(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2冷却工程において、前記液体冷媒を前記粗樹脂成形体に対して相対的に流動させ、前記粗樹脂成形体の前記第1面に対して前記液体冷媒を衝突させることにより前記粗樹脂成形体を冷却する請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
まず本発明の製造方法によって製造される樹脂成形品について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の製造方法によって製造される樹脂成形品の一例を示す断面図である。
図1に示すように、樹脂成形品100は、帯状の第1面11及び第1面11の裏側に位置する帯状の第2面12を有する本体部10と、第2面12の両端部の各々に設けられる突出部20,21とを有する。樹脂成形品100は、キシリレンジアミン及びα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸の重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂と無機充填剤とを含むポリアミド樹脂組成物から構成されている。さらに樹脂成形品100においては、本体部10の内部に空間13が形成され、突出部20には凹部20aが形成され、空間13と凹部20aとは互いに連通されている。
【0021】
次に、樹脂成形品100の製造方法について説明する。
【0022】
まず樹脂成形品100の製造方法について説明する前に、樹脂成形品100を製造する射出成形装置について
図2を用いて説明する。
図2は、樹脂成形品100を製造する射出成形装置の金型の一例を示す断面図である。
【0023】
射出成形装置は、
図2に示すように、金型40と、金型40に溶融した熱可塑性樹脂組成物を導入する加熱シリンダ装置(図示せず)とを備えている。金型40は、固定金型部41と、可動金型部42とを備えている。固定金型部41と可動金型部42とが接合されると、金型キャビティ43と、溶融熱可塑性樹脂組成物を金型キャビティ43に導入するライナ44とが形成されるようになっている。なお、
図2に示すように、可動金型部42には、窒素ガスなどの加圧流体を導入するシリンダ45を備えた加圧流体導入部46が設けられている。
【0024】
次に、上述した射出成形装置を用いた樹脂成形品100の製造方法について
図3〜
図5を用いて説明する。
図3〜
図5はそれぞれ、樹脂成形品100を製造する一連の工程を示す図である。
【0025】
樹脂成形品100は、射出成形法を用いて製造されるものであり、具体的には以下のようにして製造される。
【0026】
すなわち、まず
図3に示すように、加熱シリンダ装置から、金型40のライナ44に溶融した熱可塑性樹脂組成物を導入し、金型キャビティ43内に溶融した熱可塑性樹脂組成物Rを充填する(充填工程)。このとき、加圧流体導入部46のシリンダ45により、溶融した熱可塑性樹脂組成物R中に加圧流体を導入して空間13を形成する。
【0027】
次に、溶融した熱可塑性樹脂組成物Rを金型キャビティ43内にて冷却時間t1、冷却温度T1にて冷却し、粗樹脂成形体50を得る(第1冷却工程)。
【0028】
第1冷却工程終了後、
図4に示すように、金型キャビティ43から取り出した粗樹脂成形体50を液体冷媒60中で、冷却時間t2、冷却温度T2にて冷却し、樹脂成形体を得る(第2冷却工程)。
【0029】
第2冷却工程終了後、
図5に示すように、液体冷媒60中から樹脂成形体80を取り出して乾燥させ、樹脂成形品100を得る(乾燥工程)。
【0030】
こうして樹脂成形品100を製造する際、第1冷却工程における冷却時間t1、冷却温度T1及び、第2冷却工程における冷却時間t2、冷却温度T2が、下記(1)及び(2)の条件を同時に満たすようにする。
(1)T1−T2=80〜130℃
(2)t1<t2
【0031】
上記のように樹脂成形品100を製造することで、樹脂成形品100の第1面11、第2面12の最大ヒケ量を十分に低減することが可能となるため、樹脂成形品100の歩留まりを向上させることができる。
【0032】
以下、上記充填工程、第1冷却工程、および、第2冷却工程の各々について詳細に説明する。
【0033】
(充填工程)
