(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モータ油圧低減部は、前記所定条件が満たされたときには、前記上部旋回体の旋回の定常速度が維持され、且つ、前記上部旋回体の旋回の加速度が低減されるように、前記油圧モータの駆動油圧を低減させる、
請求項1又は2に記載の油圧ショベル。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは、ブームを含む作業機を備える。ブームは、油圧シリンダによって駆動される。油圧シリンダは、油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される。また、油圧ショベルは、上部旋回体と下部車体とを備える。上部旋回体は、油圧モータによって駆動されることにより旋回する。油圧モータは、油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される。例えば、特許文献1に開示されている従来の油圧ショベルでは、油圧シリンダと油圧モータとは、油圧ポンプに対して並列に接続されている。
【0003】
油圧ショベルでは、ブーム上げ操作と旋回操作とが同時に行われることがある。例えば、溝を掘削する作業では、油圧ショベルは、ブームを上昇させながら旋回して、掘削した土砂を車両の横に置く。或いは、ダンプ積作業では、油圧ショベルは、ブームを上昇させながら旋回して、油圧ショベルの横に停車しているダンプトラックに土砂を積み込む。このようにブーム上げ操作と旋回操作とが同時に行われるときには、上部旋回体が、ある位置まで移動するまでに要する時間とその時間でのブームの上昇量との関係が、適切に調整されていることが必要である。例えば、ダンプ積作業の場合には、上部旋回体がダンプトラックのある位置まで旋回したときに、バケットがダンプトラックの荷台よりも高い位置に到達しているようにブームが上昇していることが必要である。
【0004】
上述した従来の油圧ショベルでは、油圧シリンダと油圧モータとは、油圧ポンプに対して並列に接続されている。このため、ブーム上げ操作と旋回操作とが同時に行われたときには、ブームシリンダを駆動する油圧と同じ油圧で旋回モータが駆動される。これにより、上部旋回体の旋回時間と、この旋回時間でのブーム上昇量とが所定の関係になるように同期させることができる。
【0005】
一方、特許文献2に示すように、近年、油圧シリンダに作動油を供給するための油圧閉回路を備える油圧ショベルが提案されている。油圧回路が閉回路であることにより、作業機の位置エネルギーが回生される。その結果、油圧ポンプを駆動する原動機の燃費を低減することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に示すようなブームシリンダを駆動する油圧閉回路(以下「ブーム回路と呼ぶ」)を、特許文献1に示すような油圧モータを駆動する油圧回路(以下「旋回回路と呼ぶ」)から独立して配置する場合、次のような問題が生じる。
【0008】
ブーム回路と旋回回路とが互いに独立した回路である場合、旋回モータは旋回回路に設けられた旋回リリーフ弁の設定圧によって駆動されることになる。しかし、旋回リリーフ弁の設定圧は、ブーム上げ操作と旋回操作とが同時に行われるときのブーム駆動圧よりも大きい。例えば、旋回リリーフ弁の設定圧は約30MPaである。これに対して、ブーム駆動圧は、バケットに積載した土砂の有無や土砂の量により変動するが、約13〜17MPaである。従って、特許文献2に示すようなブーム回路を、従来の油圧ショベルの油圧回路に適用した場合には、旋回速度が従来の油圧ショベルの旋回速度よりも速すぎるため、油圧ショベルがダンプトラックの位置まで旋回したときにバケットが必要な高さまで上昇していないという事態が生じる。
【0009】
本発明の課題は、ブーム回路を独立化した油圧回路を採用した油圧ショベルにおいて、上部旋回体の旋回時間と、この旋回時間でのブーム上昇量とを同期させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る油圧ショベルは、下部車体と、上部旋回体と、作業機と、第1油圧ポンプと、油圧シリンダと、第1油圧回路と、第2油圧ポンプと、油圧モータと、第2油圧回路と、ブーム操作部材と、旋回操作部材と、モータ油圧低減部と、を備える。上部旋回体は、下部車体上に載置され、下部車体に対して旋回可能に設けられる。作業機は、ブームを含む。ブームは、上部旋回体に揺動可能に取り付けられる。第1油圧ポンプは、作動油を吐出する。油圧シリンダは、第1油圧ポンプから吐出された作動油によってブームを駆動する。第1油圧回路は、第1油圧ポンプと油圧シリンダとを接続し、第1油圧ポンプと油圧シリンダとの間で閉回路を構成する。第2油圧ポンプは、作動油を吐出する。油圧モータは、第2油圧ポンプから吐出された作動油によって上部旋回体を旋回させる。第2油圧回路は、第1油圧回路から独立して設けられ、第2油圧ポンプと油圧モータとを接続する。ブーム操作部材は、ブームを操作するための部材である。旋回操作部材は、上部旋回体の旋回を操作するための部材である。モータ油圧低減部は、所定条件が満たされたときには、油圧モータの駆動油圧を低減させる。所定条件は、ブームを上昇させるブーム操作部材の操作と、上部旋回体を旋回させる旋回操作部材の操作とが共に行われ、且つ、ブーム操作部材の操作量が所定の閾値以上であることである。
【0011】
