特許第5797164号(P5797164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797164
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】燃料電池用セパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   H01M8/02 B
【請求項の数】2
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-157411(P2012-157411)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-22096(P2014-22096A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2014年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】権田 貴司
(72)【発明者】
【氏名】米山 勝
(72)【発明者】
【氏名】細野 則義
(72)【発明者】
【氏名】岡田 晃
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−0886525(KR,B1)
【文献】 国際公開第2006/072923(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0233149(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0058249(US,A1)
【文献】 特開2005−268042(JP,A)
【文献】 特開2003−173789(JP,A)
【文献】 特開2011−119124(JP,A)
【文献】 特開2011−253704(JP,A)
【文献】 特開2008−078023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極接合体に重なる厚さ1mm以下の薄板形の燃料電池用セパレータを、金型で導電性樹脂組成物を成形することにより製造する燃料電池用セパレータの製造方法であって、
金型を、対向する下型と上型とから構成し、これら下型と上型とのキャビティ面に燃料電池用セパレータの流通溝用の模様を形成し、上型のキャビティ面に、燃料電池用セパレータの流通口用の複数の打ち抜きピンを配設し、
導電性樹脂組成物を、熱可塑性樹脂と平均粒子径が1μm以上500μm以下の人造黒鉛とを溶融混練して粉砕することにより調製し、熱可塑性樹脂と人造黒鉛の組成体積比率を50/50〜15/85(体積%)とし、
金型に離型剤を塗布してその下型に導電性樹脂組成物を充填し、この導電性樹脂組成物上に、0.1〜0.6mmの厚さを有する炭素繊維製のクロスからなる補強材を投入し、金型の下型に、補強材を覆う導電性樹脂組成物を新たに充填し、その後、金型の下型に上型を型締めしてその複数の打ち抜きピンを補強材の連通孔に貫通させるとともに、導電性樹脂組成物を溶融加圧して導電性樹脂組成物と補強材とを密着させることにより、補強材を内蔵した燃料電池用セパレータを圧縮成形し、燃料電池用セパレータの周縁部付近に流体用の複数の流通口をそれぞれ穿孔し、燃料電池用セパレータの両面には、流体用の流通溝をそれぞれ複数凹み形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
【請求項2】
燃料電池用セパレータの両面の複数の流通溝を対向させる請求項1記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電効率に優れる低公害の燃料電池に使用される燃料電池用セパレータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池用セパレータは、図示しないが、所定の導電性樹脂組成物により厚い板に成形され、電極接合体に積層接着されるとともに、二枚一組で電極接合体を挟持してセルを構成する。
【0003】
燃料電池用セパレータの所定の導電性樹脂組成物は、強度と導電性とを両立させるため、所定の樹脂と導電材料とにより調製され、導電材料として黒鉛等が使用される。燃料電池用セパレータの表裏両面には、流体用の流通溝がそれぞれ配列形成され、この複数の流通溝が燃料ガスや冷却水を流通させる(特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012‐025164号公報
【特許文献2】特開2011‐253704号公報
【特許文献3】特開2008‐041337号公報
【特許文献4】特開2003‐331873号公報
【特許文献5】特開2002‐358973号公報
【特許文献6】特開2002‐124276号公報
【特許文献7】特開2004‐273449号公報
【特許文献8】特開2008‐91097号公報
【特許文献9】特開2006‐164659号公報
【特許文献10】特開2001‐338673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の燃料電池用セパレータには、燃料電池の小型化を実現するため、薄肉高強度化が求められている。特に、近年の自動車には、薄肉高強度の燃料電池用セパレータが強く要望されている。しかしながら、従来の燃料電池用セパレータは、所定の導電性樹脂組成物が樹脂と導電材料とにより単に調製されているので、厚肉高強度化に対応することができるものの、薄肉高強度化に対応することが困難であるという問題がある。すなわち、従来においては、燃料電池用セパレータの導電性を維持しつつ薄型化を図ろうとすると、強度が不足し、燃料電池用セパレータの破損や損傷を招くおそれがある。
【0006】
係る問題を解消するため、(1)燃料電池用セパレータに金属板を内蔵する方法、(2)燃料電池用セパレータを連続した断面略波形に形成する方法が提案されている。しかし、(1)の方法の場合には、燃料電池用セパレータの薄肉化に限界があり、燃料電池用セパレータと金属板との一体化が十分でないことがある。また、金属成分の溶出や重量増加等の問題も発生する。また、(2)の方法の場合には、燃料電池用セパレータの薄肉高強度化が期待できるものの、流通溝の本数の減少を招く等、設計の自由度が大きく制約されてしまうという問題が新たに生じることとなる。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、燃料電池用セパレータの薄肉高強度化を実現することができ、金属成分の溶出や重量増加等を防ぎ、しかも、流通溝等の設計の自由度を向上させることのできる燃料電池用セパレータの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、電極接合体に重なる厚さ1mm以下の薄板形の燃料電池用セパレータを、金型で導電性樹脂組成物を成形することにより製造する燃料電池用セパレータの製造方法であって、
