(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797300
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】デュアル温度センサーを備えるレーザーパワーセンサー
(51)【国際特許分類】
G11B 5/31 20060101AFI20151001BHJP
G11B 5/02 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B5/31 Z
G11B5/02 S
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-111850(P2014-111850)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-235774(P2014-235774A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2014年7月18日
(31)【優先権主張番号】13/907,157
(32)【優先日】2013年5月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503116280
【氏名又は名称】エイチジーエスティーネザーランドビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100114546
【弁理士】
【氏名又は名称】頭師 教文
(72)【発明者】
【氏名】ハミット バラマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ティー. コントレラス
(72)【発明者】
【氏名】サミール ワイ. ガルソン
(72)【発明者】
【氏名】フ−イン ホワン
(72)【発明者】
【氏名】リドゥ ホワン
(72)【発明者】
【氏名】バリー シー. スタイプ
【審査官】
堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−014214(JP,A)
【文献】
特開2013−097862(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0201108(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0107390(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0107680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31
G11B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接場変換器とリターン磁極との間に配置される第1の温度センサーと、
前記近接場変換器と前記リターン磁極との間に配置される第2の温度センサーと、
を備える熱アシスト型磁気記録装置であって、
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、クロス・トラック方向において整列される、熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項2】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、それぞれTa、Pt、Au、Rh、NiFeおよびそれらの合金からなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項3】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、空気軸受表面において配置される、請求項1に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項4】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、空気軸受表面から引っ込んでいる、請求項1に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項5】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーのいずれか一方は、空気軸受表面から引っ込んでいる、請求項1に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項6】
書き込み磁極をさらに備え、前記近接場変換器は、前記第1の温度センサーと前記書き込み磁極との間に配置される、請求項1に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項7】
前記書き込み磁極、前記近接場変換器および前記第1の温度センサーは、前記クロス・トラック方向に対して同一中心線を有する、請求項6に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項8】
近接場変換器と、
前記近接場変換器に隣接して配置されるクラッド材料と、
