(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記収縮部材は、弾性変形可能な合成樹脂材又はゴム材から成り、前記埋設孔より径大な形状に形成し、圧入により収縮変形して前記埋設孔の開口部に嵌合しこの埋設孔の開口部を閉塞する肉厚キャップ体に構成したことを特徴とする請求項1記載の基礎工又は構造物の定着工法。
【背景技術】
【0002】
アンカーボルトを用いて地盤やコンクリート面に設置されているコンクリート法枠工や雪崩予防柵の基礎工等は、凍結融解や風雨による浸食、或いは地震や土質の軟弱化による地盤沈下によって、地盤やコンクリート面との間に隙間が生じることがある。
【0003】
アンカーボルトは、引張方向に対する耐久性は強いが剪断方向に対する耐久性は弱く、そのため、上述のような隙間が生じた状態で地震等の横揺れが発生すると、隙間部分に位置する箇所に剪断力が生じて破断してしまうことがあるため、隙間が生じた際は、ナット等の再締め付けにより
アンカーボルトを再緊張させ、コンクリート法枠工や雪崩予防柵の基礎工を地盤やコンクリート面に再度圧着させ、常時密着状態に保つ必要がある。
【0004】
しかしながら、従来の定着工法では、埋設孔に充填した
アンカーボルトを固定するモルタル等の硬化材と、コンクリート法枠工や雪崩予防柵の基礎工と
アンカーボルトとの隙間に充填した硬化材とが一体化してコンクリート柱を形成し、このコンクリート柱が座金に当接して座金を押し下げ不能にしたり、コンクリート法枠工や雪崩予防柵の基礎工が硬化材により
アンカーボルトに接着固定されてしまったりするため、
アンカーボルトを再緊張することができなかった。
【0005】
また、
アンカーボルトの再緊張が可能な特許文献1に示すような定着工法も提案されているが、この特許文献1の定着工法は、現場での弾性体の充填作業が必要であり、この充填作業は工数が掛かると共に、天候の影響も受け、雨天時や冬期は作業が困難となる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような従来工法の問題点を解決し、
アンカーボルトの再緊張が可能で、且つ、天候に左右されることなく作業を行うことができ、しかも、現場での工数を削減した作業性に優れた画期的な基礎工又は構造物の定着工法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
アンカーボルト4を用いて地盤1A又はコンクリート面1Bに基礎工2又は構造物3
を定着する基礎工又は構造物の定着工法であっ
て、押圧により収縮変形し得る収縮部材6
上にこの収縮部材6を貫通した前記アンカーボルト4のボルト部4Aを包囲する金属製のパイプ材から成る包囲部材12を立設状態に設けると共に、前記収縮部材6に注入孔7を設けてこの注入孔7に充填材注入管8を貫通配設して形成した収縮装置14を、前記アンカーボルト4のボルト部4Aが前記包囲部材12から突出するようにして前記アンカーボルト4に装着し、この収縮装置14を装着したアンカーボルト4の基端部4B側を地盤1A又はコンクリート面1Bに削孔した埋設孔5に挿入配設すると共に、前記収縮装置14の収縮部材6を圧入により前記埋設孔5の開口部に嵌入してこの開口部を閉塞し、この収縮部材6で開口部を閉塞した前記埋設孔5内
に前記充填材注入管8を通じて経時硬化する硬化材9を注入充填
し、前記収縮部材6から
外部に突出している前記充填材注入管8を除去若しくは退避させ、
前記地盤1A又はコンクリート面1Bから突出する
前記アンカーボルト4のボルト部4Aと共に前記包囲部材12を貫通させて前記基礎工2又は前記構造
物3を前記地盤1A又は前記コンクリート面1B上に配設
