特許第5797204号(P5797204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5797204透明シート用エポキシ樹脂組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797204
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】透明シート用エポキシ樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20151001BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C08G59/42
   C08J5/24CFC
【請求項の数】17
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2012-544250(P2012-544250)
(86)(22)【出願日】2011年11月15日
(86)【国際出願番号】JP2011076250
(87)【国際公開番号】WO2012067092
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年6月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-256578(P2010-256578)
(32)【優先日】2010年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-276139(P2010-276139)
(32)【優先日】2010年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-19726(P2011-19726)
(32)【優先日】2011年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清柳 典子
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
(72)【発明者】
【氏名】川田 義浩
(72)【発明者】
【氏名】市川 淳子
(72)【発明者】
【氏名】栗橋 透
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−114390(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第01418801(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59
C08J 5
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される多価カルボン酸(A)と、
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、もしくはカルボキシル基を表し、qは置換基Rの数を表し、1〜4の整数である。Pは下記x、y及びzのいずれかである)
【化2】
(式中、Rは1つの環当たり複数存在してもよく、それぞれ独立して、水素原子、もしくはメチル基を表す。*は酸素原子との結合部分である)
y. 炭素数6〜20の鎖状アルキレンリンカーであって、炭素数3以上の主鎖を有し、少なくとも1箇所がアルキル基で置換されているもの、
【化3】
(式中、Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、もしくはカルボキシル基を表す。4つの*のうち2つは酸素原子との結合部分であり、残りの2つには水酸基が結合している
分子内に脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂(B)と、
を含む光学シート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
多価カルボン酸(A)のPがxである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
多価カルボン酸(A)のRが全て水素原子である請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
多価カルボン酸(A)が、トリシクロデカンジメタノール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールから選ばれる少なくとも1種の架橋多環ジオールと、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種の酸無水物との反応物である請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
多価カルボン酸(A)中のPがyである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
多価カルボン酸(A)中のPの主鎖の2箇所以上がアルキル基で置換されており、かつ該アルキル基の少なくとも1つが炭素数2〜10であることを特徴とする請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
多価カルボン酸(A)が、少なくとも1箇所がアルキル基で置換されている炭素数1〜20の鎖状アルキレンを持つ鎖状ジオール化合物と、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種の酸無水物との反応物であることを特徴とする請求項5又は6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
多価カルボン酸(A)中のPがzである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
がメチル基である請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
一般式(IV);
【化4】


(式中、複数存在するRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基もしくはカルボキシル基を表す。)で表される化合物と、
下記一般式(V);
【化5】


(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、もしくはカルボキシル基を表し、qは置換基Rの数を表し、1〜4の整数である。)で表される化合物とを反応させて得られる多価カルボン酸(A−z)と、
分子内に脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂(B)と、
を含む光学シート用エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
分子内に脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂(B)が、一般式(II)で表される化合物である請求項1または10に記載の樹脂組成物;
【化6】
(Rはアルコキシ基、mは平均値であって1〜20の正数であり、nは1〜10の整数である。)
【請求項12】
更に、分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族多官能エポキシ樹脂(C)を含む請求項1または10に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族多官能エポキシ樹脂(C)が、一般式(III)で表される化合物である請求項12に記載の樹脂組成物;
【化7】
(式中、nは1〜2の正数である。)
【請求項14】
更に、脂肪族環状構造をもつエポキシ樹脂(B)及び分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族多官能エポキシ樹脂(C)以外のエポキシ樹脂(D)、並びに酸無水物を含む請求項12又は13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1、10、11、12及び13のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化して得られる、25℃での屈折率が1.50以上である硬化物。
【請求項16】
請求項1、10、11、12及び13のいずれか一項に記載の樹脂組成物をガラスクロスに含浸させ、硬化して得られる、25℃での屈折率が1.51以上である硬化物。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の硬化物を用いる光学シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明シートに用いるエポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関する。さらに詳しくは、透明性、耐熱性、強度、平滑性、及び耐光性に優れた光学シートに適したエポキシ樹脂組成物及びその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物は、耐熱性に優れた樹脂として、建築、土木、自動車、航空機などの分野で利用されている。半導体関連材料の分野においても、電子機器に使用されるエポキシ樹脂には非常に高い特性が求められており、また近年ではオプトエレクトロニクス関連分野における利用が注目されている。
【0003】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、携帯機器などの表示装置は一般消費者に普及し、大型化、軽量化、薄型化すると共に、曲面での表示や立体表示などの要求が高まっている。このような装置の表示素子や前面パネル等の光学部材には、透明性、硬度、耐薬品性、ガスバリア性など様々な要求を満たすためにガラス板が広く用いられている。しかしながらガラス板は割れやすく、重いという問題があり、この問題を解決するためガラス板の代替としてエポキシ樹脂等のプラスチック素材が検討され、種々の提案がされている。
【0004】
例えば特許文献1には、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤及びアルコールを用いた液晶表示素子用透明樹脂基板が記載されている。また特許文献2や特許文献3には、ガラスクロスと熱硬化性樹脂を用いた透明基板が、特許文献4には、ガラス繊維製布状体と無機粒子を含む樹脂硬化層を用いた樹脂シートが記載されている。
【0005】
これらをはじめとするガラス代替プラスチック材料は、その製造工程において、硬化時の収縮によって反りや割れが発生しやすく、平滑なシートを得ることが難しい。またガラス代替プラスチック材料は、ガラス板に比べて線膨張係数が大きいため、その使用時においても膨張や収縮によって問題が発生することがある上、色、耐熱性、耐光性、硬度など、ガラスの代替品として市場で求められているような十分な性能は得られていない。上記文献で提案されている方法においても、色については十分とは言えず、特に屈折率を高めにしたものについては、400nm付近の低波長での透過率が低めの値になっているものが多く、黄色などの着色がみられることがわかる。光学用途に用いる場合には、400nm付近の透過率が高いものが求められる。例えば、特許文献2及び3で提案されている方法においては、400nmの可視光線の透過率が90%未満である。特許文献4で提案されている方法においては、550nmの可視光線の透過率ではあるが、やはり90%未満である。
【0006】
製造時の反りや割れ、使用時の膨張や収縮などの問題は、ガラスクロスや無機フィラーを併用することにより改良される。ただし、透明性を得るためには、ガラスクロスや無機フィラー等と樹脂との屈折率を合わせる必要があるため、使用できる材料が限定され、他の物性を満足させることが難しくなる。
【0007】
一般にこのような分野で用いられるエポキシ樹脂の硬化剤としては、酸無水物系の化合物が挙げられる。特に飽和炭化水素で形成された酸無水物は、硬化物が耐光性に優れることから、利用されることが多い。これら酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式酸無水物が一般的であり、中でも常温で液状であるメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が取扱いの容易さから主に使用されている。
【0008】
しかしながら上記脂環式酸無水物は蒸気圧が高いため、これらをエポキシ樹脂の硬化剤として用いて開放系で熱硬化させる際には、このもの自体が大気中に揮発することにより、大気への有害物質の放出による環境汚染、人体への悪影響のみならず、生産ラインの汚染、硬化物中に所定量のカルボン酸無水物(硬化剤)が存在しないことに起因するエポキシ樹脂組成物の硬化不良が起こるという問題がある。また、硬化条件によってその特性が大幅に変わってしまい、安定して目的とした性能を有する硬化物を得ることが困難である。
【0009】
特に光学用途では透明なシートを得るために、ガラスクロスなどの無機物と樹脂との屈折率を合わせる必要があるが、硬化時に樹脂中の硬化剤が多量に揮発すると、目的の屈折率が得られず、透明性が不良になるという致命的な問題が発生する。
【0010】
いずれにしても、ガラスに代替し得る透明性と、硬化時の収縮の低減、色、耐熱性、耐光性、硬度、平滑性などの条件を兼ね備えることは難しく、すべてを満足できるものは得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−337408号公報
【特許文献2】特開2004−233851号公報
【特許文献3】特開2004−269727号公報
【特許文献4】特開2005−156840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、携帯機器などの表示装置や太陽電池などに使用可能な光学シートの製造に適したエポキシ樹脂組成物、及び透明性、耐熱性、強度、耐光性、平滑性などに優れたその硬化物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の組成を有するエポキシ樹脂組成物及びその硬化物が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
即ち、本発明は、
(1)一般式(I)で表される多価カルボン酸(A)と、
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、もしくはカルボキシル基を表し、qは置換基Rの数を表し、1〜4の整数である。Pは下記x、y及びzのいずれかである)
【0017】
【化2】
(式中、Rは1つの環当たり複数存在してもよく、それぞれ独立して、水素原子、もしくはメチル基を表す。*は酸素原子との結合部分である)
【0018】
y. 炭素数6〜20の鎖状アルキレンリンカーであって、炭素数3以上の主鎖を有し、少なくとも1箇所がアルキル基で置換されているもの、
【0019】
【化3】
(式中、Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、もしくはカルボキシル基を表す。*は酸素原子との結合部分である)
分子内に脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂(B)と、
を含む光学シート用エポキシ樹脂組成物、
【0020】
(x−1)多価カルボン酸(A)のPがxである(1)に記載の樹脂組成物、
(x−2)多価カルボン酸(A)のRが全て水素原子である(x−1)に記載の樹脂組成物、
(x−3)多価カルボン酸(A)の全てのRの50モル%以上がメチル基及び/又はカルボキシル基である(x−2)に記載の樹脂組成物、
(x−4)多価カルボン酸(A)が、トリシクロデカンジメタノール及びペンタシクロペンタデカンジメタノールから選ばれる少なくとも1種の架橋多環ジオールと、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種の酸無水物との反応物である(x−1)ないし(x−3)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
(y−1)多価カルボン酸(A)中のPがyである(1)に記載の樹脂組成物、
(y−2)多価カルボン酸(A)中のPの主鎖の2箇所以上がアルキル基で置換されており、かつ該アルキル基の少なくとも1つが炭素数2〜10であることを特徴とする(y−1)に記載の樹脂組成物、
