(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作支援情報演算手段は、前記管状挿入部に外力が印加されてない状態と外力が印加されている状態における前記複数の湾曲センサの検出情報の差異に基づく検出情報により、前記外力情報として外力の大きさおよび/または方向を抽出する演算を行なうことを特徴とする請求項1に記載の管状挿入装置。
前記操作支援情報演算手段は、前記管状挿入部に外力が印加されてない状態の前記複数の湾曲センサの検出情報を外力無印加時湾曲検出情報として記憶し、かつ該記憶した外力無印加時湾曲検出情報を参照して前記管状挿入部に印加する外力を推定する機能を有することを特徴とする請求項2に記載の管状挿入装置。
前記操作支援情報演算手段は、前記管状挿入部に外力が印加されてない状態の前記複数の湾曲センサの検出情報と、前記管状挿入部に所定の方向と大きさの外力が印加されている状態の前記複数の湾曲センサの検出情報とを、湾曲検出情報として記憶し、かつ該記憶した湾曲検出情報を参照して前記管状挿入部に印加する外力を推定する機能を有することを特徴とする請求項2に記載の管状挿入装置。
前記操作支援情報演算手段は、前記操作支援情報として、前記外力情報及び前記第2の外力情報に加えて、前記複数の湾曲センサの検出情報の組合せ演算により前記管状挿入部の形状に関する形状情報を演算することを特徴とする請求項1に記載の管状挿入装置。
前記操作支援情報演算手段は、前記操作支援情報として、前記外力情報、前記第2の外力情報および前記形状情報に加えて、前記湾曲操作検出センサの検出情報に基づく演算により前記管状挿入部の形状操作に関する形状操作情報を演算することを特徴とする請求項6に記載の管状挿入装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る管状挿入装置における外力検出の原理を、
図1(a)乃至
図1(h)を参照して説明する。
【0012】
ここでは、管状挿入部1が、例えば内視鏡のように、長手方向に対して順に、先端から先端硬質部2、可撓性を有する湾曲部3、準硬質部4により構成される場合について説明する。管状挿入部1は、オペレータにより、図示してない管空に挿入される。可撓性を有る可撓部である湾曲部3には、湾曲検出手段5としての複数の湾曲センサの湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4が長手方向に所定の間隔で分布して配置されている。または、湾曲検出手段5として、湾曲部3の可撓部全体の湾曲状態を検出する形状センサが配置されていても良い。
【0013】
図1(a)は、管状挿入部1に外力が印加されてなく、また、湾曲部3が真っ直ぐな場合を示している。この
図1(a)に示す状態を初期状態として、
図1(b)は、図の斜め左上から管状挿入部1の先端に外力が印加した状態、
図1(c)は、図の左正面から管状挿入部1の先端に外力が印加した状態、
図1(d)は、図の斜め左下から管状挿入部1先端に外力が印加した状態、における管状挿入部1の各々の様子を示している。
【0014】
一般的に、湾曲の分布状態は、湾曲部3の可撓性の分布と外力によって様々に変化するが、湾曲部3の可撓性の分布が分かっていれば、1)外力の大きさと2)外力の向き、および外力がないときの湾曲形状で決まる。ここでは、簡単のために、湾曲部3の可撓性の分布が均一な場合について議論する。この前提では、
図1(b)の場合は、先端部に近い湾曲検出部5−1の湾曲量(角度で考えても、曲率で考えても良い)が大きくなる。
図1(c)の場合は、湾曲部3の中央付近の湾曲検出部5−2,5−3の湾曲量が大きくなり、湾曲部3は尺取虫状の形状になる。なお、複数の湾曲センサの代わりに形状センサを配置する場合でも、中央付近の湾曲量が大きくなり、尺取虫状の形状になるのは同じである。
図1(d)の場合では、湾曲部3の中央付近の湾曲検出部5−1の湾曲量が
図1(b)の場合と反対方向に大きくなる。
【0015】
同様に、管状挿入部1に外力が印加されない状態で、湾曲部3が最初から曲がっている場合を
図1(e)に、この状態で更に外力が印加された状態を
図1(f)乃至
図1(h)に、それぞれ示す。詳細は省略するが、前述の場合と同様に外力の大きさと方向に依存して湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4に特有の湾曲差が生じる。なお、形状センサを使用する場合も、長手方向に対して特有の湾曲差が生じることは同じである。
