(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797029
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】スイッチャー
(51)【国際特許分類】
H04N 5/262 20060101AFI20151001BHJP
H04N 5/222 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
H04N5/262
H04N5/222 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-139165(P2011-139165)
(22)【出願日】2011年6月23日
(65)【公開番号】特開2013-9070(P2013-9070A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 徹
【審査官】
大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−153974(JP,A)
【文献】
特開2011−082633(JP,A)
【文献】
特開2010−068509(JP,A)
【文献】
特開2006−019948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222−5/28
H04N 7/10
H04N 7/14−7/173
H04N 7/20−7/56
H04N21/00−21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HDMI(High−Definition Multimedia Interface:登録商標)規格に準拠すると共にソース機器を接続して映像信号及び音声信号を入力できるように構成された少なくとも1つの入力端子と、HDMI規格に準拠すると共に出力機器を接続できるように構成された複数の出力端子と、これらの入力端子と出力端子との間に介装されて該入力端子からの映像信号及び音声信号を出力する出力端子を切り換えることができる信号切換部と、を備えたスイッチャーにおいて、
HDCP(High−bandwidth Digital Contents Protection)対応の出力機器がどの出力端子に接続されているかの機器情報を入力するために操作者が使う機器情報入力部と、
前記入力端子に接続されたソース機器についての情報に基づいてHDCP認証の要否を判定する認証要否判定部と、
該認証要否判定部がHDCP認証をすべきと判定した場合に、前記機器情報入力部からの機器情報に基づきHDCP対応の出力機器について認証処理を行う認証処理実行部と、
を備えたことを特徴とするスイッチャー。
【請求項2】
前記認証処理実行部は、HDCP対応である出力機器に対して認証処理を行い、HDCP対応でない出力機器に対しては認証処理は行わないように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチャー。
【請求項3】
前記機器情報入力部は、オンスクリーンメニューを表示するように構成された前記スイッチャーのモニター画面、該スイッチャーのスイッチ又はボタン、或いはパーソナルコンピュータからのコマンドを受信するように構成されたインターフェースである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスイッチャー。
【請求項4】
HDCP対応の出力機器がどの出力端子に接続されているかの機器情報を表示する機器情報表示部、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスイッチャー。
【請求項5】
前記機器情報入力部から入力された機器情報を記憶する機器情報記憶部、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスイッチャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの入力端子と複数の出力端子とを備えていて該入力端子からの映像信号及び音声信号を出力する出力端子を切り換えることができるように構成されたスイッチャーに係り、詳しくは、該入力端子及び該出力端子がHDMI(High−Definition Multimedia Interface)規格に準拠しているスイッチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、学校や病院やショッピングセンターなどにおいては、映像信号や音声信号を出力するための機器(以下、「ソース機器」とする)と複数のディスプレイ装置等(以下、「出力機器」とする)との間にスイッチャーを介装させておいて、該映像信号や音声信号の伝達経路を適宜切り換えることが行われており、そのスイッチャーについては種々の構造のものが提案されていた(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
