(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁部材は、外力が作用していない自然状態で、基準軸線回りに1周より多く巻き付けられるとともに、自身の外周面に自身の内周面が当接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電極留置システム。
前記絶縁部材は、外力が作用していない自然状態で、基準軸線回りに1周より多く巻き付けられるとともに、自身の外周面に自身の内周面が当接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電極留置システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電極留置システムの第1実施形態を、
図1から
図25を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の電極留置システム1は、重力以外の外力が作用していない自然状態(以下、「自然状態」と称する。)で神経組織(線状組織)に巻きつくように湾曲した湾曲形状となるように形成され電極部10と、互いに接近および離間するように操作可能な一対の把持片(支持片)31、32を有し、神経組織に電極部10を取り付けるための電極用処置具30とを備えている。
なお、本実施形態では、電極留置システム1は、神経組織に付与する電気的刺激を発生させる神経刺激装置(電源)51と、電極部10と神経刺激装置51とを電気的に接続するリードボディ52とともに用いられる。
【0016】
図1から
図3に示すように、電極部10は、弾性材料でシート状に形成された電極支持体(絶縁部材)11と、電極支持体11が湾曲形状のときに湾曲の内側となる面に設けられた一対の電極12、13と、電極支持体11の基端側に固定された接続部19とを有している。
電極支持体11、および電極12、13は、自然状態では湾曲方向Dに湾曲した湾曲形状であるが(
図1参照。)、湾曲を伸ばすように変形させることで、平坦形状に形状を切替えることができる(
図2および
図3参照。)。
【0017】
電極支持体11は、自然状態で基準軸線C1回りに螺旋状に巻回された第一の螺旋体16および第二の螺旋体17と、第一の螺旋体16および第二の螺旋体17の湾曲方向Dの末端に接続された連結片18とを有している。第一の螺旋体16および第二の螺旋体17の湾曲方向Dの基端には、前述の接続部19が固定されている。
螺旋体16、17は、
図1に示すように、自然状態で、連結片18から基準軸線C1に沿って互いに離間するように巻回されている。第一の螺旋体16が巻き進む手前側から見たときの第一の螺旋体16が基準軸線C1回りに巻き進む向きD1と、第二の螺旋体17が巻き進む手前側から見たときの第二の螺旋体17が基準軸線C1回りに巻き進む向きD2とは、互いに逆方向になっている。螺旋体16、17が基準軸線C1回りに巻回される中心角(巻回される範囲を基準軸線C1に平行に見たときに中心角)は、少なくとも360°以上必要であり、450°以上であることが望ましい。
螺旋体16、17全体の幅は、接続部19側よりも連結片18側の方が狭くなるように設定されている。
【0018】
図2および
図3に示すように、連結片18における湾曲の内側の面であって、電極部10を平坦形状に伸ばしたときの接続部19側には、電極側係合部(位置決め部)18aが形成されている。電極側係合部18aは、連結片18の外面から凹むように形成されている。電極側係合部18aの幅は、後述する把持片31の幅よりわずかに大きくなるように設定されている。
螺旋体16、17、および連結片18の厚さは、等しく設定されている。これらの厚さが厚すぎると、電極支持体11を平坦形状にした際に捩れが発生するため、0.5mm程度の厚さであることが好ましい。
【0019】
接続部19は、第一の螺旋体16などの厚さより大きい外径を有する略円柱状に形成されている。接続部19には、不図示の電気接点が内蔵されている。
接続部19の長手方向の中央部には、電極部10を平坦形状に伸ばしたときの電極側係合部18aと同じ側に、第二の電極側係合部19aが形成されている。第二の電極側係合部19aの幅は、後述する把持片31の幅よりわずかに大きくなるように設定されている。
螺旋体16、17、連結片18、および接続部19は、神経組織を損傷させないように、シリコーンなどの柔らかい絶縁材料で一体に形成されており、自然状態で湾曲形状を維持するように成形されている。
電極支持体11の中央部には、螺旋体16、17、連結片18および接続部19で囲われた孔20が形成されている。
【0020】
