【実施例】
【0042】
実施例1
この実施例は、正に帯電した主鎖、イメージング部分、および導入遺伝子をエンコードするcDNAが結合した負に帯電した主鎖を有する組成物の調製および評価を説明する。評価はインビトロである。
次の成分を調製する:
1.Lysの側鎖アミノ末端によりGly
3Arg
7のカルボキシ末端と20%の飽和度で結合したGly
3Arg
7を有するポリリシンからなる正に帯電した主鎖。リン酸塩緩衝塩溶液(PBS)中1.5mg/mLの濃度で主鎖部分の溶液を調製する。
2.サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下で青色蛍光蛋白を発現するcDNAを調製し、PBS中0.5mg/mL濃度で使用する。
3.デキストラン−DOTA−ガドリニウム錯体(Casaliら、Acad. Radiol.5:S214-S218 (1998)参照)をPBS中1:2の希釈度で使用する。
次の混合物(a)を三重反復試験において調製する:100μLの前記「2」を60μLの前記「3」と混合し、140μLのPBSで希釈し、45秒間撹拌する。
【0043】
次のものを含む3個の異なる試験管を調製した:
(b)400μLの前記「1」、(c)200μLのPBSで希釈した200μLの前記「1」および(d)300μLのPBSで希釈した100μLの前記「1」。
3個の試験管すべてを45秒間撹拌する。「a」の試験管を「b」、「c」、および「d」のそれぞれの試験管と併せて、90秒間撹拌する。これらの組み合わせた混合物のそれぞれの200μLを、HA−VSMC細胞(ATCC, Rockville, MD)を含む6−ウェル細胞培養プレート上の別個のウェル(三重複試験)中に入れる。各ウェルを、トランスフェクションの前に、無色素、無血清M−199メディアで一回予洗する。細胞/トランスフェクション剤混合物を、37℃で加湿10%CO
2チャンバー中で4.5時間インキュベートし、M−199メディアで洗浄し、次に10%FBSとともにインキュベートする。直ちに初期分布のMR分光分析においてイメージ化する。24時間後、分光分析を繰り返し、その後細胞をプレートから除去し、青色蛍光蛋白についてFACS分析を用いてトランスフェクションの効率を測定する。
【0044】
実施例2
この実施例は、細胞毒性遺伝子を担うイメージ化された腫瘍特異性複合体である本発明の組成物の調製を説明する。
次の成分を調製する:
1.Lysの側鎖アミノ末端によりGly
3Arg
7(配列番号:1)のカルボキシ末端と20%の飽和度で結合したGly
3Arg
7(配列番号:1)を有するポリリシンからなる正に帯電した主鎖。リン酸塩緩衝塩溶液(PBS)中1.5mg/mLの濃度で主鎖部分の溶液を調製する。
2.サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下で単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼを発現するcDNAを、PBS中0.5mg/mL濃度で使用する。
3.デキストラン−DOTA−ガドリニウム錯体をPBS中1:2の希釈度で使用する。
4.前記「2」の成分に対して1:2の負電荷比を得るために選択されたサイズ範囲およびPBS中濃度のデキストランに対して5%の飽和度の所望の腫瘍抗原に対して特異性の接合Fabフラグメント。
【0045】
