(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に本発明について具体的に説明する。
【0032】
〔フッ化ビニリデン系共重合体〕
本発明のフッ化ビニリデン系共重合体は、フッ化ビニリデンと、下記式(A)で表わされる化合物とを共重合して得られる。
【0034】
(式(A)において、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、およびリン原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含み、かつ主鎖が原子数1〜20で構成される分子量500以下の原子団、またはヘテロ原子である。)
本発明のフッ化ビニリデン系共重合体は、フッ化ビニリデン由来の構成単位と、前記式(A)で表わされる化合物由来の構成単位とを有する重合体である。また、さらに他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。
【0035】
前記式(A)で表わされる化合物におけるXが、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、およびリン原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含み、かつ主鎖が原子数1〜20で構成される分子量500以下の原子団である場合には、該原子団は、ヘテロ原子を少なくとも一つ含んでいればよく、複数含んでいてもよい。前記Xが、前記原子団である場合には、フッ化ビニリデンとの共重合性の観点から、ヘテロ原子としては、酸素原子であることが好ましい。
【0036】
また、前記Xが原子団である場合には、該原子団の分子量は500以下であるが、200以下であることが好ましい。また、原子団である場合の分子量の下限としては特に限定はないが、通常は15である。
【0037】
前記式(A)で表わされる化合物としては、金属箔との接着性の観点から、下記式(1)で表わされる化合物、および下記式(2)で表わされる化合物から選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0038】
前記式(A)で表わされる化合物としては、金属箔との接着性の観点から、下記式(1)で表わされる化合物がより好ましく、下記式(1)で表わされる化合物としては、下記式(3)で表わされる化合物が好ましい。前記式(A)で表される化合物を用いたフッ化ビニリデン系共重合体は、接着性官能基として機能するカルボキシル基がフッ化ビニリデンポリマー主鎖からスペーサーを介して存在するため、カルボキシル基の配置の自由度が高い。そのため、該官能基がその接着性付与能力を発揮しやすい配置を取ることが容易であり、集電体との接着性に優れると本発明者は推定した。また、下記式(1)で表わされる化合物は、カルボキシル基以外にもカルボニル基を有する。該カルボニル基は、集電体を構成する金属原子に配位することが可能であるため、該化合物を用いて得られたフッ化ビニリデン系共重合体は、集電体との接着性に特に優れると本発明者らは推定した。
【0040】
(式(1)において、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、X'は、主鎖が原子数1〜19で構成される分子量472以下の原子団である。)
【0042】
(式(2)において、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、X''は、主鎖が原子数1〜19で構成される分子量484以下の原子団である。)
【0044】
(式(3)において、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、X'''は、主鎖が原子数1〜18で構成される分子量456以下の原子団である。)
前記式(A)、(1)〜(3)において、前記R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1〜5のアルキル基であるが、重合反応性の観点から、特にR
1、R
2は立体障害の小さな置換基であることが望まれ、水素または炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素またはメチル基であることがより好ましい。
【0045】
前記式(1)において、前記X'で表わされる原子団の分子量は472以下であるが、172以下であることが好ましい。また、前記X'で表わされる原子団の分子量の下限としては特に限定はないが、通常はX'が‐CH
2‐の態様、すなわち分子量としては14である。前記式(2)において、前記X''で表わされる原子団の分子量は484以下であるが、184以下であることが好ましい。また、前記X''で表わされる原子団の分子量の下限としては特に限定はないが、通常はX''が‐CH
2‐の態様、すなわち分子量としては14である。さらに、前記式(3)において、前記X'''で表わされる原子団の分子量は456以下であるが、156以下であることが好ましい。また、前記X'''で表わされる原子団の分子量の下限としては特に限定はないが、通常はX'''が‐CH
2‐の態様、すなわち分子量としては14である。
【0046】
前記X、X’、X’’、またはX’’’で表わされる原子団の分子量が前述の範囲であると、重合性の観点から好ましい。
【0047】
前記式(A)において、前記Xが原子団である場合には、該原子団の主鎖は原子数1〜20で構成され、原子数2〜15で構成されることが好ましく、2〜10で構成されることがより好ましい。
【0048】
前記式(1)において、前記X’で表わされる原子団としては、主鎖が原子数1〜19で構成され、原子数1〜14で構成されることが好ましく、1〜9で構成されることがより好ましい。
【0049】
前記式(2)において、前記X’’で表わされる原子団としては、主鎖が原子数1〜19で構成され、原子数1〜14で構成されることが好ましく、1〜9で構成されることがより好ましい。
【0050】
また、前記式(3)において、前記X’’’で表わされる原子団としては、主鎖が原子数1〜18構成され、原子数1〜13で構成されることが好ましく、1〜8で構成されることがより好ましい。
【0051】
主鎖の原子数が前記範囲内であると、重合性の観点から好ましい。
【0052】
なお、前記式(A)および(1)〜(3)において、主鎖の原子数とは、X、X’、X’’、またはX’’’の右側に記載されたカルボキシル基と、左側に記載された基(R
1R
2C=CR
3−、[式(A)])(R
1R
2C=CR
3−CO−、[式(1)])、(R
1R
2C=CR
3−O−、[式(2)])、(R
1R
2C=CR
3−COO−、[式(3)])とを、最も少ない原子数で結ぶ鎖の、骨格部分の原子数を意味する。
【0053】
なお、実施例で用いたアクリロイロキシエチルコハク酸(2−Acryloxy ethyl succinate)(AES)、カルボキシエチルアクリレート(2−Carboxyethyl acrylate)(CEA)の主鎖の原子数は以下の通りである。
【0054】
AESは、式(A)で表わされる化合物、式(1)で表わされる化合物、式(3)で表わされる化合物に相当する。式(A)で表わされる化合物がAESである場合には、Xで表わされる原子団は‐(CO)‐OCH
2CH
2O‐(CO)‐CH
2CH
2‐である。該原子団の主鎖の原子数は、該直鎖の骨格部分の原子数である。すなわち、カルボニル基を構成する酸素原子や、メチレン基を構成する水素原子は主鎖の原子数としては数えない。すなわち、該直鎖の骨格部分は‐C‐OCCO‐C‐CC‐であり、その原子数は8である。同様に式(1)で表わされる化合物がAESである場合には、X’で表わされる原子団の主鎖は原子数が7であり、式(3)で表わされる化合物がAESである場合には、X’’’で表わされる原子団の主鎖は原子数が6である。
【0055】