電極12は、第一の螺旋体16の湾曲の内側の面において、第一の螺旋体16に沿うように露出した状態で設けられている。同様に、電極13は、第二の螺旋体17の湾曲の内側の面において、第二の螺旋体17に沿うように露出した状態で設けられている。この例では、電極12、13が電極支持体11から露出する面積は、互いに等しくなるように設定されている。
電極12、13は、弾性を有し生体適合性の高い金属などで形成され、自然状態で湾曲形状に形成されている。電極12、13には、白金やイリジウムなどの金属を用いることが望ましい。
以上のように構成された電極支持体11、および電極12、13は、自身の弾性により自然状態で全体が湾曲形状となっていて、平坦形状になったときも湾曲形状に形状を戻すことができる。
【0021】
例えば、電極部10を設置する神経組織の直径が1.5mm〜3mmの場合は、湾曲形状の電極支持体11において電極12、13の内径を1.5mm、螺旋体16、17の中心角を720°とする。これにより、直径が3mmの神経組織に電極部10を設置する場合でも、電極部10が中心角で360°以上の範囲で神経組織に接触することが可能である。また、電極12、13の中心角をさらに増やすことで、神経組織と電極12、13との接触面積をさらに増やすことが可能である。螺旋体16、17の幅(基準軸線C1方向の幅)は5mm程度が望ましい。螺旋体16の螺旋のピッチおよび幅は、湾曲形状で基準軸線C1方向に隣り合う螺旋体16の間に隙間ができる程度に設定することが望ましい。そのように設定することで、隙間を通して神経組織への栄養供給が促進され、電極部10が長期間埋植された時の閾値上昇を防止することができる。
【0022】
神経刺激装置51は不図示の電源を有し、神経組織が発生する電気的信号を検出し、所定の波形の電気的刺激を発生する。これにより、神経刺激装置51は、電極部10で取得した神経組織の信号を検出し、必要に応じて電極部10を介してこの神経組織に電気的刺激(電圧)を印加することができる。
リードボディ52は公知の構成のものが用いられ、電極部10と神経刺激装置51とを電気的に接続する不図示のコイルと、コイルの外周を覆う絶縁性で可撓性を有するチューブ53(
図1参照。)とを有している。
本実施形態では、リードボディ52は、電極部10の接続部19から基準軸線C1に沿って延びるように接続されている。
リードボディ52と神経刺激装置51とは、不図示のコネクタにより着脱可能となっている。リードボディ52と神経刺激装置51とが接続されたときに、神経刺激装置51は、接続部19に内蔵された電気接点およびリードボディ52を介して電極12、13に電気的に接続される。
【0023】
図1および
図4に示すように、電極用処置具30は、長尺の挿入部33と、挿入部33の基端に取り付けられた操作部34とを備えている。挿入部33は、先端に設けられ前述の一対の把持片31、32を有する把持部36と、把持部36の基端に取り付けられた湾曲部37とを有している。
この例では、把持片31、32の内側となる面はほぼ平坦に形成されている。把持片31、32は、ステンレスなどの、生体適合性を有するとともに電極支持体11より硬い材料で形成されている。
把持部36には、湾曲部37の先端に接続された先端硬質部38が備えられている。把持片32は、先端硬質部38に対して固定されているが、把持片31は自身の基端を回動の軸として、把持片32に対して接近および離間できる。以下では、互いに接近した把持片31、32を閉状態、互いに離間した把持片31、32を開状態と称する。このように構成された把持片31、32は、閉状態となったときに互いの間に電極部10を平坦形状に保持することができる。
【0024】
先端硬質部38における先端側の面は、把持片31、32の間に配置されるとともに先端側を向く当接面38aとなっている。平坦形状になった電極部10における湾曲を伸ばした方向の長さL1(
図2参照。)は、当接面38aから把持片31、32の先端までの長さL2(
図1参照。)より長く設定されている。把持片31、32の幅は、電極部10の幅より狭く設定されている。
このため、
図5および
図6に示すように、電極部10の厚さ方向の両側から把持片31、32が挟むように把持片31、32の間に電極部10を配置し、当接面38aに接続部19を当接させ、把持片31の先端に電極側係合部18aを係合させるとともに把持片31の基端側を第二の電極側係合部19aに係合させたときに、電極部10は以下のようになる。すなわち、把持片31、32は、電極部10における把持片31、32で挟まれた側のみを平坦形状にして電極部10を支持し、把持片31、32の先端側に電極部10の湾曲方向の一方側が突出して湾曲するように電極部10を位置決めする。
