(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源と、この光源からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、を備えてなる車両用照明灯具において、
上記リフレクタの反射面における上記投影レンズの光軸の略真上の位置に、前後方向に延びる谷線が形成されており、
上記リフレクタの反射面における上記谷線の左右両側に位置する左右1対の上部反射領域の各々が、上記光軸と直交する平面内において、上記谷線の左右両側から上記谷線へ向けて上向きにカーブした曲線に沿って延びるように形成されている、ことを特徴とする車両用照明灯具。
上記曲線における上向きにカーブした部分の曲率が、上記各上部反射領域の前端位置から後端位置へ向けて徐々に小さくなるように設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用照明灯具。
上記光源が、該光源の略真上の位置に前後方向に延びるステムが配置された光源バルブの発光部として構成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用照明灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、プロジェクタ型の車両用照明灯具からの照射光により形成される配光パターンは、車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎる一方、その左右両側部分が暗くなってしまう傾向にある。
【0008】
また、上記「特許文献1」に記載されているように、光源が、その略真上の位置に前後方向に延びるステムが配置された光源バルブの発光部で構成されている場合には、リフレクタの反射面における投影レンズの光軸の略真上の位置する反射領域にステムの影が形成されてしまうので、これにより車両前方路面の近距離領域の正面部分にスジ状の暗部が形成されてしまうこととなる。
【0009】
これに対し、上記「特許文献2」に記載されているように、リフレクタの反射面における投影レンズの光軸の略真上の位置する反射領域が、その後端位置から前端位置へ向けて上向きにカーブした曲線に沿って延びるように形成された構成とすれば、スジ状の暗部を形成する原因となる反射光を車両前方路面の遠方領域へ向けた上で近距離領域の明るさを増大させることができ、これにより車両前方路面の近距離領域の正面部分にスジ状の暗部が形成されにくくすることができる。
【0010】
しかしながら、このような構成を採用した場合においても、車両前方路面の近距離領域をより均一な明るさで照射するという観点からは、さらに改善の余地がある。
【0011】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、プロジェクタ型の車両用照明灯具において、車両前方路面の近距離領域の視認性を高めることができる車両用照明灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、リフレクタの反射面の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0013】
すなわち、本願発明に係る車両用照明灯具は、
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源と、この光源からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、を備えてなる車両用照明灯具において、
上記リフレクタの反射面における上記投影レンズの光軸の略真上の位置に、前後方向に延びる谷線が形成されており、
上記リフレクタの反射面における上記谷線の左右両側に位置する左右1対の上部反射領域の各々が、上記光軸と直交する平面内において、上記谷線の左右両側から上記谷線へ向けて上向きにカーブした曲線に沿って延びるように形成されている、ことを特徴とするものである。
【0014】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば、放電バルブの発光部やハロゲンバルブのフィラメント等が採用可能である。
【0015】
上記「谷線」は、リフレクタの反射面における投影レンズの光軸の略真上の位置に、前後方向に延びるように形成されているが、その際、この「谷線」は、反射面の後端位置まで延びるように形成されていることは必ずしも必要でない。
【0016】
