特許第5797142号(P5797142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797142
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】直流電源装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20151001BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   H02M3/28 C
   H02M3/28 Q
   H03K17/687 A
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-68726(P2012-68726)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-201833(P2013-201833A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000232944
【氏名又は名称】日立水戸エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 健志
(72)【発明者】
【氏名】永浦 康弘
(72)【発明者】
【氏名】児島 徹郎
(72)【発明者】
【氏名】川本 健泰
(72)【発明者】
【氏名】村岡 一史
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 徹
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−368464(JP,A)
【文献】 特開平11−234104(JP,A)
【文献】 特開平11−341820(JP,A)
【文献】 特開2011−211886(JP,A)
【文献】 特開2010−279214(JP,A)
【文献】 特開2013−090427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧源と、主としてスイッチング素子により構成され前記直流電圧源の直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、前記PWMインバータの出力する交流電力を入力する変圧器と、前記変圧器の出力する交流電力を直流電力に変換するコンバータと、前記コンバータの直流出力側に並列接続され共振用スイッチング素子と共振コンデンサの直列回路を含む共振回路と、前記コンバータの出力する直流電力を平滑するリアクトルとコンデンサを含むフィルタ回路とを備え、
前記PWMインバータ内の主スイッチング素子へパルス幅変調されたゲート信号を供給するとともに、前記主スイッチング素子のオンゲート信号のうち後半の所定の期間に前記共振用スイッチング素子に対してオンゲート信号を供給する制御装置を備えた直流電源装置において、
前記共振用スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在するタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、前記共振用スイッチング素子に対する前記オンゲート信号が終了するまで、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を維持し、その後の新たなオンゲート信号を禁止する制御手段を備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
直流電圧源と、主としてスイッチング素子により構成され前記直流電圧源の直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、前記PWMインバータの出力する交流電力を入力する変圧器と、前記変圧器の出力する交流電力を直流電力に変換するコンバータと、前記コンバータの直流出力側に並列接続され共振用スイッチング素子と共振コンデンサの直列回路を含む共振回路と、前記コンバータの出力する直流電力を平滑化するリアクトルとコンデンサを含むフィルタ回路とを備え、
前記PWMインバータ内の主スイッチング素子へパルス幅変調されたゲート信号を供給するとともに、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号のうち後半の所定の期間に前記共振用スイッチング素子に対してオンゲート信号を供給する制御装置を備えた直流電源装置において、
前記PWMインバータ内の主スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在しかつ前記共振用スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在しないタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、その後、前記共振用スイッチング素子に対する前記オンゲート信号が発生しかつこのオンゲート信号が終了するまで、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を維持し、その後の新たなオンゲート信号を禁止する制御手段を備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項3】
直流電圧源と、主としてスイッチング素子により構成され前記直流電圧源の直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、前記PWMインバータの出力する交流電力を入力する変圧器と、前記変圧器の出力する交流電力を直流電力に変換するコンバータと、前記コンバータの直流出力側に並列接続され共振用スイッチング素子と共振コンデンサの直列回路を含む共振回路と、前記コンバータの出力する直流電力を平滑するリアクトルとコンデンサを含むフィルタ回路とを備え、
前記PWMインバータ内の主スイッチング素子へパルス幅変調されたゲート信号を供給するとともに、前記主スイッチング素子のオンゲート信号のうち後半の所定の期間に前記共振用スイッチング素子に対してオンゲート信号を供給する制御装置を備えた直流電源装置において、
前記PWMインバータ内の主スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在するタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を、今回のオン指令が継続する期間だけ維持し、新たなオンゲート信号を禁止する制御手段を備えたことを特徴とする直流電源装置。
