特許第5797209号(P5797209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797209
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】自動注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20151001BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   A61M5/20 510
   A61M5/32 510K
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-553301(P2012-553301)
(86)(22)【出願日】2011年2月16日
(65)【公表番号】特表2013-533752(P2013-533752A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】EP2011052299
(87)【国際公開番号】WO2011101377
(87)【国際公開日】20110825
【審査請求日】2014年2月6日
(31)【優先権主張番号】61/412,083
(32)【優先日】2010年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10153993.0
(32)【優先日】2010年2月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エクマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ドナルド・バロー−ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】ヤニック・ホワマンド
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/007305(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/037141(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20− 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−中空針(4)、及びシリンジ(3)をシールして、薬剤(M)を移動するためのストッパ(25)を備えたシリンジ(3)、を含有するように配置された細長い外側ケーシング(2)(ここで、外側ケーシング(2)は、遠位端(D)及び注射サイトに対して適用されるように意図されたオリフィス(6)を備えた近位端(P)を持ち、ここで、シリンジ(3)は外側ケーシング(2)に対して摺動可能に配置される)、
−起動の際、以下のことが可能なばね手段(11)、
−外側ケーシング(2)の内側の被覆位置から前進位置に、オリフィス(6)を通して、近位端(P)を通過して針(4)を押すこと、
−薬剤(M)の用量を供給するためにシリンジ(3)を操作すること、及び
−薬剤(M)送達後、針(4)を備えたシリンジ(3)を被覆位置へと後退させること、及び
−手動操作前に、ばね手段(11)を加圧された状態においてロックするように、そして手動操作の際に、注射のためにばね手段(11)を開放できるように配置される起動手段(10)、を含んでなる、液体薬剤(M)の用量を投与するための自動注射器(1)であって、
ばね手段(11)は、一端(11.1)が外側ケーシング(2)内に、そして他端が縦軸の周りに回転可能な第一の歯車部材(13)に基礎が置かれるトーションばね(11)であり、ここで、回転の際、第一の歯車部材(13)は近位端(P)に向かって第二の歯車部材(16)を並進的に動かすように配置され、第二の歯車部材(16)は、近位端(P)に向かってストッパ(25)を押すために回転するのを防止され、そしてストッパ(25)に連結され、ここで、第一の歯車部材(13)は、手動操作前回転を防止されるように起動手段(10)と係合され、そして手動操作の際に、起動手段(10)から係合解除され、さらに
第一の歯車部材(13)は、カム従動チューブであり、そして第二の歯車部材(16)は、親ねじチューブであり、ここで、親ねじチューブ(16)は、カム従動チューブ(13)内にはめ込み式にされ、ここで親ねじチューブ(16)は、少なくとも一つのボールベアリング(21)によってカム従動チューブ(13)と係合される親ねじのねじ山を有することを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の自動注射器(1)であって、シリンジが本質的にチューブ状のシリンジキャリヤ(26)中に保持され、そしてその中のその近位端で支持され、ここで、シリンジキャリヤ(26)は親ねじチューブ(16)中に摺動可能に配置されることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項3】
請求項に記載の自動注射器(1)であって、第一の歯車部材(13)が、ジョイント並進運動用であるが独立した回転用に、後退スライダチューブ(17)に連結され、ここで、後退スライダチューブ(17)は、回転が防止されるように外側ケーシング(2)の遠位部分に配置され、そしてここで、ラッチ(19)は、後退スライダチューブ(17)が軸方向に動くのを防止するように外側ケーシング(2)内に設けられ、第二の歯車部材(16)が最近位位置にあるか又はその近くにあるとき、ラッチ(19)は、第二の歯車部材(16)の傾斜路機構(32)によって係合解除可能であり、ここで後退スライダチューブ(17)が後退するとき、後退スライダチューブ(17)は、シリンジ(3)と共にシリンジキャリヤ(26)を引き連れるための少なくとも一つのドッグ機構であって、親ねじチューブ(16)中の凹部を通して内側に伸び、シリンジキャリヤ(26)に係合するドッグ機構を含むことを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、第二の歯車部材(16)が、ジョイント軸方向運動用の第二の歯車部材(16)と開放可能に係合され得るプランジャによってストッパ(25)に連結され、ここで、プランジャは、第二の歯車部材(16)がその最近位位置に達する際に、第二の歯車部材から係合解除可能であることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項5】
