(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記読取り要素と前記書込み要素との間に位置決めされるヒータ要素を更に備え、前記ヒータ要素は、前記磁気ヘッドのエアベアリング表面(ABS)のある部分の突出を誘導して、前記ABSの前記部分と磁気媒体との間の隙間を調整するように構成される、請求項1に記載の磁気ヘッド。
前記ヒータ要素の動作を制御し、前記隙間を調整して、前記磁気ヘッドに熱的飛行高さ制御(TFC)を提供するコントローラを更に備える、請求項3に記載の磁気ヘッド。
前記基板から前記書込み要素を隔てる誘電層を更に備え、前記誘電層は、前記書込み要素と前記基板との間に位置決めされる唯一の層である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
前記基板から前記書込み要素のコイルのある部分を隔てる誘電層を更に備え、前記誘電層は、前記書込み要素の前記コイルの前記部分と前記基板との間に位置決めされる唯一の層である、請求項1に記載の磁気ヘッド。
前記基板から前記書込み要素のコイルのある部分を隔てる誘電層を更に備え、前記誘電層は、前記書込み要素の前記コイルの前記部分と前記基板との間に位置決めされる唯一の層である、請求項11に記載のシステム。
前記読取り要素と前記書込み要素の少なくとも一部との間にヒータ要素を形成することを更に含み、前記ヒータ要素は、書込み動作中、前記磁気ヘッドのエアベアリング表面(ABS)の突出を誘導するように構成される、請求項17に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの心臓部は磁気ハードディスドライブ(HDD)であり、HDDは通常、回転する磁気ディスクと、読取りヘッド及び書込みヘッドを有するスライダと、回転するディスクの上方にあるサスペンションアームと、アクチュエータアームとを含み、アクチュエータアームは、サスペンションアームを揺動させて、読取りヘッド及び/又は書込みヘッドを回転するディスクの選択された円形トラックの上方に配置する。サスペンションアームは、ディスクが回転していない場合には、スライダを付勢して、ディスクの表面に接触させるが、ディスクが回転する場合には、スライダのエアベアリング表面(ABS)に隣接して回転するディスクによって空気が渦を巻き、スライダを回転するディスクの表面からわずかな距離で、エアベアリング上に乗せる。スライダがエアベアリングに乗ると、書込みヘッド及び読取りヘッドを利用して、回転するディスクに磁気痕跡(magnetic impression)を書込み、かつそこから磁気信号フィールドを読み取る。読取りヘッド及び書込みヘッドは、コンピュータプログラムに従って動作する処理回路に接続され、書込み機能及び読取り機能を実施する。
【0003】
情報化時代における情報処理量は急激に増加している。特に、HDDがその限られた面積及び体積に、より多くの情報を記憶することが望まれてきた。この要望に対する技術的な手法は、HDDの記録密度を高めることによって容量を増加させることである。より高い記録密度を達成するには、記録ビットの更なる小型化が効果的であるが、これには通常、より小さな構成要素の設計が必要となる。
【0004】
しかし、様々な構成要素の更なる小型化は、それ自体の課題及び障害を呈する。
図5は、従来技術により従来の熱的飛行高さ制御(TFC)を実行する磁気ヘッド500の構造を概略的に示す。読取り要素502及び書込み要素504が、連続して基板506上に形成される。ヒータ要素508は、TFCを実行するためにアクティブ化され、基板506と読取り要素502との間、書込みコイル516と読取り要素502との間、読取り要素502と書込み要素504との間等に配置し得る。
図5では、このヒータ要素508は、読取り要素502と書込み要素504との間に位置決めされて示されるが、そのように限定されない。
【0005】
TFC中、記録媒体510と磁気ヘッド500(通常、書込み要素504及び読取り要素502のうちの一方)のエアベアリング表面(ABS)514との間のギャップ又は隙間512は、ヒータ要素508に供給される電流、電力、又はエネルギーを制御し、ヒータ要素508によって生成される熱によって生じる、ヒータ要素508の近傍の材料の熱膨張を利用して、ABS514での磁気ヘッド500の面積を拡大させるなどにより、ヒータ要素508からの熱を多かれ少なかれ、加えることによって制御される。
【0006】
図6A及び
図6Bは、磁気ディスク500を利用する磁気ディスクドライブの動作中のTFC隙間512を概略的に示す。読取り動作中、
