特許第5797350号(P5797350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5797350
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】作物収穫用工具
(51)【国際特許分類】
   A01D 46/24 20060101AFI20151001BHJP
   A01D 46/247 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   A01D46/24 C
   A01D46/247
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-75453(P2015-75453)
(22)【出願日】2015年4月1日
【審査請求日】2015年5月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515089404
【氏名又は名称】株式会社ATTA
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】小森 啓安
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3021578(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3048363(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3153749(JP,U)
【文献】 特開昭52−069751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 43/00−46/30
A01G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を切断するための切断部と、
前記対象物を挟持する第1挟持部と、
前記切断部と前記第1挟持部との間に設けられ、前記第1挟持部と離間し、前記対象物を挟持する第2挟持部と、
前記第1挟持部および前記第2挟持部を開閉させる把持部と、
を備え
前記第1挟持部の前記第2挟持部とは反対側の面が、収穫した前記対象物を載置可能に構成されていることを特徴とする作物収穫用工具。
【請求項2】
前記第1挟持部は、開閉動作する一対の挟持片を有し、
前記第2挟持部は、開閉動作する一対の挟持片を有することを特徴とする請求項1記載の作物収穫用工具。
【請求項3】
前記第1挟持部は、前記第2挟持部と同時に開閉することを特徴とする請求項1または2に記載の作物収穫用工具。
【請求項4】
前記把持部は、前記第1挟持部および前記第2挟持部の開閉とともに前記切断部を開閉させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の作物収穫用工具。
【請求項5】
前記第1挟持部の前記第2挟持部とは反対側の表面には凹部が設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の作物収穫用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実などの作物を収穫する際に用いられる作物収穫用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
作物を収穫するには、一般的に手作業によって枝や茎から摘み取ったり、剪定鋏や専用の道具を使って刈り取ったりする。作物のなかでもメロンやバナナなどは収穫後に追熟するが、いちご、ほうれん草、小松菜などは収穫した時から劣化が始まる。このように追熟しない作物は、完熟に近い状態まで熟してから収穫することが望ましい。
【0003】
一方、完熟に近づくと表皮が柔らかくなってしまい、収穫の際の手作業や輸送時などで傷みが生じやすくなる。このため、完熟の手前で収穫されるのが一般的である。
【0004】
作物を収穫する際に用いられる工具として、特許文献1には、剪定や収穫時に飛散や落下しない、保持、切断、切断保持の3役をこなすキャッチ・ハサミが開示される。また、特許文献2には、いちごなどの果実を収穫するにあたり、果柄の切断位置に果柄をスムーズに位置決めし、果柄の損傷を抑制する果柄切断機構が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−057563号公報
