(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記釣糸案内体は、クラッチ機構のON/OFF操作に連動して、前記釣糸巻き取り状態と前記釣糸放出状態との間で回動されることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1に開示されている魚釣用リールは、左右側板間に配設されるピラーを上下動させて糸路制御する構成のため、構造が複雑になり易く、また、ピラー部材が必要になるため、コストが高くなってしまう。また、釣糸案内体の前後方向にピラーを配置する構成のため、リール本体の前後方向が大型化し易くなる。更に、特許文献1では、ピラーの上下動によって釣糸案内体に挿通される釣糸を釣糸挿通部と幅狭の溝部との間で移動させる糸路制御を行なう構成上、釣糸案内体の移動を含めた幅をピラーの幅(長さ)よりも小さくしなければならず、そのため、釣糸放出時に釣糸が位置される釣糸挿通部の幅寸法の増大にも限界があり、したがって、釣糸放出抵抗の低減にも限界がある。また、釣糸巻き取り時にピラーが固定状態で釣糸に押し付くため、釣糸とピラーとの間の摩擦抵抗が大きくなり、釣糸巻き取り操作性が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、構造が簡単で、リール本体の前後方向の長さをコンパクト化することができるとともに、釣糸の放出抵抗および巻き取り抵抗を効果的に軽減できる釣糸案内体を備えた魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールと、前記スプールから繰り出される釣糸を挿通させるとともに、ハンドルの回転操作に連動して前記スプールの前方において前記左右側板間で往復移動する釣糸案内体を備えたレベルワインド装置とを有する魚釣用リールにおいて、前記釣糸案内体は、釣糸巻き取り状態と釣糸放出状態との間で前後方向に回動可能に支持されるとともに、前記釣糸放出状態で釣糸が位置する左右方向に幅広の開口部と、前記釣糸巻き取り状態で釣糸が位置する左右方向に幅狭の釣糸案内部と、前記釣糸巻き取り状態で釣糸を前記釣糸案内部から離脱させない規制部とを有し、 前記規制部は、前記釣糸案内体に回転可能に支持されており、前記釣糸巻き取り状態時に釣糸に回転可能に接触して釣糸を前記釣糸案内部へ案内できることを特徴とする。
【0008】
上記した構成の魚釣用リールでは、レベルワインド装置を構成する釣糸案内体が、左右方向に幅狭の釣糸案内部と、左右方向に幅広の開口部と、釣糸巻き取り状態で釣糸を釣糸案内部から離脱させないようにする規制部と、を備えている。前記釣糸案内体は、スプール前方において、釣糸巻き取り状態と釣糸放出状態との間で前後方向に回動可能となっており、釣糸巻き取り状態に切り換えられると、釣糸は、規制部によって幅狭の釣糸案内部に案内されるとともに釣糸案内部からの離脱が規制され、そのため、釣糸案内部による案内によってスプールに対して均等に巻回される。また、釣糸案内体が釣糸放出状態に切り換えられると、前記規制部による規制が解除され、釣糸は幅広の開口部に移動して、釣糸を放出する際の放出抵抗が軽減される。
【0009】
このように、上記した構成の魚釣用リールによれば、釣糸案内体それ自体に、釣糸巻き取り状態時および釣糸放出状態時に糸路を制御する制御部、すなわち、左右方向に幅狭の釣糸案内部と、左右方向に幅広の開口部と、規制部とが形成されているため、特に、本構成では、釣糸巻き取り状態で釣糸を釣糸案内部から離脱させない(釣糸巻き取り状態時に釣糸と接触して釣糸を釣糸案内部へ案内する)規制部が(前述した特許文献1のピラーのように釣糸案内体と別体ではなく)釣糸案内体と一体に設けられているため、構造が簡素化されて、部品点数が削減され、コストの低減を図ることができる。また、釣糸案内体の前後方向にピラーを配置する必要もないため、リール本体の前後方向をコンパクト化することができる。
【0010】
