(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797284
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 21/38 20060101AFI20151001BHJP
B63H 21/17 20060101ALI20151001BHJP
B63J 2/06 20060101ALI20151001BHJP
B63J 99/00 20090101ALI20151001BHJP
H02K 9/12 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
B63H21/38 A
B63H21/17
B63J2/06
B63J99/00 A
H02K9/12
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-558442(P2013-558442)
(86)(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公表番号】特表2014-509569(P2014-509569A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】EP2012054570
(87)【国際公開番号】WO2012123547
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2013年10月30日
(31)【優先権主張番号】102011005588.6
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ローデン、ロルフ
【審査官】
中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0078156(US,A1)
【文献】
実開平08−001616(JP,U)
【文献】
実開昭62−090299(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0267426(US,A1)
【文献】
特開2002−223545(JP,A)
【文献】
特開2010−269641(JP,A)
【文献】
特開平11−278379(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/112237(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0266277(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0117478(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0189472(US,A1)
【文献】
特開2010−228528(JP,A)
【文献】
韓国公開実用新案第20−2008−0002356(KR,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H,B63J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶のスクリュウ(150)を駆動するための少なくとも1つの電動機(8、108、109)と、少なくとも1つの冷却剤によって該少なくとも1つの電動機(8、108、109)を冷却するための冷却装置(1)を有する船舶において、
前記冷却装置(1)は、海水又は真水によって冷却可能である冷却剤として空気を使用する第1の熱交換装置(2)と、海水によって冷却可能である冷却剤として真水を使用する第2の熱交換装置(3)とを有し、
前記電動機(8、108、109)は、前記第1の熱交換装置(2)からの空気及び前記第2の熱交換装置(3)からの真水によって冷却可能であり、
前記電動機(8、108、109)のためにエネルギ供給装置(48)が設けられており、該エネルギ供給装置(48)の少なくとも1つのインバータは、前記第2の熱交換装置(3)からの真水によって冷却可能であること
を特徴とする船舶。
【請求項2】
前記電動機(8、108、109)のロータ(12)が前記第1の熱交換装置(2)からの空気によって冷却可能であり、前記電動機(8、108、109)のステータ(10)が前記第2の熱交換装置(3)からの真水によって冷却可能であること
を特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記少なくとも1つの電動機(8、108、109)は船舶(102)の実質的に気密に密閉されたモータ室(19)に配設され、該電動機(8、108、109)を冷却するための前記空気は室内空気であること