【請求項4】
請求項1において、前記PWMインバータ内の主スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在しかつ前記共振用スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在しないタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、その後、前記共振用スイッチング素子に対する前記オンゲート信号が発生しかつこのオンゲート信号が終了するまで、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を維持し、その後の新たなオンゲート信号を禁止することを特徴とする直流電源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記PWMインバータは、上下の各アームがそれぞれ2つの主スイッチング素子を直列接続してなり、前記上下の各アーム内の2つの主スイッチング素子の直列接続点同志をクランプダイオードを介して接続した3レベルインバータであることを特徴とする直流電源装置。
【請求項6】
直流電圧源と、前記直流電圧源の直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、前記PWMインバータの出力する交流電力を入力する変圧器と、前記変圧器の出力する交流電力を直流電力に変換するコンバータと、前記コンバータの直流出力側に並列接続され共振用スイッチング素子と共振コンデンサの直列回路を含む共振回路と、前記コンバータの出力する直流電力を平滑するリアクトルとコンデンサを含むフィルタ回路とを備え、
前記PWMインバータ内の主スイッチング素子へパルス幅変調されたゲート信号を供給するとともに、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号のうち後半の所定の期間に前記共振用スイッチング素子に対してオンゲート信号を供給する直流電源装置の制御方法において、
前記共振用スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在するタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、前記共振用スイッチング素子に対する前記オンゲート信号が終了するまで、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を維持するステップと、その後に前記主スイッチング素子への前記オンゲート信号の供給を禁止するステップを備えたことを特徴とする直流電源装置の制御方法。
【請求項7】
請求項6において、前記PWMインバータ内の主スイッチング素子の前記オンゲート信号が存在しかつ前記共振用スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在しないタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、その後、前記共振用スイッチング素子に対する前記オンゲート信号が発生しかつこのオンゲート信号が終了するまで、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を維持するステップと、その後に前記主スイッチング素子へのオンゲート信号の供給を禁止するステップを備えたことを特徴とする直流電源装置の制御方法。
【請求項8】
直流電圧源と、前記直流電圧源の直流電力を交流電力に変換するPWMインバータと、前記PWMインバータの出力する交流電力を入力する変圧器と、前記変圧器の出力する交流電力を直流電力に変換するコンバータと、前記コンバータの直流出力側に並列接続され共振用スイッチング素子と共振コンデンサの直列回路を含む共振回路と、前記コンバータの出力する直流電力を平滑するリアクトルとコンデンサを含むフィルタ回路とを備え、
前記PWMインバータ内の主スイッチング素子へパルス幅変調されたゲート信号を供給するとともに、前記主スイッチング素子のオンゲート信号のうち後半の所定の期間に前記共振用スイッチング素子に対してオンゲート信号を供給する直流電源装置の制御方法において、
前記PWMインバータ内の主スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在するタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を、今回のオン指令が継続する期間だけ維持するステップと、当該オンゲート信号の新たな発生を禁止するステップを備えたことを特徴とする直流電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置に関し、特に鉄道車両に設置される半導体スイッチング素子を用いたDC−DC変換による直流電源装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両システムの直流電気車の駆動系では、電力変換装置としてVVVFインバータが一般的に使用され、直流を可変電圧可変周波数の三相交流に変換して駆動用の誘導電動機に供給するようにしている。
【0003】
一方、直流電気車の非駆動系の、例えば、補機用の直流電源装置として、直流高圧1500[V]から、DC−ACインバータ、降圧変圧器、AC−DCコンバータを通して、所望の例えば600[V]の直流を得るDC−DCコンバータが用いられている。このように、直流電圧の大きさを任意の値に変える場合のほか、不安定な直流電源の安定化、あるいは入力と電気的に絶縁された直流電源を必要とする場合などにも、DC−DCコンバータが用いられる。
【0004】
DC−DCコンバータにおいては、印加周波数を高くすることで絶縁用変圧器を小型化する方式が知られており、この中でも、共振回路を利用してスイッチング損失を低減させるソフトスイッチング方式が、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1に示されたDC−DCコンバータは、DC−AC変換用PWMインバータ、変圧器、AC−DCコンバータ、平滑回路を介して、直流負荷に給電している。
【0006】
