット40Aにおいて、ボデー40aの中央右端部には上げ側パイロット逆止弁16の上げ側弁路41が開設されており、左端部には下げ側パイロット逆止弁17の下げ側弁路61が開設されている。
上げ側弁路41には上げ側油路11の一次ポート42と二次ポート43とがそれぞれ直交するように接続されている。一次ポート42にはフィルタ18Aが介設されている。一次ポート42は上げ側油路11の切換弁15の負荷ポート15a側に接続されており、二次ポート43はシリンダ5の上げ側油圧室5aに接続されている(
図7参照)。
弁路41の一次ポート42と二次ポート43との間には弁口44が形成されており、弁口44の周りには弁座45が形成されている。弁座45にはボールからなる弁体46が離着座して弁口44を開閉するように配置されており、弁体46はバルブスプリング47によって弁座45に着座する方向に常時付勢されている。バルブスプリング47は弁路41の一端部(以下、右端部とする)に螺入されたプラグ48に反力をとって、弁体46を左方に付勢している。
【0053】
上げ側シリンダ室50内には上げ側パイロットピストン51がシールリング55によってシールされた状態で左右方向に摺動自在に嵌入されている。上げ側パイロットピストン51の右端には上げ側ロッド52が突設されており、上げ側ロッド52は上げ側弁体46に対向されている。上げ側パイロットピストン51は上げ側ピストンスプリング56によって弁体46から離反する方向に上げ側ワッシャ91を介して中立位置へ戻るまで付勢されている。
【0054】
下げ側パイロット逆止弁17の下げ側弁路61には、下げ側一次ポート62と下げ側二次ポート63とが互いに離れた位置でそれぞれ接続されている。下げ側一次ポート62は下げ側油路12の切換弁15の負荷ポート15bに接続されており、下げ側二次ポート63はシリンダ5の下げ側油圧室5bに接続されている(
図7参照)。
下げ側弁路61における下げ側一次ポート62と下げ側二次ポート63との間には下げ側弁口64が形成されており、下げ側弁口64の周りには下げ側弁座65が形成されている。下げ側弁座65にはボールからなる下げ側弁体66が離着座して下げ側弁口64を開閉するように配置されており、下げ側弁体66は下げ側バルブスプリング67によって下げ側弁座65に着座する方向に常時付勢されている。下げ側バルブスプリング67は下げ側弁路61の左端部に螺入されたプラグ68に反力をとって、下げ側弁体66を右方に付勢している。
【0055】
ボデー40aには下げ側シリンダ室70が下げ側弁路61の延長線上に形成されており、下げ側シリンダ室70には下げ側パイロットピストン71が収納されている。下げ側パイロットピストン71の左端には下げ側ロッド72が突設されており、下げ側ロッド72は下げ側弁体66に対向されている。下げ側パイロットピストン71は下げ側ピストンスプリング76によって下げ側弁体66から離反する方向に下げ側ワッシャ92を介して中立位置へ戻るまで付勢されている。下げ側パイロットピストン71の右端は上げ側パイロットピストン51の左端に一体的に連結されている。
【0056】
下げ側シリンダ室70の下げ側パイロットピストン71の右側すなわち上げ側シリンダ室50の右側には、下げ側パイロット通路69が接続されている。上げ側シリンダ室50の上げ側ピストン51の左側すなわち下げ側シリンダ室70の左側には、上げ側パイロット通路49が接続されている。上げ側パイロット通路49には解除用油路37の一端部が分岐点37aで接続されている。解除用油路37の他端は解除用シリンダ装置30のシリンダ室32に接続されている(
図7参照)。
【0057】
ボデー40aにおける上げ側パイロット逆止弁16の上方位置には、シャトル弁80が設置されている。シャトル弁80は取付穴81に螺入された弁ブロック82を備えており、弁ブロック82の先端部には弁室83が形成されている。弁室83の底面(右端面)には弁路84が形成されており、弁路84の弁室83側開口縁辺には弁座85が形成されている。弁路84の他端は下げ側パイロット通路69に接続されている。ボデー40aにおける弁室83に対向する部位には弁路86が形成されており、弁路86の弁室83側開口縁辺には弁座87が形成されている。弁路86の他端は上げ側パイロット通路49に接続されている。弁室83には解除用油路37が接続されている。
弁室83には弁体88が収納されており、弁体88は下げ側パイロット通路69および上げ側パイロット通路49の圧力に従って、弁座85または87に離着座することにより、解除用油路37を下げ側パイロット通路69と接続させたり、上げ側パイロット通路49と接続させたりするようになっている。
【0059】
運転者がキャブ1をチルトアップしようとするときは、まず、切換弁15のレバー15cをチルトアップ側に切り換える。このとき、