を特徴とする請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記電動機(8、108、109)の冷気流入部(20)及び/又は暖気流出部(22)に、空気輸送手段(20a、22a)が配設されること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記電動機(8、108、109)の冷気流入部(20)と前記第1の熱交換装置(2)の冷気流出部(26)の間及び/又は前記電動機(8、108、109)の暖気流出部(22)と前記第1の熱交換装置(2)の暖気流入部(24)の間に、空気案内手段(30、32)が配設されること
を特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の船舶。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電動機(8、108、109)はハウジング及び/又はステータ(10)に冷却チャンネルを有すること
を特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の船舶。
【請求項7】
前記ハウジングの前記冷却チャンネル及び/又は前記電動機(8、108、109)のステータ(10)とロータ(12)の間のギャップを通って空気が冷却のために案内可能であること
を特徴とする請求項6に記載の船舶。
【請求項8】
前記冷却剤は、前記電動機(8、108、109)の冷却のために前記ステータ(10)の前記冷却チャンネルを通って案内可能な真水であること
を特徴とする請求項6に記載の船舶。
【請求項9】
前記第1の熱交換装置(2)は、前記第2の熱交換装置(3)に接続可能でありかつ空気を真水で冷却するよう構成されており、該真水は前記第2の熱交換装置(3)によって海水で冷却可能であること
を特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、当該船舶を駆動するための少なくとも1つの電動機と、少なくとも1つの冷却剤によって前記少なくとも1つの電動機を冷却するための冷却装置を有する船舶に関する。更に、本発明は、少なくとも1つの電動機を有する船舶のための冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の駆動は従来主として内燃機関によって行われていた。例えばレジャー分野の比較的小さい船舶の場合では、電気的駆動装置(電動機)が使用されることもしばしばあった。最近では、例えば貨物船やコンテナ船のような比較的大きな船舶を電気的駆動装置によって駆動することも試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2005/112237A1
【特許文献2】WO03/047962A2
【特許文献3】WO2010/112944A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複雑かつ大掛かりな電子装置を使用することが多いこれらの駆動装置にとっては、海上の気象が問題になる。とりわけ貨物船のためのそのような電気的駆動装置の冷却はこれまでのところ十分には解決されていない問題である。
【0005】
本発明の課題は、この問題の解決に寄与することであり、とりわけ、冷却が改善された、電動機により駆動される船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明の一視点により、冒頭に挙示した種類の船舶即ち船舶のとりわけスクリュウを駆動するための少なくとも1つの電動機と、少なくとも1つの冷却剤によって該少なくとも1つの電動機を冷却するための冷却装置を有する船舶において、
前記冷却装置
は、
海水又は真水によって冷却可能である冷却剤として空気を使用する第1の熱交換装置と、海水によって冷却可能である冷却剤として真水を使用する第2の熱交換装置とを有し、前記電動機は、前記第1の熱交換装置からの空気及び前記第2の熱交換装置からの真水によって冷却可能であり、前記電動機のためにエネルギ供給装置が設けられており、該エネルギ供給装置の少なくとも1つのインバータは、前記第2の熱交換装置からの真水によって冷却可能であることによって解決される
。
本発明において、以下の形態が可能である。
船舶のとりわけスクリュウを駆動するための少なくとも1つの電動機と、少なくとも1つの冷却剤によって該少なくとも1つの電動機を冷却するための冷却装置を有する船舶において、前記冷却装置は、前記少なくとも1つの冷却剤を海水によって冷却するよう構成された熱交換装置を有すること(形態1)。
更に、上記形態1の船舶において、前記冷却剤は空気及び/又は真水であることが好ましい(形態2)。