前記クラッド材料に埋め込まれる第1の温度センサーと、
前記クラッド材料に埋め込まれる第2の温度センサーと、
前記クラッド材料に隣接して配置されるリターン磁極と、
を備える熱アシスト型磁気記録装置であって、
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、クロス・トラックの方向において整列される、熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項9】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、それぞれTa、Pt、Au、Rh、NiFeおよびそれらの合金からなる群から選択される材料を含む、請求項8に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項10】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、空気軸受表面において配置される、請求項8に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項11】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、空気軸受表面から引っ込んでいる、請求項8に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項12】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーのいずれか一方は、空気軸受表面から引っ込んでいる、請求項8に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項13】
書き込み磁極をさらに備え、前記近接場変換器は、前記第1の温度センサーと前記書き込み磁極との間に配置される、請求項8に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項14】
前記書き込み磁極、前記近接場変換器および前記第1の温度センサーは、前記クロス・トラック方向に対して同一中心線を有する、請求項13に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項15】
書き込み磁極と、
前記書き込み磁極に隣接して配置される磁極リップと、
前記磁極リップに隣接して配置される近接場変換器と、
前記近接場変換器に隣接して配置されるクラッド材料と、
前記クラッド材料に埋め込まれる第1の温度センサーと、
前記クラッド材料に埋め込まれる第2の温度センサーと、
前記クラッド材料に隣接して配置されるリターン磁極と
を備える熱アシスト型磁気記録装置であって、
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、クロス・トラック方向において整列される、熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項16】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、それぞれTa、Pt、Au、Rh、NiFeおよびそれらの合金からなる群から選択される材料を含む、請求項15に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項17】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、空気軸受表面において配置される、請求項15に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項18】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーは、空気軸受表面から引っ込んでいる、請求項15に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項19】
前記第1の温度センサーおよび前記第2の温度センサーのいずれか一方は、空気軸受表面から引っ込んでいる、請求項15に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【請求項20】
前記書き込み磁極、前記近接場変換器および前記第1の温度センサーは、前記クロス・トラック方向に対して同一中心線を有する、請求項15に記載の熱アシスト型磁気記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、データストレージシステムに関し、より詳細には、サーマルアシスト型記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクドライブに使用される磁気媒体内における高ストレージビット密度により、磁気ビットのサイズ(容積)は、磁気ビットの寸法が磁性材料の粒子サイズによって制限されるところまで低減されている。粒子サイズをさらに低減することはできるが、磁気ビット内に保存されたデータの熱安定性が低下することになり得る。すなわち、周囲温度におけるランダムな熱揺らぎが、データを消去するのに十分なものとなり得る。この状態は、超常磁性限界と呼ばれ、これにより、所与の磁気媒体の理論的な最大ストレージ密度が決定される。この制限は、磁気媒体の保磁力を増加させることにより、あるいは温度を低減させることによって上昇させてもよいが、温度の低減は、市販の消費者向けのハードディスクドライブを設計する際には、常に実施可能というわけではない。その一方で、保磁力の増大には、高磁気モーメント材料を内蔵した書き込みヘッドまたは垂直磁気記録などの技法(あるいは、これらの両方)が必要となる。
