特許第5797105号(P5797105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797105
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】穂先竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   A01K87/00 620A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-270212(P2011-270212)
(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公開番号】特開2013-121324(P2013-121324A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】森田 篤
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−062489(JP,U)
【文献】 実開昭51−058088(JP,U)
【文献】 特開2011−182670(JP,A)
【文献】 特開2010−104341(JP,A)
【文献】 特開2009−207356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00−87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中実状の竿本体を備え、該竿本体は、グリップ体や電動リール等の穂先竿保持具に接続保持される接続部を基端側に有し、厚さに対して幅が大きい断面扁平状の主部を先端側に有している穂先竿であって、
竿本体は、主部と接続部との間に、主部の基端部よりも幅が狭い緩衝部を有していることを特徴とする穂先竿。
【請求項2】
緩衝部は、主部の基端部の幅よりも直径が小さい断面円形に形成されている請求項1記載の穂先竿。
【請求項3】
主部の基端側には、その幅が基端側に向けて狭くなって断面形状が扁平状から円形へと移行する移行部が隣接して形成され、該移行部の基端側に緩衝部が隣接して形成されている請求項2記載の穂先竿。
【請求項4】
移行部の厚さは、主部の基端部から連続的に増加している請求項3記載の穂先竿。
【請求項5】
接続部は断面円形で径一定のストレート形状であり、緩衝部は接続部よりも小径である請求項2乃至4の何れかに記載の穂先竿。
【請求項6】
緩衝部は基端側に向けて所定の変化率で拡径し、該緩衝部の基端側には、緩衝部の変化率よりも大きな変化率で拡径する拡径部が隣接して形成され、該拡径部の基端側に接続部が隣接して形成されている請求項5記載の穂先竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊細なアタリを捕らえる釣りに適した穂先竿に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばワカサギ釣りには、その繊細なアタリを捉えるために中実状の柔らかい穂先竿が用いられ、特に良好な感度を得るために上下方向の厚さが幅に対して小さい薄肉扁平状のものが用いられる。該穂先竿は、例えば丸棒を削りだして形成され、その基端部は例えば電動リール等に差し込まれる接続部とされ、接続部より先端側の領域についてはその上下がテーパ状に削り出されて断面扁平状とされる。
【0003】
しかしながら、このようにして形成された穂先竿では、接続部に近い部分の剛性が大きくなり過ぎることが多く、そのため針に掛かった魚が取り込む途中でばれやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−182670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、針に掛かった魚がばれにくい穂先竿を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る穂先竿は、中実状の竿本体を備え、該竿本体は、グリップ体や電動リール等の穂先竿保持具に接続保持される接続部を基端側に有し、厚さに対して幅が大きい断面扁平状の主部を先端側に有している穂先竿であって、竿本体は、主部と接続部との間に、主部の基端部よりも幅が狭い緩衝部を有していることを特徴とする。
【0007】