更に、上記形態1の船舶において、前記冷却剤は空気であり、前記電動機のロータ及び/又はステータはこの空気によって冷却可能であることが好ましい(形態3)。
更に、上記形態3の船舶において、前記少なくとも1つの電動機は船舶の実質的に気密に密閉されたモータ室に配設され、該電動機を冷却するための前記空気は室内空気であることが好ましい(形態4)。
更に、上記形態3又は4の船舶において、前記電動機の冷気流入部及び/又は暖気流出部に、空気輸送手段が配設されることが好ましい(形態5)。
更に、上記形態1〜5の何れかの船舶において、前記電動機の冷気流入部と前記熱交換装置の冷気流出部の間及び/又は前記電動機の暖気流出部と前記熱交換装置の暖気流入部の間に、空気案内手段が配設されることが好ましい(形態6)。
更に、上記形態1〜6の何れかの船舶において、前記少なくとも1つの電動機はハウジング及び/又はステータに冷却チャンネルを有することが好ましい(形態7)。
更に、上記形態7の船舶において、前記冷却チャンネル及び/又は前記ステータとロータの間のギャップを通って空気が冷却のために案内可能であることが好ましい(形態8)。
更に、上記形態7の船舶において、前記冷却剤は、前記電動機の冷却のために前記冷却チャンネルを通って案内可能な真水であることが好ましい(形態9)。
更に、上記形態1〜9の何れかの船舶において、前記冷却装置は、第2の熱交換装置に接続可能でありかつ空気を真水で冷却するよう構成された第1の熱交換装置を有し、該真水は該第2の熱交換装置によって海水で冷却可能であることが好ましい(形態10)。
更に、上記形態10の船舶において、前記第2の熱交換装置は前記電動機のステータと接続可能でありかつ該ステータを真水で冷却するよう構成されることが好ましい(形態11)。
更に、上記形態1〜11の何れかの船舶において、前記冷却剤によって冷却可能に構成された(電気)エネルギ供給装置(Energieversorgung)を有することが好ましい(形態12)。
更に、上記形態12の船舶において、前記エネルギ供給装置は少なくとも1つのインバータ(Umrichter)を有し、該インバータは真水で冷却可能であることが好ましい(形態13)。
更に、少なくとも1つの電動機を有する船舶のための、少なくとも1つの冷却剤によって冷却を行う冷却装置であって、該少なくとも1つの冷却剤を海水によって冷却するよう構成された熱交換装置を有する冷却装置も好ましい(形態14)。
【発明の効果】
【0007】
本発明の独立請求項1に係る発明により上記課題に対応する効果が達成される。即ち、本発明により、船舶の電気的駆動装置の冷却を改善することができる。
更に、各従属請求項に係る発明により夫々付加的な効果が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従って、本発明の船舶は、互いに結合されている少なくとも2つの冷却循環システムを有する。第1の循環システムでは、少なくとも1つの電動機と熱交換装置との間で冷却剤が循環する。第2の循環システムでは、熱交換装置と船舶の外側領域との間で海水が循環する。これら2つの循環システムは、熱交換装置によって、冷却剤と海水が混合しないよう互いに分離される。それによって、少なくとも1つの電動機は海水と接触しない。かくして、本発明により、少なくとも1つの電動機の腐食は著しく低減され、これによって、その寿命も著しく長くなる。更に、メンテナンスコストも著しく低減される。そのような電動機の構造及び製造も単純化される。というのは、この電動機は海水を用いた直接的な冷却操作を実行する必要がないからである。更なる利点の1つは、このように構成された駆動装置を有する船舶はエネルギ消費及び安全性に関し改善されることである。海水は天然のかつほぼ無限の冷却資源である。海水の温度は船舶の航行の際実質的に一定であるため、そのような冷却装置は永続的な適合化の必要はない。更に、本発明の船舶の甲板に低温を生成するための複雑な装置を組み込む必要もないため、そのような船舶について一方では運転安全性が、他方ではエネルギ消費が改善される。有利には、熱交換装置は対向流式熱交換装置として構成される。或いは、熱交換装置は並流式熱交換装置として構成することもできる。本発明に応じ、複数の熱交換装置を使用することも可能であり、そのため、冷却剤は多段階的熱交換プロセスで冷却できる。
【0009】
本発明の好ましい第1の実施形態においては、冷却剤は空気及び/又は真水(淡水)である。この場合、真水は、本発明においては、海水として理解されるべきではなく、例えば冷却水(冷水)、冷却流体(冷流体)、水−油エマルジョン等として理解されるべきである。空気は、本発明においては、室内空気(ないし大気:Raumluft)に関係し、塩分を含む海気(海上空気)には関係しない。これら2つの冷却剤は、良好に利用可能でありかつ既に頻繁に電動機のために使用されているので、とりわけ有利である。この場合、海水から真水への熱交換(熱伝達)は熱伝導が良好であるので簡単に構成することができる。海水から空気への熱交換については、有利には特別に適合化された熱交換装置が使用されるべきである。
