特許第5797264号(P5797264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797264
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】メカニカルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   F16J15/34 K
   F16J15/34 L
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-519422(P2013-519422)
(86)(22)【出願日】2012年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2012061349
(87)【国際公開番号】WO2012169297
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2014年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-129708(P2011-129708)
(32)【優先日】2011年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503227553
【氏名又は名称】イーグルブルグマンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116506
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 義宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】青池 浩
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 猛史
【審査官】 中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−216587(JP,A)
【文献】 特開2005−207520(JP,A)
【文献】 実開平02−040163(JP,U)
【文献】 実開昭53−026767(JP,U)
【文献】 特開2003−074714(JP,A)
【文献】 特表2009−537759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸とハウジングとの間に装着されて摺動面の外周から内周方向への被密封流体の漏れを防止するインサイド形のメカニカルシールであって、回転軸側に装着された回転側密封環とシールケース側に装着された固定側密封環とを備え、外周側の保持部がシールケースに嵌着するとともに内周側のシールリップ部が固定側密封環に密着して固定側密封環を回転側密封環へ押圧する環状のパッキンを設け、メカニカルシールの組立時においてパッキンの背面に当接してパッキンを固定側密封環側に押圧するリング状の突起をシールケースに設けることを特徴とするメカニカルシール。
【請求項2】
シールケースに設けられるリング状の突起が金属から形成され、パッキンがゴム状弾性材から形成されることを特徴とする請求項1記載のメカニカルシール。
【請求項3】
リング状の突起がシールケースに一体に設けられることを特徴とする請求項2記載のメカニカルシール。
【請求項4】
シールケースに設けられるリング状の突起及びパッキンがゴム状弾性材から形成されることを特徴とする請求項1記載のメカニカルシール。
【請求項5】
パッキンのゴム硬度がリング状の突起のゴム硬度より高いことを特徴とする請求項4記載のメカニカルシール。
【請求項6】
パッキンのゴム硬度とリング状の突起のゴム硬度とが略同一であることを特徴とする請求項4記載のメカニカルシール。
【請求項7】
リング状の突起がシールケースに焼付けにより設けられることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載のメカニカルシール。
【請求項8】
シールケースに設けられるリング状の突起がOリングから形成され、パッキンがゴム状弾性材から形成されることを特徴とする請求項1記載のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーを含む液を処理する装置又はポンプに用いられて有用なメカニカルシールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スラリーを含む液をシールするために好適なメカニカルシールとしては、本出願人による再公表2009−008289号公報(特許文献1)に記載のメカニカルシールが知られている(以下、「従来技術」という。)。
図6は、従来技術を示す縦断面図である。
メカニカルシール装置50は、機内側メカニカルシール60及び機外側(大気側)メカニカルシール70を有する。
機内側メカニカルシール60は、機内側に配置される回転側密封環61と、機外側に配置される固定側密封環62とを有する。機内側メカニカルシール60は、固定側密封環62が第1シールケース65に装着されたスプリング63及びゴム材製からなるリング状のパッキン64により回転側密封環61の方向に押圧されて密封摺動面が形成されている。
機外側メカニカルシール70は、機内側に配置される回転密封環71と、機外側に配置される固定側密封環72とを有する。機外側メカニカルシール70も、固定側密封環72が第2シールケース74に装着されたスプリング73により回転密封環71方向に押圧されて密封摺動面が形成されている。