熱可塑性樹脂組成物Rとしては、キシリレンジアミン及びα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸の重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂と無機充填剤とを含むポリアミド樹脂組成物が用いられる。ポリアミド樹脂がキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含まないポリアミド樹脂組成物を用いると、樹脂成形品100の最大ヒケ量を十分に低減することができない。また無機充填剤を含まないポリアミド樹脂組成物を用いると、樹脂成形品100が十分な強度、剛性及び寸法安定性を有することができない。
【0034】
ポリアミド樹脂に含まれるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、上述したようにキシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族二塩基酸との重縮合反応により得られるポリアミド樹脂である。
【0035】
キシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンが用いられる。これらは単独で又は混合して用いてもよい。上記メタキシリレンジアミンと上記パラキシリレンジアミンの混合比率は、特に限定されるものではないが、例えばメタキシリレンジアミン50〜100モル%に対してパラキシリレンジアミン50〜0モル%であればよい。
【0036】
α,ω−直鎖脂肪族二塩基酸としては、特に限定されるものではないが、例えば炭素数4〜12の脂肪族二塩基酸が用いられる。α,ω−直鎖脂肪族二塩基酸の具体例としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が挙げられ、このうち特に好ましいのは、アジピン酸である。
【0037】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の相対粘度は、好ましくは1.6〜3であり、より好ましくは1.7〜2.9であり、最も好ましくは1.8〜2.8である。相対粘度が1.6〜3の範囲内にあると、その範囲を外れる場合に比べて、機械的強度および成形性をより向上させることができる。
【0038】
上記ポリアミド樹脂は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂を含んでいてもよい。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂としては、例えばヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応により得られるポリアミド66、ε−カプロラクタムの開環重縮合反応により得られるポリアミド6等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0039】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の相対粘度は、好ましくは2.0〜3.5であり、より好ましくは2.1〜3.2であり、最も好ましくは2.2〜3.0である。相対粘度が2.0〜3.5の範囲内にあると、その範囲を外れる場合に比べて、機械的強度および成形性をより向上させることができる。
【0040】
ポリアミド樹脂中のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の含有率は、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは53〜90質量%である。
【0041】
無機充填剤としては、繊維状又は粒状など任意の形状のものを用いることができる。このような無機充填剤の具体例としては、ガラス繊維(チョップドストランド)、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、ガラスフレーク、ガラスビーズ等のガラス系フィラー、カーボンブラック、炭素繊維、炭素短繊維、カーボンナノチューブ等の炭素系フィラー、マイカ、タルク、ウォラストナイト、カオリナイト、ゾノトライト、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、スメクタイト等の珪酸塩化合物、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカー、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等が挙げられる。このうち特に好ましいのは、ガラス繊維、カーボンブラック、タルク及びマイカである。
【0042】