上記各「上部反射領域」は、光軸と直交する平面内において、谷線の左右両側から谷線へ向けて上向きにカーブした曲線に沿って延びるように形成されてされていれば、その曲線における変曲点の位置や上向きにカーブした部分の曲率等の具体的な構成は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用照明灯具は、プロジェクタ型の車両用照明灯具として構成されているが、そのリフレクタの反射面における投影レンズの光軸の略真上の位置には、前後方向に延びる谷線が形成されているので、この谷線の左右両側に位置する左右1対の上部反射領域で反射した光源からの光を、投影レンズの後側焦点面上において互いに交差させるようにすることが容易に可能となる。そしてこれにより、車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎてしまわないようにすることが可能となる。
【0018】
その際、これら各上部反射領域は、光軸と直交する平面内において、谷線の左右両側から谷線へ向けて上向きにカーブした曲線に沿って延びるように形成されているので、各上部反射領域からの反射光を投影レンズの後側焦点面上において左右方向に拡散する光として交差させることができる。したがって、投影レンズからの出射した各上部反射領域からの反射光により形成される配光パターンを、互いに重複した状態で左右方向に拡がる配光パターンとすることができる。このため、車両前方路面の近距離領域の正面部分の左右両側部分の明るさを増大させることができ、これにより車両前方路面の近距離領域を均一な明るさで照射することができる。
【0019】
したがって本願発明によれば、プロジェクタ型の車両用照明灯具において、車両前方路面の近距離領域の視認性を高めることができる。
【0020】
上記構成において、上記曲線における上向きにカーブした部分の曲率が、各上部反射領域の前端位置から後端位置へ向けて徐々に小さくなるように設定された構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0021】
すなわち、各上部反射領域からの反射光のうち、その前端位置に近い領域からの反射光は、投影レンズから大きい下向き角度で出射するので、車両前方路面においてより近距離に位置する領域を照射する光となる。また、上記曲線における上向きにカーブした部分の曲率が大きくなる程、その部分の近傍領域からの反射光の左右方向の拡散角度は大きくなる。
【0022】
そこで、上記曲線における上向きにカーブした部分の曲率を、各上部反射領域の前端位置から後端位置へ向けて徐々に小さくなるように設定すれば、車両前方路面においてより近距離に位置する領域をより大きい左右拡散角度で照射することができる。そしてこれにより、車両前方路面の近距離領域をより一層均一な明るさで照射することができる。
【0023】
上記構成において、光源の種類が特に限定されないことは上述したとおりであるが、この光源が、その略真上の位置に前後方向に延びるステムが配置された光源バルブの発光部として構成されている場合には、本願発明の構成を採用することが特に効果的である。
【0024】
すなわち、光源の略真上の位置に前後方向に延びるステムが配置されている場合において、リフレクタの反射面が通常の反射面形状で構成されていたとすると、その光軸の略真上の位置する反射領域にステムの影が形成されてしまい、車両前方路面の近距離領域の正面部分にスジ状の暗部が形成されてしまうこととなる。
【0025】
これに対し、本願発明においては、各上部反射領域からの反射光を投影レンズの後側焦点面上において左右方向に拡散する光として交差させることにより、互いに重複した状態で左右方向に拡がる配光パターンを形成することができるので、車両前方路面の近距離領域の正面部分にスジ状の暗部を形成してしまうことなくその左右両側部分の明るさを増大させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用照明灯具10を示す側断面図であり、
図2は、その平断面図である。
【0029】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用照明灯具10は、車両用前照灯の灯具ユニットであって、図示しないランプボディ等に対して光軸調整可能に組み込まれた状態で用いられるようになっている。
【0030】
この車両用照明灯具10は、光源バルブ12と、リフレクタ14と、投影レンズ16と、シェード18と、ホルダ20とを備えてなり、左配光のロービーム用配光パターンを形成するように構成されている。
【0031】
投影レンズ16は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであって、その光軸Axが車両前後方向に延びるようにして配置されている。そして、この投影レンズ16は、その後側焦点面(すなわち投影レンズ16の後側焦点Fを含む焦点面)上に形成される光源像を、灯具前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に反転像として投影するようになっている。