ここで、DC−ACPWMインバータでのスイッチング損失を低減させるソフトスイッチング方式とするために、AC−DCコンバータの出力端子間に共振コンデンサとスイッチング素子(以下、共振スイッチと略称する)の直列回路を接続している。そして、変圧器の二次側インダクタンスとにより共振回路を形成し、DC−ACインバータの主スイッチング素子をターンオフさせるに先立って共振スイッチをオンさせ、共振コンデンサの充放電により、主スイッチング素子が遮断すべき変圧器の二次電流をゼロ、一次電流を変圧器の励磁電流のみのレベルまで低減させ、ソフトスイッチングを実現している。これにより、DC−ACPWMインバータのターンオフ損失を大幅に低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−368464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された直流電源装置においては、主スイッチング素子および共振スイッチが共にオンしている期間に、過電流検知などに基づく保護動作により、主スイッチング素子をターンオフさせる場合、共振による大電流が流れた状態で主スイッチング素子や共振スイッチをターンオフすることとなる。このため、主スイッチング素子を大電流遮断することとなり、場合によっては、素子破壊に至ってしまう。
【0009】
このため、保護動作により通常は事故を防ぎ、機器を守るべきものが、保護動作として機能できず、逆に機器破壊を引き起こし逆効果となってしまう課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はその一面において、主回路として、直流電力を交流電力に変換するPWMインバータの出力を入力する変圧器と、前記変圧器の出力する交流電力を直流電力に変換するAC−DCコンバータと、前記コンバータの直流出力側に接続され共振用スイッチング素子と共振コンデンサの直列回路を含む共振回路と、前記コンバータの出力を平滑するフィルタ回路とを備え、一方、制御回路として、前記PWMインバータ内の主スイッチング素子へパルス幅変調されたゲート信号を供給するとともに、前記主スイッチング素子のオンゲート信号のうち後半の所定の期間に前記共振用スイッチング素子に対してオンゲート信号を供給する制御装置を備え、前記共振用スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在するタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、前記共振用スイッチング素子に対する前記オンゲート信号が終了するまで、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を維持し、その後の新たなオンゲート信号を禁止することを特徴とする。
【0011】
この結果、主スイッチング素子のいずれかがオンし、共振スイッチがオンしているときには、主スイッチング素子を即座にはターンオフさせず、必ず共振動作の半周期を終えてからターンオフさせ、共振電流によって大電流が流れた状態では遮断させることはない。
【0012】
本発明は他の一面において、前記PWMインバータ内の主スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在しかつ前記共振用スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在しないタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、その後、前記共振用スイッチング素子に対する前記オンゲート信号が発生しかつこのオンゲート信号が終了するまで、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を維持し、その後の新たなオンゲート信号を禁止することを特徴とする。
【0013】
本発明はさらに他の一面において、前記PWMインバータ内の主スイッチング素子への前記オンゲート信号が存在するタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を、今回のオン指令が継続する期間だけ維持し、新たなオンゲート信号を禁止することを特徴とする。
【0014】
これらの結果、主スイッチング素子が一旦オンしたら、その周期のゲートパルスは必ず共振スイッチをオンさせてから、主スイッチング素子と共振スイッチを同時にオフさせるようにし、共振電流によって大電流が流れた状態では遮断させることはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の望ましい実施態様によれば、共振電流によって大電流が流れた状態での遮断を防ぐことによって、主スイッチング素子の破壊を防ぐことができる。また、ソフトスイッチングを確実に行えるので、必ずしも大電流を遮断できるような素子を使う必要がなく、電流定格の低い主スイッチング素子を使用して回路を構成でき、経済的である。
【0016】
本発明のその他の目的と特徴は、以下に述べる実施形態の中で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1、2を適用できる直流電源装置の主回路の構成例を示す図である。
図2図1に示した直流電源装置における動作タイミングを示す図である。
図3】本発明の実施例1における制御装置を示す機能ブロック図である。
図4】本発明の実施例1におけるゲートパルス制御装置の機能ブロック図である。
図5】本発明における実施例1の主スイッチング素子をオフする保護動作発生時の主スイッチング素子と共振スイッチの動作タイミングチャートを示す図である。
図6】本発明の実施例2におけるゲートパルス制御装置の機能ブロック図である。
図7】本発明における実施例2の主スイッチング素子をオフする保護動作発生時の主スイッチング素子と共振スイッチの動作タイミングチャートを示す図である。
図8】本発明の実施例3を適用できる直流電源装置の主回路の構成例を示す図である。
図9】本発明の実施例3における制御装置を示す機能ブロック図である。
図10】本発明の実施例3によるゲートパルス制御装置の機能ブロック図である。
図11】本発明における実施例3の主スイッチング素子をオフする保護動作発生時の主スイッチング素子と共振スイッチの動作タイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1、2を適用できる直流電源装置の主回路の構成例を示す図である。この直流電源装置は、直流電圧源10の電圧を入力し、DC−ACインバータ13、変圧器14、AC−DCコンバータ15の組合せにより、絶縁して、電圧の異なる直流電圧を負荷20に供給するDC−DCコンバータによって構成されている。
【0020】