このとき、電極支持体11に対して把持片31が先端側に移動するのが規制される。
なお、
図6に示すように、把持片31、32の先端側で湾曲している電極部10を基準軸線C1に平行に見たときに、湾曲の中心角θは、90°以上180°以下であることが好ましく、約125°であることがより好ましい。
【0025】
操作部34は、
図1および
図4に示すように、把持部36を挿入部33の軸線回りに回転させるための軸回転ダイヤル40と、湾曲部37を湾曲させるための湾曲ダイヤル41と、把持片31を回動させるためのトリガー42とを有する。
【0026】
湾曲ダイヤル41を回転させることで、湾曲操作ワイヤ43が進退し、湾曲部37を湾曲基準平面上で湾曲させることができる。この例では、湾曲部37は湾曲基準位置を中心として左右に約90°ずつ湾曲する。
軸回転ダイヤル40を回転させることで、挿入部33の軸線に対して把持部36を回転基準位置から時計回りおよび反時計回りに約90°ずつ回転させることができる。湾曲部37の湾曲範囲や、把持部36の回転範囲は、適宜設定されてよい。
操作部34には、ラチェット機構44およびグリップ45が備えられていて、グリップ45に対してトリガー42を位置決め可能となっている。このラチェット機構44により、把持片32に対して把持片31を所定の開き角度でロックすることができる。
【0027】
次に、以上のように構成された電極留置システム1を用いて、電極部10を神経組織に取り付ける手技について説明する。ここでは、
図7に示すように、胸腔W1内の上大静脈W2に隣接する迷走神経W3に電極部10を取り付ける場合について説明する。迷走神経W3は、上大静脈W2および気管W4に隣接して走行している。
まず、術者は、
図8に示すように、患者Wの胸部W6に、メスなどで不図示の開口を3カ所形成し、これらの開口にトロッカーTをそれぞれ挿入する。
これら開口の位置Q1〜Q3は、紙面に垂直に延びる不図示の基準軸Jを中心に見たときに、基準軸J回りに略等角度おきに配置することが好ましい。位置Q1〜Q3をこのように配置することで、後の工程で、胸腔鏡で胸腔W1内を観察しながらの処置が行いやすくなる。
【0028】
トロッカーTを通して胸腔W1内に不図示のナイフなどの切開用処置具を挿入する。
図9に示すように、結合組織W7内において、迷走神経W3は、上大静脈W2および気管W4の間を走行している。
前述の切開用処置具により結合組織W7の一部を
図10および
図11に示すように切開し、結合組織W7から迷走神経W3を露出させる。
通常は、露出した迷走神経W3は胸腔鏡から見にくいため、
図12に示すような鈍的な処置具T2により上大静脈W2および結合組織W7を押し退け、後述するように神経組織W3の観察と電極部10の取り付けとを行うこととなる。
【0029】
次に、患者Wの体外で、
図5および
図6に示すように、電極用処置具30に電極部10を装着し、トリガー42を操作して把持片31、32を閉状態にする。すると、把持片31、32の間に配置された電極部10は平坦形状になるが、把持片31、32より先端側に突出した電極部10は湾曲形状になる。
閉状態となった把持片31、32の位置は、ラチェット機構44によりロックされる。
なお、このとき、リードボディ52に神経刺激装置51は接続されていない。
【0030】
続いて、電極用処置具30に装着された電極部10を、
図13に示すように把持片31に巻きつけて外径を小さくし、トロッカーTを通して迷走神経W3の側まで挿入する。トロッカーTを通して胸腔W1内に挿入された電極部10は、把持片31、32に挟まれた状態で自身の弾性により開き、把持片31に巻きつける前の状態に戻る。
前述の処置具T2により上大静脈W2を押し退けて迷走神経W3が不図示の胸腔鏡で観察できるようにし、軸回転ダイヤル40および湾曲ダイヤル41などを操作することで、迷走神経W3の長手方向に対して、電極部10における湾曲を伸ばした方向がほぼ直交するように操作する。
【0031】
次に、
図14に示すように、迷走神経W3と結合組織W7との間に電極部10の先端側を挿入し、電極部10における湾曲形状となっている先端側の部分を迷走神経W3に引っ掛ける。電極用処置具30を操作したときの迷走神経W3の動きを観察することなどで、迷走神経W3に電極部10が引っ掛けられていることを胸腔鏡で確認する。ラチェット機構44によるロックを解除すると、把持片31、32が開状態となる。すると、電極部10の保持は解除され、
図15に示すように電極部10は、迷走神経W3に先端側が引っ掛けられた状態で自然状態の湾曲形状に戻ろうとして、迷走神経W3に巻きついていく。電極部10における湾曲の内側の面に設けられた電極12、13は、迷走神経W3に当接する。