し、前記基礎工2又は前記構造物3と前記包囲部材12との間に生じた空間に硬化材9を充填し、この地盤1A又は前記コンクリート面1B上に配設した基礎工2又は構造物3から突出する前記アンカーボルト4のボルト部4Aに座金10を貫通配設した後、ナット11を取り付け、この
ナット11を締め付けて前記基礎工2又は前記構造物3を前記地盤1A又はコンクリート面1Bに圧着することを特徴とする基礎工又は構造物の定着工法に係るものである。
【0010】
また、前記収縮部材6は、弾性変形可能な合成樹脂材又はゴム材から成り、前記埋設孔5より径大な形状に形成し、圧入により収縮変形して前記埋設孔5の開口部に嵌合しこの埋設孔5の開口部を閉塞する肉厚キャップ体6に構成したことを特徴とする請求項1記載の基礎工又は構造物の定着工法に係るものである。
【0011】
また、
前記収縮装置14は、前記収縮部材6に前記埋設孔5内の空気を外部に排出する空気排出孔13を設け
、この空気排出孔13に空気排出管16を貫通配設した構成としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の基礎工又は構造物の定着工法に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のようにしたから、基礎工や構造物を地盤やコンクリート面に圧着状態で定着することができ、更に、凍結融解や風雨による浸食、或いは地震や土質の軟弱化による地盤沈下によって、基礎工や構造物と地盤やコンクリート面との間に隙間が生じても、
アンカーボルトの再緊張により基礎工や構造物を地盤やコンクリート面に再圧着することができるので、地震等により横揺れが生じても
アンカーボルトに剪断方向の応力がかからず、よって、
アンカーボルトが破損することなく高い安全性の確保が可能となる画期的な基礎工又は構造物の定着工法となる。
【0013】
また、本発明は、埋設孔内に埋設固定した
アンカーボルトの固定強度(引張力)の確認試験も正確な値を測定することができるようになり、固定強度不足等の不具合を事前に発見でき、事故の発生を未然に防止することができる安全性、信頼性の高い画期的な基礎工又は構造物の定着工法となる。
【0014】
更に、本発明は、埋設孔に
アンカーボルトを埋設固定する際、埋設孔の開口部に収縮部材を嵌合してこの開口部を閉塞した状態で硬化材を注入充填して固定するので、雨天時の作業でも埋設孔内に雨水等が流入せず作業に支障をきたすことが無く、更に、この埋設孔の開口部を閉塞する収縮部材によって
アンカーボルトが位置決めされ仮固定されるので、硬化材が硬化するまでの不安定な状態でも
アンカーボルトを別手段で押さえておく必要も無く、極めて作業性に優れた画期的な基礎工又は構造物の定着工法となる。
【0015】
しかも、本発明は、基礎工や構造物とアンカーボルトとの間の隙間を硬化材で埋めて基礎工の位置ずれを防止する際、この隙間に充填した硬化材がアンカーボルトに付着することを防止でき、一層確実にアンカーボルトへの硬化材の付着を防止でき、再緊張可能な状態を良好に保持することができる画期的な基礎工又は構造物の定着工法となる。
【0016】
また、請求項2記載の発明においては、例えば天井面等に上向きに埋設孔を削孔し
アンカーボルトを埋設固定するような場合でも、容易に埋設孔内に硬化材を密に注入充填することができるので、極めて作業性に優れると共に強固に
アンカーボルトを上向きに埋設固定することができる画期的な基礎工又は構造物の定着工法となる。
【0017】
また、請求項
3記載の発明においては、埋設孔内への硬化材の注入充填作業を一層良好に行うことができる作業性に優れた基礎工又は構造物の定着工法となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
地盤1A又はコンクリート面1Bに埋設孔5を削孔し、この埋設孔5に