CEAは、式(A)で表わされる化合物、式(1)で表わされる化合物、式(3)で表わされる化合物に相当する。式(A)で表わされる化合物がCEAである場合には、Xで表わされる原子団の主鎖は原子数が4であり、式(1)で表わされる化合物がCEAである場合には、X’で表わされる原子団の主鎖は原子数が3であり、式(3)で表わされる化合物がCEAである場合には、X’’’で表わされる原子団の主鎖は原子数が2である。
【0056】
また、アクリロイロキシエチルフタル酸の主鎖の原子数は、以下の通りである。アクリロイロキシエチルフタル酸は、下記式(B)で表わされる化合物であり、式(A)で表わされる化合物、式(1)で表わされる化合物、式(3)で表わされる化合物に相当する。式(A)で表わされる化合物がアクリロイロキシエチルフタル酸である場合には、Xで表わされる原子団は下記式(B’)で表わされる。該原子団の主鎖の原子数は、該原子団に結合するカルボキシル基とビニル基とを最も少ない原子数で結ぶ鎖の骨格部分の原子数である。すなわち、下記式(B’)では、カルボキシル基とビニル基とを結ぶ鎖の骨格部分の原子数としては式(B’−1)で表わされる原子数8、または(B’−2)で表わされる原子数12が考えられるが、この場合には主鎖の原子数とはより炭素数の小さい8である。同様に式(1)で表わされる化合物がアクリロイロキシエチルフタル酸である場合には、X’で表わされる原子団の主鎖は原子数が7であり、式(3)で表わされる化合物がアクリロイロキシエチルフタル酸である場合には、X’’’で表わされる原子団の主鎖は原子数が6である。
【0057】
また、カルボキシル基を複数有する化合物の場合には主鎖の原子数は、以下の通りである。例えば、カルボキシル基を複数有する化合物においては、それぞれのカルボキシル基に対して、前記左側に記載された基と、カルボキシル基とを、最も少ない原子数で結ぶ鎖が存在するが、その中で最も骨格部分の原子数が小さい値を、主鎖の原子数とする。すなわち、カルボキシル基を2個有する化合物においては、各カルボキシル基(以下、便宜上カルボキシル基A、カルボキシル基Bとする)において、左側に記載された基と、カルボキシル基とを最も少ない原子数で結ぶ鎖が存在するが、例えば左側に記載された基と、カルボキシル基Aとを最も少ない原子数で結ぶ鎖の骨格部分の原子数が3であり、左側に記載された基と、カルボキシル基Bとを最も少ない原子数で結ぶ鎖の骨格部分の原子数が6である場合には、該化合物において主鎖の原子数は3である。具体例として、下記式(C)で表わされる化合物について説明する。下記式(C)で表わされる化合物は、式(A)で表わされる化合物、式(1)で表わされる化合物、式(3)で表わされる化合物に相当する。式(C)で表わされる化合物はカルボキシル基を2個有している。式(A)で表わされる化合物が、式(C)で表わされる化合物である場合には、ビニル基とカルボキシル基とを最も少ない原子数で結ぶ鎖の骨格部分の原子数としては、(C−1)で表わされる原子6、(C−2)で表わされる原子数8が考えられるが、この場合にはより骨格部分の原子数が小さい6を主鎖の原子数とする。同様に式(1)で表わされる化合物が式(C)で表わされる化合物である場合には、X’で表わされる原子団の主鎖は原子数が5であり、式(3)で表わされる化合物が式(C)で表わされる化合物である場合には、X’’’で表わされる原子団の主鎖は原子数が4である。
【0059】
前記式(A)で表わされる化合物としては、前述のように式(1)で表わされる化合物、および式(2)で表わされる化合物から選択される少なくとも1種の化合物が好ましいが、他の化合物を用いることもできる。該他の化合物としては、ビニル(カルボキシエチル)アミン、ビニル(カルボキシメチル)アミン等のビニルアミン系化合物、ビニル(カルボキシエチル)チオエーテル、ビニル(カルボキシメチル)チオエーテル等のビニルチオエーテル系化合物、ビニルホスホン酸(カルボキシエチル)等のビニルホスホン酸系化合物等が挙げられる。
【0060】
また、前記式(A)において、Xがヘテロ原子である場合、該ヘテロ原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子を挙げることができる。
【0061】
前記式(1)で表わされる化合物としては、前記式(3)で表わされる化合物が好ましいが、それ以外の化合物としては、例えば(メタ)アクリルアミド系化合物、チオ(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、具体的には、N−カルボキシエチル(メタ)アクリルアミド、カルボキシエチルチオ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
なお、本発明において、(メタ)アクリル、(メタ)アクリレートはそれぞれ、アクリルおよび/またはメタクリル、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0063】
前記式(2)で表わされる化合物としては、ビニルカルボキシアルキルエーテル類が挙げられ、具体的には、ビニルカルボキシメチルエーテル、ビニルカルボキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0064】
前記式(3)で表わされる化合物としては、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、アクリロイロキシエチルコハク酸、メタクリロイロキシエチルコハク酸、アクリロイロキシエチルフタル酸、メタクリロイロキシエチルフタル酸が挙げられ、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、アクリロイロキシエチルコハク酸、メタクリロイロキシエチルコハク酸が、フッ化ビニリデンとの共重合性に優れるため好ましい。
【0065】
本発明のフッ化ビニリデン系共重合体は、前記式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位を0.01〜10モル%(但し、フッ化ビニリデンに由来する構成単位と、式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位との合計を100モル%とする)有することが好ましく、0.02〜7モル%有することがより好ましく、0.03〜4モル%有することが特に好ましい。また、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を、90〜99.99モル%有することが好ましく、93〜99.98モル%有することがより好ましく、96〜99.97モル%有する事が特に好ましい。
【0066】
なお、本発明のフッ化ビニリデン系共重合体中の、式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位の量、およびフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量は、通常はフッ化ビニリデン系共重合体の
1H NMRスペクトル、もしくは中和滴定により求めることができる。
【0067】
また、前記他のモノマーとしては、例えばフッ化ビニリデンと共重合可能なフッ素系単量体あるいはエチレン、プロピレン等の炭化水素系単量体、また前記式(A)と共重合可能な単量体が挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なフッ素系単量体としては、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロメチルビニルエーテルに代表されるペルフルオロアルキルビニルエーテル等を挙げることができる。前記式(A)と共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルに代表される(メタ)アクリル酸アルキル化合物等が挙げられる。なお、前記他のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0068】