ところで、このようなソース機器と出力機器との間の接続はアナログ接続が一般的であったが、アナログ接続はノイズに弱くて信号も劣化し易いので、近年は、そのような問題が無いHDMI(High−Definition Multimedia Interface)規格によるデジタル接続が使用され始めている。そして、このようなデジタル接続の場合には不正コピーの恐れがあることから、HDCP(High−bandwidth Digital Contents Protection)が採用され、ソース機器と出力機器との間で認証が成功した場合のみ信号の送受信ができるように構成されていた(例えば、特許文献2参照。)。もちろんソース機器と出力機器の間にスイッチャーが配置されている場合も、それぞれの接続においてHDCP認証が必要になる。
【0004】
具体的には、HDCP対応のソース機器を1台でも入力側に接続すると、スイッチャーが各出力機器にアクセスし、応答が無かった出力機器についてはHDCP認証を行わず、応答があった出力機器のみについてHDCP認証を行うという方法でHDCP認証処理を完了するように構成されていた。例えば、
図3に示す例では、スイッチャー10の入力端子A
31にHDCP対応のBDプレイヤー(ブルーレイディスクプレイヤー)C
31が接続され、入力端子A
32にHDCP対応のパーソナルコンピュータC
32が接続され、入力端子A
33にHDCP非対応の会議録画用カメラC
33が接続され、入力端子A
34にHDCP非対応のパーソナルコンピュータC
34が接続され、出力端子B
31にHDCP対応のディスプレイD
31が接続され、出力端子B
32にHDCP対応の2台目のディスプレイD
32が接続され、出力端子B
33にHDCP非対応のTV会議システムD
33が接続され、出力端子B
34にHDCP非対応の録画機器D
34が接続されているが、入力端子A
31に接続したブルーレイディスクプレイヤーC
31の映像を出力端子B
31,…に分配して出力する場合、スイッチャー10は各出力端子B
31,…に接続されている出力機器D
31,…にそれぞれアクセスし、応答が無かった出力機器についてはHDCP認証を行わずに、応答があった出力機器についてHDCP認証を行い、HDCP認証処理を完了することとなる。これとは別に、応答が無かった出力機器についても、永遠にHDCP認証を繰り返させるという方法もあることはある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−172800号公報
【特許文献2】特開2008−219796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の出力機器D
31,…が長いケーブルを介してスイッチャー10に接続されているような場合には、上述のようにスイッチャー10が各出力機器D
31,…からの応答を受けてHDCP認証を行う際にノイズを拾ってしまってスイッチャー10が誤った判断を行ってしまうというおそれがあった。
【0007】
一方、HDCP認証が正常に完了して所定の出力機器D
31,D
32に音声信号や映像信号を出力している状態であっても、出力機器D
31,…の状態が変化した場合(例えば、電源をON/OFFしたり、入力切り換えを行ったりした場合)には、再度のHDCP認証が必要となるが、上述のようなHDCP認証方法を採用する場合には各出力機器D
31,…に再度アクセスして応答の有無を検知することとなる。その結果、HDCP対応の出力機器D
31,D
32の音声や映像だけでなく、HDCP非対応の出力機器D
33,D
34の音声や映像までもが一旦途切れてしまい、その映像や音声を楽しんでいる人達に不快感を与えてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の問題を解消することのできるスイッチャーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、
図1に例示するものであって、HDMI(High−Definition Multimedia Interface)規格に準拠すると共にソース機器(C11,…)を接続して映像信号及び音声信号を入力できるように構成された少なくとも1つの入力端子(A11,…)と、HDMI規格に準拠すると共に出力機器(D11,…)を接続できるように構成された複数の出力端子(B11,…)と、これらの入力端子(A11,…)と出力端子(B11,…)との間に介装されて該入力端子(A11,…)からの映像信号及び音声信号を出力する出力端子(B11,…)を切り換えることができる信号切換部(2)と、を備えたスイッチャー(1)において、