【0003】
さらなる解決策が1つ提案されており、この解決策は、熱を使用して磁気媒体表面上の局所的領域の有効保磁力を低下させ、かつ、この加熱された領域内にデータを書き込んでいる。媒体が周囲温度まで冷えると、データ状態は「固定」状態となる。この技法は、広くは、「サーマルアシスト型(磁気)記録(thermally assisted (magnetic)recording:TARまたはTAMR)」、「エネルギーアシスト型磁気記録(energy assisted magnetic recording:EAMR)」、または「熱アシスト型磁気記録(heat−assisted magnetic recording:HAMR)」と呼ばれており、本明細書においては、これらの名称は、相互交換可能に使用される。この技法は、水平および垂直磁気記録システムならびに「ビットパターン媒体」に適用することができる。媒体表面の加熱は、合焦レーザービームや近接場光源などのいくつかの技法によって実現されている。
【0004】
温度センサーが、レーザービームなどの光源の出力を計測するために使用されている。しかしながら、HAMRヘッドの温度は、スライダの浮上状態などの要因によっても影響を受ける。このため、温度センサーは、温度の変動が光パワーの変動によるのか、スライダの浮上状態の変化によるのか区別されない可能性がある。したがって、改良されたHAMR装置が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は一般に、近接場変換器(NFT)とリターン磁極との間に配置された2つの温度センサーを有するHAMR装置に関する。この2つの温度センサーは、クロス・トラック方向において整列される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態においては、熱アシスト型磁気記録装置が開示される。熱アシスト型磁気記録装置は、近接場変換器とリターン磁極との間に配置された第1の温度センサーと、近接場変換器とリターン磁極との間に配置された第2の温度センサーとを含む。第1の温度センサーおよび第2の温度センサーは、クロス・トラック方向において整列される。
【0007】
別の実施形態においては、熱アシスト型磁気記録装置が開示される。熱アシスト型磁気記録装置は、近接場変換器と、近接場変換器に隣接して配置されたクラッド材料と、クラッド材料に埋め込まれた第1の温度センサーと、クラッド材料に埋め込まれた第2の温度センサーとを含む。第1の温度センサーおよび第2の温度センサーは、クロス・トラック方向において整列される。熱アシスト型磁気記録装置は、クラッド材料に隣接して配置されたリターン磁極をさらに含む。
【0008】
別の実施形態においては、熱アシスト型磁気記録装置が開示される。熱アシスト型磁気記録装置は、書き込み磁極と、書き込み磁極に隣接して配置された磁極リップと、磁極リップに隣接して配置された近接場変換器と、近接場変換器に隣接して配置されたクラッド材料と、クラッド材料に埋め込まれた第1の温度センサーと、クラッド材料に埋め込まれた第2の温度センサーとを含む。第1の温度センサーおよび第2の温度センサーは、クロス・トラック方向において整列される。熱アシスト型磁気記録装置は、クラッド材料に隣接して配置されたリターン磁極をさらに含む。
【0009】
上述の本発明の特徴を詳細に理解することができるように、以上において簡潔に概説した本発明について、添付図面にそのいくつかが示されている実施形態を参照し、さらに具体的に説明することとする。ただし、添付図面は、本発明の代表的な実施形態を示すものに過ぎず、したがって、本発明には、その他の同様に有効な実施形態も可能であることから、これらの図面は、本発明の範囲の限定として見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の実施形態によるディスクドライブシステムを示す。
【
図1B】本発明の実施形態によるディスクドライブシステムを示す。
【
図2】本発明の一実施形態によるディスクドライブのHAMR対応型ヘッドの断面概略図を示す。
【
図3】本発明の一実施形態によるHAMR対応型ヘッドの断面概略図を示す。
【
図4】本明細書において記述される一実施形態によるHAMR対応型ヘッドのABS図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態によるセンサーリードを備える温度センサーの概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態による第1の温度センサーおよび第2の温度センサーについての時間と温度との関係を示すグラフである。
【
