(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)基板上に、第1の方向に延在する複数の第1の電極、及び前記第1の方向と交差する第2の方向に並び、前記第1の電極で分断された複数の第2の電極を形成する工程と、
(b)前記第2の方向に並んでいる前記第2の電極の列と、前記第1の電極との交差個所の、前記第1の電極の上に、絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記絶縁膜の上に、前記第1の電極で分断された前記第2の電極同士を接続する接続領域を形成する工程と
を有し、
前記工程(b)は、
(b1)ノズル孔から吐出された液滴を、前記絶縁膜を形成すべき領域内の複数の着弾位置に着弾させる工程と、
(b2)前記着弾位置に着弾した液滴同士が相互に連続して液状の膜が形成された状態で、前記液状の膜を硬化させる工程と
を含み、
前記着弾位置は、形成すべき絶縁膜の厚さに基づいて決定された間隔になるように配置されており、
前記工程(b1)と前記工程(b2)との間に、前記工程(b1)が実行された場所から前記工程(b2)が実行される場所まで前記基板を搬送する工程を含み、
ある基板に対して前記工程(b2)が実行されている期間中に、他の少なくとも1枚の基板は、前記工程(b1)が終了して搬送中であるタッチパネルの製造方法。
絶縁膜の厚さと、前記着弾位置の間隔との第1の関係が、予め求められており、形成すべき絶縁膜の厚さと、前記第1の関係とに基づいて前記着弾位置の間隔が決定されている請求項1または2に記載のタッチパネルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施例1]
図1に、実施例1による基板製造装置70の平面図を示す。基板製造装置70は、液滴吐出装置73及び紫外線照射装置74を含む。液滴吐出装置73及び紫外線照射装置74は、筐体71の内部に収容される。筐体71に、基板搬入口71a及び基板搬出口71bが設けられている。また、基板製造装置70は、搬送装置としてのコンベヤ72a、72bを含む。コンベヤ72aは、薄膜形成対象物、例えば基板80を、基板搬入口71aを介して筐体71の外部から内部へ搬入する。さらに、筐体71の内部において、基板80を液滴吐出装置73まで搬送する。基板80は、例えば、
図6Bに示したようにパターニングされた透明電極膜が形成されたガラス基板である。実施例1による基板製造装置70を用いて、
図6Cに示した長方形状の絶縁膜83を、基板80の上(ガラス基板の上及び透明導電膜の上)に形成する。
【0025】
液滴吐出装置73は、基板80の上の所定領域に、紫外線硬化型樹脂等の絶縁材料を、液滴として吐出する。吐出された液滴が付着した基板80は、コンベヤ72bによって搬送される。コンベヤ72bの搬送経路の上方に、紫外線照射装置74が配置されている。紫外線照射装置74は、複数の液滴が連続して液状の膜が形成された基板80に紫外線を照射することにより、液状の膜を硬化させる。紫外線照射装置74は、基板80に付着した液状の膜を硬化させる液滴硬化装置としての役割を担う。紫外線の照射により、基板80の上に付着した液滴が硬化し、基板80の上に絶縁膜83が形成される。
【0026】
液状の膜が硬化した絶縁膜83は、絶縁性を有するが、硬化する前の液状の材料は、必ずしも絶縁性である必要はない。
【0027】
絶縁膜83が形成された基板80は、コンベヤ72bによって、基板搬出口71bから筐体71の外部に搬出される。基板製造装置70は、筐体71を含まない構成であってもよい。
【0028】
実施例1による基板製造装置70は、更に、制御装置33、及び記憶装置34を含む。制御装置33は、液滴吐出装置73、紫外線照射装置74、及びコンベヤ72a、72bの動作を制御する。記憶装置34に、例えば液滴吐出装置73で基板80に向けて薄膜材料が吐出されてから、紫外線照射装置74が出射する紫外光により、薄膜材料が硬化するまでの時間、一例として100秒が記憶されている。制御装置33は、基板80に向けて薄膜材料を吐出してから、基板80に付着した薄膜材料が硬化するまでの時間が、記憶装置34に記憶されている硬化までの時間と等しくなるように、コンベヤ72bによる基板80の搬送速度を制御する。
【0029】
絶縁膜83(
図6C)の形成工程には、例えば1枚の基板80の処理時間を30秒以下とすることが要求されている。また、液滴吐出装置73で1枚の基板80に薄膜材料を塗布するのに要する時間は、例えば30秒である。コンベヤ72b上には、液滴吐出装置73から吐出された薄膜材料が付着した基板80が、30秒ごとに1枚の割合で載置される。液滴吐出装置73から紫外線照射装置74までの搬送経路(コンベヤ72b)上には、薄膜材料が付着した複数の基板80が搬送されながら、硬化処理まで待機している。すなわち、ある基板に対して硬化処理が実行されている期間中に、他の少なくとも1枚の基板は、薄膜材料の塗布が終了して搬送中である。30秒ごとに1枚の割合で基板80が紫外線照射装置74の下方を通過することによって、基板80に付着した薄膜材料が硬化される。薄膜材料が硬化され、絶縁膜83(
図6C)が形成された基板80は、30秒に1枚の割合で、コンベヤ72bによって筐体71の外部へ搬出される。
【0030】
1枚の基板80に着目すると、液滴吐出装置73に搬入されてから、基板搬出口71bから搬出されるまでの時間は、要求される処理時間(例えば30秒)より長い。ところが、コンベヤ72bの上で複数の基板80が硬化されるまで待機しているため、上述のように、1枚あたりの目標処理時間ごとに、1枚の基板80を搬出することができる。
【0031】
図2に、実施例1による基板製造装置70に含まれる液滴吐出装置73の概略図を示す。定盤20の上に、移動機構21によりステージ(保持機構)25が保持されている。移動機構21は、X方向移動機構22、Y方向移動機構23、及びθ方向回転機構24を含む。水平面をXY平面とし、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を定義する。X方向移動機構22は、Y方向移動機構23をX方向に移動させる。Y方向移動機構23は、θ方向回転機構24をY方向に移動させる。θ方向回転機構24は、Z軸に平行な軸を回転中心として、ステージ25の回転方向の姿勢を変化させる。ステージ25は、薄膜形成対象である基板80を保持する。ステージ25は、例えば真空チャックにより基板80を吸着する。
【0032】