アンカーボルト4の基端部4B側を挿入配設すると共に、
アンカーボルト4の
ボルト部4Aを貫通突出させて埋設孔5の開口部に、押圧により収縮変形し得る収縮部材6を、地盤1A表面又はコンクリート面1Bから突出しないように嵌合させて、この埋設孔5の開口部を収縮部材6で閉塞する。
【0021】
この際、予め
アンカーボルト4に収縮部材6を装着し、この収縮部材6を装着した
アンカーボルト4を埋設孔5に挿入配設しても良く、また、最初に埋設孔5の開口部を収縮部材6で閉塞し、この埋設孔5の開口部を閉塞している収縮部材6に
アンカーボルト4を貫通させて埋設孔5に挿入配設しても良い。
【0022】
いずれの手順でも、
アンカーボルト4は収縮部材6によって位置決めされ、適切な状態で埋設孔5に配設されることとなる。
【0023】
このように埋設孔5の開口部に収縮部材6を設けることで、例えば従来工法のように
アンカーボルト4の
ボルト部4Aの周囲に硬化材9を充填した際、この
ボルト部4A周囲の硬化材9と埋設孔5内に充填した硬化材9とが一体化せず、収縮部材6の押圧変形により再緊張が可能となり、しかも、特許文献1に示す従来工法のように、現場で弾性材を埋設孔に充填する必要が無いので、作業効率が飛躍的に向上することとなる。
【0024】
次いで、この埋設孔5を閉塞している収縮部材6に設けた注入孔7から充填材注入管8を用いて、埋設孔5内に硬化材9を注入充填して
アンカーボルト4を固定する。
【0025】
このように、埋設孔5の開口部を収縮部材6で閉塞した状態で埋設孔5内に硬化材9を注入充填することにより、雨天時の作業でも、雨水が埋設孔5に流入して充填作業に支障をきたすことが無いので、天候に左右されず作業を計画通りに遂行することができる。
【0026】
また、充填材注入管8は、少なくとも収縮部材6から突出している部分を除去若しくは退避させる。
【0027】
この充填材注入管8の除去・退避は、具体的には、硬化材9が硬化した後、収縮部材6から突出した部分を切断除去するか、若しくは硬化材9が完全に硬化する前に収縮部材6から突出している充填材注入管8を埋設孔5内に押し込んで退避させるか、若しくは充填材注入管8自体を収縮部材6から引き抜いて退避させる。
【0028】
このようにして収縮部材6上の不要物を除去した後、基礎工2と
座金10とを、又は構造物3と
座金10とを、この収縮部材6から突出する
アンカーボルト4の
ボルト部4Aが貫通するようにして地盤1A又はコンクリート面1B上に配設する。
【0029】
これにより、この基礎工2又は構造物3は収縮部材6上に配設されることとなるので、この状態で例え
ばナット11で締め付けたり押圧したりする。
【0030】
この締め付け若しくは押圧によって、基礎工2又は構造物3を地盤1A又はコンクリート面1Bに圧着することができると共に、凍結融解や風雨による浸食、或いは地震や土質の軟弱化による地盤沈下によって、地盤1Aやコンクリート面1Bとの間に隙間が生じても
アンカーボルト4を再緊張して基礎工2や構造物3を再圧着することができるので、地震等により横揺れが生じても
アンカーボルト4に剪断方向の応力がかからず、よって、
アンカーボルト4が破損することなく高い安全性の確保が可能とな
る基礎工
又は構造物の定着工法となる。
【実施例1】
【0031】
本発明の具体的な実施例1について
図1〜
図11に基づいて説明する。
【0032】
本実施例は、
図1,
図2に示すように、
アンカーボルト4を用いて地盤1Aに構造物3を固定する基礎工2を定着する、或いはコンクリート面1Bに構造物3を定着する基礎工又は構造物の定着工法である。
【0033】
具体的には、
アンカーボルト4の基端部4B側を地盤1A又はコンクリート面1Bに削孔した埋設孔5に挿入配設すると共に、この
アンカーボルト4の