無機充填剤が繊維状である場合、その平均繊維径は、特に制限されないが、1〜100μmであることが好ましく、2〜50μmmであることがより好ましく、3〜30μmであることがさらに好ましく、5〜20μmであることが特に好ましい。この場合、平均繊維径が上記範囲を外れる場合に比べて、樹脂成形品の機械的特性をより向上させることができる。
【0043】
また平均繊維径に対する平均繊維長の比(以下、「アスペクト比」と呼ぶ)は、特に制限されないが、5〜40であることが好ましく、7〜35であることがより好ましく、9〜30であることがさらに好ましい。アスペクト比が上記範囲内にあると、上記範囲を外れる場合に比べて、繊維状無機充填剤による補強効果がより高くなるとともに、溶融混練やポリアミド樹脂組成物の成形がより容易になる。なお、平均繊維径及び平均繊維長は、光学顕微鏡観察した画像から画像解析装置により算出して測定することができる。
【0044】
無機充填剤が粒状である場合は、その平均粒径は0.05〜50μmであることが好ましく、更には0.1〜40μmであることがより好ましい。平均粒径が上記範囲内にあると、上記範囲を外れる場合に比べて、補強効果がより高くなると共に、樹脂成形品100の目視外観がより良好となる。ここで、平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるD
50を言い、具体的には島津製作所社製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100」を用いて測定される平均粒径を言う。
【0045】
無機充填剤は1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
ポリアミド樹脂100質量部に対する無機充填剤の配合量は、特に限定されるものではないが、50〜150質量部であることが好ましく、80〜120質量部であることがさらに好ましい。ポリアミド樹脂100質量部に対する無機充填剤の配合量が上記範囲内にあると、上記範囲を外れる場合に比べて、最大ヒケ量をより低減することができ、歩留まりの低下をより十分に抑制することができるとともに、良好な成形性と十分な強度、剛性、寸法安定性を両立できる。
【0047】
上記ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、脂肪酸の金属塩、アクリル樹脂およびアクリル系グラフトポリマー等を含んでもよい。
【0048】
脂肪酸の金属塩としては例えばステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0049】
アクリル樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、メチルメタアクリレート/フェニルメタアクリレート共重合体等が挙げられる。
【0050】
アクリル系グラフトポリマーとしては、例えばアクリル/PMMAグラフトポリマー、エポキシ変性アクリル/PMMAグラフトポリマー等が挙げられる。
【0051】
また上記ポリアミド樹脂組成物には、さらに必要に応じて、熱安定剤、可塑剤、流動性改良剤、分散剤、離形剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機ニッケル化合物、紫外線安定剤、帯電防止剤、難燃剤、滴下防止剤、防曇剤、防かび剤、抗菌剤、滑剤、有機発泡剤、透明核剤、架橋剤、耐衝撃強化剤および染顔料などをさらに含んでもよい。
【0052】
(第1冷却工程)
第1冷却工程は、溶融した熱可塑性樹脂組成物Rを金型キャビティ43内にて冷却時間t1、冷却温度T1にて冷却する工程であり、第1冷却工程は、溶融熱可塑性樹脂組成物Rを充填した後、保圧状態にする工程も含む。
【0053】
従って、冷却時間t1とは、溶融熱可塑性樹脂組成物Rを充填後、保圧状態にしてから粗樹脂成形体50を取り出すまでの時間を言う。
【0054】
冷却時間t1は好ましくは30〜60秒であり、より好ましくは35〜50秒である。冷却時間t1が上記範囲内にあると、冷却時間t1が30秒未満である場合に比べて、熱可塑性樹脂組成物Rがより十分に冷却され、冷却時間t1が60秒を超える場合に比べて、樹脂成形品100の生産性をより向上させることができる。
【0055】
冷却時間t1においては、保圧状態にする工程に要する時間(以下、「保圧時間」と呼ぶ)の占める割合を30〜90%とすることが好ましく、40〜80%とすることがより好ましい。冷却時間t1に占める保圧時間の割合が30〜90%の範囲内にあると、その範囲を外れた場合に比べて、ヒケやバリがより少なくなる。
