【文献】
小菅佳久,MMA−TBBレジンセメントの特性に及ぼすPMMA粉末の影響,歯科材料・器械,2000年,Vol.19, No.1,pages 92 to 101,ISSN: 0286-5858
【文献】
小菅佳久他,MMA−TBBレジンに用いるPMMA粉末がセメント特性に及ぼす影響,歯科材料・器械,1999年,Vol.18, No.5,pages 347 to 351,ISSN: 0286-5858
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モノマー(A)、重量平均分子量が21万以上150万以下かつ体積平均粒子径が1.0μm以上90μm以下の重合体粒子(B)、及び有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)を含有する軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物、又は創傷被覆材組成物であり、
重合体粒子(B)が、重量平均分子量が25万以上95万以下かつ体積平均粒子径が2.0μm以上30μm以下であり、かつ19.7μm以下の重合体粒子(B3)であり、
上記重合体粒子(B)の添加量が、モノマー(A)、重合体粒子(B)及び重合開始剤組成物(C)の合計100重量部に対して、55.0〜67.5重量部であり、
混合後60秒の時点での粘度が10〜1,000,000cpの範囲にある
軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物、又は創傷被覆材組成物。
請求項1に記載の接着剤組成物又は創傷被覆材組成物を調製して24時間後の該組成物から得られる厚み0.1μm以上かつ縦25mm以上かつ横2mm以上のフィルムが、試験速度2mm/分の条件で測定した際の曲げ弾性率750MPa以下、かつ試験速度1mm/分の条件で測定した際の引張り伸び5%以上を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物、又は創傷被覆材組成物。
上記重合禁止剤(D)がハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びt−ブチルヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種である請求項5又は6に記載の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物、又は創傷被覆材組成物。
請求項1に記載の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物、又は創傷被覆材組成物に含まれるモノマー(A)、重合体粒子(B)、及び有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)の各成分が、任意の組合せで2つ以上に分割されて収容された部材を有する軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤、又は創傷被覆材キット。
モノマー(A)、重合体粒子(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納されており、モノマー(A)と有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)とがまず混合され、続いて重合体粒子(B)が混合される構成を有することを特徴とする請求項9に記載の軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤、又は創傷被覆材キット。
請求項5に記載の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物、又は創傷被覆材組成物に含まれるモノマー(A)、重合体粒子(B)、有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)、及び重合禁止剤(D)の各成分が、任意の組合せで2つ以上に分割されて
収容された部材を有する軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤、又は創傷被覆材キット。
モノマー(A)と重合禁止剤(D)との混合物、重合体粒子(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納されており、モノマー(A)と重合禁止剤(D)との混合物と、有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)とがまず混合され、続いて重合体粒子(B)が混合される構成を有することを特徴とする請求項11に記載の軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤、又は創傷被覆材キット。
上記(A)、(B)、及び(C)を含む接着剤成分又は創傷被覆材成分を混合して得られる組成物又は上記(A)、(B)、(C)、及び(D)を含む接着剤成分又は創傷被覆材成分を混合して得られる組成物を塗布する際に使用する治具を含む、請求項9又は11に記載の軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤、又は創傷被覆材キット。
上記治具が、筆、繊維球、布、スポンジ球、スポンジ片から選ばれる少なくとも1つである請求項13に記載の軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤、又は創傷被覆材キット。
1〜15重量%のクエン酸と、1〜5重量%の塩化鉄(III)とを含む接着前処理用水溶液をさらに含む請求項9又は11に記載の軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤、又は創傷被覆材キット。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物又は創傷被覆材組成物には、モノマー(A)が含まれている。モノマー(A)としては、後述する重合開始剤組成物(C)により重合可能であれば特に制限なく使用できる。また、モノマー(A)としては使用目的に応じ、単官能モノマー、多官能モノマーいずれも使用できる。
【0028】
上記モノマー(A)としては、メタクリレート、アクリレート、その他ビニル化合物などが挙げられる。
【0029】
これらモノマー(A)の中でも、人体への刺激が比較的低いという点では、アクリレート及びメタクリレートが好ましく、中でもメタクリレートがより好ましい(以下、アクリレート及びメタクリレートを、(メタ)アクリレートと総称する場合がある。)。
【0030】
また、モノマー(A)の中でも、接着性が優れるという点では酸性基を有するモノマーが好ましい。
【0031】
そのため、モノマー(A)として、(メタ)アクリレート(ただし、酸性基を有さない)と酸性基を有するモノマーとを組み合わせて用いることも好ましい態様である。
【0032】
単官能(メタ)アクリレート(ただし、酸性基を有さない。)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸アルキル;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;
パーフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のフルオロアルキルエステル;
γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリ(トリメチルシロキシ)シランなどの(メタ)アクリロキシアルキル基を有するシラン化合物;及び
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの複素環を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0033】
多官能(メタ)アクリレート(ただし、酸性基を有さない。)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、へキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート;
下記式(1)で表される脂環系又は芳香族ジ(メタ)アクリレート
【0035】
(上記式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、m及びnは同一又は異なっていてもよい0〜10の数を表し、R
1は
【0037】
のいずれかを表わす。);
下記式(2)で表される脂環系又は芳香族エポキシジ(メタ)アクリレート
【0039】
(上記式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、nは0〜10の数を表し、R
1は
【0041】
のいずれかを表わす。);及び
下記式(3)で表される分子中にウレタン結合を有する多官能(メタ)アクリレート
【0043】
(上記式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、R
2は
【0045】
のいずれかを表す。);
などが挙げられる。
【0046】
これら(メタ)アクリレートの中でも、単官能(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキル;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3−ジヒドロキシプロピルモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0047】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の分子内にエチレングリコール鎖を有するジ(メタ)アクリレート;
下記式(1)−aで表される化合物
【0049】
(式(1)−a中、Rは水素原子又はメチル基を表し、m及びnは同一又は異なっていてもよい0〜10の数を表わす。);
下記式(2)−aで表される化合物
【0051】
(上記式(2)−a中、Rは水素原子又はメチル基を表す。);及び
下記式(3)−aで表される化合物
【0053】