(y−3)多価カルボン酸(A)が、少なくとも1箇所がアルキル基で置換されている炭素数1〜20の鎖状アルキレンを持つ鎖状ジオール化合物と、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種の酸無水物との反応物であることを特徴とする(y−1)又は(y−2)に記載の樹脂組成物、
(z−1)多価カルボン酸(A)中のPがzである(1)に記載の樹脂組成物、
(z−2)Rがメチル基である(z−1)に記載の樹脂組成物、
(2)分子内に脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂(B)が、一般式(II)で表される化合物である(1)に記載の樹脂組成物、
【0021】
【化4】
【0022】
(Rはアルコキシ基、mは平均値であって1〜20の正数であり、nは1〜10の整数である。)
(3)更に、分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族多官能エポキシ樹脂(C)を含む(1)に記載の樹脂組成物、
(4)分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族多官能エポキシ樹脂(C)が、一般式(III)で表される化合物である(3)に記載の樹脂組成物;
【0023】
【化5】
【0024】
(式中、nは1〜2の正数である。)、
(5)更に、脂肪族環状構造をもつエポキシ樹脂(B)及び分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族多官能エポキシ樹脂(C)以外のエポキシ樹脂(D)、並びに酸無水物を含む(1)、(2)、(3)又は(4)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、
(6)(1)、(2)、(3)又は(4)のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化して得られる、25℃での屈折率が1.50以上である硬化物、
(7)(1)、(2)、(3)又は(4)のいずれか一項に記載の樹脂組成物をガラスクロスに含浸させ、硬化して得られる、25℃での屈折率が1.51以上である硬化物、
(8)(6)又は(7)に記載の硬化物を用いる光学シート、
に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の光学シート用エポキシ樹脂組成物(以下、エポキシ樹脂組成物と称す)は安定性が良好で、その硬化物は、透明性、耐熱性、強度、平滑性、及び耐光性に優れている。そのため、特に液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、携帯機器などの表示装置や太陽電池などに用いる光学シートに適している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明において用いられる多価カルボン酸(A)は、下記一般式(I)で表される。
【0027】
【化6】
【0028】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、もしくはカルボキシル基を表し、qは置換基Rの数を表し、1〜4の整数である。Pは下記x、y及びzのいずれかである)
【0029】
【化7】
(式中、Rは1つの環当たり複数存在してもよく、それぞれ独立して、水素原子、もしくはメチル基を表す。*は酸素原子との結合部分である)
【0030】
y. 炭素数6〜20の鎖状アルキレンリンカーであって、炭素数3以上の主鎖を有し、少なくとも1箇所がアルキル基で置換されているもの、
【0031】
【化8】
(式中、Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基もしくはカルボキシル基を表す。*は酸素原子との結合部分である)
【0032】
なお、前記多価カルボン酸(A)は、後述する製法により得られるが、以下の説明において便宜上、前記一般式(I)で表される単一若しくは2種以上の多価カルボン酸の混合物も含む。
【0033】
前記一般式(I)において、Pがxである多価カルボン酸(A)(以下、説明の便宜上、このようなカルボン酸を多価カルボン酸(A−x)という)の製法につき説明する。
前記多価カルボン酸(A−x)は、酸無水物と架橋多環ジオール類との付加反応により製造される。酸無水物としては、シクロヘキサン構造を有するアルキル置換あるいはカルボキシル基置換、もしくは無置換の酸無水物構造を分子内に1つ以上有する多価カルボン酸無水物であり、具体的には1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物などが挙げられるがこれに限らず、また、2種類以上を混合して用いてもよい。本発明においては特に光学特性を重視することから1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物の使用が好ましく、特に耐熱性と取り扱いのバランスから、両者を混合して使用することが好ましい。
【0034】
前記において、架橋多環ジオール類としては、下記一般式(VI)で表されるトリシクロデカン構造、ペンタシクロペンタデカン構造を主骨格とするジオール類等が挙げられる。これらジオール類は1種又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0035】
【化9】
【0036】
(式中、Rは1つの環当たり複数存在してもよく、それぞれ独立して、水素原子、もしくはメチル基を表す。)
【0037】
具体的にはトリシクロデカンジメタノール、メチルトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールなどが挙げられる。硬化物に高い耐熱性が求められる場合はトリシクロデカンジメタノールの使用が好ましい。
【0038】
酸無水物と架橋多環ジオール類の反応は、一般に酸や塩基を触媒とする付加反応であるが、着色の原因となることから、本発明においては特に無触媒での反応が好ましい。
【0039】
触媒を用いる場合、使用できる触媒としては、例えば塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等の酸性化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物;ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等の複素環式化合物;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種等の複素環式化合物類;及び、それら複素環式化合物類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのテトラフェニルボレート、フェノールノボラック等の塩類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルプロピルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルセチルアンモニウムヒドロキシド、トリオクチルメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムアセテート、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類やホスホニウム化合物、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト、カルボン酸金属塩(2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸などの亜鉛塩、スズ塩、ジルコニウム塩)やリン酸エステル金属(オクチルリン酸、ステアリルリン酸等の亜鉛塩)、アルコキシ金属塩(トリブチルアルミニウム、テトラプロピルジルコニウム等)、アセチルアセトン塩(アセチルアセトンジルコニウムキレート、アセチルアセトンチタンキレート等)等の金属化合物等が挙げられる。
【0040】
なお、多価カルボン酸(A−x)の製造において、本発明のエポキシ樹脂組成物中で使用する触媒、もしくは添加剤等で使用する化合物が本反応における触媒効果を有するものであれば、それらの化合物を使用することが好ましい。具体的には後述するエポキシ樹脂組成物における触媒、添加剤に記載する化合物群であり、特にホスホニウム塩やアンモニウム塩、金属化合物類が着色やその変化の面において好ましい。
【0041】
触媒を使用する場合、その使用量に特に制限はないが、原料の総質量100質量部に対して、通常0.001〜5質量部を必要により使用するのが好ましい。
【0042】
本反応においては無溶剤での反応が好ましいが、有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤の使用量としては、反応基質である酸無水物と架橋多環ジオール類の総量1に対し、質量比で0.005〜1であり、好ましくは0.005〜0.7、より好ましくは0.005〜0.5(すなわち50質量%以下)である。質量比で1を超える場合、反応の進行が極度に遅くなることから好ましくない。使用できる有機溶剤の具体的な例としてはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、蟻酸メチルなどのエステル化合物などが使用できる。本発明においては、特にエポキシ樹脂組成物をワニスとして使用することが好ましいことから、ワニスで使用する溶剤、具体的にはトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を用いることが好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物をワニスとして使用する場合、反応終了後、溶剤の除去等無しにそのまま使用することができ、生産性を鑑みると好ましい。
【0043】
本反応は20℃程度の温度でも十分に反応は進行するが、反応時間の調整の問題から、反応温度は30〜150℃が好ましく、特に好ましくは40〜120℃である。特に本反応を無溶剤で行う場合は、酸無水物の揮発があるため、100℃以下での反応が好ましく、30〜100℃での反応が特に好ましい。反応温度が、例えば150℃以上の高温である場合、生成した反応物が脱水、脱アルコール等により酸無水物化等を起こし、繋がる、もしくは閉環してしまう可能性があることから好ましくない。またカルボン酸の着色が生じる可能性があることから前記の温度範囲での反応が好ましい。
【0044】
酸無水物と架橋多環ジオール類との反応比率は、理論的には等モルでの反応が好ましいが、必要に応じて変更可能である。すなわち、多価カルボン酸(A)の製造時に過剰の酸無水物中で反応を行った場合には、反応が終了した時点で多価カルボン酸(A)と過剰の酸無水物とが共存した混合物となる。本発明においては、本発明の硬化物のガラス転移点(Tg)の調整のために、前記多価カルボン酸(A)の原料の酸無水物を過剰に使用して、本発明のエポキシ樹脂組成物にこの過剰の酸無水物をそのまま用いてもよい。過剰の酸無水物をそのまま本発明のエポキシ樹脂組成物に用いた場合の本発明の硬化物のガラス転移点(Tg)は、過剰の酸無水物を用いない本発明の硬化物のガラス転移点(Tg)よりも高くなる。
【0045】
具体的な反応比率としては、その官能基当量で比較し、酸無水物を1とした場合、そのモル比で架橋多環ジオール類が0.001〜2、より好ましくは0.01〜1.5、さらに好ましくは0.01〜1.1である。酸無水物を残す場合、得られる多価カルボン酸(A)の粘度や揮発性、前記した硬化物のガラス転移点(Tg)を考慮すると、架橋多環ジオール類は0.01〜0.7、さらには0.01〜0.5の範囲で使用することが好ましい。
【0046】
反応時間は、反応温度、触媒量等にもよるが、工業生産という観点から、長時間の反応は多大なエネルギーを消費することになるため好ましくはない。また短すぎる反応時間は、その反応が急激であることを意味し、安全性の面から好ましくない。好ましい範囲としては1〜48時間、好ましくは1〜36時間、さらに好ましくは1〜24時間である。
【0047】
触媒を用いた場合には、反応終了後、それぞれ中和、水洗、吸着などによって触媒の除去を行い、溶剤を留去することで目的とする多価カルボン酸(A−x)が得られる。また無触媒での反応においては、必要に応じて溶剤を留去して、さらに無溶剤、無触媒の場合にはそのまま、本発明のエポキシ樹脂組成物に使用することができる。
【0048】
酸無水物を本発明のエポキシ樹脂組成物において用いる場合は、酸無水物と架橋多環ジオール類との反応比率を理論的に等モルで反応させた後に、酸無水物を混合することでも、また、多価カルボン酸(A−x)の製造時に酸無水物を過剰に使用して酸無水物を残すことでもよい。反応後に混合する酸無水物としては、その構造に芳香環を有さず飽和環構造を有する酸無水物を使用する。具体的にはヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物などが挙げられる。本発明においては、これら酸無水物のうち、耐熱性、耐光性を考慮すると、特にメチルヘキサヒドロフタル酸無水物又はシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物が好ましい。これら混合される酸無水物は2種以上を用いてもよい。
このように、酸無水物を過剰に配合し、式(I)の化合物に加え、余剰の酸無水物を利用する手法は、下記、多価カルボン酸(A−y)においても同様に適応できる。
【0049】
次に前記一般式(I)において、Pがyである多価カルボン酸(A)(以下、説明の便宜上、このようなカルボン酸を多価カルボン酸(A−y)という)につき説明する。
【0050】
前記式(I)において、Pで表される鎖状アルキレンリンカーは、下記するように原料として使用するジオールの2個のアルコール性水酸基が結合しているアルキレンを主鎖とし、該アルキレンの少なくとも1箇所以上がアルキル基で置換されているもの、さらには2箇所以上がアルキル基で置換されているものが好ましい。該アルキル基の炭素数に特に制限はないが、炭素数2〜10のアルキル基が好ましい。鎖状アルキレンリンカーが2箇所以上で置換されている場合、置換するアルキル基のうち少なくとも一つは炭素数2〜10であることが好ましい。該アルキル基は、主鎖を構成するいずれの炭素原子を置換していてもよく、例えばアルコール性水酸基が結合している炭素を置換している場合も含む。このような鎖状アルキレンリンカーの具体例を下記に示す。
【0051】
【化10】
【0052】
(前記式中、*で鎖状アルキレンリンカーは式(I)の酸素原子と結合する。)
【0053】
多価カルボン酸(A−y)は、酸無水物と鎖状ジオール化合物の付加反応により製造される。酸無水物としては、置換基を有していてもよいシクロヘキサン構造を分子内に1つ以上有する多価カルボン酸無水物である。シクロヘキサン構造が有しうる置換基Rはそれぞれ独立してアルキル基、もしくはカルボキシル基である。
【0054】
酸無水物としては具体的には前記多価カルボン酸(A−x)の製造におけるのと同様の化合物が例示できる。
【0055】
前記鎖状ジオール化合物としては、前述の鎖状アルキレンリンカーを主骨格とするジオールである。具体的には前記鎖状アルキレンリンカーの具体例において、*がヒドロキシル基である化合物が挙げられる。このような骨格の中で特に好ましい構造としては2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0056】
酸無水物と鎖状ジオール化合物の反応は、一般に酸や塩基を触媒とする付加反応であるが、本発明においては特に無触媒での反応が好ましい。触媒を用いる場合、使用できる触媒としては前記多価カルボン酸(A−x)の製造におけるものと同様の化合物が例示でき、これらの中で、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンが好ましい。
触媒の使用量に制限はないが、原料の総質量100質量部に対して、通常0.001〜5質量部必要により使用することが好ましい。
【0057】
多価カルボン酸(A−y)を製造する場合、多価カルボン酸(A−x)の製法に準じ、架橋多環ジオール類の代わりに鎖状ジオール化合物を使用すればよいが、反応温度は40〜200℃が好ましく、特に好ましくは40〜150℃である。特に本反応を無溶剤で行う場合は、酸無水物の揮発があるため、100℃以下での反応が好ましく、40〜100℃での反応が特に好ましい。