図6Aに示されるように、読取り要素502によって生成される熱に起因して、熱膨張が生じる。隙間の変動が生じないことが、実験及び熱変形計算により確認されている。読取り動作中の隙間512は、ヒータ要素508の中央(十字602で示される)近傍の熱生成によって生じる熱膨張に起因して、ABS514の変形を生じさせることによって制御される。読取り動作中に隙間512を所定量に設定することにより、磁気ディスクドライブの記録特徴及び再現特徴の安定性が保証されるとともに、磁気ヘッド500とディスク媒体510との接触(「タッチダウン」)に起因する磁気ヘッド500の信頼性の低下から保護される。
【0007】
隙間512が読取り動作用に設定される場合、
図6Bに示されるように、書込み動作中の隙間512はまた、ヒータ要素508の配置及び形状に従って任意の量に設定することができる。
【0008】
他方、磁気ディスクドライブが書込み動作を実行している場合、書込み要素504によって生成される熱は、書込み要素504の中央(十字604で示される)近傍に生成される熱(この熱はコイル516の近傍でもある)によって生じる熱膨張により、隙間変動(以下、「書込み突出(write protrusion)」と呼ぶ)を生み出す。したがって、書込み動作中、熱膨張の結果として生み出される、
図6Bに示される形状は、読取り動作中に生み出される、
図6Aに示される形状と異なる。したがって、TFCを実施して、磁気ディスクが書込み動作を実行中の場合、読取り突出とは異なる書込み突出を計上することが有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明は、本発明の一般原理を示す目的でなされ、本明細書で請求される本発明の概念を限定するものではない。さらに、本明細書で説明する特定の特徴は、様々な可能な組み合わせ及び置換のそれぞれに関して説明される他の特徴と組み合わせて用いることができる。
【0018】
本明細書において特に別段の定義がなければ、全ての用語には、本明細書から暗黙的に示される意味及び当業者によって理解され、且つ/又は辞書、論文等において定義される意味を含む、それらの可能な限り広い解釈が与えられるべきである。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」(「ある〜」や「1つの〜」など。また、使わない場合もある)、及び「the」(「その〜」、「前記〜」、「上記〜」など。また、使わない場合もある)には、別段の定めがない限り複数の指示対象が含まれることにも留意しなければならない。
【0020】
以下の説明は、ディスクに基づく記憶システム及び/又は関連するシステム及び方法並びにその動作及び/又は構成要素部品のいくつかの好ましい実施形態を開示する。
【0021】
一般的な一実施形態では、磁気ヘッドは、書込み要素と、読取り要素と、熱を放散可能な基板とを含み、書込み要素は、読取り要素よりも基板の近傍に位置決めされ、それにより、書込み動作中に書込み要素によって生成される熱は、基板によって放散される。
【0022】
別の一般的な実施形態では、システムは、少なくとも1つの磁気ヘッドと、磁気媒体と、磁気媒体に少なくとも1つの磁気ヘッド上を通過させる駆動機構と、少なくとも1つの磁気ヘッドに電気的に結合され、少なくとも1つの磁気ヘッドの動作を制御するコントローラと含み、各磁気ヘッドは、書込み要素と、読取り要素と、約50原子%よりも大きな原子%のTiCを有する合金材料である基板と、読取り要素と書込み要素との間に位置決めされるヒータ要素とを有し、書込み要素は、読取り要素よりも基板の近傍に位置決めされ、それにより、書込み動作中に書込み要素によって生成される熱は、基板によって放散され、ヒータ要素は、磁気ヘッドのエアベアリング表面(ABS)の突出を誘導して、ABSの一部と磁気媒体との間の隙間を調整するように構成される。
【0023】
更に別の一般的な実施形態では、磁気ヘッドを形成する方法は、書込み要素を基板の上方に形成することと、読取り要素を書込み要素の上方に形成することとを含み、基板は、熱を放散可能な材料を含む。
【0024】
これより
図1を参照して、本発明の一実施形態によるディスクドライブ100を示す。
図1に示されるように、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112が、スピンドル114上に支持され、駆動機構によって回転され、駆動機構はディスク駆動モータ118を含み得る。各ディスクへの磁気記録は通常、ディスク112の環状パターンの同心円データトラック(図示せず)の形態である。
