【実施例】
【0012】
(オーバーベッドテーブルの概要)
図1の前面図及びその背面図である
図2に示すように、オーバーベッドテーブル1の概要は、テーブル部11が高さ調整レバー121の操作によって自在に上昇及び下降させることができる。
図1においてテーブル部11のテーブルの高さ調整レバーの側の右側にはキャスター操作部2が設けられ、この一カ所のキャスター操作部2のハンドル部21を挙げる操作により、脚部13の4個のキャスター4a,4b,4c,4dを同時にロック解除作動を行い、解除ボタン23を押し下げハンドル部21を下げることによってロックして、オーバーベッドテーブル1を床に固定する。
図1に示すように、テーブル部11上の左側の適所にはテレビ6が据え付けられ、テーブル部11の前面部17にはカードリーダ部7が設けられ、プリぺイドカードの挿入口71や課金状態等の表示部72が設けられている。
図2の背面図に示すように、テーブル部11の背面18の左側には引き出し部181、右側には電気機器類の収納部182が設けられ、背面には複数の電源コンセント183が設けられ、中央部には棚部184が設けられている。
【0013】
(テレビ部)
テレビ部6は、テーブル部11の側部、実施例では
図1の左側に配置される1本の支柱62に取り付けられ、ベッドD前方から患者や使用者が最適な状態で鑑賞できるように、基本的にはテレビ画面61が前面に向くように取り付けられ、支柱62の先端にはテレビ画面61の方向が調整できるように方向操作部63が設けられ、リモコン(図示せず)操作によりテレビ画面は左右方向及び上下向を制御でき、チャンネル及び音量も制御できるようになっている。このテレビ部61は、極力、看護師らの手を煩わせないように設計されており、本出願人らによって開発された特許文献5に示されるものである。また、テーブル部11の直接の占領は基本的に支柱62部分だけで、書類を載せる際や食事の際の妨げにならないようにしている。なお、
図2での符号64、電源コードやアンテナケーブルであり、65は外部からのこれらのコード類である。
【0014】
このように、テレビ部6をテーブル上の適所に配置したので患者等の使用者のテレビ鑑賞や、オーバーベッドテーブルの本来の使用目的である食事をすることができ、オーバーベッドテーブルを通常の使用状態の足先側のベッドに掛け渡した際に、患者や使用者側にテレビ画面を向け、前面部にはカードリーダ部7を設け、そのプリペイドカード挿入口71及び表示部72を配置したので、患者や使用者がテレビ鑑賞やリモコン等やプリペイドカードのカード操作が容易にできる。
また、本実施例のオーバーベッドテーブル1が1カ所の操作部の1回の操作でオーバーベッドテーブルが簡単容易に床に対して固定できることから、大型のテレビを据え付けても、オーバーベッドテーブル1が移動することがなく、安全である。
【0015】
(背面部、棚部、引き出部)
前述したように、テーブル部11の背面18(
図2参照)の左側には引き出し部181がベッドの後方へ引き出すように設けられ、右側にはカードリーダ部7等の電気機器やテレビ部のアンテナワイヤーや電源コード等が収納される収納部182が設けられ、背面には複数の電源コンセント183が設けられ、中央部には書類等を置く棚部184が設けられている。
すなわち、オーバーベッドテーブル1は、通常、
図2に示すように、ベッドDの前後端の近傍位置D1に配置することが多く、この場合に背面部18は患者や使用者にとっては死角となるが、医師や看護師にとっては処置や操作しやすい場所になり、この背面部に棚184や引出部181を配置したので、医師や看護師がオーバーベッドテーブル1を患者等に関する書類の収納をすることができ、また、医療器具等の電源コンセット183を背面部に設けたので、電源を必要とする医療器具等をオーバーベッドテーブルに載せて使用することができ、極めて使用勝手のよいオーバーベッドテーブル1となる。
もっとも、従来のオーバーベッドテーブルは一括して簡単にキャスターをロックする有効な機構が開発されていなかったために、キャスターロックが煩わしいことと相まって、前述したように、あまり重量のある大型テレビや医療機器をオーバーベッドテーブルに載せることは、安全性の面から敬遠されてきたのが現状であるが、本実施例オーバーベッドテーブル1においては、このような心配がなく、重量のある大型テレビや医療機器を載せることができる。
【0016】
(テーブル部分、及び、支柱部分)
図1及びその背面図である
図2は、オーバーベッドテーブル1のキャスター操作部2のハンドル部21を降ろし平坦にして、オーバーベッドテーブル1が双輪キャスターのロック状態の全体を示す図で、
図3及びその右側面である
図4は、キャスター操作部2のハンドル部21を挙げて、双輪キャスターをロック解除状態にしてオーバーベッドテーブル1が移動可能状態である全体を示す図で、
図5は、オーバーベッドテーブル1のテーブル部11を下降させて双輪キャスターをロック状態の全体を示す図である。
これらの図に示すように、オーバーベッドテーブル1は、病院等のベッドD上には、ベッドDを挟んで配置され、このオーバーベッドテーブル1は、主に上部のテーブル部11とこれを支える一対の支柱部12(12a,12b)とそれに対応する脚部13(13a,13b)とから構成されている。
【0017】
テーブル部11の上面は平坦で水平に保たれ、食事等に使用されるようになっており、このテーブル部11は1対の伸縮自在な支柱部12で両端支持され、この一対の支柱部12は、通常、ベッドD上に位置するテーブル部11の高さを調整するため、伸縮自在になっており、高さ調節レバー121によって、支柱部12の長さを調整している。
支柱部12は、上部の四角柱のテーブル支持部122と、この支持部122の内側に嵌合しスライドする小径四角柱の基礎部123からなり、高さ調節レバー121によって支持部122への基礎部123の嵌合度合い、つまりテーブル部11の高さ調整するようになっている。
なお、テーブル部11の天板11aの上面縁の全周には、