(上記式(3)−a中、Rは水素原子又はメチル基を表す。);
などが好ましい。
【0054】
これら(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
酸性基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸及びその無水物、1,4−ジ(メタ)アクリロキシエチルピロメリット酸、6−(メタ)アクリロキシエチルナフタレン1,2,6−トリカルボン酸、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−o−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−m−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシヘキシルトリメリット酸及びその無水物、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸及びその無水物、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンマレエート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、p−ビニル安息香酸等のカルボン酸基又はその無水物基を有するモノマー;
(2−(メタ)アクリロキシエチル)ホスホリック酸、(2−(メタ)アクリロキシエチルフェニル)ホスホリック酸、10−(メタ)アクリロキシデシルホスホリック酸等の燐酸基を有するモノマー;及び、
p−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマーなどが挙げられる。
【0056】
これら酸性基を有するモノマーの中でも、4−メタアクリロキシエチルトリメリット酸及びその無水物が好ましい。
【0057】
これら酸性基を有するモノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これら酸性基を有するモノマーを使用することにより、本発明の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物又は創傷被覆材組成物の接着性はより向上する傾向にある。
【0058】
上記酸性基を有するモノマーは、上記(メタ)アクリレート(ただし、酸性基を有さない)及び酸性基を有するモノマーの合計100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは1〜8重量部の量含まれている。上記範囲内に収まらない場合は、接着強さあるいは生体への親和性に悪影響が出る場合がある。
【0059】
上記モノマー(A)の添加量は、モノマー(A)、並びに後述する重合体粒子(B)及び重合開始剤組成物(C)の合計100重量部に対して、好ましくは25.9〜77.7重量部、より好ましくは25.9〜73.0重量部、さらに好ましくは30.6〜63.6重量部である。
【0060】
モノマー(A)の添加量が上記範囲未満である場合には、高粘度となり、塗布が困難となる傾向にある。モノマー(A)の添加量が上記範囲を超える場合には、接着力が乏しく、更に、混合物が目的の部位以外に流れて、治療に支障を起こす可能性がある。
【0061】
本発明の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物又は創傷被覆材組成物には、さらに重合体粒子(B)が含まれている。上記重合体粒子(B)の重量平均分子量は21万以上150万以下であるが、好ましくは25万以上140万以下である。上記重合体粒子(B)の体積平均粒子径は1.0μm以上90μm以下である。
【0062】
この重合体粒子(B)は、下記(B1)〜(B5)の中から選ばれる少なくとも一つの重合体粒子が好ましい。
(B1)重量平均分子量が100万以上140万以下かつ体積平均粒子径が1.0μm以上90μm以下の重合体粒子
(B2)重量平均分子量が75万以上100万未満かつ体積平均粒子径が30μmよりも大きく90μm以下の重合体粒子
(B3)重量平均分子量が25万以上95万以下かつ体積平均粒子径が1.0μm以上30μm以下の重合体粒子
(B4)重量平均分子量が35万以上70万以下かつ体積平均粒子径が30μmよりも大きく90μm以下の重合体粒子(B4)
(B5)重量平均分子量が95万よりも大きく100万未満かつ体積平均粒子径が30μmの重合体粒子(B5)
このような重合体粒子(B)を用いることで、容器内で重合体粒子(B)を、モノマー(A)及び重合開始剤組成物(C)に混合する際の分散性に優れるだけでなく、容器からのこれら混合物の押出し性にも優れ、さらに、塗布する際に患部外への拡がりがなく塗布性にも優れる。
【0063】
なお、上記重合体粒子の体積平均粒子径は、超音波ホモジナイザーにより、重合体粒子を分散溶媒(例えば試薬特級メタノール(屈折率1.33)(和光純薬工業社製))に分散させ、レーザー回折・散乱法により(例えば、Microtrac MT3300EXII[Microtrac社製]粒度分布計を用いて)測定したものである。
【0064】
上記重合体粒子(B1)の重量平均分子量は、好ましくは100万以上137万以下であり、より好ましくは100万以上135万以下である。
【0065】
上記重合体粒子(B2)の重量平均分子量は、好ましくは78万以上100万未満であり、より好ましくは80万以上100万未満である。
【0066】
上記重合体粒子(B3)の重量平均分子量は、好ましくは25万以上94万以下であり、より好ましくは25万以上93万以下である。
【0067】
上記重合体粒子(B4)の重量平均分子量は、好ましくは35万以上69万以下であり、より好ましくは35万以上68万以下である。
【0068】
重合体粒子の重量平均分子量が上記範囲内にあることで、容器内で重合体粒子(B)を、モノマー(A)及び重合開始剤組成物(C)に混合する際の分散性により優れる傾向にあるだけでなく、容器からのこれら混合物の押出し性にも優れ、さらに、塗布する際に患部外の拡がりがなく塗布性にもより優れる傾向にある。また、重合体粒子(B)の重量平均分子量が小さすぎる、例えば25万未満となる場合には、塗布性が劣る傾向にある。
【0069】
上記重合体粒子(B1)の体積平均粒子径は、好ましくは1.5μm以上75μm以下、より好ましくは2.0μm以上65μm以下、さらに好ましくは2.0μm以上50μm以下、特に好ましくは2.0μm以上40μm以下である。
【0070】
上記重合体粒子(B2)の体積平均粒子径は、好ましくは30μmよりも大きく80μm以下、より好ましくは30μmよりも大きく70μm以下、さらに好ましくは30μmよりも大きく60μm以下、特に好ましくは30μm以上50μm以下である。
【0071】
上記重合体粒子(B3)の体積平均粒子径は、好ましくは1.5μm以上30μm以下、より好ましくは2.0μm以上30μm以下である。
【0072】
上記重合体粒子(B4)の体積平均粒子径は、好ましくは30μmよりも大きく85μm以下、より好ましくは30μmよりも大きく80μm以下、さらに好ましくは30μmよりも大きく70μm以下、特に好ましくは30μm以上50μm以下である。
【0073】
重合体粒子の体積平均粒子径が上記範囲内にあることで、容器内で重合体粒子(B)を、モノマー(A)及び重合開始剤組成物(C)に混合する際の分散性により優れる傾向にあるだけでなく、容器からのこれら混合物の押出し性にも優れ、さらに、塗布する際に患部外への拡がりがなく塗布性にもより優れる傾向にある。また、重合体粒子(B)の体積平均粒子径が小さすぎる、例えば1μm未満となる場合には、分散性に劣る傾向にある。
【0074】
上記重合体粒子(B1)の比表面積は、通常0.056m
2/g以上10m
2/g以下、好ましくは0.067m
2/g以上6.7m
2/g以下、より好ましくは0.077m
2/g以上5.0m
2/g以下、さらに好ましくは0.10m
2/g以上5.0m
2/g以下である。
【0075】
上記重合体粒子(B2)の比表面積は、通常0.056m
2/g以上0.17m
2/g以下、好ましくは0.063m
2/g以上0.17m
2/g以下、より好ましくは0.070m
2/g以上0.17m
2/g以下、さらに好ましくは0.083m
2/g以上0.17m
2/g以下である。
【0076】
上記重合体粒子(B3)の比表面積は、通常0.17m
2/g以上10m
2/g以下、好ましくは0.17m
2/g以上6.7m
2/g以下、より好ましくは0.17m
2/g以上5.0m
2/g以下である。
【0077】
上記重合体粒子(B4)の比表面積は、通常0.056m
2/g以上0.17m
2/g以下、好ましくは0.059m
2/g以上0.17m
2/g以下、より好ましくは0.063m
2/g以上0.17m
2/g以下、さらに好ましくは0.070m
2/g以上0.17m
2/g以下である。
【0078】
上記重合体粒子(B5)の比表面積は、通常0.17m
2/gである。
【0079】
重合体粒子の比表面積が上記範囲内にあることで、容器内で重合体粒子(B)を、モノマー(A)及び重合開始剤組成物(C)に混合する際の分散性により優れる傾向にあるだけでなく、容器からのこれら混合物の押出し性にも優れ、さらに、塗布する際に患部外への拡がりがなく塗布性にもより優れる傾向にある。なお、比表面積は、液体窒素温度下(77K)における窒素ガス吸着(BET法)により求めた値である。
【0080】
上記重合体粒子(B)を構成する重合体としては、例えば、メタクリレート重合体、アクリレート重合体、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びウレタン系エラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコンポリマーなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上組合せて使用できる。
【0081】
これら重合体の中でも、混合時の均一性の点では、メタクリレート重合体及びアクリレート重合体が好ましい。以下、メタクリレート重合体及びアクリレート重合体を(メタ)アクリレート重合体と総称する場合がある。)。
【0082】