DC−ACインバータ13は、直流電圧源10に並列接続された2つのフィルタコンデンサ11(FC11)および12(FC12)の直列回路に接続された3レベルPWMインバータである。すなわち、それぞれが逆並列ダイオードを有する4つの主スイッチング素子Q1〜Q4が直列接続され、2つづつの直列接続体が、それぞれ、上下アームを形成し、前記フィルタコンデンサ11(FC11)および12(FC12)に並列接続されている。また、上下のアーム内のそれぞれの主スイッチング素子の直列接続点間を、クランプダイオードD5,D6の直列接続回路で結び、かつ、これらダイオードD5,D6の直列接続点は、前記2つのフィルタコンデンサ11(FC11),12(FC12)の直列接続点に接続されている。そして、上下のアームの直列接続点aと、フィルタコンデンサ11(FC11)および12(FC12)の直列接続点bとの間が交流出力端子となり、変圧器14の一次巻線が接続されている。なお、前記フィルタコンデンサ11(FC11)および12(FC12)には、それらの電圧を検出する第1,第2の電圧センサ22a,22bが接続されている。
【0021】
インバータ13の交流出力電力を入力する変圧器14は、降圧した交流電力をAC−DCコンバータ15に出力する。コンバータ15の直流出力側には、共振スイッチ16(Qz)と共振コンデンサ17の直列回路が接続され、共振スイッチ16がオンすると、変圧器14のインダクタンスによる共振リアクトルLzとにより共振回路が形成される。ここでは、共振スイッチ16(Qz)と共振コンデンサ17の直列回路を共振回路21と呼ぶことにする。なお、変圧器14の出力電流を検出する電流センサ23が設けられている。
【0022】
さて、コンバータ15の出力する直流電力を平滑化するフィルタリアクトル18(Ld)とフィルタコンデンサ19(FC2)が接続され、このフィルタコンデンサ19の両端電圧が、負荷20に供給される。なお、フィルタコンデンサ19(FC2)の電圧を検出する第3の電圧センサ22cが設けられている。
【0023】
以上の主回路構成に対し、制御回路として、第1〜第3の電圧センサ22a〜22cと、電流センサ23の出力信号を入力し、インバータ13を構成する主スイッチング素子Q1〜Q4および共振スイッチ16を構成するスイッチング素子Qzのゲートパルス信号G1〜G4およびGzを出力する制御装置24が備えられている。
【0024】
このDC−DCコンバータは、インバータ13内の主スイッチング素子Q1,Q4のターンオフのタイミングに合わせて共振スイッチ16を動作させ、共振電流Izを変圧器14の二次電流I2に重畳させることによって、一時的に二次電流I2をゼロ、一次電流I1を変圧器14の励磁電流のみのレベルまでに低減させることができる。このタイミングに合わせてインバータ13内の主スイッチング素子Q1,Q4をターンオフさせることで、インバータ13のターンオフ損失を大幅に低減させることができる。
【0025】
インバータ13を構成する主スイッチング素子Q1〜Q4がオフしている間、一次電流I1および二次電流I2はゼロとなっているが、コンバータ15を構成するダイオードには還流電流が流れ続けている。その状態から、インバータ13を構成する主スイッチング素子Q1とQ2あるいはQ3とQ4がターンオンすると、一次電流I1と二次電流I2が流れ始め、二次電流I2の大きさは負荷電流Idに一致する。このとき、コンバータ15を構成するダイオードの半数には二次電流I2と同じ大きさの電流が流れ、残りの半数のダイオードは電流ゼロとなる。
【0026】
このようなDC−DCコンバータにおいては、通常動作の場合、例えば、主スイッチング素子Q1,Q2がオフするに先だって、共振スイッチQzがオンして、共振電流を流した後に、主スイッチング素子Q1,Q2と共振スイッチQzがオフすることによって、ソフトスイッチングが可能となる。
【0027】
図2は、図1に示した直流電源装置における動作タイミングを示す図である。この動作タイミングチャートを用いて、図1の直流電源装置の通常の動作を説明する。
【0028】
時刻t0において、主スイッチング素子Q1がオフ、Q2がオン状態である。この状態から、時刻t1において主スイッチング素子Q1がターンオンし、主スイッチング素子Q1,Q2には電流Ipが流れる。このとき、コンバータ15のダイオードD21,D24には電流Irが流れる。
【0029】
時刻t2において、共振スイッチQzがターンオンする。これによって共振リアクトルLzと共振コンデンサCzによって共振電流Izが流れ、共振コンデンサCzが充電される。この共振動作に伴って、主スイッチング素子Q1,Q2に流れる電流Ipと、ダイオードD21,D24を流れる電流Irも増加する。
【0030】
その後、時刻t3で、主スイッチング素子Q1と共振スイッチQzのオンゲート信号が無くなるが、共振コンデンサCzが放電状態となっており、このとき負荷電流Idは共振回路21から供給されている状態であり、ダイオードD21,D24の電流Irは零になっている。したがって、このとき主スイッチング素子Q1,Q2を流れる電流Ipも、僅かに変圧器Trの励磁電流分だけが流れている。したがって、主スイッチング素子Q1と共振スイッチQzがオフすることによって、ソフトスイッチングが可能となる。
【0031】
時刻t4では、主スイッチング素子Q3がターンオンする。このとき、共振コンデンサCzからの放電が終わった状態では、コンバータ15のダイオードD21〜D24には負荷電流Idが還流して流れている。
【0032】
時刻t5では、主スイッチング素子Q2がターンオフする。Q2に流れている電流は、通常動作時には、転流によって還流するわずかな電流しか流れずほぼゼロであるため、スイッチング損失は極小である。
【0033】
時刻t6では、主スイッチング素子Q4がターンオンし、主スイッチング素子Q3,Q4には電流Inが流れる。このとき、コンバータ15のダイオードD22,D23には電流Ioが流れる。
【0034】
時刻t7において、共振スイッチQzがターンオンする。これによって共振リアクトルLzと共振コンデンサCzによって共振電流Izが流れ、共振コンデンサCzが充電される。この共振動作に伴って、主スイッチング素子Q3,Q4に流れる電流Inと、ダイオードD22,D23を流れる電流も増加する。
【0035】
その後、時刻t8では、主スイッチング素子Q4と共振スイッチQzのオンゲート信号が無くなるが、共振コンデンサCzが放電状態となっており、このとき負荷電流は共振回路21から供給されている状態であり、ダイオードD22,D23の電流Irは零になっている。したがって、このとき主スイッチング素子Q3,Q4を流れる電流Inも、僅かに変圧器Trの励磁電流分だけが流れている。したがって、主スイッチング素子Q4と共振スイッチQzがオフすることによって、ソフトスイッチングが可能となり、ターンオフに伴うスイッチング損失は発生しない。
【0036】
時刻t9では、主スイッチング素子Q2がターンオンする。このとき、共振コンデンサCzからの放電が終わった状態では、コンバータ15のダイオードD21〜D24には負荷電流Idが還流して流れている。