本発明のフッ化ビニリデン系共重合体が、前記他のモノマーに由来する構成単位を有する場合には、該共重合体を構成する全モノマー由来の構成単位を100モル%とすると、該他のモノマーに由来する構成単位を0.01〜10モル%有することが好ましい。
【0069】
本発明のフッ化ビニリデン系共重合体は、フッ化ビニリデンおよび前記式(A)で表わされる化合物、必要に応じて前記他のモノマーを共重合することにより得られる。
【0070】
本発明のフッ化ビニリデン系共重合体を共重合する方法としては、特に限定はないが通常は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の方法で行われる。後処理の容易さ等の点から水系の懸濁重合、乳化重合が好ましく、水系の懸濁重合が特に好ましい。
【0071】
水を分散媒とした懸濁重合においては、メチルセルロース、メトキシ化メチルセルロース、プロポキシ化メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ゼラチン等の懸濁剤を、共重合に使用する全モノマー(フッ化ビニリデンおよび、式(A)で表わされる化合物、必要に応じて共重合される他のモノマー)100質量部に対して0.005〜1.0質量部、好ましくは0.01〜0.4質量部の範囲で添加して使用する。
【0072】
重合開始剤としては、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルペルオキシジカーボネート、ジノルマルヘプタフルオロプロピルペルオキシジカーボネート、イソブチリルペルオキサイド、ジ(クロロフルオロアシル)ペルオキサイド、ジ(ペルフルオロアシル)ペルオキサイド、t−ブチルペルオキシピバレート等が使用できる。その使用量は、共重合に使用する全モノマー(フッ化ビニリデンおよび、式(A)で表わされる化合物、必要に応じて共重合される他のモノマー)を100質量部とすると、0.05〜5質量部、好ましくは0.15〜2質量部である。
【0073】
また、酢酸エチル、酢酸メチル、炭酸ジエチル、アセトン、エタノール、n−プロパノール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、プロピオン酸エチル、四塩化炭素等の連鎖移動剤を添加して、得られるフッ化ビニリデン系共重合体の重合度を調節することも可能である。連鎖移動剤を使用する場合には、その使用量は通常、共重合に使用する全モノマー(フッ化ビニリデンおよび、式(A)で表わされる化合物、必要に応じて共重合される他のモノマー)を100質量部とすると、0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜3質量部である。
【0074】
また、共重合に使用する全モノマー(フッ化ビニリデンおよび、式(A)で表わされる化合物、必要に応じて共重合される他のモノマー)の仕込量は、単量体の合計:水の質量比で通常は1:1〜1:10、好ましくは1:2〜1:5である。重合温度Tは、重合開始剤の10時間半減期温度T
10に応じて適宜選択され、通常はT
10−25℃≦T≦T
10+25℃の範囲で選択される。例えば、t‐ブチルペルオキシピバレートおよびジイソプロピルペルオキシジカーボネートのT
10はそれぞれ、54.6℃および40.5℃(日油株式会社製品カタログ参照)である。したがって、t‐ブチルペルオキシピバレートおよびジイソプロピルペルオキシジカーボネートを重合開始剤として用いた重合では、その重合温度Tはそれぞれ29.6℃≦T≦79.6℃および15.5℃≦T≦65.5℃の範囲で適宜選択される。重合時間は特に制限されないが、生産性等を考慮すると100時間以下であることが好ましい。重合時の圧力は通常加圧下で行われ、好ましくは2.0〜8.0MPa‐Gである。
【0075】
上記の条件で水系の懸濁重合を行うことにより、容易にフッ化ビニリデンおよび、式(A)で表わされる化合物、必要に応じて共重合される他のモノマーを共重合することができ、本発明フッ化ビニリデン系共重合体を得ることができる。
【0076】
本発明のフッ化ビニリデン系共重合体は、インヘレント粘度(樹脂4gを1リットルのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の30℃における対数粘度。以下、同様)が0.5〜5.0dl/gの範囲内の値であることが好ましく、1.0〜4.0dl/gの範囲内の値であることがより好ましい。上記範囲内の粘度であれば、非水電解質二次電池用電極合剤に好適に用いることができる。
【0077】
インヘレント粘度η
iの算出は、フッ化ビニリデン系共重合体80mgを20mlのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解して、30℃の恒温槽内でウベローテ粘度計を用いて次式により行うことができる。
【0078】
η
i=(1/C)・ln(η/η
0)
ここでηは重合体溶液の粘度、η
0は溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド単独の粘度、Cは0.4g/dlである。
【0079】
また、フッ化ビニリデン系共重合体は、赤外線吸収スペクトルを測定した際の下記式(1)で表される吸光度比(A
R)が、0.01〜5.0の範囲であることが好ましく、0.05〜3.0であることがより好ましい。A
Rが0.01未満の場合は、集電体である金属箔との接着性が不充分となる場合がある。一方で、A
Rが5.0を超えると、フッ化ビニリデン系共重合体の耐電解液性が低下する傾向がある。なお、該重合体の赤外線吸収スペクトルの測定は、該重合体に熱プレスを施すことにより製造したフィルムについて、赤外線吸収スペクトルを測定することにより行われる。具体的には、フッ化ビニリデン系共重合体を、200℃で熱プレスして、プレスシート30mm×30mmを作製し、該プレスシートのIRスペクトルを、赤外分光光度計FT-730(株式会社堀場製作所製)を用いて、1500cm
-1〜4000cm
-1の範囲で測定することにより行われる。
【0080】
A
R=A
1700-1800/A
3023 ・・・(1)
上記式(1)において、A
1700-1800は1700〜1800cm
-1の範囲に検出されるカルボニル基の伸縮振動に由来の吸光度であり、A
3023は3023cm
-1付近に検出されるCHの伸縮振動に由来の吸光度である。A
Rはフッ化ビニリデン系共重合体中のカルボニル基の存在量を示す尺度となる。
【0081】
また、本発明のフッ化ビニリデン系共重合体中の式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位のランダム率が、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが特に好ましい。詳細については不明であるが、ランダム率が前記範囲内であると高分子鎖の均一性が向上しカルボキシル基がより効果的にその接着性付与能力を発揮できるようになるため好ましい。
【0082】
なお、本発明において、ランダム率とは、本発明のフッ化ビニリデン系共重合体中に存在する、式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位がどの程度重合体鎖中に分散しているかを示す指標である。ランダム率が低いほど式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位が連続して存在する、言い換えると式(A)で表わされる化合物同士が重合した鎖(以下、式(A)で表わされる化合物由来の重合体鎖とも記す。)を有する傾向があることを意味する。一方、ランダム率が高いほど、式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位が独立して存在する、言い換えると式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位が連続せずに、フッ化ビニリデン由来の構成単位と結合する傾向がある。