【0016】
従って、外力が加わってない時と比較して、複数の湾曲センサの湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4の曲率の分布(向きも含む)を検出すれば、管状挿入部1の先端に加わる外力の大きさと向きを検出することができる(なお、外力が印加されるのは管状挿入部1の先端に限定したものではない)。なお、形状センサを使用する場合も、外力が加わっている時とない時の形状差により、外力の向きと大きさを検出できることは同じである。
【0017】
次に、具体的に外力を検出する信号処理アルゴリズムの一例を説明する(なお、本発明は、以下のアルゴリズムの例に限定されるものではない)。
【0018】
本実施形態に係る管状挿入装置は、
図2に示すような構成の操作支援情報演算部100を備えている。該操作支援情報演算部100は、各部湾曲演算部101、トータル湾曲演算部102、外力無印加時湾曲データ格納部103、湾曲参照テーブル生成部104、外力印加時差分湾曲データ格納部105、差分参照テーブル生成部106、差分湾曲データ演算部107、外力演算部108、および形状演算部109でなる複合湾曲情報演算部110を有している。
【0019】
各部湾曲演算部101の入力は、各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4を備える各湾曲センサに接続され、出力はトータル湾曲演算部102、外力無印加時湾曲データ格納部103、差分湾曲データ演算部107、および形状演算部109に接続されている。トータル湾曲演算部102の出力は、外力無印加時湾曲データ格納部103、湾曲参照テーブル生成部104、外力印加時差分湾曲データ格納部105、および差分参照テーブル生成部106に接続されている。外力無印加時湾曲データ格納部103の出力は、湾曲参照テーブル生成部104および外力印加時差分湾曲データ格納部105に接続されている。湾曲参照テーブル生成部104の出力は、差分湾曲データ演算部107に接続されている。外力印加時差分湾曲データ格納部105の出力は、差分参照テーブル生成部106に接続されている。差分参照テーブル生成部106の出力は、外力演算部108に説座くされている。外力演算部108の出力は、外部情報として、操作支援情報演算部100の外部に出力される。形状演算部109の出力は、形状情報として、操作支援情報演算部100の外部に出力される。
【0020】
以下、各部の動作を、
図3および
図4に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、外力無印加時湾曲データ格納部103および外力印加時差分湾曲データ格納部105にデータを格納する前処理動作について説明する。
【0021】
即ち、前処理動作においては、
図3(a)に示すように、まず、外力のない状態で(手法は限定しない)管状挿入部1のトータル湾曲角毎に、各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4における曲率を求めて、外力無印加時湾曲データ格納部103に記憶させる外力無印加時湾曲データ格納処理を実施する(ステップS11)。そしてその後、想定されるあらゆる方向から管状挿入部1の先端(ここに限定されない)に所定の外力Foを加えて、各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4における曲率を測定し、さらに、外力無印時の曲率データとの差分をとって、外力印加時差分湾曲データ格納部105に記録する外力印加時差分湾曲データ格納処理を実施する(ステップS12)。
【0022】
上記ステップS11で実施される外力無印加時湾曲データ格納処理は、
図3(b)に示すように、まず、外力のない状態で、各部湾曲演算部101により、各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4を備える各湾曲センサから出力された検出信号から、各湾曲検出部の曲率R1,R2,R3,R4を算出する各部湾曲演算を実施する(ステップS11A)。次に、トータル湾曲演算部102により、これら各部の曲率R1,R2,R3,R4と各湾曲検出部の配置間隔とに基づいて、幾何学的に管状挿入部1のトータルの湾曲角Θ0(換算した曲率でも良い)を求めるトータル湾曲演算を実施する(ステップS11B)。なお、このトータルの湾曲角Θ0は、