金型を、対向する下型と上型とから構成し、これら下型と上型とのキャビティ面に燃料電池用セパレータの流通溝用の模様を形成し、上型のキャビティ面に、燃料電池用セパレータの流通口用の複数の打ち抜きピンを配設し、
導電性樹脂組成物を、熱可塑性樹脂と平均粒子径が1μm以上500μm以下の人造黒鉛とを溶融混練して粉砕することにより調製し、熱可塑性樹脂と人造黒鉛の組成体積比率を50/50〜15/85(体積%)とし、
金型に離型剤を塗布してその下型に導電性樹脂組成物を充填し、この導電性樹脂組成物上に、0.1〜0.6mmの厚さを有する炭素繊維製のクロスからなる補強材を投入し、金型の下型に、補強材を覆う導電性樹脂組成物を新たに充填し、その後、金型の下型に上型を型締めしてその複数の打ち抜きピンを補強材の連通孔に貫通させるとともに、導電性樹脂組成物を溶融加圧して導電性樹脂組成物と補強材とを密着させることにより、補強材を内蔵した燃料電池用セパレータを圧縮成形し、燃料電池用セパレータの周縁部付近に流体用の複数の流通口をそれぞれ穿孔し、燃料電池用セパレータの両面には、流体用の流通溝をそれぞれ複数凹み形成することを特徴としている。
【0009】
なお、燃料電池用セパレータの両面の複数の流通溝を対向させることができる。
【0011】
また、熱可塑性樹脂をポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニルサルフォン樹脂、又はポリフェニルサルホン樹脂とすることができる。
【0012】
ここで、特許請求の範囲の導電性樹脂組成物には、必要に応じ、成形性、耐熱性、難燃性等を向上させる各種のフィラーを添加することができる。補強材は、薄板である燃料電池用セパレータに単数複数内蔵することができる。
【0013】
本発明によれば、燃料電池用セパレータに薄く軽い補強材を内蔵してその材質を炭素繊維製クロスとするので、燃料電池用セパレータの導電性を維持しつつ薄型化を図ることができ、しかも、強度不足に伴い、燃料電池用セパレータが破損したり、損傷するおそれを有効に抑制することができる。また、金属成分が溶出したり、燃料電池用セパレータの重量が増加等するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃料電池用セパレータの薄肉高強度化を実現することができ、金属成分の溶出や重量増加等の問題を有効に解消することができるという効果がある。また、流通溝等の設計の自由度を向上させることができる。また、熱可塑性樹脂と人造黒鉛の組成体積比率が50/50〜15/85(体積%)の範囲なので、燃料電池用セパレータとして必要な導電性を得ることができ、しかも、導電性樹脂組成物の溶融流動性が低下し、加工性の低下あるいは機械的強度の低下を招くことがなく、導電性樹脂組成物が補強材から剥離しやすくなることもない。また、安価な人造黒鉛を用いるので、加工性や機械的性質に優れ、化学的に安定させることができるし、不純物や溶出性が少なく、高い純度で優れた導電性を得ることもできる。
また、人造黒鉛の平均粒子径を1〜500μm以下とするので、作業時に炭素系導電材料が舞い上がって作業環境の汚染を招いたり、二次凝集が生じて熱可塑性樹脂との均一分散性が低下し、燃料電池用セパレータの導電性が低下するおそれがない。また、導電性樹脂組成物間の隙間が拡大して高充填が困難になり、熱可塑性樹脂との接触面積が低下して機械的特性が低下するおそれを排除し、しかも、熱可塑性樹脂と人造黒鉛との混合性が低下し、均一な成形体を得ることが困難になるおそれを排除することもできる。また、補強材を炭素繊維製のクロスとするので、繊維の含有量を多くし、導電性樹脂組成物との密着度を高め、強度の大幅な向上が期待できる。
また、導電性樹脂組成物ではなく、金型に離型剤を塗布するので、成形時の高熱で離型剤が機能しなくなるおそれを排除することが可能になる。また、上型の複数の打ち抜きピンを補強材の連通孔に貫通させるので、燃料電池用セパレータに複数の流通口を確実に穿孔することが可能になる。また、導電性樹脂組成物の配向が少ない圧縮成形法により薄い燃料電池用セパレータを製造するので、少ない設備投資で燃料電池用セパレータの強度を安価に向上させることが可能になる。さらに、圧縮成形時に燃料電池用セパレータに成形圧力が直接作用するので、燃料電池用セパレータの内部応力を減少させ、変形を防止することが可能となる。
【0015】
また、請求項2記載の発明によれば、燃料電池用セパレータを連続した断面略波形に成形する必要がないので、設計の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の実施形態の燃料電池用セパレータを模式的に示す斜視説明図である。
図2】本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の実施形態の燃料電池用セパレータを模式的に示す断面説明図である。
図3】本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態の燃料電池用セパレータの製造方法は、図1ないし図3に示すように、MEA(Membrane Electrode Assembly)と呼ばれる電極接合体に積層される薄い燃料電池用セパレータ1を導電性樹脂組成物4により成形する製造方法であり、燃料電池用セパレータ1の内部中央に薄い補強材5をインサートしてその材質を炭素繊維とし、この補強材5により、燃料電池用セパレータ1を補強してその強度を向上させるようにしている。
【0018】
燃料電池用セパレータ1は、図1図2に示すように、例えば金型10を使用して1mm以下の厚みを有する平面矩形の薄板に成形され、二枚一組で電極接合体を挟持してセルを構成する。この燃料電池用セパレータ1の周縁部付近には複数の取付孔や流通口2がそれぞれ穿孔され、複数の流通口2が空気や燃料ガスを流通させるよう機能する。
【0019】
燃料電池用セパレータ1の表裏両面の周縁部以外の箇所には、流体用の流通溝3・3Aがそれぞれサーペンタイン形に複数凹み形成され、この複数の流通溝3・3Aが燃料ガスや冷却水を流通させる。燃料電池用セパレータ1の表裏両面の複数の流通溝3・3Aは、少なくともその大部分が対向して表面の流通溝3の凹部と裏面の流通溝3Aの凹部とを向き合わせ、各流通溝3・3Aが断面略U字形状に区画形成される。
【0020】
導電性樹脂組成物4は、所定の樹脂と炭素系導電材料とにより調製され、これら樹脂と炭素系導電材料の組成体積比率が50/50〜15/85(体積%)とされる。所定の樹脂は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のいずれでも良いが、熱可塑性樹脂が好ましい。これは、熱硬化性樹脂の場合には、硬化に長時間を要し、生産性の向上を図ることができないからである。また、未硬化成分や反応生成物が燃料電池用セパレータ1中に残留しやすく、燃料電池の作動中に残留物が溶出して燃料電池の耐久性の低下を招くからである。また、熱硬化性樹脂は、硬化収縮が生じるので、金型10の設計が煩雑化するからである。さらに、熱可塑性樹脂はリサイクルが可能であるものの、熱硬化性樹脂は硬化後のリサイクルが不可能なので、製品コストが上昇し、しかも、廃棄物の量が増大するという理由に基づく。