また、酸無水物と鎖状ジオール化合物の具体的な反応比率としてはその官能基当量で比較し、酸無水物を1とした場合、そのモル比で鎖状ジオール化合物が0.001〜2、より好ましくは0.01〜1.5、さらに好ましくは0.01〜1.1である。酸無水物残す場合、0.01〜0.7、さらに好ましくは0.01〜0.5の範囲で使用することが好ましい。
【0058】
触媒を用いた場合には、反応終了後、それぞれ中和、水洗、吸着などによって触媒の除去を行い、溶剤を留去することで目的とする多価カルボン酸(A−y)が得られる。
【0059】
最も好適な製造方法としては、酸無水物、鎖状ジオール化合物を無触媒、無溶剤の条件下、40〜150℃で反応させ、反応終了後、多価カルボン酸(A−y)を取り出すという手法である。
【0060】
このようにして得られる本発明で使用する多価カルボン酸(A−y)は前記式(I)の構造を有し、通常、無色〜淡黄色の固形の樹脂状を示す(場合によっては結晶化する)。また、過剰の酸無水物中で反応させた場合は液状である場合が多い。
【0061】
なお、多価カルボン酸(A−x)及び(A−y)において、前記一般式(I)における置換基Rの全てが水素原子の場合、硬化時の着色が見られ、特に厳しい光学用途には好適ではないため、置換基Rのうち少なくとも一つはアルキル基又はカルボキシル基であることが好ましい。また、置換基Rはアルキル基又はカルボキシル基の何れかだけでなく、アルキル基及びカルボキシル基であってもよい。置換基Rのアルキル基の炭素数は1〜15、好ましくは1〜6であり、直鎖、分岐鎖又は環構造いずれの構造のものであってもよい。置換基Rのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられるが、好ましくはメチル基である。
【0062】
置換基を有する多価カルボン酸(A−x)及び(A−y)は、大幅にその光学特性が向上するため、全てのRのうち少なくとも50モル%がアルキル基又はカルボキシル基、又はアルキル基及びカルボキシル基で置換された多価カルボン酸(A)が好ましい。さらに好ましくは70モル%以上が置換された多価カルボン酸(A−x)及び(A−y)であり、最も好ましくは90モル%以上が置換された多価カルボン酸(A−x)及び(A−y)である。なお、Rのアルキル基又はカルボキシル基、又はアルキル基及びカルボキシル基による置換割合は、多価カルボン酸(A−x)及び(A−y)の原料の酸無水物の仕込み量で調整することができる。また、置換割合の測定はNMRなど既知の分析方法によって可能である。
【0063】
次に前記一般式(I)において、Pがzである多価カルボン酸(A)(以下、説明の便宜上、このようなカルボン酸を多価カルボン酸(A−z)という)につき説明する。
【0064】
多価カルボン酸(A−z)は、酸無水物とビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルとの反応により得られる。ビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルとしては、分子内にエーテル結合を有するテトラオール化合物であれば特に限定はされないが、具体的には下記一般式(IV);
【0065】
【化11】
【0066】
(式中、複数存在するRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15のアルキル基もしくはカルボキシル基を表す。)で示される構造が好ましく、本発明においては、置換基Rが直鎖、分岐鎖、及び環状の炭素数1〜15のアルキル基であることが好ましく、直鎖、分岐鎖、及び環状の炭素数1〜6のアルキル基であることが特に好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、であり、中でもメチル基であることが好ましい。
【0067】
このような構造の化合物は、アルデヒド化合物とホルムアルデヒドの交差のアルドール−カニッツァロ反応により合成されるトリオール化合物を二量化することにより製造できる。具体的には2,2’−ビス(ジメチロール)ジプロピルエーテル、2,2’−ビス(ジメチロール)ジエチルエーテル、2,2’−ビス(ジメチロール)ジブチルエーテル、2,2’−ビス(ジメチロール)ジペンチルエーテル、2,2’−ビス(ジメチロール)ジヘキシルエーテルなどが挙げられる。
【0068】
多価カルボン酸(A−z)の製造において好ましく用いられる酸無水物は、下記一般式(V)
【0069】
【化12】
【0070】
(式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、もしくはカルボキシル基を表し、qは置換基Rの数を表し、1〜4の整数である。)で表される化合物であって、置換基Rは一つ又は二つ以上であってよく、複数ある場合は水素原子、カルボキシル基もしくは炭素数1〜15のアルキル基のいずれか一種以上、又は水素原子、カルボキシル基及び炭素数1〜15のアルキル基のいずれもとりうる。ここで、炭素数1〜15のアルキル基は、置換基Rにおける炭素数1〜15のアルキル基と同様のものが例示できる。置換基Rはカルボキシル基又は炭素数1〜15のアルキル基であることが好ましい。置換基Rとしてカルボキシル基をとる場合は、qが1である化合物が好ましい。置換基Rとして炭素数1〜15のアルキル基をとる場合は、qが1である化合物が好ましい。前記酸無水物としては、具体的にはヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物などが挙げられる。中でも1,3,4−シクロヘキサントリカルボン酸−3,4−無水物、及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。該酸無水物は一種又は二種以上を用いてもよい。
【0071】
酸無水物とビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルの反応は、一般に酸や塩基を触媒とする付加反応であるが、本発明においては無触媒での反応が好ましい。触媒を用いる場合、使用できる触媒としては前記多価カルボン酸(A−x)の製造におけるのと同様の化合物が例示でき、これらの中で、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンが好ましい。
触媒の使用量に制限はないが、原料の総質量100質量部に対して、通常0.001〜5質量部必要により使用することが好ましい。
【0072】
多価カルボン酸(A−z)を製造する場合も、多価カルボン酸(A−y)の場合と同様に多価カルボン酸(A−x)の製法に準じ、架橋多環ジオール類の代わりにビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルを使用すればよいが、反応温度は40〜200℃が好ましく、特に好ましくは40〜150℃である。特に本反応を無溶剤で行う場合は、酸無水物の揮発があるため、100℃以下での反応が好ましく、40〜100℃での反応が特に好ましい。
【0073】
酸無水物とビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルとの反応比率は、理論的には等モルでの反応が好ましいが、必要に応じて変更可能である。具体的な反応比率としてはその官能基当量で比較し、酸無水物を1とした場合、そのモル比でビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルが0.001〜2、より好ましくは0.01〜1.5、さらに好ましくは0.01〜1.1である。なお、後述する硬化剤として、さらに他の酸無水物、又は液状カルボン酸を使用する場合、酸無水物とビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルとの反応比率を理論的に等モルで反応させて多価カルボン酸(A−z)を得た後に、他の酸無水物又は後述する液状カルボン酸を混合して用いる。多価カルボン酸(A−z)は他の硬化剤との混合物として用いることが好ましい。固形で多価カルボン酸樹脂(A−z)を得た場合は、150℃以下の温度で酸無水物又は液状カルボン酸と混合し、相溶させて使用することが好ましい。
【0074】
触媒を用いた場合には、反応終了後、それぞれ中和、水洗、吸着などによって触媒の除去を行い、溶剤を留去することで目的とする多価カルボン酸(A−z)が得られる。また無触媒での反応においては、必要に応じて溶剤を留去し、さらに無溶剤、無触媒の場合はそのまま取り出すことで、使用することができる。
【0075】
最も好適な製造方法としては、酸無水物、ビス(ジメチロール)ジアルキルエーテルを無触媒、無溶剤の条件下、40〜150℃で反応させるものである。
【0076】
このようにして得られる多価カルボン酸(A−z)は、前記一般式(I)の構造を有し、通常、無色〜淡黄色の固形の樹脂状を示す(場合によっては結晶化する)。また、過剰の酸無水物中で反応させた場合、その形状は液状を示す場合が多い。
【0077】
本発明のエポキシ樹脂は、多価カルボン酸(A)の他に、分子内に脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂(B)を含有し、多価カルボン酸(A)は、エポキシ樹脂(B)の硬化剤として作用する。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂の硬化剤として、多価カルボン酸(A)以外に、酸無水物を用いる場合、多価カルボン酸(A)と酸無水物の全体を100質量%とすると、多価カルボン酸(A)の割合は、通常20〜100質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜75質量%である。前記したように、多価カルボン酸(A)製造時の余剰の酸無水物を利用する場合、余剰酸無水物の量が前記範囲となる程度に調整することが好ましい。
【0078】
分子内に脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂(B)について説明する。分子内に脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂(B)としては、例えばテルペンジフェノールや、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と脂肪族環構造ジエン(ジシクロペンタジエンやノルボルナジエン、ヘキサヒドロキシインデン等)との重縮合物及びこれらの変性物から誘導されるグリシジルエーテル化物、水添ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF)型樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、分子内にシクロヘキシル構造、ジシクロペンタジエン構造をもつ化合物の他、トリグリジジルイソシアヌレート構造をもつ化合物等が挙げられるが、本発明においては脂環式エポキシ樹脂の使用が好ましく、また常温で固体の化合物が好ましい。
【0079】
中でも本発明の用途には、一般式(II)で表される化合物が特に好ましい。
【0080】
【化13】
【0081】
(Rはアルコキシ基、mは平均値であって1〜20の正数であり、nは1〜10の整数である。)
一般式(II)においてアルコキシ基の炭素鎖は、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖、及び環状であり、好ましくは炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖、及び環状であり、さらに好ましくは炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖、及び環状である。Rは具体的にはメトキシ基、エポキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ヘキソキシ基、等の一価のアルコールの残基、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールの残基、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等の多価アルコールの残基が挙げられる。一般式(II)において、mは前記のとおり平均値であって1〜20の正数であるが、好ましくは1〜10の正数、さらに好ましくは1〜6の正数である。nは1〜10の整数であるが、好ましくは1〜5の整数である。
【0082】
一般式(II)で表される化合物は、アルコールとビニル基を有するエポキシシクロヘキセンとの開環重合によって得られたポリオレフィンを酸化によりエポキシ化することで得られる。一般式(II)で表される化合物の原料であるアルコールは、一価アルコール又は多価アルコールのいずれでも用いられるが、本発明においては多価アルコールが好ましく、中でもトリメチロールアルコール類が好ましい。トリメチロールアルコール類としては、具体的にはグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタン等が挙げられる。一般式(II)で表される化合物は、市場からは例えばEHPE3150(R=トリメチロールプロパン残基、m=4〜5、n=3、ダイセル化学製)、又はEHPE3150と他成分との混合物であるEHPE3150CEが入手可能である。
【0083】
次に、分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族多官能エポキシ樹脂(C)について説明する。エポキシ樹脂(C)としては、芳香族ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などのうち、分子内に3個以上のエポキシ基と芳香環をもつエポキシ樹脂が挙げられる。
【0084】
具体的には、例えばトリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等の多価フェノール類のエポキシ化物が挙げられる。フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、4−(4−ヒドロキシフェニル)アセトフェノン、4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)アセトフェノンとの重縮合物のエポキシ化物、さらに、二官能のエポキシ樹脂もその分子内に含抱されるが、フェノール類と、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物のエポキシ化物なども挙げられる。
【0085】
これらの化合物のうち、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の透明性、耐熱性、耐光性や、硬度を考慮すると、エポキシ樹脂(C)としては、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類とp−ヒドロキシアセトフェノン、4−(4−ヒドロキシフェニル)アセトフェノン、4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)アセトフェノン等との重縮合物などのエポキシ化物が好ましい。なお、高屈折率、耐熱性、強靭性を考慮すると、フェノール類と4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合のエポキシ化物が好ましく,透明性、耐熱性、硬度を考慮すると1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。これらは他の組成の特性を相互に補完するために用いることができ、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の透明性、耐熱性、耐光性や、硬度といった特性のバランスを取るために適宜用いることができる。
【0086】
また、本発明において用いられるエポキシ樹脂(C)は常温で固体のものがより好ましい。本発明においては通常、軟化点が50〜100℃、もしくは融点が50〜190℃であるエポキシ樹脂(C)が使用されるが、軟化点が60〜100℃、もしくは融点が60〜190℃のものが好ましい。また本発明においては、エポキシ当量が130〜500g/eq.のものが通常用いられ得るが、好ましくは150〜400g/eq.のもの、さらに好ましくは170〜300g/eq.のものが用いられる。エポキシ当量が小さすぎると硬く、もろくなりやすい傾向が強く、エポキシ当量が大きすぎる場合、硬度が出にくい、ガラス転移点が低くなるなどの問題が生じ得る。
