(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797207
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ばねが組み込まれたカテーテル先端およびカテーテル先端を含むカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
A61M25/00 550
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-552487(P2012-552487)
(86)(22)【出願日】2011年2月8日
(65)【公表番号】特表2013-518691(P2013-518691A)
(43)【公表日】2013年5月23日
(86)【国際出願番号】IB2011000386
(87)【国際公開番号】WO2011098911
(87)【国際公開日】20110818
【審査請求日】2012年10月30日
(31)【優先権主張番号】61/302,683
(32)【優先日】2010年2月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/303,276
(32)【優先日】2010年2月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511245271
【氏名又は名称】メディノール リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDINOL LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】特許業務法人 松原・村木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャペル シュロミット
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−023053(JP,A)
【文献】
特表平05−500922(JP,A)
【文献】
特開2001−204825(JP,A)
【文献】
特表2001−517970(JP,A)
【文献】
特開平02−119876(JP,A)
【文献】
特開昭63−238873(JP,A)
【文献】
米国特許第04044765(US,A)
【文献】
米国特許第05571073(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0260224(US,A1)
【文献】
特開平07−236695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近端部と遠端部とを有し、可撓性とプッシャビリティとを備えるカテーテル先端であって、
ばね状の要素と、
前記カテーテル先端の前記遠端部において半径方向剛性を有する遠端部セクションと、
(a)前記ばね状の要素が同一空間に広がり、前記ばね状の要素が内部または外部に位置する長手方向可撓性管と、(b)前記ばね状の要素の近端部に接続されるスペーサー部と、からなる群から選択される少なくとも1つと、
を含み、
前記ばね状の要素が、前記カテーテル先端に長手方向可撓性およびプッシャビリティを付与することを特徴とするカテーテル先端。
【請求項2】
前記ばね状の要素が、非圧縮性のアコーディオンプラスチック管であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル先端。
【請求項3】
前記ばね状の要素が引張ばねであることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル先端。
【請求項4】
前記ばね状の要素は、前記カテーテル先端に半径方向剛性をさらに付与することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル先端。
【請求項5】
前記ばね状の要素は、遠位でテーパが付されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカテーテル先端。
【請求項6】
前記半径方向剛性を有する遠端部セクションは、前記ばね状の要素の遠端部であるか、前記ばね状の要素と別部材で前記長手方向可撓性管または前記ばね状の要素と隣接していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカテーテル先端。
【請求項7】
前記カテーテル先端が遠縁部を備え、前記ばね状の要素は当該遠縁部まで延び、前記遠端部セクションを含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカテーテル先端。