【0010】
本発明の好ましい更なる一実施形態においては、冷却剤は空気であり、かつ、電動機のロータ及び/又はステータはこの空気で冷却可能に構成される。とりわけ電動機のロータの冷却のためには空気が好ましい。冷却された空気は例えばロータとステータの間のギャップを介して案内されることができ、ステータには冷却フィンを備えることができ、又は、冷気を案内可能に構成された冷却チャンネルがステータを貫通して案内される。更に、空気はロータの内部空間に案内されることができ、これによってロータを冷却する。
【0011】
本発明の好ましい更なる一実施形態においては、少なくとも1つの電動機は、船舶の実質的に気密に密閉されたモータ室(電動機室)に設置され、かつ、電動機を冷却するための空気は室内空気(大気)である。かくして、少なくとも1つの電動機は塩分含有空気に晒されないため、電動機の腐食は大幅に回避される。このため、一方では、そのような電動機ないしそのような電動機及びそのような冷却装置を有する本発明の船舶のメンテナンス(コスト)は著しく低減され、(他方では)船舶の運転安全性は改善される。本発明のこの好ましい実施形態では、電動機の夫々に対し専用室を設けることが可能であり、或いは、全ての電動機を実質的に気密に密閉された1つの室に一緒に設置される。更に、この(後者の)室には、電動機のエネルギ供給装置を設けることも可能である。同様に、熱交換装置もこの気密に密閉された室に設置することが可能であり、或いは、他の態様でこの室と流体により連通する。
【0012】
本発明の好ましい更なる一実施形態に応じ、電動機の冷気流入部及び/又は暖気流出部に空気を送るための手段(送風手段)が設けられる。かくして、目標を定めて(意図的に)冷気を電動機に導くないし案内することができる。更に、この空気は、電動機の冷却チャンネルの中を通って、冷却フィンを経由して、孔又は中空空間等の中を通って案内されることができる。更に、暖気は目標を定めて電動機から送り出すことができる。かくして、電動機の目標を定めた冷却を調節することができる。更に、目標を定めた体積流(量)ないし目標を定めた空気速度は電動機を介して調節可能であり、そのため、電動機について、目標を定めた冷却を改善することができる。これによって、電動機の効率的な運転が実現可能になり、電動機の寿命も長くなる。更に、メンテナンスコストも更に低減される。
【0013】
本発明の好ましい更なる一実施形態においては、電動機の冷気流入部と熱交換装置の冷気流出部との間及び/又は電動機の暖気流出部と熱交換装置の暖気流入部との間に、空気を案内するための手段(空気案内手段ないしガイド手段)が設けられる。そのような空気案内手段は、例えば、チューブ(Schlaeuche)、チャンネル(Kanaele)、パイプ(Rohre)、シャフト(立坑:Schachte)を含むことができる。かくして、目標を定めた空気の供給ないし排出は、本発明に応じて発展され、電動機の効率的な冷却を改善する。代替的に(その代わりに)又は追加的に(それに加えて)、空気案内手段は、空気を輸送する手段(空気輸送手段)を有することができる。一実施形態においては、空気案内手段は、電動機の冷気流入部と熱交換装置の冷気流出部の間に設けられる。本発明の一実施形態においては、冷気は空気案内手段によって電動機に案内され、電動機は当該電動機に案内された空気によって冷却され、次いで、暖気は、有利には気密に密閉された室の中に放出される。そして、暖められた室内空気は熱交換装置によって再び冷却される。一選択形態においては、空気案内手段は、電動機の暖気流出部と熱交換装置の暖気流入部との間に設けられる。この実施形態においては、暖気は電動機から運び去られて熱交換装置に向かい、該熱交換装置によって冷却される。次いで、冷却された空気は、有利には気密に密閉された室の中に放出される。本発明の第3実施形態においては、熱交換装置の冷気流出部と電動機の冷気流入部の間にも、電動機の暖気流出部と熱交換装置の暖気流入部の間にも、空気案内手段が設けられる。これにより、冷気は実質的に密閉された系の中で循環する。この実施形態では、室は気密に密閉される必要はなく、寧ろ、電動機を塩分含有空気に対して保護することで十分である。
【0014】