【0087】
中でも分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族多官能エポキシ樹脂(C)として入手可能なものとしては、TECMORE VG3101L(プリンテック製 n≒1.1)、NC−6000(日本化薬製 n≒1.1)等が挙げられるが、本発明においては、以下の製造法で製造される一般式(III)の化合物が好ましい。
【0088】
【化14】
【0089】
(式中、nは平均値であって、1〜2の正数である)。
【0090】
一般式(III)で表される化合物は、(4−(4−(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)(以下、フェノール化合物(PA1)とする)とエピハロヒドリンとの反応によって得られる。フェノール化合物(PA1)は、例えば特開平05−64935公報に記載の手法で製造することができる。またトリスフェノールPAとして本州化学工業より入手可能である。
【0091】
フェノール化合物(PA1)との反応において使用するエピハロヒドリンとしては、エピクロルヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン、γ−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられ、工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量は、フェノール化合物(PA1)の水酸基1モルに対し通常2〜15モルであり、好ましくは4〜10モルである。余りに過剰のエピハロヒドリンを使用すると生産性が悪いばかりではなく、製造されるエポキシ樹脂の軟化点が低くなり、プリプレグとした場合のタック性等に良い影響を与えない。また、エピハロヒドリンの量が2モル以下であると、nの値が大きくなってしまい製造中にゲル化しやすくなる。
【0092】
上記エポキシ化反応においては、アルカリ金属水酸化物を使用することが好ましい。該アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。なお、アルカリ金属水酸化物を、固形物として利用してもよいし、その水溶液として利用してもよい。例えば、アルカリ金属水酸化物を水溶液として使用する場合においては、アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に、減圧下又は常圧下で連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液して水を除去し、エピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法によりエポキシ化反応を行うことができる。また固形を使用する場合、その取り扱いやすさ、溶解性等の問題からフレーク状の物を使用することが好ましい。アルカリ金属水酸化物の使用量は、フェノール化合物(PA1)の水酸基1モルに対して通常0.90〜1.5モルであり、好ましくは1.01〜1.25モルであり、より好ましくは1.01〜1.15モルである。
【0093】
上記エポキシ化反応においては、反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩や、テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラメチルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルブロマイド等の4級ホスホニウム塩を触媒として添加してもよい。これら4級塩の使用量は、フェノール化合物(PA1)の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
【0094】
上記エポキシ化反応においては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましく、本発明においては、特にその光学特性から、アルコール類及び/又はエーテル類の使用が好ましい。
【0095】
上記アルコール類やエーテル類を使用する場合、その使用量は、エピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50質量%であり、好ましくは4〜20質量%である。一方、上記非プロトン性極性溶媒を用いる場合、その使用量は、エピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100質量%であり、好ましくは10〜80質量%である。
【0096】
上記エポキシ化反応において、反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。一方、反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。本反応は常圧下でも減圧下でも構わず、減圧条件で水−エピハロヒドリンの共沸脱水条件で反応しても構わない。これらのエポキシ化反応の反応物は、水洗後、又は水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去することにより精製され得る。また、更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収した反応物をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて、副生成物の閉環反応を行い、副生成物であるハロヒドリンの閉環を確実なものにすることが好ましい。
【0097】
この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は、エポキシ化に使用したフェノール化合物(PA1)の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モルであり、好ましくは0.05〜0.2モルである。また、反応温度は通常50〜120℃であり、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0098】
上記エポキシ化反応においては、反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明に使用できるエポキシ樹脂を得ることができる。このようにして得られたエポキシ樹脂は一部その溶剤や水によりエポキシ樹脂が付加したものや、閉環しきれずハロゲンが残存するものも含まれる。
【0099】
このようにして得られるエポキシ樹脂であれば特段限定されないが、本発明においては、生産性及び取り扱い性に優れ、さらに硬化物に高い機械的強度を与える以下のいずれかの条件を満たすものが好ましい。
1.エポキシ当量が195〜225g/eq.、好ましくは200〜220g/eq.である。
2.ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおいてフェノール化合物(PA1)同士がエピハロヒドリンによって2つ繋がったものが20面積%以下、3つ繋がったものが15面積%以下、より好ましくは2つ繋がったものが15面積%以下、3つ繋がったものが10面積%以下である。
【0100】
更に、前記脂肪族環状構造をもつエポキシ樹脂(B)、及び分子内に3個以上のエポキシ基を有する芳香族多官能エポキシ樹脂(C)の他に、得られる本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度、密着性や、ガラス転移温度(Tg)、硬度、屈折率等を考慮して、エポキシ樹脂(D)を単独あるいは二種類以上を混合して使用してもよい。
【0101】
エポキシ樹脂(D)としては、前記エポキシ樹脂(B)及びエポキシ樹脂(C)以外の分子内に3個未満のエポキシ基をもつ芳香族エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、又は非芳香族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0102】
具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物の2官能体、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、及び/又はエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形又は液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、多価カルボン酸(A)以外の他の硬化剤を必要に応じて併用しても構わない。併用できる他の硬化剤としては、例えばアミン系化合物、不飽和環構造を有する酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。使用できる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、テルペンとフェノール類の縮合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0104】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、各成分の使用比率は、成分(B)+成分(C)+成分(D)の全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、成分(A)0.5〜1.5当量(カルボン酸を1官能、酸無水物を1官能と考える)が好ましく、特に好ましくは0.5〜1.2当量である。エポキシ基1当量に対して、0.5当量に満たない場合、あるいは1.5当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0105】
さらに、全エポキシ樹脂中の各成分の使用割合は、所望の屈折率やガラス転移温度や硬度や密着性等を考慮して決められるが、成分(B)+成分(C)+成分(D)を100質量部とした場合に、成分(B)の含有量は5〜100質量部、特に好ましくは10〜90質量部である。成分(C)の含有量は0〜70質量部であり、特に好ましくは5〜50質量部である。成分(D)の含有量は0〜70質量部であり、特に好ましくは10〜50質量部である。また、成分(B)+成分(C)+成分(D)の全エポキシ樹脂を混合したものは、常温で固体であるのが好ましい。成分(B)、(C)、(D)の中で、常温で液体の成分を使用する割合は、全エポキシ樹脂100質量部中の30質量部以下であることが好ましい。
【0106】
また、多価カルボン酸(A−z)を使用する場合、他の硬化剤として酸無水物又は液状カルボン酸が好ましく選択できる。この場合の酸無水物としては、その構造に芳香環を有さず飽和環構造を有する酸無水物が好ましく、中でも多価カルボン酸(A−z)の原料として用いられる酸無水物が好ましい。具体的にはヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、及びシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物などが挙げられる。これら酸無水物のうち、本発明においては、耐熱性、耐光性を考慮すると、特にメチルヘキサヒドロフタル酸無水物又はシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物が好ましい。これら酸無水物は2種以上を用いてもよい。
【0107】
また、前記液状カルボン酸とは、二官能以上のカルボン酸であって、25℃で1000Pa・s以下の粘度である液状の多価カルボン酸である。具体的には多価カルボン酸(A)の原料として用いられる酸無水物とカルビノール変性シリコーン化合物との反応物が好ましい。カルビノール変性シリコーン化合物としては、例えば特開2007−508424号公報等に記載の手法を用いて合成できる。市場から入手可能な化合物としてはDow Corning5562(東レ・ダウコーニング製)、X22−160−AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003(いずれも信越化学製)、XF42−B0970(モメンティブ製)、サイラプレーンFM−4411、FM−4421、FM−4425などが挙げられる。本発明においては、特に重量平均分子量500〜10000の化合物が好ましく、より好ましくは600〜6000、特に好ましくは600〜2000である。また最も好ましい範囲としては600〜1500である。
【0108】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、酸無水物又は液状カルボン酸を用いる場合、多価カルボン酸(A−z)と酸無水物又は液状カルボン酸の全体を100質量%とすると、多価カルボン酸(A−z)の割合は、通常20〜100質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜75質量%である。
【0109】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化剤とともに硬化促進剤を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのテトラフェニルボレート、フェノールノボラック等の塩類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラブチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類やホスホニウム化合物、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト、オクチル酸スズ、等の金属化合物等、及びこれら硬化促進剤をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化促進剤等が挙げられる。これら硬化促進剤のどれを用いるかは、例えば透明性、硬化速度、作業条件といった得られる透明樹脂組成物に要求される特性によって適宜選択される。硬化促進剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物中の、全エポキシ樹脂100質量部に対し、通常0.001〜15質量部の範囲で使用される。
【0110】
本発明の用途では、透明性、耐熱性、耐光性、硬化速度などを考慮すると、無触媒もしくは、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらの塩類、トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類やホスホニウム化合物等を使用するのが好ましい。
【0111】
本発明の硬化性樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4’−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類又はリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4’−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)又はリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。難燃性を付与する場合は、リン含有化合物の使用量は、リン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(質量比)が好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0112】
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0113】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が挙げられる。
【0114】
イオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0115】
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが挙げられる。
【0116】
これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。酸化防止剤の使用量は、本発明のエポキシ樹脂組成物100質量部に対して、通常0.008〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部である。また、本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
【0117】
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加してもよい。光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(例えばチヌビン111FDL、チバジャパン製の成分)、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕(例えばチヌビン111FDL、チバジャパン製の成分)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート(例えばチヌビン144、チバジャパン製)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(例えばチヌビン292、チバジャパン製の成分)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(例えばチヌビン292、チバジャパン製の成分)、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(例えばチヌビン123、チバジャパン製の成分)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等が挙げられる。光安定剤は1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されてもよい。
【0118】
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては特に限定はないが、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系等が挙げられ、先に記載した光安定剤と併用することも可能である。
【0119】
ベンゾトリアゾール系(所謂BTZ系)紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(例えばチヌビンPS、チバジャパン製)、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシアルキルエステル(例えばチヌビン99−2、チバジャパン製)、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシアルキルエステル(例えばチヌビン384−2、チバジャパン製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4、6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(例えばチヌビン900、チバジャパン製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(例えばチヌビン928、チバジャパン製)、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコールの反応生成物(例えばチヌビン1130、チバジャパン製)等のベンゾトリアゾール類が挙げられる。
【0120】
ヒドロキシフェニルトリアジン系(所謂HPT系)紫外線吸収剤は、下記一般式で示される構造を有している化合物として示される。
【化15】
(式中、複数存在するRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12の脂肪族又は芳香族の炭化水素基、炭素数1〜4の(ポリ)アルキレンオキシ基、−O−Rを示す。なお、Rは、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子とその他グリシジルエーテル基、カルボキシル基、アクリレート基含有化合物との反応残基を示す。)
【0121】
HPT系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニル, とオキシラン[(アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(例えばチヌビン400、チバジャパン製)、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−2,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物(例えばチヌビン405、チバジャパン製)、2,4−ビス「2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(例えばチヌビン460、チバジャパン製)、プロパン酸−2−[4−[4,6−ビス([1,1‘−ビフェニル]−4−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−3−ヒドロキシフェニル]―,イソオクチルエステル(例えばチヌビン479、チバジャパン製)等のヒドロキシフェニルトリアジン類が挙げられる。これらのうち、経時的な着色性に優れるヒドロキシフェニルトリアジン類が好適に用いられる。
【0122】
特に、プロパン酸−2−[4−[4,6−ビス([1,1‘−ビフェニル]−4−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−3−ヒドロキシフェニル]−イソオクチルエステル(例えばチヌビン479、チバジャパン製)等、Rのうち少なくとも一つが、芳香族炭化水素であるものが優れた効能を示す。
これらのうち、ヒドロキシフェニルトリアジン系(所謂HPT系)紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を合わせて含有すると、さらに耐光性が向上するため好ましい。
【0123】
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、透明性や硬度などの特性を損なわない範囲でブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などの樹脂成分を必要に応じて添加してもよい。
【0124】
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、一次粒径が1〜200ナノメートルの微粒子を添加してもよい。微粒子としては、例えばガラス、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化アンチモン、酸化セレン、酸化イットリウムなどが挙げられ,分散溶媒を含有しない微粉末や溶媒に分散させたコロイド溶液として市場から入手して用いることができる。また、これらを1種又は2種以上を混合して用いることができる。分散溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルジメチルアセトアミドなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの非極性溶媒など、本発明のエポキシ樹脂組成物の各成分が溶解するものを選定して用いればよい。
【0125】
その他、シランカップリング剤、離型剤、レベリング剤、界面活性剤、染料、顔料、無機あるいは有機の光拡散フィラー等も添加することができる。
【0126】
本発明においては、耐熱性、耐光特性を改良する目的で、金属塩を添加することが好ましい。具体的にはカルボン酸金属塩(2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸などの亜鉛塩、スズ塩、ジルコニウム塩)やリン酸エステル金属(オクチルリン酸、ステアリルリン酸等の亜鉛塩)、アルコキシ金属塩(トリブチルアルミニウム、テトラプロピルジルコニウム等)、アセチルアセトン塩(アセチルアセトンジルコニウムキレート、アセチルアセトンチタンキレート等)等の金属化合物等が挙げられる。これらは単独或いは2種以上を用いてもよい。
【0127】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を、従来知られている方法と同様の方法で、均一に混合し、その硬化物とすることができる。例えば、エポキシ樹脂と多価カルボン酸硬化剤並びに必要により硬化促進剤や他の成分とを、必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合して本発明のエポキシ樹脂組成物を得る。本発明のエポキシ樹脂組成物は常温で固体であるため、溶融後、注型、あるいはトランスファー成型機などを用いて成型し、さらに加熱により硬化するという手法が挙げられる。
【0128】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶剤に希釈してワニスとして使用することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は通常、常温で固体であるため、溶剤に希釈して使用するほうが扱いやすく、より好ましい。特にガラスクロスに含浸させて用いる場合は、溶剤による希釈を行う。
【0129】
溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物を使用する際の粘度や乾燥速度などを考慮し、1種あるいは2種以上の混合溶剤として用いることができる。溶剤の使用割合は、使用時の作業性や乾燥速度によるが、本発明のエポキシ樹脂組成物100質量部に対して、通常10〜200質量部、好ましくは15〜100質量部である。
【0130】
溶剤で希釈した本発明のエポキシ樹脂組成物を得る場合も、各成分を常法に従い混合溶解することにより調製することができる。例えば、撹拌装置、温度計のついた丸底フラスコに各成分を仕込み、40〜80℃にて0.5〜6時間撹拌することによりエポキシ樹脂組成物のワニスを得ることができる。この際に、成分(B)+成分(C)+成分(D)のエポキシ樹脂のワニスと、成分(A)+硬化触媒や添加剤のワニスとを別々に調製しておき、使用時に混合する方法が特に好ましい。先に記載したとおり、微粒子を添加する場合には、ホモミキサー、サンドミル等高速撹拌機やマイクロフルイダイザー、三本ロール等、一般に公知の分散方法で処理を行うこともできる。
【0131】
このようにして得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のワニスは、公知の方法で成型し、乾燥した後、さらに加熱することによって硬化させる。例えば、金型に流し込み、加熱乾燥後、硬化させる方法や、バーコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、グラビアコーター、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷など、それ自体公知の方法で金型の代わりとなる金属板や離型フィルム等に塗布し、加熱乾燥後、硬化させる方法、ガラスクロスに含浸させ、加熱乾燥後、硬化させる方法、またガラスや透明プラスチック基材に塗布し、加熱乾燥後、硬化させて基材とともに使用するコーティング剤としての使用方法なども挙げられる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化の際に硬化剤が揮発して膜の成分比が変わって屈折率が変化することがないため、安定した透明な膜を得ることができる。このため、後述する光学シートの製造に適している。また、硬化剤の揮発により硬化膜の表面が荒れたり、硬化膜の物性が変わってしまったりすることもなく、平滑で硬度に優れた膜を得ることができる。
【0132】
本発明のエポキシ樹脂組成物のワニスの乾燥温度は、使用する溶剤や風量にもよるが、通常は60〜200℃が好ましい。ガラスクロス等のガラス繊維シート状基材に前記ワニスを含浸させ、溶剤を乾燥する際に、本発明のエポキシ樹脂組成物を半硬化状態にすることにより、プリプレグを得ることも可能である。この際の乾燥条件は特に限定はされないが、温度は100〜180℃、時間は1〜30分が好ましい。
【0133】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物も本発明に含まれる。本発明のエポキシ樹脂組成物をガラスクロスに含浸させたプリプレグを作製した後、乾燥、硬化して得られる硬化物(光学シート)も同様に本発明に含まれる。前述したとおり、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化の際に硬化剤が揮発することによる屈折率の変化がないため、該光学シートの製造に適している。なお、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化温度及び時間は、80〜200℃及び2〜200時間である。硬化方法としては高温で一気に硬化させることもできるが、150℃以下の低温で長時間硬化させても良い。80〜150℃の間で初期硬化を行い、100℃〜200℃の間で後硬化を行うなど、ステップワイズに昇温し硬化反応を進めても良い。
【0134】
前記プリプレグを作製するためのガラスクロスは、公知である市販のものを用いることができる。中でも一般的に樹脂強化用として用いられるEガラスは、アルカリ金属酸化物が少なく、無アルカリガラスとして本発明の用途には適している。市販のガラスクロスには、ガラス繊維を用いた織布、不織布、編物など様々なものがあり、本発明においてはその種類に特に制限はないが、本発明のエポキシ樹脂組成物を含浸させて硬化した際に平滑な硬化物を得るためには、ガラスクロスの表面の凹凸が小さいものが適している。プリプレグを作製する際の乾燥及び半硬化の条件を考慮すると、ガラスクロスの厚みは通常100μm以下であり、好ましくは50μm以下である。25μm程度かそれ以下の厚さのものを用いてプリプレグを作製し、硬化時に2枚〜数枚を重ね合わせて一体化し本発明の光学シートとしても良い。ガラスクロスに用いるガラス繊維の径は、透明性などを考慮すると小さいほうが良く、10μm以下が好ましい。また本発明のエポキシ樹脂組成物との密着性を考慮すると、ガラス繊維はシランカップリング剤により処理してあるものが好ましい。屈折率は1.51〜1.57であり、一般的に入手可能なものとして1.55〜1.57がより好ましい。
【0135】
本発明において、本発明の硬化物の屈折率は、用いるガラスクロスの屈折率との差が少ないものが好ましい。具体的には該ガラスクロスの屈折率との差が±0.01となるものが好ましく、さらには差が±0.005となるものが好ましい。本発明の硬化物の屈折率がこの範囲であると、透明性、平滑性、硬度に優れた本発明の光学シートが得られる。これら光学シート上に、さらに本発明のエポキシ樹脂組成物を塗布、乾燥、硬化することにより、透明性、平滑性のより優れた光学シートを得ることも可能である。
【0136】
本発明の光学シートは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、携帯機器などの表示装置や太陽電池などに用いられるガラスの代替品として利用可能である。その他にも、導光板、プリズムシート、偏光板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルムなどの液晶用フィルムなどの液晶表示装置周辺材料や、反射防止フィルム、タッチパネル用前面板、光学補正フィルムなどにも使用できる。
【実施例】
【0137】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。合成例x2〜z2においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)によりトリシクロデカンジメタノールの消失を確認した時点で反応終了とした。
【0138】
合成例において、部は特に断わりのない限り質量部である。また、GPCの測定条件及びエポキシ当量の測定方法は以下の通りである。
GPC測定条件
カラム:Shodex SYSTEM−21カラム
(KF−803L、KF−802.5(×2本)、KF−802)
連結溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1ml/min.