【請求項8】
前記遠端部セクションは、遠位でテーパが付されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のカテーテル先端。
【請求項9】
前記カテーテル先端が前記スペーサー部を含み、前記スペーサー部は前記長手方向可撓性管の延在部であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカテーテル先端。
【請求項10】
前記長手方向可撓性管は、前記ばね状の要素に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル先端。
【請求項11】
前記スペーサー部は、前記ばね状の要素の遠縁部まで延びることを特徴とする請求項9に記載のカテーテル先端。
【請求項12】
前記カテーテル先端が前記スペーサー部を含み、前記ばね状の要素は少なくとも部分的に前記スペーサー部に挿入されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカテーテル先端。
【請求項13】
前記カテーテル先端が前記スペーサー部を含み、前記スペーサー部は、前記ばね状の要素の近縁部まで延びる長手方向可撓性管であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル先端。
【請求項14】
近端部と、遠端部と、近位ショルダーと遠位ショルダーとを有するバルーンと、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のカテーテル先端とを含むカテーテルであって、
前記バルーンが、前記カテーテル先端の近位で前記カテーテルに取り付けられることを特徴とするカテーテル。
【請求項15】
前記カテーテル先端が前記スペーサー部を含み、前記スペーサー部は、前記ばね状の要素の近縁部と前記バルーンの前記遠位ショルダーとの間を延びていることを特徴とする請求項14に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内カテーテルに関し、特に、例えば、ステント・デリバリーおよび経皮血管形成に使用するための可撓性カテーテル先端に関する。本発明のカテーテル先端は、経皮手法で特に有用な特徴を有するように特別に設計され、この経皮手法において、カテーテルは、事前に配置されたステントを含む狭窄血管、蛇行血管、または血管を通り抜けなければならない。
【背景技術】
【0002】
標準的なステント・デリバリー・システムでは、カテーテルの近位部は、これを比較的硬くまたは不撓性にする材料から製作され、これによってカテーテルに適切なプッシャビリティ(押込伝達性、pushability)を与える。一方、カテーテルの遠位部は、ステントが蛇行血管を通過して望ましいターゲットに適切に移送されることを可能にするように、むしろ可撓性であるように製作される。
【0003】
バルーン・カテーテルの場合、カテーテルの遠位部にあるバルーンは、萎んだ状態で移送され、カテーテルの内部拡張チューブの周囲に巻きつけられ、クリンピング(捲縮)された(crimped)ステントで覆われる。バルーンの遠位では、カテーテル先端は、通常テーパが付されており、バルーン遠位ショルダーは、カテーテルの内部拡張チューブに融着される。カテーテル全体は、ガイド・ワイヤ上を滑らかに動くように設計され、カテーテル先端は、例えば、病変を貫通し、湾曲した血管を通過し、または血管内に事前に配置されたステントを通過するためにカテーテルの先導部の役割りを果たす。
【0004】
カテーテル先端の特性は、カテーテルが血管の粗面、血管の病変または閉塞の表面、または事前に配置されたステントのストラットに引っ掛かるか否かを大きく決定する。
【0005】
ステント・デリバリー・システムの、血管形成術用バルーンシステム上での現在のカテーテル先端は、プラスチック材料でできており、一般にテーパが付されており、困難な解剖学的構造を通してのカテーテルのデリバラビリティ(到達性、deliverability)を目的とした先端形状を有している。デリバラビリティを最適化するために、2つのパラメータを調整することができる。カテーテル先端は、蛇行血管を収容するための長手方向可撓性を有するように設計され得るものであり、かつ/または先端形状およびその半径方向剛性は、障害に遭遇した時に先端の遠縁部の崩壊および/またはカテーテル先端の近位ネックのよじれを避けるために修正され得る。長手方向可撓性は、非常に薄いまたは可撓性の材料を必要とし、その一方で、プッシャビリティおよび半径方向剛性は、厚いまたは硬い材料を必要とするため、カテーテル先端において両方のパラメータを同時に最適化することには問題がある。