【0056】
また冷却温度T1とは、溶融した熱可塑性樹脂組成物Rの実測温度ではなく、金型40の設定温度を言う。
【0057】
冷却温度T1は、好ましくは110〜140℃であり、より好ましくは120〜135℃である。冷却温度T1が上記範囲内にあると、冷却温度T1が110℃未満である場合に比べて、熱可塑性樹脂組成物Rがより十分に結晶化し、冷却温度T1が140℃を超える場合に比べて、樹脂成形品100の生産性をより向上させることができる。
【0058】
(第2冷却工程)
第2冷却工程は、第1冷却工程終了後、金型キャビティ41から取り出した粗樹脂成形体50を液体冷媒60中で、冷却時間t2、冷却温度T2にて冷却し、樹脂成形体を得る工程である。
【0059】
液体冷媒60は、液体で、冷媒として機能し得るものであり、且つ粗樹脂成形体50を溶解しないものであればよい。ここで、粗樹脂成形体50を冷却する冷媒として液体を用いるのは、空気等の気体では、最大ヒケ量を十分に低減させることができないためである。このような液体冷媒60としては、例えば水、アルコールを少量添加した水などが挙げられる。中でも、水が好ましい。
【0060】
液体冷媒60の電気伝導度は60μS/cm以下であることが好ましく、40μS/cm以下であることがより好ましい。液体冷媒の電気伝導度が60μS/cm以下であると、60μS/cmを超える場合に比べて、樹脂成形品表面の異物やピンホールがより少なくなる。
【0061】
液体冷媒60は、粗樹脂成形体50に対して、相対的に流動させても流動させなくてもよいが、相対的に流動させることが好ましい。この場合、粗樹脂成形体50からの熱が粗樹脂成形体50の付近でこもらず、粗樹脂成形体50を効果的に冷却できる。液体冷媒60を流動させる場合、液体冷媒60の流れは、粗樹脂成形体50の第1面11に衝突させるようにすることが好ましい。これは、第1面11にヒケが生じやすいため、液体冷媒60の流れを衝突させることにより第1面11を効果的に冷却し、最大ヒケ量を十分に低減するためである。このとき、液体冷媒60の流れ方向と粗樹脂成形体50の第1面11とを略垂直とすることが好ましい。この場合、第1面11のヒケ量を小さくできるという利点が得られる。
【0062】
液体冷媒60を粗樹脂成形体50に対して相対的に流動させるには、通常は、容器70を用意し(
図4参照)、その容器70に液体冷媒60を供給すると同時に、容器70から液体冷媒60を排出すればよい。このとき、排出した液体冷媒60を放熱させる場合には、排出した液体冷媒60を容器70に供給して循環させてもよい。あるいは、液体冷媒60については循環させず、粗樹脂成形体50を移動させてもよい。
【0063】
このとき、粗樹脂成形体50に対する液体冷媒60の相対流速は特に限定されるものではないが、冷却効率という理由から、10cm/s以下であることが好ましく、5cm/s以下であることがより好ましい。
【0064】
ここで、冷却時間t2とは、粗樹脂成形体50を液体冷媒60中に浸漬してから取り出すまでの時間を言う。
【0065】
冷却時間t2は冷却時間t1より長ければよい。これは、冷却時間t2が冷却時間t1以下であると、最大ヒケ量が大きくなり、樹脂成形品100の歩留まりが低下するためである。
【0066】
但し、t2は下記式:
(3)t2/t1≦10
を満足することが好ましい。この場合、t2/t1が10を超える場合に比べて、樹脂成形品の生産性がより向上する。
【0067】
t2/t1は、好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下である。
【0068】
また冷却温度T2とは、液体冷媒60の実際の温度ではなく、液体冷媒60の設定温度を言う。
【0069】
冷却温度T2は、T1−T2=80〜130℃を満たすものであればよい。T1−T2が80℃未満である場合および130℃を超える場合、樹脂成形品100の最大ヒケ量が大きくなり、歩留まりを向上させることができない。
【0070】
このとき、液体冷媒60の温度、すなわち冷却温度T2は、30℃以下であることが好ましく、20℃以下であることがより好ましい。この場合、第2冷却工程の液体冷媒60の温度が30℃を超える場合に比べて、冷却効果が高まり、最大ヒケ量をより十分に低減することができる。但し、液体冷媒60の温度はその冷媒60の凝固点より高い温度とする。冷媒60の温度をその凝固点以下の温度とすると、冷媒60が固体となってしまい、粗樹脂成形体50を冷媒60に浸漬することができなくなる。
【0071】
(乾燥工程)