カラム温度:40℃、
検出:RI(Reflective index)
検量線:Shodex製標準ポリスチレン
エポキシ当量
JIS K−7236に記載の方法。
【0139】
合成例X1 多価カルボン酸(A)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらメチルエチルケトン(以下、MEK)204部、トリシクロデカンジメタノール294部、4−メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物(新日本理化(株)製、リカシッドMH;以下、H1)423部、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物(三菱ガス化学製 H−TMAn;以下、H−TMAn)99部を加え、50℃で2時間反応後、70℃で4時間加熱撹拌を行なった。得られた溶液にMEKをさらに145部加えることで多価カルボン酸(A)のMEK溶液1166部が得られた。得られた溶液は無色であり、エポキシ当量は272g/eqであって、多価カルボン酸(A)の濃度は70質量%であった。
【0140】
合成例x2 多価カルボン酸(A)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらトリシクロデカンジメタノール12部、H1 73部、H−TMAn 15部を加え、40℃で3時間反応後、70℃で1時間加熱撹拌を行い、無色の液状樹脂である多価カルボン酸(A)とH1の混合物を100部得た。この混合物のエポキシ当量は171g/eqであり、GPCで測定した成分比は酸無水物と架橋多環ジオール類の反応物:H1:H−TMAn=40.8:48.8:10.5であった。
【0141】
合成例x3 多価カルボン酸(A)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらトリシクロデカンジメタノール36部、H1 195部、H−TMAn 69部を加え、40℃で3時間反応後、70℃で1時間加熱撹拌を行い、無色の液状樹脂である多価カルボン酸(A)とH1の混合物を300部得た。この混合物のエポキシ当量は162g/eqであり、GPCで測定した成分比は酸無水物と架橋多環ジオール類の反応物:H1:H−TMAn=42.0:42.1:15.9であった。
【0142】
合成例x4 多価カルボン酸(A)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらトリシクロデカンジメタノール45部、H1 195部、H−TMAn 60部を加え、40℃で3時間反応後、70℃で1時間加熱撹拌を行い、無色の液状樹脂である多価カルボン酸(A)とH1の混合物を300部得た。この混合物のエポキシ当量は170g/eqであり、GPCで測定した成分比は酸無水物と架橋多環ジオール類の反応物:H1:H−TMAn=51.0:37.1:11.9であった。
【0143】
合成例x5 多価カルボン酸(A)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらトリシクロデカンジメタノール40部、H1 200部を加え、40℃で3時間反応後、70℃で1時間加熱撹拌を行い、無色の液状樹脂である多価カルボン酸(A)を240部得た。エポキシ当量は200g/eqであった。
【0144】
合成例x6 エポキシ樹脂(C)の合成
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら(4−(4−(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)141.5部、エピクロルヒドリン463部、メタノール46部を仕込み、撹拌下で70℃まで昇温した。次いでフレーク状水酸化ナトリウム42部を90分かけて分割添加し、その後、70℃で1時間攪拌した。反応終了後、水200部を加えて水洗を行って生成した塩などを除去した後、油層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン400部を加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30質量%の水酸化ナトリウム水溶液12部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで水洗を行い、得られた溶液を、ロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等を留去することで無色〜淡黄色のエポキシ樹脂(C)190部を得た。得られたエポキシ樹脂は式(III)で表され、そのnは1.1、エポキシ当量は209g/eq.、軟化点は57.7℃、溶融粘度(200℃)0.12Pa・sであった。
【0145】
以下の実施例に示すような組成(数値は質量部を示す)にて本発明のエポキシ樹脂組成物及び硬化物を得た。また、樹脂組成物及び硬化膜についての評価方法及び評価基準は以下の通りである。
【0146】
(1)粘度:E型粘度計(TV−200:東機産業(株)製)を用い、25℃にて測定した。
(2)屈折率(25℃):硬化したエポキシ樹脂組成物の屈折率(25℃)をプリズムカップラー屈折率計(メトリコン製)で測定した。
(3)ガラス転移温度(Tg):硬化したエポキシ樹脂組成物のTg点を粘弾性測定システム(DMS−6000:セイコー電子工業(株)製)において、引っ張りモード、周波数1Hzにて測定した。
(4)400nm透過率、550nm透過率、YI値:硬化したエポキシ樹脂組成物の硬化膜の膜厚をデュアルタイプ膜厚計(ケット科学研究所製)にて測定した後、透過率を分光光度計U−3310(日立製)にて測定し、さらに100μm厚に換算した値での400nm透過率、550nm透過率、YI値を求めた。
(5)耐光試験:エポキシ樹脂組成物の硬化膜をEYE SUPER UV TESTER SUV−W11(岩崎電気製)にて60℃、60%RHの条件で4時間の耐光試験を行った後、外観を目視で観察した。さらに透過率(400nm、550nm)、着色(YI値)を(4)と同様に測定した。
(6)耐熱試験:エポキシ樹脂組成物の硬化膜を120℃乾燥機中に100時間投入した後、外観を目視で観察した。さらに透過率(400nm、550nm)、着色(YI値)を(4)と同様に測定した。
(7)全光線透過率、ヘイズ:ヘイズメーターTC−H3DPK(東京電色製)にて測定した。
【0147】
実施例x1
合成例x2で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物39.9部、成分(B)としてEHPE−3150(ダイセル化学製:一般式(II)において、R=トリメチロールプロパン残基、m=5、エポキシ当量181)を10.3部、成分(C)として合成例x6で得られた化合物16.4部、NC−3000(日本化薬製:ビフェニル構造多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量275)12.3部、成分(D)としてJER−828(三菱化学製:液状ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量185)を5.2部、YD−012(東都化成製:固形ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量670)を15.9部、その他の成分としてオクタン酸亜鉛0.3部、添加剤であるアデカスタブ260(ADEKA製:リン系酸化防止剤)0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤であるMEK43.2部を、70℃に加温、混合し、本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は98mPa・sであった。
ガラス基板上に耐熱離型テープで40mm×25mm×深さ1mmの型を作成し、本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を厚さ約800μmにまで注型し、80℃にて50分間乾燥した。乾燥途中で真空脱泡を、1回行い泡を除去した。その後室温まで冷却し状態を確認したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて150℃乾燥機にて3時間硬化し、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.568であり、ガラス転移温度(Tg)は135℃だった。硬化膜のYI値は0.3、透過率は550nmで90.6%、400nmで90.1%だった。
【0148】
実施例x2
合成例x2で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物43.6部、成分(B)としてEHPE−3150を2.6部、成分(C)として合成例x6で得られた化合物35.5部、成分(D)としてJER−828を10.4部、YD−012を8.0部、その他の成分として、硬化触媒であるヒシコーリンPX4MP(日本化学工業製:4級ホスホニウム塩)0.3部、希釈溶剤のMEK43部を、70℃に加温、混合し、本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分70%MEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液の粘度は40mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.566であり、ガラス転移温度(Tg)は140℃だった。硬化膜のYI値は0.2、透過率は550nmで90.6%、400nmで90.6%だった。
【0149】
実施例x3
実施例x2において、その他の成分にて硬化触媒としてU−CAT5002(三洋化成製1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7誘導体のテトラフェニルボレート)0.3部を使用する以外は、実施例x2と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は41mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.566であり、ガラス転移温度(Tg)は141℃だった。
【0150】
実施例x4
合成例x2で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物41.3部(成分(B)、成分(C)及び成分(D)の全てのエポキシ基に対して1当量)、成分(C)としてNC−3000を用いずに合成例x6で得られた化合物27.3部を用いる以外は、実施例x1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は62mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.561であり、ガラス転移温度(Tg)は145℃だった。硬化膜のYI値は0.3、透過率は550nmで90.6%、400nmで90.5%だった。
次いで耐光試験、耐熱試験を行った。耐光試験後の外観は若干着色があるがひび割れなどの劣化もなく透明性は良好であった。YI値は5.6、透過率は550nmで90.0%、400nmで80.0%だった。
耐熱試験後の外観は着色もほとんどなく良好であった。YI値は0.3、透過率は550nmで90.7%、400nmで90.5%だった。
【0151】
実施例x5
成分(A)として合成例x1で得た濃度70質量%の多価カルボン酸溶液66.6部、成分(B)としてEHPE−3150を4.8部、成分(C)としてNC−3000を用いずに合成例x6で得られた化合物12.0部、成分(D)としてJER−828を8.1部、YD−012を、28.5部を用い、その他成分の希釈溶剤のMEKを23部にする以外は、実施例x1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は306mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.558であり、ガラス転移温度(Tg)は106℃だった。
【0152】
実施例x6
合成例x4で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物41.2部、成分(C)としてNC−3000を用いずに合成例x6で得られた化合物27.4部、成分(D)としてJER−828を5.2部、YD−012を16.0部用いる以外は、実施例x1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は70mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.561であり、ガラス転移温度(Tg)は142℃だった。
【0153】
実施例x7
合成例x3で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物40.0部、成分(B)としてEHPE−3150を10.6部、成分(C)としてNC−3000を用いずに合成例x6で得られた化合物28.0部、成分(D)としてJER−828を5.3部、YD−012を、16.1部を用いる以外は、実施例x1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は868mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.562であり、ガラス転移温度(Tg)は147℃だった。
【0154】
実施例x8
成分(A)として合成例x2で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物40.6部、成分(B)としてEHPE−3150を11.3部、成分(C)としてNC−3000を用いずに合成例x6で得られた化合物20.7部を、成分(D)としてJER−828を5.2部、YD−012を15.9部、BPEF−G(オグソールEG:大阪ガス製、フルオレン構造固形エポキシ樹脂、エポキシ当量275)6.2部を用いる以外は、実施例x1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は62mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.563であり、ガラス転移温度(Tg)は139℃だった。
【0155】
実施例x9
成分(A)として合成例x2で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物51.0部、成分(B)としてEHPE−3150を36.0部、セロキサイド2021P (ダイセル化学製:3,4−エポキシシクロヘキシメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量130)13.0部を用い、成分(C)及び成分(D)を用いないこと以外は、実施例x1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は33mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.512であり、ガラス転移温度(Tg)は160℃だった。硬化膜のYI値は0.3、透過率は550nmで91.9%、400nmで91.6%だった。
次いで耐光性試験を行った。耐光試験後の外観は着色もほとんど見られず良好であり、YI値は0.5、透過率は550nmで91.7%、400nmで91.0%だった。
【0156】
実施例x10
成分(A)として合成例x2で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物50.4部、成分(B)としてEHPE−3150を25.7部、セロキサイド2021Pを13.0部、成分(C)として合成例x6で得られた化合物10.9部を用い、成分(D)を用いないこと以外は、実施例x1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は33mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.523であり、ガラス転移温度(Tg)は157℃だった。硬化膜のYI値は0.3、透過率は550nmで91.6%、400nmで91.5%だった。
