特許第5797108号(P5797108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エア・ウォーター株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797108
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】2−インダノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/145 20060101AFI20151001BHJP
   C07C 35/32 20060101ALI20151001BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20151001BHJP
   B01J 25/02 20060101ALN20151001BHJP
【FI】
   C07C29/145
   C07C35/32
   !C07B61/00 300
   !B01J25/02 X
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-283239(P2011-283239)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133286(P2013-133286A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】仲間 渉
(72)【発明者】
【氏名】横田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】井田 豊
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−268146(JP,A)
【文献】 特開平03−038536(JP,A)
【文献】 Tsutomu Osawa,The Enantioface-differentiating Hydrogenation of the C=O Double Bond with Asymmetrically Modified Raney Nickel. XXXVIII. The Hydrogenation of Methyl Ketones to Optically Active Secondary Alcohols,BULLETIN OF THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN,1984年,Vol. 57,No. 6,P 1518-1521
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/145
C07C 35/32
B01J 25/02
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒がアルコールであり、酢酸およびプロピオン酸から選ばれる一種以上である有機酸を含有することによりpHが4〜7に調整された2−インダノン溶液を、ニッケル触媒存在下、接触水素還元して2−インダノールを得ることを特徴とする、2−インダノールの製造方法。
【請求項2】
前記溶媒のアルコールが、炭素数が1から4の低級アルコールである、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬、農薬等の中間体として有用な、2−インダノールの製造方法に関する。
【0002】
2−インダノールは医薬、農薬等の中間体として有用であり、通常、2−インダノンを還元することにより合成される。ここで、2−インダノンは、例えば特許文献1に記載される合成法のように、インデンを原料として、ギ酸および過酸化水素水により酸化した後、次いでこの反応混合物に水および硫酸などの鉱酸を添加して、加熱処理することにより得ることができる。
【背景技術】
【0003】
2−インダノンを還元して2−インダノールを合成する方法は種々開示されており、例えば、特許文献2には還元剤として水素化リチウムアルミニウムを用いて合成する方法が開示されている。また、非特許文献1には温和な条件下で反応可能な水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元を行う方法が開示されている。
【0004】
また、2−インダノンを原料化合物とはしないものの、ケトン化合物をアルコール類に還元する方法として、金属触媒の存在下、接触水素還元する方法がよく知られており、その場合に用いられる金属触媒としては、例えば非特許文献2に記載されるようなPd触媒が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3831021号公報
【特許文献2】米国特許3647857号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters.,50(52),7314-7317
