【実施例】
【0018】
本発明による実施例に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るPCB汚染フィルム素子の処理装置10は、細分化(粉砕、裁断等)されたPCB汚染フィルム素子11をPCB除去溶剤(IPA、NS100、ヘキサン等)12で洗浄するPCB除去洗浄装置13と、前記PCB除去洗浄装置13で洗浄した後、PCB除去フィルム素子14中の残留PCB濃度を判定する卒業判定装置(以下、「判定装置」という)17と、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを溶解溶剤24で溶解・溶融する溶解装置20と、フィルム素子溶解物25を蒸留し、溶剤を回収する蒸留分離装置27と、を具備するものである。
なお、PCB汚染フィルム素子11は、裁断機41や既に裁断又は小片とされ、保管されている保管容器42からのものである。
【0019】
ここで、本発明でPCB汚染フィルム素子11とは、PCBが含有されていた絶縁油を用いたトランス、コンデンサ等の分解処理物の内、フィルム素子部分を、粉砕手段や裁断手段により細分化された処理物でPCBが付着又は含有している汚染物をいう。
【0020】
PCB汚染フィルム素子11をPCB除去溶剤12で洗浄するPCB除去洗浄装置13は、現在稼動しているPCB処理設備での公知のPCB洗浄装置であり、例えばPCB除去溶剤として例えばイソプロピルアルコール(IPA)、NS100、ヘキサン、アルコール、アセトン、トルエン等が用いられており、PCB除去溶剤にPCB汚染フィルム素子11をメッシュ状の袋に入れ、所定時間又は所定回数浸漬等させて、PCB汚染フィルム素子11からPCBを洗浄除去している。
【0021】
このPCB除去洗浄装置13で洗浄がなされたPCB除去フィルム素子14は、PCBが残留しているか否かの判定を行う卒業判定装置17で判定がなされる。
この判定装置17では、PCB除去フィルム素子14を判定槽に浸漬等し、判定液中に残留したPCBを溶解させ、判定液中のPCBの濃度を分析手段により測定することで、間接的にPCBの残留量を測定するものである。
【0022】
ここで、判定液としては、例えばヘキサン、イソプロピルアルコール又はイソプロピルアルコールと水との混合物、トリクロロエタン、パラフィン系炭化水素を例示することができる。
【0023】
この卒業判定装置17において、処理の基準以下にPCBが除去されたと判定されたものは、合格品である判定合格PCB除去フィルム素子14Aとなる。一方不合格品は再度PCB除去洗浄装置13で洗浄がなされる。
【0024】
この判定合格PCB除去フィルム素子14Aは、従来ではメッシュ等の袋に入れられたまま保管していたが、本発明では、以下のような溶解装置20及び蒸留分離装置27を用いた処理を行うようにしている。
【0025】
ここで、前記判定合格PCB除去フィルム素子14Aを溶解又は溶融させる溶解装置20は、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを投入する内槽21と、該内槽21を内部に収納する外槽22と、該外槽22を周囲から加熱する加熱手段26とを具備している。そして溶剤タンク23から溶解溶剤24を内槽21に投入し、前記加熱手段26で加熱しつつ、投入された判定合格PCB除去フィルム素子14Aを溶解又は溶融するようにしている。
【0026】
ここで、溶解溶剤24としては、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを溶解又は溶融させるものであり、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン(THF)等を例示することができる。
【0027】
溶解装置20での溶解の際には、外槽22の本体22aの周囲から加熱手段26で間接的に加熱して、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを徐々に溶解又は溶融処理している。
【0028】
また、溶解溶剤24を投入して溶解又は溶融させる温度としては、判定合格PCB除去フィルム素子14Aが溶解溶剤24に溶融又は溶解できる温度であればよく、例えば60〜100℃程度とすることとしている。
なお、内槽21内には、駆動手段Mにより駆動される攪拌手段31が設けられており、攪拌手段31により判定合格PCB除去フィルム素子14Aが溶解溶剤24に溶融又は溶解することの促進を図るようにしている。
【0029】
また、内槽21の上面は開口しており、溶解溶剤24で溶解又は溶融する際の蒸発物は、残留PCBが微量に含まれているので、外槽22の蓋22bに設けられた排気ラインLに介装されたバルブVを開放して外部に排出し、浄化手段43において、別途浄化処理される。
【0030】
溶解装置20で溶解又は溶融されたフィルム素子溶解物25は、内槽21に入れられたまま蒸留分離装置27に移動され、ここで蒸留処理され、蒸留物29と蒸留残渣(残渣)32とに分離され、減容化がなされる。
【0031】
蒸留分離装置27での蒸留条件としては、常圧で例えば80〜110℃としているが、使用する溶剤により適宜変更される。
【0032】
蒸留物29は溶剤回収タンク30に回収され、再度溶解装置20で用いる溶解溶剤24として再利用(※1)をしている。
【0033】
本発明では、PCB汚染フィルム素子11をPCB除去洗浄溶剤で洗浄除去したPCB除去フィルム素子14中の残留PCB濃度を卒業判定装置17で判定し、判定合格PCB除去フィルム素子14Aを溶解溶剤24を用いて溶解装置20で溶解・溶融させ、フィルム素子溶解物25としている。
【0034】
そして、このフィルム素子溶解物25を蒸留分離装置27で蒸留し、蒸留物29を冷却器28で冷却し、溶剤を回収している。
【0035】
また、蒸留分離装置27でのフィルム残渣固化物である残渣32を分離することとしている。
【0036】
この残渣32は、判定合格PCB除去フィルム素子14Aに僅かに含まれているPCBが濃縮されたものであり、判定合格PCB除去フィルム素子14Aからの減容化を図ることができる。
【0037】
すなわち、卒業判定装置17からの判定合格PCB除去フィルム素子14Aは、樹脂小片であるので、嵩があり、そのまま保管する場合には、大容積の保管区域が必要であるが、本発明によるPCB汚染フィルム素子の処理装置によれば、大幅な減容化を図ることとなる。
【0038】
また、この減容化によって、保管設備の容積のコンパクト化を図ることができる。
さらに、この減容化された残渣32は、溶剤が除去されているので、保管倉庫に長期保管した場合においても、作業環境の悪化となることが解消される。