次いで耐光性試験を行った。耐光試験後の外観は着色が若干あるもののひび割れなどの劣化もなく透明性良好だった。YI値は5.8、透過率は550nmで91.0%、400nmで80.0%だった。
【0157】
実施例x11
実施例x4において、さらにTINUVIN400(チバスペシャルティケミカルズ製:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)を0.5部追加する以外は、実施例x4と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は33mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.561であり、ガラス転移温度(Tg)は145℃だった。硬化膜のYI値は0.4、透過率は550nmで90.4%、400nmで86.4%だった。
次いで耐光性試験を行った。耐光試験後の外観は着色が若干あるもののひび割れなどの劣化もなく透明性良好だった。YI値は1.3、透過率は550nmで90.7%、400nmで89.0%だった。
【0158】
比較例x1
リカシッドMH700(新日本理化製:メチルヘキサヒドロフタル酸無水物とヘキサヒドロフタル酸無水物の混合物7:3;当量は168g/eq、以下、H2と称す)40.6部(成分(B)、成分(C)及び成分(D)の全てのエポキシ基に対して1当量)、成分(B)としてEHPE−3150を10.3部、成分(C)として合成例x6の化合物27.3部、成分(D)としてJER−828を5.2部、YD−012を15.9部、その他の成分としてオクタン酸亜鉛0.3部、添加剤であるアデカスタブ260(ADEKA製:リン系酸化防止剤)0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤であるMEK42.8部を、70℃に加温、混合し、比較用の樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。
【0159】
実施例x12
実施例x4及び比較例x1で得られた組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液100部に対して、トルエン1部をそれぞれ添加、混合し、揮発試験用のサンプルを得た。
ガラス基板上に耐熱離型テープで40mm×25mm×深さ1mmの型を作成し、実施例x4及び比較例x1の揮発試験用サンプル(固形分が69質量%のMEK・トルエン混合溶液)を、厚さ約800μm注型し、精秤後、80℃にて15分間乾燥した。途中で真空脱泡を、1回行い泡を除去した。その後、まだ溶剤が残った状態で下記の条件にて硬化を行い、硬化物を得た。硬化後に精秤し、注型したサンプル固形分に対して、乾燥・硬化中の揮発減量(%)を計算した。得られた硬化物の表面の外観を観察し、屈折率を測定した。
【0160】
【表1】
【0161】
実施例x13
実施例x4で得られた本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液にMEKを添加して固形分50質量%に調整し、市販のガラスクロス(Eガラスクロス:約30μm厚、平織)を入れ、含浸させた。ガラスクロスを引き上げた後、120℃で7分乾燥した。乾燥後のシートは固形のフィルムであった。それをさらに離型処理したPETフィルムにはさんでプレスしながら150℃にて10分処理し、半硬化させてプリプレグを得た。その後150℃乾燥機にて3時間硬化した。本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物とガラスクロスの複合化されたシートが得られ、屈折率は1.561だった。全光線透過率は92%、ヘイズ2%であり、着色のない透明シートであった。
【0162】
実施例x1〜x11の結果から明らかなように本発明のエポキシ樹脂組成物は、透明性に優れ、着色もなく、耐熱性、耐光性の良好な、様々な屈折率の硬化物を得ることができる。実施例x12からは、多価カルボン酸(A)を用いることにより、一般的な酸無水物硬化剤を用いた比較例x1の場合と比べて明らかに平滑な膜が得られることがわかる。また比較例x1の酸無水物硬化剤が多量に揮発して硬化膜の成分構成比が変化するのに対し、本発明では揮発がほとんどないことがわかる。揮発による硬化膜の成分構成比の変化は、硬化膜の屈折率のブレにつながるため、ガラスクロスと組み合わせた場合に屈折率が合わなくなり透明シートを得ることが困難となるが、本発明の実施例ではそのような問題はないことがわかる。実施例x13の結果からわかるように、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いることにより安定した屈折率の硬化膜を得られ、ガラスクロスと組み合わせた際にも透明な膜が得られることが確認された。
【0163】
実施例x14
実施例x4において、アデカスタブ260及びビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネートを除き、TINUVIN479(チバスペシャルティケミカルズ製:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)を0.5部追加する以外は、実施例x4と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は33mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.561であり、ガラス転移温度(Tg)は145℃だった。硬化膜のYI値は0.4、透過率は550nmで90.7%、400nmで86.6%だった。
次いで耐光性試験を行った。耐光試験後の外観は着色が若干あるもののひび割れなどの劣化もなく透明性良好だった。YI値は0.7、透過率は550nmで90.7%、400nmで85.9%だった。
【0164】
実施例x15
実施例x14において、さらにTINUVIN123(チバスペシャルティケミカルズ製:ヒンダードアミン系光安定剤)を0.2部追加する以外は、実施例x4と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は33mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.561であり、ガラス転移温度(Tg)は145℃だった。硬化膜のYI値は0.3、透過率は550nmで90.7%、400nmで87.6%だった。
次いで耐光性試験を行った。耐光試験後の外観は着色が若干あるもののひび割れなどの劣化もなく透明性良好だった。YI値は0.6、透過率は550nmで90.6%、400nmで86.9%だった。
【0165】
実施例x16
実施例x14において、TINUVIN479の変わりにTINUVIN405(チバスペシャルティケミカルズ製:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)0.5部を追加する以外は、実施例x14と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は33mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.561であり、ガラス転移温度(Tg)は145℃だった。硬化膜のYI値は0.5、透過率は550nmで90.7%、400nmで88.4%だった。
次いで耐光性試験を行った。耐光試験後の外観は着色が若干あるもののひび割れなどの劣化もなく透明性良好だった。YI値は0.8、透過率は550nmで90.6%、400nmで87.9%だった。
【0166】
実施例x17
実施例x15において、TINUVIN123の変わりにTINUVIN144(チバスペシャルティケミカルズ製:ヒンダードアミン系光安定剤)を使用する以外は、実施例x15と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は33mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例x1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例x1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.561であり、ガラス転移温度(Tg)は145℃だった。硬化膜のYI値は0.3、透過率は550nmで90.7%、400nmで87.8%だった。
次いで耐光性試験を行った。耐光試験後の外観は着色が若干あるもののひび割れなどの劣化もなく透明性良好だった。YI値は0.5、透過率は550nmで90.6%、400nmで88.0%だった。
【0167】
合成例y1 多価カルボン酸(A)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらトルエン10部、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製 キョウワオールPD9)80部、H2168部を加え、100℃で4時間加熱撹拌を行い、GPCにより原料の消失を確認した。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用い、残存する溶剤を留去することで、無色の固形樹脂である本発明の多価カルボン酸(A)が246部得られた。GPCによる純度は97面積%であり、エポキシ当量は248g/eq.であった。
【0168】
合成例y2 多価カルボン酸(A)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製 キョウワジオールPD9)20部、H1 100部を加え、60℃で4時間加熱撹拌を行った。GPCにより2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの1面積%以下を確認し、無色の液状樹脂である多価カルボン酸(A)とH1とのの混合物120部得られた。この混合物のエポキシ当量は201g/eq.であり、GPCで測定した成分比は酸無水物と架橋多環ジオール類の反応物:H1=43:57であった。50℃における粘度は1100mP・sであった(25℃では16200mPa・s E型粘度計)。
【0169】
実施例y1
合成例y2で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物34.8部、成分(B)としてEHPE−3150(ダイセル化学製:一般式(II)において、R=トリメチロールプロパン残基、m=5、エポキシ当量181)9.5部、成分(D)としてJER−828(三菱化学製:液状ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量185)9.6部、YD−012(東都化成製:固形ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量670)46.2部、その他の成分として、硬化触媒であるヒシコーリンPX4MP(日本化学工業製:4級ホスホニウム塩)0.3部、添加剤であるアデカスタブ260(ADEKA製:リン系酸化防止剤)0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤のMEK25.2部を、70℃に加温、混合し、本発明のエポキシ樹脂組成物(y1)の固形分80%MEK希釈液(y1D)を得た。y1Dの粘度は309mPa・sであった。
得られたy1を、MEKを用いてさらに固形分70%(y1D’)に調整した。
ガラス基板上に耐熱離型テープで40mm×25mm×深さ1mmの型を作成し、y1D’を厚さ約800μmにまで注型し、80℃にて50分間乾燥した。乾燥途中で真空脱泡を1回行い、泡を除去した。その後室温まで冷却し状態を確認したところ、y1は固体であった。
続いて150℃乾燥機にて3時間硬化し、y1の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.555であり、ガラス転移温度(Tg)は101℃だった。硬化膜のYI値は0.2、透過率は550nmで90.7%、400nmで90.5%だった。
【0170】
実施例y2
合成例y2で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物43.4部、成分(B)としてEHPE−3150を11.7部、成分(C)として合成例x6で得られた化合物12.5部、成分(D)としてJER−828を9.5部、YD−012を22.9部、その他の成分としてオクタン酸亜鉛0.3部、添加剤であるアデカスタブ260(ADEKA製:リン系酸化防止剤)0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤のMEK43.2部を用いる以外は、実施例y1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物(y2)の固形分が70質量%であるMEK希釈液(y2D)を得た。y2Dの粘度は57mPa・sであった。
得られたy2Dを実施例y1と同様にして乾燥したところ、y2は固体であった。
続いて実施例y1と同様にy2の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.551であり、ガラス転移温度(Tg)は106℃だった。硬化膜のYI値は0.2、透過率は550nmで90.7%、400nmで91.0%だった。
次いで耐光試験、耐熱試験を行った。耐光試験後の外観は若干着色があるがひび割れなどの劣化もなく透明性は良好であった。YI値は5.2、透過率は550nmで90.1%、400nmで78.8%だった。
耐熱試験後の外観は着色もほとんどなく良好であった。YI値は0.3、透過率は550nmで90.7%、400nmで90.5%だった。
【0171】
実施例y3
合成例y2で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物37.1部、成分(B)としてEHPE−3150を4.7部、成分(C)として合成例x6で得られた化合物10.1部、成分(D)としてJER−828を9.6部、YD−012を38.5部、その他の成分としてオクタン酸亜鉛0.3部、添加剤であるアデカスタブ260を0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤のMEK43.2部を用いる以外は、実施例y1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物(y3)の固形分が70質量%であるMEK希釈液(y3D)を得た。y3Dの粘度は104mPa・sであった。
得られたy3Dを実施例y1と同様にして乾燥したところ、y3は固体であった。
続いて実施例y1と同様にy3の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.561であり、ガラス転移温度(Tg)は99℃だった。硬化膜のYI値は0.1、透過率は550nmで90.6%、400nmで90.9%だった。
次いで耐光試験、耐熱試験を行った。耐光試験後の外観は若干着色があるがひび割れなどの劣化もなく透明性は良好であった。YI値は5.6、透過率は550nmで90.0%、400nmで78.0%だった。
【0172】
実施例y4
合成例y2で得た多価カルボン酸(成分(A))とH1の混合物48.5部(成分(B)、成分(C)及び成分(D)の全てのエポキシ基に対して1当量)、成分(B)としてEHPE−3150を10.3部、成分(C)として合成例x6で得られた化合物27.3部、成分(D)としてJER−828を5.2部、YD−012を15.9部、その他の成分としてオクタン酸亜鉛0.3部、アデカスタブ260を0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤のMEK46.2部を用いる以外は、実施例y1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物(y4)の固形分が70質量%であるMEK希釈液(y4D)を得た。y4Dの粘度は60mPa・sであった。