【特許文献2】特開2012−110257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、作業者の手作業によって作物を枝や茎から切り離し、この切り離しとともに保持を行うことができる鋏において、切り離した作物を確実に保持して搬送容器まで運ぶことは非常に難しい。特許文献1で記載されたキャッチ・ハサミでは、収穫された作物を搬送容器へ収納する際には作業者の手作業が必要である。また、特許文献2に記載の機構では大がかりな設備が必要になるため、生産者は容易に導入することはできない。
【0007】
本発明の目的は、手作業で収穫する際に作業者の手に直接触れることなく収穫することができ、容器まで確実に保持して運ぶことができる作物収穫用工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の作物収穫用工具は、対象物を切断するための切断部と、対象物を挟持する第1挟持部と、切断部と第1挟持部との間に設けられ、第1挟持部と離間し、対象物を挟持する第2挟持部と、第1挟持部および第2挟持部を開閉させる把持部と、を備え、第1挟持部の第2挟持部とは反対側の面が、収穫した対象物を載置可能に構成されている。
【0009】
このような構成によれば、第1挟持部と第2挟持部との両方で対象物を保持したまま、切断部によって対象物を切断することができる。対象物は切断されたあとも第1挟持部と第2挟持部とで保持される。第1挟持部と第2挟持部とは離間しているため、対象物を2箇所でしっかりと支えることができる。
【0010】
本発明の作物収穫用工具において、第1挟持部は、開閉動作する一対の挟持片を有し、第2挟持部は、開閉動作する一対の挟持片を有していてもよい。これにより、第1挟持部の一対の挟持片と第2挟持部の一対の挟持片とで対象物を2箇所で挟むように保持することができる。
【0011】
本発明の作物収穫用工具において、第1挟持部は、第2挟持部と同時に開閉するようになっていてもよい。これにより、第1挟持部と第2挟持部とで対象物を同時に挟持することができる。
【0012】
本発明の作物収穫用工具において、把持部は、第1挟持部および第2挟持部の開閉とともに切断部を開閉させるようにしてもよい。これにより、第1挟持部および第2挟持による対象物の挟持と連動して対象物の切断を行うことができる。
【0013】
本発明の作物収穫用工具において、第1挟持部の第2挟持部とは反対側の表面に凹部が設けられていてもよい。これにより、対象物の保持や切断の際に対象物の先に付いている作物を凹部にフィットさせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、手作業で作物を収穫する際に作業者の手に直接触れることなく収穫することができ、容器まで確実に保持して運ぶことができる作物収穫用工具を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る作物収穫用工具を例示する模式斜視図である。
図2】本実施形態に係る作物収穫用工具の模式側面図である。
図3】本実施形態に係る作物収穫用工具の模式平面図である。
図4】作物収穫用工具の使用方法を例示する模式斜視図である。
図5】作物収穫用工具の使用方法を例示する模式斜視図である。
図6】作物収穫用工具の使用方法を例示する模式斜視図である。
図7】本実施形態に係る作物収穫用工具による他の搬送方法を例示する模式斜視図である。
図8】いちごの容器(第1の例)および収納について例示する模式図である。
図9】いちごの容器(第1の例)および収納について例示する模式図である。
図10】いちごの容器(第1の例)および収納について例示する模式図である。
図11】いちごの容器(第1の例)および収納について例示する模式図である。
図12】いちごの容器(第2の例)および収納について例示する模式図である。
図13】いちごの容器(第2の例)および収納について例示する模式図である。
図14】いちごの容器(第2の例)および収納について例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0017】
(作物収穫用工具の構成)
図1は、本実施形態に係る作物収穫用工具を例示する模式斜視図である。
本実施形態に係る作物収穫用工具1は、作物を収穫する際に対象物を切断するとともに保持するための道具である。なお、本実施形態においては、作物としていちご15、対象物としていちご15の茎151の場合を例として説明する。
【0018】