本発明の第2の態様に係る油圧ショベルは、第1の態様の油圧ショベルであって、モータ油圧低減部は、所定条件が満たされたときには、上部旋回体の旋回の加速度が低減されるように、油圧モータの駆動油圧を低減させる。
【0012】
本発明の第3の態様に係る油圧ショベルは、第1又は第2の態様の油圧ショベルであって、モータ油圧低減部は、所定条件が満たされたときには、上部旋回体の旋回の定常速度が維持され、且つ、上部旋回体の旋回の加速度が低減されるように、油圧モータの駆動油圧を低減させる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る油圧ショベルは、第1から第3の態様のいずれかの油圧ショベルであって、モータ油圧低減部は、油圧調整機構と設定圧制御部とを含む。油圧調整機構は、第2油圧回路に設けられる。設定圧制御部は、油圧調整機構を制御する。油圧調整機構は、油圧モータの駆動油圧が所定の設定圧を超えないように第2油圧回路の油圧を調整する。設定圧は可変である。設定圧制御部は、所定条件が満たされたときには、設定圧を低減させる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る油圧ショベルは、第4の態様の油圧ショベルであって、油圧調整機構は、設定圧を、所定の第1設定圧と第2設定圧とに切り換え可能なリリーフ弁である。第2設定圧は、第1設定圧よりも低い。設定圧制御部は、所定条件が満たされたときには、設定圧を第1設定圧から第2設定圧に切り換える。
【0015】
本発明の第6の態様に係る油圧ショベルは、第4の態様の油圧ショベルであって、油圧調整機構は、第1リリーフ弁と第2リリーフ弁とを有する。第1リリーフ弁は、油圧モータの駆動油圧が所定の第1設定圧を超えないように第2油圧回路の油圧を調整する。第2リリーフ弁は、油圧モータの駆動油圧が、第1設定圧よりも低い第2設定圧を超えないように第2油圧回路の油圧を調整する。設定圧制御部は、所定条件が満たされていないときには、第1リリーフ弁により第2油圧回路の油圧を調整する、設定圧制御部は、所定条件が満たされたときには、第2リリーフ弁により第2油圧回路の油圧を調整する。
【0016】
本発明の第7の態様に係る油圧ショベルは、第5又は第6の態様の油圧ショベルであって、第2設定圧は、ブームを上昇させるときの油圧シリンダの駆動油圧と同じである。
【0017】
本発明の第8の態様に係る油圧ショベルは、第4の態様の油圧ショベルであって、シリンダ油圧検出部をさらに備える。シリンダ油圧検出部は、油圧シリンダの駆動油圧を検出する。油圧調整機構は、設定圧を連続的に変更可能なリリーフ弁である。設定圧制御部は、シリンダ油圧検出部が検出した油圧シリンダの駆動油圧に応じて設定圧を変更する。
【0018】
本発明の第9の態様に係る油圧ショベルは、第4から第8の態様のいずれかの油圧ショベルであって、油圧制御弁をさらに備える。油圧制御弁は、第2油圧回路に設けられ、油圧モータの駆動油圧を制御する。油圧調整機構は、第2油圧回路において、油圧制御弁よりも、第2油圧ポンプから油圧モータへ向かう作動油の流れにおける下流に位置する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様に係る油圧ショベルでは、所定条件が満たされたときに、油圧モータの駆動油圧が低減される。所定条件は、ブームを上昇させるブーム操作部材の操作と、上部旋回体を旋回させる旋回操作部材の操作とが共に行われ(以下、「旋回複合操作」と呼ぶ)、且つ、ブーム操作部材の操作量が所定の閾値以上であることである。従って、旋回複合操作時に、油圧モータの駆動油圧を油圧シリンダの駆動油圧に近づけることができる。これにより、上部旋回体の旋回時間と、この旋回時間でのブーム上昇量とを同期させることができる。また、ブーム操作部材の操作量が所定の閾値より小さいときには、所定条件が満たされないので、モータ油圧低減部による油圧モータの駆動油圧の低減が行われない。このため、旋回複合操作が行われるときであってもブームを小さく上昇させる作業を行うときには、旋回力を維持することができる。
【0020】
本発明の第2の態様に係る油圧ショベルでは、所定条件が満たされたときには、上部旋回体の旋回の加速度が低減される。これにより、上部旋回体の旋回時間と、この旋回時間でのブーム上昇量とを同期させることができる。
【0021】
本発明の第3の態様に係る油圧ショベルでは、所定条件が満たされたときには、上部旋回体の旋回の定常速度が維持され、且つ、上部旋回体の旋回の加速度が低減される。これにより、上部旋回体の旋回時間と、この旋回時間でのブーム上昇量とを同期させることができる。また、旋回の定常速度が低下することが抑えられる。
【0022】
本発明の第4の態様に係る油圧ショベルでは、油圧調整機構の設定圧を低減させることにより、油圧モータの駆動油圧を低減させることができる。
【0023】
本発明の第5の態様に係る油圧ショベルでは、リリーフ弁の設定圧を第1設定圧から第2設定圧に切り換えることにより、油圧モータの駆動油圧を低減させることができる。すなわち、所謂、2段リリーフ弁を用いることにより、油圧モータの駆動油圧を低減させるための構成を実現することができる。
【0024】
本発明の第6の態様に係る油圧ショベルでは、所定条件が満たされていないときには、第1リリーフ弁により第2油圧回路の油圧が調整される。所定条件が満たされたときには、第2リリーフ弁により第2油圧回路の油圧が調整される。すなわち、2つのリリーフ弁を用いることにより、油圧モータの駆動油圧を低減させるための構成を実現することができる。
【0025】