【0037】
時刻t10では、主スイッチング素子Q3がターンオフする。Q3に流れている電流は、通常動作時には、転流によって還流するわずかな電流しか流れずほぼゼロであるため、スイッチング損失は極小である。
【0038】
以上のようにして、図1に示すDC−DCコンバータを用いた直流電源装置におけるPWMインバータ内の主スイッチング素子のソフトスイッチングを実現している。
【0039】
図3は、本発明の実施例1における制御装置を示す機能ブロック図であり、図1における制御装置24の具体的な構成例を示す。直流電源装置の制御装置は、第3の電圧センサ22cの出力信号を入力する第1のA/D変換器101aと、第1の電流センサ23の出力信号を入力する第2のA/D変換器101bと、第1の電圧センサの出力信号を入力する第3のA/D変換器101cと、第2の電圧センサの出力信号を入力する第4のA/D変換器101dと、直流出力電圧指令Vd*と第1のA/D変換器101aの出力信号(直流出力電圧)Vdの偏差を求める第1の減算器102aと、第1の減算器102aの出力信号を入力して負荷電流指令Id*を出力する第1のPI制御器104aと、第1のPI制御器104aの出力する負荷電流指令Id*と第2のA/D変換器101bの出力信号(負荷電流推定値)Id’の偏差を求める第2の減算器102bと、第2の減算器102bの出力信号を入力する第2のPI制御器104bと、第2のPI制御器104bの出力信号と第1のA/D変換器101aの出力信号(直流出力電圧)Vdを加算する加算器103aと、第3のA/D変換器101cの出力信号と第4のA/D変換器101dの出力信号を加算する加算器103bと、加算器103bの出力信号を1/2で乗算する乗算器105aと、加算器103aの出力信号を乗算器105aの出力信号で除算する除算器106と、除算器106の出力信号と変圧器14の巻数比nを乗算し通流率γを演算する乗算器105bと、通流率γとインバータ制御周期Tcと、共振スイッチQzのオン時間Tzと、主スイッチング素子Q1〜Q4および共振スイッチQzをオンさせるオン指令ONcを入力し、主スイッチング素子Q1〜4のゲートパルス信号G1〜4および共振スイッチQzのオンゲート信号Gzを出力するゲートパルス制御装置107から構成される。
【0040】
図4は、本発明の実施例1におけるゲートパルス制御装置の機能ブロック図であり、図3におけるゲートパルス制御装置107内の機能ブロックを示しており、共振スイッチのオンゲート信号が存在する間、コンバータの主スイッチング素子のオンゲート信号を維持させる構成例を示す。
【0041】
ところで、図2に示したように、主スイッチング素子Q2およびQ3のターンオン、ターンオフは、変圧器14の一次側に電流がほとんど流れていない状態、すなわち電流Ip,In,I1がゼロの状態で行われ、主スイッチング素子Q1,Q4のターンオン,ターンオフによって電流が流れ出したり、遮断されたりする動作となる。このため、ここでは、主スイッチング素子Q2,Q3のゲートパルス信号の生成については省略している。
【0042】
ゲートパルス制御装置107は、コンバータ制御周期Tcと、通流率γと、主スイッチング素子Q1〜Q4および共振スイッチQzをオンさせるオン指令信号ONcと、共振スイッチQzのオン時間信号Tzを入力としている。そして、制御周期Tcと通流率γを乗算し、主スイッチング素子Q1またはQ4のオン時間Tonを乗算器1によって演算する。また、乗算器1の出力である主スイッチング素子Q1またはQ4のオン時間Tonと共振スイッチQzのオン時間Tzの差分時間Tbを、減算器2によって演算する。次に、コンバータ制御周期Tcと主スイッチング素子Q1またはQ4のオン時間Tonと主スイッチング素子Q1〜Q4および共振スイッチQzをオンさせるオン指令信号ONcを入力し、ゲートパルス制御器3によって、主スイッチング素子Q1またはQ4のオン指令パルスG1’またはG4’を出力する。一方、コンバータ制御周期Tcと主スイッチング素子Q1またはQ4のオン時間Tonと主スイッチング素子Q1〜Q4および共振スイッチQzをオンさせるオン指令信号ONcと差分時間Tbを入力し、ゲートパルス制御器4によって、共振スイッチQzのオン指令パルスGz’を出力する。さらに、ワンショット出力演算器5では、ゲートオフ保護信号HSTPの立ち上がりを検知して、所定の時間だけゲートオフ保護パルス信号HSTPSを出力する。
【0043】
論理積回路6aは、共振スイッチQzのオン指令パルスGz’の論理否定信号と、ゲートオフ保護ワンショットパルス信号HSTPSを入力し、論理積演算を行ってゲートストップ信号GSTPを出力する。また、論理積回路6bは、主スイッチング素子Q1またはQ4のオン指令パルスG1’またはG4’と、ゲートストップ信号GSTPの論理否定信号を入力し、論理積演算を行って主スイッチング素子Q1またはQ4のオンゲート信号G1またはG4を出力する。さらに、論理積回路6cは、共振スイッチのオン指令パルスGz’と、ゲートストップ信号GSTPの論理否定信号を入力し、論理積演算を行って共振スイッチQzのオンゲート信号Gzを出力する。
【0044】
図5は、本発明における実施例1の主スイッチング素子をオフする保護動作発生時の主スイッチング素子と共振スイッチの動作タイミングチャートを、本発明を採用しない場合と対比して示す図である。
【0045】
まず、本発明を採用しない場合を図5(A)にて説明する。保護動作の検知がない状態でオン指令パルスG1’またはG4’が出力されると、オンゲート信号G1,G4もオンとなり、主スイッチング素子Q1またはQ4がターンオンし、電流I1が流れる。その後、オン指令パルスGz’が出力されると、共振スイッチQzへのオンゲート信号Gzもオンし、これにより共振スイッチQzがターンオンし、共振動作に伴う電流I1が流れる。
【0046】
このときに過電流などの保護動作によりゲートオフさせるべき保護を検知したとすると、オンゲート信号G1またはG4、およびGzは即座にオフさせることとなる。したがって、変圧器14の一次側に、共振に伴う大電流I1が流れた状態で、主スイッチング素子Q1またはQ4をターンオフする。このとき、主スイッチング素子Q1またはQ4にかかる電圧は大電流遮断となるため、IGBT等の一般的な高耐圧半導体スイッチング素子では、電源電圧よりも高い跳ね上がり電圧が発生し、場合によっては半導体素子の耐圧を超えて破壊してしまう場合がある。
【0047】
次に、本発明の実施例1を採用した場合を図5(B)にて説明する。
【0048】
本発明では、保護動作によりゲートオフさせるべき異常事態を検知したときのターンオフでも、跳ね上がり電圧を抑え、半導体素子の破壊を防ぐようなゲートオフ保護論理を採る構成とした。ターンオフ時の跳ね上がり電圧を抑えることにより、適用する主スイッチング素子Q1〜Q4も低い耐圧の素子を用いた構成とすることが可能となる。