本発明の好ましい更なる一実施形態においては、少なくとも1つの電動機は、ハウジング及び/又はステータに、冷却チャンネル(冷却剤流路)を有する。冷却チャンネルは、ハウジングを貫通して及び/又はステータ巻線に沿って延在することができる。そのような冷却チャンネルによって、電動機の目標を定めた冷却が可能になる。冷却チャンネルは、種々の幾何学的形状で、例えば直線状、曲線状、ジグザグ状又はその他の形状で構成されることができる。更に、冷却チャンネルには、更に効率的な冷却を達成するために、リブないしフィンを設けることも可能である。
【0015】
本発明の好ましい更なる一実施形態においては、冷却のための空気は、冷却チャンネル及び/又はステータとロータの間のギャップを通過可能に構成される。かくして、電動機の効率的な冷却が有利に発展される。冷却チャンネルには、例えば空気案内手段及び/又は空気輸送手段(ファン)が接続するよう構成することができる。
【0016】
本発明の好ましい更なる一実施形態においては、冷却剤は、電動機を冷却するために冷却チャンネルを通過可能な真水である。かくして、電動機の更に効率的な冷却が可能になる。この実施形態では、真水は熱交換装置によって冷却され、パイプ、チューブ等を介して(冷却)チャンネルに向って案内され、該(冷却)チャンネルを介して(通って)案内され、そして、暖められて再び熱交換装置に戻るよう案内される。
【0017】
本発明の好ましい更なる一実施形態においては、冷却装置は第2の熱交換装置を有する。この第2の熱交換装置は、第1の熱交換装置に結合可能でありかつ空気を真水で冷却するよう構成されるが、この場合、真水は第1の熱交換装置によって海水で冷却可能である。かくして、熱交換装置によって、真水と空気が冷却されることができる。例えば、大型の第1の(主たる)熱交換装置によって真水を海水で冷却し、この真水を種々の電動機又は船舶のその他の装置、例えばディーゼルユニット(Dieselaggregate)に案内することが可能である。これに応じて、複数の電動機は夫々専用の第2の小型の熱交換装置を有することができ、この熱交換装置によって、空気は冷たい真水で冷却される。この場合、真水は、例えば電動機のステータを冷却するために追加的に使用されることができ、他方、冷却された空気は、ロータとステータの間のギャップを介して案内され、かくして、ロータを冷却するために使用されることができる。本発明の好ましい更なる一実施形態においては、第1の熱交換装置は電動機のステータに結合可能であり、このステータを真水で冷却するよう構成される。
【0018】
本発明の好ましい更なる一実施形態においては、エネルギ供給装置は少なくとも1つのインバータ(ないし変換器:Umrichter)を有し、該インバータは真水で冷却可能に構成される。このインバータは真水で冷却するのがとりわけ好ましい。なぜなら、インバータは電動機に空間的に近接して設置されるのが有利だからである。更に、インバータの冷却ないしエネルギ供給装置の冷却も電動機の冷却も真水による同じ冷却循環システムに配することも好ましい。尤も、複数の異なる冷却循環システムを設けることも可能である。
【0019】
本発明の更なる一側面により、本発明の課題は、冒頭に挙示した種類の冷却装置において、該冷却装置が上述の実施形態の何れかに応じて構成されることによって解決される。そのような冷却装置は、例えば電動機又は冷却されるべきその他の装置を冷却するために、多様な船舶、水上移動体、ヨット等で使用することができる。そのような冷却装置は、船舶のメンテナンスの必要性の低下及び運転の安全性の確保並びにエネルギ消費の低下に寄与する。そのような冷却装置を船舶に使用すれば、上述の全ての利点が達成される。
【0020】
以下に、本発明の種々の実施例を添付の図面を参照して説明する。
なお、特許請求の範囲に付した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】部分的に切欠部分を示した、本発明の船舶の一例の斜視図。
【実施例】
【0022】
図1に示した船舶102は甲板114上に推進装置として4つのマグナスロータ110を有する。船舶は、これらのマグナスロータ110に加え、更に任意的に船橋130並びに甲板114上のクレーン105及びクレーン103を有する。船舶は、更なる推進装置として、付加的に、船舶102の船尾にスクリュウ150を有する。このスクリュウ150はシャフト111を介して2つの電動機108、109と結合することができる。電動機108、109は2つのインバータ(変換器)キャビネット115、116を介して電流が供給される。電動機108、109及びインバータキャビネット115、116の上方には、モータ室(電動機室)を貨物室に対して有利には気密に密閉する甲板172が配設される。電動機108、109としては、有利には回転速度が小さい大容積の電動機、例えば同期機が使用されるが、このため、動力伝達システム全体において伝動装置(Getriebe)は必ずしも設ける必要はない。更に、これらの電動機は有利には選択的に駆動可能に構成される。船舶102の内部への採光のために、船舶102はその側部(舷側)に(複数の)窓118を有する。