【0032】
光源バルブ12は、光軸Axと略同軸で延びるフィラメント12aを発光部(すなわち光源)とするハロゲンバルブであって、リフレクタ14の後頂開口部14bに挿着されている。その際、この光源バルブ12は、光軸Axの略真上において該光軸Axと略平行に延びるフィラメントサポートとしてのステム12bを備えた、いわゆるH11タイプのハロゲンバルブとして構成されている。
【0033】
図3は、リフレクタ14を光源バルブ12と共に示す、
図1のIII−III線矢視図である。
【0034】
同図にも示すように、リフレクタ14は、フィラメント12aからの光を投影レンズ16へ向けて反射させる反射面14aを有している。この反射面14aの光軸Axを含む平面に沿った断面形状は略楕円形に設定されており、その離心率は鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そしてこれにより、この反射面14aで反射したフィラメント12aからの光を、鉛直断面内においては後側焦点F近傍に略収束させるとともに、水平断面内においてはその収束位置を後側焦点Fの前方側へ変位させるようになっている。なお、この反射面14aの具体的な構成については、後に詳述する。
【0035】
ホルダ20は、投影レンズ16とリフレクタ14との間に配置された筒状の部材であって、その前端部において投影レンズ16を固定支持するとともに、その後端部においてリフレクタ14に固定支持されている。
【0036】
シェード18は、ホルダ20の内部の略下半部においてその前端部から後方側へ延びるようにして該ホルダ20と一体で形成されている。このシェード18は、その上端縁18aが投影レンズ16の後側焦点Fの上方近傍を通るように形成されており、これによりリフレクタ14の反射面14aからの反射光の一部を遮蔽して、投影レンズ16から前方へ出射する上向き光の大半を除去するようになっている。その際、このシェード18の上端縁18aは、投影レンズ16の後側焦点面に沿って水平方向に略円弧状に延びるとともに左右段違いで形成されている。
【0037】
リフレクタ14の反射面14aにおける光軸Axの下方に位置する下部反射領域14aLは、その光軸Axの上方に位置する上部反射領域14aUL、14aURよりも、フィラメント12aからの光を光軸Ax寄りにやや大きく偏向反射させるように構成されており、これにより反射面14aからの反射光が必要以上にシェード18によって遮蔽されてしまわないようになっている。
【0038】
一方、この反射面14aにおける光軸Axの上方に位置する上部反射領域14aUL、14aURは、光軸Axを含む鉛直面を境にして左右対称の反射面形状を有している。その際、これら各上部反射領域14aUL、14aUR々は、通常の反射面形状(
図2において2点鎖線で示すような反射面形状)よりも、前方へ向けてやや光軸Ax寄りの方向へ向いた反射面形状を有している。
【0039】
そしてこれにより、左側(灯具正面視では右側、以下同様)の上部反射領域14aULからの反射光は、投影レンズ16の後側焦点面を、光軸Axの左側だけでなくその右側にも多少入り込むようにして通過するとともに、右側の上部反射領域14aURからの反射光は、投影レンズ16の後側焦点面を、光軸Axの右側だけでなくその左側にも多少入り込むようにして通過するようになっている。
【0040】
図3に示すように、この反射面14aには、その左右1対の上部反射領域14aUL、14aURの境界位置(すなわち光軸Axの真上の位置)に、前後方向に延びる谷線Tが形成されている。
【0041】
そして、各上部反射領域14aUL、14aURは、光軸Axと直交する平面内において、谷線Tの左右両側から谷線Tへ向けて上向きにカーブしたS字状の曲線Cに沿って延びるように形成されている。
【0042】
その際、これら各上部反射領域14aUL、14aURにおける曲線Cの変曲点の位置は、
図3において2点鎖線で示すように、灯具正面視において光軸Axから斜め上方へ延びる直線Lに略沿った位置に設定されている。そしてこれにより、左側の上部反射領域14aULにおける直線Lよりも右側に位置する扇形領域14aULaにおいては、フィラメント12aからの光を前方へ向けて右方向へ拡散させながら反射させる一方、右側の上部反射領域14aURにおける直線Lよりも左側に位置する扇形領域14aURaにおいては、フィラメント12aからの光を前方へ向けて左方向へ拡散させながら反射させるようになっている。
【0043】