定盤20の上方に、支柱30によって梁31が支えられている。梁31に、ノズルユニット40及び撮像装置32が取り付けられている。ノズルユニット40及び撮像装置32は、ステージ25に保持された基板80に対向する。
【0033】
ノズルユニット40は、梁31に、Z方向に移動可能に支持されている。基板80の厚さに応じ、ノズルユニット40をZ方向に移動させることによって、ノズルユニット40と基板80との間隔を一定に保つことが可能である。なお、支柱30が梁31をZ方向に移動可能に支持することによって、ノズルユニット40と、ステージ25に保持された基板80との間隔を調整可能とすることもできる。
【0034】
撮像装置32は、基板80の表面に形成されている透明導電膜パターン、アライメントマーク等を撮像する。撮像結果が制御装置33に入力される。ノズルユニット40は、複数のノズル孔から基板80に向けて、紫外線硬化型樹脂等の絶縁材料を液滴として吐出する。吐出された液滴が、基板80の表面(基板材料であるガラスの表面、及び、透明導電膜の表面を含む領域)に付着する。
【0035】
ノズルユニット40に対して基板80をX方向に移動させながら、ノズル孔から絶縁材料の液滴を吐出させることにより、所望の平面形状を有する絶縁膜を形成することができる。基板80をX方向に移動させながら、ノズル孔から絶縁材料の液滴を吐出させる動作を「走査」ということとする。
【0036】
従来、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることで長方形状の絶縁膜83(
図6C)を形成していたが、実施例1による基板製造装置を用いると、液滴化された絶縁材料を、基板80の所望の領域にのみ付着させて、硬化させることにより、絶縁膜83(
図6C)を形成することができる。このため、絶縁膜83の形成にあたり、形成に要する時間を短縮するとともに、絶縁材料の使用量を少なくすることが可能である。
【0037】
制御装置33が、X方向移動機構22、Y方向移動機構23、θ方向回転機構24、ステージ25、撮像装置32、及びノズルユニット40を制御する。なお、液滴吐出装置73は、撮像装置32を含まない構成としてもよい。その場合、透明導電膜パターン、アライメントマーク等の撮像は、基板製造装置の外で行われ、撮像結果が制御装置33に入力される。
【0038】
記憶装置34に、形成すべきパターン、例えば絶縁膜83を形成する領域のイメージデータが記憶されている。
【0039】
図2では、ノズルユニット40を定盤20に対して固定し、ステージ25を移動させるように移動機構21を配置したが、ノズルユニット40をステージ25に対して移動させてもよい。
【0040】
図3A及び
図3Bに、それぞれノズルユニット40の斜視図、及び底面図を示す。ノズルユニット40は、ノズルホルダ41に支持されたノズルヘッド42A及び42Bを含む。ノズルヘッド42A、42Bに、それぞれ複数のノズル孔42a、42bが形成されている。ノズルホルダ41、ノズルヘッド42A、42B、ノズル孔42a、42bの構成は、
図7A及び
図7Bに示したノズルホルダ11、ノズルヘッド10A、10B、ノズル孔10a、10bの構成と同一である。実施例1によるノズルユニット40は、光源13(
図7A、
図7B)を含まない。
【0041】
図3Cに示すように、ノズルヘッド42A、42B(
図3B)のノズル孔42a、42bを、X軸に垂直な仮想平面56に垂直投影した像55a、55bは、Y方向に、42.3μmのピッチで等間隔に配列する。ノズルユニット40は、1回の走査で、Y方向に関して600dpiの解像度で、絶縁膜を形成することができる。
【0042】
なお、ノズルヘッド42A、42B(
図3B)は、ノズル孔42a、42bに対応して配置されたピエゾ素子を含む。制御装置33の制御によってピエゾ素子に、ある時間波形を持つ電圧が印加される。印加される電圧波形に対応して、ノズル孔42a、42bから液滴が吐出される。吐出間隔は、印加される電圧波形の周波数に依存し、高い周波数の電圧波形を印加することで、吐出間隔を短くすることができる。このため、印加する電圧波形の周波数を高くすることによって、X方向の解像度を高くすることが可能である。
【0043】
図4Aに、基板80(
図2)に液滴が着弾した時点からの経過時間と、基板80の上に付着している液状の膜の膜厚との関係を示す。
図4Aの横軸は、着弾時点からの経過時間を単位「秒」で表し、縦軸は、液状の膜の膜厚を単位「μm」で表す。曲線aは、ITOからなる透明導電膜(導電膜表面)に着弾した液滴による膜の厚さを示し、曲線bは、基板80のガラス表面に着弾した液滴による膜の厚さを示す。Y方向(
図3B)に関する着弾位置の間隔を50μmとした。
【0044】
透明導電膜表面に着弾した場合も、ガラス表面に着弾した場合も、着弾から0.1秒後の膜厚は12μmとなる。その後、透明導電膜表面に着弾した液滴は、ガラス表面に着弾した液滴よりも速く広がる。透明導電膜表面とガラス表面とで液滴の広がる速度が異なるのは、透明導電膜表面の濡れ性とガラス表面の濡れ性とが異なるためである。
【0045】
透明導電膜表面においては、液滴の着弾によって形成される膜の厚さは、着弾から20秒後に2.0μmとなる。ガラス表面においては、膜の厚さは、着弾から30秒後に2.0μmとなる。透明導電膜表面に着弾した液滴も、ガラス表面に着弾した液滴も徐々に広がり続け、時間の経過とともに、膜厚が1.5μmに近づくが1.5μm未満となることはない。
【0046】
この膜厚の漸近値(1.5μm)は、液滴吐出装置73から吐出された液滴の着弾位置の間隔によって定まる値である。他の一例をあげると、液滴の着弾位置のY方向の間隔が40μmのとき、膜厚の漸近値は3.0μmとなる。
【0047】
透明導電膜表面に着弾した液滴により形成される膜の厚さは、時間の経過とともに1.5μmに漸近する。ガラス表面に着弾した液滴により形成される膜の厚さも、時間の経過とともに1.5μmに漸近するが、着弾から180秒を超えた時点で、膜厚が増加し始める。これは高い撥水性をもつガラス表面においては、広がった液滴が表面張力により、丸まって盛り上がるためである。
【0048】
図4Aに示したような、着弾からの経過時間と、液状の膜の厚さとの関係を示すデータは本願発明者の独自の研究の結果、得られたものである。また、膜厚の漸近値が、液滴の着弾位置の間隔に依存し、着弾位置の間隔を変化させることによって膜厚を制御することが可能であるという知見も、本願発明者の鋭意研究の産物である。
【0049】