【0049】
まず、保護動作の検知がない状態でオン指令パルスG1’またはG4’が出力されると、オンゲート信号G1またはG4もオンとなり、主スイッチング素子Q1またはQ4がターンオンし、電流I1が流れる。その後、オン指令パルスGz’が出力されると、オンゲート信号Gzもオンし、これにより共振スイッチQzがターンオンし、I1に共振動作に伴う電流が流れる。
【0050】
このとき、過電流などの保護動作によりゲートオフさせるべき保護を検知したとすると、ゲートオフ保護信号HSTPがオンとなる。これによりゲートオフ保護ワンショットパルス信号HSTPSが所定の時間オン出力される。本発明の第1の実施形態による図4の構成では、オンゲート信号G1またはG4およびGzは即座にオフとならず、共振スイッチQzのオン指令パルスGz’がオンのとき、ゲートオフ保護信号HSTPがオンとなっても主スイッチング素子Q1またはQ4のオンゲート信号G1またはG4と共振スイッチQzのオンゲート信号Gzはオンのままとなる。
【0051】
その後、主スイッチング素子Q1またはQ4のオン指令パルスG1’またはG4’と共振スイッチのオン指令パルスGz’がオフとなると、初めて、主スイッチング素子Q1またはQ4のオンゲート信号G1またはG4と、共振スイッチQzのオンゲート信号Gzはオフとなる。
【0052】
以上の実施例1においては、DC−DCコンバータによって構成された直流電源装置内の、PWMインバータ13内の主スイッチング素子Q1〜Q4へパルス幅変調されたゲート信号を供給するとともに、前記主スイッチング素子のオンゲート信号のうち後半の所定の期間に共振用スイッチング素子Qzに対してオンゲート信号を供給する制御装置24を備え、前記共振用スイッチング素子Qzへの前記オンゲート信号Gzが存在するタイミングTz(図1)で、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令HSTPを入力したとき、前記共振用スイッチング素子に対する前記オンゲート信号が終了するまで、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を維持し、その後の新たなオンゲート信号を禁止する制御手段6a−6cを備えている。
【0053】
これによって、共振動作中にゲートオフ保護検知しても、主スイッチング素子Q1またはQ4と共振スイッチQzはオンを継続し、電流I1がほぼゼロとなったところでオフすることとなり、主スイッチング素子Q1またはQ4の大電流遮断を回避できる。
【0054】
なお、一旦、保護によりオフした後は、保護が解除され再スタートがかかるまではオンしない。
【0055】
以上の実施例においては、PWMインバータとして、3レベルインバータを採用していることにより、使用する主スイッチング素子の組合せを変えることで、主回路としての損失を低減することができ、回路を小型化できる利点がある。
【実施例2】
【0056】
図6は、本発明の実施例2におけるゲートパルス制御装置の機能ブロック図である。
【0057】
図6が、図4と異なる点は、論理和演算器7を設け、オン指令パルスG1’またはG4’とオン指令パルスGz’を入力し、論理和演算を行った結果を論理積回路6aへ出力することである。これにより以下の動作を実現できる。
【0058】
図7は、本発明における実施例2の主スイッチング素子をオフする保護動作発生時の主スイッチング素子と共振スイッチの動作タイミングチャートを、本発明を採用しない場合と対比して示す図である。
【0059】
まず、本発明を採用しない場合を図7(A)にて説明する。保護動作の検知がない状態でオン指令パルスG1’またはG4’が出力されると、オンゲート信号G1またはG4もオンとなり、主スイッチング素子Q1またはQ4がターンオンし、電流I1が流れる。
【0060】
このとき、過電流などの保護動作によりゲートオフさせるべき保護を検知したとすると、ゲートオフ保護信号HSTPがオンとなる。これにより、ゲートオフ保護ワンショットパルス信号HSTPSが所定の時間オン出力される。本発明を採用しない場合、図7(A)に示すように、オンゲート信号G1またはG4は即座にオフとなる。これにより、共振に伴うゼロ電流付近でのソフトスイッチングが行えず、ハードスイッチングによって主スイッチング素子Q1またはQ4をターンオフすることとなる。このとき、主スイッチング素子Q1またはQ4にかかる電圧はソフトスイッチング動作に比べ、大電流遮断となるため、IGBT等の一般的な高耐圧半導体スイッチング素子では、電源電圧よりも高い跳ね上がり電圧が発生し、場合によっては半導体素子の耐圧を超えて破壊してしまう場合がある。
【0061】
これに対して、図6に示す本発明の第2の実施形態によれば、図7(B)に示すように、ゲートオフ保護信号HSTPがオンとなった後、オンゲート信号G1またはG4、およびGzは即座にオフとならず、主スイッチング素子Q1またはQ4のオン指令パルスG1’またはG4’と、共振スイッチのオン指令パルスGz’がオンのとき、ゲートオフ保護信号HSTPがオンとなっても、主スイッチング素子Q1またはQ4のオンゲート信号G1またはG4はオンのままとなり、共振スイッチQzのオンゲート信号Gzは、所定のタイミングでオンとなる。
【0062】
その後、主スイッチング素子Q1またはQ4のオン指令パルスG1’またはG4’と共振スイッチのオン指令パルスGz’がオフとなると、初めて、主スイッチング素子Q1またはQ4のオンゲート信号G1またはG4と、共振スイッチQzのオンゲート信号Gzはオフとなる。
【0063】
以上の実施例2においては、PWMインバータ内の主スイッチング素子へパルス幅変調されたゲート信号を供給するとともに、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号のうち後半の所定の期間に前記共振用スイッチング素子に対してオンゲート信号を供給する制御装置を備えた直流電源装置において、PWMインバータ13内の主スイッチング素子Q1またはQ4へのゲート信号G1またはG4がオンであり、かつ前記共振用スイッチング素子Qzへのオンゲート信号Gzが存在しないタイミング(図7)で、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令HSTPを入力したとき、その後、前記共振用スイッチング素子Qzに対する前記オンゲート信号Gzが発生しかつこのオンゲート信号が終了するまで、前記主スイッチング素子Q1またはQ4へのオンゲート信号G1またはG4を維持し、その後の新たなオンゲート信号を禁止する制御手段7,6a(図6)、226,225a(図10)を備えている。