図16に示すように迷走神経W3に電極部10が巻きついた後、電極用処置具30から電極部10を完全に取り外し、電極用処置具30をトロッカーTを通して患者Wの体外に抜き取る。
このように、湾曲形状になった電極部10の先端側で、迷走神経W3をすくい上げることと、迷走神経W3に巻きつく動作を行うことができ、迷走神経W3に電極部10を装着することが可能となる。
【0032】
続いて、結合組織W7における切開した部分を縫合し、胸腔鏡などをトロッカーTから引き抜く。患者WからトロッカーTを取り外して、胸部W6に形成した開口を縫合する。
リードボディ52と神経刺激装置51とをコネクタにより接続し、リードボディ52および神経刺激装置51を患者Wの皮下に埋め込み、一連の手技を終了する。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の電極留置システム1によれば、術者は、電極用処置具30の把持片31、32の間に電極部10を配置する。このとき、電極部10の電極側係合部18aにより、把持片31、32より先端側に電極部10の一部が突出するように位置決めされるため、突出した部分の電極部10が湾曲形状となる。湾曲形状となった部分の電極部10を迷走神経W3に引っ掛け、把持片31、32による電極部10の保持を解除することで、迷走神経W3に電極部10が自動的に巻きつく。
したがって、電極用処置具30を操作することで、迷走神経W3に確実かつ容易に電極部10を取り付けることができる。
【0034】
平坦形状になった電極部10における湾曲を伸ばした方向の長さL1は、当接面38aから把持片31、32の先端までの長さL2より長く設定されている。これにより、把持片31、32より先端側に電極部10が突出するように位置決めされる。この構成によっても、迷走神経W3に確実かつ容易に電極部10を取り付けることができる。
位置決め部は、電極支持体11の電極側係合部18aであるため、例えば、電極支持体11を形成する金型の形状を修正するなどにより、位置決め部を容易に形成することができる。
【0035】
電極支持体11は、第一の螺旋体16および第二の螺旋体17を有している。螺旋状の湾曲形状になることで電極支持体11の外径を抑えるとともに、迷走神経W3に取り付けたときに迷走神経W3に当接する電極12、13の面積を増加させることができる。螺旋体16、17が互いに逆方向に巻き進むように構成されているため、湾曲形状である電極支持体11を、湾曲を伸ばして平坦形状に切替えることができる。
把持片31、32は、電極用処置具30により閉状態と開状態とに切り替えられるため、電極用処置具30を操作することで、平坦形状になった電極部10を湾曲形状に容易に切り替えることができる。
把持片31の幅は電極部10の幅より狭く設定されているため、把持片31に電極部10を巻きつけた状態でトロッカーTを通すことができる。したがって、内径の小さなトロッカーTに電極部10を通すことができる。
【0036】
本実施形態では、螺旋体16、17の基端に接続部19が固定されていた。しかし、螺旋体16、17は、接続部19を越えて反対側まで延びるように構成してもよい。この場合、接続部19を越えて延びる部分の螺旋体16、17の中心角は180°以下とすることが好ましい。この部分の螺旋体16、17の中心角が180°を越えてしまうと、迷走神経W3に電極部10を取り付けるときに、接続部19を越えて延びた螺旋体16、17が迷走神経W3や結合組織W7などに干渉し、電極部10が取り付けにくくなる。
本実施形態のように、螺旋体16、17の基端に接続部19が固定された構成とした方が、電極部10を平坦形状に切替えたときに突出した部分が少なくなり、迷走神経W3に電極部10を容易に取り付けることができる。
【0037】
また、本実施形態では、電極側係合部18aは連結片18の外面から凹むように形成されているとした。しかし、電極側係合部が連結片18の外面から突出するように形成されてもよい。この場合、例えば、把持片31、32間に電極部10を配置したときに、電極側係合部に把持片31の先端面が当接するように構成される。
【0038】
本実施形態の電極留置システム1は、以下に説明するようにその形状を様々に変形させることができる。
例えば、
図17に示す電極部10Aのように、電極12が電極支持体11から露出する面積が電極13が電極支持体11から露出する面積より大きくなるように構成してもよい。
電極部10Aをこのように構成することで、電極の正極側と負極側とで神経組織に接触する面積を変化させて電流密度を変化させ、神経組織に与える刺激量を調整することができる。