【非特許文献2】Tetrahedron Letters.,52(4),499-501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の先行技術文献に開示される方法は2−インダノールを工業的なレベルで合成する方法としては満足のいくものではない。
具体的に説明すれば、特許文献2に開示される水素化リチウムアルミニウムは反応性が特に高く取り扱いが容易でない。このため、水素化リチウムアルミニウムを用いて2−インダノールを合成する方法は、工業的製法としては安全面上問題がある。さらに、特許文献2によれば、高純度品を得るためには再結晶による精製が必要とされており、製品化収率は63.0モル%と低い結果となっている。
【0008】
また、非特許文献1に開示される水素化ホウ素ナトリウムを用いる方法も、特許文献2同様に、高純度品を得るためには再結晶による精製が必要であり、製品化収率が低いという結果が開示されている。確認のため、本発明者らが再現検討を行ったところ、確かに不純物が多く生成する結果となった。
【0009】
さらに、後述するように、非特許文献2に開示されるような貴金属系の触媒であるPd/Cを用いても、2−インダノンからは2−インダノールを高収率かつ高純度で合成することは困難であった。
【0010】
上記の通り、2−インダノールを工業的なレベルで合成する方法、すなわち、高収率かつ高純度で得られる製造方法は未だ確立されていない。本発明の目的は、2−インダノンを原料として、2−インダノールを高収率かつ高純度で得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、溶媒にアルコールを用い、酢酸およびプロピオン酸から選ばれる一種以上である有機酸を含有することによりpHが4〜7に調整された2−インダノン溶液を、ニッケル触媒存在下、接触水素還元することで、高純度の2−インダノールが高収率で製造されることを見出した。
アルコール溶媒は、炭素数が1から4の低級アルコールであることが好ましい
【発明の効果】
【0012】
本発明により、2−インダノンより高純度、高収率で2−インダノールを製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について詳しく説明する。
【0014】
本実施形態において使用される原料化合物は2−インダノンであり、例えば特許文献1に記載される合成法のように、インデンを原料として、ギ酸および過酸化水素水により酸化した後、次いでこの反応混合物に水及び硫酸などの鉱酸を添加して、加熱処理することにより得ることができる。
【0015】
この原料化合物を還元することにより、2−インダノールが得られる。その手法として金属水素化物を使用すると収率も純度も低下することは前述のとおりであるから、本発明者らは、ケトン化合物から接触水素還元によりアルコール類を製造する際の汎用触媒であるPd/Cを用いて、2−インダノンの還元反応を実施してみた。その結果、反応時間が長く、2−インダノンの二量体等の不純物が生成し、2−インダノールの純度が非常に低くなることが判明した。
【0016】
また、触媒をスポンジニッケルに変更し、2−インダノンの還元反応を実施してみたところ、反応時間は短縮されるものの、2−インダノンの二量体等の不純物が生成し、上記のPd/Cを用いた場合と同様に、2−インダノールの純度が非常に低くなることが判明した。
【0017】
本発明者らがさらに検討を行った結果、溶媒にアルコールを使用して、有機酸を含有することによりpHが4〜7に調整された2−インダノン溶液を、ニッケル触媒存在下、接触水素還元することで、副反応を抑制し、高収率で、高純度の2−インダノールを製造できることを見出した。
【0018】
本発明の一実施形態に係る製造方法において使用される溶媒は、アルコールが好ましい。アルコールの種類は特に限定されないが、炭素数が1から4の低級アルコールであることが好ましい。そのような低級アルコールの具体例として、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールおよびn−ブチルアルコールが挙げられる。これらの中でも、メタノールおよびエタノールが好ましく、メタノールが特に好ましい。
【0019】
なお、本実施形態に係る製造方法において使用される溶媒は水を含有していてもよいが、その含有量が過度に多い場合には2−インダノンの還元反応に悪影響を及ぼすことが懸念される。したがって、その含有量は全溶媒の50%程度を上限とし、少なければ少ないほど好ましい。
溶媒の使用量は特に限定されないが、通常、原料化合物である2−インダノンに対して0.1〜100重量倍であり、好ましくは1〜50重量倍である。
【0020】
本実施形態に係る製造方法では、還元反応前の2−インダノン溶液のpHを、有機酸を含有することにより4〜7に調整する。本発明に使用される有機酸としては、酢酸およびプロピオン酸から選ばれる一種以上であることが好ましい。還元反応前の2−インダノン溶液のpHが4未満の場合には反応速度が極端に遅くなり、不純物が生成しやすくなるばかりでなく、場合により転化率が低下して、2−インダノールの収率が低下する。一方、還元反応前の2−インダノン溶液のpHが7を超えると溶液中の2−インダノンが不安定になり、反応溶液中の不純物濃度が上昇してしまう。