【0083】
本発明のフッ化ビニリデン系共重合体のランダム率は、式(A)で表わされる化合物由来の重合体鎖の存在量[モル%]を、式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位の存在量[モル%]で除することにより求めることができる(ランダム率[%]=式(A)で表わされる化合物由来の重合体鎖の存在量[モル%]/式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位の存在量[モル%]×100)。なお、前記モル%では、フッ化ビニリデン由来の構成単位の存在量を100モル%とする。また、式(A)で表わされる化合物由来の重合体鎖の存在量は、
19F NMRスペクトルにより求めることができ、式(A)で表わされる化合物に由来する構成単位の存在量は、例えば
1H NMRスペクトル法や中和滴定法により求めることができる。
【0084】
例えば本発明のフッ化ビニリデン系共重合体が、フッ化ビニリデンとカルボキシエチルアクリレートとの共重合体である場合には、ランダム率は以下の方法で求めることができる。
19F NMRスペクトルでは、カルボキシエチルアクリレート単位に隣接するCF
2ピークは、−94ppm付近に観察される。該ピークと、スペクトル中の全てのピークの積分比より、カルボキシエチルアクリレート鎖のモル%が決定される。ランダム率は、該カルボキシエチルアクリレート鎖のモル%と、
1H NMRスペクトルや中和滴定法等により求めた重合体中の全カルボキシエチルアクリレート由来の構造単位のモル%との比(ランダム率[%]=カルボキシエチルアクリレート鎖のモル%/全カルボキシエチルアクリレート由来の構造単位のモル%×100)として求めることができる。
【0085】
ランダム率が前記範囲内である本発明のフッ化ビニリデン系共重合体を製造する方法としては、例えば前述の懸濁重合等を行う際に、連続的に式(A)で表わされる化合物を添加する方法が挙げられる。
【0086】
〔電池電極用バインダー〕
本発明の電池電極用バインダーは、前記本発明のフッ化ビニリデン系共重合体および非水溶媒を含有する。
【0087】
本発明の電池電極用バインダーは、前述のようにフッ化ビニリデン系共重合体および非水溶媒を含んでおり、該バインダーに電極活物質を添加することにより、後述の非水電解質二次電池用電極合剤を得ることができる。なお、該バインダーに電極活物質を添加する場合には、電極活物質にバインダーを添加してもよく、電極活物質を非水溶媒に添加し、攪拌混合したものにバインダーを添加してもよい。
【0088】
(非水溶媒)
本発明の電池電極用バインダーは、非水溶媒を含有する。非水溶媒としては前記フッ化ビニリデン系共重合体を溶解する作用を有するものが用いられ、好ましくは極性を有する溶剤が用いられる。非水溶媒の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスフォアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチルウレア、トリエチルホスフェイト、トリメチルホスフェイト、アセトン、シクロヘキサノンなどが挙げられ、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが好ましい。また、非水溶媒は1種単独でも、2種以上を混合してもよい。
【0089】
本発明の電池電極用バインダーは、フッ化ビニリデン系共重合体を100質量部とすると、非水溶媒は400〜10000質量部であることが好ましく、600〜5000質量部であることがより好ましい。前記範囲内では適度な溶液粘度となり、ハンドリング性に優れるため好ましい。
【0090】
〔非水電解質二次電池用電極合剤〕
本発明の非水電解質二次電池用電極合剤は、前記本発明のフッ化ビニリデン系共重合体、電極活物質および非水溶媒を含有する。また、本発明の非水電解質二次電池用正極合剤は、通常前記本発明のフッ化ビニリデン系共重合体、リチウム系正極活物質および非水溶媒を含有する。本発明の非水電解質二次電池用電極合剤は、前記フッ化ビニリデン系共重合体を含むため、該合剤を集電体に塗布・乾燥することにより得られる非水電解質二次電池用電極は、集電体と、合剤層との接着性に優る。
【0091】
本発明の非水電解質二次電池用電極合剤は、電極活物質の種類等を変更することにより、負極用の合剤、すなわち非水電解質二次電池用負極合剤として用いてもよく、正極用の合剤、すなわち非水電解質二次電池用正極合剤として用いてもよい。フッ化ビニリデン系共重合体は、一般に優れた耐酸化性を有しているため、本発明の非水電解質二次電池用電極合剤は、正極用の合剤として用いることが好ましい。
【0092】
(電極活物質)
本発明の非水電解質二次電池用電極合剤が含む、電極活物質としては、特に限定は無く、従来公知の負極用の電極活物質(以下、負極活物質とも記す)、正極用の活物質(以下、正極活物質とも記す)を用いることができる。
【0093】
負極活物質としては例えば、炭素材料、金属・合金材料、金属酸化物などが挙げられるが、中でも炭素材料が好ましい。
【0094】
前記炭素材料としては、人造黒鉛、天然黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素などが用いられる。また、前記炭素材料は、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0095】
このような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度を高くすることができる。
【0096】
前記人造黒鉛としては、例えば、有機材料を炭素化しさらに高温で熱処理を行い、粉砕・分級することにより得られる。人造黒鉛としては、MAGシリーズ(日立化成工業製)、MCMB(大阪ガスケミカル(株)製)等が用いられる。
【0097】
前記難黒鉛化炭素としては、例えば、石油ピッチ由来の材料を1000〜1500℃で焼成することにより得られる。難黒鉛化炭素としては、カーボトロンP(クレハ製)等が用いられる。
【0098】
前記負極活物質の比表面積は、0.3〜10m
2/gであることが好ましく、0.6〜6m
2/gであることがより好ましい。比表面積が10m
2/gを超えると、電解液の分解量が増加し、初期の不可逆容量が増えるため好ましくない。
【0099】
正極活物質としては、少なくともリチウムを含むリチウム系正極活物質が好ましい。リチウム系正極活物質としては例えば、LiCoO
2、LiNi
xCo
1-xO
2(0≦x≦1)等の一般式LiMY
2(Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、V等の遷移金属の少なくとも一種:YはO、S等のカルコゲン元素)で表わされる複合金属カルコゲン化合物、LiMn
2O
4などのスピネル構造をとる複合金属酸化物、LiFePO
4などのオリビン型リチウム化合物等が挙げられる。なお、前記正極活物質としては市販品を用いてもよい。
【0100】
前記正極活物質の比表面積は、0.05〜50m
2/gであることが好ましく、0.1〜30m
2/gであることがより好ましい。
【0101】
なお、電極活物質の比表面積は、窒素吸着法により求めることができる。
【0102】
(非水溶媒)
本発明の非水電解質二次電池用電極合剤は、非水溶媒を含有する。非水溶媒としては前記電池電極用バインダーに含まれる非水溶媒として例示したものを用いることができる。また、非水溶媒は1種単独でも、2種以上を混合してもよい。
【0103】
本発明の非水電解質二次電池用電極合剤は、前記フッ化ビニリデン系共重合体、電極活物質、および非水溶媒を含有する。
【0104】