請求項に記載の自動注射器であって、プランジャが、少なくとも一つのプランジャボール戻り止め(27)によって、第二の歯車部材と係合可能であり、ここで、ボール戻り止め(27)は、係合したとき、第一の歯車部材(13)によって支持され、そしてここで、プランジャは第一の歯車部材(13)中のポケット(31)に達するボール戻り止め(27)によって、及びポケット(31)内に落ちる戻り止めボールによって係合解除可能であることを特徴とする、上記自動注射器。
【請求項6】
請求項又はに記載の自動注射器であって、プランジャが、互いにはめ込み式にされたプランジャ後部(22)及びプランジャ前部(23)を含み、ここで、プランジャばね(24)はプランジャ後部(22)とプランジャ前部(23)の間に配置され、ここで、プランジャばね(24)は、プランジャが、近位端(P)に向かって前進してストッパ(25)を押したとき、部分的に圧縮されるよう配置されることを特徴とする、上記自動注射器。
【請求項7】
請求項に記載の自動注射器(1)であって、第二の歯車部材(16)は、第二の歯車部材(16)の近位端にそれぞれの粘性ダンパ(29)を含有するポケットが設けられ、粘性ダンパ(29)は、第二の歯車部材(16)がその最近位位置にほぼ達したとき、外側ケーシング(2)の近位端に配置されたそれぞれのリブ(30)によって圧縮されるように配置され、そうすることによって第二の歯車部材からの負荷の部分は分解され、そしてプランジャばね(24)が拡張することが可能になることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項8】
請求項のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、第二の歯車部材(16)が、その最近位位置にあるとき、外側ケーシング(2)においてボトムアウトしたとき、後退スライダチューブ(17)が第一の歯車部材(13)によって後退可能で、ここでラッチ(19)が傾斜路機(32)によって解放されることを特徴とする、上記自動
注射器(1)。
【請求項9】
請求項のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、第一の歯車部材(13)及び後退スライダチューブ(17)が、互いに面していて、そして連結リング(20)によって一緒に保持されるそれぞれのショルダ(17.1、13.1)を示すことを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項10】
請求項のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、親ねじのねじ山が、中空針(4)を挿入するとき、第二の歯車部材(16)をより早くそしてより小さな力を用いて、そして薬剤(M)を排出するとき、よりゆっくりとより大きな力を用いて前進させるように配置された可変ピッチを有することを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、起動手段(10)が、外側ケーシング(2)の遠位端に配置され、そして近位方向(P)に押されることによって操作可能であるトリガボタン(10)であることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項12】
請求項11に記載の自動注射器(1)であって、トリガボタン(10)が、相対的な回転を防ぐように外側ケーシング(2)にスプラインされ、相対的な回転を防止するように、初期状態において係合された縦方向スプラインによって、第一の歯車部材(13)の遠位端に係合可能であり、そして近位方向(P)にトリガボタン(10)を押すことによって係合解除可能であることを特徴とする、上記自動注射器(1)。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の自動注射器(1)であって、ロッキングカラー(12)が外側ケーシング(2)の遠位端(D)に配置され、そこでロッキングカラー(12)は、ロックされる位置とロック解除される位置の間で回転可能で、ここで、ロックされた位置において、トリガボタンは押されることが防止され、そしてロック解除された位置において、押されるように開放されることを特徴とする、自動注射器(1)。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の自動注射器(1)であって、指保護具(7)が近位端(P)で外側ケーシング(2)内に設けられ、指保護具(7)は、中空針(4)に配置された保護ニードルシールド(5)に重みがかかるように配置された二つの内側に向かって付勢されるばねアーム(8)を含んでなり、板金ばねは、遠位方向(D)に付勢された各ばねアーム(8)に割り当てられたそれぞれのロッキングアーム(9)を更に含み、従って、保護ニードルシールド(5)が所定の位置にあるとき、それぞれのばねアーム(8)に重みがかかっており、ここで、ばねアーム(8)は、保護ニードルシールド(5)が取り外されたとき、内側に向かって動くように配置され、従ってロッキングアーム(9)は、ばねアーム(8)が外側に向かって再び押されることを防止する位置に遠位に動くことが可能になる、上記自動注射器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1のプレアンブルに記載の、液体薬剤の用量を投与するための自動注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
注射薬の投与は、使用者及び健康管理専門家に対して、多くの精神的及び肉体的両方のリスク及び課題を供するプロセスである。
【0003】
注射デバイス(つまり、薬剤容器から薬剤を送達することが可能なデバイス)は典型的には二つのカテゴリに分けられ得る:手動デバイス及び自動デバイス。
【0004】