図1(e)中にΘ0として示すようなものである。そして、こうして求められたトータル湾曲角Θ0に対応させて、上記算出された湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4における曲率R1,R2,R3,R4が曲率データRik(i:検出ポイント番号、k:トータル湾曲の程度に対応する番号)として外力無印加時湾曲データ格納部103に記憶される(ステップS11C)。その後、該外力無印加時湾曲データ格納処理の終了が判定され(ステップS11D)、未だ終了しないのであれば上記ステップS11Aに戻って、次のトータル湾曲角に対する動作が繰り返される。
【0023】
なお、このステップS11Dの終了判定は、図示しない入力部によるオペレータの終了操作の有無により判定するものであっても良いし、予め規定されたデータ個数や角度についての動作が済んだか否かを判断することで自動的に判定するものであっても構わない。また、上記ステップS11Aの各部湾曲演算についても、図示しない入力部によるオペレータの演算開始操作に応じて実施するものであっても良いし、何らかの手法によって管状挿入部1のトータル湾曲角の変更を実施可能な予め規定された時間間隔毎に実施するものであっても構わない。
【0024】
図2は、何らかの手法によって管状挿入部1の外力無印加時のトータル湾曲角Θ0を0度,10度,20度,・・・と設定し、トータル湾曲角Θ0毎に算出した湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4の曲率R1,R2,R3,R4を曲率データRikとして記憶させた例を示している。即ち、トータル湾曲角Θ0が0度のとき、算出された曲率R1,R2,R3,R4を曲率データR10,R20,R30,R40として記憶させ、トータル湾曲角Θ0が10度のとき、算出された曲率R1,R2,R3,R4を曲率データR11,R21,R31,R41として記憶させ、トータル湾曲角Θ0が20度のとき、算出された曲率R1,R2,R3,R4を曲率データR12,R22,R32,R42として記憶させている。
【0025】
また、上記ステップS12で実施される外力印加時差分湾曲データ格納処理は、
図3(c)に示すように、まず、管状挿入部1の先端(ここに限定されない)に所定の方向の外力Foを加えた状態で、各部湾曲演算部101により、各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4を備える各湾曲センサから出力された検出信号から、各湾曲検出部の曲率R1,R2,R3,R4を算出する各部湾曲演算を実施する(ステップS12A)。次に、トータル湾曲演算部102により、これら各部の曲率R1,R2,R3,R4と各湾曲検出部の配置間隔とに基づいて、幾何学的に管状挿入部1のトータルの湾曲角Θ(換算した曲率でも良い)を求めるトータル湾曲演算を実施する(ステップS12B)。なお、このトータルの湾曲角Θは、
図1(f)中にΘとして示すようなものである。そしてさらに、外力無印時の曲率データRikとの差分をとることで、差分湾曲データΔRijk(i:検出ポイント番号、j:外力方向番号、k:トータル湾曲の程度に対応する番号)を演算する(ステップS12C)。そして、この演算した差分湾曲データΔRijkが、上記求められたトータル湾曲角Θに対応させて、外力印加時差分湾曲データ格納部105に記録される(ステップS12D)。その後、該外力印加時差分湾曲データ格納処理の終了が判定され(ステップS12E)、未だ終了しないのであれば上記ステップS12Aに戻って、次のトータル湾曲角、または、外力Foを加える方向に対する動作が繰り返される。
【0026】
なお、このステップS12Eの終了判定は、図示しない入力部によるオペレータの終了操作の有無により判定するものであっても良いし、予め規定されたデータ個数や角度、外力についての動作が済んだか否かを判断することで自動的に判定するものであっても構わない。また、上記ステップS12Aの各部湾曲演算についても、図示しない入力部によるオペレータの演算開始操作に応じて実施するものであっても良いし、何らかの手法によって管状挿入部1のトータル湾曲角、または、外力Foを加える方向の変更を実施可能な予め規定された時間間隔毎に実施するものであっても構わない。