本発明の第7の態様に係る油圧ショベルでは、第2設定圧は、ブームを上昇させるときの油圧シリンダの駆動油圧と同じである。このため、油圧モータの駆動油圧を、ブームを上昇させるときの油圧シリンダの駆動油圧に近似させることができる。
【0026】
本発明の第8の態様に係る油圧ショベルでは、シリンダ油圧検出部が検出した油圧シリンダの駆動油圧に応じて設定圧が変更される。このため、油圧モータの駆動油圧を、油圧シリンダの駆動油圧に応じた値に低減することができる。
【0027】
本発明の第9の態様に係る油圧ショベルでは、油圧調整機構は、第2油圧回路において、油圧制御弁よりも下流に位置する。このため、油圧調整機構によって、油圧制御弁から独立して、油圧モータの駆動油圧を変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る油圧ショベルについて説明する。
図1は、油圧ショベル100の斜視図である。油圧ショベル100は、車両本体1と作業機2とを有する。車両本体1は、上部旋回体3と運転室4と下部車体5とを有する。上部旋回体3は、下部車体5上に載置されている。上部旋回体3は、下部車体5に対して旋回可能に設けられる。上部旋回体3は、後述するエンジンや油圧ポンプなどの装置を収容している。運転室4は上部旋回体3の前部に載置されている。運転室4内には、後述するブーム操作装置及び旋回操作装置が配置される。下部車体5は履帯5a,5bを有しており、履帯5a,5bが回転することにより油圧ショベル100が走行する。
【0030】
作業機2は、車両本体1の前部に取り付けられており、ブーム90とアーム91とバケット92とブームシリンダ93とアームシリンダ94とバケットシリンダ95とを有する。ブーム90の基端部は、ブームピン96を介して上部旋回体3に揺動可能に取り付けられている。アーム91の基端部は、アームピン97を介してブーム90の先端部に揺動可能に取り付けられている。アーム91の先端部には、バケットピン98を介してバケット92が揺動可能に取り付けられている。ブームシリンダ93とアームシリンダ94とバケットシリンダ95とは、それぞれ油圧によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ93はブーム90を駆動する。アームシリンダ94は、アーム91を駆動する。バケットシリンダ95は、バケット92を駆動する。
【0031】
図2は、油圧ショベル100が備える油圧駆動システム1の構成を示すブロック図である。油圧駆動システム1は、エンジン11と、第1油圧ポンプ12と、第1油圧回路13と、上述したブームシリンダ93と、第2油圧ポンプ14と、油圧モータ15と、第2油圧回路16と、ポンプコントローラ17とを有する。
【0032】
エンジン11は、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ14とを駆動する。エンジン11は、本発明の駆動源に相当する。エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンであり、燃料噴射装置18からの燃料の噴射量が調整されることにより、エンジン11の出力が制御される。燃料噴射量の調整は、燃料噴射装置18がエンジンコントローラ19によって制御されることで行われる。なお、エンジン11の実回転速度は、回転速度センサ21にて検出され、その検出信号は、エンジンコントローラ19およびポンプコントローラ17にそれぞれ入力される。
【0033】
エンジンコントローラ19は、燃料噴射装置18を制御することによりエンジン11の出力を制御する。エンジンコントローラ19には、設定された目標エンジン回転速度および作業モードに基づいて設定されるエンジン出力トルク特性がマップ化されて記憶されている。エンジン出力トルク特性は、エンジン11の出力トルクと回転速度との関係を示す。エンジンコントローラ19は、エンジン出力トルク特性に基づいて、エンジン11の出力を制御する。
【0034】
第1油圧ポンプ12は、作動油を吐出する。ブームシリンダ93は、第1油圧ポンプ12から吐出された作動油によってブーム90を駆動する。第1油圧ポンプ12は、第1ブームポンプ22と第2ブームポンプ23とを有する。第1ブームポンプ22及び第2ブームポンプ23は、エンジン11によって駆動され、作動油を吐出する。
【0035】
第1ブームポンプ22は、可変容量型の油圧ポンプである。第1ブームポンプ22の傾転角が制御されることにより、第1ブームポンプ22の吐出流量が制御される。第1ブームポンプ22の傾転角は、第1ポンプ流量制御装置25によって制御される。第1ポンプ流量制御装置25は、ポンプコントローラ17からの指令信号に基づいて、第1ブームポンプ22の傾転角を制御することにより、第1ブームポンプ22の吐出流量を制御する。第1ブームポンプ22は、2方向吐出型の油圧ポンプである。具体的には、第1ブームポンプ22は、第1ポンプポート22aと第2ポンプポート22bとを有する。第1ブームポンプ22は、第1吐出状態と第2吐出状態とに切り換え可能である。第1吐出状態では、第2ポンプポート22bに作動油が供給され、第1ブームポンプ22は、第1ポンプポート22aから作動油を吐出する。第2吐出状態では、第1ポンプポート22aに作動油が供給され、第1ブームポンプ22は、第2ポンプポート22bから作動油を吐出する。
【0036】
