(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、この発明が適用される除振架台10の構造を示す側面図であり、上部架台12と、これと所定の間隙を隔てて対向配置された下部架台14とを備えている。
上部架台12と下部架台14との間には、内部に圧縮コイルバネ(図示省略)を備えた防振部材16が複数介装されており、この防振部材16によって上部架台12は下部架台14上に弾性支持されている。
下部架台14は、図示しないアンカーボルトによって、建物の基礎18に強固に固定されている。
【0015】
上部架台12は、
図2に示すように、4本の上部フレーム部材20a, 20b, 20c, 20dを、4個の上部コーナー金物22を介して矩形状に連結した形状を備えている。
また、第1の上部フレーム部材20a及び第2の上部フレーム部材20cには、それぞれ二つの取付け片部24が設けられている。
【0016】
各取付け片部24には貫通孔26が穿設されており、各取付け片部24上に負荷となる機械設備(図示省略)を載置し、貫通孔26にボルトを挿通して負荷に螺合することにより、その固定が実現される。
【0017】
下部架台14も同様に、4本の下部フレーム部材を4個の下部コーナー金物28を介して矩形状に連結した形状を備えている(
図1においては、一の下部フレーム部材29のみが表れている)。
【0018】
上部コーナー金物22と下部コーナー金物28との間には、それぞれ減震ストッパ30が設けられている。
図3は、減震ストッパ30の詳細な構造を示すものであり、ストッパ部材としてのストッパボルト32が、上部コーナー金物22の底板22aに形成された貫通孔34から挿通され、さらに下部コーナー金物28の天板28aに形成された貫通孔36に挿通されている。
【0019】
上部コーナー金物22に形成された貫通孔34は、ストッパボルト32の直径に比べて十分に大きな口径を備えている。
この貫通孔34の縁部と、ストッパボルト32の外周面との間には、管状の減震用弾性部材38が介装されている。
【0020】
この減震用弾性部材38は、ブチルゴムやスポンジ等の損失係数の大きな弾性材料等の減衰材からなる内側層40と、ソマライト(登録商標)やフッ素樹脂など摩擦係数の小さい滑り材(例えば摩擦係数:0.2〜0.4)からなる外側層42からなる二層構造を備えている。
この減震用弾性部材38と、貫通孔34の縁部との間には、所定の隙間X(例えば5mm)が確保されている。
【0021】
上記減震用弾性部材38の上端面側には、複数枚の皿バネ44が配置されている。
また、この皿バネ44とストッパボルト32の頭部46との間には、金属材よりなる第1のワッシャ48と、フッ素樹脂等の減衰材よりなる第1の減衰ワッシャ50とが介装されている。
皿バネ44の下端と上部コーナー金物22の底板22aとの間には、所定の隙間Y(例えば5mm)が形成されている。
【0022】
上記減震用弾性部材38の下端面と、第1のナット52との間には、大型ワッシャ54と、第2の減衰ワッシャ56及び第2のワッシャ58が積層配置されている。
また、上部コーナー金物22の底板22aと、大型ワッシャ54の上面との間には、所定の隙間Z(例えば5mm)が形成されている。この隙間Zは、上記防振部材16によって上部架台12が下部架台14上に弾性支持されることによって、確保されている。
【0023】
ストッパボルト32の先端は、下部コーナー金物28の天板28aに形成された貫通孔36に挿通され、第2のナット60、第3のワッシャ62、第4のワッシャ64及び第3のナット66を介して、天板28aの上下から締め付け固定されている。
【0024】
このストッパボルト32の装着は、以下の手順に従って行われる。
(1) 第1の減衰ワッシャ50、第1のワッシャ48、複数の皿バネ44、減震用弾性部材38を挿通させたストッパボルト32を、上部コーナー金物22の貫通孔34に挿入する。
(2) 大型ワッシャ54、第2の減衰ワッシャ56、第2のワッシャ58を、ストッパボルト32の先端から挿通させる。
(3) 第1のナット52をストッパボルト32の先端から螺合させ、ストッパボルト32の頭部46との間で、第1の減衰ワッシャ50、第1のワッシャ48、複数の皿バネ44、減震用弾性部材38、大型ワッシャ54、第2の減衰ワッシャ56、第2のワッシャ58を締め付け固定する。
(4) ストッパボルト32の先端に第2のナット60を螺合させた後、第3のワッシャ62を挿通させる。
(5) ストッパボルトの先端を、下部コーナー金物28の貫通孔36に挿通させた後、第4のワッシャ64を挿通させ、第3のナット66を螺合させる。
(6) 第2のナット60及び第3のナット66を締め付けることにより、ストッパボルト32の先端側を下部コーナー金物28に固定する。
【0025】
地震が発生し、上部架台12及び下部架台14が水平方向あるいは回転方向に振動すると、減震用弾性部材38の外側層42に上部コーナー金物22の貫通孔34の縁部が衝突し、その滑り効果によって、こじりやこすれの力を分散させると同時に、内側層40に対する圧縮力が緩和される。
この内側層40は、損失係数の大きな弾性材料等の減衰材よりなるため、小さな圧縮力を受けても大きなエネルギー吸収効果を奏することができる。
また、第1の減衰ワッシャ50及び第2の減衰ワッシャ56における、滑り摩擦による振動エネルギーの減衰効果も期待できる。
【0026】
この除振架台10に対し1Gを越える上下方向の振動が加えられた場合には、上部コーナー金物22の底板22aが皿バネ44に衝突し、各皿バネ44の弾性力によって振動エネルギーが吸収される。
この際、皿バネ44の相互間で滑り摩擦が生じるため、より効率的な減衰効果が期待できる。
また、第1の減衰ワッシャ50及び第2の減衰ワッシャ56による圧縮衝撃力緩和効果が発揮される。
【0027】
以上のように、この除振架台10の減震ストッパ30の場合、減震用弾性部材38が滑り材よりなる外側層42と、減衰材よりなる内側層40からなる積層構造を備えているため、地震発生時における振動エネルギーを有効に分散・吸収することができる。
この結果、地震による大きな振動が長時間続いたとしても、減震用弾性部材38が容易に破壊させることがなく、その耐震性を維持することが可能となる。
【0028】
上記においては、ストッパボルト32の先端を下部架台14の下部コーナー金物28に固定すると共に、上部架台12の上部コーナー金物22の貫通孔34内に減震用弾性部材38を配置した例を示したが、この発明はこれに限定されるものではない。すなわち、ストッパボルト32の先端を上部架台12の上部コーナー金物22に固定すると共に、下部架台14の下部コーナー金物28側に大径の貫通孔を形成しておき、その中に減震用弾性部材38を配置させることもできる。
【0029】
また、上記においては、複数の皿バネ44を減震用弾性部材38の上端面側に配置させた例を示したが、減震用弾性部材38の下端面側に複数の皿バネ44を配置させることも当然に可能である。
あるいは、
図4に示すように、減震用弾性部材38の上端面側及び下端面側のそれぞれに複数の皿バネ44を配置させることもできる。この結果、上部架台12が上下方向に振動した際には、上部コーナー金物22の底板22aが上下2箇所で皿バネ44に衝突することになり、より効果的に振動を抑制することが可能となる。