本発明の非水電解質二次電池用電極合剤は、フッ化ビニリデン系共重合体と、電極活物質との合計100質量部あたり、フッ化ビニリデン系共重合体は0.5〜15質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、活物質は85〜99.5質量部であることが好ましく、90〜99質量部であることがより好ましい。また、フッ化ビニリデン系共重合体と、電極活物質との合計を100質量部とすると、非水溶媒は20〜300質量部であることが好ましく、50〜200質量部であることがより好ましい。
【0105】
上記範囲内で各成分を含有すると、本発明の非水電解質二次電池用電極合剤を用いて、非水電解質二次電池用電極を生産性よく製造することが可能であり、非水電解質二次電池用電極を製造した際に、合剤層と、集電体との剥離強度に優れる。
【0106】
また、本発明の非水電解質二次電池用電極合剤は、前記フッ化ビニリデン系共重合体、電極活物質、および非水溶媒以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、カーボンブラックなどの導電助剤やポリビニルピロリドンなどの顔料分散剤等を含んでいてもよい。前記他の成分としては、前記フッ化ビニリデン系共重合体以外の他の重合体を含んでいてもよい。前記他の重合体としては、例えばポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ペルフルオロメチルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体が挙げられる。本発明の非水電解質二次電池用電極合剤に、他の重合体が含まれる場合には、通常前記フッ化ビニリデン系共重合体100質量部に対して25質量部以下の量で含まれる。
【0107】
本発明の非水電解質二次電池用電極合剤の、E型粘度計を用いて、25℃、せん断速度2s
-1で測定を行った際の粘度は、通常2000〜50000mPa・sであり、好ましくは5000〜30000mPa・sである。
【0108】
本発明の非水電解質二次電池用電極合剤の製造方法としては、前記フッ化ビニリデン系共重合体、電極活物質、および非水溶媒を均一なスラリーとなるように混合すればよく、混合する際の順序は特に限定されないが、例えば前記フッ化ビニリデン系共重合体を、非水溶媒の一部に溶解し、バインダー溶液を得て、該バインダー溶液に電極活物質および残りの非水溶媒を添加し、攪拌混合し、非水電解質二次電池用電極合剤を得る方法が挙げられる。
【0109】
〔非水電解質二次電池用電極〕
本発明の非水電解質二次電池用電極は、前記非水電解質二次電池用電極合剤を、集電体に塗布・乾燥することにより得られる。本発明の非水電解質二次電池用電極は、集電体と、非水電解質二次電池用電極合剤から形成される層とを有する。なお、前記前記非水電解質二次電池用電極合剤として、非水電解質二次電池用負極合剤を用いた場合には、非水電解質二次電池用負極が得られ、前記前記非水電解質二次電池用電極合剤として、非水電解質二次電池用正極合剤を用いた場合には、非水電解質二次電池用正極が得られる。フッ化ビニリデン系重合体は、一般に優れた耐酸化性を有しているため、本発明の非水電解質二次電池用電極は、非水電解質二次電池用正極として用いることが好ましい。
【0110】
なお、本発明において、非水電解質二次電池用電極合剤を集電体に塗布・乾燥することにより形成される、非水電解質二次電池用電極合剤から形成される層を、合剤層と記す。
【0111】
本発明に用いる集電体としては、非水電解質二次電池用負極を得るためには、例えば銅が挙げられ、その形状としては例えば金属箔や金属網等が挙げられる。非水電解質二次電池用負極を得るためには、集電体としては、銅箔を用いることが好ましい。
【0112】
本発明に用いる集電体としては、非水電解質二次電池用正極を得るためには、例えばアルミニウムが挙げられ、その形状としては例えば金属箔や金属網等が挙げられる。非水電解質二次電池用正極を得るためには、集電体としては、アルミニウム箔を用いることが好ましい。
【0113】
集電体の厚さは、通常は5〜100μmであり、好ましくは5〜20μmである。
【0114】
合剤層の厚さは、通常は20〜250μmであり、好ましくは20〜150μmである。また、合剤層の目付け量は、通常20〜700g/m
2であり、好ましくは30〜500g/m
2である。
【0115】
本発明の非水電解質二次電池用電極を製造する際には、前記非水電解質二次電池用電極合剤を前記集電体の少なくとも一面、好ましくは両面に塗布を行う。塗布する際の方法としては特に限定は無く、バーコーター、ダイコーター、コンマコーターで塗布する等の方法が挙げられる。
【0116】
また、塗布した後に行われる乾燥としては、通常50〜150℃の温度で1〜300分行われる。また、乾燥の際の圧力は特に限定はないが、通常は、大気圧下または減圧下で行われる。
【0117】
さらに、乾燥を行ったのちに、熱処理が行われてもよい。熱処理を行う場合には、通常100〜250℃の温度で1〜300分行われる。なお、熱処理の温度は前記乾燥と重複するが、これらの工程は、別個の工程であってもよく、連続的に行われる工程であってもよい。
【0118】
また、さらにプレス処理を行ってもよい。プレス処理を行う場合には、通常1〜200MPa‐Gで行われる。プレス処理を行うと電極密度を向上できるため好ましい。
【0119】
以上の方法で、本発明の非水電解質二次電池用電極を製造することができる。なお、非水電解質二次電池用電極の層構成としては、非水電解質二次電池用電極合剤を集電体の一面に塗布した場合には、合剤層/集電体の二層構成であり、非水電解質二次電池用電極合剤を集電体の両面に塗布した場合には、合剤層/集電体/合剤層の三層構成である。
【0120】
本発明の非水電解質二次電池用電極は、前記非水電解質二次電池用電極合剤を用いることにより、集電体と合剤層との剥離強度に優れるため、プレス、スリット、捲回などの工程で電極に亀裂や剥離が生じにくく、生産性の向上に繋がるために好ましい。
【0121】
本発明の非水電解質二次電池用電極は、前述のように集電体と合剤層との剥離強度に優れるが、具体的には、本発明のフッ化ビニリデン系共重合体に代えて、従来から用いられていたフッ化ビニリデン単独重合体や、フッ化ビニリデン系共重合体を用いて得られた電極と比べた際の剥離強度に優れる。なお、前記剥離強度は、本発明の非水電解質二次電池用電極が正極である場合には、JIS K6854−1に準拠して90°剥離試験により測定を行うことにより求めることができる。また、本発明の非水電解質二次電池用電極が負極である場合には、JIS K6854−2に準拠して180°剥離試験により測定を行うことにより求めることができる。
【0122】
〔非水電解質二次電池〕
本発明の非水電解質二次電池は、前記非水電解質二次電池用電極を有することを特徴とする。
【0123】
本発明の非水電解質二次電池としては、前記非水電解質二次電池用電極を有していること以外は特に限定は無い。非水電解質二次電池としては、前記非水電解質二次電池用電極、好ましくは非水電解質二次電池用正極を有し、非水電解質二次電池用電極以外の部材、例えば、セパレータ等は従来公知のものを用いることができる。
【実施例】
【0124】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0125】
〔実施例1〕
以下の方法で重合を行い、フッ化ビニリデン系共重合体を重合体粉末として得た。
【0126】
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水を900g、セルロース系懸濁剤としてメトローズ90SH−100(信越化学工業(株)製)を0.4g、カルボキシエチルアクリレートを0.2g、50wt%t‐ブチルペルオキシピバレート−フロン225cb溶液を2.0g、フッ化ビニリデン396gを仕込み、50℃まで2時間で昇温した。
【0127】
その後、50℃を維持し、15g/lのカルボキシエチルアクリレート水溶液を重合圧力が一定となる速度で徐々に添加した。カルボキシエチルアクリレートは、初期に添加した量を含め、全量4.0gを添加した。