【0025】
少なくとも1つのスライダ113がディスク112の近傍に位置決めされ、各スライダ113は1つ又は複数の磁気読み/書き部分121を支持する。ディスクが回転する際、スライダ113は、ディスク表面122の上方で半径方向内外に移動し、それにより、部分121は、所望のデータが記録され、且つ/又は所望のデータを書き込むべきディスクの異なるトラックにアクセスし得る。各スライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に取り付けられる。サスペンション115は、ディスク表面122に寄せてスライダ113を付勢するわずかなばね力を提供する。各アクチュエータアーム119はアクチュエータ127に取り付けられる。
図1に示されるように、アクチュエータ127は、ボイスコイルモータ(VCM)とすることができる。VCMは、固定磁場内で移動可能なコイルを備え、コイルの移動する方向及び速度は、コントローラ129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0026】
ディスク記憶システムの動作中、ディスク112の回転は、スライダ113とディスク表面122との間にエアベアリングを生成し、このエアベアリングはスライダ上に上向きの力、すなわち上昇を与える。したがって、エアベアリングはサスペンション115のわずかなばね力を相殺し、通常動作中、スライダ113を、ディスク表面から離して、小さく略一定の間隔だけディスク表面のわずか上方に支持する。なお、いくつかの実施形態では、スライダ113はディスク表面122に沿ってスライドし得る。
【0027】
ディスク記憶システムの様々な構成要素は、動作中、アクセス制御信号及び内部クロック信号等の、コントローラ129によって生成される制御信号によって制御される。通常、制御ユニット129は、論理制御回路、記憶装置(例えば、メモリ)、及びマイクロプロセッサを備える。制御ユニット129は、ライン123上の駆動モータ制御信号及びライン128上のヘッド位置及びシーク制御信号等の様々なシステム動作を制御する制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダ113をディスク112の所望のデータトラックまで最適に移動させ、そこに位置決めするのに望ましい電流プロファイルを提供する。読取り信号及び書込み信号は、記録チャネル125によって読み/書き部分121とやりとりされる。
【0028】
典型的な磁気ディスク記憶システムの上記説明及び付随する
図1の図は、表現のみを目的とする。ディスク記憶システムが多数のディスク及びアクチュエータを含むことが可能であり、各アクチュエータがいくつかのスライダを支持可能なことが明らかなはずである。
【0029】
データを送受信するためのディスクドライブとホスト(内部又は外部)との通信並びにディスクドライブの動作制御及びホストへのディスクドライブの状態の通信に、インタフェースを提供することもでき、これらは全て当業者によって理解されるだろう。
【0030】
典型的なヘッドでは、誘導性書込み部分は、1つ又は複数の絶縁層(絶縁積層)内に埋め込まれたコイル層を含み、絶縁積層は第1の極層(pole piece layer)と、第2の極層との間に配置される。ギャップが、書込み部分のABSにおいて、ギャップ層によって第1の極層と第2の極層との間に形成される。極層はバックギャップに接続し得る。電流はコイル層を流れ、コイル層は極に磁場を生成する。磁場は、回転する磁気ディスクの円形トラック等の移動する媒体のトラックに磁場情報ビットを書き込むために、ABSにおいてギャップにわたってフリンジ(fringe)する。
【0031】
第2の極層は、ABSからフレアポイントまで延びる極先端部分と、フレアポイントからバックギャップまで延びるヨーク部分とを有する。フレアポイントの配置は、記録媒体に情報を書き込むのに生成される磁場の大きさに直接影響を及ぼす。
【0032】
図2Aは、
図1に示されるような磁気ディスク記録システムと併用されるような従来の記録媒体を概略的に示す。この媒体は、媒体自体の平面にあるか、又はその平面に平行する磁気インパルスを記録するのに利用される。記録媒体、この場合、記録ディスクは、基本的に、適する従来の磁性層のオーバーレイコーティング202を有する、ガラス等の適する非磁性材料の支持基板200を備える。
【0033】
図2Bは、好ましくは薄膜ヘッドであり得る従来の記録/再生ヘッド204と、
図2Aのような従来の記憶媒体との動作関係を示す。