乾燥工程は、第2冷却工程終了後、液体冷媒60中から樹脂成形体80を取り出して乾燥させ、樹脂成形品100を得る工程である。乾燥は樹脂成形体80の表面に付着した液体冷媒60を除去するために行うものである。乾燥条件は、液体冷媒60の種類にもよるので一概には言えないが、例えば液体冷媒60が水である場合、樹脂成形体80を15〜30℃の環境下に5〜10分間程度放置すればよい。あるいは
図5に示す矢印の方向に圧縮空気を樹脂成形体80に吹き付けて水分を除去したり、柔軟なクロス等で水分をふき取り、除去することもできる。
【0072】
樹脂成形品100は、例えば炊飯器のハンドル、電車の座席の背もたれに設けられたハンドル、自動車のドアハンドル、窓や玄関のドア開閉用のハンドルなどとして使用可能である。
【0073】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、樹脂成形品100の本体部10の内部に空間13が形成されているが、本体部10の内部に空間13は形成されていなくてもよい。すなわち、樹脂成形品100は中空状ではなく中実状であってもよい。この場合、金型40の可動金型部42では、加圧流体導入部46は省略される。また凹部20aは必ずしも必要なものではなく、省略が可能である。
【実施例】
【0074】
以下、本発明について実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0075】
実施例および比較例において用いた樹脂組成物の原料は次のとおりである。
(1)ポリアミド樹脂
(a)キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂
ポリメタキシリレンアジパミド(以下、「MXD6」と呼ぶ。)
三菱瓦斯化学社製、商品名「ポリアミドMXD6#6000」
融点243℃、相対粘度2.14
(b)キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂
ポリアミド66(以下、「PA66」と呼ぶ。)
デュポン社製、商品名「ザイテル101」
相対粘度3.0
ポリアミド6(以下、「PA6」と呼ぶ。)
宇部興産社製、商品名「UBEナイロン1010X1」、相対粘度2.2
(2)無機充填剤
ガラス繊維
オーエンスコーニング社製、商品名「ECS03T−JAFT−2」
チョップドストランド、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm
マイカ
クラレトレーディング社製、商品名「スゾライト 325HK」
平均粒径24μm
カーボンブラック
三菱化学社製、商品名「#30」
タルク−1
林化成社製、商品名「ミクロンホワイト5000A」
平均粒径4.1μm
タルク−2
富士タルク社製、商品名「TM−2」
平均粒径17μm
(3)その他の成分
ステアリン酸バリウム
堺化学社製
アクリル樹脂
アルケマ社製、PMMA、商品名「Altuglas V920」
アクリル系グラフトポリマー
東亜合成社製、エポキシ変性アクリル/PMMAグラフトポリマー、商品名「レゼタ GP−301」
【0076】
<ポリアミド樹脂組成物1〜3の調製>
上記原料成分を下記表1に示す割合で含むポリアミド樹脂組成物1〜3を以下のように調製した。すなわち、表1に示す各成分を同表に示す割合にて、タンブラ−ミキサ−で均一に混合した後、二軸押出機(東芝機械製「TEM−37BS」)にフィードし、280℃にて溶融混練した樹脂組成物を、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリアミド樹脂組成物1〜3のペレットを得た。ここで表1における数値の単位は質量部である。
【表1】
【0077】
(実施例1〜24及び比較例2〜5、7〜10及び12〜15)
上記ポリアミド樹脂組成物1〜3を80℃で10時間以上乾燥した後、日本製鋼所製J−220EV−P型射出成形機に、中央部に握手部分を、両端に車両本体への取り付け部分を有する自動車用アウターハンドル成形用金型を取り付けた。その後、シリンダにて溶融した樹脂組成物1〜3を金型のライナを通して金型キャビティ内に充填した。このとき、シリンダ温度は280℃、金型の温度は80〜150℃、充填時間は10秒とした。
【0078】
その後、保圧50MPaで保圧しながら溶融した樹脂組成物を冷却し、
図1に示す断面形状(長手方向断面)の粗樹脂成形体を得た。このとき、冷却時間t1及び冷却温度T1は表2〜4に示す通りとした。
【0079】
次いで、この粗樹脂成形体を金型から取り出した。このとき、成形サイクル時間Ttは表2〜4に示す通りであった。
【0080】
