【実施例】
【0056】
緑色蛍光タンパク質(GFP)/蛍光活性化セルソーター(FACS)をベースとしたスクリーニング方法の簡便性と効率性が、先の研究で立証されている。これらの先の報告中、融合タンパク質の一部として、または、ひとつの内部リボソーム進入部位(IRES)または2つのプロモーター系のいずれかを用いた2シストロン性の構築物の一部として、GFPが組み込まれた。これは、高コピー数の組み換え遺伝子が安定的に取り込まれること、または、遺伝子が非常に高い転写活性を有する部位に取り込まれたことに起因し得る。これらの方法が効果的であることが示されているにもかかわらず、ヒト治療薬の製造にGFPを含有する細胞系統を用いることに関しては、何らかの懸念があり得る。さらに、サブ集団の単離後に細胞がGFPの生産を伴う代謝機構を担うことは必要でないようにみえる。この細胞資源は、潜在的には、細胞増殖または組み換えタンパク質の生産へと転用され得るものである。以下の実施例は、FACSを通じての選別と組み合わせた、GFPを選択マーカーとして可逆的に用いる高生産クローンを選択するための新規な手法を記載する。
図1は、GFPをベースとした選択プロセスのスキームを示す。手短にいえば、GFPをコードするcDNAを含有するプラスミドベクターをDHFR欠損CHO細胞へとトランスフェクトする。所望のベクターをうまく獲得した細胞は蛍光性である。GFP発現細胞を、組み換えタンパク質発現のための親宿主細胞とした。
【0057】
所望の組み換えタンパク質を生産するために、親宿主細胞を、shRNAmir
eGFP含有ベクターにてトランスフェクトし、次いで蛍光強度の低い細胞を、FACSを用いて選別した。MTXを増加させながら数ラウンドのチャレンジを行った後の細胞培養物を、繰り返し数ラウンドの選別および増殖を行わせた。最も低いGFP蛍光強度を示す細胞クローンは、最も高い導入遺伝子発現を有するクローンに相当することとなる。最終的に、選択されたクローンを増殖させ、生産および安定性を試験する。FACSは多数の細胞を容易にスクリーニングすることができ、高生産性のクローンを取得する機会は、限定希釈法と比較して非常に増大する。さらに、この手法は作業量がより少なく、バイオ生産のためのクローンを創出するための時間を顕著に短縮し得る。
【0058】
実施例1:CHO
+GFP/−dhfr細胞系統の確立
ジヒドロ葉酸還元酵素欠損チャイニーズハムスター卵巣細胞系統(CHO/
dhfr−)をHT(0.1mM ヒポキサンチンナトリウムおよび0.016mM チミジン、Gibco、Cat No.11067)、10%のFBS(Biological Industries、Cat.04−001−1A)および2μMのメトトレキサート水和物(MTX、Sigma、SI−M8407)を添加したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM, Gibco、Cat.No.12200)中で維持した。
【0059】
CHO/
dhfr−細胞を、Lipofectamine(商標) Invitrogen Puls(商標) Reagent(Cat. No.11514−015)の説明書に従って、リポフェタミンと共に、GFP(pFLAg−eGFP−IRES−Puro)をコードするcDNAを含有する5μgのプラスミドベクターを用いてトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、5μg/mlのピューロマイシン二塩酸塩(Sigma、SI−P8833)を用いて選択した。HT、10%のFBS、2μMのMTXおよび選択的抗生物質を添加したIMDM培地中での10日間の選択の後、細胞を上記培地中で維持した。GFPを発現するCHO
−dhfr細胞(CHO
+GFP/−dhfr細胞)をクローン化し、組み換えタンパク質発現のための親宿主とする。
【0060】
実施例2:発現ベクターの構築
(1)pScinoDP−DHFRベクター