図7においては、切換弁15のポンプポートPが負荷ポート15aに接続され、タンクポートTが負荷ポート15bに接続される。
そして、
図1のキャブロック装置94のキャブロックが手動レバー94aによって解除された後に、ポンプスイッチ(図示せず)がオンにされてモータ8が回転してポンプ13が駆動されると、
図7において、ポンプ13の圧油が切換弁15により上げ側油路11の負荷ポート15aに圧送される。上げ側油路11の負荷ポート15aに圧送された圧油は上げ側パイロット逆止弁16を通じてチルト用シリンダ装置3のシリンダ5の上げ側油圧室5aに流入し、ピストンロッド4を伸長作動させることにより、キャブ1をフレーム2から持ち上げて行きチルトアップさせて行く。
【0060】
この際、ピストンロッド4を伸長作動させるためには、シリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油を排出させる必要がある。
本実施形態においては、上げ側油路11の油圧が下げ側パイロット逆止弁17に設定されたパイロット圧力値以上になると、
図8において、上げ側二次ポート43を経由して上げ側油路11に接続された下げ側シリンダ室70において下げ側パイロットピストン71が左方向に移動するため、下げ側弁体66が下げ側弁座65から離れて下げ側弁口64を開く。
図7において、下げ側パイロット逆止弁17が開くと、シリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油は下げ側油路12の下げ側パイロット逆止弁17および負荷ポート15bを経由してタンク14に排出される。したがって、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は伸長作動してキャブ1をチルトアップさせることができる。
【0061】
チルトアップの作動に際して、キャブ下降防止装置20のロックレバー26の凸部27は開いた状態(
図5(a)参照)を維持しながら、ストッパ21に沿って移動して行く。すなわち、シャトル弁80において、弁体88が弁座87に着座することにより、上げ側油路11の圧力が解除用油路37を経由して解除用シリンダ装置30に供給され、その結果、一対のロックレバー26、26は一対のプランジャ34、34によって押し広げられているので、一対のロックレバー26、26の凸部27、27はストッパ21の一対の凹部22、22に噛合することなく移動して行く。したがって、チルト用シリンダ装置3はキャブ下降防止装置20に妨げられることなく、キャブ1をチルトアップさせて行くことができる。
【0062】
以上のようにして、キャブ1がチルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の伸長作動によってチルトアップされて行き、所望の高さに到達して、運転者がポンプスイッチをオフすると、ポンプ13が停止する。
ポンプ13が停止すると、上げ側油路11の上げ側パイロット逆止弁16とポンプ13間の油圧がポンプ13等の内部油漏れにより低下するため、下げ側パイロット逆止弁17における下げ側パイロット通路69の油圧が設定されたパイロット圧力値以下になる。その結果、
図8において、下げ側パイロットピストン71が右方向に戻るため、下げ側弁体66が下げ側弁座65に着座して下げ側弁口64を閉じる。下げ側パイロット逆止弁17が閉じると、シリンダ5の下げ側油圧室5bの圧油は排出することができないため、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は伸長することができない。
【0063】
一方、上げ側パイロット逆止弁16が閉じて、上げ側油路11の上げ側パイロット逆止弁16とポンプ13間の圧力が低下すると、上げ側油路11の圧力が解除用油路37を経由して印加した解除用シリンダ装置30のシリンダ室32の圧力が低下するので、一対のプランジャ34、34によって押し広げられている一対のロックレバー26、26はスプリング29の弾発力によって閉じられて、ストッパ21の側面に押接された状態になる。 この状態で、シリンダ5に引張り荷重が働いて、かつ、下げ側パイロット逆止弁17に失陥が発生した場合は、シリンダ5のピストンロッド4の伸長作動によって、または、シリンダ5に圧縮荷重が働いて、かつ、上げ側パイロット逆止弁16に失陥が発生した場合は、シリンダ5のピストンロッド4の短縮作動によって、一対のロックレバー26、26の凸部27、27がストッパ21の一対の凹部22、22に整合する位置に到達すると、一対の凸部27、27は一対の凹部22、22にスプリング29の弾発力によって自動的にそれぞれ噛合する(
図5(b)参照)。