図24で後述するように、天板11aよりも多少高い縁部111を設けて、オーバーベッドテーブル1が多少揺れて容器から液体が溢れてテーブルにこぼれても、テーブルから垂れないようにしてもよい。
【0018】
この基礎部123は、脚部13に設けられた支柱固定部材131で固定する。この支柱固定部材131は、使用するオーバーベッドテーブル1の各種の支柱部12の形状に合わせて適宜設計すればよく、通常、多くのオーバーベッドテーブルに適用可能とすることができる。
また、
図1に示すように、この支柱固定部材131はキャスター取付枠本体132,132a,132bから外側に突出しているが、これは支柱固定部材131をベッドDの外側に配置するものの、キャスター取付枠本体132,132a,132bはベッドDの下側に位置するように配置し、なるべくベッドDの外側に突出しないようにして、使用者がつまずかないようにしている。
一対の脚部13は、それに対応する支柱部12(12a,12b)とテーブル部11によって連結され、各脚部13は、それぞれキャスター取付枠本体132a,132bとから構成され、脚部13a(
図1参照)のキャスター取付枠本体132aの両端近傍には双輪キャスター4a,4bが取り付けられ、脚部13b(
図1参照)のキャスター取付枠本体132bの両端近傍にも双輪キャスター4c,4dが取り付けられ、オーバーベッドテーブル1の移動の際には、双輪キャスター4a〜dの全てが一括してロック解除状態となり、ロック状態ではその場所に固定されてオーバーベッドテーブル1が移動や転倒しないような形状をしている。
【0019】
(ワイヤー収納機構)
図6、
図7に示すように、テーブル部11のベッド使用者の患者等がベッドにいても手の届く範囲のテーブル縁部111の適所(
図1右側端部)には、縦方向にキャスター操作部2が設けられている。このキャスター操作部2は、患者や看護師等が操作し易い位置がよい。
図7に示すように、テーブル部11は中空部112が形成され、操作ワイヤー31や分岐ワイヤー33等の操作伝達ワイヤー30(31,33)とワイヤー分岐盤32を収納するワイヤー収納機構14が設けられ、このワイヤー収納機構14のほぼ中央には、1本の操作ワイヤー31を4本の分岐ワイヤー33に分岐するワイヤー分岐盤32が設けられ、このワイヤー分岐盤32の一方はキャスター操作部2に
図7の点線Cのような状態で操作ワイヤー31によって接続し、他方は4本の分岐ワイヤー33と接続している。
【0020】
分岐ワイヤー33は、双輪キャスター4a、4bに接続する2本の分岐ワイヤー33a,33bと、双輪キャスター4c、4dに接続する2本の分岐ワイヤー33c,33dとに分かれ、それぞれ、テーブル支柱部12,12a,12b内に収納されているワイヤー案内部を形成する伸縮パイプ15へ連なるワイヤー案内孔151に挿入されている。
前記伸縮パイプ15は、上部のやや直径が大きい中空の上部パイプ15aと、下部のやや直径が小さい中空の下部パイプ15bとから構成され、下部パイプ15bを上部パイプ15aの中空内側孔に挿入し、上下にスライド可能とし、上部パイプ15aの上端をテーブル部11の底部に固定し、下部パイプ15bの下端を脚部13の上面に固定し、この中空部分に2本の分岐ワイヤー33を挿入案内している。なお、上部パイプ15aの上端は、テーブル部11のワイヤー案内孔151との接合近傍は弛緩する分岐ワイヤ33の出入が容易となるように、湾曲状の案内部(図示せず)を設けている。
2組み分岐ワイヤー(33a,33b)と(33c,33d)は、テーブル部11の昇降に伴い弛緩と弛緩の無い状態を繰り返すが、テーブル部11が下降した場合は、
図7の実線Aのような状態になり、弛緩した部分を中空部112で収納し、テーブル部11が上昇した場合は、
図7の一点鎖線Bのような状態になり、ほぼ弛緩しない状態の分岐ワイヤーを貯留する。なお、中空部112の適所には、分岐ワイヤー33が弛緩する際にスムースに湾曲するように案内壁141が適所に配置されている。
【0021】
ワイヤー案内部を形成する伸縮パイプ15は、テーブル部11の昇降に伴う伸縮するテーブル支柱部12の内部に収納されているが、且つ、テーブル支柱部12に平行に設けられ、その高さは伸縮するテーブル支柱部12と同期して同じ高さ(長さ)である。勿論、この伸縮パイプ15は、要は、テーブルの昇降に伴う分岐ワイヤー33がテーブル支柱部付近で弛緩することがなく、絡まることもなく操作がスムースであればよい。
テーブル部11のキャスター操作部2からのワイヤー分岐盤32で4つに分岐され、更に、2組み分岐ワイヤー(33a,33b)と(33c,33d)とに分かれ、それぞれ伸縮パイプ15(15a,15b)に挿入され、
図8に示すように、伸縮パイプ15の下端のワイヤー連通用貫通孔134a,134bから脚部13(13a,13b)の導かれ、双輪キャスター4a〜dに接続される。
ところで、キャスター操作部2をテーブル部11に設けることによって、ワイヤー分岐盤32をテーブル部11の中空部112に自由位置に固定することができるので、各双輪キャスター4a〜dまでの分岐ワイヤー33の長さがほぼ等しくでき、双輪キャスターのロック及びロック解除作動を均一に働かせることができる。
【0022】
このテーブル部11上のキャスター操作部2を操作することにより、詳細には後述するが、インナーワイヤーとアウターワイヤーの同軸ワイヤーを用いた操作伝達機構3を介し、4個の双輪キャスター4のそれぞれの車輪ロック機構5を操作する。この操作用のワイヤーは、自転車等のブレーキワイヤーと同等のもので、芯のインナーワイヤーとこれを被覆し両端を固定するアウターワイヤーからなるもので、大凡、この際にキャスター操作部2のハンドル部21(レバー)を引き挙げることにより、インナーワイヤーを引っ張り双輪キャスター4の車輪ロック機構5のロックを解除し、逆に、ハンドル部21を下げて車輪ロック機構5のバネによりロックする。
【0023】
(キャスターのキャスター操作部)
以下の操作構造の詳細を説明する。
図1及び
図2は、キャスター操作部2で4個の双輪キャスターをロック状態にした外観斜視図で、
図3及び
図4が解除状態にした外観斜視図であるが、このキャスター操作部2の詳細から説明する。