手動デバイスにおいて、使用者は、針を通して流体を駆動するために機械的エネルギを供さなければならない。これは、典型的には、注射中に使用者によって連続して押されなければならない幾つかの形態のボタン/プランジャによってなされる。この方法から使用者に対して多くの不利益な点がある。もし、使用者がボタン/プランジャを押すことを停止するならば、注射も停止するであろう。これは、もしデバイスが適切に使用されないならば(つまり、プランジャがその端部位置へと完全に押されないならば)、使用者が過少用量を送達できることを意味する。使用者にとって、特に、もし、患者が老齢者であるか手先の器用さに問題がある場合、注射する力は高過ぎ得る。
【0005】
ボタン/プランジャを伸ばすことはあまりにも大変でありかもしれない。従って、完全に細長いボタンに達することは使用者にとって不便であり得る。注射する力及びボタン延長の組合せによって、手の震え/振動が引き起こされ得て、次いでそれによって挿入された針が動くため不快感が増すことになる。
【0006】
自動注射器デバイスは、注射される治療薬の自己投与を患者にとってより容易にすることを目的とする。自己投与注射器を用いて送達される現在の治療薬には、糖尿病用薬物(インスリン及びより新しいGLP−1クラスの薬物の両方)、偏頭痛、ホルモン治療薬、抗凝血剤などのための薬物が挙げられる。
【0007】
自動注射器は、標準のシリンジから非経口薬物を送達することに関わる行動を完全に又は部分的に代替するデバイスである。これらの行動には、保護シリンジキャップの取り外し、患者の皮膚内への針の挿入、薬剤の注射、針の取り外し、針のシールド、及びデバイスの再使用の防止が挙げられ得る。これによって、手動デバイスの多くの不利益な点が克服される。注射力/ボタン延長、手の振動及び不完全な用量の送達の可能性が低減される。トリガは多くの手段、例えば、トリガボタン又はその注射深さに到達する針の行動によって実行され得る。幾つかのデバイスにおいて、流体の送達エネルギはばねによって供される。
【0008】
特許文献1には、張力ばねが開放されるとき、液体薬剤の事前に測られた量を自動的に注射する自動注射デバイスが開示されている。張力ばねによって、それが開放されるとき、アンプル及び注射針が保存位置から展開位置へと動かされる。その後、アンプルの内容物が、ピストンをアンプル内部に前方に向かって無理に押す張力ばねによって排出される。液体薬剤が注射された後、張力ばね中に蓄えられた張力が開放され、そして注射針が自動的に後退されてその元の保存位置へと戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願、2002/0095120A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、改良された自動注射器を供することである。
【0011】
本目的は請求項1による自動注射器によって達成される。
【0012】
本発明の好ましい実施態様は従属請求項において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、液体薬剤の用量を投与するための自動注射器は、以下を含む:
−中空針、及びシリンジをシールして、薬剤を移動するためのストッパを備えたシリンジを含有するように配置された細長い外側ケーシング(ここで、外側ケーシングは、遠位端及び注射サイトに対して適用されるように意図されたオリフィスを備えた近位端を持ち、ここで、シリンジは外側ケーシングに対して摺動可能に配置される)、
−起動の際、以下のことが可能なばね手段、
−外側ケーシングの内側の被覆位置から前進位置に、オリフィスを通して、近位端を通過して針を押すこと、
−薬剤の用量を供給するためにシリンジを操作すること、及び
−薬剤送達後、針を備えたシリンジを被覆位置へと後退させること、
−手動操作前に、ばね手段を加圧された状態においてロックするように、そして手動操作の際に、注射するためにばね手段を開放できるように配置される起動手段。
【0014】
この特許出願の文脈において、用語「近位」は、注射中に患者に向かって指し示している方向を言及しており、一方、用語「遠位」は、患者から離れて指し示している反対方向を言及している。
【0015】
本発明によれば、ばね手段は、外側ケーシング中の一端に置かれ、そして第一の歯車部材において他端で縦軸の周りに回転可能なトーションばねである。回転の際に、第一の歯車部材は近位端に向かって第二の歯車部材を並進的に動かすように配置される。第二の歯車部材は、近位端に向かってそれを押すために回転するのを防止され、そしてストッパに連結される。第一の歯車部材は、手動操作前回転を防止されるように起動手段と係合され、そして手動操作の際に、起動手段から係合解除される。
【0016】
針を挿入するため、シリンジを完全に空にするため、そしてシリンジ及び針を注射後に、安全な位置に後退させるために、単一トーションばねが使用される。トーションばねの主要な利点は、力がストッパ及びシリンジの上に円滑にかけられる点であり、一方、従来の圧縮ばねは、自動注射器のガラスシリンジ又は他の部品を壊し得るかなり急激な力の展開を示す。
【0017】
第一の及び第二の歯車部材は、互いの内にはめ込み式にされたチューブの形であり得る。第一の歯車部材はカム従動チューブであり得て、そして第二の歯車部材は親ねじチューブであり得て、ここで、親ねじチューブはカム従動チューブ内にはめ込み式にされる。親ねじチューブは、少なくとも一つのボールベアリングによってカム従動チューブと係合される親ねじのねじ山を有する。代替実施態様において、カム従動チューブはピンによって、親ねじと係合され得る。しかしながら、低い摩擦接触を達成するために、ボールベアリングが好まれる。
【0018】
シリンジは本質的にチューブ状のシリンジキャリヤ中に保持され、そしてその中のその近位端で支えられ、ここで、シリンジキャリヤは親ねじチューブ中に摺動可能に配置される。そのフランジでよりはむしろその近位端でシリンジを支持することによって、フランジは、特に、ガラスシリンジにおいて、より壊れやすいため、負荷の下でシリンジを損傷することが避けられる。
【0019】