ボルト部4Aを貫通突出させて埋設孔5の開口部に、押圧により収縮変形し得る収縮部材6を地盤1A表面又はコンクリート面1Bから突出しないように嵌合して、この収縮部材6で埋設孔5の開口部を閉塞し、この収縮部材6で開口部を閉塞した埋設孔5内に収縮部材6に設けた注入孔7に挿入した充填材注入管8を通じて経時硬化する硬化材9を注入充填し、少なくとも収縮部材6から突出している充填材注入管8を除去若しくは退避させ、収縮部材6から突出する
アンカーボルト4の
ボルト部4Aを貫通させて基礎工2又は構造物3と
座金10とを、地盤1A又はコンクリート面1B上に配設すると共に、この基礎工2又は構造物3と
座金10とを貫通し突出した
アンカーボルト4の
ボルト部4Aに
ナット11を取り付け、この
ナット11を締め付けて基礎工2又は構造物3を地盤1A又はコンクリート面1Bに圧着する基礎工又は構造物の定着工法である。
【0034】
また、本実施例では、収縮部材6として、この収縮部材6とこの収縮部材6から貫通突出したアンカーボルト4を包囲するアンカー包囲部材12から成る収縮装置14を使用している。
【0035】
この収縮装置14は、
図3〜
図6に示すように、収縮部材6と、包囲部材12と、充填材注入管8とから成り、収縮部材6上に包囲部材12を立設し、また、収縮部材6に充填材注入管8を貫通配設した構成とし、
図3,4に示す収縮装置14は、基礎工2を定着する際に用いるものであり、
図5,6に示す収縮装置14は、基礎工2を用いずに構造物3を定着する場合に用いるものであり、包囲部材12の径や高さが異なる仕様となっている。
【0036】
この収縮装置14の構成各部について具体的に説明すると、収縮部材6は、弾性変形可能な合成樹脂材又はゴム材(例えば、スポンジ材や発泡材でも良い)から成り、埋設孔5より径大な形状に形成し、圧入により収縮変形して埋設孔5に嵌入しこの埋設孔5の開口部を閉塞する平面視円形の肉厚キャップ体6に形成した構成とすると共に、中心部にアンカーボルト4を貫通配設するアンカー貫通孔15と、この収縮部材6で開口部を閉塞した埋設孔5内に硬化材9を注入充填するための注入孔7とを設けた構成としている。
【0037】
また、包囲部材12は、この包囲部材12内に挿入配設したアンカーボルト4が可動し得る管状部材(本実施例では、具体的には金属製のパイプ材)で形成した構成とし、また、この包囲部材12は、収縮部材6から突出するアンカーボルト4のボルト部4Aを貫通させて地盤1A上に配設した基礎工2の貫通孔2A内、若しくはコンクリート面1B上に配設した構造物3の貫通孔3A内、或いはコンクリート面1B上に配設した
座金10の貫通孔10A内に配設されると共に、これら基礎工2、構造物3若しくは
座金10から突出しない長さ(本実施例では略面一となる長さ)に設定した構成としている。
【0038】
また、充填材注入管8は、収縮部材6に設けた注入孔7に挿通可能なパイプ状に形成し、収縮部材6に予め挿通配設して一体成形しても良く、また、硬化材9を注入充填する際に収縮部材6に挿入配設しても良い。
【0039】
また、収縮装置14は、定着する基礎工2や構造物3の大きさ(厚み)にも依るが、概ね高さ50cm以下、直径100mm以下、重量500g以下とし、持ち運びし易い大きさに設定した構成としている。
【0040】
以下に、上述のように構成した収縮装置14とアンカーボルト4を用いて基礎工2を地盤1Aに定着する場合の施工手順を説明する。
【0041】
先ず、地盤1Aに埋設孔5を削孔する。
【0042】
この際、埋設孔5の開口部の開孔径は、収縮部材6よりも稍径小とし、収縮部材6を圧入嵌合し得るように削孔する。
【0043】
次いで、この埋設孔5に収縮装置14を装着したアンカーボルト
4を挿入配設する。
【0044】
具体的には、