【0006】
従って、長手方向に可撓性およびプッシャビリティであり、かつその遠端部(特に遠縁部)に半径方向剛性を有する血管内カテーテル先端の技術には、カテーテルのデリバラビリティを最適化する必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、その遠端部に長手方向可撓性、プッシャビリティ、および半径方向剛性を有する血管内カテーテル先端を提供する。長手方向可撓性とは、長手方向軸に沿って曲がる(例えば、蛇行血管のナビゲーションを容易にするために)能力を意味する。本発明のカテーテル先端は、2つの構成要素を含む。カテーテル先端の第一構成要素は、カテーテル先端に望ましい長手方向可撓性およびプッシャビリティを与えるばね状構造を含む。カテーテル先端の第二構成要素(遠端部)は、半径方向剛性を提供し、カテーテルが血管を通して動かされる際に、例えば、プラークまたは事前にインプラントされたステントのストラットを広がり(flaring)かつ引っ掛かることを防ぐために、丸みとテーパが付されている。よって、例えば、遠端部は、半径方向剛性を与えるために十分に厚いまたは硬い材料から製作することができる。これら2つの構成要素を1つのカテーテル先端にこのように組み合わせることによって、本発明は、カテーテルのデリバラビリティを最適化するために、他の点では矛盾する構造的かつ機能的なパラメータを有する装置を提供する。
【0008】
他の実施形態では、1つの構成要素であるばね状構造が、カテーテル先端に長手方向可撓性およびプッシャビリティを、カテーテル先端の遠端部に半径方向剛性を提供する。
【0009】
さらに他の実施形態では、カテーテル先端は、さらに、バルーンの遠端部と隣接し、かつばね状の要素と連動してカテーテル先端に長手方向可撓性を与えるばね状の要素に取り付けられまたは一体化された可撓管を含む。
【0010】
本発明の装置は、例えば、ステントなどの補綴具の血管内デリバリー、またはバルーン血管形成のために使用され得る。バルーン・カテーテルが使用される場合は、カテーテル先端は、バルーンの遠位にあるカテーテルの一部を構成する。カテーテルにバルーンが取り付けられていない実施形態において、例えばカテーテル自体が拡張可能であり得る胆管ステントシステムでは、胆管にカテーテルを通すために、拡張可能なカテーテルの端部に本発明のカテーテル先端を取り付けてもよい。一般に、カテーテル先端は、このようなカテーテルの遠縁部よりも数ミリ先に延在し得る。
【0011】
向上デリバラビリティパラメータ(enhanced deliverability parameters)の利点に加えて、本発明のカテーテル先端の他の望ましい効果は、より高いX線不透過性であり、これによって、処置すべき解剖学的構造にカテーテルを挿入する際の、カテーテル先端の位置に関する有益なフィードバックをオペレータに提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、ステント・デリバリー・システム上の、ばね状の要素を含む本発明のカテーテル先端の一実施形態を示す。
図1Aは、カテーテル先端上のばね状の要素の位置を示す。
【
図2A】
図2Aは、湾曲した血管内のバルーン・カテーテル・システム上の従来のカテーテル先端を示す。
【
図2B】
図2Bは、湾曲した血管内のバルーン・カテーテル上の本発明の可撓性カテーテル先端の一実施形態を示す。
【
図3A】
図3Aは、従来のカテーテル先端の先端突出部を示す。
【
図3B】
図3Bは、ばね状の要素と半径方向剛性の遠端部とを有する本発明の可撓性カテーテル先端の一実施形態に先端突出部がないことを示す。
【
図4A】図 4Aは、狭窄血管内のバルーン・カテーテル上の従来のカテーテル先端を示す。
【
図4B】図 4Bは、狭窄血管内のバルーン・カテーテル・システム上の本発明の可撓性かつプッシャビリティを有するカテーテル先端の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
他の点では矛盾する2つのパラメータを1つのカテーテル先端に組み合わせることによって血管内カテーテルのデリバラビリティを向上させるために、本発明の装置は、長手方向可撓性、プッシャビリティ、および半径方向剛性を有するカテーテル先端を提供する。特に、本発明のカテーテル先端は、長手方向に可撓性であるだけでなく、カテーテル先端にプッシャビリティを提供することができ、かつ半径方向剛性を有し得る、つまり、カテーテル先端に半径方向のサポートを提供することができるばね状の要素を含む。また、本発明のカテーテル先端は、ばね状の要素の遠端部よりも延在する遠端部を含み得る。遠端部は、先端にプッシャビリティを与え、かつカテーテル先端の遠縁部の広がりを防ぐまたは最小限に抑えるために、また一方で、湾曲したガイド・ワイヤ上で滑って移動するように、テーパが付された形状を有し、かつ十分な半径方向剛性を有する材料から作られることが好ましい。