好ましい実施態様において、第一の歯車部材が、一緒に並進運動をするが独立した回転用に、後退スライダチューブに連結される。後退スライダチューブは、例えば、外側ケーシング中の対応するフラット部又はスプライン中に案内された一つ又はそれ以上のフラット部又はスプラインによって回転が防止されるように外側ケーシングの近位部分に配置される。更に、ラッチは、後退スライダチューブが軸方向に動くのを防止するように外側ケーシング内に設けられる。ラッチは、自動注射器の操作の殆どの部分に対して、つまり、針挿入及び注射の前及びその際中に、係合される。注射の最後に、第二の歯車部材が最近位位置内又はその近くに前進されるかとき、ラッチは、ラッチを外側に向かって押している第二の歯車部材の傾斜路機能によって係合解除可能であり、そのようにして、遠位方向に並進的に動かされるよう、後退スライダチューブを開放する。ラッチが係合される限り、第二の歯車部材は、軸方向に固定されたそして回転している第一の歯車部材によって近位方向に無理やり押される。ラッチが係合解除されるとき、第二の歯車部材は、その走行の最後に少なくともほぼ達しており、そして外側ケーシングの近位端でボトムアウトしている。係合解除されたラッチのせいで、第二の歯車部材が更に前進できないので、第一の歯車部材及び後退スライダチューブは、ここでトーションばね及び第一の歯車部材の連続した回転によって遠位方向に引かれる。後退スライダチューブが後退されるとき、後退スライダチューブは、シリンジを用いてシリンジキャリヤを引き連れるために少なくとも一つのドッグ機能を含む。シリンジキャリヤは、中空針が完全に覆われるまで、自動注射器内に後退させられる。ドッグ機能は、好ましくは、後退スライダチューブから親ねじチューブにおける凹部を通って内側に向かって伸びる。
【0020】
中空針を挿入して用量を注射するために、第二の歯車部材は、一緒に軸方向に動くよう、第二の歯車部材と開放可能に係合可能であるプランジャによってストッパに連結される。注射後にシリンジが後退させられることを可能にするために、プランジャは、第二の歯車部材がその最近位位置に達する際に、第二の歯車部材から係合解除され得る。
【0021】
好ましい実施態様において、少なくとも一つのプランジャボール戻り止めによって、プランジャは第二の歯車部材と係合可能である。戻り止めボールは、第二の歯車部材における凹部中に保持され得て、そしてプランジャにおける周辺ノッチを係合し得る。ノッチと係合状態に留まるために、ボールは、第二の歯車部材がその走行の最後に達するまで、第一の歯車部材によって支えられる。この時点で、ボール戻り止めは第一の歯車部材中のポケットに達し、その結果、それはもはや支えられず、そして戻り止めボールはポケット内に落ち、そのようにしてプランジャを第二の歯車部材から係合解除する。
【0022】
好ましくは、プランジャは、互いの内にはめ込み式にされたプランジャ後部及びプランジャ前部を含む。プランジャばねは、プランジャ後部とプランジャ前部の間に配置される。プランジャばねは圧縮ばね又は泡の一つ又は空気ばねであり得る。プランジャが、近位端に向かってストッパを押すよう前進されるとき、それは部分的に圧縮されるよう配置される。この部分的圧縮は、ストッパとシリンジの内壁の間の摩擦故に、そして中空針中の小さな流体溝を通して無理やり流される流体薬剤の流体力学的抵抗故に起こる。
【0023】
第二の歯車部材には、第二の歯車部材の近位端に各粘性ダンパを含有するポケットが供され得る。粘性ダンパは、第二の歯車部材がその最近位位置にほぼ達するとき、外側ケーシングの近位端に配置されたそれぞれのリブによって圧縮されるように配置される。そうすることによって第二の歯車部材からの負荷の部分は分解され、そしてプランジャばねが伸びることが可能になる。そのようにして、ストッパは圧縮ばねによって更に前進され、その結果、残留薬剤がシリンジから排出される。これによって、シリンジ及びストッパが、シリンジの全内容物を排出すること及び注射の最後にシリンジの後退を正確にトリガすることを事実上不可能にしている大きな許容誤差に陥りやすいという問題を処理することが可能になる。従来の自動注射器を用いると、ストッパは、後退がトリガされ得る前にボトムアウトするであろう。このようにして、シリンジは空にされるが、シリンジ及び針は全く後退されないため、針刺し怪我のリスクは大きく増加されるか、又は、後退はシリンジ中でストッパがボトムアウトする前にトリガされるであろう。この場合、シリンジ及び針は安全な位置へと本当に後退されるが、シリンジは完全には空にされない。
【0024】
粘性ダンパ及びプランジャばねを備えた自動注射器によって両方の問題を解決することが可能になり、中空針が安全な位置へと信頼性を持って後退され、そして高価な薬物を用いるとき特に望ましいことであるが、シリンジが完全に空になる。シリンジを空にすることは用量の正確さに対しても重要である。
【0025】
ストッパがその走行の最後にほぼ達したとき、粘性ダンパは外側ケーシングの近位端中のリブに接触する。速度依存負荷は、速度を遅くしている第二の歯車部材の動きに抗する。その結果、プランジャ上の負荷は減じられる。これによって、プランジャばねが伸びて、薬剤の残留用量を空にすることが可能になる。第二の歯車部材は、それが外側ケーシングの近位端においてそれがボトムアウトするまで、更に前進させられる。この少し前に、傾斜路機能はラッチと係合解除し、その結果、後退スライダチューブは遠位方向に動かされ得て、プランジャ及び第二の歯車部材がポケット内に落ちる戻り止めボールによって連結解除されるや否や、シリンジキャリヤ及びシリンジを、それを用いて取る。このようにして、ストッパは後退の失速を避けられ、そしてシリンジは完全に空になる。
【0026】
第一の歯車部材及び後退スライダチューブは、好ましくは、互いに面していてそして連結リングによって一緒に保持される各周囲のショルダを示す。これによって、独立した回転が可能になり、一方で、一緒に軸方向に動くことが確保される。
【0027】
好ましい実施態様において、親ねじのねじ山は、中空針を挿入するとき、第二の歯車部材をより早くそしてより小さな力を用いて(深いピッチ)、そして薬剤を排出するとき、よりゆっくりとより大きな力を用いて(平らなピッチ)前進させるように配置された可変ピッチを有する。第二の歯車部材の走行の最後に、ピッチは、好ましくは、粘性ダンパを圧縮するための力を増すようにもっと平らにさえなる。急激な針の挿入は患者によって感じられる痛みを減じることが知られている。可変ピッチよっても、用量の一様の送達が可能になる。自動注射器の操作サイクルに必要な時間の再現性は使用者にとって重要である。もし、必要な時間がデバイスの間で非常に変わるならば、使用者はそれで混乱し得て、そして注射剤を送達するときにミスをし得る。親ねじ又はカム軌道の圧力角度を変えることによって、例えば、もし、粘性ダンパを圧縮するとき又は針の後退をトリガするためラッチを操作するときのように、デバイスサイクル中に高い軸負荷を要求する工程があるならば、ばねからの負荷が多かれ少なかれプランジャに直接かけられることが可能になる。