また、上記した構成の魚釣用リールでは、左右の固定された位置で上下動する別体のピラーによって糸路制御を行なうのではなく、左右に往復動する釣糸案内体それ自体の規制部によって糸路制御を行なうことができるため、釣糸放出時に釣糸が位置される釣糸挿通部の幅寸法が制限を受けることもなく、釣糸挿通部の幅寸法を大きく設定して釣糸の放出抵抗を大きく軽減することが可能になる。更に、上記した構成の魚釣用リールによれば、釣糸巻き取り状態時に釣糸に接触して釣糸を釣糸案内部へ案内する前記規制部が回転可能であるため(釣糸と回転可能に接触するため)、釣糸巻き取り時における釣糸の規制部に対する抵抗(釣糸と規制部との間の摩擦抵抗)が軽減され、したがって、巻き取り操作性の低下を防止できる(あるいは、巻き取り操作性が向上する)とともに、釣糸に付着している異物に伴う擦れ現象による傷発生も軽減できる。また、釣糸案内体の規制部への傷発生を抑制できるため、釣糸へのダメージが低下して、釣糸の寿命も向上する。
【0011】
なお、上記した構成において、釣糸案内体の切り換えは、釣糸放出状態と釣糸巻き取り状態との間で、釣糸案内体の釣糸に対する位置が変化し、釣糸放出状態では、釣糸が幅広の開口部に位置し、釣糸巻き取り状態では、規制部によって規制されて釣糸が幅狭の釣糸案内部に位置するように構成されていれば良く、両者の間で回動して切り換えられたり、直線的に移動して切り換えられても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造が簡単で、リール本体の前後方向の長さをコンパクト化することができるとともに、釣糸の放出抵抗および巻き取り抵抗を効果的に軽減できる釣糸案内体を備えた魚釣用リールが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明に係る魚釣用リールの一実施形態について説明する。なお、以下において、前後方向、左右方向、および、上下方向は、
図1および
図2に矢印で示される向きで定義される。
【0015】
特に
図1に示されるように、本実施形態に係る魚釣用リールは、左右のフレーム2a,2bを左右カバー3a,3bで覆った左右側板1A,1Bを備えたリール本体1を有している。リール本体1には、左右側板1A,1B間に位置し、図示しない釣竿に装着されるリール脚1Cが一体形成されている。また、左右のフレーム2a,2b間には、スプール軸5が軸受を介して回転可能に支持されており、スプール軸5には、釣糸Sが巻回されるスプール5Aが一体的に固定されている。さらに、左右側板1A,1B間には、スプール5Aに対して上方側に、指を載置可能なサムレスト1Dが設けられている。
【0016】
本実施形態では、スプール5Aを回転駆動するハンドル8を右側板1B側に設置しており、右フレーム2bと右カバー3bとの間の空間には、ハンドル8の回転駆動力をスプール軸5に伝達する公知の動力伝達機構10が配設されている。また、右フレーム2bと右カバー3bとの間には、スプール軸5を動力伝達状態と動力遮断状態とに切り換える公知のクラッチ機構20が配設されており、このクラッチ機構20は、スプール7の後方側の左右側板1A,1B間に配設されたクラッチ切り換え操作部材(以下、操作部材と称する)21を押し下げ操作することで、クラッチON状態(動力伝達状態であり釣糸巻き取り状態)からクラッチOFF状態(動力遮断状態であり、釣糸放出状態)へ切り換えられるようになっている。なお、クラッチOFF状態からクラッチON状態への復帰は、後述する自動復帰機構30によってハンドル8を回転操作することで行うことが可能となっている。
【0017】
また、左右の側板1A,1B間には、スプール5Aの釣糸繰出し方向側に、レベルワインド装置50が配設されている。このレベルワインド装置50は、ハンドル8を回転操作することで、釣糸Sを挿通する釣糸案内体60が左右に往復移動するよう構成されており、釣糸Sの巻き取り操作に伴って、スプール5Aに対して釣糸Sを均等に巻回する機能を有する。
【0018】
駆動力伝達機構10は、ハンドル8が固定されたハンドル軸8aにドラグ機構と関連して回転可能に装着された駆動歯車11と、この駆動歯車11に噛合するピニオン12とを備えている。ピニオン12は、スプール軸5と同軸上に設置されており、ピニオン軸(スプール軸5であっても良い)12aに沿って軸方向に移動可能となっている。また、ピニオン12の外周には、円周溝12bが形成されており、この円周溝12bに、後述するクラッチ機構20のヨーク22が係合して、ピニオン12を軸方向に移動させるようになっている。すなわち、ピニオン12が軸方向に移動することで、スプール軸5との間で継脱がなされ、動力伝達状態(クラッチON)/動力遮断状態(クラッチOFF)に切り換えられるようになっている。
【0019】
クラッチ機構20は、右フレーム2bに対して回動可能に支持され、振り分けバネ23によって、
図6に示す動力伝達状態(クラッチON状態)と、