図4は、
図2に対して、リフレクタ14の断面位置のみを
図3のIV−IV線の位置で示す平断面図である。
【0044】
同図においては、右側の上部反射領域14aURからの反射光の光路を示している。
【0045】
同図に示すように、右側の上部反射領域14aURからの反射光は、この上部反射領域14aURに扇形領域14aURaが形成されていることにより、投影レンズ16の後側焦点面を、光軸Axの左側においても光軸Axから左側に比較的大きく離れた位置までの広範囲にわたって通過することとなる。その際、仮に、この上部反射領域14aURに扇形領域14aURaが形成されていなかったとした場合には、同図に2点鎖線で示すように、この上部反射領域14aURの左端部からの反射光は、投影レンズ16の後側焦点面を、光軸Axの左側近傍において通過することとなる。なお、左側の上部反射領域14aULからの反射光についても同様である。
【0047】
同図に示すように、曲線Cの変曲点の位置を結ぶ直線Lは、各上部反射領域14aUL、14aURにおいて、フィラメント12aからの光がステム12bの陰になって全く入射しない全影領域の境界線L1と、部分的に入射する半影領域の境界線L2との間に、位置設定されている。
【0048】
また、曲線Cにおける上向きにカーブした部分の曲率は、各上部反射領域14aUL、14aURにおける扇形領域14aULa、14aURaの前端位置から後端位置へ向けて徐々に小さくなるように設定されている。すなわち、この曲率は、各扇形領域14aULa、14aURaの前端縁の曲線C0において最も大きく、その後方側に位置する曲線C1においてやや小さくなり、さらにその後方側に位置する曲線C2、C3において順次小さくなっている。そしてこれにより、左側の上部反射領域14aULからの反射光の右方向拡散角度および右側の上部反射領域14aURからの反射光の左方向拡散角度は、それぞれ、その前端領域において最も大きくなっている。
【0049】
図6は、本実施形態に係る車両用照明灯具10から前方へ照射される光により、灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0050】
このロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びるように形成されている。その際、V−V線よりも右側の対向車線側カットオフラインCL1は、水平方向に延びるように形成されており、一方、V−V線よりも左側の自車線側カットオフラインCL2は、対向車線側カットオフラインCL1の左端位置から傾斜部を介して段上がりになった後に水平方向に延びるように形成されている。
【0051】
このロービーム用配光パターンPLは、リフレクタ14の反射面14aで反射したフィラメント12aからの光によって投影レンズ16の後側焦点面上に形成されたフィラメント12aの像を、投影レンズ16により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、その左右段違いのカットオフラインCL1、CL2は、シェード18の上端縁18aの反転投影像として形成されるようになっている。
【0052】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、対向車線側カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。これは、シェード18の上端縁18aにおける光軸Axよりも左側に位置する部分が、光軸Axを含む水平面よりもやや上方において光軸Axから左方向へ水平に延びていることによるものである。そして、このロービーム用配光パターンPLにおいては、エルボ点Eを囲むようにして高光度領域であるホットゾーンHZが形成されている。
【0053】
なお、同図において、2点鎖線で輪郭を示すロービーム用配光パターンPL1は、仮に、リフレクタ14の反射面14aが、従来のように
図2において2点鎖線で示すような反射面形状を有しているとした場合に形成されるロービーム用配光パターンであり、また、破線で輪郭を示すロービーム用配光パターンPL0は、さらに、上記従来の反射面形状において、仮に、光軸Axの真上にステム12bが存在しないとした場合に形成されるロービーム用配光パターンである。
【0054】
ロービーム用配光パターンPL0は、その下端縁におけるV−V線の近傍領域が下方へ大きく突出しており、このため車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎてしまうこととなる。
【0055】