【0128】
重合は、カルボキシエチルアクリレート水溶液添加終了と同時に停止し、昇温開始から合計8.6時間行った。
【0129】
重合終了後、重合体スラリーを95℃で60分熱処理した後、脱水、水洗し、更に80℃で20時間乾燥して重合体粉末を得た。重合体の収率は39%、得られた重合体のインヘレント粘度は3.12dl/g、得られた重合体の吸光度比(A
R)は1.10であった。
【0130】
前記重合体粉末の
1H NMRスペクトルを下記条件で求めた。得られた
1H NMRスペクトルを、
図1に示す。
【0131】
装置:Bruker社製。 AVANCE AC 400FT NMRスペクトルメーター
測定条件
周波数:400MHz
測定溶媒:DMSO−d
6
測定温度:25℃
重合体のフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量、およびカルボキシエチルアクリレートに由来する構成単位の量を、
1H NMRスペクトルで、主としてカルボキシエチルアクリレートに由来する4.19ppmに観察されるシグナルと主としてフッ化ビニリデンに由来する2.24ppmおよび2.87ppmに観察されるシグナルの積分強度に基づき算出した。
【0132】
得られたフッ化ビニリデン系共重合体が有するフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量(モル%)(VDF量)は、98.95モル%であり、カルボキシエチルアクリレートに由来する構成単位の量(モル%)(CEA量)は、1.05モル%であった。
【0133】
前記重合体粉末の
19F NMRスペクトルを下記条件で求めた。
【0134】
装置:Bruker社製。 AVANCE AC 400FT NMRスペクトルメーター
測定条件
周波数:376MHz
測定溶媒:DMSO−d
6
測定温度:25℃
重合体中のカルボキシエチルアクリレートに由来する重合体鎖の存在量を、
19F NMRスペクトルで、−94ppm付近で観察されるカルボキシエチルアクリレート単位に隣接するフッ化ビニリデン由来の構造単位が有するFのピーク強度(積分値)を、該スペクトルの全Fのピーク強度で除することにより求めた。得られたフッ化ビニリデン系共重合体が有するカルボキシエチルアクリレートに由来する重合体鎖の存在量は、0.71モル%であった。
【0135】
得られたフッ化ビニリデン系共重合体のランダム率を、前記CEA量およびカルボキシエチルアクリレートに由来する重合体鎖の存在量から求めたところ、68%であった。
【0136】
〔実施例2、3〕
カルボキシエチルアクリレート水溶液の濃度および添加量、開始剤の添加量、重合条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な方法で行い、重合体粉末を得た。重合体の収率は実施例2が71%、実施例3が25%であり、得られた重合体のインヘレント粘度は実施例2が3.15dl/g、実施例3が2.65dl/gであり、得られた重合体の吸光度比(A
R)は実施例2が0.70、実施例3が2.57であった。
【0137】
前記重合体粉末の
1H NMRスペクトルおよび
19F NMRスペクトルを実施例1と同様な方法で測定した。重合体のVDF量、およびCEA量を、実施例1と同様に、
1H NMRスペクトルの積分強度から求めた。また、カルボキシエチルアクリレートに由来する重合体鎖の存在量を、実施例1と同様に、
19F NMRスペクトルから求め、ランダム率を、CEA量およびカルボキシエチルアクリレートに由来する重合体鎖の存在量から求めた。
【0138】
実施例2で得られたフッ化ビニリデン系共重合体のVDF量が99.39モル%、CEA量が0.61モル%、カルボキシエチルアクリレートに由来する重合体鎖の存在量が0.38モル%、ランダム率が62%であり、実施例3で得られたフッ化ビニリデン系共重合体のVDF量が97.28モル%であり、CEA量が2.72モル%、カルボキシエチルアクリレートに由来する重合体鎖の存在量が1.41モル%、ランダム率が52%であった。
【0139】
〔実施例4、5〕
カルボキシエチルアクリレートを、アクリロイロキシエチルコハク酸に変更し、アクリロイロキシエチルコハク酸水溶液の濃度および添加量、開始剤の添加量、重合条件を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様な方法で行い、重合体粉末を得た。重合体の収率は実施例4が70%、実施例5が37%であり、得られた重合体のインヘレント粘度は実施例4が2.83dl/g、実施例5が3.16dl/gであり、得られた重合体の吸光度比(A
R)は実施例4が0.72、実施例5が1.49であった。
【0140】
前記重合体粉末の
1H NMRスペクトルを実施例1と同様な方法で測定した。実施例4の重合体粉末を測定することにより得られた
1H NMRスペクトルを、
図2に示す。
【0141】
重合体のフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量、およびアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する構成単位の量を、
1H NMRスペクトルで、主としてアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する4.18ppmに観察されるシグナルと主としてフッ化ビニリデンに由来する2.23ppmおよび2.87ppmに観察されるシグナルの積分強度に基づき算出した。
【0142】
得られたフッ化ビニリデン系共重合体が有するフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量(モル%)(VDF量)は、99.67モル%であり、アクリロイロキシエチルコハク酸に由来する構成単位の量(モル%)(AES量)は、0.33モル%であった。
【0143】
前記重合体粉末の
19F NMRスペクトルを実施例1と同様な方法で測定した。
【0144】
実施例4の重合体中のアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量を、
19F NMRスペクトルで、−94ppm付近で観察されるアクリロイロキシエチルコハク酸単位に隣接するフッ化ビニリデン由来の構造単位が有するFのピーク強度(積分値)を、該スペクトルの全Fのピーク強度で除することにより求めた。得られたフッ化ビニリデン系共重合体が有するアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量は、0.248モル%であった。
【0145】
得られたフッ化ビニリデン系共重合体のランダム率を、前記AES量およびアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量から求めたところ、75%であった。
【0146】
実施例5で得られた重合体のVDF量、AES量を、実施例4と同様に、
1H NMRスペクトルの積分強度から求めた。また、実施例5で得られた重合体のアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量を、実施例4と同様に、
19F NMRスペクトルから求め、ランダム率を、AES量およびアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量から求めた。
【0147】
実施例5で得られたフッ化ビニリデン系共重合体のVDF量が99.00モル%、AES量が1.00モル%、アクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量が0.56モル%、ランダム率が56%であった。
【0148】
〔実施例6〕