【0014】
本発明の新規な特徴の組み合わせによって、カテーテル先端の遠縁部が、内腔壁の粗面または事前にインプラントされたステントに引っ掛かるリスクを最小限にして、オペレータが、蛇行血管、病変もしくは狭窄血管、またはステントが挿入された血管を通じてガイド・ワイヤを越えて血管内カテーテルを誘導することを可能にし、かつ可撓性カテーテル先端が、血管狭窄または閉塞の抵抗に対して座屈する(buckle)または崩壊するリスクを最小限にすることができる。
【0015】
本発明の装置について添付の図面を参照して以下に考察し、説明する。これらの図面は、本発明を理解するための例示として、かつ本発明の特定の実施形態の概略を示すために提供されるものであることに留意して下さい。当業者は、等しく本発明の範囲内である他の同様の例を直ちに認識するであろう。これらの図面は、添付の請求の範囲に定義される本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0016】
本発明のカテーテル先端は、カテーテル先端に長手方向可撓性のみならず、プッシャビリティを提供するばね状の要素を含む。ばね状の要素は、カテーテル先端に半径方向剛性も与え得る。本発明のカテーテル先端20の一実施形態は、バルーン拡張可能なステント・デリバリー・システム上の
図1および
図1Aで示される。
図1で示されるのは、バルーン80、バルーン拡張可能なステント85、オプションのX線不透過性マーカー15、およびばね状の要素30を含むカテーテル先端20である。ここではバルーン拡張可能なステントシステム上に示されているが、カテーテル先端20は、蛇行性のまたは部分的に閉塞された内腔をナビゲートしなければならない任意のカテーテルで使用され得る。
図1Aでより詳細に示されるように、本発明のカテーテル先端20の本実施形態は、例えば本実施形態では、引張ばねなどのばね状の要素30を含む。ばね状の要素30は、その近端部から遠端部への一定の直径を有してもよく、または遠端部に向かってテーパが付されてもよい。
【0017】
カテーテル先端がバルーン拡張可能ステントシステム上で使用される
図1および1Aに示されるように、ばね状の要素30は、バルーン80の遠位に位置している。ばね状の要素30は、バルーン・ショルダーに隣接し得る。あるいは、
図1で示されるように、ばね状の要素30は、遠位方向に例えば1または2mm、または近位方向にバルーンの中央または近位結合部(すなわち、バルーンと外管の間の連結部)まで、バルーン・ショルダーから離れて位置し得る。あるいは、ばね状の要素は、カテーテル先端20の遠縁部45の約0.5mm近位に位置する。ばね状の要素30の遠位に遠縁部45まで延在するカテーテル先端20の部分は、カテーテル先端20の遠端部40である。遠端部40は、プッシャビリティと半径方向剛性の両方を提供するのに十分な硬さを有し得る。一実施形態では、遠端部40は、ポリアミドなどの硬い材料で製作し得る。他の実施形態(図示されない)では、ばね状の要素30は、カテーテル先端20の遠縁部45まで延在し、カテーテル先端20の遠端部40に半径方向剛性を提供し得る。この他の実施形態では、ばね状の要素30は、その遠端部に向かってテーパが付され得るが、その必要はない。
【0018】
ばね状の要素30がバルーン80のショルダーから離れたところに位置している場合は、
図1に示されるように、カテーテル先端20は、バルーン80の遠端部とばね状の要素30の近端部との間の距離をブリッジするスペーサー部35を含み得る。スペーサー部35は、長手方向可撓性管であってよい。一実施形態では、スペーサー部35は、ばね状の要素30の近端部にバルーン・ショルダーの遠端部を接続する。スペーサー部35を製作するために使用される材料は、例えば、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)を含み得る。あるいは、スペーサー部35は、ばね状の要素30が挿入される可撓管の延在部であってよい。可撓管のための適切な材料の例は、PEBAX、ポリウレタン、または類似の適切な材料などのブロック共重合体を含む。このような可撓管は、ばね状の要素30の遠端部をちょうど越えて延在してもよく、そこで可撓管が遠端部40の近端部と隣接している。 カテーテル先端20の遠端部40は、ナイロン、PEBAX、または多様な共重合体などの材料で製造されたプラスチック管で形成され得る。遠端部40のテーパは、加熱によってもたらされ得る。多様な管およびばね部材は、熱融着によって接続され得る。