一方、ロービーム用配光パターンPL1は、ロービーム用配光パターンPL0に対して、その下端縁におけるV−V線の近傍領域に上方側へ大きく括れた凹部PL1aが形成されたものとなっている。このような凹部PL1aが形成されるのは、フィラメント12aから略真上の方向へ出射した光がステム12bによって遮蔽されてしまい、反射面14aにおける光軸Axの略真上の反射領域に、フィラメント12aからの光が入射しなくなってしまうことによるものである。そして、この凹部PL1aは、車両前方路面においては、比較的近距離領域から前方へ向けて延びるスジ状の暗部として形成されてしまうこととなる。
【0056】
これに対し、本実施形態に係る車両用照明灯具10からの照射光により形成されるロービーム用配光パターンPLには、このような凹部PL1aは形成されておらず、また、このロービーム用配光パターンPLは、その下端領域が略均一な光度分布を有するものとなっている。
【0057】
以下、この点について、
図7に基づいて説明する。
【0058】
図7(a)に示す配光パターンは、従来の車両用照明灯具からの照射光により形成されるロービーム用配光パターンPL1である。
【0059】
このロービーム用配光パターンPL1は、リフレクタの反射面の左半分からの反射光により形成される右側配光パターンPL1Rと、その右半分からの反射光により形成される左側配光パターンPL1Lとの合成配光パターンとして形成されるが、上述した凹部PL1aは右側配光パターンPL1Rと左側配光パターンPL1Lとの間に形成されている。なお、
図7(a)において破線で輪郭を示すロービーム用配光パターンPL0は、ステム12bが存在しない場合に形成されるロービーム用配光パターンである。
【0060】
図7(b)に示す配光パターンは、従来の車両用照明灯具に対して、本実施形態のように、各上部反射領域14aUL、14aURが前方へ向けてやや光軸Ax寄りの方向へ向いた反射面形状を有している場合に形成されるロービーム用配光パターンPL2である。
【0061】
このロービーム用配光パターンPL2は、リフレクタ14の反射面14aの左半分からの反射光により形成される右側配光パターンPL2Rと、その右半分からの反射光により形成される左側配光パターンPL2Lとの合成配光パターンとして形成されるが、右側配光パターンPL2Rは、右側配光パターンPL1Rの左端縁を左方向を拡げるようにして形成されており、左側配光パターンPL2Lは、左側配光パターンPL1Lの右端縁を左方向を拡げるようにして形成されている。これにより、このロービーム用配光パターンPL2においては、ロービーム用配光パターンPL1において形成されていた凹部PL1aが消滅している。
【0062】
図7(c)に示す配光パターンは、本実施形態のように、各上部反射領域14aUL、14aURが前方へ向けてやや光軸Ax寄りの方向へ向いた反射面形状を有しており、かつ、各上部反射領域14aUL、14aURに扇形領域14aULa、14aURaが形成されている場合に形成されるロービーム用配光パターンPLである。
【0063】
このロービーム用配光パターンPLは、リフレクタ14の反射面14aの左半分からの反射光により形成される右側配光パターンPLRと、その右半分からの反射光により形成される左側配光パターンPLLとの合成配光パターンとして形成されるが、右側配光パターンPLRは、右側配光パターンPL2Rの左端縁をさらに左方向を拡げるようにして形成されており、左側配光パターンPLLは、左側配光パターンPL2Lの右端縁を左方向をさらに拡げるようにして形成されている。しかも、右側配光パターンPLRの左端縁の左方向拡散度合および左側配光パターンPLLの右端縁の右方向拡散度合は、その上端部から下端部へ向けて徐々に大きくなっている。これにより、このロービーム用配光パターンPLにおいては、ロービーム用配光パターンPL2に比して、左側配光パターンPLLと右側配光パターンPLRとの重複部分がかなり幅広い配光パターンとなっており、かつ、その重複部分は、ロービーム用配光パターンPLの下端部において最も幅広くなっている。
【0064】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0065】
本実施形態に係る車両用照明灯具10は、プロジェクタ型の車両用照明灯具として構成されているが、そのリフレクタ14の反射面14aにおける投影レンズ16の光軸Axの略真上の位置には、前後方向に延びる谷線Tが形成されているので、この谷線Tの左右両側に位置する左右1対の上部反射領域14aUL、14aURで反射したフィラメント12aからの光を、投影レンズ16の後側焦点面上において互いに交差させるようにすることが容易に可能となる。そしてこれにより、車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎてしまわないようにすることが可能となる。