次の混合物(a)を三重反復試験において調製する:100μLの前記「2」を60μLの前記「3」および100μLの「4」と混合し、40μLのPBSで希釈し、45秒間撹拌する。3個の異なる試験管:(b)400μLの前記「1」、(c)200μLのPBSで希釈した200μLの前記「1」および(d)300μLのPBSで希釈した100μLの前記「1」。3個の試験管すべてを45秒間撹拌する。「a」の試験管を「b」と合わせ、90秒間撹拌して混合物Bを調製する。「a」の試験管を「c」と合わせて90秒間撹拌して混合物Cを調製する。「a」の試験管を「d」と合わせて90秒間撹拌して混合物Dを調製する。これらの合わせた混合物のそれぞれの200μLを、200μLの冷30%pluronic F−127(BASF)とあわせて使用する。合わせた溶液を、インビトロでの推定腫瘍の切除バイオプシーにより形成された潜在的な空間中に注入する。移植後、1日後および3日後にMRにおいてイメージ化する。移植直後、FDAガイドラインに従ってガンシクロビルの全身性投与を開始する。この複合システムにより所望の腫瘍細胞の診断的イメージングならびにこれらの同じ細胞の細胞毒性療法ができる。ゲル(pluronic)分布を時間0でイメージ化する。24時間後、ゲルは分解し、コントラストシグナルは残存する腫瘍微小浸潤の位置ならびに排液経路に沿ったシード部位に集中する。残存腫瘍のイメージングをこのようにして行う。ガンシクロビル活性はHSV−TK吸収領域に集中するので、標的療法もこのシステムにおいて行われる。療法に対する反応のモニタリングもイメージングにより同様に行われる。
【0046】
実施例3
この実施例は、細胞培養におけるトランスフェクションの多成分法の使用を説明する。
この実施例において、成分ベースの方法の一回分を評価するために6−ウェルプレートを使用した。グリシンの末端のカルボキシルをリシン側鎖の遊離アミンと18%の飽和度(すなわち、それぞれ100のリシン残基の内18をGly
3Arg
7(配列番号:1)と接合させる)で接合させることにより、−Gly
3Arg
7(配列番号:1)をポリリシン150000と接合することにより、正に帯電した主鎖を調製した。結果として得られた主鎖をNUNU−01と命名した。
次の混合物を調製した:
1)CMVプロモーターにより駆動される青色蛍光蛋白を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して4:1の電荷比のポリリシン(150000)。
2)CMVプロモーターにより駆動される青色蛍光蛋白を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して15:1の比のNUNU−01。
3)CMVプロモーターにより駆動される青色蛍光蛋白を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して10:1の比のNUNU−01。
4)CMVプロモーターにより駆動される青色蛍光蛋白を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して4:1の比のNUNU−01。
5)CMVプロモーターにより駆動される青色蛍光蛋白を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して1.25:1の比のNUNU−01。
6)CMVプロモーターにより駆動される青色蛍光蛋白を発現するプラスミドの0.5mg/mL溶液に対して5:1の比の製造業者の推奨に従ったSuperfect(Quiagen)。
【0047】
約1.0mLのそれぞれの溶液を6ウェルプレート上70%コフルエントHA−VSMC一次ヒト大動脈平滑筋細胞(継代21;ATCC, Rockville, MD)に添加し、10%血清を含むM−199中で48時間成長させた。低倍率の写真(全体で10倍)を青色蛍光蛋白フィルターおよびプランアポクロマートレンズを備えたNikon E600エピ蛍光顕微鏡を用いて各ウェルの上部から60度、180度および200度で撮影した。Image Pro Plus 3.0イメージ分析セットを用いて正である全細胞面積の割合を測定し、遺伝子送達の効率として記載した。ウェルをその後、色素排除試験(可視細胞は色素を排除するが、不可視細胞は排除できない)において評価し、続いて、リン酸塩緩衝塩溶液中0.4%SDS中に可溶化させた。サンプルをSpectronic Genesys 5UV/VIS分光光度計で595nmの波長(青色)で評価して、不可視細胞をトランスフェクション剤毒性の直接的尺度として定量化した。