【0021】
具体的な熱可塑性樹脂としては、例えばオレフィン系樹脂〔低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、超低密度ポリエチレン(VLDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、超高分子量ポリエチレン(UHMW‐PE)樹脂、ホモポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂あるいはランダムポリプロピレン樹脂等のポリプロピレン(PP)樹脂、ポリメチルペンテン(PMP)樹脂、あるいは環状オレフィン樹脂等〕、ポリスチレン(PS)樹脂〔アタクチックポリスチレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂等〕、ポリエステル系樹脂〔ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリトリメチレンナフタレート(PTT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂、あるいはポリ乳酸(PLA)樹脂等〕、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド系樹脂〔ポリアミド6樹脂、ポリアミド11樹脂、ポリアミド12樹脂、ポリアミド46樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアミド610樹脂、ポリアミド4T樹脂、ポリアミド6T樹脂、ポリアミド9T樹脂、ポリアミド10T樹脂等〕、ポリアリーレン(PAR)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素系樹脂〔テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、あるいはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂等〕、ポリサルホン系樹脂〔ポリサルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリフェニルサルホン(PPSU)樹脂等〕、ポリアリーレンスルフィド系樹脂〔ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリフェニレンスルフィドスルホン樹脂、あるいはポリフェニレンスルフィドケトン樹脂〕、液晶ポリマー、あるいはポリアリーレンケトン系樹脂〔ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)樹脂等〕、ポリイミド系樹脂〔ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂等〕があげられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0022】
これらの熱可塑性樹脂の中では、燃料電池用セパレータ1の機械的性質、化学的安定性(耐加水分解性、耐溶剤性)、入手のし易さ、コストの観点から、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、又はポリフェニルサルホン(PPSU)樹脂が好適に用いられる。また、熱可塑性樹脂は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用することもでき、粉体状、顆粒状、塊状、粒状、ペレット状等の形状を特に問うものではない。
【0023】
導電性樹脂組成物4は、金属系導電材料の場合には、燃料電池として使用中に腐食するおそれがあるので、炭素系導電材料が好ましい。この炭素系導電材料としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレン、アモルファスカーボン、炭素繊維、黒鉛等があげられる。カーボンブラックには、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が該当する。
【0024】
カーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブや多層カーボンナノチューブ等を用いることができる。また、炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、フェノール系炭素繊維、あるいはレーヨン系炭素繊維を用いることができる。また、黒鉛には、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛や土状黒鉛等からなる天然黒鉛、鱗片状黒鉛を濃硫酸等で化学処理した後に加熱して得られる膨張黒鉛、膨張黒鉛を高温で加熱処理して得られる膨張化黒鉛、人造黒鉛等が該当する。
【0025】
これらの炭素系導電材料の中では、加工性や機械的性質に優れ、化学的に安定で安価な黒鉛が最も好ましい。この黒鉛の中では、不純物や溶出性が少なく、高い純度で優れた導電性が得られる人造黒鉛が最適である。また、炭素系導電材料は、粉体状、顆粒状、塊状、繊維状を特に問わないが、機械的性質の異方性が少なく、加工性に優れる粉体状が最適である。また、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用することも可能である。
【0026】
炭素系導電材料の平均粒子径は、1〜500μm以下、好ましくは5〜300μm以下、より好ましくは10〜200μm以下の範囲が良い。これは、平均粒子径が1μm未満の場合には、作業時に炭素系導電材料が舞い上がって作業環境の汚染を招いたり、二次凝集が生じて熱可塑性樹脂との均一分散性が低下し、燃料電池用セパレータ1の導電性が低下するからである。また、導電性樹脂組成物4の溶融流動性が低下するので、薄肉の燃料電池用セパレータ1の成形が困難になるからである。
【0027】
これに対し、炭素系導電材料の平均粒子径が500μmを超える場合には、導電性樹脂組成物4間の隙間が拡大して高充填が困難になり、熱可塑性樹脂との接触面積が低下して機械的特性が低下するという理由に基づく。また、熱可塑性樹脂と炭素系導電材料との混合性が低下し、均一な成形体を得ることが困難になるという理由に基づく。
【0028】
炭素系導電材料は、粒子径の異なる2種以上を併用することができ、併用する場合には、高充填化が可能になるので、高導電性の燃料電池用セパレータ1を得ることが可能となる。炭素系導電材料として黒鉛粒子が選択される場合、この黒鉛粒子の平均粒径は、5〜500μm以下、好ましくは10〜300μm以下、より好ましくは3〜200μm以下が好適である。
【0029】