図4Bに、ガラス表面と透明導電膜表面とにまたがる領域に着弾した液滴による膜の概略的な平面図を示す。
図4Bには、時間の経過とともに、ガラス表面及び透明導電膜表面に広がる液滴の平面形状を、時間の経過の順にα〜δで示した。
【0050】
平面形状αは、着弾時点から15秒経過したときのものである。透明導電膜表面では、ガラス表面に比べて速い速度で液滴が広がり、膜厚は相対的に薄くなる。ガラス表面では、液滴の広がる速度は相対的に遅く、膜厚は相対的に厚い。透明導電膜表面とガラス表面とでは、液滴の広がる範囲の面積及び膜厚に大きな差が生じる。
【0051】
平面形状βは、着弾時点から25秒経過したときのものである。平面形状αと比較したとき、透明導電膜表面とガラス表面とで液滴が広がった範囲の面積の比が1に近づき、膜厚の差が小さくなる。
【0052】
平面形状γは、着弾時点から30秒以上180秒以下のある時間が経過したときのものである。液滴が着弾して、30秒以上180秒以下の任意の時間の経過後には、透明導電膜表面とガラス表面とで、液滴が広がった範囲の面積及び膜厚がほぼ等しくなる。
【0053】
平面形状δは、着弾時点から200秒が経過したときのものである。ガラス表面においては、広がった液滴が表面張力により盛り上がり、膜厚が再び厚くなるとともに、液滴の拡散範囲が狭くなる。
【0054】
図5A〜
図5Cを参照して、実施例1による基板製造方法について説明する。実施例1による基板製造方法は、
図1に示す基板製造装置を用い、制御装置33の制御のもとで実施される。実施例1による基板製造方法においては、まず、基板80の上に形成する絶縁膜83の膜厚を決定する。例えば、形成すべき絶縁膜83の目標膜厚を2μm以下にする。このように、膜厚の決定には膜厚範囲の決定も含まれる。なお、絶縁膜83の目標膜厚を、具体的に、例えばガラス表面において2μmに設定してもよいし、透明導電膜表面において2μmに設定してもよい。
【0055】
更に、基板80のガラス表面及び透明導電膜表面の両方を含む領域に形成する絶縁膜の膜厚を、ガラス表面に形成される絶縁膜83の膜厚と、透明導電膜表面に形成される絶縁膜83の膜厚との差が、所定値、たとえば0.5μm以下となるように決定してもよい。この場合には、膜厚の差の目標値が決定される。
【0056】
目標膜厚の決定に先立って、または目標膜厚の決定とともに、もしくは目標膜厚の決定の後に、膜厚の漸近値を規定する液滴の着弾位置の間隔を決定することもできる。例えばY方向に関する着弾位置の間隔を50μmにすると、膜厚の漸近値が1.5μmになる。
【0057】
図4Aに示すような、液滴が基板80に着弾してからの経過時間と、液滴が形成する膜の厚さとの関係を示すデータ(経過時間膜厚対応データ)を、予め準備しておく。経過時間膜厚対応データを参照し、決定した目標膜厚に応じて、基板上に液滴を着弾させてから、液滴を硬化させるまでの経過時間を決定する。なお、基板上に液滴が着弾する時刻は、ノズルから液滴を吐出する時刻と同一であると考えることができる。
【0058】
図4Aに示したグラフによれば、着弾から硬化までの経過時間が30秒以上180秒以下であれば、ガラス表面においても透明導電膜表面においても、絶縁膜の膜厚を2μm以下とすることができる。また、着弾から30秒以上180秒以下の時間が経過した任意のタイミングで液滴を硬化させると、
図4Bに示した平面形状γのように、透明導電膜表面とガラス表面とで、液滴の広がった範囲の面積及び膜厚がほぼ等しくなる(膜厚差は0.5μm以下となる)。このため、良質の絶縁膜83を形成することができる。
【0059】
30秒以上180秒以下の範囲に属する経過時間として、例えば100秒を採用する。決定された経過時間は、記憶装置34に記憶される。
【0060】
続いて基板80の表面における液滴の着弾位置の、Y方向の間隔が50μmとなるように、ノズルユニット40(ノズルヘッド42A、42B)から基板80に向けて、液滴を吐出する。
【0061】
実施例1においては、
図5Aに示すように、Y方向に関して126.9μm間隔で配置されているノズル孔42a、42bから液滴を基板80に向けて吐出し、基板80の所定領域に液滴を着弾させる。
図5Aでは、液滴を吐出するノズル孔42a、42bを黒く塗って示した。ノズルヘッド42A、42Bにそれぞれ2列あるノズル列の各々についてみた場合、各ノズル列においては、液滴を吐出するノズル孔の間に、液滴を吐出しないノズル孔が2個配置される。
【0062】
図5Bに示すように、制御装置33が、ステージ25に保持された基板80を、移動機構21でX軸の正方向に移動させる。ノズルユニット40は、基板80に対し相対的にX軸の負方向に移動する。ノズルユニット40を制御して、例えばX方向に関する着弾位置の間隔が50μmとなるように、液滴を吐出する。
図5Bにおいて、この走査工程で液滴が着弾する位置の軌跡が矢印付きの破線で示されている。
【0063】
次に、制御装置33は、液滴の吐出を停止した状態で、基板80を移動機構21でY軸の負方向に50μm移動させる。ノズルユニット40は、基板80に対し相対的にY軸の正方向に50μmだけ移動する。その後、ノズルユニット40を、相対的に基板80に対してX軸の正方向に移動させながら、ノズルユニット40を制御して、例えばX方向に関する着弾位置の間隔が50μmとなるように、液滴を吐出する。
図5Bにおいて、この走査工程で液滴が着弾する位置の軌跡が矢印付きの実線で示されている。基板80の表面において、液滴の着弾位置の、Y方向に関する間隔(2本の軌跡の間隔)は50μmとなる。
【0064】
Y方向に関する間隔が50μmとなる2つの着弾位置に液滴を着弾させると、液滴が面内方向に広がって2つの液滴が相互に連続する。これにより、間隔50μmの2つの着弾位置の間を含む領域に、未硬化状態の絶縁膜83が形成される。制御装置33は、基板80への液滴の着弾時点(ノズルユニット40からの液滴の吐出時点)から100秒後に、基板80に付着している液状の膜が硬化されるように、コンベヤ72bの搬送速度を制御する。
【0065】
絶縁材料が付着した基板80は、液滴の着弾時点から100秒後に紫外線照射装置74の下方を通過する。これにより、基板80に付着した液状の絶縁材料は、着弾時点から100秒後に硬化される。
【0066】
着弾から100秒後に液状の膜を硬化させることにより、
図5Cに示すように、基板80の表面に、50μmの間隔で分布する着弾位置を含む領域に、ガラス表面においても透明導電膜表面においても、ほぼ等しい2μm以下の膜厚を有する絶縁膜83が形成される。
【0067】