【0039】
また、
図18および
図19に示す電極部10Bのように構成してもよい。この電極部10Bが有する電極支持体56は、シート状に形成されるとともに、自然状態で、基準軸線C2回りに1周より多く巻き付けられる湾曲形状となるように構成されている。
電極支持体56は、自身の弾性により、自身の外周面に自身の内周面が当接する、いわゆる巻物状に密巻きとなるように形成されている。この電極支持体56には、電極側係合部18aは形成されていない。
電極部10Bは、湾曲を伸ばすように変形させることで、
図20に示すように平坦形状に形状を切替えることができる。
電極12、13は、電極支持体56における基準軸線C2方向の両縁部に、互いに平行となるように配置されている。
【0040】
電極部10Bは、平坦形状になった電極部10Bにおける湾曲を伸ばした方向の長さL3が、電極用処置具30における当接面38aから把持片31、32の先端までの長さL2より長く設定されている。長さL3を調節することで、把持片31、32の先端から突出する電極部10Bの長さを調節することができる。
このように構成された電極部10Bによれば、神経組織に取り付けた電極部10Bを神経組織から外れにくくすることができる。
【0041】
なお、この変形例の電極部10Bでは、電極支持体56に電極を1つ配置してもよいし、3つ以上配置してもよい。
図21に示す例では、電極支持体56における基準軸線C2方向の一方に2つの電極12が、他方に2つの電極13がそれぞれ設けられている。
【0042】
図22に示す電極用処置具30Aのように、把持片31の先端側が把持片32から離間するように湾曲していてもよい。
電極用処置具30Aをこのように構成することで、把持片31の先端側により神経組織を引っ掛けやすく(すくい上げやすく)なり、神経組織に電極部10を容易に取り付けることができる。
【0043】
図23に示す電極用処置具30Bのように、把持片31、32の内側となる面31a、32aに、突部58、59が設けられているように構成してもよい。
突部58は、面31aの先端に、面32aに向かって突出するように形成されている。同様に、突部59は、面32aの先端に、面31aに向かって突出するように形成されている。
把持片31、32が閉状態となったときに、突部58、59は互い係合する形状であることが好ましい。
このように構成された電極用処置具30Bによれば、把持片31、32の間に保持された電極部が移動するのを防止することができる。
なお、本変形例においては、電極用処置具30Bに突部58および突部59のいずれか一方が設けられていればよい。
【0044】
また、
図24に示す電極用処置具30Cのように、把持片31に、前述の電極部10の連結片18の基端に係合する処置具側係合部(位置決め部)31bを形成してもよい。処置具側係合部31bは、把持片31、32の内側となる面31aから凹むように形成されている。この場合、電極部10に電極側係合部18aは形成されない。
把持片31、32の間に電極部10を配置し、処置具側係合部31bに電極部10の連結片18の基端を係合させることで、支持片31対して連結片18が基端側に移動するのが規制される。
このように構成された電極用処置具30Cによっても、本実施形態の電極留置システム1と同様の効果を奏することができる。
なお、この変形例では、処置具側係合部は面31aから突出するように形成されてもよい。
【0045】
図25に示す電極用処置具30Dのように、当接面38aから把持片31、32の先端までの長さを短くして、電極部10における把持片31、32で挟まれた部分が平坦形状にならないように構成してもよい。把持部36の長さが短くなることで、神経組織周囲の処置空間が狭い場合でも、神経組織に電極部10を容易に取り付けることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図26から
図29を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図26に示すように、本実施形態の電極留置システム2は、電極部70と、神経組織に電極部70を取り付けるための電極用処置具80とを備えている。
【0047】
電極部70は、
図26および
図27に示すように、前記第1実施形態の電極部10の電極側係合部18aおよび接続部19に替えて、接続部71を備えている。
接続部71は、平面視で略V字形に形成され、両端部が螺旋体16、17の他端に接続されるとともに、中央部71aが平坦形状にしたときの電極部70の連結片18から離間するように配置されている。リードボディ52は、接続部71の中央部71aから、連結片18から離間する側に延びるように接続されている。本実施形態におけるリードボディ52は、スタイレットなどが挿通可能な管路が内部に形成されていることが好ましい。