第2ブームポンプ23は、可変容量型の油圧ポンプである。第2ブームポンプ23の傾転角が制御されることにより、第2ブームポンプ23の吐出流量が制御される。第2ブームポンプ23の傾転角は、第2ポンプ流量制御装置26によって制御される。第2ポンプ流量制御装置26は、ポンプコントローラ17からの指令信号に基づいて第2ブームポンプ23の傾転角を制御することにより、第2ブームポンプ23の吐出流量を制御する。第2ブームポンプ23は、2方向吐出型の油圧ポンプである。具体的には、第2ブームポンプ23は、第1ポンプポート23aと第2ポンプポート23bとを有する。第2ブームポンプ23は、第1ブームポンプ22と同様に、第1吐出状態と第2吐出状態とに切り換え可能である。第1吐出状態では、第2ポンプポート23bに作動油が供給され、第2ブームポンプ23は、第1ポンプポート23aから作動油を吐出する。第2吐出状態では、第1ポンプポート23aに作動油が供給され、第2ブームポンプ23は、第2ポンプポート23bから作動油を吐出する。
【0037】
ブームシリンダ93は、第1ブームポンプ22及び第2ブームポンプ23から吐出された作動油によって駆動される。ブームシリンダ93は、シリンダロッド93aとシリンダチューブ93bとを有する。シリンダロッド93aは、シリンダチューブ93bの内部を第1室93cと第2室93dとに区画している。ブームシリンダ93は、第1室93cと第2室93dに対する作動油の供給と排出とが切り換えられることにより伸縮する。具体的には、第1室93cに作動油が供給され、第2室93dから作動油が排出されることによって、シリンダロッド93aが伸長する。第2室93dに作動油が供給され、第1室93cから作動油が排出されることによって、シリンダロッド93aは収縮する。なお、シリンダロッド93aの第1室93cにおける受圧面積は、シリンダロッド93aの第2室93dにおける受圧面積よりも大きい。従って、ブームシリンダ93を伸長させるときには、第2室93dから排出される作動油よりも多量の作動油が第1室93cに供給される。また、ブームシリンダ93を収縮させるときには、第2室93dに供給される作動油よりも多量の作動油が第1室93cから排出される。
【0038】
第1油圧回路13は、第1ブームポンプ22と、第2ブームポンプ23と、ブームシリンダ93とに接続されている。第1油圧回路13は、第1油圧ポンプ12とブームシリンダ93との間で閉回路を構成する。具体的には、第1油圧回路13は、第1ブーム流路27と、第2ブーム流路28とを有する。第1ブーム流路27は、ブームシリンダ93の第1室93cと第1ブームポンプ22の第1ポンプポート22aとを接続する。第1ブーム流路27は、ブームシリンダ93の第1室93cに作動油を供給する、或いは、ブームシリンダ93の第1室93cから作動油を回収するための流路である。第1ブーム流路27は、第2ブームポンプ23の第1ポンプポート23aにも接続される。従って、第1ブーム流路27には、第1ブームポンプ22と第2ブームポンプ23との両方からの作動油が供給される。第2ブーム流路28は、ブームシリンダ93の第2室93dと第1ブームポンプ22の第2ポンプポート22bとに接続される。第2ブーム流路28は、ブームシリンダ93の第2室93dに作動油を供給する、或いは、ブームシリンダ93の第2室93dから作動油を回収するための流路である。なお、第2ブームポンプ23の第2ポンプポート23bは、作動油タンク29に接続される。従って、第2ブーム流路28には、第1ブームポンプ22からの作動油が供給される。第1油圧回路13は、第1ブーム流路27と第2ブーム流路28とによって、第1油圧ポンプ12とブームシリンダ93との間で閉回路を構成している。
【0039】
油圧駆動システム1は、チャージポンプ31をさらに備える。チャージポンプ31は、第1油圧回路13に作動油を補充するための油圧ポンプである。チャージポンプ31は、エンジン11によって駆動されることにより作動油を吐出する。チャージポンプ31は、固定容量型の油圧ポンプである。第1油圧回路13は、チャージ流路32をさらに有する。チャージ流路32は、チェック弁33aを介して第1ブーム流路27に接続されている。チェック弁33aは、第1ブーム流路27の油圧がチャージ流路32の油圧よりも低くなったときに開かれる。チャージ流路32は、チェック弁33bを介して第2ブーム流路28に接続されている。チェック弁33bは、第2ブーム流路28の油圧がチャージ流路32の油圧よりも低くなったときに開かれる。また、チャージ流路32は、チャージリリーフ弁34を介して作動油タンク29に接続されている。チャージリリーフ弁34は、チャージ流路32の油圧を所定のチャージ圧に維持する。第1ブーム流路27又は第2ブーム流路28の油圧がチャージ流路32の油圧よりも低くなると、チャージポンプ31からの作動油がチャージ流路32を介して第1ブーム流路27又は第2ブーム流路28に供給される。これにより、第1ブーム流路27及びは第2ブーム流路28の油圧が所定値以上に維持される。
【0040】
第1油圧回路13は、リリーフ流路36をさらに有する。リリーフ流路36は、チェック弁33cを介して第1ブーム流路27に接続されている。チェック弁33cは、第1ブーム流路27の油圧がリリーフ流路36の油圧よりも高くなったときに開かれる。リリーフ流路36は、チェック弁33dを介して第2ブーム流路28に接続されている。チェック弁33dは、第2ブーム流路28の油圧がリリーフ流路36の油圧よりも高くなったときに開かれる。また、リリーフ流路36は、リリーフ弁37を介してチャージ流路32に接続されている。リリーフ弁37は、リリーフ流路36の圧力を所定のリリーフ圧以下に維持する。これにより、第1ブーム流路27及び第2ブーム流路28の油圧が所定のリリーフ圧以下に維持される。
【0041】