先ず、4個の双輪キャスターのロックを解除した状態の
図3及び
図4について、その内部機構を示す
図9を参照して説明すると、キャスター操作部2は主にハンドル部21、解除維持機構22、解除ボタン23、枠体25、スライドカバー26から構成されている。
図9において、ハンドル部21は回動軸211を中心に回動胴部212が回動し、回動胴部212の外周一部に凸部213が設けられ、この凸部213が枠体25の胴体収納部251に設けた溝部252の回動規制範囲で規制される。
回動胴部212の回動軸211の近傍の回動する部位には、操作伝達機構3の操作ワイヤー31の操作部側のタイコと呼ばれるインナーワイヤー312の末端部311を係止する係止部214が設けられ、この係止部214にインナーワイヤー312の末端部311を係止し、インナーワイヤー312自体の取付固定部314を枠体25の適所に設けられた係止部256に固定されており、端末部導入溝215に沿って末端部311を係止部214に係止するようにしている。ハンドル部21(正面)には手の指が挿入できる把持部217が設けられ、
図9に示すように、ハンドル部21の把持部217に手をかけ引き上げると、係止部214も上方に回動し操作ワイヤー31の末端部311も引き寄せられる(
図9で左側に引き寄せられる)。
【0024】
スライドカバー26を手前に移動させ、ハンドル部21が引き上げられると、回動胴部212の下側の周面に設けた扇形歯車216が
図9で時計方向に回動し、この扇形歯車216の回動に伴って扇形歯車216に噛み合うアイドル歯車218を反時計方向に回転させる。このアイドル歯車218は、枠体25に設けられた軸2181を中心に回転するが、アイドル歯車218の下側には左右にスライドするスライド部材219が設けられ、スライド部材219の歯列2191と噛み合ってスライド部材219を
図9で右側に移動させる。なお、スライド部材219は枠体25に設けられた規制部253によって左右方向にのみ移動するように規制される。
このスライド部材219は右側端2192で押し圧バネ2193によって常時左側に押されているが、ロック解除の場合は、ハンドル部21を挙げることにより、この押圧バネ2193の押圧力と順方向にスライド部材219は左側に移動する。
スライド部材219の左端部2194の近傍には、ロック部材係止孔2195が設けられ、このロック部材係止孔2195が所定の距離を移動すると、解除維持機構22のロック部材221の下端の先端部2211がこのロック部材係止孔2195に嵌合する。
この解除維持機構22は、回転軸222を中心にして回動部材223が設けられ、一端2231は解除ボタン23の底面に設けられた操作桿231の下端部232に接しており、他端2232はロック部材221を貫通孔2233内の支持軸2234で軸支している。
前述したロック部材221は、枠体25に設けられ規制部254によって上下方向にのみ規制され、ロック部材221の上端部2212は常時下側に押圧する押圧バネ2213が設けられていいる。
【0025】
また、スライド部材219の側部2196には、後述するように、ロック解除状態からロック状態に移行する際に、ハンドル部21の把持部217が急激に降下しないようにショックアブソーバー2197が枠体25側とショックアブソーバー2197と間に設けられている。
したがって、ハンドル部21は、ロック部材221の先端部2211がロック部材係止孔2195に嵌合するまで引き上げ、このロック部材係止孔2195の嵌合によってこの位置を維持することになる。すなわち、インナーワイヤー312を引っ張った状態を維持することになり、結果として、双輪キャスター4内に設けたノック部材531(
図20参照)を押し下げ、ノック部材531に連動した基部541の歯部542をキャスターの内歯車45(
図16参照)から引き下げ嵌合を解除して、
図1、2、5の通常状態のロックを解除し、この解除状態を維持することになる。
解除維持機構22は解除ボタン23と協働するが、双輪キャスター4をロック解除状態にするには、先ず、キャスター操作部2のハンドル部21を上方に挙げるが、この状態で、解除ボタン23の先端は、枠体25の上面部255から突出した状態になる。
なお、解除ボタン23は、解除表示ボタンとして、より効果的に機能させるため、危険状態を喚起するために目立つ色彩、例えば、赤色、緑色とすればよい。
【0026】
次に、
図1,2,5に示すように4個の双輪キャスター4の車輪部41をロック状態にした場合を、その内部機構を
図10を参照して説明すると、解除ボタン23の上端操作部233を下に押圧すると、解除ボタン23の底部に設けられた操作桿231の下端部232が、回動部材223の一端2231を下に押し、回転軸222の反対側の他端2232を、押圧バネ2213の下側への押圧力に抗して上昇させ、ロック部材221の先端部2211をスライド部材219のロック部材係止孔2195から抜く。
先端部2211の係合が解除されると、スライド部材219は
図10で常時左側の押圧する押圧バネ2193によりスライド部材219は左側へ移動し、歯列2191、アイドル歯車218、扇形歯車216を介してハンドル部21は
図10のように降下し、ハンドル部21の上端面がキャスター操作部2の枠体上端部135の表面とほぼ同じ水準で平坦になり、スライドカバー26を元に戻し(
図1で後方に移動)、
図1,2,5及び、
図10の状態になる。このように、スライドカバー26で覆われている状態では、オーバーベッドテーブル1の双輪キャスター4はロックされて、床に固定され安全な状態であることになる。
また、バネの引っ張り力により急激にハンドル部21が戻り騒音等を生じる場合には、
図9、
図10で示されるショックアブソーバー2197によって戻り速度を緩和させてもよく、バネと同様に、このショックアブソーバー2197の一端は枠体25の適所に固着され、他端はスライド部材219の適所に固着されている。
【0027】
(操作伝達機構)
操作伝達機構3は、
