(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。また、以下の説明においては、図の紙面に向かって見た上下方向を構成要素の上部および下部として説明している場合がある。
【0015】
なお、
図1は、本発明の一態様の内視鏡の構成を示す図、
図2は挿入部の先端部の構成を示す斜視図、
図3は挿入部の先端部の構成を示す断面図、
図4は操作ワイヤが挿通された密巻コイルチューブの構成を示す斜視図、
図5は密巻コイルチューブ
を形成する
線材の構成を示す斜視図、
図6は操作ワイヤが挿通された密巻コイルチューブの構成を示す部分断面図、
図7は密巻コイルチューブの凸曲面および凹曲面の構成を説明するための部分断面図、
図8は密巻コイルチューブに圧縮力が生じた状態を説明するための部分断面図、
図9は密巻コイルチューブが湾曲した状態の部分断面図、
図10は密巻コイルチューブの曲率半径と凸曲面および凹曲面の曲率半径の関係を説明するための部分断面図、
図11は第1の変形例の密巻コイルチューブの凸曲面および凹曲面の構成を説明するための部分断面図、
図12は第2の変形例の密巻コイルチューブの凸曲面および凹曲面の構成を説明するための部分断面図、
図13は第3の変形例の密巻コイルチューブの凸曲面および凹曲面の構成を説明するための部分断面図である。
【0016】
先ず、
図1および
図2を参照して本実施の形態の内視鏡1の概略的な構成について説明する。なお、本実施形態の内視鏡1は、被検体の内部を光学的に観察し、先端部に処置具起上台を有する形態を例示するが、先端部に超音波探触子をさらに有し、被検体内において超音波ビームを走査することによって被検体の超音波断層像を撮像する形態であってもよい。
【0017】
内視鏡1は、被検体の内部に導入可能な挿入部2と、挿入部2の基端に位置する操作部3と、操作部3の側部から延出するユニバーサルコード4とを具備して主に構成されている。
【0018】
挿入部2は、先端に配設される先端部11、先端部11の基端側に配設される湾曲自在な湾曲部12および湾曲部12の基端側に配設され操作部3の先端側に接続される可撓性を有する可撓管部13が連設されて構成されている
。
【0019】
操作部3には、処置具チャンネルに連通する管路口金14の他、湾曲部12の湾曲を操作するためのアングルノブ15、先端部11に設けられた流体送出部(不図示)からの流体の送出動作の制御を行うための送気・送水ボタンなどのボタン類16、先端部11に設けられたレリーズスイッチなどのスイッチ類17および先端部11に設けられた処置具起上台21(
図2参照)を起伏操作する操作レバー18が設けられている。
【0020】
挿入部2の先端部11に設けられる処置具起上台21は、先端部11の側周部に設けられた開口部11aから突出する処置具100(
図2参照)を起伏して突出方向を変更する。即ち、ここでの内視鏡1は、照明窓22、観察窓23などが先端部11の側周部に設けられ、観察方向へ処置具100を起上させる処置具起上台21が設けられた所謂側視型内視鏡である。なお、先端部11には、主に観察窓23を洗浄などする送気・送水ノズル24が設けられている。
【0021】
ユニバーサルコード4の基端部には、図示しない光源装置に接続される内視鏡コネクタ5が設けられている。光源装置から発せられた照明光は、ユニバーサルコード4、操作部3および挿入部2に挿通された図示しないライトガイドバンドルを伝わって、先端部11に設けられた照明窓22(
図2参照)から出射される。なお、内視鏡1は、照明装置としてLED等の光源を先端部11に備える構成であってもよい。
【0022】
内視鏡コネクタ5からは、ビデオケーブル6が延出されており、このビデオケーブル6の端部にビデオコネクタ7が設けられている。このビデオコネクタ7は、図示しないカメラコントロールユニットに電気的に接続される。
【0023】
カメラコントロールユニットは、ビデオコネクタ7を介して、先端部11に設けられた撮像装置に電気的に接続される。カメラコントロールユニットは、図示しない画像表示装置に電気的に接続され、先端部11に設けられた観察窓23(
図2参照)から撮像装置によって撮像された画像を図示しない画像表示装置に出力する。
【0024】
次に、
図3を参照して、内視鏡1の挿入部2の先端部11の構成について簡単に説明する。
内視鏡1の挿入部2の先端部11は、先端部本体としての先端硬質部25を有し、この先端硬質部25を覆うように先端カバー26が設けられている。先端硬質部25の基端側には、湾曲部12の第1湾曲駒としての硬質管27が接続され、この硬質管27を覆うように先端硬質部25の中途まで湾曲ゴム28が設けられている。なお、湾曲ゴム28は、湾曲部12全体を被覆している。
【0025】
また、先端硬質部25には、処置具チャンネル接続管35が嵌合され、この処置具チャンネル接続管35の基端に軟性チューブ体である処置具チャンネル36が接続されている。この処置具チャンネル36は、処置具を挿通可能な内径を有する管状部材であって、挿入部2内に挿通して操作部3の管路口金14に基端が接続される。