実施例1による基板製造方法によれば、基板80の上に液滴を着弾させてから硬化させる(紫外線を照射する)までの時間を制御することで、絶縁膜83を所望の膜厚にすることができる。実施例1による基板製造方法及び基板製造装置によれば、高い膜厚制御の自由度で絶縁膜83を形成することができる。絶縁膜83の薄膜化を容易に実現することもできる。更に、濡れ性の異なる材料が露出した領域、実施例1においてはガラス表面と透明導電膜表面との境界に液滴を付着させた場合でも、膜厚がほぼ均一な良質の絶縁膜を形成することができる。
【0068】
例えば、実施例1による基板製造方法は、タッチパネルの製造だけでなく、プリント基板に絶縁膜(ソルダーレジスト)を形成する工程にも適用可能である。タッチパネルを製造する場合には、
図6B〜
図6Dに示した工程のうち、
図6Cの絶縁膜83を形成する際に、実施例1による基板製造方法を適用すればよい。
【0069】
例えば、まず、
図6Bに示すように、ガラス基板80の表面に、第1の透明電極(第1の電極)81、及び第2の透明電極(第2の電極)82を形成する。第1の透明電極81は、基板80の表面の行列状に配置された複数の菱形領域と、同一行の複数の菱形領域を電気的に接続する接続領域とを含む。第2の透明電極(第2の電極)82は、行列状に配置された複数の菱形領域を含む。第2の透明電極82の菱形領域は、第1の透明電極81の行列状に配置された菱形領域の行と行との間、及び列と列との間に配置される。第2の透明電極82の、同一列内の菱形領域は、第1の透明電極81の接続領域により分断されている。
【0070】
次に、
図6Cに示すように、少なくとも、基板80及び第1の透明電極81の一部の領域に絶縁膜83を形成する。この際、例えば実施例1による基板製造方法を用いる。絶縁膜83を形成した後、
図6Dに示すように、絶縁膜83の上に透明導電膜を形成して、第2の透明電極82の同一列の菱形領域同士を電気的に接続する。
【0071】
このようにして、膜厚制御の自由度が高く、かつ良質な絶縁膜を有するタッチパネルを製造することができる。
【0072】
また実施例1においては、ガラス表面及び透明導電膜表面に液滴を吐出した。実施例1による方法は、ガラス表面と透明導電膜表面に限らず、一般に異なる濡れ性をもつ異種材料が露出した領域に液滴を吐出し、絶縁膜を形成する場合に適用することができる。
【0073】
図4Aに例示するような、液滴が基板に着弾してからの経過時間と液状の膜の厚さとの関係は、液状の絶縁材料の粘性によって異なる。一例として、
図4Aに示した絶縁材料とは異なる粘性の絶縁材料を用いた場合、ガラス表面、透明導電膜表面の双方で3μm以下の膜厚の絶縁膜を得るためには、液状の絶縁材料が着弾してから、180秒以上360秒以下の時間が経過した後に紫外光を照射して、液状の膜を硬化させればよいことがわかった。着弾時点から180秒未満の時間が経過した時点で液状の膜を硬化させた場合、ガラス表面における膜厚が3μmを超えるとともに、ガラス表面と透明導電膜表面との膜厚に、均一とはいえない差が生じる。着弾時点から360秒を超える時間が経過した後に紫外光を照射すると、液滴の表面張力によって、ガラス表面の膜が厚くなった状態で硬化が行われるため、3μm以下の膜厚の絶縁膜を得ることができない。
【0074】
更に、実施例1においては、異なる2種類の材料が露出した領域に液状の材料を塗布して絶縁膜83を形成したが、ガラスのみが露出した領域、または透明導電膜のみが露出した領域に液状の材料を付着させて絶縁膜を形成することもできる。一例として、透明導電膜表面に厚さ2.0μm以下の絶縁膜を形成する場合には、液滴の着弾から硬化までの時間を20秒以上とすればよい。
【0075】
[実施例2]
図9〜
図12Bを参照して、実施例2による基板製造方法について説明する。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。ノズルユニット40(
図3A)から吐出された液滴が基板80に着弾する位置の間隔を異ならせて絶縁膜を形成し、着弾位置の間隔と、絶縁膜の厚さとの関係を調べる評価実験を行った。
【0076】
図9に、評価実験の結果を示す。
図9の横軸は、着弾位置の間隔を単位「μm」で表し、縦軸は、基板上に形成される絶縁膜の膜厚の漸近値を単位「μm」で表す。ここで、「膜厚の漸近値」とは、
図4Aに示した着弾時点からの経過時間と、膜厚との関係において、経過時間の増加とともに、膜厚が漸近する値を意味する。
【0077】
評価実験においては、
図3Bに示したように、ノズル孔42a、42bの配列方向をY方向とし、基板を相対的にX方向に移動させながら、ノズル孔42a、24bから液滴を吐出させた。横軸で示される着弾位置の間隔は、Y方向に関する着弾位置の間隔を表している。なお、X方向に関する着弾位置の間隔は、Y方向に関する着弾位置の間隔と等しくした。従って、着弾位置の間隔が10μmであるということは、X方向及びY方向の双方に関して、液滴の着弾位置の間隔が10μmであることを意味する。着弾位置の間隔が変わっても、ノズル孔42a、42bの各々から吐出される液滴の体積は一定とした。
【0078】
X方向に関する着弾位置の間隔と、Y方向に関する着弾位置の間隔とが等しいという条件の下では、基板上に形成される絶縁膜の膜厚は、着弾位置の間隔の2乗に反比例すると予測される。しかしながら、
図9に示すように、膜厚の漸近値は、着弾位置の間隔の2乗に反比例していない。着弾位置の間隔が、10μm、20μm、40μm、50μmのとき、膜厚の漸近値は、それぞれ25μm、12μm、3μm、1.5μmであった。
【0079】
本願発明者は、基板の表面に付着した複数の液滴が相互に連続した後、ある範囲を超えて広がらない状態で硬化するために、
図9に示す相関関係が得られたものと理解した。例えば、幅方向に2つの着弾位置を含む帯状の薄膜を形成する例について考察する。着弾位置の間隔が10μmから20μmになったときに、形成される帯状の薄膜の幅が2倍になれば、薄膜の厚さは1/4倍になる。ところが、以下に説明するように、帯状の薄膜の幅は2倍にならない。
【0080】
着弾位置の間隔が10μm及び20μmのときに形成される薄膜の幅が、それぞれ(10+a)μm、及び(20+b)μmであると仮定する。ここで、a及びbは、液状の薄膜材料が幅方向に広がることによる幅の増加量を意味する。幅の増加量bがaの2倍であれば、着弾位置の間隔が10μmから20μmになったときに、形成される帯状の薄膜の幅が2倍になる。ところが、実際には、増加量bは増加量aの2倍より小さい。このため、着弾位置の間隔を2倍にしても、薄膜の幅は2倍にならない。