【0021】
本実施形態に係る製造方法における還元反応前の2−インダノン溶液のpH調整のタイミングは限定されず、還元反応開始の段階でpHが4〜7の範囲であればよい。不純物の発生などを特に低減する観点から、原料化合物である2−インダノンを溶媒で溶解する前に、溶媒のpHを上記範囲としておく、すなわち、有機酸を含有することによりpHが4〜7に調整された溶液と、2−インダノンとを混合させて2−インダノン溶液とすることが好ましい。また、次に説明するニッケル触媒はアルカリ性であることから、有機酸によりpHが4〜7に調整された溶液がニッケル触媒をも含んだ状態として、この溶液に原料化合物である2−インダノンを溶解させることが特に好ましい。
【0022】
本実施形態に係る製造方法において使用されるニッケル触媒とはニッケルを含有する触媒であって、具体的にはスポンジニッケル、ニッケル−ケイソウ土などが例示される。ニッケル触媒は、活性化後、必要に応じて水洗し、その後、反応に使用するアルコール溶媒で置換してから、反応に用いればよい。その使用量は2−インダノン100質量部に対して0.01〜20質量部とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。ニッケル触媒の使用量が少なすぎると反応速度が遅くなり、副反応が優先する場合もある。この場合には2−インダノールの収率が低下することが懸念される。一方、ニッケル触媒の使用量が多すぎても2−インダノールの還元反応の反応性の向上が見られなくなるため、過剰量の使用は経済的観点からむしろ不利益となることが懸念される。
【0023】
ニッケル触媒による接触水素還元の温度は特に限定されないが、通常20〜100℃の範囲内で行われ、50〜80℃の範囲内で行うことが好ましい。反応温度が低い場合には反応時間が長くなることから、2−インダノンの二量体等の不純物が生成しやすくなり、2−インダノールの純度低下を招くことが懸念される。
【0024】
接触水素還元による2−インダノールの還元反応は水素加圧下で実施すればよい。その圧力は、触媒の使用量や反応温度によっても異なるが、通常ゲージ圧で0.01〜2.0MPaであり、好ましくは0.05〜1.0MPaである。
【0025】
上記の反応に要する時間は、原料の仕込量、反応温度、水素圧、その他撹拌条件等の反応条件によっても異なるが、水素吸収がなくなるまで継続すればよい。また、必要に応じて水素吸収終了後も撹拌を継続しても構わない。その継続時間は任意であるが、通常、2時間程度である。
【0026】
上記の反応が終了した後の処理は特に限定されない。一例を挙げれば、目的物である2−インダノールを溶解させた状態で、触媒を濾別し、次いで、例えば濾液を濃縮した後にヘプタンやトルエン、メタノール等の有機溶媒や水を添加して晶析することにより、目的物の2−インダノールを得ることができる。晶析において使用する溶媒は2種類以上の混合溶媒でも構わない。さらに純度を高めるために、必要に応じて溶媒洗浄や、再結晶などの精製操作を加えることができる。
【実施例】
【0027】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれらの具体例にのみ限定されるものではない。なお、分析は下記条件の高速液体クロマトグラフィにより実施した。
測定条件
カラム:L−column ODS
内径4.6mm 長さ250mm
サンプル調製法:結晶約10mgを20mlのメタノールで溶解、メスアップする。
移動相組成:次の二種類の移動相を用いたグラジエント分析
移動相1:メタノール/0.1%リン酸水溶液=60/40
移動相2:メタノール/0.1%リン酸水溶液=90/10
移動相1にて10分保持、その後、遷移時間を15分間として移動相2に変更、さらに移動相2にて10分保持
移動相流量:1.0ml/min
測定波長:UV(220nm)
カラム温度:40℃
注入量:10μL
定量法:絶対検量線法
【0028】
(実施例1)
使用する湿体のスポンジニッケル触媒(日興リカ(株)製 R−200)3.5gをビーカーに取り、150gの水に懸濁させたのち静置して、上澄み液のpHが8.7になるまで室温にて洗浄を繰り返した。上澄み液を除いた後、反応溶媒のメタノールに懸濁させたのち静置して、上澄み液を除いたものを反応に用いた。
【0029】
温度計および攪拌機を備えた500mlオートクレーブに、メタノール200g、洗浄したスポンジニッケル触媒、および酢酸0.06gを添加して混合した。この懸濁液のpHは6.1であった。この懸濁液に純度99.1%の2−インダノン20.0gを加えた後、室温にて系内を圧力1.0MPaの窒素で3回置換し、次いで1.0MPaの水素で3回置換した。系内圧力(ゲージ圧、以下同じ。)を0.5〜1.0MPaとして60℃まで昇温し、還元反応を行い、2時間で水素吸収が無くなったのを確認した後、更に撹拌を1時間継続した。この還元反応の反応率は99%以上であった。反応液を室温まで冷却した後、触媒を濾別し、残さをメタノール10.0gで洗浄した。その後、メタノールを190g留去して、室温にて水100gを滴下した。1時間撹拌後に結晶を濾過し、乾燥して、2−インダノール16.4gを得た。単離収率は79.2モル%であり、純度は99.9%であった。濾液中に含まれている目的物は13.7モル%あり、結晶と合わせた収率は92.9モル%であった。