ブームシリンダ93を伸長させるときには、第1ブームポンプ22と第2ブームポンプ23とが第1吐出状態で駆動される。これにより、第1ブームポンプ22の第1ポンプポート22aと、第2ブームポンプ23の第1ポンプポート23aとから吐出された作動油が、第1ブーム流路27を通って、ブームシリンダ93の第1室93cに供給される。また、ブームシリンダ93の第2室93dの作動油が、第2ブーム流路28を通って、第1ブームポンプ22の第2ポンプポート22bに回収される。これにより、ブームシリンダ93が伸長する。
【0042】
ブームシリンダ93を収縮させるときには、第1ブームポンプ22と第2ブームポンプ23とが第2吐出状態で駆動される。これにより、第1ブームポンプ22の第2ポンプポート22bから吐出された作動油が、第2ブーム流路28を通って、ブームシリンダ93の第2室93dに供給される。また、ブームシリンダ93の第1室93cの作動油が、第1ブーム流路27を通って、第1ブームポンプ22の第1ポンプポート22a及び第2ブームポンプ23の第1ポンプポート23aに回収される。これにより、ブームシリンダ93が収縮する。
【0043】
第2油圧ポンプ14は、エンジン11によって駆動され、作動油を吐出する。第2油圧ポンプ14から吐出された作動油は、油圧モータ15に供給される。第2油圧ポンプ14は、可変容量型の油圧ポンプである。第2油圧ポンプ14の傾転角が制御されることにより、第2油圧ポンプ14の吐出流量が制御される。第2油圧ポンプ14の傾転角は、第3ポンプ流量制御装置41によって制御される。第3ポンプ流量制御装置41は、ポンプコントローラ17からの指令信号に基づいて、第2油圧ポンプ14の傾転角を制御することにより、第2油圧ポンプ14の吐出流量を制御する。第2油圧ポンプ14は、第1ポンプポート14aと第2ポンプポート14bとを有する。第2油圧ポンプ14の第2ポンプポート14bは、作動油タンク29に接続されている。第2油圧ポンプ14の第2ポンプポート14bに作動油が供給され、第2油圧ポンプ14の第1ポンプポート14aから作動油が吐出される。
【0044】
油圧モータ15は、第2油圧ポンプ14から吐出された作動油によって駆動され、上部旋回体3を旋回させる。油圧モータ15は、第1モータポート15aと第2モータポート15bとを有する。第1モータポート15aに作動油が供給され、第2モータポート15bから作動油が排出されることにより、油圧モータ15は、上部旋回体3を右回りに旋回させる方向(以下、「右旋回方向」と呼ぶ)に駆動される。また、第2モータポート15bに作動油が供給され、第1モータポート15aから作動油が排出されることにより、油圧モータ15は、上部旋回体3を左回りに旋回させる方向(以下、「左旋回方向」と呼ぶ)に駆動される。
【0045】
第2油圧回路16は、第1油圧回路13から独立して設けられ、第2油圧ポンプ14と油圧モータ15とを接続している。具体的には、第2油圧回路16は、ポンプ流路42と、第1モータ流路43と、第2モータ流路44とを有する。ポンプ流路42は、第2油圧ポンプ14の第1ポンプポート14aに接続されている。第1モータ流路43は、油圧モータ15の第1モータポート15aに接続されている。第2モータ流路44は、油圧モータ15の第2モータポート15bに接続されている。
【0046】
第2油圧回路16において、第2油圧ポンプ14と油圧モータ15との間には、油圧制御弁45が配置されている。油圧制御弁45は、油圧モータ15への作動油の流量を制御する。これにより、油圧モータ15の駆動油圧すなわち上部旋回体3の旋回トルクが制御される。油圧制御弁45は、右旋回位置状態Prと左旋回位置状態Plと中立位置状態Pnとに切り換え可能である。油圧制御弁45は、右旋回位置状態Prにおいて、ポンプ流路42と第1モータ流路43とを接続する。ポンプ流路42と第1モータ流路43とはチェック弁46を介して接続される。チェック弁46は、ポンプ流路42から第1モータ流路43への作動油の流れを許容し、第1モータ流路43からポンプ流路42への作動油の流れを禁止する。これにより、第2油圧ポンプ14から吐出された作動油は、ポンプ流路42と油圧制御弁45と第1モータ流路43を通って、油圧モータ15の第1モータポート15aに供給される。これにより、油圧モータ15が右旋回方向に駆動される。油圧制御弁45は、左旋回位置状態Plにおいて、ポンプ流路42と第2モータ流路44とを接続する。ポンプ流路42と第2モータ流路44とはチェック弁46を介して接続される。チェック弁46は、ポンプ流路42から第2モータ流路44への作動油の流れを許容し、第2モータ流路44からポンプ流路42への作動油の流れを禁止する。これにより、第2油圧ポンプ14から吐出された作動油は、ポンプ流路42と油圧制御弁45と第2モータ流路44を通って、油圧モータ15の第2モータポート15bに供給される。これにより、油圧モータ15が左旋回方向に駆動される。油圧制御弁45は、中立位置状態Pnにおいて、ポンプ流路42と第1モータ流路43との間を遮断する。また、油圧制御弁45は、中立位置状態Pnにおいて、ポンプ流路42と第2モータ流路44との間を遮断する。これにより、第2油圧ポンプ14から油圧モータ15への作動油の供給が停止され、油圧モータ15の駆動が停止される。
【0047】
なお、
図2においては省略されているが、上述したアームシリンダ94とバケットシリンダ95とは、第2油圧回路16を介して第2油圧ポンプ14に接続されている。アームシリンダ94とバケットシリンダ95と油圧モータ15とは互いに並列に第2油圧ポンプ14に接続されている。従って、第2油圧ポンプ14から吐出された作動油は、アームシリンダ94とバケットシリンダ95と油圧モータ15とに分流され、アームシリンダ94とバケットシリンダ95と油圧モータ15とをそれぞれ駆動する。