該構成の穂先竿は、接続部が電動リール等に接続されて使用される。該穂先竿を使用して釣りを行うと、断面扁平状の主部によって魚のアタリを高感度に捕らえることができ、また針掛かりも良い。従って、繊細なアタリを捕らえることが必要なワカサギ釣りに適している。そして、魚が針に掛かると主部がその厚さの方向に大きく湾曲し、このように主部が湾曲した状態で魚を取り込むことになる。その際、接続部と主部との間に形成された幅の狭い緩衝部がショックアブソーバーとして機能するので、針に掛かった魚が逃げようとして暴れても、主部全体の振動を緩衝部が効果的に吸収して緩和する。
【0008】
特に、緩衝部は、主部の基端部の幅よりも直径が小さい断面円形に形成されていることが好ましい。緩衝部が断面円形であることから、上下方向即ち主部の厚さ方向の振動のみならず左右方向即ち主部の幅方向の振動も同様に吸収緩和する。また、緩衝部が断面円形であるので緩衝部の幅が狭くてもその強度を確保しやすく、方向性の少ない振動吸収性と必要な強度確保とのバランスを容易にとることができる。
【0009】
更に、主部の基端側には、その幅が基端側に向けて狭くなって断面形状が扁平状から円形へと移行する移行部が隣接して形成され、該移行部の基端側に緩衝部が隣接して形成されていることが好ましい。緩衝部の先端側に移行部が形成されることにより緩衝部の先端部における応力集中が抑制される。
【0010】
また更に、移行部の厚さは、主部の基端部から連続的に増加していることが好ましい。移行部において基端側に向けて幅を徐々に狭くしていく一方で厚さについては逆に厚くしていくことにより、緩衝部の先端部における応力集中をより一層抑制することができる。
【0011】
また、接続部は断面円形で径一定のストレート形状であり、緩衝部は接続部よりも小径であることが好ましい。接続部を断面円形で径一定のストレート形状とすることにより穂先竿保持具への接続が確実なものとなる。そして、緩衝部が接続部よりも小径となることで、緩衝部の振動吸収性が良く、接続部の強度も十分に確保できる。
【0012】
緩衝部は基端側に向けて所定の変化率で拡径し、該緩衝部の基端側には、緩衝部の変化率よりも大きな変化率で拡径する拡径部が隣接して形成され、該拡径部の基端側に接続部が隣接して形成されていることが好ましい。緩衝部を径一定とすることもできるが所定の変化率で基端側に向けて拡径する形状とすることにより、緩衝部の振動吸収性と必要強度のバランスを容易にとることができる。そして、その緩衝部の変化率よりも大きな変化率の拡径部を介して接続部が形成されることにより、緩衝部における振動吸収性が十分に発揮されることになる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る穂先竿にあっては、電動リール等に保持される接続部と断面扁平状の主部との間に形成された緩衝部がショックアブソーバーとして機能して魚の暴れによる振動を効果的に吸収緩和するので、針に掛かった魚がばれにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における穂先竿を使用したワカサギ釣り用のタックルの全体構成を示す正面図。
図2】同実施形態の穂先竿の要部である竿本体であって、(a)は平面図、(b)は正面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る穂先竿について図1及び図2を参酌しつつ説明する。図1に本実施形態の穂先竿を使用したワカサギ釣り用のタックルの全体構成を示している。このワカサギ釣り用のタックルは、穂先竿1と、該穂先竿1の基端部を保持するための穂先竿保持具としての電動リール2とから構成される。
【0016】
穂先竿1は、中実状の竿本体3と、該竿本体3の先端側所定領域に間隔をあけつつ取り付けられた複数の糸ガイド4とを備えている。竿本体3は、全長に亘って中実状であって、一本の丸棒状の中実体を削り出すことにより形成されている。該竿本体3は、強化繊維としてガラス繊維を使用した繊維強化樹脂から構成され、ガラス繊維は竿本体3の軸線方向に沿っている。尚、糸ガイド4は種々の公知のものを使用できる。
【0017】
竿本体3は、全長が数百mm例えば300mm程度のものであるが、形状の異なる複数の領域から構成されている。即ち、竿本体3は、先端側から順に、竿本体3の主要部分を構成する主部10と、該主部10に隣接して形成された移行部11と、該移行部11に隣接して形成された緩衝部12と、該緩衝部12に隣接して形成された拡径部13と、該拡径部13に隣接して形成された接続部14とから構成されている。
【0018】