これは、黒鉛粒子の平均粒径が5μm未満の場合には、作業中に黒鉛粒子が舞い上がって作業環境が悪化したり、二次凝集が生じて所定の樹脂との均一分散性が低下し、燃料電池用セパレータ1の導電性が低下するという理由に基づく。また、導電性樹脂組成物4の溶融流動性が低下するので、薄い燃料電池用セパレータ1を成形することが困難になるからである。
【0030】
黒鉛粒子は、例えばシランカップリング剤〔3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等〕、チタネート系カップリング剤〔イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリ(N‐アミトエチル・アミノエチル)チタネート等〕、アルミネート系カップリング剤〔アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等〕等の各種カップリング剤、界面活性剤〔陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤等〕、スチレン、アクリル等の有機化合物で処理することができる。
【0031】
熱可塑性樹脂と炭素系導電材料の組成体積比率は、50/50〜15/85(体積%)の範囲が好ましい。これは、係る範囲から外れると、燃料電池用セパレータ1として必要な導電性が得られないという理由に基づく。また、85体積%を越える場合には、導電性樹脂組成物4の溶融流動性が低下し、加工性の低下あるいは機械的強度の低下を招くという理由に基づく。さらに、導電性樹脂組成物4と補強材5との接着が不足し、導電性樹脂組成物4が補強材5から剥離しやすくなるからである。
【0032】
導電性樹脂組成物4には、所定の樹脂、黒鉛粒子等の炭素系導電材料の他、所定の添加剤を選択的に添加することができる。この所定の添加剤としては、例えば酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、無機充填剤、有機充填剤等があげられる。
【0033】
導電性樹脂組成物4の熱可塑性樹脂と炭素系導電材料とは、例えば(1)粉末の熱可塑性樹脂と炭素系導電材料とを熱可塑性樹脂の溶融開始温度未満の温度で分散混合する方法、(2)熱可塑性樹脂と炭素系導電材料とを熱可塑性樹脂の溶融開始温度以上の温度で溶融混練して溶融混練後に粉砕する方法、(3)熱可塑性樹脂と炭素系導電材料とを熱可塑性樹脂の溶融混練温度以上の温度で溶融混練してマスターバッチを調製し、このマスターバッチを粉砕して炭素系導電材料を混合したり、混練する方法等により調製される。
【0034】
これらの方法は、特に限定されるものではなく、いずれをも採用することができる。但し、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂が採用される場合には、ポリプロピレン樹脂単独では粉砕が困難なので、(2)、(3)の方法が好ましい。
【0035】
(1)〜(3)の方法の溶融開始温度は、所定の樹脂の種類により相違する。すなわち、溶融開始温度は、所定の樹脂が熱可塑性樹脂の場合、ポリプロピレン樹脂あるいはポリフェニレンスルファイド樹脂等の結晶性熱可塑性樹脂と、ポリフェニルサルホン樹脂等の非晶性熱可塑性樹脂とでは異なる。溶融開始温度は、結晶性熱可塑性樹脂の場合には融点、非晶性熱可塑性樹脂の場合にはガラス転移点温度を指す。
【0036】
熱可塑性樹脂と炭素系導電材料とは、(1)の方法で調製される場合、ナウターミキサー、タンブラーミキサー、ヘンシルミキサー、リボンブレンダー、V型混合機等からなる攪拌機やボールミルにより混合調製される。熱可塑性樹脂や炭素系導電材料はいかなる形状でも良いが、最適な形状は燃料電池用セパレータ1の成形法により異なる。例えば、成形法として圧縮成形法が採用される場合には、機械的性質や電気的性質の異方性を抑制することができ、燃料電池用セパレータ1内での機械的性質や電気的性質の局部的なバラツキを小さくでき、しかも、加工性に優れる粉体状が良い。
【0037】
熱可塑性樹脂と炭素系導電材料とは、(2)の方法で調製される場合、加圧ニーダー、フラッシングニーダー、ケーエックスニーダー等からなる各種ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、四軸押出機等からなる各種の押出機、バンバリーミキサーやプラネタリーミキサー等の溶融混練機により溶融混練される。但し、必要に応じ、熱可塑性樹脂と炭素系導電材料とを加熱混練する前に、分散性を向上させる観点から、熱可塑性樹脂の溶融開始温度未満の温度でナウターミキサー、タンブラーミキサー、ヘンシルミキサー、リボンブレンダー、V型混合機等の攪拌機、ボールミル等を使用して攪拌混合しても良い。
【0038】
熱可塑性樹脂と炭素系導電材料との加熱混練温度は、結晶性熱可塑性樹脂の場合には、溶融開始温度〜熱分解温度未満、好ましくは溶融開始温度+30℃〜熱分解温度未満である。これに対し、非晶性熱可塑性樹脂の場合には、溶融開始温度〜熱分解温度未満、好ましくは溶融開始温度+50℃〜熱分解温度未満、より好ましくは溶融開始温度+100℃〜熱分解温度未満が良い。
【0039】
熱可塑性樹脂と炭素系導電材料とは、加熱混練して調製されると、粉砕して粉体化された導電性樹脂組成物4となる。粉砕は、必要に応じ、1段階、2段階、複数段階で実施することが可能である。粉砕する方法としては、例えばせん断粉砕法、衝撃粉砕法、衝突粉砕法、冷凍粉砕法、溶液粉砕法等があげられる。これらの中では、工程の簡素化とコスト削減の観点から、せん断粉砕法と衝撃粉砕法が最適である。
【0040】
粉砕の温度は、熱可塑性樹脂の種類により異なるが、通常は溶融開始温度未満の温度、好ましくは溶融開始温度−70℃以下、好ましくは溶融開始温度−100℃以下が最適である。これは、粉砕の温度が溶融開始温度以上であると、導電性樹脂組成物4が軟化して粉砕不可能になるからである。具体的な粉砕に際しては、ハンマーミル、カッターミル、フェザーミル、フレーククラッシャー、ピンミル、インパクトミル、ビクトリミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機、解砕機、裁断機等を用いることができる。
【0041】
粉砕された導電性樹脂組成物4は、篩網、振動網、振動スクリーン、超音波篩、ミクロンセパレータ、ターボクラシフィア等の分級機で選択的に分級される。導電性樹脂組成物4はいかなる形状でも良いが、最適な形状は燃料電池用セパレータ1の成形法により異なる。例えば、成形法が圧縮成形法の場合には、(1)の場合と同様、粉体状が良い。
【0042】
熱可塑性樹脂と炭素系導電材料とが(3)の方法で調製される場合、炭素系導電材料の添加量は、導電性樹脂組成物4中の炭素系導電材料の添加量×0.5以上、かつ導電性樹脂組成物4中の炭素系導電材料の添加量×1.0未満が良い。熱可塑性樹脂と炭素導電性樹脂組成物とは、均一分散性に優れる導電性樹脂組成物4を調製する観点から、溶融混練前に熱可塑性樹脂の溶融開始温度未満の温度でナウターミキサー、タンブラーミキサー、ヘンシルミキサー、リボンブレンダー、V型混合機等からなる攪拌機やボールミルにより混合されることが好ましい。熱可塑性樹脂と炭素系導電材料との加熱混練温度については、(2)の方法と同様である。