図7】本発明の一実施形態による第1の温度センサーおよび第2の温度センサーについての時間と定常状態温度に対する乗数との関係を示すグラフである。
【
図8】本明細書において記述される一実施形態によるHAMR対応型ヘッドの断面概略図を示す。
【
図9】本明細書において記述される一実施形態によるHAMR対応型ヘッドの断面概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理解を容易にするために、可能な限り、同一の参照符号を使用して各図面に共通する同一の要素を表記している。一実施形態において開示されている要素は、具体的な記述をともなわない場合にも、その他の実施形態において有用に利用してもよいものと想定されている。
【0012】
以下においては、本発明の実施形態を参照する。ただし、本発明は、特定の記述されている実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。その代わりに、異なる実施形態に関係しているかどうかを問わず、以下の特徴および要素の任意の組合せが本発明を実装および実施するために想定されている。さらには、本発明の実施形態は、その他の可能な解決策を上回るおよび/または従来技術を上回る利点を実現することになるが、本発明は、特定の利点が所与の実施形態によって実現されるかどうかによって限定されるものではない。このため、以下の態様、特徴、実施形態、および利点は、例示を目的としたものに過ぎず、かつ、請求項に明示的に記述されている場合を除いて、添付の請求項の要素または限定として見なすべきではない。同様に、「本発明」に対する参照も、本明細書において開示されている任意の発明主題の一般化として解釈するべきではなく、かつ、請求項に明示的に記述されている場合を除いて、添付の請求項の要素または限定として見なすべきではない。
【0013】
本発明の実施形態は一般に、NFTとリターン磁極との間に配置された2つの温度センサーを有するHAMR装置に関する。この2つの温度センサーは、クロス・トラック方向において整列される。
【0014】
図1Aは、本発明を実施するディスクドライブを示す。図示のように、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112が、スピンドル114上において支持されており、かつ、ディスクドライブモーター118によって回転する。それぞれのディスク上の磁気記録は、磁気ディスク112上の同心データトラック(図示せず)の環状パターンの形態を有する。
【0015】
少なくとも1つのスライダ113が、磁気ディスク112の近傍に配置されており、それぞれのスライダ113は、1つ以上の磁気ヘッドアセンブリ121を支持している。これらの磁気ヘッドアセンブリ121は、ディスク表面122を加熱するための放射源(例えば、レーザーまたは電気抵抗ヒーター)を含んでもよい。磁気ディスク112が回転するのにともなって、スライダ113は、ディスク表面122上において半径方向を内向きおよび外向きに動き、この結果、磁気ヘッドアセンブリ121は、磁気ディスク112の異なるトラックにアクセスしてもよく、そこで、望ましいデータが書き込まれる。それぞれのスライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に取り付けられている。サスペンション115は、ディスク表面122に向かってスライダ113を付勢するわずかなスプリング力を提供する。それぞれのアクチュエータアーム119は、アクチュエータ手段127に取り付けられている。
図1Aに図示されるようなアクチュエータ手段127は、ボイスコイルモーター(VCM)であってもよい。VCMは、固定磁界内において運動可能であるコイルを含み、コイルの運動の方向および速度は、制御部129によって供給されるモーター電流信号によって制御される。
【0016】
TARまたはHAMR対応型ディスクドライブ100の動作の際には、磁気ディスク112の回転により、スライダ113とディスク表面122との間に、上向きの力または揚力をスライダ113に対して作用させる空気軸受が生成される。この結果、空気軸受は、サスペンション115のわずかなスプリング力を相殺し、かつ、通常の動作の際に、わずかな、実質的に一定の間隔だけ、ディスク112の表面からわずかに上方において、スライダ113を支持する。放射源は、高保磁力データビットを加熱させ、この結果、磁気ヘッドアセンブリ121の書き込み素子は、データビットを正しく磁化させることになる。
【0017】
ディスクストレージシステムの様々な構成部品は、動作の際には、アクセス制御信号および内部クロック信号などの、制御部129によって生成される制御信号によって制御される。通常、制御部129は、論理制御回路と、ストレージ手段と、マイクロプロセッサとを含む。制御部129は、ライン123上のドライブモーター制御信号およびライン128上のヘッド位置およびシーク制御信号などの、様々なシステム動作を制御するための制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダ113をディスク112上の望ましいデータトラックに最適に移動させるとともに位置決めさせるための望ましい電流プロファイルを提供する。書き込みおよび読み取り信号は、アセンブリ121上の書き込みヘッドおよび読み取りヘッドとの間において、記録チャネル125を経由して伝達される。