【0081】
形成する薄膜の幅が狭い場合には、幅方向に1個の着弾位置しか含まない場合もあり得る。すなわち、1列の着弾位置に液滴を着弾させることにより、帯状の薄膜を形成する場合もある。薄膜の厚さは、長さ方向に関する着弾位置の間隔に依存する。この場合には、長さ方向に関する着弾位置の間隔と、薄膜の膜厚の漸近値との関係を示す
図9と同等のグラフが得られる。
【0082】
図10に、膜厚の漸近値と、着弾位置の間隔との関係を示すグラフの他の例の概形を示す。
図10の横軸及び縦軸は、
図9の横軸及び縦軸と同様に、着弾位置の間隔及び膜厚の漸近値を表す。
図9のグラフは、X方向に関する着弾位置の間隔と、Y方向に関する着弾位置の間隔とが等しい条件の下で得られたが、
図10に示す結果は、X方向に関する着弾位置の間隔を一定とする条件の下で得られたものである。
【0083】
X方向に関する着弾位置の間隔を一定とする条件の下では、基板上に形成される絶縁膜の膜厚の漸近値は、着弾位置の間隔に反比例すると予測される。しかしながら、
図10に示すように、実験結果によると、膜厚と着弾位置の間隔との関係は、反比例の関係になっていない。
【0084】
本願発明者は、このように着弾位置の間隔と膜厚との関係に着目して研究を行い、両者の関係を示すデータ、例えば
図9、
図10に例示するデータを作成した。これらのデータに基づいて、膜厚制御の自由度の高い薄膜形成方法に関する発明を行った。
【0085】
図11A〜
図11Dを参照して、実施例2による基板製造方法について説明する。実施例2による基板製造方法は、
図2に示した基板製造装置を用い、制御装置33の制御の下で実施される。実施例2による基板製造方法においては、まず、基板80の上に形成する絶縁膜83の膜厚を決定する。例えば、絶縁膜83の目標膜厚を25μmとする。
図4Aに示した膜厚の漸近値が2.5μmになる条件で成膜を行うことにより、厚さが25μmの絶縁膜38を形成することができる。この場合、液滴の着弾から硬化までの時間を調整することにより、25μm以上の膜厚をもつ絶縁膜83を形成することも可能である。このように、絶縁膜83の目標膜厚を決定することは、形成すべき絶縁膜83の膜厚の範囲を決定すると言い換えることもできる。
【0086】
実施例2による方法では、
図9または
図10に示したような、液滴の着弾位置の間隔と絶縁膜83の膜厚の漸近値との関係を示すデータ(以下、「膜厚−着弾位置間隔対応データ」という。)を準備しておく。この膜厚−着弾位置間隔対応データ、及び決定した目標膜厚に基づいて、着弾位置の間隔を求める。例えば、膜厚の漸近値が、目標膜厚となるように、着弾位置の間隔を決定する。膜厚の漸近値が25μmのとき、
図9に示した膜厚−着弾位置間隔対応データから、着弾位置の間隔(
図3Bに示したノズル孔42a、42bの配列方向)が10μmと求まる。求められた着弾位置の間隔は、記憶装置34に記憶される。着弾から硬化までの時間は、
図4Aに示した膜厚−経過時間対応データから決定することができる。
【0087】
基板80の上に付着した液滴を所定のタイミングで硬化させたときの、液滴の着弾位置の間隔と膜厚自体との関係を示すデータを準備しておいてもよい。この場合には、膜厚の漸近値ではなく、形成する絶縁膜83の具体的な膜厚を決定する。具体的な膜厚を決定した後、着弾位置の間隔と膜厚自体との関係を示すデータ、及び決定した膜厚に基づいて、液滴の着弾位置の間隔が決定される。
【0088】
続いて、着弾位置の間隔が、決定された値、実施例2においては10μmになるように、ノズルユニット40(ノズルヘッド42A、42B)から基板80に向けて、液滴を吐出する。
【0089】
制御装置33は、
図11Aに示すように、ステージ25に保持された基板80を、移動機構21(
図2)でX軸の正方向に移動させる。ノズルユニット40は、基板80に対し相対的にX軸の負方向に移動する。このようにノズルユニット40を、基板80に対して移動させながら、ノズルユニット40を制御して、X方向に関する着弾位置の間隔が10μmとなるように、液滴を吐出する。
【0090】
次に、制御装置33は、液滴の吐出を停止した状態で、
図11Bに示すように、基板80を移動機構21(
図2)でY軸の負方向に10μm移動させる。ノズルユニット40は、基板80に対し相対的にY軸の正方向に10μmだけ移動する。その後、ノズルユニット40を、基板80に対して相対的にX軸の正方向に移動させながら、ノズルユニット40を制御して、X方向に関する着弾位置の間隔が10μmとなるように、液滴を吐出する。
図11Bに、
図11Aに示す走査工程(往路)のときの液滴の着弾位置の軌跡を点線で示し、
図11Bに示す走査工程(復路)のときの液滴の着弾位置の軌跡を実線で示した。Y方向に関して、液滴の着弾位置の軌跡の間隔は10μmとなる。
【0091】
なお、往復走査によらず、
図11Cに示すように、基板80を同一方向(例えばX軸の正方向)に2回の走査を行うことにより、基板80に液滴を着弾させてもよい。
【0092】
Y方向に関して、液滴の着弾位置の間隔が10μmとなるように、基板80に液滴を着弾させることにより、
図11Dに示すように、基板80の上に、着弾位置に囲まれた領域を含む平面形状を有する絶縁膜83が形成される。実施例2においては、1つの長方形状の絶縁膜83は、ノズルユニット40の同一のノズル孔から吐出された液滴によって形成される。
【0093】
実施例2においては、絶縁膜83の1つのパターンを形成するにあたり、複数回の走査を行った。実施例2の変形例として、ノズルヘッド42Aと42Bとを、Y方向に10μmだけずらしてノズルホルダ41(
図3A)に組み付け、1回の走査で1つの絶縁膜83を形成してもよい。
【0094】
液滴の着弾位置の間隔は連続的に変化させることができる。このため、実施例2による基板製造方法によれば、ノズルユニット40の各ノズル孔から吐出される液滴の量を一定にして、着弾位置の間隔を制御することにより、絶縁膜83の膜厚を連続的に変化させることができる。実施例2による基板製造方法及び基板製造装置により、膜厚制御の自由度を高めることができる。
【0095】
実施例2による基板製造方法は、タッチパネルの製造の他に、プリント基板上の絶縁膜(ソルダーレジスト)の形成にも利用可能である。
【0096】
[実施例3]
図12A〜
図14を参照して、実施例3による基板製造装置について説明する。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0097】