【0030】
(実施例2)
使用する湿体のスポンジニッケル触媒(日興リカ(株)製 R−200)3.5gをビーカーに取り、150gの水に懸濁させたのち静置して、上澄み液のpHが8.7になるまで室温にて洗浄を繰り返した。上澄み液を除いた後、反応溶媒のメタノールに懸濁させたのち静置して、上澄み液を除いたものを反応に用いた。
【0031】
温度計および攪拌機を備えた500mLオートクレーブに、メタノール200g、洗浄したスポンジニッケル触媒、および酢酸0.14gを添加して混合した。この懸濁液のpHは4.4であった。この懸濁液に純度99.1%の2−インダノン20.0gを加えた後、室温にて系内を圧力1.0MPaの窒素で3回置換し、次いで1.0MPaの水素で3回置換した。系内圧力を0.5〜1.0MPaとして60℃まで昇温し、還元反応を行い、4時間で水素吸収が無くなったのを確認した後、更に撹拌を1時間継続した。この還元反応の反応率は99%以上であった。反応液を室温まで冷却した後、触媒を濾別し、残さをメタノール10.0gで洗浄した。その後、メタノールを190g留去して、室温にて水170gを滴下した。1時間撹拌後に結晶を濾過し、乾燥して、2−インダノール17.1gを得た。単離収率は81.1モル%であり、純度は99.3%であった。濾液中に含まれている目的物は13.1モル%あり、結晶と合わせた収率は94.2モル%であった。
【0032】
(実施例3)
反応に用いるスポンジニッケルを次の方法で調製した。ニッケル−アルミ合金25.0gと水125gを、温度計および攪拌機を備えた500mL四つ口フラスコに加えた後、50℃まで昇温した。20%水酸化ナトリウム水溶液6.1gを滴下し、発熱が収まったのを確認した後に、50℃で撹拌を30分継続した。次いで、40%水酸化ナトリウム水溶液86.4gを滴下し、1時間撹拌を継続した。その後、静置して上澄み液を取り除き、50℃温水200gを添加し、1分間撹拌後に静置して、上澄み液を取り除いた。この作業を16回繰り返した。得られた湿体に、反応溶媒として用いるメタノールを100g添加し、1分間撹拌後に静置して、上澄み液を取り除いた。得られた湿体のスポンジニッケルを反応に用いた。
【0033】
温度計および攪拌機を備えた500mLオートクレーブに、メタノール150gおよび純度99.1%の2−インダノン30.0gを添加して溶解させ、調製した湿体のスポンジニッケル1.9gおよび酢酸0.15gを添加した。この懸濁液のpHは6.7であった。その後、室温にて系内を圧力0.3MPaの窒素で3回置換し、次いで0.3MPaの水素で3回置換した。系内圧力を0.3MPaとして60℃まで昇温し、還元反応を行い、6.5時間で水素吸収がなくなったのを確認した後、更に撹拌を1時間継続した。この還元反応の反応率は97%であり、純度は92.7%であった。反応液を室温まで冷却した後、触媒を濾別し、残さをメタノール15gで洗浄した。その後メタノールを140g留去して、室温にて水120gを滴下した。1時間撹拌後に結晶を濾過し、乾燥して、2−インダノール23.1gを得た。単離収率は73.0モル%であり、純度は95.4%であった。濾液中に含まれている目的物は17.3モル%あり、結晶と合わせた収率は90.3モル%であった。
【0034】
(比較例1)
使用する湿体のスポンジニッケル触媒(日興リカ(株)製 R−200)3.5gをビーカーに取り、150gの水に懸濁させたのち静置して、上澄み液のpHが8.7になるまで室温にて洗浄を繰り返した。上澄み液を除いた後、反応溶媒のメタノールに懸濁させたのち静置して、上澄み液を除いたものを反応に用いた。
【0035】
温度計および攪拌機を備えた500mLオートクレーブに、メタノール200gおよび洗浄したスポンジニッケル触媒を添加して混合した。この懸濁液のpHは8.4であった。この懸濁液に純度99.1%の2−インダノン40.0gを加えた後、室温にて系内を圧力1.0MPaの窒素で3回置換し、次いで1.0MPaの水素で3回置換した。系内圧力を0.5〜1.0MPaとして60℃まで昇温し、還元反応を行い、2時間で水素吸収が無くなったのを確認した後、更に撹拌を1時間継続した。この還元反応の反応率は99%以上であったが、純度は76.0%であり、不純物として2−インダノンの二量体が13.4%であった。
【0036】
反応液を室温まで冷却した後、触媒を濾別し、残さをメタノール20gで洗浄した。その後、メタノールを160g留去して、室温にて水200gを滴下した。1時間撹拌後に結晶を濾過し、乾燥して、2−インダノール28.2gを得た。単離収率は69.2モル%であり、純度は76.4%であった。濾液中に含まれている目的物は14.0モル%であり、結晶と合わせた収率は83.2モル%であった。
【0037】
(比較例2)