【0034】
図2Cは、
図1に示されるような磁気ディスク記録システムと併用されるような記録媒体の表面に略垂直な磁気インパルスの向きを概略的に示す。そのような垂直な記録の場合、媒体は通常、高透磁性を有する材料の下層212を含む。次に、この下層212に、好ましくは、下層212と比較して高い保持性を有する磁性材料のオーバーレイコーティング214が提供される。
【0035】
図2Dは、垂直ヘッド218と、記録媒体との動作関係を示す。
図2Dに示される記録媒体は、高透磁性下層212と、上記の
図2Cに関して説明した磁性材料のオーバーレイコーティング214との両方を含む。しかし、これらの層212及び214の両方は、適する基板216に塗布されて示される。層212と214との間には通常、「交換ブレーク」層又は「中間層」と呼ばれる追加の層(図示せず)もある。
【0036】
この構造では、垂直ヘッド218の極間に延びる磁束の磁線は、記録媒体のオーバーレイコーティング214内外にループし、記録媒体の高透磁性下層212が、磁束線を、媒体の表面に概ね垂直する方向でオーバーレイコーティング214を通過させ、媒体の表面に略垂直する磁化軸を有する磁気インパルスの形態で、好ましくは下層212と比較して高い保磁性を有する磁性材料のオーバーレイコーティング214に情報を記録する。磁束は、軟らかい下層コーティング212によって再びヘッド218の戻り層(P1)に導かれる。
【0037】
図2Eは、基板216が層212及び214をその2つの両側に担持し、適する記録ヘッド218が媒体の各側に、磁性コーティング214の外面に隣接して位置決めされ、媒体の各側での記録を可能にする同様の構造を示す。
【0038】
図3Aは、垂直磁気ヘッドの断面図である。
図3Aでは、螺旋コイル310及び312を使用して、ステッチ極308に磁束を生み出し、次に、ステッチ極308は、その磁束を主極306に送る。コイル310はページから出て延びるコイルを示し、一方、コイル312はページ内に延びるコイルを示す。ステッチ極308はABS318から窪み得る。絶縁材316がコイルを囲み、要素のうちの幾つかに支持を提供し得る。構造の右側の矢印で示されるように、媒体の移動方向は、媒体をまず、下部戻り極314を過ぎて移動させ、次に、ステッチ極308、主極306、ラップアラウンドシールド(図示せず)に接続し得る後縁シールド304、そして最後に上部戻り極302を過ぎて移動させる。これらの構成要素のそれぞれは、ABS318に接触する部分を有し得る。ABS318は、構造の右側にわたって示される。
【0039】
垂直書込みは、磁束を強制的に、ステッチ極308に通し、主極306内に至らせ、次に、ABS318に向けて位置決めされたディスクの表面に至らせることによって達成される。
【0040】
図3Bは、
図3Aのヘッドと同様の特徴を有するピギーバッグ磁気ヘッドを示す。2つのシールド304、314はステッチ極308及び主極306の側面に位置する。センサシールド322、324も示される。センサ326は通常、センサシールド322と324との間に位置決めされる。
【0041】
図4Aは、ステッチ極408に磁束を提供する、パンケーキ構成と呼ばれることもある、ループコイル410を使用する一実施形態の概略図である。次に、ステッチ極はこの磁束を主極406に提供する。この向きでは、下部戻り極は任意選択的である。絶縁材416がコイル410を囲み、ステッチ極408及び主極406に支持を提供し得る。ステッチ極はABS418から窪み得る。構造の右側の矢印で示されるように、媒体の移動方向は、媒体をステッチ極408、主極406、ラップアラウンドシールド(図示せず)に接続し得る後縁シールド404、そして最後に上部戻り極402を過ぎて移動させる(これらの全ては、ABS418に接触する部分を有してもよく、又は有さなくてもよい)。ABS418は、構造の右側にわたって示される。後縁シールド404は、いくつかの実施形態では、主極406に接触し得る。
【0042】
図4Bは、巻かれてパンケーキコイルを形成するループコイル410を含む、
図4Aのヘッドと同様の特徴を有する別のタイプのピギーバック磁気ヘッドを示す。センサシールド422、424も示される。センサ426は通常、センサシールド422と424との間に位置決めされる。
【0043】
図3B及び
図4Bでは、任意選択的なヒータが、磁気ヘッドのABSではない側の近傍に示される。ヒータ要素(ヒータ)は、
図3A及び
図4Aに示される磁気ヘッド内に含むこともできる。このヒータ要素の位置は、突出が望ましい位置、周囲層の熱膨張係数等の設計パラメータに基づいて変更し得る。