【0043】
マスターバッチは、加圧ニーダー、フラッシングニーダー、ケーエックスニーダー等からなる各種ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、三軸押出機、四軸押出機等からなる各種の押出機、バンバリーミキサーやプラネタリーミキサー等の溶融混練機により溶融混練され、粉砕された後に調製される。
【0044】
粉砕には、カッターミル、ハンマーミル、スパイラルミル、ピンミル、ボールミル、インパクトミル、ビクトリミル、ジェットミル等からなる粉砕機や裁断機が使用される。また、粉砕された後、篩網、振動網、振動スクリーン、超音波篩、ミクロンセパレータ、ターボクラシフィア等の分級機で選択的に分級される。マスターバッチに炭素系導電材料をさらに添加して熱可塑性樹脂の溶融開始温度未満の温度で混合する場合には、ナウターミキサー、タンブラーミキサー、ヘンシルミキサー、リボンブレンダー、V型混合機等からなる攪拌機やボールミルが使用される。調製される導電性樹脂組成物4の形状については、(1)、(2)の場合と同様である。
【0045】
燃料電池用セパレータ1は各種の成形法により製造されるが、具体的な成形方法としては、圧縮成形法、射出成形法、トランスファー成形法、射出圧縮成形法等があげられる。但し、機械的性質と電気的性質の異方性が少なく、寸法精度の向上が期待できる圧縮成形法が最適である。この成形法によれば、熱可塑性樹脂を増加させ、導電性樹脂組成物4を削減しつつ良好な導電性を得ることが可能になる。
【0046】
補強材5は、図2図3に示すように、軽量の薄い炭素繊維製クロス等からなり、燃料電池用セパレータ1の圧縮成形時に金型10の下型11にインサートされることにより、燃料電池用セパレータ1の表裏両面の複数の流通溝3・3A間に介在される。この補強材5は、燃料電池用セパレータ1の周面から食み出て剥離の契機にならないよう、燃料電池用セパレータ1よりも小さく形成され、燃料電池用セパレータ1の複数の流通口2に対応する連通孔6が燃料電池用セパレータ1の圧縮成形前あるいは圧縮成形時に穿孔される。
【0047】
補強材5の材質としては、軽量で薄い炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、ケブラー繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアリレート繊維PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維等の無機繊維あるいは有機繊維、不織布があげられる。これらの中では、燃料電池用セパレータ1の導電性を低下させることなく、剛性や強度の向上が期待できる炭素繊維が好適である。
【0048】
補強材5は、炭素繊維と他の繊維を混合して使用することもできる。炭素繊維の形態は、クロス、フェルト・マット、あるいは不織布等をあげることができるが、繊維の含有量を多くし、導電性樹脂組成物4との密着度を高め、強度を大幅に向上させる観点からクロスが好適である。
【0049】
クロスは、経糸と緯糸からなる織物であり、厚さが0.1mm以上、0.6mm以下、重量が50g/m以上、500g/m以下のタイプが好適である。このクロスの織り方は、平織り、綾織り、朱子織り等があるが、特に制約されるものではない。炭素繊維製クロスの編み方には、綾織や朱子織等の種類があるが、目崩れしにくい丈夫な平織が好ましい。
【0050】
具体的な炭素繊維のクロスとしては、特に限定されないが、例えばトレカクロス(東レ社製:商品名)、パイロフィル織物(クロス)(三菱レイヨン社製:商品名)、テナックス織物(東邦テナックス社製:商品名)、ダイヤリード(三菱樹脂社製:商品名)等をあげることができる。
【0051】
上記において、燃料電池用セパレータ1を製造する場合には、先ず、熱可塑性樹脂と炭素系導電材料の組成体積比率が50/50〜15/85(体積%)の導電性樹脂組成物4を用意する。導電性樹脂組成物4の離型性が悪い場合、離型剤の活用が好ましいが、導電性樹脂組成物4に離型剤を単に添加すると、成形時の高熱で離型剤が機能しなくなるおそれがある。そこで、金型10に予め離型剤を均一に塗布しておくことが好ましい。
【0052】
導電性樹脂組成物4を用意したら、導電性樹脂組成物4を金型10の下型11に直接充填して導電性樹脂組成物4の表面を整え、この導電性樹脂組成物4上に炭素繊維クロス製の補強材5を投入して水平にセットし、金型10の下型11に、補強材5を覆う導電性樹脂組成物4を新たに直接充填してその表面を整える。
【0053】
金型10は、例えば相対向する下型11と上型12とを備え、これら下型11と上型12とのキャビティ面には流通溝3・3A用の模様等がそれぞれ形成されており、上型12のキャビティ面には、補強材5の連通孔6を貫通する流通口2用の複数の打ち抜きピン13が配設される。金型10は、導電性樹脂組成物4の溶融開始温度未満の温度、好ましくは常温に予め加熱しておくことが好ましい。
【0054】
金型10の下型11に新たな導電性樹脂組成物4を充填したら、金型10の下型11に上型12を型締めして所定の温度に加熱し、導電性樹脂組成物4を溶融加圧することにより、補強材5を内蔵した燃料電池用セパレータ1を圧縮成形する。この金型10の加熱加圧に際しては、圧縮成形機の所定温度まで加熱した一対の熱板間にセットするのが好ましい。金型10の加圧圧力は、300kg/cm以上が必要となる。
【0055】
金型10の温度は、樹脂の結晶性と非晶性とを問わず、溶融開始温度以上熱分解温度未満、好ましくは溶融開始温度+50℃〜熱分解温度未満、より好ましくは溶融開始温度+70℃〜熱分解温度未満が良い。また、金型10の加熱加圧時間は、補強材5の炭素繊維クロス間に所定の熱可塑性樹脂が流入するのに要する時間であれば良い。具体的には、10〜80秒で十分である。
【0056】
金型10が加熱加圧されると、導電性樹脂組成物4の熱可塑性樹脂の溶融開始温度以上の温度域で熱可塑性樹脂が流動を開始し、補強材5である炭素繊維クロスの経糸と緯糸の間に熱可塑性樹脂が流入する。したがって、導電性樹脂組成物4の熱可塑性樹脂と補強材5とが密着し、優れた機械的強度が期待できる。また、炭素系導電材料の周辺に熱可塑性樹脂が過度に密着することが少ないので、良好な導電性が期待できる。
【0057】
燃料電池用セパレータ1を圧縮成形したら、金型10を加圧冷却して燃料電池用セパレータ1を脱型することにより、燃料電池用セパレータ1を得ることができる。金型10を加圧冷却する方法としては、(1)金型10を取り出して冷却された別の圧縮成形機の一対の熱板間にセットする方法、(2)金型10を圧縮成形機の一対の熱板間にセットしたままで加圧冷却する方法があげられる。
【0058】