図11で示すように、芯のインナーワイヤーと同軸で被覆部でもあるアウターワイヤーとからなる同軸の所謂ロックワイヤーを用いたもので、主に操作ワイヤー31とワイヤー分岐盤32と4本の分岐ワイヤー33とから構成される。
前述したキャスター操作部2に取り付けられる操作ワイヤー31は、その末端部Aの拡大図の
図12に示すように、芯のインナーワイヤー312、それを覆うアウターワイヤーである被覆部313とからなり、インナーワイヤー312の先端には円柱状の所謂タイコと呼ばれる末端部311が設けられ、被覆部313の先端には取付固定部314が設けられ、インナーワイヤー312が取付固定部314に対して、末端部311が進退可能に構成され、他方の末端部316(
図14参照)はワイヤー分岐盤32のスライダー322(
図14参照)に接続される。
ワイヤー分岐盤32からの4本の分岐ワイヤー33の長さはほぼ等しく、その1本の
図11での末端部Bの拡大図である
図13(a)の側面図とその上面図の
図13(b)に示すように、芯のインナーワイヤー332、それを覆う被覆部333からなり、ワイヤー332の先端には中心に係合孔を有する末端部331が設けられ、被覆部333の先端には取付固定部334が設けられ、インナーワイヤー332が取付固定部334に対して、末端部331が進退可能に構成され、他の末端はワイヤー分岐盤32に接続される。
【0028】
ワイヤー分岐機構のワイヤー分岐盤32は、
図14(a)(b)に示すように、操作ワイヤー31と4本の分岐ワイヤー33を接続するもので、
図14(a)のワイヤー分岐盤32の蓋321(
図14(b))を開けた内部は、スライダー322が左右移動可能に収納されている。ワイヤー分岐盤32の操作ワイヤー31側の側板323に操作ワイヤー31の取付固定部315を取り付け、前記スライダー322の操作ワイヤー31側にはワイヤーの末端部316の嵌合部3221が設けられ末端部316を嵌合する。
また、ワイヤー分岐盤32の4本の分岐ワイヤー33側の側板324に分岐ワイヤー33の取付固定部335を取り付け、前記スライダー322の分岐ワイヤー33側には4本のワイヤーの末端部336の嵌合部3222が設けられ末端部336を嵌合する。このようにして、操作ワイヤー31の端末部316が引っ張られると、スライダー322が側板323側に移動(
図14(a):右方向)するが、スライダー322に嵌合される4個の末端部336も一括して側板324から離れるように移動(
図14(a):右方向)する。
【0029】
図15(a)の
図14(a)でのa−a線断面図、
図15(b)の
図14(a)でのc−c線断面図に示すように、このスライダー322は4本のインナーワイヤーの末端部336の移動距離が同じでなければ、正確に4個の双輪キャスター4をロックすることができない。このため、スライダー322の上面の移動方向に平行な山部3223が複数設けられ、
図14(b)の蓋321を嵌め込んだ側面図に示すように、山部3223を左右方向に案内する案内溝3211を蓋321に設けて、正確にスライダー322がワイヤー軸線に対して平行移動するようにしている。勿論、この逆に、平行な山部を蓋321に設け、対応する案内溝をスライダーに設けてもよい。なお、蓋321の嵌合側面には固定凸部3212はワイヤー分岐盤32の内壁に挿入固定するためのものである。
したがって、スライダー322をインナーワイヤー312,332の前進後退方向と平行に移動させるための平行進退移動手段として、ワイヤー分岐盤32の内側の両側壁は勿論こと、これだけでは、平行移動には不十分であるので、スライダー322の上面には平行な山部3223が複数設けられ、蓋321側にも山部3223を左右方向に案内する案内溝3211が設けられている。
【0030】
このように、操作ワイヤー31の進退移動がワイヤー分岐盤32を介して4本の分岐ワイヤー33に伝達される。また、操作伝達に同軸ワイヤーを用いたので、
図8に示すように、オーバーベッドテーブル1の脚部13の4個の双輪キャスター4の位置を自由に設定でき、また、リンク機構の組み合わせや、前掲特許文献1のようなテーブル全体を浮かせるための接地部材とは異なり、構造も簡単で制作費も安価で、保守も容易になる。更に、1本の操作ワイヤー31を4本に分岐して用いているので、極めて簡単な構成で4個のキャスターを同時に正確にロック状態及びロック解除状態にでき、ワイヤー分岐盤32も薄く扁平に成形できるので、ワイヤー分岐機構の高さも低く薄くできるので、オーバーベッドテーブル1の中空部112内に収納でき、或いは、テーブル部11の底部に取り付けることもできる。
言い換えれば、キャスター操作部2からの1本の操作ワイヤー31を4本の分岐ワイヤー33に分岐して4個の車輪ロック機構5であるキャスター操作機構に接続し、1本の操作ワイヤー31のインナーワイヤー312の前進/後退を4本の分岐ワイヤー33のインナーワイヤー332の前進/後退に伝達しており、4本の分岐ワイヤー33に分岐するためにワイヤー分岐機構としてワイヤー分岐盤32を設け、ワイヤー分岐盤32には4本の端末部331を並列にして固定するスライダー322を設けて、スライダー322をインナーワイヤー312,332の前進後退方向とて正確に平行に移動伝達できる。
【0031】
(双輪キャスターの配置)
前述した
図8は、オーバーベッドテーブル1の脚部13の裏面の平面図で、ベッドDを挟んで一対のキャスター取付枠本体132a,b及び一対の双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)が取り付けられ、本実施例ではキャスター取付枠本体132a,bはベッドD側に引き込まれるように配置されている。
これらのキャスター4の外観概略は、
図16に示すようなもので、キャスター4の構成の詳細は後述するが、キャスター操作機構である車輪ロック機構5のロック機構枠体51の両側に一対の車輪41A、41Bがそれぞれ回転可能に軸支されており、ロック機構枠体51の上面には、キャスター4が取付枠に対して旋回可能に軸支するための旋回支持部52が設けられ、旋回支持部52の軸心Xと同軸に、上下動するノック部材531が設けられており、ノック部材531を押圧バネ543により押し上げられると双輪キャスター4がロックされ車輪41は回転することができない。逆に、ノック部材531の押し上げを解除して下方に押し下げると、双輪キャスター4の内歯車45への歯部542が離反しロックが解除され、双輪が自由に回転することができる。