【0064】
これによって、主スイッチング素子Q1またはQ4がオンしている間に、ゲートオフ保護を検知しても、主スイッチング素子Q1またはQ4と共振スイッチQzはオンを継続し、電流I1がほぼゼロとなったところでオフするソフトスイッチングが可能となり、主スイッチング素子Q1またはQ4の大電流遮断を回避できる。
【0065】
なお、一旦、保護によりオフした後は、保護が解除され再スタートがかかるまではオンしない。
【0066】
ところで、図6の実施例2においては、共振スイッチQzへのオン指令パルスGz’を、主スイッチング素子Q1またはQ4へのオン指令パルスG1’またはG4’の後半の一部期間に発生させるものとしている。このため、制御装置に異常がなければ、論理和回路7への入力は、主スイッチング素子Q1またはQ4へのオン指令パルスG1’またはG4’のみとした場合に等しいと言える。
【0067】
したがって、インバータ13内の主スイッチング素子Q1またはQ4へパルス幅変調されたゲート信号G1またはG4を供給するとともに、前記主スイッチング素子のオンゲート信号のうち後半の所定の期間に前記共振用スイッチング素子に対してオンゲート信号Gzを供給する制御装置を備えた直流電源装置において、前記インバータ内の主スイッチング素子への前記ゲート信号がオンであるタイミングで、前記主スイッチング素子をオフすべき保護動作指令を入力したとき、前記主スイッチング素子へのオンゲート信号を、今回のオン指令が継続する期間だけ維持し、一旦当該ゲート信号がオフとなった後に、新たにオンとなることを禁止する制御手段を備えるように構成しても良い。
【0068】
ただし、主スイッチング素子へのオンゲート信号G1またはG4の終端と、共振スイッチへのオンゲート信号Gzの終端とのタイミングのずれは、素子破壊を招くので、絶対に許されない。このため、図6の実施例は、これらのタイミングを正確に一致させ得る点で望ましいと言える。
【実施例3】
【0069】
図8は、本発明の実施例3を適用できる直流電源装置の主回路の構成例を示す図であり、DC−ACインバータを2レベル構成とした場合の実施例を示す。
【0070】
インバータ201は、直流電圧源200と、直流電圧源200に並列接続されたフィルタコンデンサ209(FC1)と、フィルタコンデンサ209(FC1)の電圧を検出する第4の電圧センサ210aと、フィルタコンデンサ209の直流電力を交流電力に変換するインバータ201と、インバータ201の出力する交流電力を入力する変圧器202と、変圧器202の出力電流を検出する第2の電流センサ211と、変圧器202の出力する交流電力を直流電力に変換するコンバータ203と、コンバータ203の直流出力側に接続された共振スイッチ204(Qz)と、共振コンデンサ205から構成された共振回路と、コンバータ203の出力する直流電力を平滑化するフィルタリアクトル206とフィルタコンデンサ207(FC2)と、フィルタコンデンサ207(FC2)の電圧を検出する第5の電圧センサ210bと、フィルタコンデンサ207に並列接続された負荷208と、第4の電圧センサ210aと第5の電圧センサ210bと第2の電流センサ211の出力信号を入力し、インバータ201および共振スイッチ204を構成する半導体スイッチング素子Q1〜Q4,Qzのオンゲート信号G1〜G4、Gzを制御する制御装置212から構成されている。
【0071】
図9は、本発明の実施例3における制御装置を示す機能ブロック図である。直流電源装置の制御装置は、第5の電圧センサ210bの出力信号を入力する第5のA/D変換器213aと、第2の電流センサ211の出力信号を入力する第6のA/D変換器213bと、第4の電圧センサの出力信号を入力する第7のA/D変換器213cと、直流出力電圧指令Vd*と第5のA/D変換器213aの出力信号(直流出力電圧)Vdの偏差を求める第3の減算器214aと、第3の減算器214aの出力信号を入力して負荷電流指令Id*を出力する第3のPI制御器215aと、第3のPI制御器215aの出力する負荷電流指令Id*と第6のA/D変換器213bの出力信号(負荷電流推定値)Id’の偏差を求める第4の減算器214bと、第4の減算器214bの出力信号を入力する第4のPI制御器215bと、第4のPI制御器215bの出力信号と第5のA/D変換器の出力信号(直流出力電圧)Vdを加算する加算器216と、加算器216の出力信号を第7のA/D変換器213cの出力信号で除算する除算器217と、除算器217の出力信号と変圧器202の巻数比nを乗算し通流率γを演算する乗算器218と、通流率γとコンバータ制御周期Tcと、共振スイッチQzのオン時間Tzと、主スイッチング素子Q1〜Q4および共振スイッチQzをオンさせるオン信号ONcを入力し、主スイッチング素子Q1〜4のオンゲート信号G1〜4および共振スイッチQzのオンゲート信号Gzを出力するゲートパルス制御装置219から構成される。
【0072】
図10は、本発明の実施例3によるゲートパルス制御装置の機能ブロック図である。
【0073】
ゲートパルス制御装置219は、インバータの制御周期Tcと、通流率γと、主スイッチング素子Q1〜Q4および共振スイッチQzをオンさせるオン指令信号ONcと、共振スイッチQzのオン時間Tzを入力とし、制御周期Tcと通流率γを乗算し、主スイッチング素子Q1またはQ4のオン時間Tonを演算する乗算器220と、乗算器220の出力である主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3のオン時間信号Tonと共振スイッチQzのオン時間Tzの差分時間Tbを演算する減算器221と、インバータ制御周期Tcと主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3のオン時間Tonと主スイッチング素子Q1〜Q4および共振スイッチQzをオンさせるオン指令ONcを入力し、主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3のオン指令パルスG1’,G4’またはG2’,G3’を出力するゲートパルス制御器222と、インバータ制御周期Tcと主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3のオン時間Tonと主スイッチング素子Q1〜Q4および共振スイッチQzをオンさせるオン指令ONcと差分時間Tbを入力し、共振スイッチQzのオン指令Gz’を出力するゲートパルス制御器223と、ゲートオフ保護信号HSTPを入力信号の立ち上がりを検知して、所定の時間だけゲートオフ保護ワンショットパルス信号HSTPSをオン出力するワンショット出力演算器224と、オン指令パルスG1’,G4’またはG2’,G3’およびGz’を入力し論理和演算を行った結果を出力する論理和演算器226と、論理和演算器226の出力信号の論理否定信号とゲートオフ保護ワンショット信号HSTPSを入力し、論理積演算を行ってゲートストップ信号GSTPを出力する論理積回路225aと、オン指令パルスG1’,G4’またはG2’,G3’とゲートストップ信号GSTPの論理否定信号を入力し、論理積演算を行って主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3のオンゲート信号G1,G4またはG2,G3を出力する論理積演算器225bと、オン指令パルスGz’とゲートストップGSTPの論理否定信号を入力し、論理積演算を行って共振スイッチQzのオンゲート信号Gzを出力する論理積回路225cとで構成される。