金型10は、導電性樹脂組成物4の熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合には、溶融開始温度以下、好ましくは結晶化温度以下、より好ましくはガラス転移点以下まで冷却される。これに対し、非晶性樹脂の場合には、溶融開始温度以下、好ましくは溶融開始温度−100℃以下、より好ましくは溶融開始温度−150℃以下まで冷却される。これは、係る温度範囲まで金型10を冷却すれば、燃料電池用セパレータ1の導電性が向上したり、反りや曲がりの低減に資するからである。
【0059】
但し、冷却温度の低下で生産性が悪化するので、導電性を満足する範囲の高温で燃料電池用セパレータ1を脱型すると良い。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合には、ガラス転移点−30℃以上〜結晶化温度以下、非晶性樹脂の場合には、溶融開始温度−30℃以上〜溶融開始温度未満でアリーニングし、燃料電池用セパレータ1の反りや曲がりを矯正しても良い。
【0060】
アリーニングは、燃料電池用セパレータ1を積層して0.05kg/cmの錘を載せ、実施することが好ましい。また、製造した燃料電池用セパレータ1には、コロナ処理、紫外線処理、プラズマ処理、火炎処理やブラスト処理等の表面処理を施して親水性を向上させることができる。
【0061】
上記によれば、燃料電池用セパレータ1に補強材5を内蔵してその材質を軽量の炭素繊維とするので、燃料電池用セパレータ1の導電性を維持しつつ薄型化を図ることができ、しかも、強度不足に伴う燃料電池用セパレータ1の破損や損傷のおそれを有効に排除することができる。また、燃料電池用セパレータ1に厚い金属板ではなく、薄い炭素繊維製クロスあるいは炭素繊維製不織布を内蔵するので、燃料電池用セパレータ1の薄肉化や軽量化に支障を来すことがなく、金属成分の溶出や重量増加等の問題も防止することができる。
【0062】
また、補強材5を炭素繊維製クロスとすれば、その多数の編目に導電性樹脂組成物4が成形時に滲入するので、燃料電池用セパレータ1と補強材5とを強固に密着して一体化し、寸法安定性や剛性を著しく向上させることが可能となる。さらに、補強材5により薄肉高強度化が期待できるので、燃料電池用セパレータ1の流通溝3・3Aを千鳥形に配列するのではなく、これらを対向させることが可能となる。したがって、燃料電池用セパレータ1を連続した断面略波形に形成してその流通溝を減少させる必要が全くなく、設計の自由度の著しい向上が期待できる。
【0063】
なお、上記実施形態では金型10を単に加熱加圧したり、加圧冷却したが、これらの作業の際にエネルギーコスト対策の観点から電気ヒーター等の加熱機構や冷却水路等の冷却機構を使用しても良い。また、蒸気を使用して加熱する場合には、常温で高温を得ることのできる過熱蒸気を使用すると良い。また、上記実施形態では圧縮成形前に補強材5に連通孔6を予め穿孔したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、燃料電池用セパレータ1に複数の流通口2を確実に穿孔できるのであれば、補強材5の連通孔6を省略することもできる。
【実施例】
【0064】
次に、本発明の実施例を比較例と共に説明する。
・実施例1
先ず、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂[プライムポリマー社製:商品名 プライムポリプロ E200GV]31.0体積%、炭素系導電材料として人造黒鉛[オリエンタル産業社製:商品名 人造黒鉛粉 AT−No.5S、平均粒子径:53.3μm]69.0体積%を樹脂製容器に投入し、かつ樹脂製容器にφ10mmのジルコニアボールを併せて投入し、樹脂容器に蓋を取り付けてタンブラーミキサーに装着するとともに、このタンブラーミキサーを23℃、1時間の条件で回転させてポリプロピレン樹脂、人造黒鉛、ジルコニアボールを分散混合させ、その後、ジルコニアボールを取り出して分散混合物を調製した。
【0065】
ポリプロピレン樹脂の融点を示差走査熱量測定したところ、ポリプロピレン樹脂の融点は172℃であった。ポリプロピレン樹脂は、結晶性樹脂であるため、融点を溶融開始温度とした。示差走査熱量測定による溶融開始温度は、熱可塑性樹脂の試料10mgを精量し、示差走査熱量計にて10℃/分の昇温速度で昇温し、このときに得られる示差走査熱量曲線から求めた。
【0066】
ここで、融点は示差走査熱量曲線において最大吸熱ピークを示す温度とし、ガラス転移点は示差走査熱量曲線のベースラインと変曲点の接線の交点とした。示差走査熱量計は、セイコー電子工業社製〔商品名 PSC220〕を使用した。また、人造黒鉛粉の平均粒径については、レーザー回折散乱法又はマイクロトラック法により測定した。
【0067】
次いで、分散混合物を200℃に加熱した加圧ニーダーに投入して10分間溶融混練し、加圧ニーダーから溶融混練物を取り出して50℃以下に冷却し、この溶融混練物をφ4mmのパンチングメタルを備えたカッターミルに投入して粉砕した。こうして溶融混練物を粉砕したら、この粉砕した溶融混練物をφ0.3mmのパンチングメタルを取り付けたピンミルに再度投入して粉砕し、導電性樹脂組成物を調製した。この導電性樹脂組成物の平均粒径をレーザー回折散乱法又はマイクロトラック法により測定したところ、85.5μmであった。
【0068】
次いで、金型(金型内サイズ:150mm×150mm)内に導電性樹脂組成物を均一に充填し、この導電性樹脂組成物上に148mm×148mmに裁断した補強材である炭素繊維クロス〔三菱レイヨン社製:商品名 パイロフィル、品番 TR3110M、重さ 200g/m(カタログ値)、厚さ 0.23mm(カタログ値)〕を配置するとともに、この炭素繊維クロス上に導電性樹脂組成物を新たに充填し、圧縮成形機の上下一対の熱板により、金型の側面温度が200℃に達するまで加熱加圧して燃料電池用セパレータを圧縮成形した。圧縮成形機の熱板の温度は250℃に調整し、成形圧力は燃料電池用セパレータの面積に対して600kg/cmとした。
【0069】
金型の側面温度が200℃に達したら、そのままの状態で15秒間加熱加圧し、その後、上下一対の熱板に冷却水を流入し、金型の側面温度が50℃以下になるまで加圧冷却し、金型から150mm×150mm、厚さ:1mmの外形を有する燃料電池用セパレータを脱型した。こうして燃料電池用セパレータを製造したら、この燃料電池用セパレータの特性、すなわち機械的強度と導電性とをそれぞれ評価し、表1にまとめた。
【0070】
燃料電池用セパレータの機械的強度についは曲げ強度[MPa]、導電性については体積抵抗値〔mΩ・cm〕によりそれぞれ評価した。曲げ強度はJIS7171に準拠し、燃料電池用セパレータの平坦部から切り出した評価用試験片により評価した。また、体積抵抗値は、燃料電池用セパレータの平坦部から切り出した評価用試験片を用いて四端子四探針法により測定した。測定器として、低抵抗率計〔三菱化学社製:商品名 ロレスタ GP MCP−T610〕を用いた。