上記(メタ)アクリレート重合体としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合体などの非架橋重合体;
メチル(メタ)アクリレート・エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとブタジエン系モノマーとの共重合体等の架橋重合体などが挙げられる。
【0083】
なお、これら重合体の内、天然ゴム、合成ゴムなどのゴム、熱可塑性エラストマーなどのエラストマーは(メタ)アクリレート重合体と混合して使用することにより、軟質剤として機能し、組成物の柔軟性を高めることができる。合成ゴムとしては、例えば、EPT(エチレン・プロピレン・ターポリマー)などが挙げられる。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、及びウレタン系エラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコンポリマーなどが挙げられる。
【0084】
上記エラストマーの分子量は、通常1000〜100万、好ましくは2000〜50万である。また上記エラストマーのガラス転移点(Tg)は、通常20℃以下、好ましくは0℃以下である。
【0085】
更に、上記(メタ)アクリレート重合体には、金属酸化物あるいは金属塩が、上記非架橋重合体あるいは架橋重合体で被覆された有機・無機複合体も含まれる。
【0086】
なお、上記分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた標準ポリメチルメタクリレート換算の分子量である。
【0087】
上記重合体粒子(B)の添加量は、モノマー(A)、重合体粒子(B)及び重合開始剤組成物(C)の合計100重量部に対して、好ましくは17.5〜72.5重量部、より好ましくは22.5〜72.5重量部、さらに好ましくは32.5〜67.5重量部である。
【0088】
重合体粒子(B)の添加量が上記範囲未満である場合には、重合が進行しにくくなり、接着効果が乏しく、更に、混合物が目的の部位以外に流れて、治療に支障を起こす可能性がある。重合体粒子(B)の添加量が上記範囲を超える場合には、モノマー(A)との混合が困難になる、また、急激に粘度が上昇するため容器からの押出しが困難になる傾向があり、また、重合が進行し速やかに重合硬化物が形成される場合があり、接着剤又は創傷被覆材としての操作性が優れない傾向にある。
【0089】
本発明の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物又は創傷被覆材組成物では、後述する有機ホウ素化合物(c1)を含有する重合開始剤組成物(C)として用いることに特徴があるが、有機ホウ素化合物は、モノマーを含む組成物に添加すると、比較的早い段階で、緩やかに重合反応が開始し、重合反応が進行していくのに対して、過酸化物を重合開始剤として用いた場合には、重合開始剤を混合しても重合開始までには比較的長い時間が必要であり、重合反応が一旦開始すると急激に反応し、比較的短時間で完結してしまう点で大きく異なる。そのため、創傷部、軟組織などへの使用に好適な組成物とするためには、モノマー(A)に対して、本発明の重合体粒子(B)を上述に説明したものとすることは重要である。このような重合体粒子(B)を使用することによって、長時間にわたり作業性を確保することができるだけでなく、創傷部、軟組織などへの使用に好適な流動性、塗布性を確保できるようになる。
【0090】
本発明の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物又は創傷被覆材組成物に含まれる重合開始剤組成物(C)は、必須成分として有機ホウ素化合物(c1)を含有し、必要に応じて非プロトン性溶媒(c2)、アルコール(c3)を含有することができる。上記有機ホウ素化合物(c1)を含有する重合開始剤組成物(C)が本発明の上記組成物に含まれることにより、創傷部、軟組織などに塗布してこの組成物全体が硬化した際に、モノマー(A)の残存が、重合開始剤として過酸化物を用いた組成物と比較してより少ない傾向にある。更に、一部が上皮に浸透して重合を開始する。したがって、本発明の上記組成物は、生体への使用に好適である。
【0091】
有機ホウ素化合物(c1)としては、例えば、トリアルキルホウ素、アルコキシアルキルホウ素、ジアルキルボラン及び部分酸化トリアルキルホウ素などが挙げられる。
【0092】
トリアルキルホウ素としては、例えば、トリエチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリイソプロピルホウ素、トリブチルホウ素、トリ−sec−ブチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリペンチルホウ素、トリヘキシルホウ素、トリヘプチルホウ素、トリオクチルホウ素、トリシクロペンチルホウ素、トリシクロヘキシルホウ素などの炭素数が2〜8のアルキル基を有するトリアルキルホウ素が挙げられる。なお、上記アルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基のいずれであってもよく、トリアルキルホウ素に含まれる3つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
【0093】
アルコキシアルキルホウ素としては、モノアルコキシジアルキルホウ素、ジアルコキシモノアルキルホウ素などがある。上記アルコキシアルキルホウ素としては、例えば、ブトキシジブチルホウ素等のモノアルコキシジアルキルホウ素が挙げられる。なお、アルコキシアルキルホウ素が有するアルキル基と、そのアルコキシ基のアルキル部とは同一であっても異なっていてもよい。
【0094】
ジアルキルボランとしては、例えば、ジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボランなどが挙げられる。なお、ジアルキルボランが有する2つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。また、上記ジアルキルボランに含まれる2つのアルキル基は結合して単環構造あるいはビシクロ構造を形成していてもよい。このような化合物としては、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンなどが挙げられる。
【0095】
部分酸化トリアルキルホウ素とは、上記トリアルキルホウ素の部分酸化物である。この部分酸化トリアルキルホウ素としては、部分酸化トリブチルホウ素が好ましい。また、部分酸化トリアルキルホウ素としては、トリアルキルホウ素1モルに対し、好ましくは0.3〜0.9モル、より好ましくは0.4〜0.6モルの酸素を付加させたものが使用できる。
【0096】
これら有機ホウ素化合物の中でも、トリブチルホウ素あるいは部分酸化トリブチルホウ素が好ましく、部分酸化トリブチルホウ素がより好ましい。トリブチルホウ素、部分酸化トリブチルホウ素を有機ホウ素化合物(c1)として用いた場合には、操作性が良くなるだけでなく、水分を有する生体に対して適切な反応性を有する傾向にある。また、トリブチルホウ素、部分酸化トリブチルホウ素を有機ホウ素化合物(c1)として用いた場合には、生体の様に水分が多い場所でも反応が開始し、反応が進むために、接着剤又は創傷被覆材と生体との界面においてモノマーが残存しにくく、そのため生体への為害性が極めて少ない。これら有機ホウ素化合物(c1)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0097】
重合開始剤組成物(C)には、さらに非プロトン性溶媒(c2)が含まれていてもよい。このように重合開始剤組成物(C)中に非プロトン性溶媒が含まれ、有機ホウ素化合物が希釈されることにより、発火性を有する有機ホウ素化合物(c1)の発熱性がより穏やかになり、発火性を抑制し、搬送時、保存時、混合時の取扱いが容易になる。また、発熱性の適当な低下により極めて多量の接着剤又は創傷被覆材を使用する場合には急激な発熱を抑制できるので、本発明の接着剤又は創傷被覆材と接する組織へのダメージが少なくなる傾向にある。上記非プロトン性溶媒(c2)の1気圧における沸点は、通常30℃〜150℃であり、好ましくは50℃〜120℃である。沸点が上記範囲未満である場合には、搬送時あるいは保存中に重合開始剤組成物から非プロトン性溶媒が揮発、飛散などしてしまい、有機ホウ素化合物(c1)の発火抑制効果が低下してしまう傾向にある。また、沸点が上記範囲を超える場合には、本発明の接着剤組成物又は創傷被覆材組成物から形成される硬化物への非プロトン性溶媒の残存が多くなり、組成物の接着性能が低下する傾向にある。
【0098】
上記非プロトン性溶媒(c2)としては、有機ホウ素化合物(c1)と反応せず、均一な溶液を形成しうる溶媒が好ましい。
【0099】
非プロトン性溶媒(c2)としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素;
フルオロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、いわゆるフロン等のハロゲン化炭化水素;
ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;
アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン;及び
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステルなどが挙げられる。
【0100】
これらの中でもペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和脂肪族炭化水素、エーテル、及びエステルが好ましく、ヘキサン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチルがより好ましい。
【0101】
これら非プロトン性溶媒(c2)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0102】
上記重合開始剤組成物(C)中の非プロトン性溶媒(c2)の含有量は、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対し、好ましくは30〜80重量部である。