【0023】
図2〜
図4は本発明の船舶102の一例のための、電動機108、109を冷却可能に構成された本発明の冷却装置の複数の実施例を示す。
【0024】
図2に示した第1実施例では、冷却装置1は熱交換装置2を有する。この熱交換装置2は(第1の)側部4に海水の流れ(海水流)16が供給可能に構成されている。この図では、海水流は矢印によって模式的にのみ示されている。
図1に示されているような船舶102の場合、熱交換装置2には(複数の)パイプによって海水流16を送り・戻し案内することができる。熱交換装置2は、第2の側部6に、空気流入部24及び空気流出部26を有する。かくして、空気はこの熱交換装置2によって冷却されることができる。
【0025】
図2には、更に、電動機8が示されている。電動機8はステータ10を有する。該ステータ10はステータハウジングを有することもある。電動機8は、更に、ロータ12を有する。該ロータ12は作動時に回転軸14の周りで回転し、例えばシャフト111やスクリュウ150(
図1)のような船舶の駆動ユニットと結合可能に構成されている。電動機8はその関連要素と共に、壁18によって実質的に気密に密閉された室19内に配設されている。熱交換装置2はその関連要素と共に室19の外部に配設されている。電動機8のステータないしステータハウジング10は、更に、空気流入部20及び空気流出部22を有する。これら空気流入部20及び空気流出部22には、空気を電動機8に供給し又は電動機8から排出するために、空気輸送手段として夫々ファン20a及び22aが設けられている。或いは、この目的のために、回転ベーンポンプ(Fluegelzellenpumpen)等のような他のポンプを使用することも可能であろう。有利には、空気は、冷却チャンネルを介して(通って)及び/又はロータ12とステータ10の間のギャップを介して(通って)ステータないしステータハウジング10に案内可能である。空気流出部22と熱交換装置2の空気流入部24の間にはパイプ30が設けられている。このパイプ30を介して、暖気は電動機8から導き出されて、熱交換装置2に案内される。熱交換装置2の空気流出部26から流出する冷気は第2のパイプ32によって室19の壁18にある空気流入部28に案内される。この空気流入部28から、空気は室19内に流入し、かくして、室19は全体的に冷気で充満される。そして、冷えた室内空気は空気流入部20のファン20aによって吸引され、冷却チャンネルないしロータ12とステータ10の間のギャップに案内される。室19が冷気で充満されることによって、空気流入部20のファン20aは、常に、適切な動作のために必要とされる温度に電動機8を冷却するために必要とされるだけ多くの空気を吸引することができる。更に、電動機8は、該電動機8に直接吹き込まれるないし吸引される空気のみではなく、その表面に沿って流動する空気によっても冷却される。有利には、室19は壁18ないし甲板、扉、ハッチ等によって気密に密閉され、このため、船舶102(
図1)において、室19への塩分含有空気の到達は全くないか、可能な限り少なくなる。或いは、室19は気密には密閉されていないが、室19の内部に超過圧力(正圧)が形成されていることにより、塩分含有空気が外部から室19の内部に流入できないようにすることも本発明に応じて可能である。更に、室19の流入部28と電動機8の流入部20の間にパイプを設けること及び/又は電動機8の流出部22と熱交換装置2の流入部24の間にパイプ30を設けないことも可能である。
【0026】
図3に示した冷却装置1の第2実施例では、冷却装置1は第1熱交換装置2と第2熱交換装置3を有する。これら2つの熱交換装置2、3は1つの電動機8に結合され、該電動機8を冷却剤によって冷却するために使用される。第1熱交換装置2は、
図2に示した冷却装置1の第1実施例に実質的に相応する第1冷却循環システムに配されている。第2熱交換装置3が配されている第2冷却循環システムは、冷却剤として、例えば冷却水(冷水)又はその他の冷却流体(冷流体)のような真水を使用する。第2熱交換装置3は、第1熱交換装置2と同様に、海水流17に(熱的に)結合されているが、この海水流17は、再び
図1に示した船舶102ついていえば、例えばパイプを介して船舶102の外部領域から熱交換装置3に案内可能にされることができる。熱交換装置3は、第2の側部7において、夫々1つのポンプ38、40が使用される2つの冷却水輸送管34、36に接続されている。ポンプ38、40は相応の冷却水の流れ(冷却水流)を輸送するために備えられている。冷却水輸送管34、36は、熱交換装置3も配設されているところである室の外部から室の内部19に案内され、そこで冷却体(ないし冷却手段)42に結合されている。このため、冷却体42は冷却水流入部44と冷却水流出部46を有する。