【0071】
・実施例2
先ず、樹脂製の容器に、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂〔日本ポリプロピレン社製:商品名 ノバティック MA3U〕33.1体積%、炭素系導電材料として人造黒鉛〔オリエンタル産業社製:商品名 人造黒鉛粉 AT−No.5S、平均粒子径:53.3μm〕66.9体積%、攪拌媒体としてφ10mmのジルコニアボールをそれぞれ投入して蓋を取り付けた。
【0072】
こうして蓋を取り付けたら、容器をタンブラーミキサーに装着して26℃、1時間の条件で回転させ、これらポリプロピレン樹脂、人造黒鉛、ジルコニアボールを分散混合させ、ジルコニアボールを取り出してポリプロピレン樹脂と人造黒鉛の分散混合物を調製した。ポリプロピレン樹脂の融点を示差走査熱量測定したところ、ポリプロピレン樹脂の融点は169℃であった。ポリプロピレン樹脂は、結晶性樹脂であるため、融点を溶融開始温度とした。
【0073】
次いで、分散混合物を200℃に加熱した加圧ニーダーに投入して10分間溶融混練し、加圧ニーダーから溶融混練物を取り出して50℃以下に冷却し、この溶融混練物をφ4mmのパンチングメタルを備えたカッターミルに投入して粉砕した。こうして溶融混練物を粉砕したら、この粉砕した溶融混練物をφ0.5mmのパンチングメタルを取り付けたピンミルに再度投入して粉砕した。この粉砕した溶融混練物の平均粒径を測定したところ、108.7μmであった。
【0074】
溶融混練物を粉砕したら、樹脂製の容器に、溶融混練物、人造黒鉛の体積比率が70.8体積%となるよう、人造黒鉛〔オリエンタル産業社製:商品名 人造黒鉛粉 AT−No.5S、平均粒子径:53.3μm〕、φ10mmのジルコニアボールをそれぞれ投入して蓋を取り付けた。蓋を取り付けたら、容器をタンブラーミキサーに装着して25℃、1時間の条件で回転させ、これら溶融混練物、人造黒鉛、ジルコニアボールを分散混合させた後、ジルコニアボールを取り出して導電性樹脂組成物を調製した。
【0075】
以下、実施例1と同様の方法により燃料電池用セパレータを製造したが、補強材である炭素繊維クロスとして、商品名:W−3161〔東邦テナックス社製、重さ 200g/m(カタログ値)、厚さ 0.25mm(カタログ値)〕を使用した。燃料電池用セパレータを製造したら、この燃料電池用セパレータの特性、すなわち機械的強度と導電性とを実施例1と同様の方法により評価し、表1にまとめた。
【0076】
・実施例3
先ず、熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイド樹脂〔東レ社製:商品名 トレリナE2180〕を冷凍粉砕法により粉砕した。粉砕したポリフェニルサルファイド樹脂の平均粒子径をレーザー回折散乱法又はマイクロトラック法により測定したところ、57.8μmであった。
【0077】
ポリフェニレンサルファイド樹脂を粉砕したら、このポリフェニレンサルファイド樹脂32.3体積%と、炭素系導電材料として人造黒鉛〔オリエント産業社製:商品名 人造黒鉛粉 AT−No.5S、平均粒径53.3μm〕67.7体積%とを樹脂容器に投入し、攪拌媒体としてφ10mmのジルコニアボールをそれぞれ投入して蓋を取り付けた。
【0078】
蓋を取り付けたら、容器をタンブラーミキサーに装着して26℃、1時間の条件で回転させ、これらポリフェニレンサルファイド樹脂、人造黒鉛、ジルコニアボールを分散混合させ、ジルコニアボールを取り出して導電性樹脂組成物を調製した。ポリフェニレンサルファイド樹脂の融点を示差走査熱量測定したところ、ポリフェニレンサルファイド樹脂の融点は280℃であった。ポリフェニレンサルファイド樹脂は、結晶性樹脂なので、融点を溶融開始温度とした。
【0079】
次いで、金型(金型内サイズ:150mm×150mm)内に導電性樹脂組成物を均一に充填し、この導電性樹脂組成物上に148mm×148mmに裁断した補強材である炭素繊維クロス〔三菱レイヨン社製:商品名 パイロフィル、品番 TRK101M、重さ 400g/m、厚さ 0.43mm〕を配置し、さらに炭素繊維クロス上に導電性樹脂組成物を新たに充填し、圧縮成形機の上下一対の熱板により、金型の側面温度が350℃に達するまで加熱加圧して燃料電池用セパレータを圧縮成形した。圧縮成形機の熱板の温度は380℃に調整し、成形圧力は燃料電池用セパレータの面積に対して600kg/cmとした。
【0080】
金型の側面温度が350℃に達したら、そのままの状態で30秒間加熱加圧し、その後、上下一対の熱板に冷却水を流入し、金型の側面温度が50℃以下になるまで加圧冷却し、金型から150mm×150mm、厚さ1mmの外形を有する燃料電池用セパレータを脱型した。燃料電池用セパレータを製造したら、この燃料電池用セパレータの機械的強度と導電性とを実施例1と同様の方法により評価し、表1にまとめた。
【0081】
・実施例4
先ず、樹脂製の容器に、実施例3で使用したポリフェニレンサルファイド樹脂21.7体積%と、炭素導電性樹脂組成物として鱗片状黒鉛〔中越黒鉛工業社製:商品名 HG−50A、平均粒径50μm(カタログ値)〕78.3体積%とを樹脂容器に投入し、攪拌媒体としてφ10mmのジルコニアボールをそれぞれ投入して蓋を取り付けた。こうして蓋を取り付けたら、容器をタンブラーミキサーに装着して26℃、1時間の条件で回転させ、これらポリフェニレンサルファイド樹脂、鱗片状黒鉛、ジルコニアボールを分散混合させ、ジルコニアボールを取り出して分散混合物を調製した。
【0082】
次いで、分散混合物を320℃に加熱した加圧ニーダーに投入して10分間溶融混練し、加圧ニーダーから溶融混練物を取り出して50℃以下に冷却し、この溶融混練物をφ4mmのパンチングメタルを備えたカッターミルに投入して粉砕した。溶融混練物を粉砕したら、この粉砕した溶融混練物をφ0.3mmのパンチングメタルを取り付けたピンミルに再度投入して粉砕し、導電性樹脂組成物を調製した。導電性樹脂組成物の平均粒径を測定したところ、65.5μmであった。粉砕した溶融混練物の平均粒径については、レーザー回折散乱法又はマイクロトラック法により測定した。
【0083】
以下、実施例3と同様に燃料電池用セパレータを製造し、燃料電池用セパレータの機械的強度と導電性とをそれぞれ評価して表1にまとめた。補強材である炭素繊維クロスは、実施例1で使用したパイロフィル〔三菱レイヨン社製:商品名、品番 TR3110M、重さ 200g/m(カタログ値)、厚さ 0.23mm(カタログ値)〕とした。その他の部分については、実施例1と同様とした。
【0084】
・実施例5
先ず、ポリフェニルサルホン樹脂〔BASF社製:商品名 ウルトラゾーンP3010〕を衝突粉砕法により粉砕した。粉砕したポリフェニルサルホン樹脂の平均粒子径をレーザー回折散乱法又はマイクロトラック法により測定したところ、62.7μmであった。ポリフェニレサルホン樹脂を粉砕したら、このポリフェニレサルホン樹脂30.7体積%と、炭素系導電材料として人造黒鉛〔オリエント産業社製:商品名 人造黒鉛粉 AT−No.5S、平均粒径53.3μm〕69.3体積%とを樹脂容器に投入し、攪拌媒体としてφ10mmのジルコニアボールをそれぞれ投入して蓋を取り付けた。