【0003】
機内側メカニカルシール60において、第1シールケース65にはパッキン64の背面に向けて突出したリング状の突起66が設けられている。装置の組立時には、リング状の突起66とリング状のパッキン64の背面との間に所定の隙間αを有するように設定されている。運転時において、機内側の圧力が高くなるとリング状のパッキン64の内周側が機外側の方に変形されるが、その際、第1シールケース65に設けられたリング状の突起66がリング状のパッキン64の背面を支持し、隙間α以上のパッキン64の変形を阻止するものである。
【0004】
ところで、被密封流体がスラリー流体であると、機内側メカニカルシール60の第1シールケース65に装着されたスプリング63には、スラリー流体が付着し、その後、固着することがある。スラリー流体が固着してしまうとスプリング63は全く機能を果たさず、固定側密封環62を摺動面に押圧する機能は、もっぱら、ゴム材製からなるリング状のパッキン64が担うことになる。
【0005】
図7は、上記従来技術においてスプリング63が全く機能を果たさない場合における、無負荷状態及び低負荷状態、並びに、高負荷(高圧)状態における固定側密封環62及びパッキン64の様子を示した説明図である。
図7(a)は、無負荷状態及び低負荷状態を示しており、この状態では固定側密封環62がリング状のパッキン64により回転側密封環61の方向に押圧されて密封摺動面が形成されている。
図7(b)、(c)は、高負荷(高圧)状態を示したもので、図7(b)はパッキン64内周にグリースが塗布されている場合を、図7(c)はパッキン64内周にグリースが塗布されていない場合を示している。
【0006】
パッキン64内周にグリースが塗布されている図7(b)の場合は、パッキン64内周と固定側密封環62との摩擦係数が下がり、機内側の圧力がパッキン64の機内側に作用し、パッキン64が変形しその自由端であるところの内周側が後退しようとする。その際、パッキン64内周と固定側密封環62との摩擦係数が小さいため、パッキン64の内周側のみが固定側密封環62に対して滑って後退するが、固定側密封環62と回転側密封環61との摺動面は被密封流体の圧力により辛うじてシールが形成されている状態にある。
一方、パッキン64内周にグリースが塗布されていない図7(c)の場合は、パッキン64内周と固定側密封環62との摩擦係数が高く、一定圧力以上になると、固定側密封環62を摺動面側に押す力よりパッキン64の内周側が後退する力が大きくなり、パッキン64の内周側と共に固定側密封環62が後退し、固定側密封環62と回転側密封環61との摺動面は開き、漏れが発生する状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再公表2009−008289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の問題を解決するためになされたもので、固定側密封環を摺動面側に押圧するパッキンの背面に対してシールケースに設けられたリング状の突起がメカニカルシールの組立時において押し当たるように設定することにより、機内側において被密封流体の圧力の変動が発生しても、固定側密封環を摺動面側に押圧するスプリングを設けることなく、漏れのない安定したシールが得られるメカニカルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明のメカニカルシールは、第1に、回転軸とハウジングとの間に装着されて摺動面の外周から内周方向への被密封流体の漏れを防止するインサイド形のメカニカルシールであって、回転軸側に装着された回転側密封環とシールケース側に装着された固定側密封環とを備え、外周側の保持部がシールケースに嵌着するとともに内周側のシールリップ部が固定側密封環に密着して固定側密封環を回転側密封環へ押圧する環状のパッキンを設け、メカニカルシールの組立時においてパッキンの背面に当接してパッキンを固定側密封環側に押圧するリング状の突起をシールケースに設けることを特徴としている
【0010】
また、本発明のメカニカルシールは、第2に、第1の特徴において、シールケースに設けられるリング状の突起が金属から形成され、パッキンがゴム状弾性材から形成されることを特徴としている。
また、本発明のメカニカルシールは、第3に、第2の特徴において、リング状の突起がシールケースに一体に設けられることを特徴としている。
【0011】
また、本発明のメカニカルシール装置は、第4に、第1の特徴において、シールケースに設けられるリング状の突起及びパッキンがゴム状弾性材から形成されることを特徴としている。
また、本発明のメカニカルシール装置は、第5に、第4の特徴において、パッキンのゴム硬度がリング状の突起のゴム硬度より高いことを特徴としている。
また、本発明のメカニカルシール装置は、第6に、第4の特徴において、パッキンのゴム硬度とリング状の突起のゴム硬度とが略同一であることを特徴としている。
また、本発明のメカニカルシール装置は、第7に、第4ないし6のいずれかの特徴において、リング状の突起がシールケースに焼付けにより設けられることを特徴としている。
【0012】
また、本発明のメカニカルシールは、第8に、第1の特徴において、シールケースに設けられるリング状の突起がOリングから形成され、パッキンがゴム状弾性材から形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)固定側密封環を摺動面側に押圧するスプリングを設けることなく、固定側密封環を摺動面側に押圧するパッキンの背面に対してシールケースに設けられたリング状の突起が、メカニカルシールの組立時において押し当たるように設定することにより、被密封流体の圧力が変動しても、摺動面の押付力の変動が小さく、所定の押圧荷重の範囲となるため、漏れのない安定したシールが得られる。特に、パッキンの内周にグリースが塗布されていない場合、被密封流体の圧力が変動しても、摺動面の押付力をほぼ一定とすることができる。