【0048】
効率の結果は次の通りである(平均±標準誤差):
1)0.163±0.106%
2)10.642±2.195%
3)8.797±3.839%
4)15.035±1.098%
5)17.574±6.807%
6)1.199±0.573%
実験#4および#5は、ポリリシン単独およびSuperfectの両方と比較して統計的に有意な(Fisher PLSDおよびTUKEY−A posthoc試験での一因子ANOVA反復測定によりP<0.05)遺伝子送達効率の向上を示す。平均毒性データは次の通りである:
塩溶液−0.057A; 1)3.460A; 2)0.251A; 3)0.291A; 4)0.243A; 5)0.297A; 6)0.337A
結果として、毒性が低く、より有効な遺伝子送達が、NUNU−01のDNAに対する比が1.25〜4.0で達成できる。
【0049】
実施例4
この実施例は、本発明の組成物を用いた治療薬の経皮送達を説明する。
KおよびKNRのビオチニル化:
ポリリシン(K)および効率基が結合したポリリシン(KNR)をビオチンのスルホ−NHSエステルでビオチニル化した。
材料:およそMW=112000を有する蛋白KおよびKNRをスルホ−NHS−LCビオチン、MW=556(Pierce Scientific, Rockford, IL)とともに用いた。
方法:KおよびKNRは両方とも類似した分子量を有するので、これらについた同じ方法および計算を用いた。KNRについての方法を以下に詳細に説明する。
1.リン酸塩緩衝塩溶液中1mg/mL(8.9×10
−6ミリモル/mL)の濃度でストックKNR溶液を調製した。
2.使用直前に脱イオン水中10mg/mL濃度でスルホ−NHS−LC−ビオチンのストック溶液を調製した。40倍モル過剰のビオチン試薬を生じるために添加されるビオチン試薬の量を1mg/mL蛋白溶液について計算した。
計算:
・モル蛋白*40倍モル過剰=スルホ−NHS−LC−ビオチン(ミリモル)
8.9×10
−6ミリモルデキストラン*40倍=3.57×10
−4ミリモルのスルホ−NHS−LC−ビオチン試薬を添加
→3.57×10
−4ミリモルのスルホ−NHS−LC−ビオチン*556MWのスルホ−NHS−LC−ビオチン=ビオチン=1.98mgのスルホ−NHS−LC−ビオチン試薬を添加
従って、200mLのスルホ−NHS−LC−ビオチンストック溶液(合計2.0mg)を1.0mL KNRストック溶液に添加した。
3.蛋白およびビオチン試薬を含む試験管を室温で30分間インキュベートした。
4.反応混合物をミクロ透析装置(30KDの分子量カットオフ、Pierce, Scientific, Rockford, IL)に添加し、4000×gで遠心分離して、未反応ビオチンを除去した。2.0体積のPBSで希釈し、再透析した。生成物を「KNR−B」と命名した。
【0050】
インスリンのビオチニル化:
インスリンもビオチンのスルホ−NHSエステルでビオチニル化した。
材料:インスリン、MW=5733.5(Sigma Chemical, St Louis, MO)およびスルホ−NHS−LCビオチン、MW=556(Pierce Scientific, Rockford, IL)。
方法:
1.リン酸塩緩衝塩溶液中10mg/ml(1.74×10
−3ミリモル/mLインスリン)の濃度でストックインスリン溶液を調製した。
2.使用直前に脱イオン水中10mg/mL濃度でスルホ−NHS−LC−ビオチンのストック溶液を調製した。12モル過剰のビオチン試薬を生じるために1mg/mL蛋白溶液に添加されるビオチン試薬の量を計算した。
計算:
・添加されるビオチン試薬のミリモル数を計算した:
モル蛋白*12倍モル過剰=試薬(ミリモル)
1.74×10
−3ミリモルインスリン*12倍=2.09×10
−2ミリモルのスルホ−NHS−LC−ビオチン試薬を添加
→2.09×10