pEGFP−N1(Clontech)プラスミド骨格中のEGFP遺伝子をIRES−DHFR融合遺伝子へと置換し、SV40ポリA尾部およびCMV−IEプロモーターの付加をpEGFP−N1(Clontech)プラスミド骨格へと挿入することにより、pScinoDP−DHFRプラスミドを構築した。手短にいえば、ポリA尾部およびCMV−IEプロモーター配列を、pCEP4プラスミド(Invitrogen)をテンプレートとして用いたPCR増幅により取得した。PCRによるオーバーラップ伸張(OL−PCR)を介して、融合されたポリA尾部−プロモーター融合配列SV40polA−CMV−IE(約1.2kb)を作製した。融合された配列をXhoI/BglIIで消化し、XhoI/BglIIした消化pEGFP−N1ベクターへと挿入した。得られた構築物をpScinoDPと名付けた。
【0061】
pIRES2−EGFPおよびpSV2−DHFRプラスミドをテンプレートとして用いたPCR増幅により、IRES配列およびDHFR遺伝子を入手した。PCRによるオーバーラップ伸張(OL−PCR)を介して、IRES配列断片およびDHFR遺伝子断片のハイブリッド(IRES2−DHFR)を作製した。そのハイブリッド断片(〜1.1kb)をAgeI/NotIを用いて消化し、AgeI/NotI消化したpEGFP−N1へと挿入してpEGFP−N1ベクター中のEGFP遺伝子を置換した。得られた構築物をpIRES2−DHFRと名付けた。部位特異的突然変異誘発法を行って、IRES配列中のApaLI部位を除去した。
【0062】
IRES配列中に変異させた制限酵素ApaLI部位を有するプラスミドpIRES2−DHFRをAgeI/NotIにより消化して、IRES配列および全長DHFRのコード領域遺伝子を含む1.2kbの断片を、AgeI/NotI消化したpScinoDPに連結して、pScinoDP−DHFRを作製した(
図2)。全ての構築物を、制限分析および/またはヌクレオチド配列解析によって確認した。
【0063】
(2)pScinoDP3−DHFRベクター
pScinoDP3−DHFRベクターは、CMV−IEエンハンサーを伴ったhEF1αプロモーターを有する、pScinoDP−DHFRをベースとしたベクターである。手短に言えば、hEF1αプロモーターをpBudCE4.1ベクター(Invitrogen)から増幅した。pEGFP−N1上のCMV−IEエンハンサーの後ろにhEF1αプロモーターをサブクローニングしてpCMVe−hEF1α−EGFPベクターを形成させることを通じて、hEF1αプロモーターを伴うハイブリッドCMV−IEエンハンサー配列を得た。CMV
e−hEF1α断片をpCMV
e−hEF1α−EGFPベクターからPCR増幅し、pScionDP−DHFRベクター中の両方のCMVプロモーターを置換するために用いた。得られたベクターをpScinoDP3−DHFRと名付けた(
図3)。
【0064】
(3)pScinoDP3mir−DHFRベクター
以下の合成骨格DNAおよびプライマーを用いて、記載されるように、PCRを用いて一本鎖97ntの「mir30様」shRNAi
GFPオリゴを作製した:
【0065】
一本鎖97ntの「shRNAi
GFPDNAオリゴ
5’-
TGCTGTTGACAGTGAGCGAGCACAAGCTGGAGTACAACTATAGTGAAGCCACAGATGTA
TAGTTGTACTCCAGCTTGTGCCTGCCTACTGCCTCGGA-3’ (配列番号1)
【0066】
下線を引き斜体で示す配列は、隣接するmir30配列を示し、下線を引かず斜体で示す配列はmir30ループ構造を表す。サンプルのセンスおよびアンチセンスで選択される標的配列は、太字および下線を引いた太字でそれぞれ示される。mir30様のshRNAi
GFPは、内因性のmir30 miRNA隣接配列の部分に相当する共通の末端を有する一本鎖DNAオリゴヌクレオチドとして合成される。
【0067】
mirFWD−
AgeIプライマー配列(40mer):
5’-CAGAAGG