【0014】
(2)リング状の突起が金属から形成される場合、該突起をシールケースに一体に設けることができるので、部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。
(3)リング状の突起及びパッキンがゴム状弾性材から形成される場合、該リング状の突起をシールケースに焼付けにより設けることにより、部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。
(4)リング状の突起がOリングから形成される場合、シールケースにOリング溝を加工するだけで、既存のOリングを装着できるので、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係るメカニカルシールの全体を示す縦断面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るメカニカルシールの要部を拡大して示す縦断面図である。
図3】本発明の実施の形態2に係るメカニカルシールの要部を拡大して示す縦断面図である。
図4】本発明の実施の形態3に係るメカニカルシールの要部を拡大して示す縦断面図である。
図5】本発明の実施の形態1ないし3に係るメカニカルシール及び従来技術に係るメカニカルシールの固定側密封環に対するパッキンの押圧荷重の測定結果を示した図である。
図6】従来技術のメカニカルシールの全体を示す縦断面図である。
図7】従来技術のメカニカルシールの無負荷状態及び低負荷状態、並びに、高負荷(高圧)状態における固定側密封環及びパッキンの様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るメカニカルシールを実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0017】
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の実施の形態1に係るメカニカルシール1の構成を示す図であり、回転軸2の軸中心を通る平面を切断面とした縦断面図である。なお、図1においては、左側が機内側であり、右側が大気側である。
メカニカルシール1は、回転軸2が貫通しているハウジング3の軸孔部3aに装着される形式のシール装置であって、摺動面の外周から内周方向への被密封流体の漏れを防止するインサイド形のメカニカルシールである。
メカニカルシール1の主な構成としては、第1シールハウジング4、第2シールハウジング5、シールケース6、固定側密封環7、環状のパッキン8、回転側密封環9、カラー10を有する。
【0018】
第1シールハウジング4はハウジング3との間にOリング11を介在させて、第2シールハウジング5とともに図示しない固定ボルトなどによりハウジング3に固定されている。
シールケース6は、第1シールハウジング4との間にOリング12及び13を介在させて機内側と大気側とを密封した状態で、第2シールハウジング5にノックピン14を介して装着されている。シールケース6の断面形状は、おおむね矩形であって、第1シールハウジング4と接する外周面、第2シールハウジング5と接する背面、及び回転軸2と間隙を持って対向する内周面が略ストレート形状をし、機内側に臨む表面の径方向の中間部にパッキン8を収容できるリング状のパッキン収容凹部15が形成され、径方向の内周側に固定側密封環7の後部を収容できるリング状の固定側密封環収容凹部16が形成されている。
【0019】
シールケース6は、オーステナイト系ステンレスなどの金属材から形成される。
シールケース6のパッキン収容凹部15の固定側密封環収容凹部16寄りの近傍には、メカニカルシールの組立時においてパッキン8の背面に当接してパッキン8の内周側のシールリップ部を固定側密封環7の背後に押圧するリング状の突起20が設けられている。
【0020】
固定側密封環7は、断面形状が略L字状をなし、パッキン8を介してシールケース6の固定側密封環収容凹部16に後部が収容されるようにして装着されており、その機内側の端面であって回転側密封環9に対向する面が摺動面として形成されている。シールケース6の固定側密封環収容凹部16の側面には、機内側に突出するようにノックピン17が周方向に等配に設けられており、また固定側密封環7の背面には、ノックピン17に対応するように、周方向に等配の複数の係合溝18が形成されている。このノックピン17が固定側密封環7の係合溝18に係止することにより、固定側密封環7は回動しないようにシールケース6に保持される。
また、固定側密封環7の外周面は、パッキン8と密接する段部19が形成されている。
固定側密封環7は、炭化珪素、カーボン、セラミック等の材質により構成される。
【0021】
パッキン8は、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、パーフロロエラストマ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのゴム状弾性材からなる環状部材である。パッキン8は、外周側に固着部8aが設けられていると共に、内周側にシールリップ部8bが形成されている。固着部8aはシールケース6のパッキン収容凹部15に嵌着される。シールリップ部8bは固定側密封環7の外周面の段部19に当接してパッキン自身の弾性力により固定側密封環7を回転側密封環9の方に押圧するように組立てられる。これによりパッキン8は、シールケース6のパッキン収容凹部15に保持されるとともに、被密封流体の圧力を受けつつも固定側密封環7を回転側密封環9の方に押圧するように作用する。