主部10は、竿本体3の全長のうち大部分(例えば全長の約2/3)を占めていて竿本体3の曲がり具合である調子も主としてこの部分で決まる。該主部10は、厚さ即ち上下方向の寸法に対して幅が大きい横断面形状を有する断面扁平状に形成されている。この主部10の横断面形状は例えば横長の長方形状であって、その扁平度合いも大きく帯状とも言えるものである。但し、主部10の幅は基端側に向けて徐々に広がっており、主部10の厚さもまた基端側に向けて徐々に厚くなっている。
【0019】
より詳細には、主部10は、先端側の大部分を占める主要領域20と、該主要領域20の基端側に位置する後部領域21とから構成される。主要領域20は、その厚さが幅に対して極めて薄く、基端側に向けて比較的緩やかな変化率で厚くなっていく。また、主要領域20の幅も基端側に向けて比較的緩やかな変化率で広くなっている。主要領域20の厚さは例えば1mm以下特に0.1mm〜0.5mmであり、主要領域20の幅は例えば数mm程度特に5mm以下であって、このように主要領域20の厚さは主要領域20の幅の十分の一程度に過ぎない薄肉である。また、後部領域21は、その幅については主要領域20から連続的にその変化率と同じ変化率で基端側に向けて広がっている。その一方、後部領域21の厚さは、主要領域20の変化率とは異なり、それよりも大きな変化率で基端側に向かって厚くなっており、最も基端側の位置においては1mmを超える。
【0020】
尚、全ての糸ガイド4は主部10の上面に取り付けられ、好ましくは、全ての糸ガイド4は主要領域20に取り付けられることが好ましいが、例えば最も基端側に位置する糸ガイド4を後部領域21に取り付けてもよい。
【0021】
かかる主部10に隣接した移行部11は、断面形状が基端側に向けて徐々に変化していく部分である。即ち、主部10の断面形状は上述のように扁平状であるのに対して緩衝部12のそれは円形となっており、そのため移行部11の断面形状は基端側に向けて徐々に扁平状から円形へと移行していく。より詳細には、移行部11の幅は、基端側に向けて徐々に具体的には一定の変化率で狭くなっている。その一方、移行部11の厚さは、基端側に向けて徐々に具体的には一定の変化率で厚くなっており、その変化率は主部10の後部領域21のそれと同じであって、従って、移行部11の厚さは主部10の後部領域21から連続的に増加している。このように移行部11は基端側に向けてその厚さが徐々に増加する一方でその幅が徐々に減少していくことによりその断面形状を扁平状から円形へと変化させている。尚、移行部11の長さは例えば10mm以下である。
【0022】
そして、移行部11の基端側に断面円形の緩衝部12が形成されている。該緩衝部12は、主部10における振動を吸収緩和する、いわばショックアブソーバーとして機能する部分であって、主部10の基端部の幅よりも小さい直径を有している。尚、緩衝部12の直径は、主部10の基端部の幅よりも小さいが、主部10の基端部の厚さよりは大きい。また、緩衝部12の直径は、接続部14よりも小さい。更に、緩衝部12は基端側に向けて所定の変化率で拡径しているが、その変化率は主部10の後部領域21及び移行部11における厚さの変化率よりも小さい。緩衝部12の直径は例えば2mm〜4mm程度であって、好ましくは接続部14の直径の略1/2程度である。尚、緩衝部12の長さは、移行部11や拡径部13のそれよりも長く、また、接続部14のそれよりも長いが、主部10のそれに比べるとかなり短いものであり、例えば20mm〜30mm程度である。
【0023】
拡径部13は、緩衝部12の基端部から接続部14の先端部まで基端側に向けて徐々に拡径していく断面円形のテーパ形状であり、その直径の変化率は緩衝部12のそれよりも大きく、竿本体3のうち最も大きな変化率で増加している。尚、拡径部13の長さは、移行部11の長さよりも長く、接続部14の長さよりも短く、例えば10mm程度である。
【0024】
接続部14は、竿本体3の基端部を構成していて、電動リール2に差し込まれて接続され、保持される。該接続部14は断面円形で径一定のストレート形状であって、その直径は例えば5mm程度であり、その長さは電動リール2等の穂先竿保持具が保持できる程度の長さであって例えば20mm程度である。
【0025】
電動リール2は、小型軽量のもので、乾電池で駆動できる。該電動リール2の前端部下部領域に、前側に開口する竿接続口部2aが形成されている。該竿接続口部2aは筒状であって、該竿接続口部2aの内側に穂先竿1の接続部14が差し込まれて保持される。
【0026】