ACCGGTAAGGTATAT
TGCTGTTGACAGTGAGCG-3’ (配列番号2)
【0068】
mirREV−
HindIIIプライマー配列(37mer):
5’-CTAAAGTAGCCCCTT
AAGCTTTCCGAGGCAGTAGGCA-3’ (配列番号3)
【0069】
下線を引き、斜体で示される配列の隣接領域は、反応を準備するための普遍的な隣接部として用いられ、これにより全長mir30様shRNAi
GFPが増幅され、受容側ベクターへとクローンされ得るPCR産物を生じる。
【0070】
Platinum(登録商標) Pfx DNAポリメラーゼを用い、以下のプロファイル:95℃で3分間、次いで、95℃で30秒間、54℃で秒間、および、75℃で30秒間、合計35サイクルによりPCRを行った。得られたPCR産物(AgeI−shRNAi
GFP)を修飾pEGFP−N1ベクター(AgeI部位が破壊され、ネオマイシン遺伝子の後ろにAgeIおよびEcoRV部位が追加)へとクローンした。得られた構築物をpEGFP−N1−shRNAi
GFPと名付けた。これらのAgeI−shRNAi
GFP配列も、DNA配列解析により確認した。
【0071】
pEGFP−N1−shRNAi
GFPベクターをApaLI−NotIにより消化した。CMV−IE−GFP断片をpScinoDP3−DHFR由来のScinoDP3−DHFR断片で置換した。得られた構築物をpScinoDP3mir−DHFRと名付けた(
図4)。
【0072】
(4)pScinoDP8mir−DHFRベクター
pScinoDP8mir−DHFRベクターは、調節DNAエレメントmARE40を含む。ハウスキーピング遺伝子由来の抗リプレッシングエレメント(repressing element)等の調節エレメントは、細胞系統により産生される組み換えタンパク質の特異的な生産性に正の影響を与えることが示された。プラスミドpEGFP−N1は、この構築物の骨格として用いられた。手短に言えば、以下の合成骨格DNAおよびプライマーを用いて、記載されるオーバーラッピングPCRを用いて、部分的マウス抗リプレッサーエレメント40断片を作製した:
【0073】
mARE40-L1(+)骨格DNA:
5’-TTGCTCTGAGCCAGCCCACCAGTTTGGAATGACTCCTTTTTATGACTTGAATTTTCAAGTATAAAGTCTAGTGCTAAATTTAATTTGAACAACTGTATAGTTTTTG-3’ (配列番号4)
【0074】
mARE40-L1(-)骨格DNA:
5’-TTAGAAATCCTCACACACAACAAGTTTTCATTTCACTTCTAATTCTGAAAAAAACACTGCCACCATTTTTTTTCCTTCCCCCAACCAGCAAAAACTATACAGTTGT-3’ (配列番号5)
【0075】
mARE40-R1(+)骨格DNA
5’-GTGTGTGAGGATTTCTAATGACATGTGGTGGTTGCATACTGAGTGAAGCCGGTGAGCATTCTGCCATGTCACCCCCTCGTGCTCAGTAATGTACTTTACAGAAATC-3’ (配列番号6)
【0076】
mARE40-R1(-)骨格DNA
5’-TGGCAGAAATGCAGGCTGAGTGAGACTACCCAGAGAAGAGACCGGATATACACAAGAAGCATGGTTTATATCAATCTTTTGAGTTTAGGATTTCTGTAAAGTACAT-3’ (配列番号7)
【0077】
mARE40-5’プライマー: 5’-TTGCTCTGAGCCAGCCCACCAGTTT-3’ (配列番号8)
【0078】
mARE40-3’AseI プライマー: 5’-GTTATTAATTGGCAGAAATGCAGGCTGAGT-3’ (配列番号9)
【0079】
mARE40-3’AflII プライマー: 5’-CCCACATGTTGGCAGAAATGCAGGCTGAGT-3’ (配列番号10)
【0080】