図7に示す動力遮断状態(クラッチOFF状態)に振り分け保持されるクラッチプレート25を備えている。このクラッチプレート25は、右フレーム2bに上下方向に形成された連結孔2dを介して操作部材21と連結されており、クラッチプレート25に形成された長孔25aに、右フレーム2bに突出するように設けられたピン2eが挿入されて、その回動駆動が案内されるようになっている。
【0020】
クラッチプレート25の表面には、公知のように、ピニオン12の円周溝12aに係合したヨーク22と係合可能な一対のカム面(図示せず)が形成されている。ヨーク22の先端側は、右フレーム2bに突設された支持ピン27によって保持されており、ヨーク22は、各支持ピン27に配設されたバネ部材(図示せず)によって常時、クラッチプレート25側に付勢された状態となっている。なお、
図6は、図示されていないヨーク22がバネ部材によってクラッチプレート25側に付勢された状態を示しており、このとき、ピニオン12はスプール軸5の端部に形成されている係合部に嵌合してクラッチON状態となっている。
【0021】
クラッチプレート25は、操作部材21が、
図6の矢印に示すように押下げ操作されると反時計回り方向に回動され、前記カム面およびヨーク22を介して、ピニオン12をスプール軸5の端部に形成されている係合部から離脱させ、
図7に示すように、クラッチOFF状態に切り換える。なお、この状態は、振り分けバネ23によって保持される。
【0022】
また、クラッチプレート25には、クラッチをOFF状態からON状態にする自動復帰機構30が設けられている。この自動復帰機構30は、クラッチプレート25に一体的に設けられるキック部材31と、ハンドル軸8aに回り止め固定されるラチェット32とを備えており、キック部材31は、クラッチONからクラッチOFFに切り換えると、
図7に示すように、ラチェット32の回転軌跡内に侵入するように配置されて構成されている。このため、クラッチOFF状態において、ハンドル8を巻き取り操作すると、ラチェット32の回転によりキック部材31がキックされて、自動的にクラッチプレート25がクラッチON状態の位置に復帰され、その復帰状態が再び振り分けバネ23のバネ力で保持される。なお、クラッチの復帰は、操作部材21を押し上げ操作しても行うことが可能である。
【0023】
スプール5Aの前方側の左右側板1A,1B間には、レベルワインド装置50が配置されている。以下、レベルワインド装置50の構成について、
図2〜
図5、
図8を併せて参照しながら説明する。なお、これらの図において、
図2は、
図1に示す魚釣用リールのA−A線に沿う断面図であり、釣糸案内体60が釣糸巻き取り状態(クラッチON状態)にあるときの図、
図3は、
図1に示す魚釣用リールのA−A線に沿う断面図であり、釣糸案内体60が釣糸放出状態(クラッチOFF状態)にあるときの図、
図4は、クラッチプレート25と釣糸案内体60を回動させる回動プレート59との連結部分の構造を示す断面図、
図5は、釣糸案内体60に対する規制部69の回転可能な支持構造を示す断面図、
図8は、釣糸案内体60を拡大して示す斜視図(クラッチON状態)である。
【0024】
レベルワインド装置50は、スプール5Aに巻回された釣糸Sを挿通させる釣糸案内体60を備えており、この釣糸案内体60は、軸受52(
図4参照)を介して左右側板1A,1B間に回転可能に支持され且つ駆動力伝達機構10を介して回転可能に駆動される螺軸(ウォームシャフト)51によって、左右往復駆動されるよう構成されている。すなわち、螺軸51の右フレーム2b側には、ハンドル軸8aに装着された駆動歯車11と隣接して配設されてハンドル軸8aと一体的に回転する連結ギア(図示せず)と噛合する入力ギア53が設けられており、螺軸51は、連結ギア及び入力ギア53を介して、ハンドル8の回転駆動と同期して回転駆動されるようになっている。
【0025】
螺軸51は、左右側板1A,1B間に回動可能に保持される管状体(筒体)55内に収容された状態となっており、管状体55の外面には、軸方向に延出する長孔55aが形成され、螺軸51の表面に形成された螺旋溝51aを軸方向に沿って部分的に露出させている。また、釣糸Sを挿通させる釣糸案内体60は、釣糸挿通部60Aと保持部60Bとを一体的に備えており、保持部60Bが管状体55を囲繞するように配置されて形成されている。
【0026】