凸部27と凹部22とは長手方向の対辺が平行に形成されているので、噛合すると、伸長方向および短縮方向のいずれの方向にもロックレバー26とストッパ21の相対移動を阻止する状態になる。つまり、キャブ下降防止装置20はチルト用シリンダ装置3の伸長および短縮の双方を機械的に防止した状態になる。
【0064】
その後、運転者がキャブ1をチルトダウンさせようとするときは、切換レバー15cをチルトダウン側に切り換える。このとき、
図7に示されているように、切換弁15のポンプポートPが負荷ポート15bに接続され、タンクポートTが負荷ポート15aに接続される。
次に、ポンプスイッチがオンされると、モータ8によりポンプ13が駆動され、ポンプ13の圧油が下げ側油路12に圧送される。下げ側油路12に圧送された圧油はチルト用シリンダ装置3のシリンダ5の下げ側油圧室5bに下げ側パイロット逆止弁17を通じて流入し、伸長したピストンロッド4を短縮作動させることにより、キャブ1をチルトダウンさせて行く。
【0065】
この際、ピストンロッド4が短縮作動するためには、シリンダ5の上げ側油圧室5aの圧油を排出させる必要がある。
本実施形態においては、下げ側油路12の油圧が上げ側パイロット逆止弁16に設定されたパイロット圧力値以上になると、上げ側シリンダ室50の左側へパイロット通路49を経由して印加することにより、
図8において、上げ側パイロットピストン51が上げ側シリンダ室50の圧力の作用力によって右方向に移動されるため、上げ側弁体46が上げ側弁座45から離れて上げ側弁口44を開く。
図7において、上げ側パイロット逆止弁16が開くと、シリンダ5の上げ側油圧室5aの圧油は上げ側パイロット逆止弁16および切換弁15の負荷ポート15aを経由してタンク14に排出される。したがって、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は短縮作動してキャブ1をチルトダウンさせることができる。
【0066】
以上のチルトダウン作動に際して、キャブ下降防止装置20のロックレバー26の凸部27がストッパ21の凹部22に噛合したままの状態(
図5(b)参照)であると、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は短縮することができない。したがって、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の短縮が始まる以前に、ロックレバー26のストッパ21との噛合を解除させる必要がある。
本実施形態においては、切換弁15がチルトダウン側に切り換えられると、ロックレバー26のストッパ21との噛合が解除用シリンダ装置30によって自動的に解除されるため、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4はキャブ下降防止装置20に妨げられずに短縮することができる。
【0067】
すなわち、切換弁15がチルトダウン側に切り換えられると、シャトル弁80において、弁体88が弁座85に着座することにより、下げ側油路12の圧力が解除用油路37を経由して解除用シリンダ装置30に供給され、その結果、一対のプランジャ34、34が押し広げられるので、一対のロックレバー26、26がピン28を中心にトーションスプリング29に抗して押し開かれる。したがって、ロックレバー26の凸部27のストッパ21の凹部22との噛合は自動的に解除される。
【0068】
以上のようにして噛合が自動的に解除された後も、下げ側油路12の油圧が設定値以上を維持している限り、解除用シリンダ装置30はロックレバー26のストッパ21との噛合解除状態を維持することになる。つまり、チルト用シリンダ装置3はキャブ下降防止装置20に妨げられることなく、キャブ1をチルトダウンさせて行くことができる。
【0069】
以上のようにしてキャブ1がチルトダウンして行きキャブ1が所定位置まで下降すると、キャブロック装置94のロックピンにラッチが噛合する。
次に、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4が最小短縮ストローク位置に達すると、ストロークスイッチ(図示せず)が自動的にオフになる。
そして、図示しない変速レバーをいずれかの変速位置にシフトすれば、ニュートラルスイッチ(図示せず)がオフになり、走行可能な通常時の状態に戻る。
【0070】
図9は本発明の第三実施形態を示している。
本実施形態が第一実施形態と異なる主な点は、ロック部材26A、トーションスプリング29Aおよび解除用シリンダ装置30Aである。
ロック部材26Aは対辺27aと27aの間隔(幅)が凹部22の対辺22aと22aの間隔(幅)と略等しい長方形平板形状に形成されており、一対がシリンダ5の先端部外周にそれぞれ水平に固定されている。