【0019】
図2Aは、優れたプッシャビリティを達成するために硬い材料でできている従来のカテーテル先端が、どのように湾曲した血管の内腔の粗面に引っ掛かり得るかを示している。
図2Aで示されているのは、従来のカテーテル先端1と、従来のカテーテル先端1が例示のために取り付けられたバルーン・カテーテルのバルーン80と、ガイド・ワイヤ50とである。ガイド・ワイヤ50が血管壁90の曲面部に接触すると、ガイド・ワイヤ50は
図2Aに示されるように長手方向に曲がる傾向がある。従来のカテーテル先端1は、ガイド・ワイヤ50よりも長手方向可撓性が低い。よって、
図2Aの挿入図でより詳細に示されるように、従来の硬いカテーテル先端1の遠縁部5は、曲がったガイド・ワイヤ50から血管壁に向かって突き出し、そこで遠縁部5は、血管壁90の内腔の粗面91に引っ掛かる可能性があり、カテーテルのデリバラビリティを困難にし、かつ血管壁90に損傷を与える可能性がある。同様に、カテーテルが、ステントが挿入された血管をトラバースしなければならない場合は、このような従来の装置の突出する遠縁部5は、事前に配置されたステントのストラットまたは他の構造に引っ掛かる可能性がある。
【0020】
図2Bは、カテーテル先端の遠縁部が湾曲した血管の内腔壁の粗面に引っ掛かるリスクを最小限に抑える本発明の一実施形態の特徴を示す。特に、
図2Bは、湾曲した血管において、2つのセクション、すなわち、ばね状の要素30を含むプッシャビリティを備える可撓性のセクションと、遠端部40での硬くかつ半径方向剛性を有するセクションとから成るカテーテル先端20、およびカテーテル先端20が例示のために取り付けられたバルーン・カテーテルのバルーン80を示す。
図2Bの挿入図は、ばね状の要素30の長手方向可撓性をより詳細に示す。ばね状の要素30の長手方向可撓性によって、カテーテル先端20は、血管内腔の曲面に沿って長手方向に撓むため、ガイド・ワイヤ50と共に容易に撓むことを可能にする。よって、遠端部40は、ガイド・ワイヤ50で密に追跡することができ、遠縁部45は、突出して血管壁90の内腔の粗面91に引っ掛かることはない。本実施形態では、
図2Bの挿入図で示されるように、遠端部40はテーパが付されており、このテーパは、遠縁部45が血管壁90の内腔の粗面91に引っ掛かるリスクをさらに減少し得る。ばね状の要素20が可撓管に挿入されない本実施形態または他の実施形態では、ばね状の要素20は、ばねの可撓性の特性を変えずに滑らかな表面を作成し、かつ構造の追跡性を改良するために、可撓性のポリマーまたは類似の材料の層で覆われるかまたは埋め込まれ得る。このような覆いのための材料の例は、ポリウレタンおよびPEBAXを含む。
【0021】
図3Aは、バルーン血管形成システムに取り付けられた従来のカテーテル先端1を示し、またバルーン80と、カテーテル先端1の遠縁部5の突出について技術的な問題を示す。従来のカテーテル先端1の長さに沿って可撓性および半径方向剛性が欠けていると、従来のカテーテル先端1の遠縁部5aは、血管を通って曲がる際に、ガイド・ワイヤ50から突出する傾向がある。従来のカテーテル先端の遠端部の大きな内径および厚い壁は、さらに、突出した遠縁部の問題に貢献し得る。
【0022】
一方、
図3Bは、本発明に従ったカテーテル先端20の可撓性と半径方向剛性の組み合わせが、本発明のカテーテル先端の一実施形態(また、バルーン血管形成システムのカテーテルに取り付けられている)の遠縁部45の広がりをいかに最小限に抑えるかを示している。
図3Bに描かれているのは、スペーサー部35、ばね状の要素30、および遠端部40を含むカテーテル先端20と、バルーン血管形成システムのバルーン80と、ガイド・ワイヤ50とである。遠端部40の半径方向剛性およびテーパ形状は、ばね状の要素30の可撓性と組み合わせて、ガイド・ワイヤを越えた遠縁部45の突出を制限する。ばね状の要素30の長手方向可撓性は、カテーテル先端20がガイド・ワイヤと共に曲がることを可能にして、ガイド・ワイヤから遠縁部45に対する力を最小限にし、かつ遠端部40の半径方向剛性は、プラスチックの変形を最小限に抑える。
図3Bに示されるように、ガイド・ワイヤ50の曲げの結果として、ガイド・ワイヤ50からのこのようなカテーテル先端20の遠縁部45は突出しない。
図3Bで示される実施形態では、遠端部40は、プッシャビリティを提供するために十分な半径方向剛性および硬さを有する材料から製作し得る。他の実施形態では、遠縁部45の半径方向剛性は、ばね状の要素30自体(図示されない)によって提供され得る。このような実施形態では、カテーテル先端20の遠端部にプッシャビリティおよび半径方向剛性を提供するために、ばね状の要素30がカテーテル先端20の遠縁部45、または遠縁部45の近くに延在することが好ましい。この他の実施形態では、ばね状の要素30にテーパが付されることが好ましい。