HDCP(High−bandwidth Digital Contents Protection)対応の出力機器(D11,…)がどの出力端子(B11,…)に接続されているかの機器情報を入力するため
に操作者が使う機器情報入力部(3)と、
前記入力端子(A11,…)に接続されたソース機器(C11,…)についての情報に基づいてHDCP認証の要否を判定する認証要否判定部(4)と、
該認証要否判定部(4)がHDCP認証をすべきと判定した場合に、前記機器情報入力部(3)からの機器情報に基づきHDCP対応の出力機器(D11,…)について認証処理を行う認証処理実行部(5)と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記認証処理実行部(5)が、HDCP対応である出力機器(D
11,…)に対して認証処理を行い、HDCP対応でない出力機器(D
11,…)に対しては認証処理は行わないように構成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記機器情報入力部(3)が、オンスクリーンメニューを表示するように構成された前記スイッチャー(1)のモニター画面、該スイッチャー(1)のスイッチ又はボタン、或いはパーソナルコンピュータ(不図示)からのコマンドを受信するように構成されたインターフェースであることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、HDCP対応の出力機器(D
11,…)がどの出力端子(B
11,…)に接続されているかの機器情報を表示する機器情報表示部(6)、を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記機器情報入力部(3)から入力された機器情報を記憶する機器情報記憶部(7)、を備えたことを特徴とする。
【0014】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至5に係る発明によれば、HDCP対応の出力機器がどの出力端子に接続されているかの機器情報は前記機器情報入力部によって操作者により入力されるようになっているので、スイッチャーが各出力機器にアクセスする必要が無く、従来のようにノイズを拾ってしまうことも無く、正しい判断を行うことができる。また、再度のHDCP認証を行う場合においても、HDCP非対応の出力機器にアクセスする必要が無いため、該出力機器の音声や映像が途切れることも無く、その映像や音声を楽しんでいる人達に不快感を与えてしまうことも無い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係るスイッチャーの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るスイッチャーの使用態様の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、従来のスイッチャーの問題点を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1及び
図2に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本発明に係るスイッチャーは、
図1に符号1で例示するものであって、
・ HDMI規格に準拠すると共にソース機器(映像信号や音声信号を出力できる機器であって、パーソナルコンピュータやブルーレイディスクプレイヤーやカメラなど)C
11,…を接続して映像信号及び音声信号を入力できるように構成された少なくとも1つの入力端子A
11,…と、
・ HDMI規格に準拠すると共に出力機器(例えば、ディスプレイや録画機器など)D
11,…を接続できるように構成された複数の出力端子B
11,…と、
・ これらの入力端子A
11,…と出力端子B
11,…との間に介装されて該入力端子A
11,…からの映像信号及び音声信号を出力する出力端子B
11,…を切り換えることができる(つまり、前記入力端子A
11,…と前記出力端子B
11,…との間の信号伝達経路を切り換える)信号切換部2と、
を備えている。また、このスイッチャー1は、
・ HDCP対応の出力機器D
11,…がどの出力端子B
11,…に接続されているかの機器情報を操作者が入力するための機器情報入力部3と、
・ 前記入力端子A
11,…に接続されたソース機器C
11,…についての情報に基づいてHDCP認証の要否を判定する認証要否判定部4と、
・ 該認証要否判定部4がHDCP認証をすべきと判定した場合に、前記機器情報入力部3からの機器情報に基づきHDCP対応の出力機器D
11,…について認証処理を行う認証処理実行部5と、
を備えている。そして、該認証処理実行部5は、
・ HDCP対応である出力機器(例えば、D
12,D
13)に対してのみ前記認証処理を行い、
・ HDCP対応でない出力機器(例えば、D