保持部60Bは、その内部に、長孔55aを介して螺旋溝51aと係合する摺動子61を保持している。この摺動子61は、袋ナット62によって、保持部60Bに対して固定される。また、釣糸案内体60は、螺軸51の回転に伴って、螺旋溝51aと摺動子61との係合関係により、軸方向に沿って移動しつつ、管状体55の周りで回転しないように回り止めされている。本実施形態の構成では、管状体55の外周に軸方向に沿って延出する回り止め部55bを形成しており、回り止め部55bに対して保持部60Bの係合部64を係合させることで、回り止めを果たしている。具体的には、回り止め部55bは、管状体55の外周に軸方向に延出する突起(
図2,
図3に示すように、180°間隔で一対設けられている)として構成されており、係合部64は、そのような突起に入り込む凹部として構成されている。
【0027】
上記のように、螺軸51を収容する管状体55に回り止め部55bを一体形成することで、従来のように、釣糸案内体60を回り止めするガイド軸を配設する必要がなくなり、レベルワインド装置50の構造を簡素化することが可能となる。
【0028】
また、釣糸案内体60は、螺軸51が回転駆動されると、摺動子61を介して左右側板1A,1B間で往復駆動されるとともに、本実施形態では、上述したクラッチ機構20のON/OFFに連動して釣糸巻き取り状態と釣糸放出状態との間で切り換えられるように、回動可能に構成されている。この場合、釣糸案内体60の回動駆動については、管状体55を回動駆動することで成されるようになっている。
【0029】
ここで、クラッチ機構20から管状体55への動力伝達経路を具体的に説明する。
クラッチプレート25には、リール本体1の前方側に向けて突出する突片25bが形成されており、その先端には、右フレーム2b側に向けて突出する係合突起25cが一体形成されている。一方、右フレーム2bには、螺軸51が支持される部分に回動プレート59が保持されており(
図4参照)、管状体55は、右フレーム2bの内面側において、回動プレート59と回り止め固定されている。すなわち、回動プレート59には、径方向に突出する凸部59aが形成されており、この凸部59aに、管状体55の端部に形成された凹部55cが嵌合することで、両者は、右フレーム2bの内面側で固定された状態(一体回動可能な状態)となっている。
【0030】
回動プレート59は、螺軸51を回転可能に支持する軸受52の外輪と右フレーム2bとの間で回動可能に支持されており、右フレーム2bの外面側に沿って、クラッチプレート25の突片25bと係合する連結片59bが形成されている。そして、連結片59bには、長孔59cが形成されており、この長孔59cに、クラッチプレート25の突片25bの係合突起25cが遊挿されることで、回動プレート59は、
図6および
図7に示されるように、クラッチプレート25の回動に伴って螺軸51の軸芯を中心に回動されるようになっている。したがって、回動プレート59は、振り分けバネ23によって、釣糸巻き取り状態と釣糸放出状態との間で振り分け保持されるクラッチプレート25とともに、2つの位置で切り換えられるようになっている。
【0031】
釣糸案内体60は、回動プレート59を介して、管状体55が回動駆動されることで、スプール5Aの前方において、前後方向に回動駆動される。ここで、釣糸案内体60の釣糸挿通部60Aの構成について、具体的に説明する。
【0032】
釣糸挿通部60Aは、スプール5Aからの釣糸Sを挿通させる部分であり、SUS、チタン等の釣糸抵抗が少ない材料によるフレーム体60Fとして構成されており、
図8に示されるように、保持部60Bとともに一体形成されている。具体的には、釣糸挿通部60Aは、左右方向に幅狭(細溝状)となった釣糸案内部67と、その釣糸案内部67の上方側で、略対称となるように左右方向に拡がる幅広の開口部68とを備えている。この場合、開口部68は、釣糸放出状態となったときの正面視(挿通される釣糸Sに沿って前方から見た正面視)で、左右方向に拡がる略楕円形状となるように形成されており、その両サイドの傾斜壁68a,68aは、開口部68の略中央の下部に形成される釣糸案内部67に向けて傾斜して釣糸Sを案内する傾斜案内面となっている。
【0033】
開口部68を画定するフレーム体60Fは、釣糸放出状態で側面視した際、前後方向に対して傾斜した状態(後方側に向けて次第に立ち上がる形状)となっており、前記傾斜壁68a,68aと、この傾斜壁68a,68aから釣糸Sの導出方向へ略直線的に延びる側壁部68b,68bと、開口部68を閉塞するように側壁部68b,68b同士を連結する略丸棒状の管状部材から成る規制部69とによって形成される。この場合、規制部69は、釣糸案内体60が釣糸放出状態(