図7に示すように、収縮装置14のよりも下方のアンカーボルト4の基端部4B側を埋設孔5内に挿入配設し、収縮装置14の収縮部材6を埋設孔5の開口部に地盤1A表面から突出しないように嵌合してこの埋設孔5の開口部を閉塞する。
【0045】
このように収縮部材6を地盤1Aから突出させないことで、地盤1A上に基礎工2を配設した際、この基礎工2と地盤1Aとの間に隙間が生じず、基礎工2を地盤1Aに対して隙間なく確実に圧着することができ、例えば地震等で横揺れが生じた際もアンカーボルト4に剪断方向の応力がかからず、アンカーボルト4の破損を防止することができる。
【0046】
また、この収縮部材6は、埋設孔5の開口部に圧入嵌合した状態となるので、この収縮部材6(収縮装置14)に貫通したアンカーボルト4は埋設孔5から容易に離脱しない状態で配設され、また、このアンカーボルト4は収縮装置14(収縮部材6)により埋設孔5の中心部に位置決めされた状態で仮固定された状態となる。
【0047】
また更に、アンカーボルト4に収縮装置14を装着した際、アンカーボルト4周面と包囲部材12内面との間に空間(隙間)が生じる場合は、この空間(隙間)にグリスや発泡材を充填して隙間を埋めても良く、これにより、前記空間(隙間)に雨水等が溜まることを防止することができる。
【0048】
次いで、この埋設孔5の中心部に位置決めし仮固定状態としたアンカーボルト4を本固定するため、埋設孔5内に硬化材9を注入充填する。
【0049】
具体的には、
図7,8に示すように、収縮部材6に設けた注入孔7に挿入配設した充填材注入管8から経時硬化する硬化材9を注入充填し、この硬化材9が硬化するまで養生する(約二週間)。
【0050】
尚、この埋設孔5を閉塞する収縮部材6に、この埋設孔5内に充填材注入管8を通じて硬化材9を注入充填する際、埋設孔5内の空気を外部に排出し得る空気排出孔13を設けて、よりスムーズに硬化材9を注入充填できるようにしても良く、また、この空気排出孔13を設けることにより、硬化材9としてセメントモルタル等を使用した場合、埋設孔5内の空気の排出以外に、養生期間にブリージングによって生じた水分を排出することも可能となる。
【0051】
硬化材9が硬化しアンカーボルト4が埋設固定されたら、収縮部材6から突出している充填材注入管8を除去する。
【0052】
本実施例では、硬化材9が完全に硬化した後、充填材注入管8の収縮部材6から突出した部分を切断除去しているが、例えば、硬化材9が完全に硬化する前に、充填材注入管8を埋設孔5に押し込み入れるか、引き抜くかして収縮部材6から突出する充填材注入管8を退避除去させても良い。
【0053】
この充填材注入管8を除去した後、基礎工2を地盤1A上に配設する。
【0054】
具体的には、
図9,10に示すように、基礎工2に設けられた貫通孔2Aに収縮装置14の包囲部材12を挿通するようにして基礎工2を地盤1A上に配設し、この地盤1A上に配設した基礎工2の貫通孔2A内面と収縮装置14の包囲部材12周面との間に生じた空間に硬化材9を充填した後、包囲部材12を貫通し基礎工2から突出したアンカーボルト4のボルト部4A
に座金10を装着し
てナット11を取り付け、このナット11を締め付けて基礎工2を地盤1Aに圧着させる。
【0055】
また、構造物3をコンクリート面1Bに定着する場合、上記同様の定着工法で定着することが可能であるが、
図11に示すように、コンクリート面1Bと
座金10との間に構造物3を配設せず、コンクリート面1Bに定着した
座金10に構造物3を取り付ける定着工法にも本実施例を用いることができる。
【0056】
また、本実施例では、予め一体成形した収縮装置14をアンカーボルト4に装着し、この収縮装置14を装着したアンカーボルト4を埋設孔5に挿入配設する方法としたが、収縮装置14を構成する当接受部6、包囲部材12、充填材注入管8を夫々個別に用いることも可能である。