【0018】
一般的な磁気ディスクストレージシステムおよび
図1Aの添付図面に関する上述の説明は、例示を目的としたものに過ぎない。ディスクストレージシステムは、多数のディスクおよびアクチュエータを含んでもよく、かつ、それぞれのアクチュエータは、いくつかのスライダを支持してもよいことは、明らかであろう。
【0019】
図1Bは、本発明の一実施形態によるHAMR対応型書き込みヘッド101の断面概略図である。ヘッド101は、レーザー駆動装置150によって電力供給されるレーザー155に動作可能に取り付けられている。レーザー155は、ヘッド101上に直接的に配置してもよく、あるいは、スライダ113から離れたところに配置されたレーザー155から、光ファイバまたは導波路を通して、放射を供給してもよい。同様に、レーザー駆動装置150の回路配線も、スライダ113上に配置してもよく、あるいは、制御部129などのディスクドライブ100と関連するシステム・オン・チップ(system−on−chip:SOC)上に配置してもよい。ヘッド101は、レーザー155によって放出される放射を導波路135内に合焦するためのスポットサイズコンバーター130を含む。別の実施形態においては、ディスクドライブ100は、放出された放射がスポットサイズコンバーター130に到達する前にレーザー155のビームスポットを合焦するための1つ以上のレンズを含んでもよい。導波路135は、ヘッド101の高さを貫通して、空気軸受表面(ABS)において、またはその近傍に配置された、例えば、プラズモンデバイスまたは光学変換器などのNFT140まで放射を伝播させるチャネルである。NFT140は、ディスク112上の隣接するデータトラックの加熱を回避するために、すなわち、回折限度を格段に下回るビームスポットを生成するために、ビームスポットをさらに合焦する。矢印142によって示されているように、この光学エネルギーは、NFT140からヘッド101のABSの下方のディスク112の表面まで放出される。本明細書における実施形態は、任意の特定のタイプのNFTに限定されるものではなく、かつ、例えば、cアパーチャ、eアンテナプラズモン近接場源、または当該技術分野において既知の任意のその他の形状の変換器とともに動作してもよい。
【0020】
温度センサー145をNFT140に近接して配置してもよい。NFT140は、導波路135によって伝播された放射のすべてを磁気媒体に転送することができないため、光学エネルギーの少なくとも一部分がヘッド101を加熱させる。温度センサー145は、サーミスタまたは抵抗値温度検知器(resistance temperature detector:RTD)であってもよく、この場合に、センサー145を構成する材料の電気抵抗値は、材料の温度が変化するのにともなって(比例してまたは反比例して)変化する。温度センサー145は、このセンサー145の電気抵抗値を計測するために、レーザー駆動装置150または何らかのその他の制御装置に電気的に連結してもよい。次いで、この変化を、レーザー155の出力を調節するためのフィードバック制御信号として使用してもよい。例えば、レーザー駆動装置150は、温度センサー145の両端に一定の電圧を供給してもよい。計測された電流が減少を開始した場合に、例えば、センサー145の電気抵抗値が増大した場合に、レーザー駆動装置150は、レーザー155の出力を低減させて、温度センサー145の、ならびに、恐らくは、ヘッド101のその他の構成部品の温度を低減させてもよい。このフィードバック制御により、ディスクドライブ100は、例えば、近接場変換器の磁極先端部の突起または金属拡散によるヘッド101の損傷をともなうことなしに、十分な温度においてHAMRを実行することができる。
【0021】
温度センサー145の温度は、光パワー変動、あるいはスライダの浮上状態によって影響を受ける。1台の温度センサー145を用いるだけでは、温度の変動が光パワーの変動によるのか、スライダの浮上状態の変化によるのか区別されない可能性がある。このため、第2の温度センサー(下記に詳細に述べる)を、スライダの浮上状態の変化による影響を低減するために追加してもよい。第2の温度センサーは、上述の温度センサー145と同じように動作してもよい。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態によるHAMR対応型ディスクドライブの断面概略図を示す。具体的には、
図2は、熱をディスクの方へ方向付けするための光学チャネルまたは導波路135を使用するHAMRディスクドライブ用のヘッド201と、関連する垂直磁気記録ディスク112と、の一部分を示している。ディスク112は、基板と、垂直磁気記録層(RL)246とを含む。一実施形態においては、ディスク112は、任意で「軟磁性の」または相対的に低保磁力の透磁性下層(SUL)を含んでもよい。ただし、SULは、HAMRディスクドライブ100にとって必須ではない。
【0023】
RL246は、特殊な成長促進型の副層上に成長させたコバルト・クロミウム(CoCr)合金粒状層あるいはCoの薄膜とプラチナ(Pt)またはパラジウム(Pd)の薄膜とを交互に重ねた層などの、垂直磁気異方性を有する任意の媒体であってもよい。RL246は、FePtやFeNiPtなどのL1