【0027】
図2は、管状挿入部1の外力無印加時のトータル湾曲角Θを0度,10度,20度,・・・と設定し、トータル湾曲角Θ毎に管状挿入部1の先端(ここに限定されない)に方向を変えた外力Foを印加した際の差分湾曲データΔRijkを記憶させた例を示している。即ち、トータル湾曲角Θが0度のとき、方向1の外力Foを印加した際は差分湾曲データΔR110,ΔR210,ΔR310,ΔR410として、方向2の外力Foを印加した際は差分湾曲データΔR120,ΔR220,ΔR320,ΔR420として記憶させ、トータル湾曲角Θが10度のとき、方向1の外力Foを印加した際は差分湾曲データΔR111,ΔR211,ΔR311,ΔR411として、方向2の外力Foを印加した際は差分湾曲データΔR121,ΔR221,ΔR321,ΔR421として記憶させ、トータル湾曲角Θが20度のとき、方向1の外力Foを印加した際は差分湾曲データΔR112,ΔR212,ΔR312,ΔR412として、方向2の外力Foを印加した際は差分湾曲データΔR122,ΔR222,ΔR322,ΔR422として記憶させている。
【0028】
なお、ここでは、説明の簡単化のために、トータル湾曲角毎に、また、外力Foを加える方向毎に、差分湾曲データΔRijkを求めて記憶させておくものとしたが、実際には、外力の大きさ毎に、あるいは外力Foの方向及び大きさの組み合わせ毎に、差分湾曲データΔRijkを求めて記憶させることが望ましい。
【0029】
以上説明したような前処理動作は、少なくとも、ユーザが当該管状挿入装置を実際に使用開始する前の段階、例えば工場での製造時或いは出荷前の検査時等に実施して、外力無印加時湾曲データ格納部103および外力印加時差分湾曲データ格納部105にデータを格納しておくこと望ましい。ただし、当該管状挿入装置の使用による各部の変質があるので、それらのデータは、或るタイミングで更新することが必要となる。そのようなタイミングとしては、例えば、当該管状挿入装置の電源オン毎や、所定回数の電源オン毎、所定の定期メンテナンス時、等が考えられる。
【0030】
次に、ユーザによる当該管状挿入装置の使用時の通常動作について説明する。今、ユーザであるオペレータが管状挿入部1を操作して、管空に挿入することを想定する。
【0031】
図4に示すように、まず、前述した前処理動作を実施する必要の有無が確認される(ステップS111)。これは、例えば、外力無印加時湾曲データ格納部103および外力印加時差分湾曲データ格納部105にデータが格納されているか否か、格納されていたとしても前述の或るタイミングとなったか否か、により判別されるものである。また、この確認の結果は、オペレータが図示しない入力部によって入力するものであっても良いし、操作支援情報演算部100内の各部の動作制御を実施する図示しない制御部等によって自動的に取得されるものであっても構わない。前処理動作を実施する必要が有れば、前述したような前処理動作を実施する(ステップS112)。
【0032】
前処理動作を実施する必要が無ければ、あるいは、前処理動作を実施した後、各部湾曲演算部101により、各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4を備える各湾曲センサから出力された検出信号から、各湾曲検出部の曲率R1,R2,R3,R4を算出する各部湾曲演算を実施する(ステップS113)。次に、トータル湾曲演算部102により、これら各部の曲率R1,R2,R3,R4と各湾曲検出部の配置間隔とに基づいて、幾何学的に管状挿入部1の現在のトータルの湾曲角Θを求めるトータル湾曲演算を実施する(ステップS114)。そして、湾曲参照テーブル生成部104により、こうして求められたトータル湾曲角Θに基づいて外力無印加時の湾曲参照データRirefの生成が行われる(ステップS115)。即ち、湾曲参照テーブル生成部104は、トータル湾曲演算部102で求めた現在のトータル湾曲角Θを元にして、その現在のトータル湾曲角Θに最も近い外力無印加時のトータル湾曲角Θ0に対応する曲率データRikを外力無印加時湾曲データ格納部103より引用する。そしてさらに、望ましくは、その引用した曲率データRikを現在のトータル湾曲角Θに対して補間することで、現在のトータル湾曲角Θに対応する各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4の参照湾曲データR1ref,R2ref,R3ref,R4refを算出する。