ところで、本実施例で使用する双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)は、双輪の巾が単輪よりも広いので、単輪キャスターに比べて走行安定性があり、また、双輪の回転をロックすると進行方向は勿論のこと、双輪の巾が広いことから旋回阻止できる。
したがって、本実施例のように、4箇所のキャスターをロックしようとした場合は、仮に、4箇所のうち一箇所のキャスターのロック機構が不完全、或いは、破損した場合でも、オーバーベッドテーブルを確実に固定及び解除できる。
【0032】
(キャスターの車輪部)
上述した双輪キャスター4の車輪部41を説明するが、
図16に示すように、4個のそれぞれの双輪キャスター4の両側に1個ずつ車輪部41(41A,41B)が配置され、その内の片方の車輪部41は、
図17に示すように、車輪軸42は、車輪ロック機構5(
図18参照)の車輪軸受部511に回転自在に軸支され、車輪部41の車輪軸固定部43に軸支される(車輪軸固定部43は、車輪を回転自在に軸支する構成でもよい。)。車輪部41の外輪44はゴム製で振動を吸収し走行を滑らかにし雑音を軽減するとともに、床へのグリップを強くしている。
また、双輪キャスター4の車輪部41の内側の外輪44近傍には、車輪軸と同軸心の内歯車45が形成され、後述するロック歯部542が押圧バネ543により上昇した際には、内歯車45に歯部542が噛み合い車輪部41の回転を阻止する。
【0033】
(キャスターの車輪ロック機構)
本実施例のキャスターは、
図16でも説明したように、車輪ロック機構5のロック機構枠体51を挟んで、所定の間隔を持った車輪41A,41Bの双輪キャスターであり、移動時には単輪キャスターに比べて走行に安定性がある。また、車輪41(41A,41B)の両車輪(双輪)がロックすると走行が出来なくなり、キャスターの旋回も制限されて、更に、本実施例のように、オーバーベッドテーブル1の一対の脚部13の枠体132の両端の2箇所の双輪キャスター4a,4b、及び、双輪キャスター4c,4dの各車輪41A,41Bが固定されると、キャスター4自体の旋回を固定しなくても、車輪の回転の固定だけでオーバーベッドテーブル1は、ほぼ完全に固定されることを見出し、この知見を基礎とするものである。
【0034】
先ず、上記のキャスター取付枠本体132に配置する双輪キャスター(4a〜4d)の車輪ロック機構5について、
図18乃至
図23に沿って更に詳しく説明する。
図18は、キャスターロック状態の図で、ノック部材531が、分岐ワイヤー33が弛緩し、コイルバネ567によりスライダーカム56が図で左側に移動し、ノック部53が上方に上がった状態の図であり、
図18(a)は車輪ロック機構5の横断面図で、
図18(b)は
図18(a)の側断面図である。また、
図19は、
図19(a)のa−a線での断面図であり、歯部542が双輪キャスター4の内歯車45に嵌合してロックした状態の図である。
図20は、歯部542を内歯車45から離反させて、双輪キャスター4のロック解除状態の図で、ノック部材531が分岐ワイヤー33により引っ張られ、コイルバネ567の引張力に抗してスライダーカム56が図で右側に移動し、また、キャスター内部の押圧バネ543に抗して、歯部542が下った状態の図、即ち、キャスターのロック解除状態の図で、
図21は
図20(a)の上方からの平面図である。
【0035】
図18(a)(b)は、オーバーベッドテーブル1の通常の状態、すなわち、
図1(
図2,
図5,10図)でハンドル部21を下げて双輪キャスター4をロック状態にした図で、車輪ロック機構5の枠体51内には、キャスター取付金具55に対して双輪キャスター4が旋回可能なように旋回支持部52が軸支され、旋回支持部52の内側に上下動するノック部53が設けられ、ノック部53に続いて車輪歯噛合ロック部54が押圧バネ543を介して連結されている。車輪歯噛合ロック部54は、ノック部材531を上下動させるスライダーカム56のカム面561に沿って、歯部542が押圧バネ543の押圧力によって、ノック部53が上昇している状態では、歯部542も上昇していて、この歯部542が車輪部41の内側の内歯車45に嵌合して、車輪41A,41Bの回転を阻止し、双輪キャスター4をロック状態となる。
【0036】
ここで、各部の構成を更に詳細に説明するが、先ず、ロック機構枠体51はプラスチックで成型されたもので、
図18に示すように、中心に車輪軸受部511が設けられ、ロック機構枠体51の左側には、旋回支持部52(ノック部53)を挿入する円筒型の嵌合部512と収納部513が配置され、嵌合部512のキャスター取付金具55に近接する部分は双輪キャスター4の旋回をスムーズにするために突出輪514が設けられ、前記車輪軸受部511の上側には上下動する車輪歯噛合ロック部54及び押圧バネ543を収納する収納部515が配置されている。この収納部515を含めた双輪キャスター4の嵌合部512と旋回支持部52とを回動自在に強固に支持するが、旋回支持部52はキャスター取付金具55側に強固に固着している。
また、収納部513は下側面及び片側面が開放口となっており(必要に応じて、防塵のための蓋部を設けてもよい。)、これは組み立て作業で、キャスター取付金具55に固着される旋回支持部52を嵌合部512に回動自在に、旋回補助ワッシャー523及び止め金具(固定スナップリング)524を取り付ける際のためのものである。
旋回支持部52を嵌合部512に挿入した後、旋回支持部52の下部末端には、旋回補助ワッシャー523を挿入し、旋回支持部52の下端に設けられた止め金具(スナップリング)用の固定円周溝525に、旋回支持部52を固定するためスナップリング524を係止して、旋回支持部52からロック機構枠体51が抜け落ちないようにしている。