【0028】
起動手段は、外側ケーシングの遠位端に配置されたトリガボタンであり得て、そして近位方向に押されることによって操作でき得る。
【0029】
好ましい実施態様において、トリガボタンは、相対的な回転を防ぐように外側ケーシングにスプラインされる。トリガボタンは、相対的な回転を防ぐように、初期状態において係合された縦方向のスプラインによって、第一の歯車部材の遠位端に係合可能であり得て、そして近位方向にトリガボタンを押すことによって係合解除され得る。このようにして、スプラインが係合されるがトリガボタンが押されないとき、トーションばねの負荷は外側ケーシングにおいて静的に分解され、その結果、第一の歯車部材は回転できない。トリガボタンが押されるとき、スプラインは係合解除され、そして第一の歯車部材は、トーションばねによって駆動されて回転し始める。
【0030】
ロッキングカラーは外側ケーシングの遠位端に配置され得て、そこでロッキングカラーは、ロックされた位置とロック解除された位置の間で回転可能である。ロックされた位置において、トリガボタンは近位の動きが防がれ、そしてロック解除された位置において、トリガボタンは押され得て、近位の動き及びデバイスの操作が可能になる。このようにして、自動注射器は意図せずにトリガされることを防がれる。
【0031】
通常、針を滅菌状態に維持し、そしてそれが機械的に損傷されることを防ぐための保護ニードルシールドが中空針に装備される。保護ニードルシールドは、自動注射器又はシリンジが組立てられるとき、針に取り付けられる。
【0032】
本発明の好ましい実施態様において、指保護具は近位端で外側ケーシング中に提供される。指保護具は、中空針に配置され得る保護ニードルシールドに重みがかかるように配置された二つの内側に向かってバイアスがかけられたばねアームを含む。板金ばねは、遠位方向に付勢されたそれぞれのばねアームに割り当てられた、そのようにして、保護ニードルシールドが取り付けられているとき、それぞれのばねアームに重みがかかっているそれぞれのロッキングアームを更に有する。ばねアームは、保護ニードルシールドが取り外されるとき、内側に向かって動くように配置され、そのようにしてロッキングアームは、ばねアームが外側に向かって再び押されることを防止する位置に遠位に動くことが可能になる。
【0033】
指保護具のばねは、板金、ワイア又はプラスチックばねであり得る。
【0034】
従来の自動注射器は、デバイスの本体内で幾らかの距離だけ後方に保持された針を用いて始めることによって針の安全性を達成する。作動の際に、針は、隠されている距離及び要求される注射深さの合計である距離だけ前方に向かって動く。板金ばねを備えた前述の指保護具を使用することによって、隠される距離は安全に減らされ得る。このようにして、自動注射器はより短くされ得て、使用者にとってより持ち易くそして魅力的になり得る。
【0035】
ハウジングは、シリンジを検査するための少なくとも一つの覗窓を有し得る。
【0036】
自動注射器は、好ましくは、特に、鎮痛剤、抗凝血剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、Lovenox、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、蛋白質、抗体、及び複合糖質の一つを送達するための、皮下又は筋肉内の注射のために使用され得る。
【0037】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、好ましくは、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施態様において、薬学的に活性な化合物は、最大で1500Daまでの分子量を有し、及び/又は、ペプチド、蛋白質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、抗体、酵素、抗体、ホルモン、若しくはオリゴヌクレオチド、又は上記の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症、及び/又は、関節リウマチの治療、及び/又は、予防に有用であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の治療、及び/又は、予防のための、少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、又はその類似体若しくは誘導体、又はエキセンジン−3又はエキセンジン−4、若しくはエキセンジン−3又はエキセンジン−4の類似体若しくは誘導体を含む。
【0038】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで代替され、そして、B28位において、Lysは、Proで代替されてもよく;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0039】
ヒトインスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0040】
エキセンジン−4は、例えば、エキセンジン−4(1−39)、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドを意味する。
【0041】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下の化合物リスト:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);又は
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39);
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);
ここで、基−Lys6−NH2は、エキセンジン−4誘導体のC−末端と結合してもよく;
【0042】
又は以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