【0066】
その際、これら各上部反射領域14aUL、14aURは、光軸Axと直交する平面内において、谷線Tの左右両側から谷線Tへ向けて上向きにカーブした曲線Cに沿って延びるように形成されているので、各上部反射領域14aUL、14aURからの反射光を投影レンズ16の後側焦点面上において左右方向に拡散する光として交差させることができる。したがって、投影レンズ16からの出射した各上部反射領域14aUL、14aURからの反射光により形成される配光パターンPLR、PLLを、互いに重複した状態で左右方向に拡がる配光パターンとすることができる。このため、車両前方路面の近距離領域の正面部分の左右両側部分の明るさを増大させることができ、これにより車両前方路面の近距離領域を均一な明るさで照射することができる。
【0067】
したがって本実施形態によれば、プロジェクタ型の車両用照明灯具10において、車両前方路面の近距離領域の視認性を高めることができる。
【0068】
しかも本実施形態においては、上記曲線Cにおける上向きにカーブした部分の曲率が、各上部反射領域14aUL、14aURの前端位置から後端位置へ向けて徐々に小さくなるように設定されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0069】
すなわち、各上部反射領域14aUL、14aURからの反射光のうち、その前端位置に近い領域からの反射光は、投影レンズ16から大きい下向き角度で出射するので、車両前方路面においてより近距離に位置する領域を照射する光となる。また、曲線Cにおける上向きにカーブした部分の曲率が大きくなる程、その部分の近傍領域からの反射光の左右方向の拡散角度は大きくなる。
【0070】
そこで、曲線Cにおける上向きにカーブした部分の曲率を、各上部反射領域14aUL、14aURの前端位置から後端位置へ向けて徐々に小さくなるように設定すれば、車両前方路面においてより近距離に位置する領域をより大きい左右拡散角度で照射することができる。そしてこれにより、車両前方路面の近距離領域をより一層均一な明るさで照射することができる。
【0071】
さらに本実施形態においては、光源が、H11タイプのハロゲンバルブである光源バルブ12のフィラメント12aで構成されており、このフィラメント12aの略真上の位置に前後方向に延びるステム12bが配置されているので、本実施形態の構成を採用することが特に効果的である。
【0072】
すなわち、フィラメント12aの略真上の位置に前後方向に延びるステム12bが配置されている場合において、リフレクタ14の反射面14aが通常の反射面形状で構成されていたとすると、その光軸Axの略真上の位置する反射領域にステム12bの影が形成されてしまい、車両前方路面の近距離領域の正面部分にスジ状の暗部が形成されてしまうこととなる。
【0073】
これに対し、本実施形態においては、各上部反射領域14aUL、14aURからの反射光を投影レンズ16の後側焦点面上において左右方向に拡散する光として交差させることにより、互いに重複した状態で左右方向に拡がる配光パターンPLR、PLLからなるロービーム用配光パターンPLを形成することができるので、車両前方路面の近距離領域の正面部分にスジ状の暗部を形成してしまうことなくその左右両側部分の明るさを増大させることができる。
【0074】
上記実施形態においては、谷線Tが反射面14aの前端位置から後端位置まで延びるように形成されているものとして説明したが、各上部反射領域14aUL、14aURにおける後端位置の近傍領域からの反射光は、車両前方路面の遠方領域を照射する光となり、車両前方路面の近距離領域の正面部分を照射してしまうことはなく、また、ステム12bの存在により車両前方路面の近距離領域の正面部分に暗部を形成してしまうこともないので、谷線Tが反射面14aの前端位置から途中位置まで形成された構成とすることも可能である。
【0075】
上記実施形態においては、車両用照明灯具10が、ロービーム用配光パターンPLとして、左配光のロービーム用配光パターンを形成するように構成されているものとして説明したが、右配光のロービーム用配光パターンを形成するように構成されている場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより同様の作用効果を得ることができ、さらに、フォグランプ用の配光パターン等を形成するように構成されている場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0076】
なお、上記実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。