mARE40-3’SpeI プライマー: 5’-GGACTAGTTGGCAGAAATGCAGGCTGAGTG-3’ (配列番号11)
【0081】
Platinum(登録商標) Pfx DNAポリメラーゼを用い、以下のプロファイル:95℃で3分間、次いで、95℃で30秒間、58℃で秒間、および、75℃で30秒間、合計35サイクルによりPCRを行った。得られたPCR産物(mARE40−AseIおよびmARE40−flII)を修飾pEGFP−N1ベクター(AgeI部位が破壊され、AseIの前にEcoRV、およびAflII部位の前にScaI部位が追加)へと別々にクローンし、pmARE40−EGFP−N1を形成し、(mARE40−SpeI)をpScinoDP3−DHFRベクター(SpeI部位の前にEcoRV部位が追加)へとクローンしてpScinoDP3−DHFR−F2を形成した。pmARE40−EGFP−N1ベクターをAseI−BamHIを用いて消化し、pScinoDP3−DHFRベクター由来の〜1.6kbのAseI−CMVe−hEF1α−BamHI断片でCMV−IEプロモーターを置換した。得られた構築物をpFmARE40ScinoDP3−EGFP−N1と名付けた。pFmARE40ScinoDP3−EGFP−N1ベクターをBamHI−NotIで消化し、EGFP遺伝子をpScinoDP3−DHFR−F2由来の〜1.6kbのBamHI−SV40polA−mARE40−DP3−IRES−DHFR−NotI断片で置換した。得られた構築物をpScinoDP8−DHFRと名付けた。pEGFP−N1−shRNAiGFPベクターを次いでApaLI−NotIで消化し、CMV−IE−GFP断片をpScinoDP8−DHFR由来のScinoDP8−DHFR断片で置換した。得られた構築物をpScinoDP8mir−DHFRと名付けた(
図5)。クローンされた部分的マウス抗リプレッサーエレメント40断片の完全配列を以下に示す:
【0082】
5’-TTgCTCTgAgCCAgCCCACCAgTTTggAATgACTCCTTTTTATgACTTgAATTTTCAAgTATAAAgTCTAgTgCTAAATTTAATTTgAACAACTgTATAgTTTTTgCTggTTgggggAAggAAAAAAAATggTggCAgTgTTTTTTTCAgAATTAgAAgTgAAATgAAAACTTGTTgTgTgTgAggATTTCTAATgACATgTggTggTTgCATACTgAgTgAAgCCggTgAgCATTCTgCCATgTCACCCCCTCgTgCTCAgTAATgTACTTTACAgAAATCCTAAACTCAAAAgATTgATATAAACCATgCTTCTTgTgTATATCCggTCTCTTCTCTGGGTAgTCTCACTCAgCCTgCATTTCTgCCA-3’ (配列番号12)
【0083】
(5)pScinoDP9mir−DHFRベクター
pScinoDP8mir−DHFRベクターの構築、および、pScinoDP8mir−DHFR中の2つのCMVエンハンサーをCAGプロモーターで置換する(ニワトリβ−アクチンプロモーターと融合させたCMV−IEエンハンサー)手法と同様の手法を用いて、pScinoDP9mir−DHFRベクター(
図6)を構築した。pScinoDP9mir−DHFRの完全配列を配列番号13に示す。
【0084】
pScinoDP9mir−DHFRは、MCSIIおよびジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)のコード領域の間に、脳心筋炎ウイルス(encephalomyocarditis virus、ECMV)の内部リボソーム進入部位(IRES)を含む。このことが、対象遺伝子(実施例:MCSIIへとクローンした軽鎖)およびDHFR遺伝子の両方が単一の2シストロン性mRNAから翻訳されることを可能にする。DHFRに隣接する配列は変換されてKozakコンセンサス翻訳開始部位となり、真核細胞における翻訳効率をさらに増大させる。pScinoDP9mir−DHFR中のMCSIは、CMV(PCMV IE)の前初期プロモーターとSV40ポリアデニル化シグナル配列の間に存在する。MCSIの下流のSV40ポリアデニル化シグナルが、最初の転写の3’末端における適切な処理へと導く。pScinoDP−dhfr中のMCSIIは、サイトメガロウイルス(PCMV IE)の二番目の前初期プロモーターとIRES配列との間に存在する。DHFR遺伝子の下流のSV40ポリアデニル化シグナルが、2シストロン性mRNAの3’末端における適切な処理へと導く。