desMet(O)14,Asp28,Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5,desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25, Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2
又は前述のいずれかのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物;
から選択される。
【0043】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン (ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどのRote Liste、2008年版、50章に表示されている脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は規制活性ペプチド及びそれらの拮抗剤である。
【0044】
多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、又は超低分子量ヘパリン、若しくはその誘導体などのグルコアミノグリカン、又はスルホン化された、例えば、上記多糖類のポリスルホン化形体、及び/又は、薬学的に許容可能なその塩がある。ポリスルホン化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例としては、エノキサパリンナトリウム塩がある。
【0045】
薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基塩がある。酸付加塩としては、例えば、HCl又はHBr塩がある。塩基塩は、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、Na+、又は、K+、又は、Ca2+から選択されるカチオン、又は、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)を備えた塩であり、ここで、R1〜R4は互いに独立に、水素;場合により置換されるC1−C6アルキル基;場合により置換されるC2−C6アルケニル基;場合により置換されるC6−C10アリール基、又は場合により置換されるC6−C10ヘテロアリール基である。薬学的に許容される塩の更なる例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences”17編、Alfonso R.Gennaro(編集),Mark
Publishing社,Easton, Pa., U.S.A.,1985 及び Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0046】
薬学的に許容可能な溶媒和物としては、例えば、水和物がある。
【0047】
自動注射器の代替実施態様は、最初に針を備えたシリンジを前進させて用量を注射し、次に逆回転で針を後退させるために、回転方向を逆にするように、外側ケーシングに横たえられたトーションばねの端部をスワップするように配置され得る。このようにして、自動注射器の全長は更に減じられ得る。
【0048】
本発明の適用性の更なる範囲は以下に述べる詳細な記述から明らかになるであろう。しかしながら、この詳細な記述から、本発明の精神及び範囲内で、種々の変更及び修正が当業者には明白になるであろう故に、詳細な記述及び具体的な例は、本発明の好ましい実施態様を表していながらも、説明目的でのみ供されると理解されるべきである。
【0049】
図示のためにのみ供され、それゆえに本発明を限定するものではない、本明細書の以下に供される詳細な記述及び添付図面から、本発明はより完全に理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1A及び図1Bは、二つの縦方向断面における、使用前の、シリンジ、中空針及び単一トーションばねを備えた自動注射器である。
図2】使用前の注射デバイスの詳細図である。
図3】剛直針シールドが取り除かれた後の注射デバイスの詳細図である。
図4図4A図4Eは、トリガボタン及びボタンロッキングカラーの詳細図である。
図5図5A図5Cは、トリガボタンの詳細な縦断面である。
図6】外側ケーシングが取り外された自動注射器の斜視図である。
図7】外側ケーシング及びトーションばねが取り外された自動注射器の斜視図である。
図8】外側ケーシング、トーションばね及びカム従動チューブが取り外された自動注射器の斜視図である。
図9】シリンジ及び針が前進させられた自動注射器である。
図10】注射工程の最後に近い自動注射器である。
図11】注射工程の最後での自動注射器である。
図12】針がハウジング内に後退した、注射工程の終了後の自動注射器である。
【0051】
対応する部品には全ての図において同じ参照記号がマークされる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、自動注射器1の異なる断面における二つの縦方向断面を示し、ここで、異なる断面は互いに約90度回転される。自動注射器は細長いハウジング2を含む。中空針4を備えたシリンジ3は自動注射器1の近位部分において配置される。自動注射器1が組立てられるとき、保護ニードルシールド5は針4に取り付けられる、そして近位端Pでオリフィス6を通って突き出ている。板金ばねの形をした指保護具7は保護ニードルシールド5の近くに配置される。指保護具7は、図2において詳細に示される。指保護具7は、内側に向かってバイアスされる二つのばねアーム8を含み、その結果、それらはそれがまだ取り付けられている限り、保護ニードルシールド5に重みがかかる。各ロッキングアーム9は各ばねアーム8に割当てられる。ロッキングアーム9は近位方向Dにバイアスをかけられ、その結果、それらは保護ニードルシールド5が取り付けられるとき、ばねアーム8の一部に重みがかかる。保護ニードルシールド5が針4から離れて引かれる故に(図3を参照)、ばねアーム8は内側に向かって動いて緩和し、それらの間に、針をそれに触れずに通過させるのに丁度十分の幅の小さな間隙を残す。これによって、ロッキングアーム9は、ばねアーム8からクリアされるようになり得て、そしてばねアーム8が外側に向かって再び押されることをそれらが防ぐ位置内に遠位で動き得て、その結果、かなり大きなオリフィス6にも拘らず、使用者は針4の先端に触れることができない。ばねアーム8が保護ニードルシールド5に重みがかかるばねアーム8の先端は、保護ニードルシールド5を取り除くことを容易にするように丸められる。