【0022】
回転軸2には、回転側密封環9がカラー10により回転軸2に装着されている。
回転側密封環9は、内周側に段差22が形成されており、この段差22がOリング21を介してカラー10に密封嵌合されており、その大気側を指向する端面であって固定側密封環7に対向する面が摺動面として形成されている。
カラー10の回転側密封環9の側面と当接する側面には、軸方向大気側に突出するように周方向に等配に複数のノックピン23が形成されており、また回転側密封環9には、このノックピン23に対応するように、周方向に等配の複数の係合溝24が形成されている。このノックピン23が回転側密封環9の係合溝24に係止することにより、回転側密封環9の回転軸2に対する相対的な回動が阻止されて、回転軸2に保持される。また、カラー10の内周面にはOリング25が装着されている。
回転側密封環9は、炭化珪素、カーボン、セラミック等の材質により構成される。
【0023】
このような構成のメカニカルシール1においては、パッキン8のシールリップ部8bの弾性力により、固定側密封環7が機内側、すなわち回転側密封環9の方向に押圧される。
その結果、対向する回転側密封環9の摺動面と固定側密封環7の摺動面とが所定の圧力で密接する。そして、回転軸2が回転することにより回転側密封環9のみが回転し、回転側密封環9及び固定側密封環7の摺動面が密接状態で摺動し、シールする。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態1に係るメカニカルシールの要部を拡大して示す縦断面図である。
図2において、パッキン8は、固着部8aがシールケース6のパッキン収容凹部15に嵌着され、シールリップ部8bが固定側密封環7の段部19に当接してパッキン自身の弾性力により固定側密封環7を回転側密封環9の方に押圧するように組立てられるが、その際、シールケース6のパッキン収容凹部15の固定側密封環収容凹部16寄りに設けられたリング状の突起20がメカニカルシールの組立時においてパッキン8の背面に当接してパッキン8の内周側のシールリップ部8bを固定側密封環7の背後に押圧する。すなわち、メカニカルシールの組立時において、突起20がパッキン8を圧縮するような寸法関係になるような状態で、シールケース6に対してパッキン8及び固定側密封環7が取り付けられる。
突起20は金属製であり、シールケース6が金属製の場合、シールケース6と一体的に形成されるようにしてもよい。突起20をシールケース6に一体に設けることができるので、部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。突起20の先端は角部をR形状に加工されており、パッキン8との当接状態を安定したものとするとともに、長期間の使用においてもパッキン8を損傷させることがない。パッキン8の硬度は「JIS K6523」規格で硬度50〜70の範囲が好ましく、より好ましくは、自動車のタイヤの硬度65より少し低硬度の55〜64の範囲である。
【0025】
運転中には、パッキン8の機内側の面には、被密封流体の圧力が作用するが、リング状の突起20がメカニカルシールの組立時においてパッキン8の背面に当接してパッキン8を圧縮する状態で組立てられているため、パッキン8のシールリップ部8bの弾性力により固定側密封環7を回転側密封環9の方向に押圧する状態が維持される。
【0026】
〔実施の形態2〕
図3は、本発明の実施の形態2に係るメカニカルシールの要部を拡大して示す縦断面図である。
図3において、図2と同じ符号は図2と同じ部材を示しており詳しい説明は省略する。
リング状の突起30は、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、パーフロロエラストマ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのゴム状弾性材からなり、断面が横長の長方形をしたリング状部材を、シールケース6に設けられたリング状の凹部31に基部を嵌合し、例えば、焼付けにより固着される。リング状の突起30をシールケース6に焼付けにより設けることができるので、部品点数の削減及び製造コストの低減を図ることができる。突起30の先端は角部をR形状に加工されており、パッキン8との当接状態を安定したものとするとともに、長期間の使用においてもパッキン8を損傷させることがない。パッキン8はゴム状弾性材製であり、その硬度は「JIS K6523」規格で硬度50〜70の範囲が好ましく、より好ましくは、自動車のタイヤの硬度65とほぼ同じ硬度の63〜70の範囲である。一方、突起30の硬度は、同じJIS規格で、硬度50〜70の範囲が好ましく、より好ましくは、自動車のタイヤの硬度65より少し低硬度の55〜64の範囲である。
その他、パッキン8及び突起30の硬度を、「JIS K6523」規格で硬度50〜70の範囲、より好ましくは、自動車のタイヤの硬度65より少し低硬度の55〜64の範囲内で同一に設定してもよい。
【0027】
運転中には、パッキン8の機内側の面には、被密封流体の圧力が作用するが、ゴム状弾性材製のリング状の突起30がメカニカルシールの組立時においてパッキン8の背面に当接してパッキン8を圧縮する状態で組立てられているため、パッキン8のシールリップ部8bの弾性力により固定側密封環7を回転側密封環9の方向に押圧する状態は維持される。