図12Aに、実施例3で用いられるノズルユニット40の斜視図を示す。ノズルホルダ41に、2個のノズルヘッド42A、42Bが、X方向に配列するように取り付けられている。2個のノズルヘッド42A及び42Bは、同一の構造を有する。
図12Aに示す例においては、ノズルヘッド42Aは、ノズルヘッド42Bより、X軸の負の側に配置されている。ノズルヘッド42A、42Bに、それぞれ複数のノズル孔42a、42bが、Y方向に沿って1列に形成されている。相互に隣接するノズル孔42aの間隔は等しく、例えば70.556μmである。この間隔は、360dpiの解像度に相当する。
【0098】
ノズルヘッド42Aと42Bとの間、ノズルヘッド42AよりもX軸の負の側、及び、ノズルヘッド42BよりもX軸の正の側に、硬化用の光源43が配置されている。光源43は基板80に紫外線を照射する。
図1に示した紫外線照射装置74で液状の膜を硬化させる場合には、ノズルユニット40に組み込まれた光源43は使用されない。
【0099】
図12Bに、ノズルユニット40の底面図を示す。ノズルヘッド42Bは、ノズルヘッド42Aに対してY軸の正方向に84.667μmだけずらされて、ノズルホルダ41に固定されている。84.667μmは300dpiの解像度に相当する。
【0100】
図12Cに示すように、ノズルヘッド42A、42Bのノズル孔42a、42bを、X軸に垂直な仮想平面56に垂直投影した像55a、55bの間隔は、p
1またはp
2である。相互に隣接する像55a、55bのうち、Y軸の負側の像55aとY軸の正側の像55bとの間隔はp
1となり、Y軸の正側の像55aとY軸の負側の像55bとの間隔はp
2となる。間隔p
1は14.111μmであり、間隔p
2は56.445μmである。また、ノズルヘッド42AのY軸の負側からn番目のノズル孔42aの像55aと、ノズルヘッド42BのY軸の負側からn番目のノズル孔42bの像55bとの間隔は、84.667μmである。このように、Y方向に関して、1つのノズル孔42bが、相互に隣り合う2つのノズル孔42aを結ぶ線分の中点からずれた位置に配置されている。
【0101】
図13を参照して、実施例3による基板製造方法について説明する。実施例3による基板製造方法においては、絶縁膜83の形成領域の大きさや膜厚等の条件から、液滴の着弾位置の間隔が定められている。一例として、Y方向に関して、着弾位置の間隔の最適値が84.667μmであると求められている。
【0102】
実施例3においては、液滴を着弾させるべき位置の、Y方向に関する間隔と、ノズル孔のY方向に関する間隔とが一致するように、ノズルヘッド42A、42Bの相対位置が定められている。すなわちノズルヘッド42A、42Bは、液滴の着弾位置の間隔に対応して、相互に84.667μmだけY方向にずらされてノズルホルダ41に取り付けられている。
【0103】
実施例3による基板製造方法においては、Y方向に84.667μmだけ離れた2つのノズル孔42a、42bを一組(一単位)とする。この一組のノズル孔から吐出された液滴によって、1つの長方形状の絶縁膜83を形成する。
図13には、液滴を吐出させるノズル孔42a、42bを黒く塗って示した。ノズルヘッド42A、42Bの双方において、kを0以上の整数とするとき、Y軸の負側から(4k+1)番目のノズル孔42a、42bから液滴を吐出する。ステージ25(
図2)で保持した基板80を、移動機構21でX方向に移動させながら、選択されたノズル孔42a、42bから液滴を吐出することにより、絶縁膜83が形成される。このとき、液滴の着弾位置の、Y方向に関する間隔が84.667μmとなる。
【0104】
実施例3では、基板80の上に絶縁膜83を形成する際の最適な着弾位置の間隔と、液滴を吐出するノズル孔(ノズルヘッド42A、42Bに複数設けられているノズル孔の中からそれぞれ選択された1つのノズル孔)の間隔とが一致するように、ノズルヘッド42A、42Bが配置されている。このため、X方向への1回の走査で、基板80の上に行列状に配列する絶縁膜83を形成することができる。これにより、絶縁膜83を形成する工程のスループットを向上させることができる。また、最適な着弾位置の間隔と、液滴を吐出するノズル孔の間隔とを一致させているため、余分な液滴材料の使用が抑止され、低コストで絶縁膜を形成することができる。さらに、絶縁膜83の厚膜化が防止され、適切な厚さの良質な絶縁膜83を形成することができる。絶縁膜83を薄くすることも可能である。
【0105】
実施例3のように、液滴の着弾位置の間隔(液滴を吐出するノズル孔の間隔)が84.667μm(300dpiの解像度に相当するノズル間隔)である場合、Y方向の幅が100μm〜180μm程度の長方形の絶縁膜83を1回の走査で形成することができる。長方形の絶縁膜83のY方向の幅がそれより大きいときは、その幅に応じたずらし量だけ、ノズルヘッド42A、42Bを相対的にY方向にずらして、ノズルホルダ41(
図3A)に組み付ければよい。3個以上のノズル孔を一組にし、それらから吐出された液滴で、1つの長方形の絶縁膜83を形成することもできる。一組にされた2個のノズル孔42a、42bを用いる場合、移動機構21(
図2)でノズルユニット40と基板80とのY方向の相対位置を変更し、着弾位置を変えて、複数回の走査で長方形の絶縁膜83を形成してもよい。
【0106】
また、
図12Bに示す例においては、ノズルヘッド42A、42Bは、相互に84.667μmだけY方向にずらされてノズルホルダ41に固定されているが、Y方向へのずらし量は、84.667μmのノズル孔間隔が生じる距離、例えば14.111μmでもよい。ただし、360dpiの解像度を有するノズルヘッド42A、42Bを用いて、それより低解像度、たとえば300dpiの描画を行う場合、端部のノズル孔42a、42bを有効に活用するためには、360dpiに相当する間隔(70.556μm)よりずらし量を大きくすることが望ましい。
【0107】
更に、実施例3による基板製造装置においては、360dpi相当の間隔でノズル孔が配列したノズルヘッド42A、42Bを使用して、300dpiの解像度を達成している。このため、300dpiの解像度で絶縁膜を形成する際に、目標着弾位置に近いノズル孔を選択することにより、着弾位置の絶対的な位置精度を、360dpiに相当する精度とすることができる。このため良質な絶縁膜を形成することができる。
【0108】
実施例3においては、1列のノズル列を備えるノズルヘッド42A、42B(