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水を925g、セルロース系懸濁剤としてメトローズSM−100(信越化学工業(株)製)を0.65g、アクリロイロキシエチルコハク酸を0.22g、50wt%ジイソプロピルペルオキシジカーボネート−フロン225cb溶液を4.3g、フッ化ビニリデン421gを仕込み、26℃まで1時間で昇温した。
【0149】
その後、26℃を維持し、30g/lのアクリロイロキシエチルコハク酸水溶液を0.19g/minの速度で徐々に添加した。アクリロイロキシエチルコハク酸は、初期に添加した量を含め、全量2.92gを添加した。
【0150】
重合は、アクリロイロキシエチルコハク酸水溶液添加終了と同時に停止し、昇温開始から合計9.1時間行った。
【0151】
重合終了後、重合体スラリーを95℃で60分熱処理した後、脱水、水洗し、更に80℃で20時間乾燥して重合体粉末を得た。重合体の収率は33%、得られた重合体のインヘレント粘度は2.30dl/g、得られた重合体の吸光度比(A
R)は0.93であった。
【0152】
前記重合体粉末の
1H NMRスペクトルおよび
19F NMRスペクトルを実施例1と同様な方法で測定した。得られた重合体のVDF量、AES量を、実施例4と同様に、
1H NMRスペクトルの積分強度から求めた。また、得られた重合体のアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量を、実施例4と同様に、
19F NMRスペクトルから求め、ランダム率を、AES量およびアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量から求めた。
【0153】
実施例6で得られたフッ化ビニリデン系共重合体のVDF量が99.53モル%、AES量が0.47モル%、アクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量が0.37モル%、ランダム率が78%であった。
【0154】
〔実施例7〕
カルボキシエチルアクリレートを、アクリロイロキシエチルコハク酸に変更し、アクリロイロキシエチルコハク酸水溶液の濃度および添加量、開始剤の添加量、重合条件を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様な方法で行い、重合体粉末を得た。重合体の収率は64%であり、得られた重合体のインヘレント粘度は1.79dl/gであり、得られた重合体の吸光度比(A
R)は0.76であった。
【0155】
前記重合体粉末の
1H NMRスペクトルおよび
19F NMRスペクトルを実施例1と同様な方法で測定した。得られた重合体のVDF量、AES量を、実施例4と同様に、
1H NMRスペクトルの積分強度から求めた。また、得られた重合体のアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量を、実施例4と同様に、
19F NMRスペクトルから求め、ランダム率を、AES量およびアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量から求めた。
【0156】
実施例7で得られたフッ化ビニリデン系共重合体のVDF量が99.7モル%、AES量が0.3モル%、アクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量が0.28モル%、ランダム率が94%であった。
【0157】
〔実施例8〕
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水を1000g、セルロース系懸濁剤としてメトローズSM−100(信越化学工業(株)製)を0.6g、アクリロイロキシエチルコハク酸を0.2g、50wt%ジイソプロピルペルオキシジカーボネート−フロン225cb溶液を6g、フッ化ビニリデン400g、酢酸エチル8gを仕込み、26℃まで1時間で昇温した。
【0158】
その後、26℃を維持し、100g/lのアクリロイロキシエチルコハク酸水溶液を0.05g/minの速度で徐々に添加した。アクリロイロキシエチルコハク酸は、初期に添加した量を含め、全量1.48gを添加した。
【0159】
重合は、アクリロイロキシエチルコハク酸水溶液添加終了と同時に停止し、昇温開始から合計7.7時間行った。
【0160】
重合終了後、重合体スラリーを95℃で60分熱処理した後、脱水、水洗し、更に80℃で20時間乾燥して重合体粉末を得た。重合体の収率は35%、得られた重合体のインヘレント粘度は1.29dl/g、得られた重合体の吸光度比(A
R)は0.68であった。
【0161】
前記重合体粉末の
1H NMRスペクトルおよび
19F NMRスペクトルを実施例1と同様な方法で測定した。得られた重合体のVDF量、AES量を、実施例4と同様に、
1H NMRスペクトルの積分強度から求めた。また、得られた重合体のアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量を、実施例4と同様に、
19F NMRスペクトルから求め、ランダム率を、AES量およびアクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量から求めた。
【0162】
実施例7で得られたフッ化ビニリデン系共重合体のVDF量が99.7モル%、AES量が0.3モル%、アクリロイロキシエチルコハク酸に由来する重合体鎖の存在量が0.23モル%、ランダム率が77%であった。
【0163】
〔比較例1〕
カルボキシエチルアクリレートを、アクリル酸に変更し、アクリル酸水溶液の濃度、重合条件を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様の方法で行い、重合体粉末を得た。重合体の収率は50%であり、得られた重合体のインヘレント粘度は2.66dl/gであり、得られた重合体の吸光度比(A
R)は1.66であった。
【0164】
重合体のアクリル酸に由来する構成単位の量を0.03mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を用いた中和滴定により求めた。より具体的には、重合体0.3gをアセトン9.7gに約80℃で溶解した後、3gの純水を加えることで被滴定溶液を調製した。指示薬として、フェノールフタレインを用い、室温下、0.03mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定を行った。
【0165】
さらに、中和滴定により求められたアクリル酸に由来する構成単位の量と中和滴定に用いたポリマーの総量との関係からフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量を算出した。
【0166】
得られたフッ化ビニリデン系共重合体が有するフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量(モル%)(VDF量)は、98.18モル%であり、アクリル酸に由来する構成単位の量(モル%)(AA量)は、1.82モル%であった。
【0167】
前記重合体粉末の
19F NMRスペクトルを実施例1と同様な方法で測定した。
【0168】
比較例1の重合体中のアクリル酸に由来する重合体鎖の存在量を、
19F NMRスペクトルで、−94ppm付近で観察されるアクリル酸に隣接するフッ化ビニリデン由来の構造単位が有するFのピーク強度(積分値)を、該スペクトルの全Fのピーク強度で除することにより求めた。得られたフッ化ビニリデン系共重合体が有するアクリル酸に由来する重合体鎖の存在量は、1.57モル%であった。
【0169】
得られたフッ化ビニリデン系共重合体のランダム率を、前記AA量およびアクリル酸に由来する重合体鎖の存在量から求めたところ、85%であった。
【0170】
〔比較例2〕