【0044】
第1の実施形態によれば、磁気ヘッドは、書込み動作中に書込み要素によって生成される熱を基板に移すか、又は偏向させることによって書込み突出が抑制されるような磁気ヘッドであり、基板は、TiC又はAlTiC等のTiCの合金を含み得る。一手法では、書込み突出は、少なくとも部分的に、書込み動作中に書込み動作によって生成される熱によって生じ得る。
【0045】
第2の実施形態では、上述した磁気ヘッドは、磁気ヘッドのABSと磁気ディスク媒体との間の隙間(TFC)が、ヒータ要素の熱によって生じる熱膨脹を介して制御されるように、制御され得る。
【0046】
第3の実施形態において、書込み突出を抑制する熱アシスト構造を利用する磁気ヘッドでは、書込み突出は、レーザ光ガイド及び近距離場光生成要素(near field light generating element)(近距離場トランスデューサ)によって生成された熱を、TiC又はAlTiC等のTiCの合金を含む基板等の基板に移すことによって抑制し得る。
【0047】
本明細書で説明される任意の実施形態では、読取り要素、書込み要素、ヒータ要素、レーザ光ガイド、近距離場トランスデューサ、並びに任意の他の要素及び様々な磁気ヘッドの構造は、スパッタリング、メッキ、イオン堆積、プラズマ堆積、エッチング、及び/又はそれらの組み合わせ等の当分野で既知の任意の適する製造技法に従って形成し得る。さらに、本明細書で説明される様々な磁気ヘッドの任意の要素及び構造の構築材料は、当業者に理解されるように、各構成要素の従来の動作を実行するように選び得る。
【0048】
図7は、線形膨脹係数(熱膨脹に比例する)及び熱伝導性の、磁気ヘッドの様々な材料及び要素の場合での比較を示し、アルミナ(Al
2O
3)が基準として使用される。この比較での磁気ヘッドは、磁気ディスク書込み動作中に熱を生成するコイルが、絶縁層として機能するレジストによって囲まれ、アルミナによって更に囲まれ、書込み要素が、コイルの周囲に磁気回路を形成する構造を有する。コイルによって生成される熱はレジストに伝達され、ここで、レジストは良い熱伝導体ではないが、確実に熱膨張を受ける。したがって、熱はコイル及びレジスト部分に蓄えられる。蓄えられた熱に起因して膨脹するレジストのABS構成要素は、書込み突出を生じさせる。
【0049】
一実施形態では、AlTiCを磁気ヘッドの基板に使用し得る。AlTiCは、
図7に示されるように、良好な熱伝導性と低い線形膨脹との良好なバランスを有することを特徴とする。AlTiCが磁気ヘッドの基板として使用される場合、AlTiCは、他の要素及び磁気ヘッド内の材料と比較して大きな体積を有するため、大きな熱容量も有する。
【0050】
第1の実施形態では、磁気ヘッドは、書込み動作中に磁気ディスク書込み要素によって生成される熱を、AlTiC材料に移動させることによって抑制される書込み突出を有し、書込み要素はAlTiC基板の近傍にある層内に形成し得る(「近傍」により意味されるのは、書込み回路の短絡なしで可能な限り近くである)。一実施形態では、これは、書込み要素を、読取り要素を備える層よりもAlTiC材料の近傍にある層内に形成することによって達成し得る。
【0051】
これより
図8Aを参照して、従来技術による従来の磁気ヘッド800の構造を示す。この磁気ヘッド800では、読取り要素802は、基板806の近傍にある層内に従来通りに形成され(基板806から、アルミナ基層であり得る誘電層808によって隔てられる)、一方、書込み要素804は、基板806から遠くの層内に形成される。書込み要素804及び読取り要素802は、アルミナ又は他の何らかの適する材料等の誘電材料を含む構造810内に層で形成される。いくつかの磁気ヘッド800では、TFCにTFCヒータ要素812を提供し得る。
【0052】
これより
図9Aを参照して、一実施形態による書込み突出抑制を提供する磁気ヘッド900の構造を示す。この磁気ヘッド900では、書込み要素904は基板906の近傍の層内に形成され(基板906から、アルミナ基層であり得る誘電層908によって隔てられる)、一方、読取り要素902は基板906から離れた層内に形成される。基板906は、AlTiC、又は書込み動作中に伝えられる、書込み要素904によって生成される熱を放散可能であり、それにより、書込み要素904によって生成される熱によって生じるヘッド900の変形を抑制する他の何らかの適する材料を含む。書込み要素904及び読取り要素902は、アルミナ等の誘電材料を含む構造910内の別個の層内に形成される。
【0053】