作物収穫用工具1は、切断部10と、第1挟持部21と、第2挟持部22と、把持部30と、を備える。切断部10は、対象物である茎151を切断する部分である。切断部10は、鋏のような構造(鋏型)であっても、カッターのような構造(カッター型)であってもよい。図1に示す例では、切断部10は鋏型になっており、第1刃部11と第2刃部12とを有する。また、片刃の鋏もあるように、第1刃部11あるいは第2刃部12のどちらか一方によって切断部10が構成されていてもよい。なお、カッター型の場合には、第1刃部11および第2刃部12のいずれか一方だけでもよい。
【0019】
第1刃部11および第2刃部12は、支軸AX3を中心として開閉可能に設けられる。例えば、支軸AX3を中心とした第2刃部12とは反対側にハンドル40が設けられる。このハンドル40を動かすことで第1刃部11に対して第2刃部12が開閉動作することになる。なお、第1刃部11と第2刃部12とは、バネ(図示せず)によって開く方向に付勢されていてもよい。これにより、通常の状態ではバネの付勢力によって第1刃部11および第2刃部12が開いた状態になる。
【0020】
第1挟持部21は、開閉動作する一対の挟持片211,212を有する。一対の挟持片211,212は、支軸AX1を中心として開閉可能に設けられる。この一対の挟持片211,212を閉じることで茎151が挟持される。
【0021】
挟持片211の茎151との接触面211a、および挟持片212の茎151との接触面212aは、茎151を挟持できればよいため、閉じた際に密着しても、隙間が設けられていてもよい。
【0022】
第2挟持部22は、切断部10と第1挟持部21との間に設けられる。第2挟持部22は第1挟持部21と離間して設けられる。第2挟持部22は、開閉動作する一対の挟持片221,222を有する。一対の挟持片221,222は、支軸AX2を中心として開閉可能に設けられる。この一対の挟持片221,222を閉じることで茎151が挟持される。
【0023】
挟持片221の茎151との接触面221a、および挟持片222の茎151との接触面222aは、茎151を挟持できればよいため、閉じた際に密着しても、隙間が設けられていてもよい。
【0024】
なお、支軸AX1,AX2,AX3に沿った方向(以下、単に「軸方向」と言う。)にみて、接触面221aは接触面211aと揃っていることが望ましい。同様に、軸方向にみて、接触面222aは接触面212aと揃っていることが望ましい。これにより、第1挟持部21および第2挟持部22でほぼ同時に茎151を保持することができる。
【0025】
接触面211a,212a,221a,222aには、スポンジ素材、ゴム素材、シリコン素材などの表面加工が施されていてもよい。これにより、茎151を挟持する際の滑り止め効果を得られる。
【0026】
把持部30は、第1挟持部21および第2挟持部22をテコの原理で開閉動作するために用いられる握り部分である。把持部30は、第1グリップ31と第2グリップ32とを有する。第1グリップ31は、第1挟持部21の挟持片212と、第2挟持部22の挟持片222とを動かす。第2グリップ32は、第1挟持部21の挟持片211と、第2挟持部22の挟持片221とを動かす。
【0027】
すなわち、第1グリップ31および第2グリップ32を握ることで、第1挟持部21と第2挟持部22とが同時に閉じて、茎151を保持することができる。また、第1グリップ31および第2グリップ32を開くことで、第1挟持部21と第2挟持部22とが開くようになる。なお、第1グリップ31と第2グリップ32とは、バネ(図示せず)によって開く方向に付勢されていてもよい。これにより、握る力を解除すればバネの付勢力によって第1挟持部21および第2挟持部22が開くようになる。
【0028】
図2は、本実施形態に係る作物収穫用工具の模式側面図である。
図2には、第2グリップ32側からみた側面図が表される。作物収穫用工具1において、切断部10、第1挟持部21および第2挟持部22は、軸方向に重ねて配置される。この軸方向において、第1挟持部21と第2挟持部22との間には間隔d1が設けられる。
【0029】
第1挟持部21と第2挟持部22との両方で茎151を挟持する場合、間隔d1が設けられることでこの幅によって安定して茎151を保持することができる。この間隔d1は、後述する容器へいちご15を収納する際の容器の厚さよりも僅かに広くしておけばよい。
【0030】