【0037】
更に、ノック部53のノック部材531の下端部に車輪歯噛合ロック部54の基部541を取り付けるが、この基部541は
図18に示すとおりに、車輪軸42を囲むようにコの字状(或いは、反対側から見れば逆コの字状)であり、下部水平部5411と上部水平部5412とこれを連結する連結部5413とから構成され、下部水平部5411の上面はノック部材531の下部先端部533により押圧され、又は解除(
図20では解除)される受圧部を有し、上部水平部5412は歯部542が固着されるとともに、外方に拡がるように押し圧するバネ543の上端部に係合する上部バネ係合部544を有する。なお、押圧バネ543の下端部はロック機構枠体51側に設けた下部バネ係合部545に係合し、常に、上部水平部5412の下面の上部バネ係合部544を上方に押圧している。
【0038】
(旋回支持部及びノック部)
次に、
図18での嵌合部512と旋回支持部52とノック部材531について説明する。
旋回支持部52の固定支持筒部材521は金属製の円筒(パイプ)で、その上端部を金属のキャスター取付金具55の底板554に取付縁部522の上端を溶接等で固着する。ここで、双輪キャスター4の旋回とは、
図16に示されるように、通常の双輪キャスター4の接地箇所X2の垂直線とノック部材531の軸心の接地箇所X1とが偏心することによって、オーバーベッドテーブル1を移動させる際に、自動的に双輪キャスター4の進行方向が移動方向に向くようにしたものである。当然、双輪キャスター4がロック状態では、双輪キャスター4が回動しないことによって旋回は阻止されるが、逆に、オーバーベッドテーブル1の移動時のロック状態で無い場合には自由に旋回させなければならない。そのため、旋回支持部52とキャスター取付金具55の底板554との間に突出輪514を介在させて、ロック機構枠体51の上面での旋回をスムーズにさせるようにしている。
旋回支持部52は、キャスターの旋回軸を構成するとともに、ノック部材531を嵌合して収納するが、このノック部53は旋回支持部52の同心上の嵌合部512に上下動が自在に嵌合されている。
【0039】
(車輪歯噛合ロック部)
基部541は、
図22に示すように、基部541の断面コの字状(反対側からは、逆コの字状)の上部水平部5412の下面の(
図21での)中央部分には、押圧バネ543の上端を係止する上部バネ係合部544を設け、さらに、双輪キャスター4の一対の車輪部41の各内歯車45に嵌合するように左右に一対の2本の歯部542a,bが固着してあり、外側に拡がるような押圧する押圧バネ543で、常に上方に押し上げる構成になっている。
したがって、車輪歯噛合ロック部54の歯部542a,bは、
図17、
図19に示すように、ノック部材531の規制がなければ、常に、押圧バネ543によって上側に押圧され上昇するようになっており、オーバーベッドテーブル1をベッド近傍に設置した通常の場合は、歯部542a,bは押圧バネ543によって各双輪キャスター4の内歯車45に嵌合して、双輪キャスター4の回転を阻止することでロック状態になり、オーバーベッドテーブル1の移動を不可能にしている。
なお、車輪歯噛合ロック部54の上下動は、ロック機構枠体51に設けた車輪歯噛合ロック部54の収納部の案内溝516の側壁に沿って降下・上昇する。
また、双輪キャスター4の車輪部41の内側の外輪44近傍には、車輪軸42に同心の内歯車45が形成され、歯部542a,bが上昇した際には、内歯車45に歯部542が噛み合い車輪部41の回転を阻止する。
【0040】
(キャスター取付金具とスライダーカム)
図20乃至
図23におけるキャスター取付金具55とノック部材531を操作するスライダーカム56について説明する。
端末操作部3のハンドル部21(
図9,10を参照)を上方に挙げる操作によって、操作ワイヤー31が引っ張られ、ワイヤー分岐盤32(
図14を参照)によって4本の分岐ワイヤー33も引っ張られる。更に、この各分岐ワイヤー33a,33b,33c,33dのインナーワイヤー332が引っ張られるが、これをノック部53の動きに変換するのがキャスター取付金具55に装着されたスライダー状のカム機構を有したスライダーカム56である。
このスライダーカム56は、主に、
図23に示すように、全体形状は扁平で下面が傾斜するカム面561が設けられ、スライダーカム56が移動する方向の一端には分岐ワイヤー33の末端部331を接続し、キャスター取付金具55の前板551(
図21参照)に取付固定部334を装着し、操作ワイヤー31及び分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d:
図11,14を参照)に引っ張られることにより、全体として水平移動するようにしている。
図20、
図21、
図23に示すように、中心部にはスライダーカム56の水平上面563に平行して案内長孔564が設けられ、この案内長孔564にはキャスター取付金具55の両側板552に固定された案内軸565が嵌合している。
【0041】
係止部562とは反対側の係止部566には縮む方向のコイルバネ567の一端が係止され、コイルバネ567の他端はキャスター取付金具55の背板553の係止部568に係止され、このコイルバネ567は操作ワイヤー31及び分岐ワイヤー33が弛緩された状態では、スライダーカム56を
図21の位置に戻すようにしている。また、
図24、
図26に示すように、案内軸565の軸線はノック部材531の上部先端部532の軸線と交わるようにしている。
なお、
図21において、キャスター取付金具55(全4個)の両側板552には枠体取付部555が設けられ、キャスター付き枠体132a,bの両端部に、ボルト孔556にボルト(図示せず)等を挿入して固着する。
【0042】
したがって、スライダーカム56のカム面561にノック部材531の上部先端部532が接触するようになっているが、分岐ワイヤー33が引っ張られているロック解除状態では、
図20、
図23に示すように、カム面561は左側から右側にかけて移動するようになっているので、最も下の位置である最下点5611にあり、ノック部材531を下方に押し下げた状態になる。