【0103】
非プロトン性溶媒(c2)の含有量が上記範囲未満の場合には、十分な希釈効果が得られず、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、非プロトン性溶媒(c2)の含有量が上記範囲を超えてしまう場合には、重合開始剤組成物(C)の重合開始能を必要以上に低下させる傾向にある。
【0104】
重合開始剤組成物(C)には、非プロトン性溶媒(c2)に加えてさらにアルコール(c3)が含まれていてもよい。重合開始剤組成物(C)にアルコール(c3)が少量添加されたことにより、重合活性を低下させることなく、有機ホウ素化合物(c1)による反応がさらに穏やかになり、空気中で紙等に触れても焦げや発火を抑制しやすくなる傾向にある。
【0105】
アルコール(c3)としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びその異性体、n−ブタノール及びその異性体、n−ペンタノール及びその異性体、n−ヘキサノール及びその異性体、n−へプタノール及びその異性体などが挙げられる。
【0106】
これらアルコール(c3)の中でも、炭素数4以下のアルコール、すなわちメタノール、エタノール、n−プロパノール及びその異性体、並びにn−ブタノール及びその異性体が好ましく、エタノール及びn−プロパノールがより好ましい。
【0107】
これらアルコール(c3)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0108】
上記重合開始剤組成物(C)におけるアルコール(c3)の含有量は、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対し、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜4.5重量部、さらに好ましくは0.5〜4重量部である。
【0109】
アルコール(c3)の含有量が上記範囲未満の場合には、十分な希釈効果が得られず、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、アルコール(c3)の含有量が上記範囲を超えてしまう場合には、重合開始剤組成物(C)の重合開始能を必要以上に低下させる傾向にある。
【0110】
また、アルコール(c3)と非プロトン性溶媒(c2)とを併用する場合には、上記重合開始剤組成物(C)中の非プロトン性溶媒(c2)の含有量は、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対し、好ましくは5〜40重量部であり、より好ましくは10〜30重量部、さらに好ましくは10〜25重量部である。
【0111】
非プロトン性溶媒(c2)の含有量が、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対して上記範囲未満の場合には、発熱あるいは発火の抑制効果が十分ではない傾向にある。一方、非プロトン性溶媒(c2)の含有量が、有機ホウ素化合物(c1)100重量部に対して上記範囲を越える場合には、重合開始剤組成物(C)の重合開始能を低下させる傾向がある。
【0112】
上記重合開始剤組成物(C)の添加量は、モノマー(A)、重合体粒子(B)、及び重合開始剤組成物(C)の合計100重量部に対して、好ましくは1.7〜4.9重量部、より好ましくは1.7〜4.6重量部、さらに好ましくは2.0〜4.0重量部である。
【0113】
重合開始剤組成物(C)の添加量が上記範囲未満である場合には、重合が進行しにくくなり、接着効果が乏しい傾向にある。重合開始剤組成物(C)の添加量が上記範囲を超える場合には希釈により粘度を低下させてしまう可能性、安全性に悪影響を及ぼす可能性があり、また急激な重合が進行し速やかに重合硬化物が形成されることも想定されるため、接着剤又は創傷被覆材としての操作性が優れない傾向にある。
【0114】
上記接着剤組成物又は創傷被覆材組成物には、その性能に悪影響を及ぼさない範囲において、さらに必要に応じてその他成分が含まれていてもよい。
【0115】
その他成分の一例としては重合禁止剤(D)が挙げられる。上記重合禁止剤(D)としては、ハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン等のハイドロキノン化合物類や、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール類、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びt−ブチルヒドロキノンなどが挙げられる。これらの中でも、ハイドロキノンモノメチルエーテル及び2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールの混合物が好ましく用いられる。
【0116】
これら重合禁止剤(D)の中でも、それ自体の安定性の良さという点では、ハイドロキノンモノメチルエーテルが好ましい場合がある。
【0117】
上記重合禁止剤(D)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0118】
上記重合禁止剤(D)を添加する場合には、接着剤組成物又は創傷被覆材組成物全量に対して、好ましくは10〜5000ppm、より好ましくは50〜1000ppm、さらに好ましくは50〜500ppm添加する。
【0119】
また、上記重合禁止剤(D)は、上記モノマー(A)に対して、10〜5000ppmの範囲で添加することも好ましい。このような組成物とすることで、例えば、従来と比べ、接着剤を外科手術時の患部(切開部等からの浸出液により乾燥していない患部)、創傷部位、軟組織等の被着体に適用する際にも、塗布性と適切な硬化時間の確保に優れ、接着剤及び被覆材として安定して取り扱うことができる。また作業性に優れる。
【0120】
上記重合禁止剤(D)の添加量は、上述のとおりであるが、モノマー(A)に対して、より好ましくは50〜1000ppm、さらに好ましくは50〜500ppmの範囲で添加する。上述のような組成物とすることで、例えば、組成物を適用時に安定して取り扱うことができるだけでなく、適用後、効率よく組成物を硬化できる傾向にある。重合禁止剤(D)の含有量が上記範囲未満の場合には、モノマー(A)、重合物(B)及び重合開始剤組成物(C)の混和直後に硬化してしまい、塗布が困難となる傾向にある。一方、重合禁止剤(D)の含有量が上記範囲を超えてしまう場合には、重合開始剤組成物(C)の重合開始能を低下させ、硬化時間が必要以上に長くなり医療用途として使用が困難な傾向にある。
【0121】
その他成分の一例としては、さらに紫外線吸収剤が挙げられる。上記紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3',5'−ジ−tert−ブチル−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3',5'−ジ−tert−ブチル−2'−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−sec−ブチル−5'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3',5'−ジ−tert−アミル−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−5'−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2'−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(2−メトキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−5'−[2−(2−エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]−2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3'−ドデシル−2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3'−tert−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−(2−イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル)ベンゾトリアゾールと2,2'−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−ベンゾトリアゾール−2−イルフェノール]との混合物、2−[3'−tert−ブチル−5'−(2−メトキシカルボニルエチル)−2'−ヒドロキシフェニル]ベンゾトリアゾールとポリエチレングリコール300とのエステル交換反応生成物、[R−CH
2CH
2−COOCH
2]
3]
2−(式中、R=3'−tert−ブチル−4'−ヒドロキシ−5'−2H−ベンゾトリアゾール−2−イルフェニル)などのベンゾトリアゾール化合物;
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−デシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン及び2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン化合物;
サリチル酸4−tert−ブチルフェニル、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチルフェニル、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4−tert−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−メチル−4,6−ジ−tert−ブチルフェニル、及びフェニル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート;
セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、コハク酸ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)n−ブチル−3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロネート、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−第三−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−s−トリアジンとの縮合生成物、トリス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラオエート、1,1'−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−n−ブチル−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三−ブチルベンジル)マロネート、3−n−オクチル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、セバシン酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、コハク酸ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)、N,N'−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−モルホリノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンとの縮合生成物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンとの縮合生成物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジンと1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンとの縮合生成物、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアゾスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、及び3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、及び3−ドデシル−1−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオンなどのヒンダードアミン化合物;
4,4'−ジオクチルオキシオキサニリド、2,2'−ジエトキシオキサニリド、2,4'−ジエトキシオキサニリド、4,4'−ジエトキシオキサニリド、2,2'−ジメトキシオキサニリド、2,4'−ジメトキシオキサニリド、4,4'−ジメトキシオキサニリド、2,2'−ジオクチルオキシ−5,5'−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2,2'−ジドデシルオキシ−5,5'−ジ−tert−ブチルオキサニリド、2−エトキシ−2'−エチルオキサニリド、N,N'−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサルアミド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2'−エチルオキサニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2'−エチルオキサニリドと2−エトキシ−2'−エチル−5,4'−ジ−tert−ブチルオキサニリドとの混合物などのオキサルアミド化合物;
2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ブチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、及び2−[4−ドデシル/トリデシルオキシ−(2−ヒドロキシプロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン化合物;
トリフェニルホスフィット、ジフェニルアルキルホスフィット、フェニルジアルキルホスフィット、トリス(ノニルフェニルホスフィット)、トリラウリルホスフィット、トリオクタデシルホスフィット、ジステアリルペンタエリスリチルジホスフィット、トリス−(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)ホスフィット、ジイソデシルペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−イソデシルオキシペンタエリスリチルジホスフィット、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、ビス(2,4,6−トリ−第三−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスフィット、トリステアリルソルビチルトリホスフィット、テトラキス(2,4−ジ−第三−ブチルフェニル)4,4'−ビフェニレンジホスホナイト、6−イソオクチルオキシ−2,4,8,10−テトラ−第三ブチル−12H−ジベンゾ[d、g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、6−フルオロ−2,4,8,10−テトラ−第三−ブチル−12−メチルジベンゾ[d,g]−1,3,2−ジオキサホスホシン、ビス−(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスフィット及びビス(2,4−ジ−第三−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスフィットなどのホスフィット化合物又はホスホナイト化合物等が挙げられる。
【0122】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
【0123】
上記紫外線吸収剤を添加する場合には、モノマー(A)に対して、好ましくは10〜1,000ppm、より好ましくは100〜800ppm添加する。このように紫外線吸収剤を添加することにより、モノマーを含む液の着色が抑制され、モノマー自体の保存安定性が向上する傾向にある。
【0124】
その他成分の一例としては、さらに、可塑剤が挙げられる。
【0125】
上記可塑剤としては、クエン酸エステル、イソクエン酸エステル、酒石酸エステル、リンゴ酸エステル、乳酸エステル、グリセリン酸エステル及びグリコール酸エステルなどのヒドロキシカルボン酸エステル;トリメリト酸トリメチル、ジ安息香酸ジエチレングリコール、マロン酸ジエチル、o−アセチルクエン酸トリエチル、フタル酸ベンジルブチル、ジ安息香酸ジプロピレングリコール、アジピン酸ジエチル、o−アセチルクエン酸トリブチル、セバシン酸ジメチル、並びにアルキレングリコールジエステル、などが挙げられる。
【0126】
上記、可塑剤の添加量は、材料の種類によって適宜選択されるが、通常、接着剤組成物又は創傷被覆材組成物全体の中で、通常0〜30wt%、好ましくは0〜20wt%、より好ましくは0〜10wt%含有するように用いられる。
【0127】
その他成分の一例としては、さらに保存剤が挙げられる。
【0128】
上記保存剤としては、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、エチルパラベン、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、ブチルパラベン;
クレゾール、クロロクレゾール;
レゾルシノール、4−n−ヘキシルレゾルシノール、3a,4,7,7a−テトラヒドロ−2−((トリクロロメチル)チオ)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン;
塩化ベンズザルコニウム、塩化ベンザルコニウムナトリウム、塩化ベンゼトニウム;
安息香酸、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、o−フェニルフェノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、チモール;
ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀等のフェニル水銀化合物;
ホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0129】
その他成分の一例としては、さらに抗感染剤、抗生物質、抗菌剤、抗ウィルス剤、鎮痛薬、鎮痛薬の配合物、食欲抑制薬、抗蠕虫薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙攣薬、抗鬱薬、抗利尿薬、下痢止め薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗偏頭痛薬剤、制嘔吐剤、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、止痒薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経興奮剤、心臓血管用薬剤、抗不整脈薬、抗高血圧薬、利尿薬、血管拡張剤、免疫抑制薬、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、覚醒薬、鎮静剤、精神安定剤、コリン作用薬、化学療法薬、放射性医薬品、骨誘導性薬、膀胱静止性のヘパリン中和剤、凝血原、止血剤、キサンシン誘導体、ホルモン、天然由来又は遺伝子工学によって合成されたタンパク質、多糖類、糖蛋白質、リポ蛋白質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗原、バソプレシン、バソプレシン類似体、エピネフリン、セレクチン、凝血促進性の毒物、プラスミノゲン活性化因子阻害剤、血小板活性剤、及び止血作用を有する合成ペプチドなどが挙げられる。なお、これら成分を含むことにより、本発明の組成物は、ドラッグ・デリバリー・システムや再生医療用途にも用いることができる。
【0130】