【0048】
油圧ショベル100は、ブーム操作装置51と旋回操作装置52とをさらに備える。ブーム操作装置51は、ブーム操作部材51aと、ブーム操作検出部51bとを有する。ブーム操作部材51aは、ブーム90を操作するための部材である。すなわち、ブーム操作部材51aは、ブームシリンダ93を操作するためにオペレータによって操作される。ブーム操作部材51aは、中立位置からブームシリンダ93を伸長させる方向と、ブームシリンダ93を収縮させる方向との2方向に操作可能である。ブーム操作検出部51bは、ブーム操作部材51aの操作量及び操作方向を検出する。ブーム操作検出部51bは、例えばブーム操作部材51aの位置を検出するセンサである。ブーム操作部材51aが中立位置に位置しているときには、ブーム操作部材51aの操作量はゼロである。ブーム操作部材51aの操作量及び操作方向を示す検出信号が、ブーム操作検出部51bからポンプコントローラ17に入力される。
【0049】
旋回操作装置52は、旋回操作部材52aと、旋回操作検出部52bとを有する。旋回操作部材52aは、上部旋回体3の旋回を操作するための部材である。すなわち、旋回操作部材52aは、油圧モータ15を操作するためにオペレータによって操作される。旋回操作部材52aは、中立位置から油圧モータ15を右旋回方向に駆動させる方向と、油圧モータ15を左旋回方向に駆動させる方向との2方向に操作可能である。旋回操作検出部52bは、旋回操作部材52aの操作量を検出する。具体的には、旋回操作装置52は、第1パイロット流路53aを介して油圧制御弁45の第1パイロットポート45aに接続されている。また、旋回操作装置52は、第2パイロット流路53bを介して油圧制御弁45の第2パイロットポート45bに接続されている。旋回操作部材52aが右旋回方向に操作されると、作動油が第1パイロット流路53aを介して油圧制御弁45の第1パイロットポート45aに供給される。これにより、油圧制御弁45が上述した右旋回位置状態Prに切り換えられる。旋回操作部材52aが左旋回方向に操作されると、作動油が第2パイロット流路53bを介して油圧制御弁45の第2パイロットポート45bに供給される。これにより、油圧制御弁45が上述した左旋回位置状態Plに切り換えられる。油圧制御弁45は、第1パイロットポート45a又は第2パイロットポート45bに印加されるパイロット圧に応じて、油圧モータ15への供給流量を制御する。旋回操作検出部52bは、シャトル弁54と油圧センサ55とを有する。シャトル弁54は、第1パイロット流路53aと第2パイロット流路53bとのうちパイロット圧の大きい方の流路と油圧センサ55とを接続する。これにより、油圧センサ55は、第1パイロット流路53aと第2パイロット流路53bとのパイロット圧のうち大きい方のパイロット圧を検出する。油圧センサ55によって検出されたパイロット圧を示す検出信号が、旋回操作検出部52bからポンプコントローラ17に入力される。パイロット圧は、旋回操作部材52aの操作量に対応する。従って、ポンプコントローラ17は、油圧センサ55からの検出信号によって旋回操作部材52aの操作量を取得することができる。
【0050】
また、第2油圧回路16は、リリーフ流路56とリリーフ弁57とをさらに有する。リリーフ流路56は、チェック弁58aを介して第1モータ流路43に接続されている。また、リリーフ流路56は、チェック弁58bを介して第2モータ流路44に接続されている。従って、リリーフ流路56とリリーフ弁57とは、第2油圧回路16において、油圧制御弁45よりも、第2油圧ポンプ14から油圧モータ15へ向かう作動油の流れにおける下流に位置している。チェック弁58aは、第1モータ流路43の油圧がリリーフ流路56の油圧よりも高くなったときに開かれる。チェック弁58bは、第2モータ流路44の油圧がリリーフ流路56の油圧よりも高くなったときに開かれる。リリーフ流路56は、リリーフ弁57を介してタンク流路59に接続されている。タンク流路59は、作動油タンク29に接続されている。リリーフ弁57は、リリーフ流路56の油圧が所定の設定圧より大きくなったときに、リリーフ流路56とタンク流路59とを接続する。これにより、リリーフ弁57は、リリーフ流路56の油圧を所定の設定圧以下に維持する。このため、第1モータ流路43及び第2モータ流路44の油圧が設定圧以下に維持される。すなわち、リリーフ弁57は、油圧モータ15の駆動油圧が設定圧を超えないように第2油圧回路16の油圧を調整する。リリーフ弁57は、本発明の油圧調整機構に相当する。リリーフ弁57は、設定圧を、所定の第1設定圧と第2設定圧とに切り換え可能な、いわゆる2段リリーフ弁である。第2設定圧は、第1設定圧よりも低い。リリーフ弁57の設定圧は、通常運転時には第1設定圧に設定され、後述する所定条件が満たされたときに、第2設定圧に切り換えられる。第1設定圧は、通常運転時の油圧モータ15の駆動油圧に相当し、例えば、30MPaである。これに対して、第2設定圧は、複合旋回操作時にブーム90を上昇させるためのブームシリンダ93の駆動油圧と近似した値であり、例えば、13MPa以上17MPa以下の値である。第2設定圧は、複合旋回操作時にブーム90を上昇させるためのブームシリンダ93の駆動油圧の平均的な値が予め実験或いはシミュレーション等によって求められる。
【0051】