温度計および攪拌機を備えた500mLオートクレーブに、メタノール250g、実施例3で調製した湿体のスポンジニッケル触媒5.7g、酢酸20.0g、および純度99.1%の2−インダノン50.0gを添加して混合した。この懸濁液のpHは3.7であった。室温にて系内を圧力0.5MPaの窒素で3回置換し、次いで0.5MPaの水素で3回置換した。系内圧力を0.5〜1.0MPaとして60℃まで昇温し、還元反応を行い、7時間で水素吸収が無くなったのを確認した後、更に撹拌を1時間継続した。この還元反応液をHPLCで分析したところ、純度は2−インダノールが66.2%であり、原料の2−インダノンが28.1%であった。
【0038】
(比較例3)
使用する湿体のスポンジニッケル触媒(日興リカ(株)製 R−200)1.9gをビーカーに取り、70gの水に懸濁させたのち静置して、上澄み液のpHが8.6になるまで室温にて洗浄を繰り返した。上澄み液を除いたものを反応に用いた。
【0039】
温度計および攪拌機を備えた500mLオートクレーブに、メタノール157g、洗浄した湿体のスポンジニッケル触媒2.0g、35%塩酸0.02g、およびイオン交換水79.0gを添加した。この懸濁液のpHは5.8であった。この懸濁液に純度99.1%の2−インダノン10.1gを加えた後、室温にて系内を圧力0.5MPaの窒素で3回置換し、次いで0.5MPaの水素で3回置換した。系内圧力を0.5Paとして60℃まで昇温し、還元反応を行い、3時間で水素吸収が無くなったのを確認した。この還元反応液をHPLCで分析したところ、純度は2−インダノールが77.6%、原料の2−インダノンが3.2%であり、不純物である2−インダノンの二量体が10.2%であった。
【0040】
(比較例4)
使用する湿体のスポンジニッケル触媒(日興リカ(株)製 R−200)7.5gをビーカーに取り、150gの水に懸濁させたのち静置して、上澄み液のpHが8.7になるまで室温にて洗浄を繰り返した。上澄み液を除いた後、反応溶媒の2−プロパノールに懸濁させたのち静置して、上澄み液を除いたものを反応に用いた。
【0041】
温度計および攪拌機を備えた500mLオートクレーブに、2−プロパノール200g、洗浄したスポンジニッケル触媒、および塩酸0.01gを添加して混合した。この懸濁液のpHは2.8であった。この懸濁液に純度99.1%の2−インダノン20.0gを加えた後、室温にて系内を圧力1.0MPaの窒素で3回置換し、次いで1.0MPaの水素で3回置換した。系内圧力を1.0MPaとして60℃まで昇温し、還元反応を行い、4時間で水素吸収が無くなったのを確認した後、更に撹拌を1時間継続した。この還元反応の反応率は99%以上であったが、純度は76.6%であり、不純物として2−インダノンの二量体が19.0%あった。
【0042】
反応液を室温まで冷却した後、触媒を濾別し、残さを2−プロパノール10.0gで洗浄した。その後、2−プロパノールを210g留去して、室温にてヘプタン100gを滴下した。10℃まで冷却して1時間撹拌後に結晶を濾過し、乾燥して、2−インダノール7.8gを得た。単離収率は38.0モル%であり、HPLC純度は67.5%であった。濾液中に含まれている目的物は58.4モル%であり、結晶と合わせた収率は86.4モル%であった。
【0043】
(比較例5)
温度計および攪拌機を備えた500mLオートクレーブに、メタノール150gおよび純度99.1%の2−インダノン30.0gを添加して溶解させ、実施例3で調製した湿体のスポンジニッケル1.7gを添加した。この懸濁液のpHは8.2であった。その後、室温にて系内を圧力0.3MPaの窒素で3回置換し、次いで0.3MPaの水素で3回置換した。系内圧力を0.3MPaとして60℃まで昇温し、還元反応を行い、2.5時間で水素吸収がなくなったのを確認した後、更に撹拌を1時間継続した。この還元反応の反応率は99%以上であり、純度は81.1%であった。反応液を室温まで冷却した後、触媒を濾別し、残さをメタノール15.0gで洗浄した。その後メタノールを125g留去して、室温にて水120gを滴下した。1時間撹拌後に結晶を濾過し、乾燥して、2−インダノール23.8gを得た。単離収率は63.9モル%であり、純度は79.3%であった。濾液中に含まれている目的物は14.0モル%であり、結晶と合わせた収率は77.9モル%であった。
【0044】
(比較例6)
温度計および攪拌機を備えた500mLオートクレーブに、メタノール250g、純度99.1%の2−インダノン50.0g、および5%Pt/C触媒9.37gを添加した。懸濁液のpHは5.7であった。その後、室温にて系内を圧力0.5MPaの窒素で3回置換し、次いで0.5MPaの水素で3回置換した。系内圧力を0.5MPaとして60℃まで昇温し、1時間還元反応を行った。その後系内圧力を1.0MPaまで昇圧させ、6時間還元反応を行い、水素吸収がなくなったのを確認した。この還元反応液をHPLCで分析したところ、純度は2−インダノールが14.4%、原料の2−インダノンが77.5%であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明により、医薬、農薬等の中間体として有用な高純度の2−インダノールを、工業的な処方にて安価で提供することが可能となる。