【0053】
自動注射器1の近位端Dで、トーションばね11を開放するようにトリガボタン10が配置される。トリガボタン10は、近位端Dにやはり配置されるロッキングカラー12によってロックされ得るか又はロック解除され得る(詳細は図4を参照)。トリガボタン10には外側ケーシング2中の各―スロット2.1と係合する多くのトリガボタン10.1が備えられ、その結果トリガボタン10は外側ケーシング2に対して回転することが防がれるが、一方で、外側ケーシング2内に或る距離だけ押されることは可能になる。スロット2.1の少なくとも一つは縦方向クリアランス2.2を有する。ロッキングカラー12は、やはり―スロット2.1に係合されたロッキングカラー12.1(図4eを参照)を有する。カラー12において供される小さなピン12.2は、カラー12の軸方向の動きを防ぐためにスロット2.1の案内クリアランス2.3中に係合する。図4bにおいて、突き出し12.1はスプライン10.1の一つと整列され、そのようにしてトリガボタン10が押されることが防がれる。
【0054】
使用者は保護ニードルシールド5を針4から取り外す。この目的のために、(示されていない)デバイスキャップが保護ニードルシールド5に取り付けられ得る。針のシールド5が取り外されるとき、指保護具7は事故による針刺し怪我から使用者を保護するよう、取り付け位置内にロックする。
【0055】
トリガボタン10をロック解除するために、ロッキングカラー12は回転される。
【0056】
注射の準備において、使用者はロッキングカラー12を図4cにおける矢印によって指示された方向に小さな角度だけ回転させる。このようにして突き出し12.1はスプライン10.1との整列から離れてそしてクリアランス2.2内に回される。トリガボタン10はここで押し下げられ得る(図4d参照)。
【0057】
自動注射器1は、トリガボタン10がロックされた位置で通常、出荷される。
【0058】
トーションばね11は外側ケーシング2の内部に配置され、そして外側ケーシング2中のその遠位端11.1を自動注射器1の近位端Dの近くに有して横たえられる(図5参照)。トーションばね11の近位端11.2はトーションばね11の内部に配置されたカム従動チューブ13において横たえられ、そして外側ケーシング2に対して回転可能である。自動注射器1の近位端D近くで、カム従動チューブ13は、カム従動チューブ13内で自在に伸縮される、実質的にチューブ状の連結部材14と係合される。図5は連結部材14をもっと詳細に示す。カム従動チューブ13及び連結部材14の遠位端に、トリガボタン10が押されないとき、互いに係合される各縦方向のスプライン15が供される(図5a参照)。トリガボタン10は外側ケーシング2にスプラインされ(図4参照)、その結果、トーションばね11の負荷が静的に分解される。トリガボタン10は、相対的な回転を防ぐように連結部材14に取り付けられる。又は、トリガボタン10及び連結部材14は一体の部品であり得る。
【0059】
更に、カム従動チューブ13は親ねじチューブ16を用いて自在に伸縮される。親ねじチューブ16は、親ねじチューブ16が回転するのを防ぐように、一方、それが近位方向Pに軸方向に動かされることを可能にするように、外側ケーシング2の近位部分に配置された後退スライダチューブ17中に支えられ、そして案内される。今度は、図1において示されるような少なくとも初期状態において、後退スライダチューブ17が外側ケーシング2に対する回転及び並進の両方を防がれるように、フラット部18及びラッチ19によって外側ケーシング2と係合される。如何にして後退スライダチューブ17が、軸方向に動かされるために、ラッチ19から係合解除されるかが以下に示されるであろう。後退スライダチューブ17及びカム従動チューブ13には、相対的な回転を可能にするが、それらが独立して軸方向に動かされることは防がれるように、連結リング20によって一緒に保持されたそれぞれのショルダ17.1、13.1が供される。親ねじチューブ16は、多くのボールベアリング21によってカム従動チューブと係合される外部親ねじを有する。従って、カム従動チューブ13の回転によって、親ねじチューブ16の並進運動が起こる結果となる。
【0060】
図1において示された初期状態において、後退スライダチューブ17は回転も軸方向に動くこともできず、カム従動チューブ13は軸方向に動くことができず、そして連結部材14とのスプライン係合によって回転することが防がれ、そして親ねじチューブ16は回転が防がれる。
【0061】
注射を始めるために、使用者はオリフィス6を備えた自動注射器1を注射部位上の前方に置き、そしてトリガボタン10を押し下げる。トリガボタン10が押されるとき、連結部材14はカム従動チューブ13内に更に押され、その結果、連結部材及びカム従動チューブ13のスプライン15が互いにクリアするようになる。これによって、トーションばね11のトルクのせいで、カム従動チューブ13が回転することが可能になる。この回転によって、近位方向Pへの親ねじチューブ16の並進運動が引き起こされる。親ねじチューブ16の内部で、プランジャ後部22及びプランジャ前部23を備えた二部分のプランジャが配置され、そしてプランジャ後部22が中空のプランジャ前部23内に自在に伸縮する。プランジャ後部22が近位方向Pに押されるとき、プランジャ後部22に重みがかかる圧縮ばねの形をしたプランジャばね24が配置される。次いで、プランジャ前部23はシリンジ3を遠位でシールし、そして薬剤Mを、中空針4を通して移動するように配置されたストッパ25に対して押す。シリンジはシリンジキャリヤ26中に保持され、そしてその中にその近位端で支えられる。プランジャ後部22は一緒に軸方向に動くため、親ねじチューブ16中の凹部に配置された、そしてプランジャ後部22の周辺ノッチ28中に案内されたプランジャボール27によって親ねじチューブ16に連結される。図1において示された初期位置において、プランジャボール27は、プランジャ後部22及び親ねじチューブ16の係合解除を避けるよう、カム従動チューブ13によって取り付けられて保持される。