その後、粗樹脂成形体を治具に固定し、チラーを備えた容器中の冷媒に浸漬して冷却した。このとき、冷媒は水とし、冷却時間t2、冷却温度T2(冷媒の温度)および冷媒の電気伝導度は、表2〜4に示す通りとした。またこのとき、容器(水槽)において、粗樹脂成形体の第1面又は第2面に対する水の相対流速は表2〜4に示す通りとした。こうして樹脂成形体を得た。なお、表2〜4において、第1面に水流を衝突させた場合は、相対流速の欄において相対流速の値のみを示し、第2面に水流を衝突させた場合は、相対流速の欄において相対流速の値を示すと共に、「(第2面)」と明記した。
【0081】
次に、上記のようにして得られた樹脂成形体を冷媒から取り出し、25℃で5分間乾燥させた。こうして、樹脂成形品であるアウターハンドル成形品を得た。
【0082】
(比較例1、6及び11)
上記ポリアミド樹脂組成物1〜3を80℃で10時間以上乾燥した後、日本製鋼所製J−220EV−P型射出成形機に、中央部に握手部分を、両端に車両本体への取り付け部分を有する自動車用アウターハンドル成形用金型を取り付けた。その後、シリンダにて溶融した樹脂組成物1を金型のライナを通して金型キャビティ内に充填した。このとき、シリンダ温度は280℃、金型の温度は120℃、充填時間は10秒とした。
【0083】
その後、保圧50MPaで保圧しながら溶融した樹脂組成物を冷却し、
図1に示す断面形状(長手方向断面)の樹脂成形体を得た。このとき、冷却時間t1は70秒、冷却温度T1は120℃とした。
【0084】
次いで、この粗樹脂成形体を金型から取り出し、樹脂成形品であるアウターハンドル成形品を得た。このとき、成形サイクル時間Ttは80秒であった。
【0085】
実施例1〜24及び比較例1〜15で得られたアウターハンドル成形品について、最大ヒケ量の測定、光沢度の測定、結晶化度の測定を行うと共に、目視外観について調べた。
【0086】
(1)最大ヒケ量
実施例1〜24及び比較例1〜15で得られたアウターハンドル成形品について、車両本体の取り付け部分の一方の端部ともう一方の端部との間の面(第2面)における最大ヒケ量を、東京精密社製の表面荒さ計(商品名:サーフコム3000A)にて測定した。結果を表2〜4に示す。表2〜4においては、各実施例及び各比較例ごとに3個のアウターハンドル成形品を用意し、これら3個のアウターハンドル成形品について測定した最大ヒケ量の平均値を最大ヒケ量とした。最大ヒケ量の合格基準は、4.5μm以下で合格とし、4.5μmを超える場合には不合格とした。ここで、「4.5μm」はアウターハンドル成形品を廃棄処分するか否かを決定する値を意味する。
【0087】
(2)光沢度(グロス)
実施例1〜24及び比較例1〜15で得られたアウターハンドル成形品について、中央部の握手部分の光沢度を、JIS Z 8741の方法に準じて測定した。結果を表2〜4に示す。なお、測定機には日本電色社製VG−2000(商品名)を使用し、測定角度は60度とした。また表2〜4においては、各実施例及び各比較例ごとに3個のアウターハンドル成形品を用意し、これら3個のアウターハンドル成形品について測定した光沢度の平均値を光沢度とした。測定値が大きいほど、より鏡面状態に近いことを表す。
【0088】
(3)結晶化度
実施例1〜24及び比較例1〜15で得られたアウターハンドル成形品の表面を、カッターで少量削り取り、示差走査熱量計(DSC200、セイコー電子工業製)を用い、10℃/分の速度にて300℃まで昇温する過程で発生する発熱ピークから融解熱ΔH(J/g)を求め、この融解熱ΔHと、MXD6、PA66およびPA6の結晶化度が100%であるときの融解熱とに基づいて結晶化度を算出した。結果を表2〜4に示す。
【0089】
(4)目視外観
実施例1〜24及び比較例1〜15で得られたアウターハンドル成形品について、外観を目視で観察した。そして、表面の状態を以下の3段階で評価した。結果を表2〜4に示す。
○:荒れ、くもり、異物、ヒケ等がほとんどなく、表面が平滑である。
△:荒れ、くもり、異物、ヒケ等がやや認められ、表面の平滑性もやや劣る
×:荒れ、くもり、異物、ヒケ等が大きく、表面の平滑性が劣る
【表2】
【表3】
【表4】
【0090】
表2〜4に示す結果より、実施例1〜24で得られたアウターハンドル成形品は、最大ヒケ量について合格基準を満たすことが分かった。これに対し、比較例1〜15で得られたアウターハンドル成形品は、最大ヒケ量について合格基準に達しないことが分かった。
【0091】
よって、本発明の樹脂成形品の製造方法によれば、樹脂成形品の歩留まりを向上させることができることが確認された。