なお、上記接着剤組成物又は創傷被覆材組成物には、上記タンパク質としては、さらに組織修復の促進等を目的として血管形成因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、表皮成長因子などを含ませてもよい。
【0131】
上記抗菌剤としては、元素ヨウ素、固体ポリビニルピロリドンヨウ素、ポリビニルピロリドンヨウ素;
トリブロモフェノール、トリクロロフェノール、テトラクロロフェノール、ニトロフェノール、3−メチル−4−クロロ−フェノール、3,5−ジメチル−4−クロロフェノール、フェノキシエタノール、ジクロロフェン、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、2,4−ジクロロ−3,5−ジメチルフェノール、4−クロロチモール、クロルフェン、トリクロサン、フェンチクロール、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−エチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−n−アミルフェノール、4−tert−アミルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−n−ヘプチルフェノール、モノアルキルハロフェノール、ポリアルキルハロフェノール、芳香族ハロフェノール、並びにそれらのアンモニウム塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩などのフェノール化合物;
硝酸銀、ヘキサクロロフェン、メルブロミン、テトラサイクリン・HCl、テトラサイクリン水和物及びエリスロマイシンなどが挙げられる。
【0132】
上記その他成分の一例としては、さらに、オレンジ油、グレープフルーツ油、レモン油、ライム油、丁子油、ウインターグリーン油、ペパーミント油、ペパーミントスピリット、バナナ留出物、キュウリ留出物、蜂蜜留出物、ローズウオータ、メントール、アネトール、サリチル酸アルキル、ベンズアルデヒド、グルタミン酸一ナトリウム、エチルバニリン、チモール、及びバニリンなどの香料が挙げられる。
【0133】
また、その他成分の一例としては、さらに無機充填剤、有機充填剤、有機複合フィラー、充填剤着色剤などが含まれていてもよい。
【0134】
無機充填材としては、例えば、ジルコニウム酸化物、ビスマス酸化物、チタン酸化物、酸化亜鉛、酸化アルミニウム粒子等の金属酸化物粉末;
炭酸ビスマス、リン酸ジルコニウム、硫酸バリウム等の金属塩粉末;
シリカガラス、アルミニウム含有ガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ジルコニウムシリケートガラス等のガラスフィラー;
銀徐放性を有するフィラー:及び
フッ素徐放性を有するフィラーなどが挙げられる。
【0135】
なお、硬化後の無機充填材とモノマー(A)との間で強固な結合を形成する観点からは、シラン処理、ポリマーコートなどの表面処理を施した無機充填材を使用することが好ましい。
【0136】
これら無機充填材は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0137】
また、その他成分の一例としては、硫酸バリウム、酸化ジルコニウムなどのX線造影剤などが挙げられる。上記X線造影剤としては、本発明では酸化ジルコニウムが好ましい。
【0138】
本発明の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物又は創傷被覆材組成物は、上記(A)、(B)、(C)及び必要に応じて含まれる成分を混合後30秒以内(混合してから混合後30秒までの間の)の粘度が0.4〜75,000cpの範囲にあることが好ましい。
【0139】
粘度が上記範囲にあることにより、接着剤又は創傷被覆材として塗布し易い。
【0140】
上記粘度は、操作性、流動性の点から、より好ましくは0.4〜10,000cpの範囲、さらに好ましくは1〜10,000cpの範囲にある。
【0141】
また、本発明の接着剤組成物又は創傷被覆材組成物は、上記(A)、(B)、(C)及び必要に応じて含まれる成分を混合後60秒の時点での粘度が10〜1,000,000cpの範囲にあることが好ましく、20〜1,000,000cpの範囲にあることがより好ましく、30cp〜800,000cpの範囲にあることがさらに好ましい。
【0142】
粘度が上記範囲にあることにより、接着剤又は創傷被覆材として容器から容易に押出すことが出来、さらに、塗布し易いなど、操作性に優れる。
【0143】
本発明の組成物は、接着剤又は創傷被覆材としての操作性、即ち、流動性など塗布性に優れる。また、過酸化物を開始剤成分として用いた組成物と比較しても、施術者が混合操作に必要な時間もより長時間確保できる傾向にあり、そのような点でも操作性に優れる。
【0144】
本発明の上記接着剤組成物又は創傷被覆材組成物を調製して24時間後の、該組成物から得られる1μm以上、好ましくは1cm以下の厚みを有しかつ縦25mm以上かつ横2mm以上のフィルムでは、試験速度2mm/分の条件で測定した際の曲げ弾性率が好ましくは750MPa以下、より好ましくは740MPa以下、さらに好ましくは730MPa以下である。また、上記組成物を調製して24時間後の、該組成物から得られる1μm以上、好ましくは1cm以下の厚みを有しかつ縦25mm以上かつ横2mm以上のフィルムでは、試験速度2mm/分の条件で測定した際の曲げ弾性率が好ましくは750MPa以下、より好ましくは600MPa以下、さらに好ましくは550MPa以下であってもよい。
【0145】
また、上記フィルムの曲げ弾性率は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは200MPa以上であってもよい。
【0146】
また、本発明の上記接着剤組成物又は創傷被覆材組成物を調製して24時間後の、該組成物から得られる1μm以上、好ましくは1cm以下の厚みを有しかつ縦25mm以上かつ横2mm以上のフィルムでは、試験速度1mm/分の条件で測定した際の引張り伸びが、好ましくは5%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは25%以上である。
【0147】
また上記引張り伸びは、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上、さらに好ましくは9%以上であってもよい。さらに上記引張り伸びは、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上であってもよい。
【0148】
本発明の上記接着剤組成物又は創傷被覆材組成物から得られる硬化物は、軟組織や皮膚に対する塗布膜(フィルム)の物性に優れ、関節など屈折箇所の皮膚への接着性にも優れる。
【0149】
本発明においては、上記モノマー(A)、重合体粒子(B)、重合開始剤組成物(C)及びその他必要に応じて含まれる成分を予め混合して接着剤組成物又は創傷被覆材組成物を作製し、その組成物を創傷部位(外科手術の際の患部、創傷被覆部位)、軟組織などに塗布して使用することができる。
【0150】
なお、これら各成分を混合する際には、混合される順序は限定されないが、安定的に均一に混合できるという点では、まずモノマー(A)及び重合開始剤組成物(C)を混合し、続いて重合体粒子(B)が混合されることが好ましい。
【0151】
また、本発明の接着剤組成物又は創傷被覆材組成物が重合禁止剤(D)を含む場合には、得られる組成物の安定性がより優れるという点では、モノマー(A)と重合禁止剤(D)との混合物、及び重合開始剤組成物(C)をまず混合し、続いて重合体粒子(B)が混合されることが好ましい。
【0152】
また、本発明の接着剤組成物又は創傷被覆材組成物を硬化する前あるいは硬化中に、可視光、電離放射線(例えばγ線)、電子線等の電磁波をさらに照射して殺菌処理してもよい。なお、硬化条件を大きく変化させない観点からは、可視光照射が望ましい場合もある。また、エチレンオキサイド(EO)および過酸化水素などのガス、ドライ・ヒート、スチーム、濾過、液体などによる処理、オートクレーブ滅菌処理などにより、殺菌処理してもよい。
【0153】
また、本発明の接着剤組成物又は創傷被覆材組成物を、創傷部位、軟組織などに塗布する前に、予め創傷部位、軟組織などの表面をアルコールなどの消毒液で消毒してもよい。
【0154】
さらに、本発明の接着剤組成物又は創傷被覆材組成物を、創傷部位、軟組織などの部位に塗布する前に、接着性を改善すること等を目的として、前処理を行ってもよい。上記前処理の処理液としては、例えば、1〜15重量%のクエン酸と1〜5重量%の塩化鉄(III)とを含む水溶液などが挙げられる。
【0155】
本発明の接着剤組成物又は創傷被覆材組成物は、創傷部への塗布時に重合して固化した膜、例えばフィルム様となり創傷部の接着、創傷面の被覆に使用できる(即ち、創縁を合わせた後に、接着剤を創部の表面に塗布し、表面との接着及び硬化して使用することができる)。また、上記フィルム様硬化体の端、又は全体の固定、保護、接着力の維持、増強を目的として、創傷部位、軟組織表面などへの塗布時又は塗布後に、フィルム、シートや紙、絆創膏、包帯、ガーゼなどの被覆用品を使用してもよい。それらの被覆用品は接着性を有していてもよいし、粘着性を有していてもよい。
【0156】
さらに、創傷部へアルギン酸塩被覆材、ハイドロジェル及びハイドロポリマーを適用時あるいは適用後、上記接着剤組成物を又は創傷被覆材組成物を塗布することもできる。
【0157】
本発明の接着剤組成物又は創傷被覆材組成物が長期にわたる保存、保管により形態や性能が変化し、本発明の効果を損なう恐れがある場合には、モノマー(A)、重合体粒子(B)、重合開始剤組成物(C)及び重合禁止剤(D)などのその他必要に応じて含まれる成分からなる各成分を、単独であるいは任意の組合せで分割して2つ以上の部材に収納した軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤、又は創傷被覆材として用いるキットとして保存し、使用前に混合して上記接着剤組成物又は創傷被覆材組成物とすることができる。上記収納用の部材としては、モノマー(A)や重合開始剤組成物(C)の揮散、飛散を防ぐために、例えば、ガスバリヤー性がある密閉可能な樹脂容器、あるいはガラスシリンジなどが挙げられる。重合体粒子(B)の収納用の部材としては、吸湿を防ぐための密閉の良好な樹脂及びガラス製容器が挙げられる。その収納する量については、一回で使い切る使用量を容器に収納する場合と複数回使用する量を収納する場合とがある。