トーションスプリング29Aはストッパ21をシリンダ5の方向(閉じ方向)に付勢するように、ピストンロッド4先端に架設されたピン4Aに外装されている。
解除用シリンダ装置30Aはロック部材26Aを挟んでストッパ21の反対側に配置されて、シリンダ5に固定されており、プランジャ34によって進退されるリリースレバー35を備えている。リリースレバー35はプランジャ34の前進時にシリンダ5ら離反させる方向(開き方向)に押すように設けられている。また、第一実施形態の解除用シリンダ装置30においてはプランジャ34を2本使用しているが、本実施形態の解除用シリンダ装置30Aにおいてはプランジャ34は1本のみ使用する。
【0071】
次に、ストッパ21やロック部材26Aやトーションスプリング29Aおよび解除用シリンダ装置30Aの作用を説明する。なお、油圧回路は
図2参照。
【0072】
チルトアップの作動に際して、ストッパ21は
図9(b)に示されているように開いた状態を維持しながら、シリンダ5に対して移動して行く。すなわち、下げ側油路12の圧力が解除用シリンダ装置30Aに解除用油路37を経由して印加されることにより、ストッパ21はプランジャ34によって押し上げられるので、ストッパ21は凹部22のロック部材26Aと噛合することなく移動して行く。したがって、チルト用シリンダ装置3はキャブ下降防止装置20に妨げられることなく、キャブ1をチルトアップさせて行くことができる。
【0073】
キャブ1がチルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の伸長作動によってチルトアップされて行き、所望の高さ(例えば、キャブが50度チルトされた高さ)に到達して、運転者がポンプスイッチをオフすると、ポンプ13が停止する。
ポンプ13が停止し、下げ側油路12の圧力が低下すると、下げ側油路12の下げ側パイロット逆止弁17とポンプ13間の圧力が解除用油路37を経由して印加した解除用シリンダ装置30Aの圧力が低下するので、プランジャ34によって押し上げられているストッパ21はトーションスプリング29Aの弾発力によって閉じられて、ロック部材26Aの上面に押接された状態になる。
この状態で、シリンダ5に引張り荷重が働いて、かつ、下げ側パイロット逆止弁17に失陥が発生した場合は、シリンダ5のピストンロッド4の伸長作動によって、または、シリンダ5に圧縮荷重が働いて、かつ、上げ側パイロット逆止弁16に失陥が発生した場合は、シリンダ5のピストンロッド4の短縮作動によって、ロック部材26Aがストッパ21の凹部22に整合する位置に到達すると、ロック部材26Aは凹部22にスプリング29の弾発力によって自動的にそれぞれ噛合する。
凹部22の対辺22a、22aとロック部材26Aの対辺27a、27aとは、ストッパ26の長手方向すなわちピストンロッド4の軸線(伸縮)方向と平行に設定されているので、噛合すると(
図9(a)参照)、伸長方向および短縮方向のいずれの方向にもロック部材26Aとストッパ21の相対移動を阻止する状態になる。すなわち、キャブ下降防止装置20はチルト用シリンダ装置3の伸長および短縮の双方を機械的に防止した状態になる。
【0074】
その後、運転者がキャブ1をチルトダウンさせようとするときは、切換レバー15cをチルトダウン側に切り換える。
このチルトダウン作動に際して、ロック部材26Aがストッパ21の凹部22に噛合したままの状態であると、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4は短縮することができない。したがって、チルト用シリンダ装置3のピストンロッド4の短縮が始まる以前に、ロックレバー26のストッパ21との噛合を解除させる必要がある。
本実施形態においては、切換弁15がチルトダウン側に切り換えられることにより、解除用シリンダ装置30Aの圧力が設定圧力以上になるために、プランジャ34がストッパ21を押し上げる。その結果、ロック部材26Aのストッパ21の凹部22との噛合は自動的に解除される。
噛合が自動的に解除された後も、下げ側油路12の油圧が設定値以上を維持している限り、解除用シリンダ装置30Aはストッパ21の凹部22とロック部材26Aとの噛合解除状態を維持することになる。すなわち、チルト用シリンダ装置3はキャブ下降防止装置20に妨げられることなく、キャブ1をチルトダウンさせて行くことができる。
【0075】
本実施形態においては、第二実施形態の油圧回路を使用してもよい。
【0076】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0077】
例えば、ロックレバーおよびストッパを付勢する弾性部材は、トーションスプリングに限らず、コイルスプリング等であってもよい。