逆に、
図18、
図19に示すように、操作ワイヤー31及び分岐ワイヤー33が弛緩された状態では、コイルバネ567により、スライダーカム56は、
図18、
図19のように左側に移動し、カム面561は最も高い位置である最上点5612にあり、歯部542の押圧バネ543の作用により、ノック部材531の上部先端部532も上昇し、歯部542も上昇して、双輪キャスター4の内歯車45に嵌合し、双輪キャスター4をロック状態にする。
この扁平のスライダーカム56は、カム面561の最下点5611から最上点5612がノック部材531の上部先端部532を移動するように作動するが、スライダーカム56の分岐ワイヤー33の末端部331の移動距離Z(
図18参照)は、カム面561の最下点5611から最上点5612の距離Y(
図23参照)とほぼ同じとなる。
したがって、カム面561の傾斜角度により、最下点5611から最上点5612の距離が変えられるので、キャスター取付金具55の高さを低くしたままで、分岐ワイヤー33の移動距離(ストローク)に合わせることができる。
【0043】
(キャスターのロック及びロック解除の作動)
本実施例のオーバーベッドテーブルを固定する末端操作装置は、以上のような構成であるので、大凡、次のように作動する。
オーバーベッドテーブル1の脚部13に設けたキャスター4のロック解除のハンドル部21は、
図1(
図2,
図5)に示すように、通常の設置状態では、キャスター4がロックされ、オーバーベッドテーブル1を移動する際には、
図3(
図4)に示すように、解除維持のためのロック部材221がハンドル部21のスライド部材219のロック部材係止孔2195に嵌合する位置までハンドル部21を上方に持ち上げ、この時の解除維持のためのロック部材221の下降移動によって、ロック解除表示ボタンである解除ボタン23を突出させ、キャスター4のロックを解除する。
オーバーベッドテーブル1のキャスター4を元のロック状態にするには、ロック解除表示ボタンである解除ボタン23を下側に押して解除維持するロック部材221を上昇移動させ、ハンドル部21がスライド部材219の押圧バネ2193やキャスター4内のロック機構によるワイヤーの引張力、或いは、協働するコイルバネ567(
図18(a))によって降下するので、元の
図1に示す状態にする。この双輪キャスター4のロック/解除状態の作動について、更に詳しく説明する。
【0044】
[双輪キャスターのロック状態]
双輪キャスター4のロック状態は
図18に示したような状態である。
オーバーベッドテーブル1をベッドの近傍に配置した通常の状態で、ハンドル部21と解除ボタン23とが共に下方の収納位置に納められ、オーバーベッドテーブル1のキャスター操作部2における解除ボタン23の上端操作部233は、枠体25の操作面における上面部255とほぼ同等の高さにある(
図10参照)。
分岐ワイヤー33は結果的にキャスター内の押圧バネ543によって歯部542をキャスターの内歯車45に嵌合させるとともに、押圧バネ543にノック部材531も上方にあり、分岐ワイヤー33も弛緩状態にある。この場合の状態は長時間に亘るが、ハンドル部21がワイヤー31を常に引っ張る状態に維持する必要がないので、各ワイヤーは緊張状態ではなく(弛緩状態)、経年でワイヤーが伸びるようなことがないことから、装置の保守も容易になる。
[双輪キャスターのロック解除状態]
双輪キャスターのロック解除状態は
図18に示したような状態である。
この場合には、オーバーベッドテーブル1を移動する状態で、ハンドル部21を挙げて解除ボタン23を突出させ、操作ワイヤー31を引っ張り上げて緊張状態にし、分岐ワイヤー33によってノック部材531を下方に押し下げ、結果的にキャスター内の押圧バネ543に抗し、歯部542をキャスターの内歯車45から開放する。したがって、ハンドル部21が挙がっている状態では、双輪キャスターのロック解除状態にあり、オーバーベッドテーブル1は移動可能となる。
【0045】
本実施例は以上の説明したような構成であるので、一回の操作でオーバーベッドテーブル1の全てのキャスター4をロック状態及び解除状態にでき、従来のように各キャスター毎にロックをする必要がなく、特に、忙しい看護師や使用者の労力を軽減することができ、テーブル部11にキャスター操作部2を設けたので、ベッド使用者の患者等がベッドにいても手の届く範囲に配置でき、患者や看護師が簡単に操作出来る。さらに、キャスター操作部2がテーブル部11にあるので双輪キャスター4のロック状態及び解除状態を一目で確認できる。
また、ロック解除状態ではハンドル部21を上方に引き上げて突出するようにしたので、通常の押圧する操作と異なり、誤って、キャスターのロック状態及び解除状態とすることがなく、かつ、従来のようにペダルを上にあげる操作や直接上に引っ張る操作が無く、無理のない操作でオーバーベッドテーブル1のキャスターを固定及び解除できる。また、解除維持機構22の解除ボタン23を操作しなければならないことにより、誤って使用者である患者や付添人などが双輪キャスターのロック解除の操作を行ってしまうということもない。
【0046】
また、解除ボタン23が下降して、スライドカバー26で覆われている平坦な場合には双輪キャスターがロック状態にあることになり、安心して、オーバーベッドテーブル1を利用することができ、逆に、双輪キャスター4が解除されている危険な状態では、解除ボタン23が突出し、また、スライドカバー26が移動されハンドル部21が突出した状態にあるので、オーバーベッドテーブル1から離れていても双輪キャスター4の解除状態を一目で確認でき、オーバーベッドテーブル1が移動可能な不安定な状態であることを、注意喚起することができる。このように、危険表示としてハンドルに加えて、解除ボタン23及びキャスターの解除状態を表示する機能とすることで、二重の危険防止表示となる。勿論、この状態では、後述する別実施例での把持部19に患者や使用者が掴まることは禁止される。