図3では、冷却体42は電動機ハウジングないし電動機8のステータ10の外側(外周)部分に配設されている。但し、これは単なる模式図にしか過ぎない。例えば、ハウジング内又はステータ10内に冷却チャンネルを設け、これを介して冷却水を案内可能に構成することも可能である。この実施例では、例えば、空気流入部20を介して電動機8の内部に案内可能な空気で実質的にロータ12を冷却し、他方、熱交換装置3によって海水流17で冷却可能でありかつ冷却水輸送管34、36によって熱交換装置3と冷却体42の間を循環する水によって実質的に電動機8のステータ10を冷却することも可能である。
【0027】
図4は、冷却装置1の更なる選択的一実施例を示す。
図4の冷却装置1は、
図3に示した冷却装置1に加えて、第3の冷却循環システムを有する。この第3冷却循環システムは、第2冷却循環システムと同様に、海水流17によって冷却水を冷却するために設けられた熱交換装置3によって供給が行われる。
図4に示されているように、冷却水輸送管34、36からは、2つの更なる冷却水輸送管35、37が分岐しており、これらはインバータ(変換器)キャビネット((Umrichterschranke)ないしエネルギ供給装置(Energieversorgung))48に対し冷却水を導入ないし導出する。インバータキャビネット48はエネルギ供給ケーブル50を介して電動機8に接続されている。インバータキャビネット48には複数の(多数の)インバータ(変換器)が配されているが、これらのインバータは、電動機8によって必要とされる電圧及び周波数を有する電流を生成するために備えられている。インバータキャビネット48の適切な作動を保証するために、このインバータキャビネット48を冷却するのが好ましい。この実施例では、インバータキャビネット48ないしその中に含まれているインバータが冷却水で冷却されるが、この冷却水は、熱交換装置3によって海水流で冷却される。冷却された冷却水は、熱交換装置3の第2の側部7でポンプ40によって輸送され、冷却水輸送管37を介して流動しインバータキャビネット48に到達する。このインバータキャビネット48には、複数の(多数の)冷却体(ないし冷却手段)、ないしインバータから熱を運搬するフィンないしリブ(Lamellen)ないしその類似物を設けることが可能である。そして、温められた水は冷却水輸送管35及びポンプ38によってインバータキャビネット48から排出され、再び熱交換装置3に到達する。これら2つの更なる冷却循環システムは
図3の冷却循環システムに相応して構成されている。
【0028】
冷却装置1の更なる選択的一実施例が
図5に示した実施例として記載されている。この実施例(
図5)では、冷却装置1は、本質的特徴を
図3の実施例と共有する。
図5の実施例に応じて電動機8を冷却するために使用されている冷却循環システムはカスケード接続されている(段階的に接続されている)。冷却装置は第1熱交換装置2と第2熱交換装置3を有する。熱交換装置3は第1の側部5と第2の側部7を有し、該第1の側部5には海水流17が案内可能にされており、第2の側部には冷却水輸送管34、36が接続されている。第1熱交換装置2は同様に第1の側部4と第2の側部6を有し、第1の側部4には2つの冷却水輸送管52、54が接続されており、第2の側部6には2つの空気チャンネル30、32が接続されている。冷却水輸送管52、54は第2熱交換装置3の第2の側部7に通じている。空気チャンネル30、32と電動機8並びに冷却チャンネル34、36と冷却体42の協働は
図3の実施例に応じて構成されている。この実施例(
図5)では、冷却水を冷却するために海水流17が使用されるが、この冷却水は、一方では、冷却体42を介して電動機8を冷却するために使用され、他方では、第1熱交換装置2において空気を冷却するために使用され、この空気は、次いで、電動機8、とりわけロータ12を冷却するために使用される。かくして、冷却システム全体のために、ただ1つの海水アクセス経路ないし手段(Seewasserzugang)しか必要とされず、更には、第1熱交換装置2の腐食は大幅に回避することができる。
【0029】
船舶102(
図1)に2以上の電動機8、108、109が設けられる場合、各電動機に夫々1つの冷却装置を設けることも可能であり、又は、複数の電動機のために1つの共通の冷却装置を設けることも可能である。
図5の実施例に応じて複数の電動機に対し1つの冷却装置を備える場合は、例えば、各電動機8、108、109に夫々1つの第1熱交換装置2を設け、これら複数の第1熱交換装置2がただ1つの第2熱交換装置3と協働するよう構成することも可能である。