なお、間隔d1は調整可能に設けられていてもよい。例えば、第1挟持部21および第2挟持部22の少なくとも一方の厚さを調整可能に設けたり、第1グリップ31および第2グリップ32の厚さを調整可能にするスペーサ(図示せず)を設けたりすることで、間隔d1が調整可能となる。
【0031】
茎151を切断する場合、茎151のいちご15寄りの部分を第1挟持部21と第2挟持部22とで挟むようにする。切断部10は、第2挟持部22よりもいちご15から離れた位置で茎151を切断する。
【0032】
軸方向における第2挟持部22と切断部10との間隔d2は、間隔d1より狭くなっていてもよい、これにより、第1挟持部21および第2挟持部22で茎151を保持した状態で切断部10によって茎151を切断する際、切断後に残る茎151の長さとして、第1挟持部21と第2挟持部22とで支える長さより僅かに長く残すだけで済むようになる。また、間隔d2は、間隔d1より広くなっていてもよい。この場合、切断後の茎151を長めに残すことができる。
【0033】
支軸AX1,AX2,AX3は、かしめ構造となっている。これにより、挟持片211,212および挟持片221,222のそれぞれの回転運動は許容するものの、分離はしないような構造になっている。第1挟持部21の支軸AX1は、第2挟持部22の支軸AX2と同軸上になっていることが望ましい。また、図2に示す例では、支軸AX1は支軸AX2と別体であるが、共有の軸にしてもよい。
【0034】
なお、本実施形態において図示する作物収穫用工具1は右手用である。左手用の場合には、作物収穫用工具1の構成を左右対称に設ければよい。
【0035】
図3は、本実施形態に係る作物収穫用工具の模式平面図である。
切断部10が鋏型の場合、第1刃部11を第2挟持部22の挟持片221に対して固定しておくことが望ましい。例えば、支軸AX3を中心として第1刃部11の反対側に延びる延出部41は、第2グリップ32に固定される。これにより、ハンドル40の操作で第2刃部12を閉じるだけで茎151の切断を行うことができる。
【0036】
この場合、軸方向にみて、挟持片221の接触面221aの位置と、第1刃部11の刃線11aとの位置関係を調整できるようにしてもよい。例えば、軸方向にみて接触面221aの位置と刃線11aとの位置を合わせておくと、茎151を第1挟持部21および第2挟持部22で挟んだ際に、丁度、刃線11aが茎151に当接する状態になる。
【0037】
また、軸方向にみて接触面221aの位置よりも刃線11aを出しておいてもよい。これにより、茎151を第1挟持部21および第2挟持部22で挟んだ際には、刃線11aが茎151の途中まで入り込むことになる。
【0038】
なお、第1刃部11を支軸AX3を中心として回転させて刃線11aを接触面221aから出すようにした場合、接触面221aに対する刃線11aの出る量は、第1刃部11の付け根から先端に向かうほど多くなる。したがって、茎151の太さに応じて刃線11aの当てる位置を調整すれば、茎151を保持した際に第1刃部11の茎151に入る量を調整できることになる。
【0039】
また、第1刃部11を平行移動させて刃線11aを接触面221aに対して平行に出した場合、接触面221aに対する刃線11aの出る量は、第1刃部11の刃先から付け根まで一定になる。
【0040】
本実施形態に係る作物収穫用工具1を使用する作業者は、手Hで把持部30を握るようにして持つ。具体的には、手Hの親指、薬指および小指で第2グリップ32を握り、第1グリップ31に中指を引っ掛ける。また、ハンドル40に人差し指を引っ掛ける。第1グリップ31、第2グリップ32およびハンドル40の形状は、手Hの指を掛けやすいような形状になっている。
【0041】
作物収穫用工具1において、挟持片212および挟持片222は第1グリップ31と一体に形成されていてもよい。また、挟持片211および挟持片221は第2グリップ32と一体に形成されていてもよい。さらにまた、第1刃部11は、第2グリップ32と一体に形成されていてもよい。この場合、延出部41は不要である。
【0042】
(作物収穫用工具の製造方法)
本実施形態に係る作物収穫用工具1は、例えば、所定の材料を切り抜いて各部を形成し、形成した各部を積層することで製造することができる。第1グリップ31や第2グリップ32など、ある程度の厚さが必要な部分については、平板を切り抜いた部材を複数枚用意し、これらを積層することで所望の厚さにしてもよい。また、各部を3次元プリンタで形成してもよい。
【0043】
以下、積層による作物収穫用工具1の製造方法について説明する。