【0158】
上記各成分を保存する方法としては、例えば、(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物の3つに分割して保存する方法、(A)、(B)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、(C)との2つに分割して保存する方法、(A)及び(B)の混合物と、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)、(B)、及びその他必要に応じて含まれる成分の一部の混合物と、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の残りの部分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、(B)及び(C)の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)と、(B)、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の一部の混合物と、(B)、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の残りの部分の混合物との2つに分割して保存する方法などが挙げられる。
【0159】
また、重合禁止剤(D)を含む場合には、例えば、(A)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、(B)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物の3つに分割して保存する方法、(A)、(B)、(D)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、(C)との2つに分割して保存する方法、(A)、(B)、及び(D)の混合物と、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)、(B)、(D)、及びその他必要に応じて含まれる成分の一部の混合物と、(C)及びその他必要に応じて含まれる成分の残りの部分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)、(D)及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、(B)及び(C)の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)及び(D)の混合物と、(B)、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分割して保存する方法、(A)、(D)及びその他必要に応じて含まれる成分の一部の混合物と、(B)、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の残りの部分の混合物との2つに分割して保存する方法などが挙げられる。
【0160】
なお、モノマー(A)として、酸性基を有するモノマーと酸性基を有さないモノマーとを含む混合物を使用する場合には、上述の保存方法に加えて、酸性基を有するモノマーと重合開始剤組成物とが接触しない状態で保存する方法、例えば、酸性基を有するモノマー、(B)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、酸性基を有さないモノマー及び(C)の混合物との2つに分けて保存する方法、酸性基を有するモノマー、及び(B)の混合物と、酸性基を有さないモノマー、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分けて保存する方法、酸性基を有するモノマー、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物と、酸性基を有さないモノマー、(B)、及び(C)の混合物との2つに分けて保存する方法、酸性基を有するモノマーと、酸性基を有さないモノマー、(B)、(C)、及びその他必要に応じて含まれる成分の混合物との2つに分けて保存する方法などにより、保存してもよい。
【0161】
これら2つに分けられた物は別々の部材、例えばシリンジ等の容器などに入れられ、軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤、又は創傷被覆材として用いるキットに収容されて製品として提供できる。
【0162】
上記キットは、保管により形態や性能が変化し、本発明の効果を損なう恐れがない限りその構成に特に制限はないが、モノマー(A)、重合体粒子(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納されており、モノマー(A)と有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)とがまず混合され、続いて重合体粒子(B)が混合される構成を有していることが好ましい。このような構成とすることで、より安定した性能を有する接着剤組成物又は創傷被覆材組成物が得られやすい。
【0163】
上記キットとしては、例えば、モノマー(A)、重合体粒子(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納された部材(例えば、容器、シリンジなど)と、これらを収納された部材から取り出し混合するための部材(例えば、混合容器、混合皿など)とを有するキット、
モノマー(A)、重合体粒子(B)、及び重合開始剤組成物(C)が、一つの容器内の隔壁により3以上に分離されたチャンバーにそれぞれ別個に収納され、隔壁の破壊、又は、隔壁の移動によりシリンジに予め設置されたバイパスをモノマー(A)及び重合開始剤組成物(C)が通過し、重合体粒子(B)と混合する攪拌ユニットを有するキットなどが挙げられる。
【0164】
また、上記キットに重合禁止剤(D)が含まれている場合には、モノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物、重合体粒子(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納されており、モノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物と有機ホウ素化合物を含む重合開始剤組成物(C)とがまず混合され、続いて重合体粒子(B)が混合される構成を有していることが好ましい。このような構成とすることで、より安定した性能を有する軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤、又は創傷被覆材が得られやすい。
【0165】
上記キットとしては、例えば、モノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物、重合体粒子(B)、及び重合開始剤組成物(C)がそれぞれ別個に収納された部材(例えば、容器、シリンジなど)と、これらを収納された部材から取り出し混合するための部材(例えば、混合容器、混合皿など)とを有するキット、
モノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物、重合体粒子(B)、及び重合開始剤組成物(C)が、一つの容器内の隔壁により3以上に分離されたチャンバーにそれぞれ別個に収納され、隔壁の破壊、又は、隔壁の移動によりシリンジに予め設置されたバイパスをモノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物及び重合開始剤組成物(C)が通過し、重合体粒子(B)と混合する攪拌ユニットを有するキットなどが挙げられる。
【0166】
上記3以上に分離されたチャンバー内に各成分が収納された一つの容器からなるキットは、本発明の組成物を二つ以上の部材、典型的には容器に分割して使用直前に混合して使用する方法に比較して、手間が省け、また、容器から直接組成物を必要量だけスポンジ等の治具に接触させることによって、混合容器などを用いずに経済的に使用できる。
【0167】
また、重合開始剤組成物(C)成分の一部ないしは全部を、あらかじめ、接着剤組成物又は創傷被覆材組成物を創傷部位、軟組織などに塗布する際に使用する治具に含有させ、使用直前にモノマー(A)又はモノマー(A)と重合禁止剤(D)とを含む混合物、重合体粒子(B)、及びその他必要に応じて含まれる成分と治具とを接触させて、本発明の接着剤組成物又は創傷被覆材組成物をその場で調製し、そのまま創傷部位、軟組織などに塗布することもできる。
【0168】
創傷部位、軟組織などに塗布する治具としては、例えば、筆、繊維球、布、スポンジ球、スポンジ片などが挙げられる。
【0169】
なお、上述のキットには、上述したアルコールなどの消毒液、接着性を改善すること等を目的とした前処理用のための溶液、被覆用品などが含まれていてもよい。
【0170】
さらに上述のキットで保存する場合には、好ましくは各成分が変質しない(例えば、モノマーが硬化しない)条件で、可視光等の電磁波などにより滅菌処理してもよい。
【0171】
本発明の軟組織用接着剤組成物、創傷被覆用接着剤組成物、又は創傷被覆材組成物は、例えば、創傷部位の封鎖、保護、閉塞、軟組織移植片の固定(接着)、止血、血管吻合、血管閉塞、気管支吻合、気管支閉塞、眼科手術などの生物組織接着などに用いることができる。
【0172】
また、本発明の上記組成物は生体の皮膚、粘膜などの外皮に形成される創傷に直接塗布することによって創傷部の開口部などを容易に接合でき、また、皮膚移植の際に移植片の移植部位への固定などにも用いることができる。
【0173】
なお、本発明の上記組成物を創傷被覆用接着剤として用いる場合には、通常、創面に塗布するのではなく、創縁を合わせた後に、接着剤を創部の表面に塗布し、表面との接着及び硬化して使用する。一方、創傷被覆としては、擦過傷や座滅創、挫創など切開面を有さない創傷部の場合は、患部に直接、塗布することもできる。