0型規則合金であってもまたよい。ディスク112は、RL246上に保護塗膜(図示せず)を含んでもまたよい。
【0024】
ヘッド201は、基板トレーリング表面211と、このトレーリング表面211に対して略垂直に方向付けされたABS表面とを有する。トレーリング表面211は通常、アルミナ/チタニウム・カーバイドの複合体(Al
2O
3/TiC)などの複合材料から形成され、かつ、読み取り素子および書き込み素子を支持しており、これらの読み取り素子および書き込み素子は、通常トレーリング表面211上の一連の薄膜および構造体として形成される。ディスク112は、トレーリング表面211から離れるとともにヘッド201のその他の層に向かう方向223に回転してもよい。ABSは、ディスク112に対向するスライダの記録層に対向している表面である。
図2は、非常に小さな特徴を示すことの難しさに起因し、かつ、わかりやすくするために、正確な縮尺によって描画されてはおらず、間隔や絶縁層などの構造体をヘッドから省略していることに留意されたい。
【0025】
ヘッド201は、シールドS1とシールドS2との間に配置された磁気抵抗値読み取り磁極215と、書き込み磁極220a、リターン磁極220b、導電性コイル225とを有する磁気ヨーク220を含む、垂直書き込みヘッドとを含む。書き込み磁極220aは、NiFeやFeCoNi合金などの高モーメント材料から形成されている。書き込みコイル225は、磁気ヨーク220の周りに巻かれており、電流方向は、「X」によってマーキングされたコイル断面により、紙面に入ってゆく方向が、そして、実線の円によってマーキングされたコイル断面により、紙面から出てくる方向が、示されている。書き込み電流パルスがコイル225を通して流れた際に、書き込み磁極220aは、矢印230によって表されている磁束をRL246の方へ方向付けする。さらに、磁束230は、リターン磁極220bに到達する前に、基板またはSUL層を通って進んでいる。ただし、本発明は、上述の構造および材料に限定されるものではない。例えば、導電性コイル225は、螺旋コイルであってもよく、あるいは、書き込み磁極220aは、ラップアラウンドのシールドを含んでもよい。さらには、本発明は、本明細書において記述されている機能を実行することができる任意の記録ヘッドとともに動作してもよい。
【0026】
ヘッド201は、ABSにおいてまたはABSの付近においてNFT140を有する導波路135を含んでもまたよい。図示のように、導波路135およびNFT140は、磁気ヨーク220を貫通して延在しており、かつ、書き込み磁極220aとリターン磁極220bとの間に配置されている。破線によって表わされているように、磁気ヨーク220は、書き込み磁極220aをリターン磁極220bに連続的に接続してもよい。導波路135およびNFT140は、回転する磁気ディスク112の一部分が書き込み磁極220aの下方を通過する前に、NFT140がその部分の上方を通過するように、任意の場所に組み立てられてもよい。具体的には、導波路135は、シールドS2とリターン磁極220bとの間に、あるいは、(ディスク112が図示の方向223とは反対に回転している場合には)書き込み磁極220aとヘッド201の外側面231との間に配置されてもよい。
【0027】
ディスク112に書き込んでいる際に、RL246は、ヘッド201との関係において、矢印223によって示されている方向に動く。HAMRにおいては、磁気記録領域227、228、229を書き込み磁極220aからの書き込み磁界によって方向付けされ得るように、NFT140から放出される光学エネルギー142によって一時的にRL246の保磁力(H
c)を低下させる。磁気記録領域227、228、229は、書き込み磁界(H
w)がH
cを上回っている場合に、書き込み磁界によって方向付けされた状態となる。データトラック内のRL246の領域が、書き込み磁極220aからのH
wと、NFT140からの光学エネルギー142の結果として得られる熱と、にさらされた後に、この領域の温度は、キュリー温度未満に降下し、かつ、磁気の向きと関連するデータが記録される。具体的には、(予め記録された領域227、228、および229などの)記録された領域間における移行が、読み取り磁極215によって読み取ることができる書き込まれたデータ「ビット」を表している。このように、NFT140は、光学エネルギー142を使用してRL層246を加熱するとともにその保磁力を低下させる。
【0028】
導波路135は、例えば、780nm周辺のレーザー光線源の波長の放射に対して透過性を有する高屈折率誘電材料などのコア材料251から形成されている。代表的な放射透過性材料には、例えば、TiO
2およびTa
2O
5が含まれる。放射透過性コア材料251は、クラッド材料252a、252bによって取り囲まれており、このクラッド材料は、コア材料251よりも小さな屈折率を有するとともに、例えば、レーザー155などのレーザー光線源の波長の放射に対する透過性を有する。代表的なクラッド材料には、SiO
2およびAl
2O
3が含まれる。
【0029】