一手法では、基板906は、60原子%、70原子%、80原子%、95原子%等、約50原子%よりも大きな原子%を有する合金材料及び略純粋なTiCとすることができる。「約」によって意味されるのは、引用される値の±1%である。例えば、「約50原子%」は49.5原子%及び50.5原子%並びにそれらの間の全ての値を含む。
【0054】
一手法では、誘電基層908は、書込み要素904と基板906との間に位置決めされる唯一の層である。
【0055】
別の手法では、誘電基層908は、書込み要素904のコイル930の一部と基板906との間に位置決めされる唯一の層であり得る。この実施形態では、誘電基層908は、書込み要素904のコイル930の絶縁体として機能し得る。この手法は、「バーバーショップ(barbershop)」コイル構成を有する書込み要素にとって特に有用である。
【0056】
更なる手法では、誘電基層908は、書込み要素904の書込みコイル930及びコイル絶縁の一部を基板906から隔て、誘電基層908は、基板906とコイル930/コイル絶縁の一部との間に位置決めされる唯一の層である。
【0057】
これらの説明では、書込み要素904の極、コイル、又は他の構造若しくは構成要素の形成に使用される任意のシード層、下層、接着層等は、書込み要素904の一部であると見なされる。同様に、読取り要素902の極、コイル、又は他の構造若しくは構成要素の形成に使用される任意のシード層、下層、接着層等も、読取り要素902の一部であると見なされる。
【0058】
一実施形態では、この効果は、基板906から連続して書込み要素904及び読取り要素902を形成することによって得られ、様々な可能な層が間に位置決めされる。
【0059】
図9Aは一定の縮尺で描かれていない。一手法では、AlTiC基板906は幅912を有し得、幅912は、誘電構造910の幅914の10倍以上大きい。より多くの手法では、基板幅912は、誘電幅914の20倍、30倍、50倍、100倍以上であり得る。さらに、書込み要素904及び読取り要素902は、磁気ヘッド900のABS916のかなり近傍に位置決めされ、磁気ヘッド900の上面の近傍にはないため、示される構造の高さ932も一定の縮尺ではない。
【0060】
これより
図9Bを参照して、第2の実施形態によれば、磁気ヘッド950はTFCを提供するように構成し得る。この実施形態では、磁気ヘッド950は、磁気ヘッド950のABS916と磁気ディスク媒体922との間の隙間、TFCヒータ要素924からの熱に起因する熱膨脹によって生み出される隙間の変更を制御するように構成された、TFCコントローラ等のコントローラによって少なくとも部分的に制御される。一手法では、TFCヒータ要素924は、TFCヒータ要素924の加熱によって生じるTFCヒータ要素924近傍の材料の熱膨脹に起因して、読取り要素902と書込み要素904との間の隙間920を効率的に制御するように位置決めし得る。一手法では、TFCヒータ要素924は、書込み要素904によって生成された熱の、AlTiC基板材料906に向かう伝導性を妨げない位置において、書込み要素904と読取り要素902との間に位置決めし得る。このようにして、ヒータ要素924がなお、隙間920を制御し得る間、書込み動作中の書込み要素904からの熱はそれでもなお、AlTiC基板906に伝導されて放散される。
【0061】
一手法では、ヒータ要素924は、ABS916の近傍で、読取り要素902と書込み要素904との間に直接位置決めし得る。別の手法では、ヒータ要素924は、ABS916から離れて後退させ得る。
【0062】
更に別の手法では、2つ以上のTFCヒータ要素924を提供し得、各ヒータ要素924は個々に制御可能であり、磁気ヘッド950の異なる部分に別個の加熱を提供する。
【0063】
一実施形態では、この効果は、基板906から連続して書込み要素904及び読取り要素902を形成することによって得られ、様々な可能な層が間に位置決めされる。
【0064】
図9Bは一定の縮尺で描かれていない。一手法では、AlTiC基板906は幅912を有し得、幅912は、誘電構造910の幅914の10倍以上大きい。より多くの手法では、基板幅912は、誘電幅914の20倍、30倍、50倍、100倍以上であり得る。さらに、書込み要素904及び読取り要素902は、磁気ヘッド900のABS916のかなり近傍に位置決めされ、磁気ヘッド900の上面の近傍にはないため、示される構造の高さ932も一定の縮尺ではない。
【0065】
これより