更に、操作部をオーバーベッドテーブル1の縁部111にキャスター操作部2を設けたことで、上方位置の高さになり床面の双輪キャスター4を固定する際に看護師等が中腰になり床へ手を伸ばす必要もなく操作できる。
【0047】
更に、操作伝達ワイヤー30を用いた操作伝達機構3としたので、これまでのリンク機構の組み合わせと異なり、構造も簡単で制作費も安価で、部品点数が少ないことから保守も容易になり、1本の操作ワイヤー31を4本に分岐して用いているので、極めて簡単な構成で4個のキャスターを同時に正確にロック状態及び解除状態にでき、ワイヤー分岐機構の高さも薄く小さくできるので、中空部112の高さを薄くすることができる。
また、テーブル部11の昇降に伴う分岐ワイヤー33の弛緩を吸収するために大きなスペースを必要とするが、この収納部(貯留部)をテーブルの下に設けたので、全体としてコンパクトになり、デザイン的にも制約がなくスッキリとしたデザインが可能となり、各キャスターまでの分岐ワイヤー33の長さがほぼ等しくでき、キャスターのロック及びロック解除作動が均一に働かせることが可能となる。
【0048】
また、テーブル支柱部にワイヤー案内部となる伸縮パイプ15を設けたので、テーブル部11の昇降に伴う分岐ワイヤー33がテーブル支柱部12近辺で弛緩することがなく、また、外部に露出することもないので、絡まることがなく操作がスムースであり、スッキリとしたデザインが可能となる。
更に、キャスター操作部からの1本の操作ワイヤー31を4本の分岐ワイヤー33に分岐して4個の前記車輪ロック機構5に接続し、前記1本の操作ワイヤー31のインナーワイヤーによる進退移動を、前記4本の分岐ワイヤー33のインナーワイヤーによる進退移動として伝達したので、複雑な機構を用いずに、全てのキャスターを同時にロック状態及び解除状態にできる。
【0049】
[把持部を設けた他の実施例(第2実施例]
図24に示すように、オーバーベッドテーブルが簡単で確実に床に固定できることから、オーバーベッドテーブル1の前面部17の所定位置、他の実施例では使用者から見て、右端の手前にグリップ19を設けてもよい。この把持部19はベッドの使用者が掴まることが容易なグリップ(把持部)19で、食事等の際に、このグリップ19を利用して使用者自らで上半身を起こしたり、立ち上がる際の手助けとすることができる。
この把持部19は、本実施例のグリップ形状に限定する必要はなく、使用者が起きあがる際に掴まることができる形状であればよく、例えば、スキーのストック把持部に見られる上下方向に大きな凸凹のグリップを有する円柱であるハンドルとしてもよい。
そして、使用者は安全を確認したうえで、テーブル部11の前面部17上の所定位置に使用者が掴まることが容易なグリップやハンドルのような把持部19が配置されているので、食事等の際に、この把持部19を利用して使用者自ら上半身を起こしたり、立ち上がる際の手助けとすることができる。また、使用者が把持部19に掴まり、テーブルが多少揺れて容器から液体が溢れても、テーブル部11の天板11aの縁部111の全周を高くして、液体がテーブルにこぼれてもテーブルから垂れないようにしても良い。把持部以外の構成・効果は前実施例と同じであるので省略する。
【0050】
以上のように、本発明の実施例によれば、テーブルが自在に上昇及び下降するオーバーベッドテーブルであって、一カ所の操作部の(1回の)操作により複数個(4個)のキャスターを同時にロック及びロック解除作動が行われ、オーバーベッドテーブルを簡単に固定状態及び移動可能状態にできるので、食事等を行うほか、従来のテレビ等を載置する床頭台として機能を有することができる。
また、テレビをテーブル上の適所に配置したので患者等の使用者のテレビ鑑賞や、オーバーベッドテーブルの本来の使用目的の食事をすることができ、オーバーベッドテーブルの通常の使用状態である足先側のベッド上に掛け渡した際に、患者や使用者側にテレビ画面を向け、前面部にはカードリーダ部や表示部を配置したので、患者や使用者がテレビ鑑賞やリモコン等やカード操作が容易にできる。
また、背面部には棚や引き出しを配置したので、医師や看護師がオーバーベッドテーブルを使用する患者等に関する書類を収納することができ、また、医療器具等の電源コンセットを背面部に設けたので、電源を必要とする医療器具等をオーバーベッドテーブルに載せて使用することができる。
また、従来の床頭台の基礎的機能を有しているので、透析治療等の際には本ベッドテーブルをベッドに配置するだけで、冷蔵庫等を収納した本格的な床頭台を配備する必要がなく、従来のオーバーベッドテーブルに比べて使い勝手が極めて良い。
【0051】
なによりも、一回の操作でオーバーベッドテーブルの複数及び全てのキャスターをロック状態及び解除状態にでき、従来のように各キャスター毎にロックをする必要がなく、特に、忙しい看護師や使用者の労力を軽減することができ、テーブルにキャスター操作部を設けたので、ベッド使用者の患者等がベッドにいても手の届く範囲に配置でき、患者や看護師が簡単に操作出来る。
更に、テーブルの昇降に伴う操作伝達ワイヤーの弛緩の大きなスペースを必要とする収納部(貯留部)をテーブルの中空部或いは底面に設けたので、全体としてコンパクトになり、デザイン的にも制約がなくスッキリとしたデザインが可能となる。
また、操作伝達ワイヤーとして分岐ワイヤーを適用した場合は各キャスターまでの長さがほぼ等しくでき、キャスターのロック及びロック解除作動が均一に働かせることが可能となっている。
また、オーバーベッドテーブルが簡単容易に床に対して固定できることから、使用者が掴まることが容易な把持部を前面部の所定位置に設けたので、食事等の際に、この把持部を利用して使用者自らで上半身を起こしたり、立ち上がる際の助けとすることができる。
このように、本実施例のオーバーベッドテーブルは、患者ばかりでなく、医師や看護師にとっても利便性が高く、従来の床頭台の機能も有し、かつ、安全なオーバーベッドテーブルとなる。
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の各実施例に限定されるものでないことは勿論である。