【0033】
その後、差分湾曲データ演算部107により、差分湾曲データΔRiを求める差分湾曲データ演算を実施する(ステップS116)。即ち、差分湾曲データ演算部107は、上記各部湾曲演算部101で求めた各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4の曲率R1,R2,R3,R4と、上記湾曲参照テーブル生成部104によって生成した各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4の外力無印加時の湾曲参照データR1ref,R2ref,R3ref,R4refとを使って、以下の差分演算を行うことで、差分湾曲データΔR1,ΔR2,ΔR3,ΔR4を求める。
ΔR1=R1−R1ref,
ΔR2=R2−R2ref,
ΔR3=R3−R3ref,
ΔR4=R4−R4ref。
【0034】
また、差分参照テーブル生成部106により、参照差分データΔRijΘの生成が行われる(ステップS117)。即ち、差分参照テーブル生成部106は、トータル湾曲演算部102で求めた現在のトータル湾曲角Θを元にして、その現在のトータル湾曲角Θに最も近い外力印加時のトータル湾曲角Θに対応する差分湾曲データΔRijkを外力印加時差分湾曲データ格納部105より引用する。そしてさらに、望ましくは、その引用した差分湾曲データΔRijkを現在のトータル湾曲角Θに対して補間することで、現在のトータル湾曲角Θに対応する参照差分データΔR1jΘ、ΔR2jΘ、ΔR3jΘ、ΔR4jΘを算出する。
【0035】
そして、外力演算部108により、
図1を参照して説明した原理を使って、現在の外力Fの向きと大きさを演算する(ステップS118,ステップS119)。
【0036】
即ち、外力演算部108は、例えば、上述の差分参照テーブル生成部106で算出した差分値の組(参照差分データΔR1jΘ、ΔR2jΘ、ΔR3jΘ、ΔR4jΘ(j=1,2,3,・・・))のうち、差分湾曲データ演算部107により抽出した現在の湾曲分布の差分値の組(差分湾曲データΔR1、ΔR2、ΔR3、ΔR4)と比率が最も近い組を選び出す。これにより、この比率が最も近い組の“j”が決定され、この“j”に対応する外力の方向を現在の外力の方向として抽出する。更に望ましくは、上述の比率が最も近い組の代わりに、比率が近い組を複数抽出し、これに対応する外力の方向を補間することにより、現在の外力Fの方向を抽出する。
【0037】
また、外力演算部108は、差分湾曲データ演算部107により抽出した現在の湾曲分布の差分値の組(差分湾曲データΔR1、ΔR2、ΔR3、ΔR4)と差分参照テーブル生成部106で与えられる差分値の組(参照差分データΔR1jΘ、ΔR2jΘ、ΔR3jΘ、ΔR4jΘ(この時点ではjは確定している))との大きさの比率を、外力印加時差分湾曲データ格納部105にデータ格納した時に予め設定した外力Foに掛けることにより、外力Fの大きさを推定する。例えば、
F=Fo×Avr(ΔR1,ΔR2,ΔR3,ΔR4)/Avr(ΔR1jΘ,ΔR2jΘ,ΔR3jΘ,ΔR4jΘ)
のように計算すれば良い。ここで、Avr(引数1,引数2,・・・)は引数1,引数2,・・・の平均化演算を示し、単純平均や2乗平均、重み付け平均などが考えられる。このうち、どの平均演算を選ぶかは、検出する管状湾曲部3の構造や環境条件等により最も適切な演算方法を実験等で確認し、決定しておくことが望ましい。
【0038】
さらに、形状演算部109において、各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4の曲率R1,R2,R3,R4を各湾曲検出部の配置間隔を考慮してつなぎ合わせることにより、管状挿入部1の全体の形状情報を算出する(ステップS120)。
【0039】
以上のようにして、管状挿入部1に加わる外力Fに関する外力情報(向きと大きさ)および管状挿入部1の形状に関する形状情報を含む操作支援情報が得られる。
【0040】
その後、該通常動作の終了が判定され(ステップS121)、未だ終了しないのであれば上記ステップS111に戻って、次の操作支援情報を求める動作が繰り返される。
【0041】