【0085】
pScinoDP9mir−DHFRがpEGFP−N1ベクターに由来するものであるため、それは、SV40T抗原を発現する哺乳動物細胞を複製するためのSV40起源を含有する。SV40初期プロモーター、Tn5のネオマイシン/カナマイシン耐性遺伝子、および、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV TK)遺伝子由来のポリアデニル化シグナルからなるネオマイシン−耐性カセット(Neo
r)は、安定的にトランスフェクトされた真核細胞がG418を用いて選択されることを可能にする。このカセットの上流に存在するバクテリアのプロモーターは、E.coli中でカナマイシン耐性を発現する。pScinoDP−DHFR骨格もまた、E.coli、および、一本鎖DNA生産のためのf1起源において伝播するための複製のpUCオリジンを含む。
【0086】
(6)pGFP/ピューロマイシンベクター
pIRES2−EGFPおよびpLKO−AS3w−puroプラスミドをテンプレートとして用いて、IRES配列およびDHFR遺伝子を取得した。PCRによるオーバーラップ伸張(OL−PCR)を通じて、IRES配列断片およびピューロマイシン遺伝子断片のハイブリッド(IRES2−ピューロマイシン)を取得した。IRES2−ピューロマイシン断片を、SalI−BamHI消化したpFLAG−CMV2ベクター(Kodak)へと挿入した。得られた構築物をpIRES2−Puroと名付けた。pEGFP−N1ベクターからEGFP遺伝子を取得し、pIRES−Puroベクターへと挿入してpGFP/ピューロマイシンベクターを構築した。
【0087】
(7)pScinoDP9mir−ハーセプチン−DHFRベクター
pScinoDP9mir−ハーセプチン−DHFRベクターの構築を
図7Aおよび7Bに示す。手短に言えば、4−1リーダー配列および4−2リーダー配列をオリゴ合成骨格断片からPCR増幅し、一方、ヒトIgG
1(hIgG
1C
H)の重鎖定常領域配列およびヒトIgG
1(hIgG
1C
L)の軽鎖定常領域配列を、ヒトIgG1配列を含む組み換えプラスミドから取得した。リーダー配列およびhIgG
1定常領域配列ベクターのハイブリッドは、配向性の連結手法によって、hIgG
1定常領域を、リーダー配列を含むベクターへとサブクローンすることによって得た。
【0088】
次いで、繰り返しのオーバーラッピングPCRを通じて、オリゴ合成骨格断片から重鎖(V
H)および軽鎖(V
L)の変異領域(variant region)を作製し、p4−1リーダー−hIgG
1C
Hまたはp4−2リーダー−hIgG
1C
Lベクターへとサブクローンした。PCRのエラー修正、および、クローニング工程の間に導入された付加配列の除去後、リーダー−ペプチド−ハーセプチンVC配列の正確性を配列解析によって評価した(
図7A)。
【0089】
最終的に、ハイブリッド4−1リーダー−ハーセプチン重鎖(4−1−ハーセプチンVC
H)、および4−2リーダー−ハーセプチン軽鎖(4−2−ハーセプチンVC
L)をpScinoDP9mir−DHFRベクターのMCSIおよびMCSII部位へと個々にサブクローンして、pScinoDP9mir−ハーセプチン−DHFRベクターを構築した(
図7B)。
【0090】
抗HER2重鎖1の変異領域(variant region)のアミノ酸およびヌクレオチド配列を配列番号14および15にそれぞれ示す。重鎖の変異領域(V