ヘッド201は、第1の温度センサー145および第2の温度センサー(図示せず)を含んでもまたよく、これらはいずれもクラッド材料252bに埋め込まれている。2つの温度センサーは、クロス・トラック方向(紙面に入ってゆく方向)において整列されるので、すなわち2つのセンサーは、方向223に垂直な平面上に配置されるので、第2の温度センサーは第1の温度センサー145によって遮断される。それぞれの温度センサーは、ヘッド201の上部に、すなわち、ABSの反対側に配置されているコネクタパッド(図示せず)に対する電気接続を提供する少なくとも1つのセンサーリード260に接続してもよい。センサーリード260から、ワイヤにより、
図1Bに示されているように、温度センサーをレーザー駆動装置150に電気的に接続してもよい。
【0030】
一実施形態においては、2つの温度センサーは、クラッド材料252b内に配置するのではなく、NFT140とリターン磁極220bとの間に位置する別個の非磁性かつ絶縁性の材料内に埋め込まれてもよい。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態によるHAMR対応型ヘッド201の断面概略図を示す。図示のように、ヘッド201のこの部分は、導波路135を含んでいるが、温度センサー145、345、センサーリード260、およびヒートシンク305の細部をさらに明瞭に示すために、クラッド252b(ならびに、ヘッド201の背面上の任意のクラッド)は、取り除かれている。NFT140は、NFT140からの過剰な熱を除去するためのヒートシンク305に直接的にまたは熱的に連結してもよい。
図3は、ヘッド201の断面図であるので、図示されているヒートシンク305の反対側に配置された別のヒートシンクが存在してもよい。リターン磁極220bは、温度センサー145、345とシールド層S1、S2または読み取り磁極215(図示せず)との間に示されている。
【0032】
コア251は、NFT140で終わっていてもよい。NFT140は、アンテナ325と、誘電体320とを少なくとも含む。一実施形態においては、磁極リップ315は書き込み磁極220aとNFT140との間に配置されてもよい。アンテナ325は、Cu、Au、Ag、またはこれらの合金であってもよい。誘電体320は、隙間または開口部であり、この隙間または開口部は、SiO
2またはその他の誘電材料などの放射透過性材料によって充填されてもよい。一実施形態においては、誘電体320は、クラッド252a、252bと同じ材料から構成されてもよい。磁極リップ315は、Ni、Co、Fe、またはこれらの何らかの組合せまたは合金から構成されてもよい。NFT140は、アンテナ325および誘電体320を使用してビームスポットを磁気媒体112上にさらに合焦する。
【0033】
図3に示すように、第1の温度センサー145および第2の温度センサー345は、x軸によって表されているクロス・トラック方向において整列されている。すなわち、2つの温度センサー145、345は、同じダウン・トラック位置(つまりy軸上の同じ位置)に配置される。さらに、ヘッド201の素子がダウン・トラック方向に沿って組み立てられるので、2つの温度センサー145、345は、NFT140とリターン磁極220bとの間の平面上に同時に蒸着される。2つの温度センサー145、345は、同じ層の中に形成されるので同じ抵抗値を有する。一実施形態においては、温度センサー145、345の両者はいずれもABSに配置される。
【0034】
図4は、本明細書において記述される一実施形態によるHAMR対応型ヘッド201のABS図を示す。いくつかの素子は、温度センサー145、345の位置をさらに明瞭に示すために、取り除かれている。
図4に示されるように、温度センサー145、345の両者はいずれも、NFT140とリターン磁極220bとの間に配置され、書き込み磁極220aはNFT140のもう一方の側に配置される。矢印「C」によって示されるように、2つの温度センサー145、345は、クロス・トラック方向において整列され、矢印「D」によって示されるダウン・トラック方向と同じダウン・トラック位置に配置される。
【0035】
第1の温度センサー145は、クロス・トラック方向に対してNFT140および書き込み磁極220aの中央に位置している。すなわち第1の温度センサー145、NFT140および書き込み磁極220aはすべて、クロス・トラック方向に対して同一中心線「A」を共有している。第2の温度センサー345は、中心線「A」から外れ、かつ、NFT140からさらに離れている。第2の温度センサー345は、NFT140からさらに離れているので、第2の温度センサー345の反応時間は、第1の温度センサー145よりも遅い。
【0036】
図5は、本発明の一実施形態によるセンサーリード260を有する温度センサー145の概略図である。図示のように、温度センサー145は、両端部において、2つのセンサーリード260に接続されている。ただし、電圧電位がセンサーリード260の両端に印加された際に電流が温度センサー145の少なくとも一部分を通って流れることを許容する何らかの方式によって、センサーリード260を温度センサー145に接続してもよい。破線B−Bは、センサー145およびセンサーリード260の
図3に示されている断面図を示す。
【0037】