先ず、第1グリップ31と接続される挟持片211,221と、第2グリップ32と接続される挟持片212,222とを支軸AX1,AX2の位置で交差させ、重ね合わせる。そして、支軸AX1,AX2の位置をビスやかしめなどによって回動可能に固定する。
【0044】
次に、第1刃部11と第2刃部12とを支軸AX3の位置で交差させ、重ね合わせる。そして、支軸AX3の位置をビスやかしめなどによって回動可能に固定する。次いで、支軸AX3を中心として第1刃部11の反対側に延びる延出部41を第2グリップ32に固定する。延出部41の第2グリップ32に固定する位置(角度)によって、第1刃部11の刃線11aの接触面221aに対する出っ張り量を調整できる。一方、支軸AX3を中心として第2刃部12の反対側に延びるハンドル40は、固定しない。
【0045】
各部を積層した後は、必要に応じて第1グリップ31と第2グリップ32との間を開く方向に付勢するバネ(図示せず)や、第1刃部11と第2刃部12との間を開く方向に付勢するバネ(図示せず)を取り付ける。ハンドル40の位置は、第1グリップ31よりも外側になっていてもよい。これにより、作物収穫用工具1が製造される。
【0046】
(作物収穫用工具の使用方法)
次に、作物収穫用工具1の使用方法について説明する。
図4図6は、作物収穫用工具の使用方法を例示する模式斜視図である。
先ず、図4に表したように、切断部10、第1挟持部21および第2挟持部22を開いて茎151を差し込む。この際、第1挟持部21の直下にいちご15が配置されるようにする。
【0047】
次に、図5に表したように、手Hの中指で第1グリップ31を引き寄せて、第1グリップ31および第2グリップ32を握る。これにより、第1挟持部21および第2挟持部22が閉じて、挟持片211,212,221,222によって茎151を挟む状態になる。茎151を挟む際、第1挟持部21によっていちご15のへたの直ぐ上を挟むようにするとよい。
【0048】
次に、図6に表したように、手Hの人差し指でハンドル40を引き寄せるように移動させる。これにより切断部10が閉じて茎151を切断することができる。この際、茎151が切断されても、第1グリップ31および第2グリップ32を握っている限りは切断箇所よりもいちご15側の茎151を挟持し続けるため、いちご15は落下せずに保持される。
【0049】
本実施形態に係る作物収穫用工具1では、間隔d1で離間して設けられる第1挟持部21と第2挟持部22との2箇所で茎151を挟持するため、いちご15にある程度の重さがあっても茎151をしっかりと保持することができる。
【0050】
茎151を切断した後、作業者は、第1グリップ31および第2グリップ32を握ったまま、いちご15を容器などの位置まで運ぶ。本実施形態に係る作物収穫用工具1によれば、いちご15に全く手Hを触れることなく、収穫から搬送まで行うことが可能となる。
【0051】
図7は、本実施形態に係る作物収穫用工具による他の搬送方法を例示する模式斜視図である。
図7には、茎151を切断した後に作物収穫用工具1の表裏を反転させた状態が表される。茎151を切断する際にはいちご15は第1挟持部21の下に位置する(図6参照)。茎151を切断した後、図7に示すように作物収穫用工具1の表裏を反転させると、第1挟持部21にいちご15が載る状態になる。これにより、いちご15を搬送しやすくなる。また、第1グリップ31および第2グリップ32の握りが弱くなっても、いちご15を落とすことなく運ぶことができる。
【0052】
第1挟持部21の、第2挟持部22とは反対側の面21aに凹部210が設けられていてもよい。これにより、第1挟持部21にいちご15を載せる際に凹部210にいちご15がフィットして、より安定して運ぶことができる。また、第1挟持部21の面21aにクッション材を設けておいてもよい。これにより、第1挟持部21にいちご15を載せた際に、いちご15の自重によっていちご15に加わる圧力を分散させることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る作物収穫用工具1では、ハンドル40の操作で切断部10の開閉動作を行う構成になっているが、第1グリップ31および第2グリップ32の開閉動作に連動して切断部10が開閉するような構成になっていてもよい。これにより、第1グリップ31および第2グリップ32を握るだけで茎151の保持と切断とを行うことが可能になる。
【0054】
(いちごの容器および収容)
次に、いちご15の容器および容器への収納について説明する。