【0062】
その結果、親ねじチューブ16が近位方向Pに前進させられるとき、シリンジ3はストッパ25上を押しているプランジャによって前方に向かって駆動される。
【0063】
親ねじチューブ16の外部親ねじは可変ピッチを有する。図において示された実施態様において、ピッチは外部親ねじの近位部分においてより険しい(図1参照)。これによって患者にとって不必要な苦痛を避けるため、患者の皮膚内への、中空針4の迅速な挿入が可能になる。シリコン処理された小さなゲージの針を挿入するために要求される負荷は5Nの範囲にあると考えられ、それは比較的に低く、その結果、ねじ係合ロックのリスクが殆どない険しいねじピッチが使用され得る。図9は、中空針4が完全に前進させられた自動注射器を示す。
【0064】
カム従動チューブ13と親ねじチューブ16の間のねじ係合が一つより多くのボールベアリング21を含む場合、各ボール21は各縦方向のスロット穴中に保持され得る。又は、各スロット21は各ねじのねじ山と係合され得て、その結果、親ねじチューブ16は多条ねじを有するであろう。
【0065】
シリンジキャリヤ26は外側ケーシング2の近位端Pでボトムアウトしており、このようにして、例えば、皮下注射のための注射深さが画成される。
【0066】
トーションばね11が回転し続けるにつれて、親ねじチューブ16及びプランジャ後部22は更に前進させられる。ストッパ25とシリンジ3の内壁の間で有効な摩擦のせいで、そして薬剤Mの移動に対向する中空針4の内部の薄い流体溝のせいで、ストッパ25はプランジャ前部23の前進運動に対して負荷をかける。このようにして、プランジャばね24は少しばかり圧縮される。スラスト負荷は、ラッチ19によって外側ケーシング2に連結される後退スライダチューブ17内に連結リング20を通して作用される。このようにしてカム従動チューブ13は近位方向Dへの動きを避けられる。プランジャの連続した前方に向かう動きを用いて、ストッパ25は前進され、そして注射部位内にシリンジ3から薬剤Mが注射される。薬剤Mの用量の注射中に、親ねじ係合へ、より大きな機械的利点を与え、そして増大した負荷のせいでそれが減速することを避けるために、親ねじのピッチは、針挿入と比べて少しばかり減じられる。
【0067】
図10において、用量の最後に向かう、つまり、ストッパ25がシリンジ3においてボトムアウトする直前の自動注射器1が示される。この状態において、親ねじチューブ16の近位端におけるポケット中に含有された粘性ダンパ29は、外側ケーシング2の近位端Pで小さなリブ30と接触する。このようにして、トーションばね11からの負荷は、ストッパ25と、小さなリブ30と粘性ダンパ29の間の接触部の間でシェアされ、その結果、ストッパ25を完全に前進させることによって、プランジャばね24が伸びて用量を完了することが可能になる。これによって、針4を後退させ始める前に、シリンジ3を完全に空にすることが可能になる。
【0068】
粘性ダンパ29は速度依存負荷特性を有する。この場合において、トーションばね11からの負荷は粘性ダンパ29の小さな軸方向の走行に亘って殆ど一定であり、その結果、速度は、プランジャばね24がシリンジ3の残留内容物を完全に排出するのに十分な時間を有するように調節され得る。粘性ダンパ29の材料は、小さなオリフィスを通して無理やり押し出される粘弾性の泡又は流体であり得る。
【0069】
この点での親ねじピッチの変化によって、機構に十分な力をかけるための機械的利点の制御された増大が可能になる。
【0070】
図11において、ストッパ25はシリンジ中にボトムアウトしており、そして親ねじチューブ16は走行の最後に達する。プランジャボール27は、カム従動チューブ13中のポケット31内のその凹部から落ちることによってプランジャ後部22を親ねじチューブ16から係合解除する。この直後に、ラッチ19は外側に向かってそれらを押している親ねじチューブ16の傾斜路機能32によって開放され、その結果後退スライダチューブ17及びカム従動チューブ13は並進運動に対して外側ケーシング2から開放される。親ねじチューブ16が外側ケーシング2の近位端Pでボトムアウトしているため、トーションばねの連続する回転が後退スライダチューブ17及びまだ回転しているカム従動チューブ13の後方への動きをもたらす結果となる。後退スライダチューブ17はシリンジキャリヤ26を引き連れ、そして中空針4が完全に覆われるまで、それを自動注射器1内に後退させる。この目的のために、後退スライダチューブ17は、親ねじチューブ16中の凹部を通して内側に向かって伸びている、そしてシリンジキャリヤ26に係合している一つ又はそれ以上のドッグ機能を有し得る(ドッグ機能は説明されていない)。
【0071】
自動注射器1は、好ましくは、特に、鎮痛剤、抗凝血剤、インスリン、インスリン誘導体、ヘパリン、Lovenox、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、蛋白質、抗体、及び複合糖質の一つを送達するために皮下注射又は筋肉内注射に対して使用され得る。
【符号の説明】
【0072】
1 自動注射器
2 外側ケーシング
2.1 スロット
2.2 縦方向クリアランス
2.3 案内クリアランス
3 シリンジ
4 中空針
5 保護ニードルシールド
6 オリフィス
7 指保護具
8 ばねアーム
9 ロッキングアーム
10 トリガボタン
10.1 縦方向のスプライン
11 トーションばね
11.1 トーションばねの遠位端
11.2 トーションばねの近位端
12 ロッキングカラー
12.1 突き出し
12.2 ピン
13 カム従動チューブ
13.1 ショルダ
14 連結部材
15 縦方向のスプライン
16 親ねじチューブ
17 後退スライダチューブ
17.1 ショルダ
18 フラット部

19 ラッチ
20 連結リング
21 ボールベアリング
22 プランジャ後部
23 プランジャ前部
24 プランジャばね
25 ストッパ
26 シリンジキャリヤ
27 プランジャボール、ボール戻り止め、戻り止めボール
28 周辺ノッチ
29 粘性ダンパ
30 リブ
31 ポケット
32 傾斜路機能

D 遠位方向
M 薬剤
P 近位方向
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12