図12B)を用いたが、2列以上のノズル列を備えるノズルヘッド、例えば
図3Bに示したノズルヘッド42A、42Bを使用することによって、300dpiの解像度で絶縁膜を形成可能な基板製造装置を実現してもよい。
【0109】
また、実施例3による基板製造装置のノズルユニット40(
図12A)は、ノズルホルダ41に2つのノズルヘッド42A、42Bを組み付けて構成されているが、3つ以上のノズルヘッドを組み付けて構成することもできる。例えば360dpiの解像度をもつ3つのノズルヘッドを、Y軸の正方向に、順に84.667μmだけずらして、X方向に配列する。そして3つのノズルヘッドのY軸の負側から(4k+1)番目のノズル孔から液滴を吐出することで、
図13に示した長方形の絶縁膜83の約2倍の幅をもつ長方形の絶縁膜を形成することができる。
【0110】
実施例3による基板製造装置においては、ノズル孔42a、42bが、
図12Cに示すように、間隔p
1とp
2が交互に現れる不等間隔で並んでいる。すなわちY方向に関して、相互に異なる複数の間隔でノズル孔42a、42bが配列されている。このため、解像度設定の自由度(ノズル孔から基板に向けて吐出される絶縁性の液滴の着弾位置の間隔を設定する自由度)が大きい。例えばノズルヘッド42Bがノズルヘッド42Aに対し、ノズル孔42bの配列ピッチ(70.556μm)の半分だけずらされ、ノズル孔42a、42bが等間隔ピッチ(35.278μm)でY方向に配列されたノズルユニットでは、300dpiの解像度で絶縁膜を形成する工程を、1回の走査のみでは実現できない。実施例3においては、解像度設定の自由度が高いため、膜厚制御の自由度も高い。
【0111】
更に、ノズルヘッド42A、42B(
図12B)のY方向への相対的なずらし量は、ノズルホルダ41への組み付け時点で自由に設定可能である。このため、解像度を連続的に自由に設定して、絶縁膜を形成することができる。
【0112】
[実施例3の変形例1]
図14に、実施例3の変形例1による基板製造装置のノズルユニット40の底面図を示す。実施例3においては、ノズルヘッド42A、42Bは、ノズルホルダ41(
図12B)に固定的に組み付けられていたが、実施例3の変形例1においては、一方のノズルヘッド42Aがノズルホルダ41に固定的に組み付けられ、他方のノズルヘッド42Bは、ノズルホルダ41に、Y方向の位置を調整可能に組み付けられている。その他の構造は実施例3による基板製造装置と同様である。
【0113】
図14に示す例においては、ノズルヘッド42BのY方向に関する位置を調整する位置調整機構として、ネジ45を使用している。ネジ45でノズルヘッド42BをY方向に移動させることによって、ノズルヘッド42BのY方向に関する位置を調整することができる。このため、連続的に、任意にノズルヘッド42A、42BのY方向のずらし量を変化させることができる。例えば、ノズルヘッド42Bを、ノズルヘッド42Aに対してY軸の正方向に84.667μmだけずらして配置することにより、実施例3と同様の効果を得ることができる。
【0114】
更に、実施例3の変形例1においては、ノズルヘッド42A、42Bをノズルホルダ41に組み付けた後に、2つのノズルヘッド42A、42BのY方向へのずらし量を連続的に変化させることができる。このため、解像度設定の自由度(ノズル孔から基板に向けて吐出される絶縁性の液滴の着弾位置の間隔を設定する自由度)や膜厚制御の自由度を一層高くすることができる。
【0115】
位置調整機構として、ネジ45の他に、マイクロメータ、スプリング、スペーサ等を用いてもよい。また、実施例3の変形例1においては、一方のノズルヘッド42Aを、ノズルホルダ41に固定的に組み付けたが、ノズルヘッド42Aにも位置調整機構を設け、ノズルヘッド42AのY方向の位置を調整可能としてもよい。
【0116】
[実施例3の変形例2]
図15に、実施例3の変形例2による基板製造装置のノズルユニット40の底面図を示す。実施例3の変形例1では、ノズルヘッド42B(
図14)が、ノズルホルダ41に、Y方向の位置を調整可能に組み付けられていた。実施例3の変形例2では、ノズルヘッド42A、42Bが、Y方向の位置を調整可能に組み付けられるとともに、各ノズルヘッド42A、42Bの各々のY軸の負側の端部の辺の中心を通り、Z軸に平行な軸を回転中心として、回転方向の姿勢を調整可能に組み付けられている。
【0117】
ノズルヘッド42A、42BのY方向の位置、及び、回転方向の姿勢を調整する位置調整機構として、
図15に示す例ではネジ45を用いている。
図15に示した例では、ノズル孔42a、42bの配列方向がY軸の正方向を基準として反時計回りに角度θをなす。さらに、ノズル孔42a、42bを、X軸に垂直な仮想平面に垂直投影した像の間隔がp
3となる。間隔p
3は、35.278×(cosθ)μmである。
【0118】
ノズルヘッド42Aの隣り合うノズル孔42aの間隔をp(=70.556μm)で表し、ノズルヘッド42Aのノズル孔42aの配列方向と、Y方向(走査方向と垂直な方向)とのなす角度をθで表す。X軸に垂直な仮想平面に垂直投影された隣り合うノズル孔42aの像の間隔は、p×cosθとなるため、ノズルヘッド42Aの解像度は1/(cosθ)倍に高くなる。ノズル孔42bの配列方向とY方向とのなす角度をθとし、ノズル孔42aとノズル孔42bとがY方向に交互に並ぶように、ノズルヘッド42A、42BのY方向の位置を調整することにより、1つのノズルヘッド42Aと比較したとき、2つのノズルヘッド42A、42Bの全体としての解像度を2/(cosθ)倍に高めることができる。
【0119】
一例として、ノズルヘッド42A、42Bを、cosθ=2/3となる角度θだけY方向から傾け、ノズル孔42aとノズル孔42bとがY方向に交互に並ぶように、ノズルヘッド42A、42BのY方向の位置を調整することで、ノズルユニット40の解像度を、ノズルヘッド42Aの解像度の3倍とすることができる。ノズルヘッド42A、42BのY方向に関する位置の調整を行い、回転方向の姿勢の調整を行わない実施例3の変形例1においては、ノズル孔42a、42bの配列方向がY方向と平行となる。このため、実施例3の変形例1においては、ノズル孔42a、42bのY方向に関する間隔が等しくなるように、ノズルヘッド42A、42Bの位置調整を行った場合に、1つのノズルヘッド42Aの解像度の2倍の解像度が得られる。これに対し、実施例3の変形例3では、それより高い解像度を実現することができる。
【0120】