H)に用いられる骨格断片およびPCRプライマーは以下の配列である:
【0091】
骨格断片:
ハーセプチンV
H-L1(+) (108 mer)
5’-gAggTgCAgCTCgTggAgAgTggTggCgggTTggTCCAgCCAggCgggTCTCTgCgATTgAgCTgTgCTgCCTCTggATTTAACATCAAAgACACgTACATCCATTgg-3’ (配列番号16)
【0092】
ハーセプチンV
H-L2(-) (105 mer)
5’-TTTAACgCTATCAgCgTATCTggTgTAgCCgTTAgTgggATAgATTCTAgCTACCCATTCAAggCCCTTgCCgggggCCTgTCTCACCCAATggATgTACgTgTC-3’ (配列番号17)
【0093】
ハーセプチンV
H-R1(+) (105 mer)
5’-TACgCTgATAgCgTTAAAggAAggTTTACTATTTCTgCCgACACCTCCAAgAATACCgCATATCTACAgATgAACTCCCTgCgCgCTgAggACACCgCTgTgTAT-3’ (配列番号18)
【0094】
ハーセプチンV
H-R2(-) (108 mer)
5’-CTTAgTAgAgCACTgCTAACTgTCACTAAggTACCCTggCCCCAgTAgTCCATTgCgTAgAATCCgTCTCCCCCCCAACgTgAgCAgTAATACACAgCggTgTCCTC-3’ (配列番号19)
【0095】
増幅用プライマー:
ハーセプチン-V
H-5HindIII (30 mer) (センス)
5’-gCCAAgCTTgAggTgCAgCTCgTggAgAgT-3’ (配列番号20)
【0096】
ハーセプチン-V
H-3ApaI (30 mer) (アンチセンス)
5’-AgggggCCCTTAgTAgAggCACTgCTAACT-3’ (配列番号21)
【0097】
抗HER2軽鎖1の変異領域のアミノ酸およびヌクレオチド配列を配列番号22および23にそれぞれ示す。軽鎖の変異領域(V
L)に用いられる骨格断片およびPCRプライマーは以下の配列である:
【0098】
骨格断片:
ハーセプチンV
L-L1(+) (93 mer)
5’-gATATACAgATgACACAgTCTCCgTCAAgTCTgAgCgCAAgCgTgggCgACCggGTAACAATTACCTgTAgAgCCAgCCAggACgTAAATACA-3’ (配列番号24)
【0099】
ハーセプチンVL-
L2(-) (95 mer)
5’-CCgCTATAAAggAACgAggCAgAgTAgATCAgAAgCTTAggAGCTTTACCAggTTTTTgCTgATACCAggCCACggCTgTATTTACgTCCTggCT-3’ (配列番号25)
【0100】
ハーセプチンV
L-R1(+) (94 mer)
5’-CTCgTTCCTTTATAgCggggTgCCAAgCCgCTTCTCCggATCTAggTCTggAACAgACTTTACTCTgACCATTTCCAgTCTCCAgCCCgAAgAC-3’ (配列番号26)
【0101】
ハーセプチンV
L-R2(-) (93 mer)
5’-CTTgATCTCgACCTTggTgCCCTgCCCAAATgTgggTggAgTCgTgTAATgTTgCTggCAATAgTAggTAgCAAAgTCTTCgggCTggAgACT-3’ (配列番号27)
【0102】
増幅用プライマー
ハーセプチン-V
L-5HindIII (30 mer) (センス)
5’-gCCAAgCTTgATATACAgATgACACAgTCT-3’ (配列番号28)
【0103】
ハーセプチン-V
L-3BamHI (30mer) (アンチセンス)
5’-CgCggATTCCTTgATCTCgACCTTggTgCC-3’ (配列番号29)
【0104】
実施例3:ハーセプチン/CHO+GFP/−dhfr細胞系統の確立