図8Bを参照して、従来技術による熱アシスト構造を利用する磁気ヘッド850を示す。熱アシストを用いて、ディスク媒体816は、書込み要素804の近傍に提供される近距離場光生成要素(本明細書では、近距離場トランスデューサとも呼ばれる)818に衝突するレーザ光によって生成される近距離場光によって加熱される。このレーザ光は、書込み要素804の逆の表面からABS814に向けて、書込み要素804を通過するレーザ光ガイド820を介して、近距離場トランスデューサ818に達する。熱アシスト構造を有する磁気ヘッド850の場合、レーザ光ガイド820によって生成される熱及び近距離場トランスデューサ818によって生成される熱によって生じる材料の膨脹に起因する書込み突出のリスクがある。通常、これらの材料は、ABS814又はその近傍且つレーザ光ガイド820の近傍、且つ/又は近距離場トランスデューサ818に位置決めし得る。いくつかの手法では、磁気ヘッド850は、TFCを提供する加熱要素812を含み得る。
【0066】
これより
図9Cを参照して、第3の実施形態による、書込み突出を抑制する熱アシスト構造を利用する磁気ヘッド960を示す。書込み突出は、レーザ光ガイド926及び近距離場光生成要素(近距離場トランスデューサ)928によって生成された熱を、AlTiCを含む基板906等の基板906に伝達させることによって抑制し得る。
【0067】
本明細書に記載の構造と併用し得る熱アシスト構造の例は、2012年5月1日に発行された米国特許第8,169,881号明細書により詳細に記載されており、これを参照により本明細書に援用する。
【0068】
レーザ光ガイド926及び近距離場光生成要素928によって生成される熱は、AlTiC構造906の近傍の1つ又は複数の層にレーザ光ガイド926、近距離場トランスデューサ928、及び書込み要素904を位置決めすることによって基板906に積極的に伝達し得、読取り要素902は、レーザ光ガイド926、近距離場トランスデューサ928、及び書込み要素904よりもAlTiC基板906から遠くの層に位置決めされる。
【0069】
一実施形態では、この効果は、基板906から連続して書込み要素904及び読取り要素902を形成することによって得られ、様々な可能な層が間に位置決めされる。加えて、レーザ光ガイド926及び近距離場トランスデューサ928は、書込み要素904が形成される層等、AlTiC基板906により近い層に形成して、それによって生成された熱をAlTiC基板906により積極的に伝達させ、その結果、書込み突出を抑制し得る。
【0070】
この磁気ヘッド960は、TFCヒータ要素924が、ヒータ要素924近傍の材料の熱膨張による読取り要素902及び書込み要素904の突出量を制御するよう位置決めされるように、設計される。一手法では、ヒータ要素924は、書込み動作中、ヒータ要素924からAlTiC基板906に向かう熱の伝搬を妨げないように、書込み要素904と読取り要素902との間に位置決めし得る。
【0071】
図9Cは一定の縮尺で描かれていない。一手法では、AlTiC基板906は、誘電構造910の幅914の10倍以上大きい幅912を有し得る。より多くの手法では、基板幅912は、誘電幅914の20倍、30倍、50倍、100倍以上であり得る。さらに、書込み要素904及び読取り要素902は、磁気ヘッド900のABS916のかなり近傍に位置決めされ、磁気ヘッド900の上面の近傍にはないため、示される構造の高さ932も一定の縮尺ではない。
【0072】
様々な実施形態による、本明細書で説明される磁気ヘッド構造は、ABSと磁気ディスク媒体との間のより安定した隙間に起因して、改良されたヘッド特徴及び信頼性に関して従来技術の構造よりも優れた利点を示す。この安定した隙間は、少なくとも部分的に、磁気ディスク書込み動作中の書込み突出の抑制を用いて向上するTFCを通して得られる。
【0073】
図8A及び
図9Aに示されるヘッド構造は、書込みコイルによって生成される熱によって生じる熱膨脹の解析及び
図10A及び
図10Bに示される条件下でのモデル化計算を通しての温度分布解析を受けた。
【0074】
図10Aは従来の構造での書込み突出を示し、一方、
図10Bは第1の実施形態での書込み突出を示す。両ヘッド構造で、書込みコイル要素は先端として見なされ、熱変形が、書込みコイル熱生成によって生成される熱膨脹に起因して生じる書込みコイルによって生成される熱量に等しいことを確認することが可能であった。しかし、第1の実施形態の構造での書込み突出の量が、
図10Bに示されるように、
図10Aに示されるような従来の構造での書込み突出の量と比較した場合に低減することを見て取れる。
【0075】