【0074】
図11は、本発明における実施例3の主スイッチング素子をオフする保護動作発生時の主スイッチング素子と共振スイッチの動作タイミングチャートを、本発明を採用しない場合と対比して示す図である。
【0075】
まず、本発明を採用しない場合を図11(A)にて説明する。保護動作の検知がない状態でオン指令パルスG1’,G4’またはG2’,G3’が出力されると、オンゲート信号G1,G4、またはG2,G3もオンとなり、主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3がターンオンし、電流I1が流れる。
【0076】
このとき、過電流などの保護動作によりゲートオフさせるべき保護を検知したとすると、ゲートオフ保護信号HSTPがオンとなる。これによりゲートオフ保護ワンショットパルス信号HSTPSが所定の時間オン出力され、オンゲート信号G1,G4またはG2,G3は即座にオフとなる。これにより、共振に伴うゼロ電流付近でのソフトスイッチングが行えず、ハードスイッチングによって主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3をターンオフすることとなる。このとき、主スイッチング素子Q1,Q4、またはQ2,Q3にかかる電圧はソフトスイッチング動作に比べ、大電流遮断となるため、IGBT等の一般的な高耐圧半導体素子では電源電圧よりも高い跳ね上がり電圧が発生し、場合によっては半導体素子の耐圧を超えて破壊してしまう場合がある。
【0077】
一方、本発明の実施例3を採用した図10に示す構成によれば、図11(B)に示すように、ゲートオフ保護信号HSTPがオンとなった後、オンゲート信号G1,G4またはG2,G3、およびGzは即座にオフとならず、主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3のオン指令パルスG1’,G4’またはG2’,G3’と、共振スイッチのオン指令パルスGz’がオンのとき、ゲートオフ保護信号HSTPがオンとなっても主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3のオンゲート信号G1,G4またはG2,G3はオンのままとなり、共振スイッチQzのオンゲート信号Gzは所定のタイミングでオンとなる。その後、主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3のオン指令パルスG1’,G4’またはG2’,G3’と共振スイッチのオン指令パルスGz’がオフとなると、主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3のオンゲート信号G1,G4またはG2,G3、および共振スイッチQzのオンゲート信号Gzはオフとなる。これによって主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3がオンしている間に、ゲートオフ保護を検知しても、主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3と共振スイッチQzはオンを継続し、電流I1がほぼゼロとなったところでターンオフするソフトスイッチングが可能となり、主スイッチング素子Q1,Q4またはQ2,Q3の大電流遮断を回避できる。
【0078】
一度保護によりオフした後は、保護が解除され再スタートされるまではオンしない。
【0079】
なお、ここでは主スイッチング素子Q1〜Q4がオン中でQzがオフ中に保護動作が発生した場合の例を示したが、実施例1に示すようなQzがオンの時に限って、即座に主スイッチング素子Q1〜Q4と共振スイッチQzがすぐにターンオフしないような構成を実施例3で示したような2レベル回路に適用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1,105a,105b,218,220…乗算器、2…加算器、3,4,222,223…パルス制御器、5,224…ワンショット出力演算器、6a〜6c,225a〜225c…論理積(AND)回路、7,226…論理和(OR)回路、10,200…直流電圧源、11,12…フィルタコンデンサ、13,201…PWMインバータ、14,202…変圧器、15,203…コンバータ、16,204…共振スイッチ(Qz)、17,205…共振コンデンサ、18,206…フィルタリアクトル、19,207,209…フィルタコンデンサ、20,208…負荷、21…共振回路、22a〜22c,210a,210b…電圧センサ、23,211…電流センサ、24,212…制御装置、101a〜101d,213a〜213c…A/D変換器、102a,102b,214a,214b,221…減算器、103a,103b,216…加算器、104a,104b,215a,215b…PI制御器、106,217…除算器、107,219…ゲートパルス制御装置、D5,D6…クランプダイオード、D21〜D24…整流ダイオード、G1〜G4…Q1〜Q4へのオンゲート信号、Gz…共振スイッチQzへのオンゲート信号、G1’〜G4’…Q1〜Q4のオン指令パルス、Gz’…共振スイッチQzのオン指令パルス、GSTP…ゲートストップ信号、HSTP…ゲートオフ保護信号、HSTPS…ゲートオフ保護ワンショットパルス信号、I1…一次電流、I2…二次電流、Id…負荷電流、Id*…負荷電流指令、Ip,In…インバータ内電流、Io,Ir…コンバータ内電流、Iz…共振電流、Lz…共振リアクトル、ONc…オン指令信号、Q1〜Q4…インバータ内主スイッチング素子、Tb…スイッチング素子オン時間と共振スイッチQzオン時間の差、Tc…制御周期、Ton…スイッチング素子オン時間、Tz…共振スイッチQzオン時間、Vd…直流出力電圧、Vd*…直流出力電圧指令、γ…通流率。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11