リリーフ弁57の設定圧は、設定圧切換部61によって切り換えられる。設定圧切換部61は、パイロットポンプ62から吐出された作動油を、リリーフ弁57のリリーフパイロットポート57aに供給することにより、設定圧を第2設定圧に切り換える。パイロットポンプ62から吐出された作動油が、リリーフ弁57のリリーフパイロットポート57aに供給されていないときには、設定圧は第1設定圧に維持される。設定圧切換部61は、例えば電磁制御弁であり、ポンプコントローラ17からの指令信号に応じて第1位置状態Paと第2位置状態Pbとに切り換えられる。具体的には、設定圧切換部61は、ポンプコントローラ17からの指令信号が入力されていないときには、付勢部材61aの付勢力によって、第1位置状態Paに維持される。設定圧切換部61は、ポンプコントローラ17からの指令信号が入力されている状態では、第2位置状態Pbに維持される。設定圧切換部61は、第1位置状態Paでは、パイロットポンプ流路64と、リリーフパイロット流路63との間を遮断する。パイロットポンプ流路64は、パイロットポンプ62に接続されている。リリーフパイロット流路63は、リリーフ弁57のリリーフパイロットポート57aに接続されている。また、設定圧切換部61が第1位置状態Paであるときには、リリーフパイロット流路63は作動油タンク29に接続されている。従って、設定圧切換部61が第1位置状態Paであるときには、パイロットポンプ62から吐出された作動油は、リリーフ弁57のリリーフパイロットポート57aに供給されない。このため、リリーフ弁57の設定圧は、第1設定圧に維持される。設定圧切換部61は、第2位置状態Pbでは、パイロットポンプ流路64と、リリーフパイロット流路63とを接続する。従って、設定圧切換部61が第2位置状態Pbであるときには、パイロットポンプ62から吐出された作動油は、リリーフ弁57のリリーフパイロットポート57aに供給される。このため、リリーフ弁57の設定圧は、第2設定圧に切り換えられる。なお、パイロットポンプ流路64は、パイロットリリーフ弁65を介して作動油タンク29に接続されている。パイロットリリーフ弁65は、パイロットポンプ流路64の油圧を所定のリリーフ圧以下に維持する。
【0052】
ポンプコントローラ17は、ブーム操作部材51aの操作量に応じて第1油圧ポンプ12を制御する。ポンプコントローラ17は、旋回操作部材52aの操作量に応じて第2油圧ポンプ14を制御する。また、ポンプコントローラ17は、ブーム操作部材51aの操作量に応じてリリーフ弁57の設定圧を制御する。ポンプコントローラ17は、ポンプ制御部17aと、設定圧制御部17bと、記憶部17cとを有する。ポンプ制御部17aと設定圧制御部17bとは例えばCPUなどの演算装置によって実現される。記憶部17cは、RAM、ROM、ハードディスク、フラッシュメモリなどの記録装置によって実現される。記憶部17cは、第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ14との制御のための情報を記憶している。
【0053】
ポンプ制御部17aは、ブーム操作部材51aの操作量に応じてブームシリンダ93に供給される作動油の目標流量を演算する。また、ポンプ制御部17aは、旋回操作部材52aの操作量に応じて油圧モータ15に供給される作動油の目標流量を演算する。
【0054】
設定圧制御部17bは、所定条件が満たされたときには、リリーフ弁57の設定圧を低減させることにより、油圧モータ15の駆動油圧を低減させる。設定圧制御部17bとリリーフ弁57とは、本発明のモータ油圧低減部に相当する。所定条件は、ブーム90を上昇させるブーム操作部材51aの操作と、上部旋回体3を旋回させる旋回操作部材52aの操作とが共に行われ、且つ、ブーム操作部材51aの操作量(以下、「ブーム上げ操作量」と呼ぶ)が所定の閾値Y0(
図3参照)以上であることである。すなわち、所定条件は、複合旋回操作時にブーム上げ操作量が所定の閾値Y0以上であることである。例えば、最大操作量を100%とした場合、所定の閾値Y0は、100%よりも小さい値に設定される。具体的には、所定の閾値Y0は、70%以上80%以下の値である。
【0055】
設定圧制御部17bは、所定条件が満たされていない通常運転時には、設定圧切換部61を第1位置状態Paに維持する。
図3は、複合旋回操作時のブーム上げ操作量Yと設定圧切換部61への指令信号との関係を示している。
図3に示すように、複合旋回操作時であってもブーム上げ操作量が所定の閾値Y0(
図3参照)より小さいときには、設定圧切換部61への指令信号がOFFにされる。これにより、リリーフ弁57の設定圧が第1設定圧に維持される。また、設定圧制御部17bは、複合旋回操作時にブーム上げ操作量が所定の閾値Y0以上であるときには、設定圧切換部61への指令信号をONにする。これにより、設定圧切換部61が第2位置状態Pbに切り換わり、リリーフ弁57の設定圧が第1設定圧から第2設定圧に切り換えられる。従って、油圧モータ15の駆動圧が、第2設定圧以下の圧力に低減される。これにより、上部旋回体3の旋回の加速度が低減される。ただし、油圧モータ15に供給される作動油の流量は維持されるので、上部旋回体3の旋回の定常速度は維持される。
【0056】
本実施形態に係る油圧ショベル100は、以下の特徴を有する。
【0057】
旋回複合操作時に、ブーム上げ操作量が所定の閾値Y0以上であるときには、油圧モータ15の駆動油圧がブームシリンダ93の駆動油圧に近い値に低減される。これにより、上部旋回体3の旋回の加速度が低減され、上部旋回体3の旋回時間と、この旋回時間でのブーム90の上昇量とを同期させることができる。また、例えば、旋回の単独操作時には、所定条件が満たされないので、リリーフ弁57による油圧モータ15の駆動油圧の低減が行われない。このため、旋回の加速度及び旋回力を維持することができる。