11)に対しては前記認証処理は行わない、
ように構成されている。
【0019】
本発明によれば、HDCP対応の出力機器D
11,…がどの出力端子B
11,…に接続されているかの機器情報は前記機器情報入力部3によって操作者により入力されるようになっているので、スイッチャー1が各出力機器D
11,…にアクセスする必要が無く、従来のようにノイズを拾ってしまうことも無く、正しい判断を行うことができる。また、再度のHDCP認証を行う場合においても、HDCP非対応の出力機器D
23,D
24にアクセスする必要が無いため、該出力機器D
33,D
34の音声や映像が途切れることも無く、その映像や音声を楽しんでいる人達に不快感を与えてしまうことも無い。
【0020】
例えば、
図2に示す例では、スイッチャー1の入力端子A
21にHDCP対応のBDプレイヤー(ブルーレイディスクプレイヤー)C
21が接続され、入力端子A
22にHDCP対応のパーソナルコンピュータC
22が接続され、入力端子A
23にHDCP非対応の会議録画用カメラC
23が接続され、入力端子A
24にHDCP非対応のパーソナルコンピュータC
24が接続され、出力端子B
21にHDCP対応のディスプレイD
21が接続され、出力端子B
22にHDCP対応の2台目のディスプレイD
22が接続され、出力端子B
23にHDCP非対応のTV会議システムD
23が接続され、出力端子B
24にHDCP非対応の録画機器D
24が接続されているが、この場合は、操作者は、前記機器情報入力部3を使って機器情報(つまり、出力端子B
21,B
22に接続されている出力機器D
21,D
22がHDCP対応であり、出力端子B
23,B
24に接続されている出力機器D
23,D
24がHDCP非対応であるという機器情報)を入力する。そして、前記認証要否判定部4がHDCP認証をすべきと判定した場合に、認証処理実行部5は前記機器情報入力部3からの機器情報に基づき2つの出力機器D
21,D
22についてのみ認証処理を行う。そして、前記信号切換部2は、前記認証処理実行部5の認証処理が完了したという信号を受けた場合に入力端子側からの映像信号及び音声信号を出力端子側(2つの出力機器D
21,D
22)に送信することとなる。あるいはHDCP非対応機器には最初から映像・音声信号を出力しないようにしてもよい。代わりにHDCP非対応の旨の表示をするための信号を送るようにしてもよい。
【0021】
ところで、前記機器情報入力部3としては、
・ オンスクリーンメニューを表示するように構成された前記スイッチャー1のモニター画面、
・ 該スイッチャー1のスイッチ(例えば、トグルスイッチ)又はボタン、
・ パーソナルコンピュータ(不図示)からのコマンドを受信するように構成されたインターフェース、或いは
・ メディア(前記機器情報が保存されたSDカードやUSBメモリー等)が挿入されるように構成されたメディア・インタフェース、
などの公知の手段を挙げることができる。
【0022】
なお、前記スイッチャー1には、HDCP対応の出力機器がどの出力端子に接続されているかの機器情報を表示する機器情報表示部6を設けておくと良い。例えば、
・ スイッチャー1のモニター画面を機器情報表示部として、該モニター画面に該機器情報を表示するようにしても、
・ 各出力端子B
11,の近傍やその他の箇所にランプ(LEDランプ)を設けておいて前記機器情報入力部3により入力された情報に基づき点灯させるようにしても、
どちらでも良い。
【0023】
また、前記機器情報入力部3から入力された機器情報を記憶する機器情報記憶部7を設けておいても良い。
【0024】
さらに、HDCPで保護された信号をHDCP非対応の出力機器に出力するようにクロスポイントが設定されたときは、その出力端子からは信号を出力しないように前記スイッチャー1を構成しておくと良い。すなわち、HDCP非対応の出力機器には、HDCPで保護されていない信号(つまり、HDCPが採用されないアナログ信号や、HDCPで保護されていないデジタル信号)のみが送られるように構成しておくと良い。
【0025】
またさらに、上述の認証要否判定部4による処理は公知の方法で行うようにすると良い。すなわち、前記ソース機器C
11,…のいずれかが、自身が保持する秘密鍵AKSVと擬似乱数値Anとを前記認証要否判定部4に送信すると、該認証要否判定部4は該秘密鍵AKSVと擬似乱数値Anを含む認証開始メッセージを前記認証処理実行部5に送信する。また、該認証要否判定部4は、前記秘密鍵AKSV等を送信してきた前記ソース機器C
11,…に対して秘密鍵BKSVやリピータビットを送信し、所定の処理を完了するようにすると良い。
【符号の説明】
【0026】
1 スイッチャー
2 信号切換部
3 機器情報入力部
4 認証要否判定部
5 認証処理実行部
6 機器情報表示部
7 機器情報記憶部
A
11,… 入力端子
B
11,… 出力端子
C
11,… ソース機器
D
11,… 出力機器