なお、このステップS121の終了判定は、例えば、図示しない入力部によるオペレータの終了操作の有無により判定する。あるいは、特に該ステップS121の終了判定は行わずに、ステップS120からステップS111に戻るようにし、当該管状挿入装置の電源オフにより該通常動作を囚虜するようにしても構わない。
【0042】
以上のように、本第1実施形態に係る管状挿入装置は、可撓部である湾曲部3を所定部分に有する管状挿入部1を管空に挿入するときに、操作支援情報演算手段としての操作支援情報演算部100にて、湾曲部3に分布して配置された複数の湾曲センサの検出情報の組み合わせ演算により、あるいは、管状挿入部1に外力が印加されてない状態での湾曲部3に配置された形状センサの検出情報と、現状の形状センサの検出情報と、の組み合わせ演算により、少なくとも管状挿入部1に加わる外力に関する外力情報を含む操作支援情報を抽出するので、管状挿入部1の大きさや硬さに殆ど影響を与えることなく、あらゆる方向からの外力を操作支援情報として取得することができる。さらには、管状挿入部1の形状も操作支援情報として取得することができる。
【0043】
なお、現在の外力Fの向きと大きさの推定方法としては、次のような手法を採ることも可能である。
【0044】
図5(a)は、管状挿入部1の状態が
図1(a)乃至
図1(d)に示す場合について、外力の向きと大きさが異なる時の各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4における「1/曲率半径R」の分布例を示している。ここで、各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4の曲率半径を、各々、R1,R2,R3,R4とし、曲率半径は
図1(b)のように上に凸の場合を+、下に凸の場合を−としている。また、F//は、管状挿入部1の先端に対して、管状挿入部1の長さ方向に印加する力の大きさ(向かってくる方向を+とする)を示し、F⊥は、管状挿入部1の先端に対して、長さ方向と垂直な向きに印加する力の大きさを示している(図の上から下に印加する方向を+とする)。
【0045】
簡単のため、外力無印加時のトータル湾曲角Θ0=0、湾曲部3の弾性が均一、かつ等間隔に湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4が配置されている場合を考える。この場合、長さ方向と垂直な向きに印加する力F⊥をパラメータとして、各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4における「1/曲率半径R」の分布例は、
図5(a)に示すようになる。即ち、先端部に外力が加わる場合は、管状挿入部1に対して先端部ほど曲率(1/R)の絶対値が大きくなる。例えば、曲率分布の指標として(R1+R2)/(R3+R4)を取ると、
図5(b)のようになる。従って、(R1+R2)/(R3+R4)が分かれば、管状挿入部1の長さ方向と垂直な向きに印加する力成分であるF⊥を推定することができる。
【0046】
一方、長さ方向に印加する力F//をパラメータとして、各湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4における「1/曲率半径R」の分布例は、
図5(c)に示すようになる。即ち、先端部に外力が加わる場合は、管状挿入部1は中央部が撓む形状となる。よって、例えば、曲率分布の指標として(R2+R3)/(R1+R4)を取ると、
図5(d)のようになる。従って、(R2+R3)/(R1+R4)が分かれば、管状挿入部1の長さ方向に印加する力成分であるF//を推定することができる。
【0047】
以上をまとめると、外力無印加時のトータル湾曲角Θ0毎に、上記の指標(R1+R2)/(R3+R4)や(R2+R3)/(R1+R4)の値を外力がない時と、外力が加わった時について予め調べて、外力無印加時湾曲データ格納部103および外力印加時差分湾曲データ格納部105に格納しておくことにより、外力の成分F⊥、F//を推定すること(即ち、外力の向きと大きさを推定すること)が可能となる。
【0048】
なお、上記湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4を備える湾曲センサとしては、