【0058】
また、複合旋回操作時であってもブーム上げ操作量が所定の閾値Y0より小さいときにも、所定条件が満たされないので、リリーフ弁57による油圧モータ15の駆動油圧の低減が行われない。このため、旋回複合操作が行われるときであってもブーム90を小さく上昇させる作業を行うときには、旋回の加速度及び旋回力を維持することができる。例えば、横当て掘削時にも複合旋回操作が行われる。横当て掘削は、例えば溝の側面にバケットを押し当てて整えながら掘削を行う作業である。従って、横当て掘削時には、バケットを溝の側面に押し当てるために、旋回力が大きいことが好ましい。横当て掘削時には、ブーム90を大きく上昇させる必要がないため、横当て掘削時のブーム上げ操作量は、上述した所定の閾値Y0よりも小さい。このため、本実施形態に係る油圧ショベル100では、横当て掘削時には、リリーフ弁57による油圧モータ15の駆動油圧の低減が行われない。従って、横当て掘削時に旋回力を維持することができる。
【0059】
所定条件が満たされたときには、油圧モータ15の駆動油圧が低減されるので、上部旋回体3の旋回の加速度は低減されるが、上部旋回体3の旋回の定常速度は維持される。これにより旋回の定常速度が低下することが抑えられる。
【0060】
リリーフ弁57は、第2油圧回路16において、油圧制御弁45よりも下流に位置する。このため、リリーフ弁57によって、油圧制御弁45から独立して、油圧モータ15の駆動油圧を変更することができる。従って、油圧制御弁45による油圧モータ15の駆動油圧の制御に関わらず、リリーフ弁57によって油圧モータ15の駆動油圧を低減させることができる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
本発明の油圧調整機構は、上記の実施形態のリリーフ弁57に限らず、他の構成であってもよい。例えば、
図4に示すように、第1リリーフ弁71と第2リリーフ弁72とが油圧調整機構として用いられてもよい。第1リリーフ弁71は、油圧モータ15の駆動油圧が所定の第1設定圧を超えないように第2油圧回路16の油圧を調整する。第2リリーフ弁72は、リリーフパイロットポート72aにパイロット圧が印加されているときには、油圧モータ15の駆動油圧が、第1設定圧よりも低い第2設定圧を超えないように第2油圧回路16の油圧を調整する。第2リリーフ弁72は、リリーフパイロットポート72aにパイロット圧が印加されていないときには、油圧モータ15の駆動油圧が、第1設定圧よりも大きい第3設定圧を超えないように第2油圧回路16の油圧を調整する。設定圧制御部17bは、所定条件が満たされていないときには、設定圧切換部61を第1位置状態Paに維持する。これにより、第1リリーフ弁71によって第2油圧回路16の油圧が調整され、油圧モータ15の駆動油圧が第1設定圧以下に維持される。設定圧制御部17bは、所定条件が満たされたときには、設定圧切換部61が第2位置状態Pbに切り換わるように、設定圧切換部61に指令信号を送る。これにより、第2リリーフ弁72の設定圧が第3設定圧から第2設定圧に切り換えられる。これにより、第2リリーフ弁72により第2油圧回路16の油圧が調整され、油圧モータ15の駆動圧が、第2設定圧以下の圧力に低減される。なお、第2リリーフ弁72のリリーフパイロットポート72aにパイロット圧が印加されていないときには、第2リリーフ弁72が開かれないようにされてもよい。
【0063】
図5に示すように、可変リリーフ弁73が油圧調整機構として用いられてもよい。可変リリーフ弁73は、設定圧を連続的に変更可能である。可変リリーフ弁73は、ポンプコントローラ17からの指令信号に基づいて、設定圧を変更する。この場合、油圧駆動システム1は、シリンダ油圧検出部74をさらに備える。シリンダ油圧検出部74は、ブームシリンダ93の駆動油圧を検出する。設定圧制御部17bは、シリンダ油圧検出部74が検出したブームシリンダ93の駆動油圧に応じて、可変リリーフ弁73の設定圧を変更する。具体的には、設定圧制御部17bは、
図6に示すように、可変リリーフ弁73の設定圧を変更する。
図6において、横軸は、シリンダ油圧検出部74が検出したブーム90の駆動油圧を示している。縦軸は、可変リリーフ弁73の設定圧である。
図6に示すように、可変リリーフ弁73の設定圧は、第1設定圧P1と第2設定圧P2との間の範囲で変更することができる。ブーム90の駆動油圧が第1設定圧P1と第2設定圧P2との間の値であるときには、可変リリーフ弁73の設定圧は、ブーム90の駆動油圧と同じ値に設定される。このため、油圧モータ15の駆動油圧をブームシリンダ93の駆動油圧に応じた値に低減することができる。従って、上部旋回体3の旋回時間と、この旋回時間でのブーム90の上昇量とを、より精度よく同期させることができる。なお、ブーム90の駆動油圧が第1設定圧P1よりも大きいときには、可変リリーフ弁73の設定圧は、第1設定圧P1に維持される。また、ブーム90の駆動油圧が第2設定圧P2よりも小さいときには、可変リリーフ弁73の設定圧は、第2設定圧P2に維持される。
【0064】
上記の実施形態では、ブームシリンダ93に2つの油圧ポンプ22,23が接続されている2ポンプ型の油圧駆動システムに本発明が適用されているが、ブームシリンダ93に1つの油圧ポンプが接続される1ポンプ型の油圧駆動システムに本発明が適用されてもよい。