図8図11は、いちごの容器(第1の例)および収納について例示する模式図である。
図8に表したように、第1の例に係る容器500は、平板状のベース板510を有する。ベース板510には、縁から内側に向けて切り込み520が設けられる。切り込み520には縁側に開くV型の呼び込み部が設けられていることが望ましい。切り込み520は、ベース板510の複数箇所に設けられていてもよい。容器500の材料としては、紙製素材のほか、プラスチック形素材などが用いられる。
【0055】
この容器500にいちご15を収納するには、収穫したいちご15を作物収穫用工具1の第1挟持部21の上に載せた状態で、第1挟持部21と第2挟持部22との間に容器500を差し込むようにする。
【0056】
図9には、作物収穫用工具1を容器500に差し込んだ状態が示される。本実施形態に係る作物収穫用工具1においては、第1挟持部21と第2挟持部22との間に隙間d1(図2参照)が設けられる。この隙間d1は容器500の厚さよりも僅かに広く設けられる。作業者は、作物収穫用工具1でいちご15の付いた茎151を保持した状態で、第1挟持部21と第2挟持部22との間に容器500を差し込む。この差し込みとともに、茎151が切り込み520に差し込まれる。
【0057】
軸方向にみて、茎151は、対向する接触面211a,212aの延長線上で挟持される。作業者は、容器500の上からみて切り込み520の延長線と、接触面211a,212aの延長線とを合致させるように作物収穫用工具1を差し込むことで、茎151を的確に切り込み520に差し込むことができる。
【0058】
図10(a)および(b)には、容器500に作物収穫用工具1を差し込む状態の側面図が表される。図10(a)に示すように、作物収穫用工具1で収穫したいちご15を第1挟持部21の上に載せた状態で、第1挟持部21と第2挟持部22との間に容器500を差し込む。これにより、図10(b)に示すように、容器500の切り込み520に茎151が差し込まれる。
【0059】
茎151を切り込み520に差し込んだ後は、把持部30の握りを緩め、作物収穫用工具1を引き抜く。図11には、作物収穫用工具1を引き抜いた状態が示される。茎151が切り込み520に差し込まれることで、いちご15はへたを下にしてベース板510の上に載置された状態で残り、作物収穫用工具1のみが引き抜かれる。茎151が切り込み520に差し込まれているため、いちご15は安定して容器500に固定される。
【0060】
図12図14は、いちごの容器(第2の例)および収納について例示する模式図である。
図12(a)および(b)には、第2の例に係る容器600が例示される。図12(a)には容器600を展開した平面図が表され、図12(b)には容器600を折り曲げた状態の斜視図が表される。容器600は、ベース板610と、ベース板610の両側に設けられる折り曲げ部611とを有する。折り曲げ部611はベース板610と一体であってもよい。ベース板610と折り曲げ部611との間には切り込み620が設けられる。切り込み520は、ベース板510の複数箇所に設けられていてもよい。容器600の材料としては、紙製素材のほか、プラスチック形素材などが用いられる。
【0061】
図12(b)に示すように、ベース板610に対して折り曲げ部611を裏側に折り曲げると、切り込み620が山折りの部分に露出する。なお、切り込み620は、折り曲げ部611をこのように折り曲げた状態で、山折りの部分から内側に切れ目を入れることで設けられてもよい。折り曲げ部611をベース板610の裏側に折り曲げた状態において、切り込み620には、山折り部側に開くV型の呼び込み部が設けられていることが望ましい。
【0062】
図13(a)および(b)には、容器600に作物収穫用工具1を差し込む状態の側面図が表される。図13(a)に示すように、作物収穫用工具1で収穫したいちご15を第1挟持部21の上に載せた状態で、第1挟持部21と第2挟持部22との間に容器600を差し込む。
【0063】
容器600の折り曲げ部611は、ベース板610の裏側に折り曲げられた状態になっている。作物収穫用工具1における第1挟持部21と第2挟持部22との隙間d1(図2参照)は、ベース板610と折り曲げ部611とが重なる部分の厚さよりも僅かに広く設けられる。これにより、図13(b)に示すように、容器600のベース板610と折り曲げ部611との重なる部分が第1挟持部21と第2挟持部22との間に差し込まれる。また、この差し込みとともに、茎151が切り込み620に差し込まれる。