温度センサー145に好適な材料には、Ta、Pt、Au、Rh、NiFe、またはこれらの合金が含まれる。センサーリード260は、Cu/Taを厚くしたRuリードを含んでもよい。温度センサー145は、長さが約800nm、高さが約100nm、および厚さが約50nmから約75nmまでの範囲であってもよい。本明細書において使用される矢印502は、3次元の
図3および
図5に示されている構造の厚さの方向に対応しており、矢印504は、その長さの方向に対応しており、かつ、矢印506は、その高さの方向に対応している。第2の温度センサー345は、すべての態様において温度センサー145と同一であってもよい。
【0038】
動作の際には、NFT140がレーザー155によって加熱されるのにともなって、温度が定常状態温度まで上昇するためのランプ期間があってもよい。ただし、レーザー155の電源がオンになるとすぐに、定常状態温度がわかることが望ましい。
図6は、センサー1およびセンサー2についての時間と温度との関係を示すグラフ600を示す。センサー1は第1の温度センサー145であってもよく、センサー2は第2の温度センサー345であってもよい。これらはいずれも
図3で説明されている。グラフ600は、2つの傾向ライン、すなわち1つはセンサー1についての、もう1つはセンサー2についての傾向ラインを示し、それぞれの傾向ラインは、時間と無次元(つまり正規化された)温度との関係を示している。センサー2は、NFTからさらに離れて配置されるので、センサー2の反応時間はセンサー1よりも遅い。このため、特定時間においてセンサー2はセンサー1よりも低い温度を感知する。無次元温度は、実際の温度読み取りを定常状態温度で割ることによって算出される。
【0039】
定常状態温度は、定常状態温度に到達する前に、グラフ600中の傾向ラインに基づいて予測することができる。例えば、200nsにおいては、センサー1は、定常状態温度の70%である温度を感知し、センサー2は、定常状態温度の40%である温度を感知する。定常状態温度は、センサー1の温度読み取りを、0.7で割るか、センサー2の温度読み取りを0.4で割ることによって算出される。
【0040】
図7は、本発明の一実施形態によるセンサー1およびセンサー2についての時間と定常状態温度に対する乗数との関係を示すグラフ700である。y軸上に示された定常状態温度に対する乗数は、無次元温度の逆数(すなわち1を無次元温度で割った数)である。このため、グラフ700に基づいて定常状態温度を予測するには、センサー1またはセンサー2のいずれか一方の温度の読み取りを無次元温度で割る代わりに、温度の読み取りに乗数を掛けなければならない。例えば、200nsにおいては、定常状態温度は、センサー2の温度読み取りに2.5を掛けることによって算出されなければならない。これにより、グラフ600に示される温度読み取りを0.4で割ることにより算出されたものと同じ定常状態温度が得られる。
【0041】
上述の本発明の実施形態は、2つの温度センサーに関し、これらの温度センサーはいずれも、
図3に示されるように、ABSに配置される。他の実施形態のおいては、この2つの温度センサーは、ABSに対して異なる位置に配置されてもよい。
図8および
図9は、そのような実施形態を示す。
【0042】
図8は、HAMR対応型ヘッド801の断面概略図を示す。ヘッド801は、第1の温度センサー802、第2の温度センサー804およびセンサーリード806がすべてABSから引っ込んでいる以外はヘッド201と同一である。一実施形態においては、温度センサー802、804は、z軸上の同じ位置に配置される。別の実施形態においては、温度センサー802、804は、z軸の上の異なる位置に配置される。1つのセンサーは、もう1つのセンサーより高いz軸上の位置に配置されてもよい。
【0043】
図9は、HAMR対応型ヘッド901の断面概略図を示す。ヘッド901は、1つの温度センサーのみがABSに配置されている以外はヘッド201と同一である。一実施形態においては、
図9に示されるように、第1の温度センサー902および第1の温度センサー902に取り付けられたセンサーリード906は、ABSから引っ込んでいる。第2の温度センサー904および第2の温度センサー904に取り付けられたセンサーリード906は、ABSに配置される。別の実施形態においては、第1の温度センサー902および第1の温度センサー902に取り付けられたセンサーリード906は、ABSに配置され、その一方で第2の温度センサー904および第2の温度センサー904に取り付けられたセンサーリード906は、ABSから引っ込んでいる。
【0044】
要約すれば、熱アシスト型磁気記録装置が開示される。装置は、NFTとリターン磁極との間に配置された2つの温度センサーを有し、かつ、この2つの温度センサーは、クロス・トラック方向において整列される。2台の温度センサーを用いることで、温度の変動が光パワーの変動によるのか、スライダの浮上の状態の変化によるのか区別することが可能となる。
【0045】
以上の内容は、本発明の実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲を逸脱することなしに、本発明のその他の、かつ、さらなる実施形態を考案してもよい。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項によって規定される。