−2ミリモル*556MWのスルホ−NHS−LCビオチン=11.64mgのスルホ−NHS−LC−ビオチン試薬を添加
従って、1.164mLのスルホ−NHS−LC−ビオチンストック溶液(合計11.64mg)を1.0mLのインスリンストック溶液に添加した。
3.インスリンおよびビオチン試薬を含む試験管を室温で30分間インキュベートした。生成物を「インスリンB」と命名した。
【0051】
皮膚の採集:
ビオチニル化主鎖および/またはインスリンが皮膚を透過するかどうかを調べるための経皮処置のために、8週令のメスC57BLマウスの背中の皮膚を採集した。
方法:
1.c57BL6マウスをCO
2チャンバー中で安楽死させた後、解剖用はさみを用いて約6cm
2のマウスの背中皮膚を採集した。
2.皮膚を6の均一な断片に分割し、それぞれを6−ウェルプレートの一つのウェル上に置いた。
3.ダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)を各プレートウェルに添加した。
4.採集した皮膚をピンで止めるために24ウェルプレートを調製した。小さなスポンジを各ウェル中に入れた。
5.採集した皮膚サンプルを5のさらに小さな断片に切断し、各断片をスポンジの上部においた。
6.採集した皮膚の端を4本の針で留めた。
7.DMEMを各ウェルに添加するが、採集した皮膚を培地中に浸さないように注意した。
8.処置の準備できるまでプレートを氷上でインキュベートした。
【0052】
経皮処置の準備:
1.2mLのCetaphilローション(Galderma)中、次の6の治療薬を調製した:
【表1】
【0053】
2.試験管A〜Dについて、2mLのCetaphilローション中200μgのKNRまたはKを各試験管に添加し、均一に混合した。ビオチンを含まない1mLのポリ−L−リシン(K)を各試験管に添加し、均一に混合した。
3.試験管Eについて、2mLのCetaphilローション中200μgのKNRを添加し、均一に混合した。
4.5.11μLを約995μLのPBS中に添加することにより、ビオチニル化インスリンの200倍希釈物を調製した。
PBS中に溶解した蛋白を計算した:
KNR=8.9×10
−9モル/mL
K=8.9×10
−9モル/ml
インスリン=1.74×10
−6モル/mL
試験管中の蛋白を計算した:
KNR=8.9×10
−10モル/mL
K=8.9×10
−10モル/ml
【0054】
5.試験管EおよびFについて、33μLの希釈されたビオチニル化インスリン溶液および70μLのPBSを添加し、均一に混合した。
6.試験管AおよびCについて、100μLの通常のインスリンを添加し、均一に混合した。
7.試験管BおよびDについて、33μLの通常のインスリンおよび70μLのPBSを添加し、均一に混合した。
【0055】
処置の時点:
1.採集した皮膚プレートを氷インキュべーションから除去した。
2.各試験管をピンで固定した皮膚サンプルの適当なカラムにかけた。
3.それぞれ15、30、60分および17時間の最後に採集した皮膚を−35℃のフリーザーに移した。採集した皮膚を一夜凍結した状態に維持した。
4.凍結した採集皮膚サンプルをとり、これを氷インキュべーション上においた。
5.凍結した採集した皮膚サンプルをさらに小さな断片に切り出した。
6.ホルムアルデヒドを入れた試験管に一断片を移した。
7.第二の断片を空の試験管に移し、これを貯蔵するためにフリーザー中に入れた。
8.液体アセトンおよびドライアイス溶液中O.C.T.化合物中第三の断片を凍結させた。凍結サンプルを凍結断片のフリーザー中に入れた。
【0056】
材料:NeutraAvidinアルカリホスファターゼ接合(Pierce Scientific, Rockford, IL);Tris−HCl緩衝液、pH=7.2(Pierce Scientific, Rockford, IL);NBT/BCIP溶液(Pierce Scientific, Rockford, IL)。
方法:
1.50μLのNeutraAvidinを添加し、Tris−HCl緩衝液で体積を50mLまでにした。
2.1mLのNeutraAvidinおよび緩衝溶液を採集された皮膚サンプルの各試験管に添加した。
3.採集された皮膚サンプルの試験管を1時間、NeutraAvidinおよび緩衝溶液中で実験した。
4.1mLのNBT/BCIPをそれぞれ新しい空の試験管に添加し、各試験管を標識した。
5.皮膚をNeutraAvidinおよび緩衝溶液から取り出した。皮膚をPBS中4回洗浄し、適当なNBT/BCIP試験管中に入れた。
6.採集された皮膚サンプルの試験管をNBT/BCIP溶液中1時間実験した。
7.1mLの冷PBSで再度リンスした。
8.標識したサンプル中採集した皮膚サンプルを貯蔵した。
9.皮膚サンプルを二等分し、二等分された面を写真撮影した。
【0057】
結果:
【表2】
【0058】
図3〜10は処方A(
図3および4)、処方C(
図5および6)、処方E(
図7および8)、および処方F(
図9および10)の送達の15分後(
図3、5、7、9)および17時間後(
図4、6、8、10)に得られた結果の代表的な顕微鏡写真を表す。正に帯電した主鎖としてKを有する複合体を受容した対照群は低レベルの主に小胞への主鎖の受動的伝達を示すが(
図5および6)、実質的に治療薬は送達されない(
図7および8)。対照的に、KNRを含む複合体で処置された群は、あらゆるレベルの表皮および真皮に対して主鎖(
図3および4)および治療薬(
図9および10)両方の高レベルの送達を示す。従って、この実施例により得られる処方は治療薬の有効な経皮送達を可能にする。
【0059】
実施例5
この実施例は結合したF(ab)
2フラグメントを用いた組成物の標的送達を説明する。
一般原理:
IgG抗体を開裂してF(ab)
2フラグメントを得、次に精製してFcおよび未反応IgG抗体を除去した。F(ab)
2フラグメントを次にアルデヒド活性化(酸化)デキストランと縮合した。過剰のアルデヒドをトリスで急冷し、遊離ヒドロキシルをリン酸エステル化して、高度に負に帯電したデキストランリン酸塩と共有結合したF(ab)
2フラグメント(包括的に「標的成分」と称する)を得た。次にこの標的成分、インスリン、および効率成分(「KNR」)を有する正に帯電した主鎖の間に自己集合性複合体が形成された。自己集合性複合体の、複合体の標的抗原を有する細胞への送達を向上させる能力を次に評価した。
【0060】
F(ab)
2開裂:
平滑筋細胞を認識するF(ab)
2フラグメントが、平滑筋α−アクチン(クローン1A9、DAKO, Carpinteria, CA)に対するIgG抗体の固定化ペプシン(Pierce Chemical, Rockford, IL)消化により生成した。
方法:
1.クローン1A9をpH4.5の20mMリン酸ナトリウム緩衝液に対して1mg/mLで透析した。
2.0.1M酢酸ナトリウム(pH4.5)+0.05%アジ化ナトリウム中50%グリセロールを含む50%グリセロール(v/v)水性スラリーとして固定化ペプシンを供給した。ペプシンゲル−グリセロール−水スラリーを反転させることにより混合した。
3.0.25mLの固定化ペプシンの50%スラリーをガラス試験管(0.125mLの固定化ペプシンゲル)に添加した。
【0061】
4.4.0mLの脱イオン水中20mM酢酸ナトリウム(pH4.0)(「消化緩衝液」)を添加した。反転することによりよく混合した。血清分離器または遠心分離器を用いて(1000×gで5分間)緩衝液からゲルを分離した。緩衝液を捨て、新たな4.0mLの緩衝液を用いてこの洗浄工程を繰り返した。
5.固定化ペプシンを0.5mLの消化緩衝液中に再懸濁した。
6.フラグメントの生成:1.0mLの透析された1A9IgGを、固定化ペプシンを含む試験管に添加した。試験管を37℃、高速で振とうする水浴中で4時間インキュベートした。インキュべーションの間、ゲルを一定して混合した。
7.1.5mLの10mMTris−HCl、pH7.5を試験管に添加した。可溶化F(ab)