【0085】
蓋を取り付けたら、容器をタンブラーミキサーに装着して26℃、1時間の条件で回転させ、これらポリフェニルサルホン樹脂、人造黒鉛、ジルコニアボールを分散混合させ、ジルコニアボールを取り出して導電性樹脂組成物を調製した。ポリフェニルサルホン樹脂のガラス転移点を示差走査熱量測定したところ、ガラス転移点は218℃であった。ポリフェニルサルホン樹脂は、非晶性樹脂なので、ガラス転移点を溶融開始温度とした。
【0086】
次いで、金型(金型内サイズ:150mm×150mm)内に導電性樹脂組成物を均一に充填し、この導電性樹脂組成物上に148mm×148mmに裁断した炭素繊維クロス〔三菱レイヨン社製:商品名 パイロフィル、品番 TR3110M、重さ 200g/m(カタログ値)、厚さ 0.23mm(カタログ値)〕を配置するとともに、この炭素繊維クロス上に新たな導電性樹脂組成物を充填し、圧縮成形機の上下一対の熱板により、金型の側面温度が360℃に達するまで加熱加圧して燃料電池用セパレータを圧縮成形した。圧縮成形機の熱板の温度は400℃に調整し、成形圧力は燃料電池用セパレータの面積に対して600kg/cmとした。
【0087】
金型の側面温度が360℃に達したら、そのままの状態で60秒間加熱加圧し、その後、上下一対の熱板に冷却水を流入し、金型の側面温度が70℃以下になるまで加圧冷却し、金型から150mm×150mm、厚さ1mmの外形を有する燃料電池用セパレータを脱型した。燃料電池用セパレータを脱型したら、この燃料電池用セパレータの機械的強度と導電性とをそれぞれ評価して表1にまとめた。その他の部分については、実施例1と同様とした。
【0088】
・実施例6
先ず、ポリフェニルサルホン樹脂〔BASF社製:商品名 ウルトラゾーンP3010〕16.4体積%、炭素系導電材料として人造黒鉛[オリエンタル産業社製:商品名 人造黒鉛粉 AT−No.5S、平均粒子径:53.3μm]83.6体積%を樹脂製容器に投入し、かつ樹脂製容器にφ10mmのジルコニアボールを併せて投入し、樹脂容器に蓋を取り付けてタンブラーミキサーに装着するとともに、このタンブラーミキサーを23℃、1時間の条件で回転させてポリフェニルサルホン樹脂、人造黒鉛、ジルコニアボールを分散混合させ、その後、ジルコニアボールを取り出して分散混合物を調製した。
【0089】
次いで、分散混合物を350℃に加熱した加圧ニーダーに投入して10分間溶融混練し、加圧ニーダーから溶融混練物を取り出して50℃以下に冷却し、この溶融混練物をφ4mmのパンチングメタルを備えたカッターミルに投入して粉砕した。こうして溶融混練物を粉砕したら、この粉砕した溶融混練物をφ0.3mmのパンチングメタルを取り付けたピンミルに再度投入して粉砕し、導電性樹脂組成物を調製した。導電性樹脂組成物の平均粒径を測定したところ、73.5μmであった。粉砕した溶融混練物の平均粒径については、レーザー回折散乱法又はマイクロトラック法により測定した。
【0090】
以下、実施例5と同様に燃料電池用セパレータを製造し、製造した燃料電池用セパレータの機械的強度と導電性とを実施例1と同様に評価し、表1にまとめた。炭素繊維クロスは、実施例2で使用した商品名:W−3161〔東邦テナックス社製、重さ 200g/m(カタログ値)、厚さ 0.25mm(カタログ値)〕を選択した。
【0091】
【表1】
【0092】
・比較例1
実施例1で調製したポリプロピレン樹脂と人造黒鉛とからなる導電性樹脂組成物を金型(金型内サイズ:150mm×150mm)内に均一に充填し、金型の側面温度が200℃に達するまで加熱加圧して燃料電池用セパレータを圧縮成形した。圧縮成形機の熱板の温度は250℃とし、成形圧力は燃料電池用セパレータの面積に対して600kg/cmとした。
【0093】
金型の側面温度が200℃に達したら、そのままの状態で30秒間加熱加圧し、その後、上下一対の熱板に冷却水を流入し、金型の側面温度が50℃以下になるまで加圧冷却し、金型から150mm×150mm×1mmの外形を有する燃料電池用セパレータを脱型した。
【0094】
燃料電池用セパレータを製造したら、この燃料電池用セパレータの特性、すなわち機械的強度と導電性とを実施例1と同様の方法により評価し、表2にまとめた。
【0095】
・比較例2
実施例1で使用したポリプロピレン樹脂55.3体積%と、炭素系導電材料として人造黒鉛44.7体積%とを実施例1と同様の方法で分散混合物を調製した。こうして分散混合物を調製したら、この分散混合物からジルコニアボールを取り出してポリプロピレン樹脂と人造黒鉛の分散混合物を調製した。分散混合物を調製したら、この分散混合物の平均粒子径をレーザー回折散乱法又はマイクロトラック法により測定し、平均粒子径を求めたところ、104μmであった。
【0096】
次いで、分散混合物を実施例1の方法により導電性樹脂組成物に調製し、実施例1の方法で燃料電池用セパレータを製造した。この際、補強材である炭素繊維クロスは、実施例1で使用したパイロフィル〔三菱レイヨン社製:商品名、品番 TR3110M、重さ 200g/m(カタログ値)、厚さ 0.23mm(カタログ値)〕を選択した。燃料電池用セパレータを製造したら、この燃料電池用セパレータの機械的強度と導電性とを実施例1と同様の方法により評価し、表2にまとめた。
【0097】
・比較例3
実施例3の粉砕したポリフェニルサルファイド樹脂10体積%と、人造黒鉛90体積%を実施例3と同様の方法で分散混合物に調製し、この分散混合物を実施例3の方法に従い導電性樹脂組成物に調製し、実施例3の方法に従い導電性樹脂組成物から燃料電池用セパレータを製造した。補強材である炭素繊維クロスは、実施例1で使用したパイロフィル〔三菱レイヨン社製:商品名、品番 TR3110M、重さ 200g/m(カタログ値)、厚さ 0.23mm(カタログ値)〕を用いた。
【0098】
燃料電池用セパレータを製造したら、この燃料電池用セパレータの機械的強度と導電性とを実施例1と同様の方法により評価し、表2にまとめた。
【0099】
【表2】
【0100】
実施例1〜6によれば、表1に示すように、優れた機械的強度と導電性の燃料電池用セパレータを得ることができた。これに対し、比較例1〜3によれば、表2に示すように、燃料電池用セパレータの機械的強度と導電性の少なくともいずれかが悪化し、満足する結果を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係る燃料電池用セパレータの製造方法は、例えば燃料電池自動車、家電機器、モバイル機器の分野等で使用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 燃料電池用セパレータ
3 流通溝
3A 流通溝
4 導電性樹脂組成物
5 補強材
10 金型
11 下型
12 上型
13 打ち抜きピン
図1
図2
図3