【0057】
上述に示すような本実施例の定着工法を用いることにより、基礎工2又は構造物3を地盤1A又はコンクリート面1Bに圧着状態で定着することができ、更に、凍結融解や風雨による浸食、或いは地震や土質の軟弱化による地盤沈下によって、基礎工2又は構造物3と地盤1A又はコンクリート面1Bとの間に隙間が生じてもアンカーボルト4の再緊張により基礎工2又は構造物3を再圧着することができる。
【0058】
また、本実施例は、埋設孔5内に埋設固定したアンカーボルト4の固定強度(引張力)の確認試験も正確な値を測定することができるようになり、固定強度不足等の不具合を事前に発見でき、事故の発生を未然に防止することができる。
【0059】
しかも、本実施例は、埋設孔5にアンカーボルト4を埋設固定する際、埋設孔5の開口部を収縮装置14の収縮部材6で閉塞した状態で硬化材9を注入充填してアンカーボルト4を固定するので、雨天時の作業でも埋設孔5内に雨水等が流入せず作業に支障をきたすことが無く、更に、この埋設孔5の開口部を閉塞する収縮部材6によってアンカーボルト4が位置決めされ仮固定されるので、硬化材9が硬化するまでの不安定な状態でもアンカーボルト4を別手段で押さえておく必要が無い。
【0060】
このように本実施例は、アンカーボルト4の再緊張が可能で、且つ、天候に左右されることなく作業を行うことができ、しかも、現場での工数を削減した作業性に優れた画期的な基礎工又は構造物の定着工法となる。
【実施例2】
【0061】
本発明の具体的な実施例2について
図12〜
図17に基づいて説明する。
【0062】
本実施例は、
図12に示すように、天井面等の上向きのコンクリート面1Bに構造物3を定着する(吊り下げる)場合である。
【0063】
本実施例で使用する収縮装置14は、実施例1と同様、収縮部材6とこの収縮部材6から貫通突出したアンカーボルト4を包囲するアンカー包囲部材12から成る構成とし、具体的には、
図13,14に示すように、収縮部材6と、包囲部材12と、充填材注入管8と、空気排出管16とから成り、収縮部材6上に包囲部材12を立設し、また、収縮部材6に充填材注入管8及び空気排出管16を貫通配設した構成としている。
【0064】
本実施例の収縮装置14の構成各部について具体的に説明すると、収縮部材6は、弾性変形可能な合成樹脂材又はゴム材(例えば、スポンジ材や発泡材でも良い)から成り、埋設孔5より径大な形状に形成し、圧入により収縮変形して埋設孔5に嵌入しこの埋設孔5の開口部を閉塞する平面視円形の肉厚キャップ体6に形成した構成とすると共に、中心部にアンカーボルト4を貫通配設するアンカー貫通孔15と、この収縮部材6で開口部を閉塞した埋設孔5内に硬化材9を注入充填するための注入孔7と、この注入孔7から硬化材9を注入充填する際、埋設孔5内の空気を外部に排出するための空気排出孔13とを設けた構成としている。
【0065】
また、包囲部材12は、この包囲部材12内に挿入配設したアンカーボルト4が可動し得る管状部材(本実施例では、具体的には金属製のパイプ材)で形成した構成とし、また、この包囲部材12は、収縮部材6から突出するアンカーボルト4のボルト部4Aを貫通させてコンクリート面1B上に配設した構造物3の貫通孔3A内、或いはコンクリート面1B上に配設した
座金10の貫通孔10A内に配設されると共に、これら構造物3若しくは
座金10から突出しない長さ(本実施例では略面一となる長さ)に設定した構成としている。
【0066】
また、充填材注入管8は、収縮部材6に設けた注入孔7に挿通可能なパイプ状に形成し、収縮部材6に予め挿通配設して一体成形しても良く、また、硬化材9を注入充填する際に収縮部材6に挿入配設しても良い。
【0067】
また、空気排出管16は、