2およびFcおよび未消化IgGを固定化ペプシンゲルから血清分離管を用いて分離した。1000×gで5分間遠心分離し、フラグメントを含む上清を除去した。
【0062】
F(ab)
2精製:
F(ab)
2フラグメントの未消化IgGおよびFcフラグメントからの分離は固定化蛋白Aカラムを用いて行った。
材料:ペプシン+Tris−HClから調製された蛋白サンプル;緩衝液A(0.2M NaH
2PO
4(2.4gを使用)、0.15M NaCl(8.8gを使用)、脱イオンH
2Oで1リットルの体積に調節し、pHを8.0にするために必要な量);緩衝液B(0.2M Na
2HPO
4(0.676g)、0.1Mクエン酸(22.5ml)、脱イオンH
2O(46.3ml)、pHを4.5に調節)。
方法:(注:緩衝液Aを使用)
1.マイクロピペットにできるだけ均一に綿を充填した。
2.緩衝液A中樹脂の1:1懸濁液(1000μLの緩衝液Aを樹脂中に添加した。1mLの懸濁液をカラムに注いだ。カラムを沈殿するように流出させた。沈殿したら、カラムを10mLの緩衝液Aで洗浄した)。
3.蛋白サンプルをカラムにゆっくりと添加した。
4.F(ab)
2フラグメントを12mLの緩衝液Aで溶出した。F(ab)
2溶出液の合計体積(カラムロードを含む)は従って14.4mLであった。
5.1.5mLの緩衝液Bを用いて未反応IgGおよびFcフラグメントをカラムからストリップした。
6.分光光度計(Spectronic Genesys 5)を用いて吸光度を測定し、記録して、溶出液中の蛋白を確認した。以下に示すのは記録された分光値である:
【表3】
【0063】
F(ab)
2濃縮:
F(ab)
2溶出液を精製し、トリクロロ酢酸(TCA)蛋白沈殿を用いて濃縮した。
方法:
1.等体積の20%TCA(w/v、脱イオン水中、Sigma Chemical, St Louis,MO)をF(ab)
2カラム溶出液に添加した。
2.サンプルを30分間氷上でインキュベートした。
3.サンプルをマイクロ遠心機中で4000×gで15分間4℃で遠心分離した。
4.上清を慎重に除去した。
5.300μLの冷アセトンを各管に添加し、再度4000×gで5分間4℃で遠心分離した。
6.上清を除去し、F(ab)
2を乾燥させた。
7.F(ab)
2蛋白ペレットを1.0mLのリン酸塩緩衝塩溶液中に懸濁させた。
【0064】
F(ab)
2のアルデヒド活性化デキストランへのカップリング:
材料:アルデヒド活性化デキストランカップリングキット(Pierce, Rockford, IL)。[注:アルデヒド活性化デキストランはデキストランの過ヨウ素酸塩処理によっても得ることができる]
方法:
1.アルデヒド活性化デキストランカップリングキットを室温にする。
2.0.5mLの64mg/mLのナトリウムシアノボロヒドリドのリン酸緩衝塩溶液中ストック溶液(0.5mL中32mg)を調製した。
3.1.0mLの5mg/mLのリン酸緩衝塩溶液中アルデヒド活性化デキストランストック溶液を調製した。
4.1.0mLの精製、濃縮された前記F(ab)
2を1.0mLのアルデヒド活性化デキストランストック溶液に添加した。
5.0.2mLのナトリウムシアノボロヒドリドストック溶液をアルデヒド−F(ab)
2混合物に添加した。撹拌により混合し、室温で暗所中一夜インキュベートした。
6.一夜インキュべーションした後、0.5mLの1.0M Tris−HCl、pH7.2を反応混合物に添加することにより残存するアルデヒド基をブロックした。溶液を室温で1時間インキュベートした。
7.生成物を「F(ab)
2(aact)−d−t」(合計体積2.7mL)とした。
8.F(ab)
2混合物の代わりに1.0mLの脱イオン水を用いて同じ手順を行った。生成物は「d−t」と称し、特異的抗原を標的としない対照である。
【0065】
F(ab)
2(aact)−d−tのリン酸エステル化:
1.50mg/mLの脱イオン水中ポリリン酸(Acros Organics, Pittsburgh, PA)のストック溶液を調製した。
2.100μLのポリリン酸ストック溶液を1.0mLのF(ab)
2(aact)−d−tに添加し、室温で60分間インキュベートした。
3.反応混合物をミクロ透析器(分子量カットオフ30kD、Pierce, Scientific, Rockford, IL)に添加し、4000×gで遠心分離して、未反応ポリリン酸を除去した。2.0体積のPBS(PH7.4)で洗浄し、再透析した。生成物を「F(ab)
2(aact)−d−t−p」と命名し、ターゲティングをするための結合F(ab)
2フラグメントを有する負に帯電したポリマーである。
4.1.0mLのd−tをF(ab)
2(aact)−d−tの代わりに用いて、同じ手順を行った。生成物を「d−t−p」と命名し、特異的抗原を標的としない負に帯電したポリマー対照である。
【0066】
特定の抗原(平滑筋細胞α−アクチン)を有する治療的複合体送達のターゲティング:
1.オスニュージーランドシロウサギ(3.0〜3.5kg)をNIHおよび規格化ガイドラインに従って使用した(n=3動物)。全身麻酔下(ケタミン/キシラジン誘発およびハロタン維持)、右総大腿動脈を分離し、外膜の周囲を露出させた。2mm×2cmSAVVY血管形成バルーン(Cordis, Miami, FL)を動脈切開により浅大腿動脈中に導入し、総大腿動脈中へ進めた。バルーンを6気圧まで1分サイクルで2回ふくらませ、その後回収した。
2.機械的拡張の28日後、動脈を潅流固定し、採集した。採集された動脈(長さ約1.5cm)を10%中性緩衝処方中12〜16時間後固定し、パラフィン包埋前に3等分した。各断片の隣接(頭蓋)面から連続(5μm)断面を得た。
3.断片のパラフィンを除去し、脱水した(n=9/群)。非特異的結合部位をBLOTTO(Pierce Scientific, Rockford, IL)でブロックし、リン酸塩緩衝塩溶液でリンスした。
4.次の治療組成物に対応させるために処置を「1p」および「2p」と命名した:[注:「KNR−B」は前記のようにして調製した]
【0067】
【表4】
【0068】
180μLのリン酸塩緩衝塩溶液、5μLの蛋白治療薬および5μLのターゲティング剤(両方の負の正味表面電荷)をミクロ遠心管中で混合し、15分間撹拌した。10μLのターゲティング剤(正に帯電)を添加し、直ちに60秒間撹拌した。キャピラリーギャップ法を用いて、9断片をそれぞれ1pまたは2pのいずれかとともに室温で一夜インキュベートした。
5.スライドをリンスし、1:100希釈度のニュートラビジン−アルカリホスファターゼ(Pierce Scientific, Rockford, IL)中一夜インキュベートした。
6.スライドをリンスし、NBT/BCIP(Pierce Scientific, Rockford, IL;アルカリホスファターゼの基質)中15分間インキュベートした。塩溶液でリンスし、写真を撮影した。
【0069】
図11において示すように、1P処置からの断片により、外膜において最も強い染色を示す2P断片と比較して、断面(主に高レベルのα−アクチンを有する平滑筋細胞からなる)のメディアにおける陽性(青〜紫)染色における増加が明らかになり、
図12において示すように平滑筋細胞についての非特異的ターゲティングは向上されないことが明らかになった。従って、F(ab)
2(aact)−d−t−pを有する複合体は平滑筋細胞への特異的送達において相対的増加を示し、治療薬の送達は従って特定の抗原を有する細胞について効率を増大することができる。
【0070】
本明細書に記載された実施例および具体例は単に例示的なものであって、これを考慮した様々な修正および変更は当業者に示唆され、本出願の精神および範囲ならびに添付の請求の範囲の範囲内に含まれると理解される。本明細書に記載されたすべての刊行物、特許および特許出願はその全体においてあらゆる目的に関して出典明示により本発明の一部とする。