CHO
/+GFP/−dhfr細胞をPBS緩衝液中に懸濁させた。40μgの直鎖状プラスミド(pScinoDP9mir−Herceptin−DHFR)のDNAを前記細胞に加えて、氷上で10分間インキュベートした。細胞を次いで、電圧設定750Vおよび電気容量25μF(電気容量拡張機能を伴うGene Pulser II、および、Bio−Radのパルスコントローラー)にて電気泳動した。電気泳動した細胞をT−175フラスコ中に撒き、25mLの培地(HT、10%のFBS、2μMのMTXおよび5μg/mlのピューロマイシン二塩酸塩を添加したIMDM)と共に24時間置いた。次いで細胞を、800μg/mlのG418硫酸塩(Calbiochem、Cat#345810)を用いて、10%のD−FBS(Gibco、Cat.No.30067−334)および5μg/mlのピューロマイシン二塩酸塩を添加した最小必要培地α培地(Alpha−MEM、Gibco、Cat.No.12000)中で選択した。10%のD−FBSおよび選択的抗生物質を添加したα−MEM培地中での選択の14日後、遺伝子増幅のため、濃度を増加させながらのMTX処理に細胞を供した。
【0105】
細胞をFACSで選別し、低GFP蛍光強度を示す細胞をスクリーニングした。標的遺伝子およびshRNAGFPの発現がCHO
+GFP/−dhfr細胞中でのGFP生産の低減を引き起こすため、緑色蛍光が最も少ない細胞(GFPネガティブ)が、最も高い標的遺伝子の発現を有する。FACSは、Summitソフトウェア、488nmにおけるレーザーエミッティング、および、選別のための細胞配置単位を装備したMoFlo
TM XDP(Beckman Coulter)を用いて行った。
【0106】
FACSを用いて、10%のD−FBS、G418、ピューロマイシン二塩酸塩およびMTXを添加した220μlのα−MEMを含む96穴ウェルの細胞培養プレート中へと単細胞を配置することにより、低蛍光および高蛍光の細胞群を選別した。クローンを、加湿されたインキュベーター中で12日間、37℃および5%の二酸化炭素にて、インキュベートした。
【0107】
実施例4:ハーセプチン−CHO
+GFP/−dhfr細胞系統の特性決定
(1)免疫染色による表面抗体の検出
トリプシン処理したハーセプチン−CHO
+GFP/−dhfr細胞を、5分間、200 rpmで遠心分離した。細胞をPBSで2回洗浄し、PBS中に再懸濁して最終濃度約1×10
7細胞/mlとした。細胞を次いで、製造者の推奨に従う濃度のフィコエリトリン(PE)コンジュゲート抗マウス抗ヒトIgG(Fc)(Beckman Coulter、Cat. No.736007)と共に、4℃、30分間暗所でインキュベートし、PBSで2度洗浄して、FACS分析のため氷上に保管した。
【0108】
(2)ELISAによる分泌抗体の検出
手短に言えば、96穴ウェルプレートを抗ヒトIgG抗体(Sigma:I 1886)を0.05Mの炭酸塩−重炭酸塩緩衝液(pH9.7)で希釈し、4℃にて16時間インキュベートした。プレートをブロッキング緩衝液(10mM Tris、0.15M NaCl、1%スキムミルク、pH8.0)にて、37℃、分間被覆した。培養物の上清をウェルに載せて37℃、2時間インキュベートした。製造者の推奨に従って、希釈緩衝液(10mM Tris、0.15M NaCl、0.05% Tween 20、pH8.0)中に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗ヒトIgG−F(c)抗体(Abcam:ab7499)を37℃、1時間インキュベートした。基質を用いて反応物を検出し(1−stepTM ultra TMB−ELISA、Pierce、Cat.34028)、プレートをマイクロプレートリーダー(Bio−Rad)に載せて読んだ。
【0109】
(3)結果
図8は、FACSを用いた、異なる蛍光強度で選別されたハーセプチン−CHO