カルボキシルエチルアクリレートを、マレイン酸モノメチルに変更し、マレイン酸モノメチル水溶液の濃度、重合条件を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様の方法で行い、重合体粉末を得た。重合体の収率は47%であり、得られた重合体のインヘレント粘度は2.06dl/gであり、得られた重合体の吸光度比(A
R)は0.55であった。
【0171】
〔比較例3〕
カルボキシエチルアクリレートを、アクリル酸に変更し、アクリル酸水溶液の濃度、重合条件を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様の方法で行い、重合体粉末を得た。重合体の収率は41%であり、得られた重合体のインヘレント粘度は1.49dl/gであり、得られた重合体の吸光度比(A
R)は1.63であった。
【0172】
比較例3で得られた重合体のVDF量、AA量を、比較例1と同様に、中和滴定により求めた。また、比較例3で得られた重合体のAAに由来する重合体鎖の存在量を、比較例1と同様に、
19F NMRスペクトルから求め、ランダム率を、AA量およびAAに由来する重合体鎖の存在量から求めた。
【0173】
比較例3で得られたフッ化ビニリデン系共重合体のVDF量が98.23モル%、AA量が1.77モル%、AAに由来する重合体鎖の存在量が1.73モル%、ランダム率が96%であった。
【0174】
〔比較例4〕
カルボキシエチルアクリレートを、ヒドロキシエチルアクリレートに変更し、ヒドロキシエチルアクリレート水溶液の濃度、重合条件を表1に示すようにした以外は、実施例1と同様の方法で行い、重合体粉末を得た。重合体の収率は59%であり、得られた重合体のインヘレント粘度は1.77dl/gであり、得られた重合体の吸光度比(A
R)は0.36であった。
【0175】
重合体のフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量、およびヒドロキシエチルアクリレートに由来する構成単位の量を、
1H NMRスペクトルで、主としてヒドロキシエチルアクリレートに由来する4.00ppmに観察されるシグナルと主としてフッ化ビニリデンに由来する2.23ppmおよび2.88ppmに観察されるシグナルの積分強度に基づき算出した。
【0176】
得られたフッ化ビニリデン系共重合体が有するフッ化ビニリデンに由来する構成単位の量(モル%)(VDF量)は、99.65モル%であり、ヒドロキシエチルアクリレートに由来する構成単位の量(モル%)(HEA量)は、0.35モル%であった。
【0177】
前記重合体粉末の
19F NMRスペクトルを実施例1と同様な方法で測定した。
【0178】
重合体中のヒドロキシエチルアクリレートに由来する重合体鎖の存在量を、
19F NMRスペクトルで、−94ppm付近で観察されるヒドロキシエチルアクリレート単位に隣接するフッ化ビニリデン由来の構造単位が有するFのピーク強度(積分値)を、該スペクトルの全Fのピーク強度で除することにより求めた。得られたフッ化ビニリデン系共重合体が有するヒドロキシエチルアクリレートに由来する重合体鎖の存在量は、0.35モル%であった。
【0179】
得られたフッ化ビニリデン系共重合体のランダム率を、前記HEA量およびヒドロキシエチルアクリレートに由来する重合体鎖の存在量から求めたところ、100%であった。
【0180】
〔比較例5〕
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水を1096g、メトローズSM−100を0.214g、50wt%ジイソプロピルペルオキシジカーボネート−フロン225cb溶液を1.28g、フッ化ビニリデン428g、酢酸エチル1.92gを仕込み、26℃まで1時間で昇温した。
【0181】
その後、26℃を維持し、昇温開始から合計18.7時間行った。
【0182】
重合終了後、重合体スラリーを95℃で60分熱処理した後、脱水、水洗し、更に80℃で20時間乾燥して重合体粉末を得た。重合体の収率は90%で、得られた重合体のインヘレント粘度は3.30dl/gであった。
【0183】
〔比較例6〕
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水を1020g、メトローズSM−100を0.2g、50wt%ジイソプロピルペルオキシジカーボネート−フロン225cb溶液を2.8g、フッ化ビニリデン400g、酢酸エチル2.8gを仕込み、26℃まで1時間で昇温した。
【0184】
その後、26℃を維持し、昇温開始から合計15.3時間行った。
【0185】
重合終了後、重合体スラリーを95℃で60分熱処理した後、脱水、水洗し、更に80℃で20時間乾燥して重合体粉末を得た。重合体の収率は87%で、得られた重合体のインヘレント粘度は2.14dl/gであった。
【0186】
〔剥離試験(正極)〕
コバルト酸リチウム(日本化学工業製、セルシードC5H)100質量部、カーボンブラック(電気化学工業製、デンカブラック)2質量部、フッ化ビニリデン系共重合体(各実施例、比較例で得られた重合体粉末)2質量部を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させ、スラリー状の正極合剤を調製した。なお、N−メチル―2−ピロリドンの添加量はフッ化ビニリデン系共重合体のインヘレント粘度に応じて適宜調整し、合剤の粘度が、E型粘度計を用いて、25℃、せん断速度2s
-1で測定を行った際、5000〜30000mPa・sとなるよう調整した。
【0187】
前記正極合剤を、厚み15μmのAl箔上にバーコーターで塗布し、110℃で30分乾燥し、片面目付け量が200g/m
2の片面塗工電極(正極)を作製した。
【0188】
前記片面目付け量が200g/m
2の片面塗工電極(正極)を、長さ100mm、幅20mmに切り出し、JIS K6854−1に準じて引張試験機(ORIENTEC社製「STA−1150 UNIVERSAL TESTING MACHINE」)を使用し、ヘッド速度10mm/分で90度剥離試験を行い、剥離強度(正極)を測定した。
【0189】
〔剥離試験(負極)〕
人造黒鉛(大阪ガスケミカル(株)製「MCMB25−28」)を96重量部、フッ化ビニリデン系共重合体(各実施例、比較例で得られた重合体粉末)を4重量部、溶剤としてN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)を混合して負極合剤を得た。なお、NMPの添加量はフッ化ビニリデン系共重合体のインヘレント粘度に応じて適宜調整し、合剤粘度が、E型粘度計を用いて25℃、せん断速度2s
-1で測定を行った際、5000〜30000mPa・sとなるように調整した。
【0190】
前記負極合剤を、厚さ約10μmの表面処理銅箔の片面にバーコーターを用いて、乾燥後の片面目付量が150g/cm
2となるように塗布し、110℃で30分乾燥し、片面塗工電極(負極)を得た。得られた片面塗工電極(負極)を長さ50mm、幅20mmとなるように切り出し、JIS K6854−2に準じて引張試験機(ORIENTEC社製「STA−1150 UNIVERSAL TESTING MACHINE」)を使用し、ヘッド速度200mm/分で、180°剥離試験を行い、剥離強度(負極)を測定した。
【0191】
結果を表1に示す。
【0192】
なお、表1(表1−1、1−2、1−3、および1−4)において、VDFはフッ化ビニリデン、CEAはカルボキシエチルアクリレート、50wt%PB−PVフロン溶液は50wt%t‐ブチルペルオキシピバレート−フロン225cb溶液、50wt%IPP−フロン溶液は50wt%ジイソプロピルペルオキシジカーボネート−フロン225cb溶液、90SH−100はメトローズ90SH−100、SM−100はメトローズSM−100、AESはアクリロイロキシエチルコハク酸、AAはアクリル酸、MMMはマレイン酸モノメチル、HEAはヒドロキシエチルアクリレートを意味する。また、表1において部とは、質量部を意味する。
【0193】
【表1-1】
【0194】
【表1-2】
【0195】
【表1-3】
【0196】
【表1-4】