得られたy4Dを実施例y1と同様にして乾燥したところ、y4は固体であった。
続いて実施例y1と同様にy4の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.552であり、ガラス転移温度(Tg)は107℃だった。硬化膜のYI値は0.2、透過率は550nmで90.9%、400nmで90.8%だった。
【0173】
実施例y5
合成例y1で得た多価カルボン酸(A)45.9部、成分(B)としてEHPE−3150を4.8部、成分(C)として合成例x6で得られた化合物7.7部、成分(D)としてJER−828を8.1部、YD−012を28.5部、BPEF−G(オグソールEG:大阪ガス製、フルオレン構造固形エポキシ樹脂、エポキシ当量275)5.0部、その他の成分としてオクタン酸亜鉛0.3部、添加剤であるアデカスタブ260(ADEKA製:リン系酸化防止剤)0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤であるMEK43.2部を、70℃に加温、混合し、本発明のエポキシ樹脂組成物(y5)の固形分が70質量%であるMEK希釈液(y5D)を得た。y5Dの粘度は286mPa・sであった。
得られたy5Dを実施例y1と同様にして乾燥したところ、y5は固体であった。
続いて実施例y1と同様にy5の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.560であり、ガラス転移温度(Tg)は102℃だった。硬化膜のYI値は0.1、透過率は550nmで90.6%、400nmで90.8%だった。
【0174】
実施例y6
実施例y3において、さらにTINUVIN400(チバスペシャルティケミカルズ製:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤)を0.5部追加する以外は、実施例y4と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物(y6)の固形分が70質量%であるMEK希釈液(y6D)を得た。y6Dの粘度は106mPa・sであった。
得られたy6Dを実施例y1と同様にして乾燥したところ、y6は固体であった。
続いて実施例y1と同様にy6の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.561であり、ガラス転移温度(Tg)は100℃だった。硬化膜のYI値は0.3、透過率は550nmで90.4%、400nmで88.4%だった。
次いで耐光性試験を行った。耐光試験後の外観は着色が若干あるもののひび割れなどの劣化もなく透明性良好だった。YI値は1.3、透過率は550nmで90.5%、400nmで89.0%だった。
【0175】
比較例y1
リカシッドMH700(新日本理化製:メチルヘキサヒドロフタル酸無水物とヘキサヒドロフタル酸無水物の混合物7:3;当量は168g/eqであり)40.6部(成分(B)、成分(C)及び成分(D)の全てのエポキシ基に対して1当量)、成分(B)としてEHPE−3150を10.3部、成分(C)として合成例x6で得られた化合物27.3部、成分(D)としてJER−828を5.2部、YD−012を15.9部、その他の成分としてオクタン酸亜鉛0.3部、添加剤であるアデカスタブ260を0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤であるMEK42.8部を、70℃に加温、混合し、比較用の樹脂組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液を得た。
【0176】
実施例y7
実施例y4及び比較例y1で得られた組成物の固形分が70質量%であるMEK希釈液100部に対して、トルエン1部をそれぞれ添加、混合し、揮発試験用のサンプルを得た。
ガラス基板上に耐熱離型テープで40mm×25mm×深さ1mmの型を作成し、実施例y4及び比較例y1の揮発試験用サンプル(固形分が69質量%のMEK・トルエン混合溶液)を、厚さ約800μm注型し、精秤後、80℃にて15分間乾燥した。途中で真空脱泡を1回行い、泡を除去した。その後、まだ溶剤が残った状態で下記の条件にて硬化を行い、硬化物を得た。硬化後に精秤し、注型したサンプル固形分に対して、乾燥・硬化中の揮発減量(%)を計算した。得られた硬化物の表面の外観を観察し、屈折率を測定した。
【0177】
【表2】
【0178】
実施例y8
実施例y3で得られたy3DにさらにMEKを添加して固形分50質量%に調整し、市販のガラスクロス(Eガラスクロス:約30μm厚、平織;屈折率:1.560)を入れ、含浸させた。ガラスクロスを引き上げた後、120℃で7分乾燥した。乾燥後のシートは固形のフィルムであった。それをさらに離型処理したPETフィルムにはさんでプレスしながら150℃にて10分処理し、半硬化させてプリプレグを得た。その後150℃乾燥機にて3時間硬化した。本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物とガラスクロスの複合化されたシートが得られ、屈折率は1.560だった。全光線透過率は92%、ヘイズ2%であり、着色のない透明シートであった。
【0179】
実施例y1〜8の結果から明らかなように本発明のエポキシ樹脂組成物は、透明性に優れ、着色もなく、耐熱性、耐光性の良好な、様々な屈折率の硬化物を得ることができる。実施例y7からは、多価カルボン酸(B)を用いることにより、一般的な酸無水物硬化剤を用いた比較例y1の場合と比べて明らかに平滑な膜が得られることがわかる。また比較例y1の酸無水物硬化剤が多量に揮発して硬化膜の成分構成比が変化するのに対し、本発明では揮発がほとんどないことがわかる。揮発による硬化膜の成分構成比の変化は、硬化膜の屈折率のブレにつながるため、ガラスクロスと組み合わせた場合に屈折率が合わなくなり透明シートを得ることが困難となるが、本発明の実施例ではそのような問題はないことがわかる。実施例y8の結果からわかるように、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いることにより安定した屈折率の硬化膜を得られ、ガラスクロスと組み合わせた際にも透明な膜が得られることが確認された。
【0180】
合成例z1 多価カルボン酸(A)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら、ジトリメチロールプロパン(Di−TMP パーストープ製)125部、メチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物(リカシッドMH 新日本理化製)336部、メチルエチルケトン115部を加え、80℃で7時間撹拌した。反応終了後、メチルエチルケトン198部を加え、濃度調整を行い、濃度70%の多価カルボン酸(A)のメチルエチルケトン溶液658部を得た。
【0181】
実施例z1
合成例z1で得た多価カルボン酸(A)53.1部、成分(B)としてEHPE−3150(ダイセル化学製:一般式(II)において、R=トリメチロールプロパン残基、m=5、エポキシ当量181g/eq.)2.2部、成分(C)として合成例x6で得られた化合物7.1部、成分(D)としてJER−828(三菱化学製:液状ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量185g/eq.)8.9部、YD−012(東都化成製:固形ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量670g/eq.)44.6部、その他の成分として、硬化触媒であるヒシコーリンPX4MP(日本化学工業製:4級ホスホニウム塩)0.3部、添加剤であるアデカスタブ260(ADEKA製:リン系酸化防止剤)0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤のMEK51.2部を、70℃に加温、混合し、本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分60質量%MEK希釈液を得た。このMEK希釈液の粘度は54mPa・sであった。
ガラス基板上に耐熱離型テープで40mm×25mm×深さ1mmの型を作成し、本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を厚さ約800μmにまで注型し、80℃にて50分間乾燥した。乾燥途中で真空脱泡を、1回行い泡を除去した。その後室温まで冷却し状態を確認したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて150℃乾燥機にて3時間硬化し、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.561であり、ガラス転移温度(Tg)は110℃だった。硬化膜のYI値は0.2、透過率は550nmで90.7%、400nmで90.5%だった。
次いで耐光試験、耐熱試験を行った。耐光試験後の外観は若干着色があるがひび割れなどの劣化もなく透明性は良好であった。耐熱試験後の外観は着色、及び、ひび割れなどの劣化もなく透明性は良好であった。
【0182】
実施例z2
合成例z1で得た多価カルボン酸(A)83.4部、成分(B)としてEHPE−3150を30.8部、セロキサイド2021P(ダイセル化学製:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、エポキシ当量130g/eq.)10.8部を用い、成分(C)、成分(D)を用いず、その他の成分として、硬化触媒であるヒシコーリンPX4MP(日本化学工業製:4級ホスホニウム塩)0.2部、添加剤であるアデカスタブ260(ADEKA製:リン系酸化防止剤)0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤のMEK42.1部を用いる以外は、実施例z1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が60質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は30mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例z1と同様にして乾燥したところ、実施例z2のエポキシ樹脂組成物は液体であった。
続いて実施例z1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.500で透明性良好だった。次いで耐光試験、耐熱試験を行った。耐光試験後の外観は若干着色があるがひび割れなどの劣化もなく透明性は良好であった。耐熱試験後の外観は着色、及び、ひび割れなどの劣化もなく透明性は良好であった。
【0183】
実施例z3
合成例z1で得た多価カルボン酸(A)79.6部(成分(B)、成分(C)及び成分(D)の全てのエポキシ基に対して1当量)、成分(B)としてEHPE−3150を10.3部、成分(C)として合成例x6で得られた化合物27.3部、成分(D)としてJER−828を5.2部、YD−012を15.9部、その他の成分としてオクタン酸亜鉛0.3部、アデカスタブ260を0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤のMEK52.9部を用いる以外は、実施例z1と同様にして本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が60質量%であるMEK希釈液を得た。このエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液の粘度は104mPa・sであった。
得られた本発明のエポキシ樹脂組成物のMEK希釈液を実施例z1と同様にして乾燥したところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は固体であった。
続いて実施例z1と同様に本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物を得た。屈折率(25℃)は1.550だった。
【0184】
比較例z1
リカシッドMH−700(新日本理化製:メチルヘキサヒドロフタル酸無水物とヘキサヒドロフタル酸無水物の混合物7:3;当量は168g/eq)40.6部(成分(B)、成分(C)及び成分(D)の全てのエポキシ基に対して1当量)、成分(B)としてEHPE−3150を10.3部、成分(C)として合成例z3で得られた化合物27.3部、成分(D)としてJER−828を5.2部、YD−012を15.9部、その他の成分としてオクタン酸亜鉛0.3部、添加剤であるアデカスタブ260を0.2部、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート0.2部、希釈溶剤であるMEK66.6部を、70℃に加温、混合し、比較用の樹脂組成物の固形分が60質量%であるMEK希釈液を得た。
【0185】
実施例z4
実施例z3及び比較例z1で得られた組成物の固形分が60質量%であるMEK希釈液100部に対して、トルエン1部をそれぞれ添加、混合し、揮発試験用のサンプルを得た。
ガラス基板上に耐熱離型テープで40mm×25mm×深さ1mmの型を作成し、実施例z4及び比較例z1の揮発試験用サンプル(固形分が59質量%のMEK・トルエン混合溶液)を、厚さ約800μm注型し、精秤後、80℃にて15分間乾燥した。途中で真空脱泡を1回行い、泡を除去した。その後、まだ溶剤が残った状態で下記の条件にて硬化を行い、硬化物を得た。硬化後に精秤し、注型したサンプル固形分に対して、乾燥・硬化中の揮発減量(質量%)を計算した。得られた硬化物の表面の外観を観察し、屈折率を測定した。
【0186】
【表3】
【0187】
実施例z5
実施例z1で得られた本発明のエポキシ樹脂組成物の固形分が60質量%であるMEK希釈液にMEKを添加して固形分50質量%に調整し、市販のガラスクロス(Eガラスクロス:約30μm厚;平織;屈折率:1.560)を入れ、含浸させた。ガラスクロスを引き上げた後、120℃で7分乾燥した。乾燥後のシートは固形のフィルムであった。それをさらに離型処理したPETフィルムにはさんでプレスしながら150℃にて10分処理し、半硬化させてプリプレグを得た。その後150℃乾燥機にて3時間硬化した。本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物とガラスクロスの複合化されたシートが得られ、屈折率は1.560だった。全光線透過率は92%、ヘイズ3%であり、着色のない透明シートであった。
【0188】
実施例z1〜4の結果から明らかなように本発明のエポキシ樹脂組成物からは、透明性に優れ、着色もない、様々な屈折率の硬化物を得ることができる。また実施例z4の結果からは、多価カルボン酸(A)を用いることにより、一般的な酸無水物硬化剤を用いた比較例z1の場合と比べて明らかに平滑な膜が得られることがわかる。また比較例z1の酸無水物硬化剤が多量に揮発して硬化膜の成分構成比が変化するのに対し、本発明では揮発がほとんどないことがわかる。揮発による硬化膜の成分構成比の変化は、硬化膜の屈折率のブレにつながるため、ガラスクロスと組み合わせた場合に屈折率が合わなくなり透明シートを得ることが困難となるが、本発明の実施例ではそのような問題はないことがわかる。実施例z5の結果からわかるように、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いることにより安定した屈折率の硬化膜を得られ、ガラスクロスと組み合わせた際にも透明な膜が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明のエポキシ樹脂組成物及びその硬化物は、主に、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、携帯機器などの表示装置や太陽電池などに用いる光学シートに適するものである。