【実施例】
【0174】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0175】
〔実施例1〜29、比較例1〜26〕
以下の実施例及び比較例では、下記「試薬」の項に記載のモノマー(A)、重合体粒子(B)、重合開始剤組成物(C)を用いて、下記表2〜表7に記載の配合比に従って組成物を作製し、後述する評価方法により評価した。
【0176】
(試薬)
実施例では、モノマー(A)、重合体粒子(B)、及び重合開始剤組成物(C)として以下のものを使用した。
【0177】
モノマー(A):4−META/MMA:4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物のメタクリル酸メチル溶液(重量比約5%)
重合体粒子(B):ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子(1)〜(13)の分子量、性状は下記表1のとおりである。
【0178】
【表1】
【0179】
なお、PMMA(屈折率1.49)粒子の体積平均粒径は、分散溶媒として試薬特級メタノール(屈折率1.33)(和光純薬工業社製)を使用し、装置内臓超音波ホモジナイザーで5分間(出力25W)にて分散させ、装置Loading Index適量範囲内の濃度条件において、循環速度50%(100%時、65mL/sec)で、Microtrac MT3300EXII(Microtrac社製 粒度分布計)を用いて測定した。
【0180】
また、比表面積は、オートソーブ3(カンタクローム社製)を使用し、液体窒素温度下(77K)における窒素ガス吸着(BET法)により求めた。
【0181】
重合開始剤組成物(C):TBB Aタイプ、即ち、部分酸化トリブチルホウ素80重量部、ヘキサン19重量部、エタノール1重量部
(分散性の評価)
下記表1の実施例1〜29及び比較例1〜26に記載される配合比に従って、重合体粒子(B)をルアー部に大阪ケミカル社製のプラスチックキャップを付けたHENKE SASS WOLF社製5mlルアーロック付きラテックスフリーシリンジに秤量した。続いて、上記実施例及び比較例に記載の配合比に従い10mlガラス製サンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記シリンジ内に注入し、25℃で、20秒間手で激しく振とうすることにより攪拌混合した。振とう開始5秒後および振とう開始20秒後(混合終了時)にシリンジ内の混合物の状態を目視により確認した。評価は、重合体粒子(B)の粉末が、振とう開始5秒後で確認されない場合を4、振とう開始20秒後で確認されない場合3、振とう開始20秒後で僅かに確認される場合は2、振とう開始20秒後で大量に確認される場合は1とした。なお、分散性が1の場合は、押出し性及び塗布性の評価、粘度の測定は行わず、結果の表中に斜線を記載した。評価結果を下記表2〜表7に示した。
【0182】
(押出し性及び塗布性の評価)
下記表2〜表7の実施例1〜29及び比較例1〜26に記載される配合比に従って、重合体粒子(B)をルアー部に大阪ケミカル社製のプラスチックキャップを付けたHENKE SASS WOLF社製5mlシリンジに秤量した。続いて、上記実施例及び比較例記載の配合比に従いサンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記シリンジ内に注入し、25℃で20秒間手で激しく振とうすることにより混合した。その後、シリンジのキャップを取りはずして、開口部が幅1cm、厚み0.5mmのノズルを装着し、得られた接着剤組成物(被覆材組成物)1mlをポリエチレン製シートの上に長さ4cm塗布した。シリンジからの押出し性の評価は、容易に押出し可能の場合は3、両手で力を加えれば押出し可能の場合は2、押出し不可能もしくは混合後、重合体粒子(B)がモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)の混合物と分離し、不均一に液体部分が先に押出される場合、また、均一に分散しても塗布後に重合体粒子(B)が液体部分と分離した場合は1とした。評価結果を表2〜表7に示した。また、塗布性の評価は、塗布物の広がりの程度の確認(塗布物の幅)により行った。塗布物の幅が1〜1.2cmは5、1.2cm〜1.4cmは4、1.4cm〜1.6cmは3、1.6cm〜1.8cmは2、1.8cm〜3cmは1、3cm以上は0とした。なお、押出し性1の場合は塗布性の評価、粘度の測定は行わず、結果の表中に斜線を記載した。評価結果を表2〜表7に示した。
【0183】
(粘度の評価)
下記表1の実施例1〜29及び比較例1〜26に記載される配合比にしたがって、重合体粒子(B)をルアー部に大阪ケミカル社製のプラスチックキャップを付けたHENKE SASS WOLF社製5mlルアーロック付きラテックスフリーシリンジに秤量した。続いて、上記実施例及び比較例に記載の配合比に従って、10mlガラス製サンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記シリンジ内に注入し、25℃で、20秒間手で激しく振とうすることにより攪拌混合した。その後、シリンジのキャップを取りはずして、シリンジ内から得られた接着剤組成物(被覆材組成物)を押出し、調製後60秒後の接着剤組成物(被覆材組成物)の粘度を、レオメーター(HAAKE社製、RS600)を用いて、35℃で測定した。なお、粘度は、調製時には0.4cp以上であり、経時的に上昇していることを確認している。評価結果を下記表2〜表7に示した。
【0184】
また、上記(A)、(B)、及び(C)を含む接着剤組成物又は創傷被覆材組成物で、30秒後の粘度が0.4cpを下回るものは塗布物の幅があまりにも大きいこと、及び該組成物で、30秒後の粘度が75000cpを超えるものはシリンジから塗布することができなかったことを確認した。
【0185】
(総合評価)
分散性、容器からの押出し性(押出し性)、塗布物の広がり(塗布性)の評価は、塗布性が4以上はAA、塗布性が2及び3はA、塗布性が1はB、塗布性が0及び塗布不可はCとした。評価結果を表2〜表7に示した。
【0186】
(重合して固化した膜(フィルム)の作製)
下記表2〜表7の実施例1〜29及び比較例1〜26に記載される配合比に従って、重合体粒子(B)をルアー部に大阪ケミカル社製のプラスチックキャップを付けたHENKE SASS WOLF社製5mlルアーロック付きラテックスフリーシリンジに秤量した。続いて、上記実施例及び比較例に記載の配合比に従いサンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記シリンジ内に注入し、25℃で20秒間手で激しく振とうすることにより混合した。その後、
図1に例示される以下の手順に従って、直ちに得られた接着剤組成物(被覆材組成物)を型枠に充填し試料フィルムを作製した。ガラス板の上に、PE製ルミラー(商標)のシート、厚さ0.5mmのフッ素樹脂製型枠(型枠内の大きさ:縦25mm×横2mm)の順に重ねて置いた。この型枠内に調製した接着剤組成物(被覆材組成物)を充填した。充填の際には気泡が入らないよう注意して作業を行った。充填終了後、その上にさらにPE製ルミラー(商標)のシート、ガラス板の順に重ねて置き、外側の2枚のガラス板の4隅をクリップで固定した。その後、25℃(室温)で24時間静置した後、型枠からフィルムを取り出した。得られたフィルムの表面に凹凸がある場合には、耐水研磨紙#600で表面を研磨して凹凸を除去し、試料フィルムを作製した。得られた試料フィルムの大きさは、縦25mm、横2mm、厚み0.5mmであった。
【0187】
この試料フィルムの曲げ弾性率(試験速度2mm/分)、引張り伸び(試験速度1mm/分)をオートグラフ(島津製作所社製EZ−S)により求めた。なお、これらフィルムの曲げ弾性率および引張り伸びの値は、試料フィルム4片で測定した値の平均値である。その結果、実施例の組成物は、軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤及び創傷被覆材として十分な曲げ弾性率と引張り伸びを有していることを確認した。
【0188】
(YMP皮膚を用いた接着強さの評価)
YMPブタ皮膚(日本チャールス・リバー(株)社製)を用いて、ASTM F2255−05に基づき試験した。即ち、
図2に示すように、脂肪層を取り除き、厚さ2〜3mmとしたYMP皮膚を25mm(幅)×20(長さ)mmに切断し、紙で両面を拭いた後、25mm(幅)×80mm(長さ)のアクリル板の端に25mmの幅を合わせて、外皮が上になるように真皮側を東亜合成(株)社製アロンアルファ(商標)にて貼付けた。その後、アクリル板の長い方の端から長さ10mm以上の皮膚(外皮)および皮膚側面にテフロングリースを塗布し、「接着剤の塗布面(25mm(幅)×10mm(長さ))」を規定して被着体とした。この被着体は生理食塩水で浸したガーゼで包み、密閉容器に入れて37℃で30分間保温した。その後、下記表2〜表7の実施例1〜29及び比較例1〜26に記載される配合比に従って、重合体粒子(B)をルアー部に大阪ケミカル社製のプラスチックキャップを付けたHENKE SASS WOLF社製5mlルアーロック付きラテックスフリーシリンジに秤量した。続いて、上記実施例及び比較例に記載の配合比に従いサンプル管内で混合したモノマー(A)と重合開始剤組成物(C)を上記シリンジ内に注入し、25℃で、20秒間手で激しく振とうすることにより混合した。その後、
図2に例示される手順に従って、直ちに得られた接着剤組成物(被覆材組成物)を、上記接着剤の塗布面(25mm×10mm)に塗布した。これを2枚作製し、接着剤の塗布面同士を重ね、140gの重りを乗せて、1時間静置した。その後、生理食塩水で浸したガーゼで包み、容器に格納したのち、37℃で24時間静置し、接着強さ評価サンプルを作製した。
【0189】
上記、評価サンプルをオートグラフ(島津製作所(株)社製EZ−S)にて、試験速度5mm/分で引張り試験を行い、4個の試験片を用いて測定した値の平均値で接着強さを求めた。その結果、実施例の組成物は、軟組織用接着剤、創傷被覆用接着剤及び創傷被覆材として十分な接着性を有していることが確認された。
【0190】
【表2】
【0191】
【表3】
【0192】
【表4】
【0193】
【表5】
【0194】
【表6】
【0195】
【表7】