図6に示すような、光ファイバの曲げ損失を利用したファイバ湾曲センサ12−1,12−2,12−3,12−4を使用することができる。
【0049】
即ち、各ファイバ湾曲センサ12−1,12−2,12−3,12−4においては、光ファイバ6の入力端が、分岐構造8で構成されている。この分岐の一端には、光源10−1,10−2,10−3,10−4から出射した光が、レンズ9を介して入射し、光ファイバ6を導光して、先端に配置されたミラー7により反射され、反射された光が再び光ファイバ6、分岐構造8、レンズ9を経て、光検出器11−1,11−2,11−3,11−4にて検出される。ここで、光ファイバ6の導光路の途中には、導光路の外周付近に湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4として機能する光損失部が形成されている。光ファイバ6が湾曲した時は、その程度に応じて、光損失部の光損失量が異なることを利用して湾曲量を検出することができる。
【0050】
上述のファイバ湾曲センサは、湾曲検出部5−1〜5−4が、湾曲部3の長手方向にずらせて配置されている。これにより、複数の湾曲検出部5−1〜5−4の検出結果を使って、長手方向の湾曲分布を検出することができる。
【0051】
また、湾曲部3の可撓性の大小に分布がある場合は、湾曲検出部5−1〜5−4の配置間隔や湾曲検出部5−1〜5−4の感度を最適に設定することが望ましい。また、本発明では、複数の湾曲センサ12−1〜12−4を配置する代わりに、湾曲検出部が連続に分布する構成も含むものとする。
【0052】
本実施形態では、湾曲センサとして光の導光損失を利用した光ファイバセンサについて説明したが、湾曲検出部5−1〜5−4にファイバグレーティングを使った構成などの他の光ファイバセンサも活用できる。更に、
図6では多点の湾曲を検出するために複数のファイバ形状センサを内蔵した構成を示したが、(ここでは具体的な構成原理は示さないが)これらの湾曲検出部5−1〜5−4が共通の光ファイバに集積されて、湾曲検出部毎に分離検出できる構成にしても良い。
【0053】
また、湾曲センサは、光ファイバを使ったものに限定されない。例えば、歪センサを分布配置させたもの、加速度センサ、ジャイロセンサ、無線素子等を分布配置して、その位置を検出して湾曲量に変換できるものなども含まれる。
【0054】
[第2実施形態]
以下に、本発明に係る第2実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、上記第1実施形態と共通する部分については、その説明を省略する。
【0055】
本第2実施形態に係る管状挿入装置は、
図7に示すように、管状挿入部1を湾曲操作ワイヤ21,22で湾曲できるように、湾曲操作部40を有している。湾曲操作ワイヤ21,22は、湾曲操作ノブ23,24を回転させることにより、回転の巻き込み側に繋がる側のワイヤが引っ張られる。この湾曲操作ワイヤ21,22は、ガイドローラ30を介して、管状挿入部1の先端硬質部2の留め金29に連結されている。これにより、湾曲操作ノブ23,24を回転させることにより、管状挿入部1の湾曲量を操作することができる。このように、湾曲操作ワイヤ21,22は、オペレータが管状挿入部1の湾曲状態を操作する湾曲操作手段として機能する。なお、
図7においては、湾曲方向として上下(UD)方向と、これと垂直な左右(LR)方向を各々操作する場合の構成を示しているが、煩雑となるため、LR方向のワイヤや検出センサは図示してない。
【0056】
ここで、湾曲操作部40には、湾曲操作ワイヤ21,22の動き即ち操作量を検出するために、UD方向とLR方向の各々に対して、エンコーダヘッド25,26、および、これに対向するエンコーダスケール27,28でなる湾曲操作検出センサを有している。なお、エンコーダスケール27,28は、湾曲操作ワイヤ21,22に固定され、エンコーダヘッド25,26は、湾曲操作部40の筐体に固定されている。これにより、湾曲操作ノブ23,24を回転させた時に、エンコーダヘッド25,26が湾曲操作ワイヤ21,22の動きを検出することにより、管状挿入部1の湾曲部3のトータル湾曲角を推定することができる。
【0057】
次に、具体的に外力を検出する信号処理アルゴリズムの一例を説明する。なお、第1実施形態と共通する部分については、その説明を省略する。
【0058】