図11は、第1の実施形態の構造での書込み突出と、従来の構造での書込み突出との比較を示す。各ヘッド構造の熱変形量が、同じ書込みコイル熱生成条件(書込みコイル電力=78mW)下で比較された場合、従来のヘッド構造と比較して、第1の実施形態によるヘッド構造(書込み突出抑制を有する)では、熱変形を先端として解釈して、約2nmの抑制効果が観測された。さらに、AlTiC基板の熱膨脹が、AlTiC基板に伝達される熱に起因して、従来のヘッド構造よりも第1の実施形態によるヘッド構造でより大きいことを確認することが可能であった。
【0076】
この確認に使用されたモデルを用いて、
図12に示されるように、従来のヘッド構造と比較して、第1の実施形態によるヘッド構造を用いて約10%の書込み突出抑制を確認することが可能であった。さらに、AlTiC基板への熱伝導を妨げる誘電基層(アルミナを含み得る)の厚さを低減する方法も、第1、第2、及び第3の実施形態によるヘッド構造を用いて実現可能であり、それにより、より大きな書込み突出抑制効果が得られる。
【0077】
加えて、第1の実施形態によるヘッド構造による熱放散の比較により、より多くの利点が明らかになった。第1の実施形態によるヘッド構造の熱放散が、同じ書込みコイル生成条件下(書込みコイル電力=78mW)で従来のヘッド構造と比較された場合、効果を確認することが可能であり、それにより、書込みコイル部分に蓄えられた熱生成の最大値が、約8.2℃(127.7℃→119.5℃)だけ、例えば、従来の構造での127.7℃から本明細書で説明される実施形態での119.5℃に抑制された。さらに、AlTiC基板への熱放散の最大値が7.2℃(51.0℃→58.2℃)だけ増大したことを確認することが可能であった。さらに、本明細書で説明されるヘッド構造内のAlTiC基板に伝達される書込みコイルによって生成される熱量に関して、性能が増大した。その理由は、書込み要素とAlTiC基板との間の誘電基層の厚さが低減され、書込み突出抑制効果が増大されたことによる。
【0078】
図13は、一実施形態による、書込み突出を抑制可能な磁気ヘッドを形成する方法1300を示す。一選択肢として、本方法1300は、
図1〜
図12に示されるような構造を構築するのに実施し得る。しかし、当然、本明細書に提示されるこの方法1300等を用いて、磁気記録に関連しても、関連しなくてもよい広範囲の装置及び/又は目的で磁気構造を形成し得る。さらに、本明細書に提示される方法は、任意の所望の環境で実行し得る。任意の上記特徴を、様々な方法に従って、説明される任意の実施形態で使用し得ることにも留意されたい。
【0079】
動作1302では、書込み要素が、スパッタリング、メッキ等の任意の既知の形成プロセスを使用して、基板の上方に形成される。一実施形態では、誘電層は書込み要素と基板との間に形成し得、誘電層はそれらの間に位置決めされる唯一の層である。誘電層は、アルミナ、MgO、又は何らかの他の適する材料とし得る。
【0080】
一実施形態では、基板は、約50を超える原子%TiCを含む合金材料等の熱放散可能な材料を含み得る。
【0081】
動作1304では、読取り要素が、スパッタリング、メッキ等の任意の既知の形成プロセスを使用して、書込み要素の上方に形成される。
【0082】
このようにして、書込み要素は、読取り要素よりも基板の近傍に位置決めされる。
【0083】
任意選択的な動作1306では、ヒータ要素が、読取り要素と、書込み要素の少なくとも一部との間に形成され、ヒータ要素は、書込み動作中、磁気ヘッドのABSの突出を誘導するように構成される。
【0084】
任意選択的な動作1308では、光ガイド及び近距離場トランスデューサが形成される。光ガイド及び近距離場トランスデューサは、基板と書込み要素との間、又は書込み要素の(複数の)極の間に形成される。
【0085】
様々な実施形態のうちの少なくともいくつかにいついて本明細書に提示された方法論が、全体的又は部分的に、コンピュータハードウェアで、ソフトウェアで、手動で、特別な機器を使用するなど、及びそれらの組み合わせを使用して実施可能であることに留意されたい。
【0086】
さらに、任意の構造及び/又はステップは、本明細書を読んだ上で当業者に明らかになるように、既知の材料及び/又は技法を使用して実施し得る。
【0087】
様々な実施形態を上述したが、実施形態が、限定ではなく単なる例として提示されることを理解されたい。したがって、本発明の実施形態の幅及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってのみ規定されるべきである。