実施例3の変形例2による基板製造装置において、角度θは、時計回りに90°未満、反時計回りに90°未満の大きさの範囲で、連続的に任意に調整することが可能である。このため、解像度を連続的に任意の値に設定することができる。液滴の着弾密度を連続的に変化させることができることから、絶縁膜の膜厚も連続的に変えることが可能である。解像度を低解像度領域で連続的に変化させられることは、絶縁膜の薄膜化を行う際に効力を発揮する。
【0121】
実施例3の変形例2において、
図7Bに示した光源13(
図7B)を配置する場合、光源13は、ノズルホルダ41(
図3A、
図3B)に対して固定的に配置してもよいし、ノズルヘッド42A、42Bとともに、またはノズルヘッド42A、42Bと独立に、Y方向の位置、及び、回転方向の姿勢を調整可能としてもよい。
【0122】
図16A〜
図16Cを参照して、ノズルヘッド42A、42BをY方向から角度θだけ傾けて配置したときの絶縁膜の形成方法について説明する。
【0123】
図16Aに、形成すべき絶縁膜のパターンの一例を示す。
図16Aに黒く示した領域に、液滴を吐出し、絶縁膜を形成する。制御装置33(
図2)は、記憶装置34(
図2)に記憶されている
図16Aに示すパターンのデータから、
図16Bに示すように角度θだけ歪ませた(歪補正を行った)パターンのデータを生成する。歪補正されたパターンのデータに基づいて、ノズルユニット40(ノズル孔42a、42b)からの液滴の吐出を制御する。データの歪補正を行うのは、ノズル孔42a、42bの配列方向がY方向と平行でないことによる。なお、歪補正を行ったパターンのデータに基づいて液滴吐出の制御を行うということは、Y方向と平行な直線上に液滴を着弾させる際に、ノズルヘッド42Aのノズル孔42aからの液滴の吐出タイミングを、すべてのノズル孔42aで一致させず、各ノズル孔42aで異ならせるということである。ノズルヘッド42Bに関しても同様である。このような制御のもとで液滴を吐出することにより、基板上に
図16Cに示すような、
図16Aに示すパターンに対応する絶縁膜を形成することができる。
【0124】
実施例3及びその変形例1、2による方法は、タッチパネルの製造だけでなく、プリント基板上の絶縁膜(ソルダーレジスト)の形成にも利用可能である。
【0125】
[実施例4]
図17A〜
図17Cを参照して、実施例4による基板製造方法について説明する。実施例4では、実施例1〜実施例3による方法で形成した絶縁膜と、従来のフォトリソグラフィ技術を用いて形成した絶縁膜とを比較する。
【0126】
図17Aに、第1の透明電極81、第2の透明電極82、及び絶縁膜83の平面図を示す。この構成は、
図6Dに示したタッチパネルの構成と同一である。
図17Aにおいて、横方向に第1の透明電極81が延び、縦方向に、第2の透明電極82の菱形領域82Aが、相互に間隔を隔てて配列している。縦方向に隣り合う2つの菱形領域82Aが、接続領域82Bにより電気的に接続される。接続領域82Bは、絶縁膜83の上に配置される。菱形領域82Aと接続領域82Bとが、第2の透明電極82を構成する。
【0127】
図17Bに、
図17Aの一点鎖線17B−17Bにおける断面図を示す。ガラス基板80の上に、間隔を隔てて第2の透明電極82の菱形領域82Aが形成されている。2つの菱形領域82A間を、第1の透明電極81が、紙面に垂直な方向に通過する。2つの菱形領域82Aの間に絶縁膜83が形成されている。絶縁膜83は、
図17Bに示した断面において第1の透明電極81を覆い、絶縁膜83の両端は、それぞれ第2の透明電極82の一部と重なっている。
【0128】
絶縁膜83の上に、ITOからなる接続領域82Bが形成されている。接続領域82Bは、その両端において菱形領域82Aの上まで延び、菱形領域82Aに電気的に接続されている。実施例1〜実施例3による方法で形成された絶縁膜83の上面は、外周部の近傍において傾斜する。
【0129】
図17Cに、従来のフォトリソグラフィ技術を用いて絶縁膜をパターニングすることにより形成したタッチパネルの断面図を示す。フォトリソグラフィ技術を用いて形成された絶縁膜83の上面も、外周部の近傍において傾斜するが、その傾斜角は90°に近い。傾斜角が大きな段差が生じていると、その段差の位置において、接続領域82Bの機械的強度が低下する。これにより、外部からの応力の印加によって、断線が発生しやすい。
【0130】
これに対し、実施例1〜実施例3による方法では、
図17Bに示したように、絶縁膜83の上面が、その外周部の近傍において緩やかに傾斜している。このため、接続領域82Bの機械的強度の低下が抑制され、外部からの応力に対する信頼性の高いタッチパネルを実現することができる。
【0131】
[実施例5]
図18A〜
図18Dを参照して、実施例5による基板製造方法について説明する。以下、実施例1〜実施例3との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0132】
図18A及び
図18Bは、
図17Aの一点鎖線18A−18Aにおける断面図に相当する。
図18Aに示すように、ガラス基板80の上に、第1の透明電極81を形成する。その後、絶縁膜83(
図17A)を形成すべき領域に、絶縁膜83の1パターンごとに複数の液滴85を着弾させる。
図18Aに示した例では、接続領域82Bの幅方向(接続すべき菱形領域82Aが並ぶ方向と直交する方向)に関して、複数、例えば2個の液滴を着弾させる。基板に着弾した液滴が面内方向に広がって相互に連続した後、絶縁膜の液状材料を硬化させる。これにより、
図18Bに示すように絶縁膜83が形成される。接続領域82Bの幅方向に関して複数の液滴を着弾させているため、絶縁膜83の上面に、接続領域82Bの幅方向に関してほぼ平坦な領域が形成される。絶縁膜83の、ほぼ平坦な領域の上に接続領域82Bが形成される。
【0133】
図18Cに、接続領域82Bの幅方向に関して1個の液滴85を着弾させる例を示す。この場合、
図18Dに示すように、絶縁膜83の上面に、幅方向に関して平坦な領域が形成されにくい。平坦な領域が形成されたとしても、その幅は、
図18Bに示したほぼ平坦な領域の幅よりも狭くなる。
【0134】
絶縁膜83の上面に、ほぼ平坦な領域が形成されると、その上に安定して接続領域82Bを形成することができる。絶縁膜83の上面に、接続領域82Bの幅方向に関してほぼ平坦な領域を形成するために、幅方向に関して、2個以上の液滴を着弾させることが好ましい。
【0135】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。