収縮部材6に設けた空気排出孔13に挿通可能なパイプ状に形成すると共に、長さ方向の途中に折曲部16Aを形成した構成としており、この折曲部16Aは、埋設孔5内に注入充填した硬化材9がこの空気排出管16を通じて容易に逆流しないために設けている。
【0068】
本実施例は、このように構成した収縮装置14とアンカーボルト4とを用いて上向きのコンクリート面1Bに構造物3を定着する定着工法であり、以下に、施工手順を説明する。
【0069】
先ず、上向きのコンクリート面1Bに埋設孔5を削孔する。
【0070】
この際、埋設孔5の開口部の開孔径は、収縮装置14の収縮部材6よりも稍径小とし、収縮部材6を圧入嵌合し得るように削孔する。
【0071】
次いで、この埋設孔5に収縮装置14を装着したアンカーボルト
4を挿入配設する。
【0072】
具体的には、
図15に示すように、収縮装置14よりも下方のアンカーボルト4の基端部4B側を埋設孔5内に挿入配設し、収縮装置14の収縮部材6を埋設孔5の開口部にコンクリート面1Bから突出しないように嵌合してこの埋設孔5の開口部を閉塞する。
【0073】
この際、収縮部材6は埋設孔5の開口部に圧入嵌合した状態となるので、この収縮部材6(収縮装置14)に貫通したアンカーボルト4は埋設孔5から容易に離脱しない状態で配設され、また、このアンカーボルト4は収縮装置14(収縮部材6)により埋設孔5の中心部に位置決めされた状態で仮固定された状態となる。
【0074】
次いで、
図16に示すように、この埋設孔5の中心部に位置決めし仮固定状態としたアンカーボルト4を本固定するため、埋設孔5内に硬化材9を注入充填する。
【0075】
具体的には、収縮部材6に設けた注入孔7に挿入配設した充填材注入管8から経時硬化する硬化材9を注入充填する。
【0076】
この充填材注入管8を用いて注入孔7から埋設孔5内に硬化材9を充填注入すると、埋設孔5内の空気が空気排出孔13に挿通配設した空気排出管16から排出され、この空気排出管16が無い構成に比べてスムーズに硬化材9の注入充填作業を行うことができる。
【0077】
また、
図17に示すように、本実施例では、空気排出管16の埋設孔5内に挿入配設する側の長さを埋設孔5の上端部付近まで達する長さに設定したので、埋設孔5内に注入充填した硬化材9が埋設孔5の上端部に達すると、この空気排出管16を通じて注入充填した硬化材9が流出してくるので、この硬化材9の流出により埋設孔5内に硬化材9が充満したと判断することができ、この空気排出管16からの硬化材9の流出のタイミングで埋設孔5内への硬化材9の注入充填作業を終了し、この注入充填した硬化材9が硬化するまで養生する(約二週間)。
【0078】
尚、硬化材9の注入充填作業が終了したら、収縮部材6より下方に垂下する充填材注入管8及び空気排出管16を折り曲げ、これらから埋設孔5内に充填した硬化材9が流出しないようにする。
【0079】
硬化材9が硬化しアンカーボルト4が埋設固定されたら、収縮部材6から突出している充填材注入管8を除去する。
【0080】
本実施例では、硬化材9が完全に硬化した後、充填材注入管8の収縮部材6から突出した部分を切断除去する。
【0081】
この充填材注入管8を除去した後、構造物3をコンクリート面1Bに定着する。
【0082】
具体的には、
図12に示すように、構造物3に設けられた貫通孔3Aに収縮装置14の包囲部材12を挿通するようにして構造物3をコンクリート面1Bに配設し、包囲部材12を貫通し構造物3から突出するアンカーボルト4のボルト部4A
に座金10を装着し
てナット11を取り付け、このナット11を締め付けて構造物3をコンクリート面1Bに圧着させる。
【0083】
その余は実施例1と同様である。
【0084】
尚、本発明は、実施例1,実施例2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。