【0023】
図4Aで示されるように、カテーテル先端が血管の狭窄部と遭遇した場合に、従来のカテーテル先端によって維持される剛性と弾性との間の推定される妥協によって、よじれが生じ得る。例えば、よじれは、バルーンの遠端部またはカテーテル先端内の他の任意の局所的な柔らかいまたは弾力性のある点の近くで生じ得る。バルーン・カテーテル上の従来のカテーテル先端は、
図4Aで、狭窄95を有する血管90を通して押し込まれているのが示されている。また、バルーン血管形成バルーンのためのバルーン80(このバルーンに従来のカテーテル先端1が例示のために取り付けられている)と、ガイド・ワイヤ50とが示されている。
図4Aの挿入図で示されるように、従来のカテーテル先端が狭窄95を通して前進させられた際に、狭窄物は、カテーテル先端に対する摩擦または抵抗を生じ、従来のカテーテル先端1が血管プラークのより硬い物質に負け、よじれるか座屈することとなる。これは、狭窄物が大きなカルシウム沈着を含む(これは珍しいことではない)ときに特に問題である。
【0024】
一方、本発明の可撓性カテーテル先端は、より大きいプッシャビリティを提供し、その可撓性の本体およびスペーサー部のために、よじれを生じない。このことは
図4Bで示され、バルーン・カテーテルに取り付けられた本発明の一実施形態は、狭窄血管を通して押し込まれているのが示されている。図示されているのは、ばね状の要素30、スペーサー部35、および遠端部を含むカテーテル先端と、カテーテル先端が例示のための取り付けられているバルーン血管形成システムのバルーン80と、ガイド・ワイヤ50とである。ばね状の要素30がカテーテル先端20に長手方向可撓性および半径方向のサポートのみならず、改良されたプッシャビリティを提供し得るので、本発明のカテーテル先端に対する狭窄95による摩擦によって、カテーテル先端20がよじれることはない。本発明のカテーテル先端20の遠端部40に関して、本実施形態では、ばね状の要素30自体は、遠端部40に十分なプッシャビリティを提供し得るものであり、かつ/または遠端部40は、プッシャビリティ並びに十分な半径方向剛性を提供するのに十分に硬くまたは厚い材料から製作し得る。
【0025】
長手方向可撓性、半径方向剛性、およびプッシャビリティの望ましい特性を有するあらゆる構造が、本発明に従ったばね状の要素として適している。ばね状の要素の例としては、引張ばね、アコーディオンプラスチック管、および編組のアコーディオンプラスチック管を含む。例えば圧縮ばねを含むいくつかのばねは、ばね状の要素としては好ましくない。引張ばねは、カテーテルが押された時にカテーテルのプッシャビリティまたはカテーテル先端の制御にネガティブな影響を与え得るばねの圧縮または変形を可能にすることなく、長手方向軸に沿って屈曲する助けとなる密に充填されたコイルを有する。
【0026】
ばね状の要素のための適切な材料は、例えば、ステンレス鋼、コバルトクロム、ニチノール、または本明細書の説明から当業者にとって明らかであろう他の適切な材料を含む。ばね状の要素のばね定数の適切な範囲は、0.3〜25gF/mmである。ばね状の要素が巻ワイヤ(例えば、ステンレス鋼ワイヤ)から作られている場合、ワイヤの直径は、0.04〜0.3mm、好ましくは0.06〜0.2mmの範囲であり得る。当業者は、これらのパラメータから、他の材料から構成されるばね状の要素のための適切なワイヤの直径の範囲を認識するであろう。ばね状の要素は、より高いX線不透過性を備えるカテーテル先端を提供するために、X線不透過性の材料を使用して構築され得るものであり、よって、カテーテル先端の改良されたイメージングを可能にする。
【0027】
本発明のカテーテル先端の実施形態は、本明細書において、バルーン拡張可能ステントシステムおよびバルーン血管形成システムのカテーテルに取り付けられることが示され、説明された。しかし、例えば自己拡張型ステントシステム、他の血管内補綴具を移送するために使用される血管内カテーテル、または他の治療用血管内カテーテルを含む、あらゆる血管内カテーテル上で使用されことが企図される。
【0028】
実施形態によって本明細書において特に示され説明された内容について、本発明の精神または範囲から逸することなく、多くの変更、追加、修正、及びその他の適用がなし得ることが、当業者によって理解されるであろう。従って、以下の請求項によって定義される本発明の範囲は、すべての予測可能な変更、追加、修正又は適用を含むことが意図されている。