【0028】
〔実施の形態3〕
図4は、本発明の実施の形態3に係るメカニカルシールの要部を拡大して示す縦断面図である。
図4において、図2と同じ符号は図2と同じ部材を示しており詳しい説明は省略する。
突起40は、Oリングからなり、シールケース6に設けられたOリング溝41から約半分程度突出した状態で装着される。リング状の突起40がOリングから形成されるので、シールケース6にOリング溝41を加工するだけで、既存のOリングを装着できるので、製造コストの低減を図ることができる。
Oリングは、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR(HNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、パーフロロエラストマ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのゴム状弾性材から選択される。
【0029】
運転中には、パッキン8の機内側の面には、被密封流体の圧力が作用するが、Oリングからなる突起40がメカニカルシールの組立時においてパッキン8の背面に当接してパッキン8を圧縮する状態で組立てられているため、パッキン8のシールリップ部8bの弾性力により固定側密封環7を回転側密封環9の方向に押圧する状態が維持される。
【0030】
図5は、本発明の実施の形態1ないし3に係るメカニカルシール及び従来技術に係るメカニカルシールの摺動面の押付力の測定結果を示した図である。
図5(a)は、実施の形態1のリング状の突起が金属から形成され、パッキンがゴム状弾性材から形成されている場合を、図5(b)は、実施の形態2のリング状の突起及びパッキンがゴム状弾性材から形成されるものにおいてパッキンのゴム硬度がリング状の突起のゴム硬度より高い場合を、図5(c)は、実施の形態2のリング状の突起及びパッキンがゴム状弾性材から形成されるものにおいてパッキンのゴム硬度とリング状の突起のゴム硬度が略同一である場合を、図5(d)は、実施の形態3のリング状の突起がOリングから形成されている場合を、また、図5(e)は、従来技術の場合を示している。
図5(a)〜(d)は、パッキンがリング状の突起により軸方向に0.5mm圧縮された状態で組立られたものであり、図5(e)は、パッキンとリング状の突起とが軸方向の0.5mmの隙間を有して組立られたものである。
なお、図5において、左側の図はパッキンの内周にグリースが塗布されている場合を、右側の図はパッキンの内周にグリースが塗布されていない場合を示している。
【0031】
図5(a)の実施の形態1のリング状の突起が金属から形成されパッキンがゴム状弾性材から形成された場合、全体として被密封流体の圧力変化があっても摺動面の押付力のバラツキが小さく、所定の押付力が得られている。
図5(b)の実施の形態2のリング状の突起及びパッキンがゴム状弾性材から形成されるものにおいてパッキンのゴム硬度がリング状の突起のゴム硬度より高い場合、図5(a)と比べて、グリースが塗布されていない場合、被密封流体の圧力が低い範囲では押付力が高くなるものの、全体として被密封流体の圧力変化があっても摺動面の押付力のバラツキは小さい。
図5(c)の実施の形態2のリング状の突起及びパッキンがゴム状弾性材から形成されるものにおいてパッキンのゴム硬度とリング状の突起のゴム硬度が略同一である場合、図5(a)とほぼ同等のものとなっており、押付力の減衰は少なく、所定の押付力が得られている。
図5(d)の実施の形態3のリング状の突起がOリングから形成されている場合、図5(a)〜(c)と比べて、密封流体の圧力が高くなるとやや摺動面の押付力が大きくなるが、押圧荷重の減衰は少なく、所定の押付力の範囲となっている。
【0032】
図5(a)〜(d)においては、特に、パッキンの内周にグリースが塗布されていない場合、被密封流体の圧力が変動しても、摺動面の押付力をほぼ一定とすることができる。
これに対して、図5(e)の従来技術の場合、グリースが塗布されているものでは、被密封流体の圧力が低い範囲において押付力の減衰の大きい範囲が存在し、グリースが塗布されていないものでは、被密封流体の圧力が高くなると押付力が零となり、パッキンの機能を果たさなくなっている。
【0033】
このように、本発明の実施の形態のものは、グリースの塗布の有無にかかわらず、被密封流体の圧力が変動しても、摺動面の押付力の変動が小さく、所定の押付力が得られていることがわかる。これに対して、従来技術の場合、グリースが塗布されている場合、被密封流体の圧力が低い範囲において押圧力が極端に小さくなる範囲があり、また、グリースが塗布されていない場合、被密封流体の圧力が高くなると押圧力が零となり、シール機能が果たされなくなることがわかる。
【符号の説明】
【0034】
1 メカニカルシール
2 回転軸
3 ハウジング
4 第1シールハウジング
5 第2シールハウジング
6 シールケース
7 固定側密封環
8 パッキン
9 回転側密封環
10 カラー
11 Oリング
12 Oリング
13 Oリング
14 ノックピン
15 パッキン収容凹部
16 固定側密封環収容凹部
17 ノックピン
18 係合溝
19 段部
20 突起
21 Oリング
22 段差
23 ノックピン
24 係合溝
25 Oリング
30 突起
31 凹部
40 突起
41 Oリング溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7