+GFP/−dhfr細胞のヒストグラムプロファイルを示す。パネルAは、ハーセプチン−CHO
+GFP/−dhfr細胞のプールにおけるGFP蛍光を示す。細胞は、蛍光強度に基づいていくつかのサブ集団(R2、R3およびR4)に分割された。パネルB−Dは、各サブ集団中でのGFP発現レベルを示す。パネルEは、プールおよび各サブ集団中での抗体ハーセプチン抗体の力価を示す。データは、最も低いGFP蛍光レベルを有する細胞(ハーセプチン/R4/CHO
+GFP/−dhfr)が最も高レベルのハーセプチン力価を有することを示す。
【0110】
図9は、標的タンパク質(ハーセプチン)およびshRNAiGFPを含むDNA構築物でトランスフェクトしたときに、CHO
+GFP/−dhfr細胞中でのGFP発現レベルが低減したことを示す。FACSプロファイルは、2ラウンドのMTXチャレンジ後にはGFPの発現レベルがさらに低減することを示す(パネルCおよびD)。これらの結果は、標的遺伝子の増幅レベルがGFP発現レベルおよび遺伝子増幅の強度と相関することを立証する。
【0111】
図10は、PEコンジュゲートマウス抗ヒトIgG(Fc)で染色したハーセプチン−CHO
+GFP/−dhfr細胞の代表的なFACS分析を示す。結果は、抗体産生細胞(すなわち、より高度にPE染色される細胞)が低レベルのGFP発現を示すことを立証する。
【0112】
図11Aは、ハーセプチン−CHO
+GFP/−dhfr細胞のヒストグラムプロファイルを示す。横軸および影をつけた領域は、単細胞分析に用いた蛍光が低い細胞群と蛍光が高い細胞群を示す。
図11Bは、蛍光が低い18の細胞クローンのうち8つで0.3より大きいELISA値が得られ、一方、蛍光が高い18の細胞のうち2つのみで0.3より大きい値が得られたことを示す。これらの結果は、蛍光の低い細胞群が高収量の抗体産生細胞を高頻度で含むことを立証し、かつ、GFPをベースとするスクリーニング戦略を裏づける。
【0113】
図12は、ハーセプチンおよびshRNA
GFPをコードするDNA構築物をトランスフェクトすることにより、CHO
+GFP/−dhfr細胞中でのGFPの発現が低減することを示す。
【0114】
(4)結論
フローサイトメトリーと組み合わせたshRNAmir
eGFPの使用は、2つの重大な点において、細胞系統の開発の正確性および効率性を実質的に向上させる。第一に、クローンのスクリーニングにおける初期段階では、FACS法は、治療用タンパク質の力価に関して調製培地における分析を行うよりも、クローンの生産性をよりよく予測する判断材料である。第二に、不安定な導入遺伝子発現を伴うクローンは、増幅ステージの間、蛍光の増加が観察されることにより容易に識別される。すなわち、本発明の方法は、さらなる開発、および、従来の方法よりも初期のステージで不安定なクローンを除去することに関し良い候補を同定するための、正確な96ウェルのクローンスクリーニングにおける新たな利点を提供する。
【0115】
これらの結果は、本発明のDNA構築物およびスクリーニング方法が、高発現のクローンの均質なタンパク質調製物を確実に取得できることを立証する。組み換え抗体の高収率な発現が可能な哺乳類細胞系統の単離は複数の個々のクローンを限界希釈法によりスクリーニングすることによって行われていないため、本手法は、必要な労働力がより少なくてすみ、バイオ生産のためのクローンを生産するのに要する時間を顕著に低減させることができる。本手法は、クローン選択のための付加的な試薬を必要とせず、ゲノムの安定性をモニターするための付加的な利益を提案する。また、標的遺伝子の発現レベルは、増幅遺伝子の強度との相関関係がより高い。2シストロン性の設計は、2つの外来遺伝子が同一の染色体内で同調発現することを可能にする。前記の阻害的アプローチは、レポーター遺伝子の増幅強度を低減することにより、標的遺伝子の増幅強度を促進する。AREの使用は、異なる染色体領域への外来遺伝子の挿入を阻害することにより引き起こされる差異をなくすことによって、外来組み換えタンパク質の発現を増大させる。