【0064】
茎151を切り込み620に差し込んだ後は、把持部30の握りを緩め、作物収穫用工具1を引き抜く。図14(a)には、作物収穫用工具1を引き抜いた後のいちご15の載置状態が示される。茎151が切り込み620に差し込まれることで、いちご15はへたを下にしてベース板610の上に載置される。
【0065】
いちご15を載置した後は、図14(b)に示すように、容器600の折り曲げ部611をベース板610に対して略90度に拡げる。これにより、折り曲げ部611がベース板610の脚部として利用される。
【0066】
また、折り曲げ部611を拡げる際、折り曲げ部611側の切り込み620に差し込まれている茎151の先端側が、折り曲げ部611の拡がりとともに引っ張られる。茎151の先端側が引っ張られることで、いちご15はベース板610の上で引き起こされるようになる。茎151は、ベース板610側と折り曲げ部611側との両方の切り込み520で固定されるため、いちご15は安定して容器600に固定される。
【0067】
容器600では、ベース板610に対して折り曲げ部611を略90度に拡げるため、茎151としてベース板610から折り曲げ部611まで届く長さが必要になる。このため、作物収穫用工具1の間隔d2(図2参照)を広く設定することで、切断後の茎151の長さを確保することができる。
【0068】
このように、本実施形態に係る作物収穫用工具1を用いることで、茎151を挟持して切断する動作から、いちご15を収穫して搬送し、容器500,600に収納するまでの一連の動作を、いちご15に手Hを触れることなく行うことが可能になる。
【0069】
いちご15は、茎151と花托とが簡単に分離できることから、手作業で収穫を行いやすい。この際、いちご15のように完熟に近い状態まで熟してから収穫したい作物の場合には、手作業での傷みを考慮して、完熟の手前で収穫されることが多い。本実施形態に係る作物収穫用工具1や容器500,600を用いることで、いちご15に手Hを触れることなく容器500,600に収納できるため、いちご15への傷みを少なくすることができる。したがって、完熟に近い状態まで熟してから収穫を行っても、良好な状態のまま市場に提供することが可能になる。
【0070】
以上説明したように、実施形態に係る作物収穫用工具1によれば、手作業で作物を収穫する際に作業者の手Hに直接触れることなく収穫することができ、容器500,600まで確実に保持して運ぶことが可能になる。
【0071】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、作物としていちご15を例としたが、いちご15以外の作物であっても適用可能である。また、対象物として茎151を例としたが、茎151以外でも枝やツル、作物の一部であってもよい。また、前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態で示した各構成の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0072】
1…作物収穫用工具
10…切断部
11…第1刃部
11a…刃線
12…第2刃部
21…第1挟持部
21a…面
22…第2挟持部
30…把持部
31…第1グリップ
32…第2グリップ
40…ハンドル
41…延出部
151…茎
210…凹部
211,212,221,222…挟持片
211a,212a,221a,222a…接触面
500,600…容器
510,610…ベース板
520,620…切り込み
611…折り曲げ部
AX1,AX2,AX3…支軸
H…手
【要約】
【課題】手作業で作物を収穫する際に作業者の手に直接触れることなく収穫することができ、容器まで確実に保持して運ぶことができる作物収穫用工具を提供すること。
【解決手段】本発明の作物収穫用工具は、対象物を切断するための切断部と、対象物を挟持する第1挟持部と、切断部と第1挟持部との間に設けられ、第1挟持部と離間し、対象物を挟持する第2挟持部と、第1挟持部および第2挟持部を開閉させる把持部と、を備える。この作物収穫用工具では、第1挟持部と第2挟持部との両方で対象物を保持したまま、切断部によって対象物を切断する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図8
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図10
図11
図12
図13
図14