電極支持体11は、弾性を有するとともに柔軟に形成されていて、
図27に示すように平坦形状になったときに、さらに、
図28に示すように第一の螺旋体16および第二の螺旋体17を互いに平行に近づきながら接近させるとともに、電極支持体11が湾曲を伸ばした方向に伸びるように変形可能となっている(以下、この形状の電極部70を「伸長形状」と称する。)。
なお、このとき、螺旋体16、17が互いに当接するまで変形できるようになっていることが好ましい。
【0048】
電極用処置具80は、
図26に示すように、前記第1実施形態の把持部36に変えて、ガイド管81を備えている。ガイド管81において、先端側に設けられた先端管部82の内径は、基端側に設けられた基端管部83の内径より大きく設定されている。先端管部82の内周面と基端管部83の内周面との間には、段部(当接面)81aが形成されている。先端管部82の外径および基端管部83の外径は、等しく設定されている。
この例では、先端管部82の先端側が、一対の支持片に相当する。
先端管部82の内径(支持片間の距離)は、
図28に示す伸長形状の螺旋体16、17の全体の幅L6にほぼ等しく設定されている。先端管部82の長さは、伸長形状の電極部70の長さL7より短くなるように設定されている。
基端管部83の内径はリードボディ52が挿通可能に設定され、基端管部83の管路は、操作部34に形成された開口と連通している。
ガイド管81は、ステンレスなどの生体適合性の高い金属などで形成されている。
【0049】
前述のように構成された電極用処置具80に電極部70を装着した状態を、
図29に示す。基端管部83の管路にリードボディ52を挿通させ、段部81aに伸長形状の電極部70の基端を当接させると、先端管部82の先端から突出した電極部70が湾曲形状となる。
【0050】
次に、以上のように構成された電極留置システム2を用いて、電極部70を迷走神経W3に取り付ける手技について説明する。
本実施形態における手技の手順は、前記第1実施形態の電極留置システム1を用いた手順と迷走神経W3を露出させるところまでは同一であるので、その部分までの説明を省略する。
【0051】
患者Wの体外で、電極用処置具80に電極部70を装着し、電極用処置具80のガイド管81をロッカーTを通して迷走神経W3の側まで挿入する。
軸回転ダイヤル40および湾曲ダイヤル41などを操作することで、迷走神経W3の長手方向に対して、ガイド管81の軸線がほぼ直交するように操作する。
迷走神経W3と結合組織W7との間に電極部70の先端側を挿入し、電極部70における湾曲形状となっている先端側の部分を迷走神経W3に引っ掛ける。操作部34の開口側からリードボディ52を押し込むか、リードボディ52の管路に挿通したスタイレットを押すことで、電極用処置具80の先端管部82から電極部70を押し出す。電極部70は、迷走神経W3に先端側が引っ掛けられた状態で自然状態の湾曲形状に戻ろうとして、迷走神経W3に巻きついていく。
これ以降の手順は、前記第1実施形態の手順と同一である。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の電極留置システム2によれば、生体の迷走神経W3に確実かつ容易に電極部70を取り付けることができる。
電極部70を伸長形状にすることで、より内径の小さなトロッカーTに電極部70を挿入することができる。
電極用処置具80が先端管部82を備えることで、伸長形状になった電極部70の形状を保持することができる。
さらに、電極用処置具80に閉状態と開状態とに切り替え可能な把持片31、32を備えなくても、電極用処置具80から電極部70を押し出すだけで迷走神経W3に電極部70を取り付けることができ、電極用処置具80の構成を簡単にすることができる。
【0053】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、電極部を構成する電極支持体や電極は、自身の弾性により自然状態で湾曲形状になるとした。しかし、電極支持体および電極がこのような弾性を備えず、電極支持体内に形状記憶ワイヤを備えるように構成してもよい。この形状記憶ワイヤは、自然状態で湾曲形状となるように成形されていて、自然状態で電極部を湾曲形状に保持することができる。
【0054】
前記第1実施形態および第2実施形態では、線状組織は神経組織であるとした。しかし、線状組織はこれに限られることなく、電極部は、血管や筋肉など、所望の線状組織に巻きつけることができる。