図3および
図7の状態)から釣糸巻き取り状態(
図2、
図6、および、
図8に示される状態)へと回動した際、開口部68内に挿通されている釣糸Sに対して、上側から当接できる位置関係となっており、釣糸Sを釣糸案内部67から離脱させないように規制する。また、規制部69は、
図5に明確に示されるように、その両端部69a,69aがフレーム体60Fの側壁部68b,68bに対して回転可能に支持されている。具体的には、規制部69は、その両端の小径の支軸91に摺動性を向上させるためのカラー91aが嵌合されて側壁部68b,68bの貫通孔82内に挿通された状態で回転可能に支持されており、端部に装着した止め輪90で側壁部68b,68bに抜け止めされている。
【0034】
また、左右方向に幅狭となった釣糸案内部67は、上下方向に延出しており、そこに入り込んだ釣糸Sの左右方向のブレを防止して、スプール5Aに対して、安定して釣糸を平行巻きする機能(糸巻状態を向上する機能)を有する。
【0035】
なお、上記した構成において、釣糸案内部67を規定する両壁67aは、
図2および
図3に示されるように、摺動子61を固定する袋ナット62の上方を覆うように伸びていることが好ましく、このような構成により、釣糸案内部67に入り込んでいる釣糸が、袋ナット62の部分で絡むことを効果的に防止することが可能となる。また、釣糸案内部67の底面67cは、
図2に示す釣糸巻き取り状態において、前方に向けて次第に下方向に傾斜する傾斜面となっていることが好ましい。すなわち、このような底面形状にすることにより、スプール5Aから傾斜した状態で繰り出される釣糸Sとの摩擦抵抗の低減が図れるようになる。
【0036】
次に、上述したように構成される魚釣用リールの作用および効果について説明する。
図2および
図6に示されるクラッチON状態において、スプール5Aの後方側に位置する操作部材21を押し下げ操作すると、クラッチ機構20を構成するクラッチプレート25は、反時計回りに回動され、振り分けバネ23によって、
図7に示される状態に保持される。このとき、クラッチプレート25の表面に形成されたカム面がヨーク22を軸方向にシフトさせ、ピニオン12をスプール軸5から離脱させる(クラッチOFF状態)。また、この操作によるクラッチプレート25の回動に伴って、回動プレート59は、螺軸51の軸芯を中心に回動され、これに回り止めされている管状体55は、
図2(
図6)に示される位置から、
図3(
図7)に示される位置に回動される。
【0037】
したがって、釣糸案内体60は、管状体55に保持されていることから、
図2および
図8に示される状態から、
図3および
図7に示されるように回動される。そして、このように回動された釣糸案内体60は、スプール5Aがフリー回転可能な状態(釣糸放出状態)となっており、釣糸案内部67に入り込んでいる釣糸Sは、規制部69による規制が外れ、開口部68に移動する。なお、通常、釣糸放出状態では、スプール5Aに対する釣糸の巻回量が多いため、規制部69の規制が外れることで、釣糸は、直ちに開口部68に移動することができる。
【0038】
この状態で、スプール5Aはフリー回転可能状態となっており、キャスティング操作等により、釣糸Sは放出される。この場合、釣糸案内体60は、スプール5Aの前方において、
図3および
図7に示される状態に回動されており、その開口部68は、左右方向に幅広状に形成されていることから、その内面から接触抵抗を受けることが少なくなり、仕掛けの飛距離を低下させるようなことはない。すなわち、釣糸を放出する際に、釣糸案内体60からの放出抵抗を軽減することが可能となる。
【0039】
そして、クラッチ機構20をONに復帰させるべく、ハンドル8を巻き取り操作すると、自動復帰機構30によって、クラッチプレート25は、
図6に示される位置に自動復帰する。このクラッチプレート25のON状態の復帰に伴って、管状体55は、回動プレート59を介して、
図2および
図6に示される状態に回動され、釣糸案内体60は、
図2,6,8に示される位置に切り換えられる。このとき、開口部68のいずれかの部分に位置している釣糸Sは、回動する規制部69が当て付いて押し付けられ、開口部68の傾斜案内面68aに沿って確実に中央に位置する釣糸案内部67に案内される。また、