図8に示すように、本実施形態における操作支援情報演算部100は、上記第1実施形態における構成に加えて、操作量演算部111、トータル湾曲推定部112、および外力演算部113を備えている。
【0059】
操作量演算部111の入力は、湾曲操作検出センサのエンコーダヘッド25,26に接続され、出力はトータル湾曲推定部112に接続され、また、形状操作情報として、操作支援情報演算部100の外部に出力される。トータル湾曲推定部112の出力は、外力演算部113に接続されている。該外力演算部113にはさらに、上記トータル湾曲演算部102の出力も接続されている。外力演算部113の出力は、外力情報2として、操作支援情報演算部100の外部に出力される。なお、外力演算部108の出力は、外力情報1として、操作支援情報演算部100の外部に出力される。即ち、本第2実施形態における操作支援情報演算部100は、複数の外力情報を出力する。
【0060】
操作量演算部111は、エンコーダヘッド25,26の出力信号から、例えば、湾曲操作ワイヤ21,22の引っ張り量を検出することができ、これを管状挿入部1の形状操作に関する形状操作情報として出力する。
【0061】
また、この値を用いて、予め実験式を作っておくことなどにより、トータル湾曲推定部112は、推定のトータル湾曲角Θ2を得ることができる。湾曲操作部40で意図した湾曲角はトータル湾曲推定部112により推定トータル湾曲角Θ2で与えられるが、実際のトータル湾曲角は外力によりこの推定トータル湾曲角Θ2とは異なる角度になる。この差分を利用して、外力の方向と大きさを与えることができる。具体的には、トータル湾曲演算部102で算出される現在のトータル湾曲角Θと、トータル湾曲推定部112により得られる推定トータル湾曲角Θ2とを比較し、この比率を前述の外力印加時差分湾曲データ格納部105にデータ格納した時に予め設定した外力Foに掛けることにより、現在の外力Fを外力情報2として推定することができる。
【0062】
以上のようにして、管状挿入部1に加わる外力Fに関する外力情報1および外力情報2(第2の外力情報)、管状挿入部1の形状に関する形状情報、および管状挿入部1の形状操作に関する形状操作情報を含む操作支援情報が得られる。
【0063】
なお、上記外力情報1と外力情報2は、ケースによって使い分けることができる。例えば、外力情報1を得るには大きなデータベースや高機能の演算装置が必要であるが、湾曲操作部40の情報が得られない場合に有効である。一方、外力情報2は大きなデータベースや高機能の演算装置が要らないので、コンパクトな装置に向いているが、湾曲操作部40の情報を取得するための構成が必要である。これ以外にも、精度や検出速度等、多様な観点で外力情報1と外力情報2の使い分け、あるいは、併用が可能である。このように、本実施形態における操作支援情報演算部100は、湾曲操作検出センサの検出情報と複数の湾曲センサの検出情報とを組み合わせて演算することにより、少なくとも管状挿入部1に加わる外力に関する複数の外力情報を含む操作支援情報を抽出し、これら複数の外力情報を選択または併用することが可能な操作支援情報演算手段として機能する。
【0064】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0065】
例えば、上記実施形態では、4つの湾曲検出部5−1,5−2,5−3,5−4を配置した例で説明したが、4つに限定しないことは勿論である。
【0066】
また、複数の湾曲検出部5−1〜5−4を、
図1において湾曲部3の長手方向に上側一列に配置して、紙面方向の外力を検出したが、長手方向に横側一列に配置することで、紙面に垂直な方向の外力を検出することも可能であるし、さらには、上側、横側それぞれに配置することで、紙面方向と垂直方向の2次元で外力を検出するように構成することも可能である。
【0067】
また、
図4に示したステップS115,S116とステップS117とは順番を逆にしても良いし、並列に処理するものとしても良い。同様に、ステップS115〜S119とステップS120とは順番を逆にしても良いし、並列に処理するものとしても良い。
【0068】
また、上記操作支援情報演算部100の機能を実現するソフトウェアのプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータがこのプログラムを実行することによって、上記機能を実現することも可能である。