以上のように構成された穂先竿1及びそれを使用したワカサギ釣り用のタックルにあっては、長さや硬さ等が異なる種々の穂先竿1の中から釣り場の深さ等の各種条件に合ったものを選択し、それを電動リール2に接続して使用することができる。そして、主部10が断面扁平状であって先端部が特に薄くなっているので繊細なアタリを確実に捕らえることができ、また針掛かりも良い。その後、電動リール2を操作して糸を巻き上げて来る際、針に掛かった魚が逃げようとして大きく暴れるが、穂先竿1の基端側に緩衝部12が形成されているので、大きく曲がった主部10の上下等の振動を緩衝部12が効果的に吸収し緩和する。従って、特に巻き上げる際に針から外れてばれやすい魚を確実に釣り上げることができる。全長が短い竿の場合、巻き上げ途中において魚がばれやすく、特に魚を水中から引き上げる際にばれやすいが、主部10の全体の振動をその基端側の緩衝部12で吸収緩和するので、針外れの確率が低下し、釣果UPにつながる。
【0027】
特に、緩衝部12が断面円形であるので上下方向のみならず左右方向の振動も同様に吸収緩和され、振動吸収の方向性が小さいという利点がある。また、緩衝部12が断面円形であることからその強度を容易に確保することができ、製造や保管、釣り場での取り扱いも容易になる。
【0028】
また、緩衝部12は、その幅を狭くすることによって振動を吸収できるようにしているので、緩衝部12をその厚さを薄く調整することで振動を吸収できるようにした場合に比して強度を確保しやすいという利点があり、同時に振動吸収性の方向性も小さくなる。更に、緩衝部12が基端側に向けて緩やかな変化率で若干拡径する形状であるので、所定の長さの緩衝部12を形成しても、緩衝部12の振動吸収性と必要強度のバランスを容易にとることができる。そのうえで、緩衝部12よりも短い長さであって緩衝部12よりも急な変化率で拡径する拡径部13を基端側に形成することにより、緩衝部12における振動吸収性能を確保しつつ接続部14との間における応力集中を抑制できる。
【0029】
更に、緩衝部12の先端側に移行部11が隣接して形成されているので、緩衝部12の先端部における応力集中が抑制される。特に、移行部11の厚さが主部10の後部領域21から連続的に増加しているので、応力集中をより一層抑制することができる。
【0030】
また、接続部14が径一定のストレート形状であるので、電動リール2の穂先竿保持具に確実に接続することができ、他の穂先竿保持具にも容易に接続できる。そして、接続部14が緩衝部12よりも大径であるので接続部14の強度が十分に確保でき、耐久性にも優れる。
【0031】
尚、本実施形態では、主部10の断面形状を横長の長方形状としたが、例えば横長の楕円形状としてもよい。
【0032】
また、主部10を先端側の主要領域20と基端側の後部領域21とから構成したが、後部領域21を設けずに主部10の厚さを全体に亘って一定の変化率として形成してもよい。更に、主部10から緩衝部12を含む領域を、厚さあるいは直径が一定の変化率で増加する形状としてもよい。
【0033】
更に、主部10の幅を先細りとするのではなく一定としてもよい。
【0034】
また更に、緩衝部12を断面円形としたが、断面横長楕円形とするなど、主部10と同様に断面扁平状としてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、竿本体3の強化繊維としてガラス繊維を使用したが、カーボン繊維等を使用してもよい。また、複数の強化繊維を混合して使用してもよく、例えば、ガラス繊維を主としてカーボン繊維を少量あるいは一定の割合で混合させてもよい。また更に、強化繊維を使用せずに、樹脂や金属から全体あるいは部分を構成してもよい。尚、丸棒状の中実体から加工して竿本体3を形成する他、例えば、複数の板状あるいはシート状の部材を積層し張り合わせた後に加工して竿本体3を形成してもよく、ガラス繊維やカーボン繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させて板状あるいはシート状に形成した部材を使用できる。
【0036】
更に、穂先竿保持具としては、上述の電動リール2の他、リールを装着するためのリールシートを備えたグリップ体であってもよく、また元竿であってもよい。
【0037】
更に、穂先竿保持具に着脱可能に接続される構成の他、穂先竿保持具に取り外し不能に取り付けられた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 穂先竿
2 電動リール(穂先竿保持具)
2a 竿接続口部
3 竿本体
4 糸ガイド
10 主部
11 移行部
12 緩衝部
13 拡径部
14 接続部
20 主要領域
21 後部領域
図1
図2