図8に示されるように、釣糸巻き取り状態では、釣糸Sは、規制部69によって釣糸案内部67から離脱することはない。
【0040】
その後、ハンドル8を巻き取り操作することで、上記したレベルワインド装置50の螺軸51は、ハンドル軸8aに設けられた連結ギアおよびこれに噛合する入力ギア53を介して回転駆動される。螺軸51が回転駆動されることで、釣糸案内体60は、螺軸51の外周面に形成された螺旋溝51aと係合する摺動子61を介して、管状体55に沿って左右往復動される。この場合、管状体55の外周には、軸方向に沿って延出する回り止め部55bが形成されているため、釣糸案内体60は、軸回りに回転することなく、左右に往復駆動される。これにより、釣糸Sは、左右方向に幅狭となった釣糸案内部67によって、スプール5Aに対して、安定して平行巻きされ、さらには、規制部69の位置によって、釣糸案内部67から離脱することもない(釣糸Sは、規制部69によって押し付けられ、傾斜案内面68aに沿って確実に釣糸案内部67に案内される)ため、常時、安定した平行巻き状態が確保される。特に、この場合、規制部69は、釣糸案内体60に回転可能に支持されており、釣糸Sに回転可能に接触するため、釣糸Sとの摩擦抵抗を軽減できる。 なお、スプール5Aに対する釣糸Sの巻回量が少ない場合、例えば、釣糸を多量に放出した状態では、釣糸案内部67に位置する釣糸Sは、規制部69に接触していなくても良い。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用リールによれば、釣糸案内体60それ自体に、釣糸巻き取り状態時および釣糸放出状態時に糸路を制御する制御部、すなわち、左右方向に幅狭の釣糸案内部67と、左右方向に幅広の開口部68と、規制部69とが形成されているため、特に、本実施形態では、釣糸巻き取り状態で釣糸Sを釣糸案内部67から離脱させない(釣糸巻き取り状態時に釣糸Sと接触して釣糸Sを釣糸案内部67へ案内する)規制部69が(先に説明した特許文献1のピラーのように釣糸案内体と別体ではなく)釣糸案内体60と一体に設けられているため、構造が簡素化されて、部品点数が削減され、コストの低減を図ることができる。また、釣糸案内体60の前後方向にピラーを配置する必要もないため、リール本体1の前後方向をコンパクト化することができる。
【0042】
また、本実施形態の魚釣用リールでは、左右の固定された位置で上下動する別体のピラーによって糸路制御を行なうのではなく、左右に往復動する釣糸案内体60それ自体の規制部69によって糸路制御を行なうことができるため、釣糸放出時に釣糸が位置される釣糸挿通部60A(開口部68)の幅寸法が制限を受けることもなく、釣糸挿通部60Aの幅寸法を大きく設定して釣糸Sの放出抵抗を大きく軽減することが可能になる。更に、本実施形態の魚釣用リールによれば、釣糸巻き取り状態時に釣糸Sに接触して釣糸Sを釣糸案内部67へ案内する規制部69が回転可能であるため(釣糸Sと回転可能に接触するため)、釣糸巻き取り時における釣糸Sの規制部69に対する抵抗(釣糸Sと規制部69との間の摩擦抵抗)が軽減され、したがって、巻き取り操作性の低下を防止できる(あるいは、巻き取り操作性が向上する)とともに、釣糸Sに付着している異物に伴う擦れ現象による傷発生も軽減できる。また、釣糸案内体60の規制部69への傷発生を抑制できるため、釣糸Sへのダメージが低下して、釣糸Sの寿命も向上する。
【0043】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、釣糸案内体60については、その形状を適宜、変形することが可能である。また、釣糸案内体60は、釣糸と接触する部分に、耐摩耗性を有するとともに、摺動抵抗の少ない部材(釣糸接触部材)を取着しておいても良い。このような釣糸接触部材を取着しておくことで、釣糸放出時や釣糸巻き取り時に釣糸が接触しても、切れることを防止でき、かつ接触抵抗を更に軽減することが可能となる。また、前述した実施形態では、釣糸案内体60をクラッチ機構20と連動して回動するように構成したが、クラッチ機構とは連動しなくても良いし、上下動させるなど、回動しない構成であっても良い。また、釣糸案内体60を回動するに際しては、管状体55の外周に、軸方向に延出する突起を設けて回り止めしたが、管状体55に形成される長孔55aのエッジによって回り止めするようにしても良い。また、規制部69の形態は、回転可能であればどのような形態(例えば、複数のローラから成るなど)であってもよい。