【0026】
処置具起上台21は、先端硬質部25と軸部材21aによって回動自在に軸支されており、操作ワイヤ31が接続されている。この操作ワイヤ31が操作部3の操作レバー18の所定の操作入力によって牽引弛緩されて処置具起上台21が起伏操作される。
【0027】
なお、操作ワイヤ31は、先端硬質部25に嵌合された金属管32内に挿通しており、さらに金属管32の基端に接続された、
図4に示す、密巻コイルパイプとしての密巻コイルチューブ33内に挿通している。なお、密巻コイルチューブ33は、挿入部2および操作部3内に挿通されており、先端が金属管32に固定されると共に、基端が操作部3内で固定されている。
【0028】
ここで、
図4から
図10を参照して、本実施の形態の内視鏡1に用いられるコイル構造を備えた密巻コイルチューブ33の詳細な構成について、以下に説明する。
図4に示す、密巻コイルチューブ33は、
図5に示すように側面に凸曲面41および凹曲面42が形成された断面略台形状の細長な線材である金属線40を凸曲面41および凹曲面42が面接触するように螺旋状に巻回形成したチューブ体となっている。
【0029】
なお、金属線40は、
図6に示すように、断面形状が密巻コイルチューブ33における先端側に凸曲面41が位置し、密巻コイルチューブ33における基端側に凹曲面42が位置するように巻回されて密巻コイルチューブ33が形成される。
【0030】
そして、金属線40の凸曲面41および凹曲面42は、内視鏡1に用いられるコイル構造における当接面を構成している。なお、ここでの金属線40は、断面方向における角部が円弧形状(R状)に面取りされているが、これに限定されることなく面取りされていない構成としてもよい。
【0031】
このように構成された密巻コイルチューブ33は、
図7に示すように、巻回形成された金属線40の凸曲面41および凹曲面42の断面形状が円弧状となっており、これら凸曲面41および凹曲面42の円弧の曲率中心O1,O2が直線状態のときに、中心軸X上に位置している。
【0032】
即ち、直線状態の密巻コイルチューブ33における先端側の凸曲面41の断面形状は、密巻コイルチューブ33の中心軸X上の曲率中心O1の一点鎖線で示す仮想円S1の円弧の一部分となっている。
【0033】
また、直線状態の密巻コイルチューブ33における基端側の凹曲面42の断面形状は、密巻コイルチューブ33の中心軸X上の曲率中心O2の一点鎖線で示す仮想円S2の円弧の一部分となっている。
【0034】
そして、これら2つの仮想円S1,S2の曲率半径R1,R2は、同一(R1=R2)となっている。即ち、凸曲面41および凹曲面42の断面形状は、同一の曲率半径R1,R2を有する円弧形状となっている。
【0035】
また、中心軸Xに沿った前後方向の面接触する凸曲面41および凹曲面42は、2つの仮想円S1,S2の同一象限内にある円弧形状となっている。即ち、ここでの凸曲面41および凹曲面42は、
図7の紙面に向かって見た中心軸Xよりも上方が仮想円S1,S2の第2象限の円弧となっており、中心軸Xよりも下方が仮想円S1,S2の第3象限の円弧となっている。
【0036】
そして、密巻コイルチューブ33は、
図7の紙面に向かって左側を先端側となっており、凸曲面41の内径側が先端方向に突出し、凹曲面42の外径側が基端方向に突出した円弧形状となっている。
【0037】
なお、凸曲面41および凹曲面42は、直線状態の密巻コイルチューブ33の如何なる状態においても、それぞれの曲率中心O1,O2が密巻コイルチューブ33の直径Dの範囲内に位置するように円弧形状の曲率半径R1,R2が設定されている。
【0038】
換言すると、凸曲面41および凹曲面42の断面形状である円弧の曲率半径R1,R2は、それぞれの曲率中心O1,O2が常に、密巻コイルチューブ33の外周部よりも内部側に位置するように設定されている。
【0039】
さらに、凸曲面41および凹曲面42は、それぞれの曲率半径R1,R2が密巻コイルチューブ33の半径(D/2)よりも大きく設定されている。
【0040】
以上のように構成された本実施の形態の内視鏡1に用いられるコイル構造を有した密巻コイルチューブ33は、両端が固定されているため、処置具起上台21の起上力量の増大に伴って、内部に挿通する操作ワイヤ31の牽引力が増大して軸方向の圧縮力が増大する。
【0041】
このとき、密巻コイルチューブ33は、
図8に示すように、凸曲面41および凹曲面42が面接触して当接しているため、それぞれの円弧部分(仮想円S1,S2)の接線T1,T2方向に沿って、凸曲面41に作用する力が内周方向に働き、凹曲面42側に作用する力が外周方向に働く。即ち、密巻コイルチューブ33は、先端側の凸曲面41側が内径方向に移動しようとする力F1と、基端側の凹曲面42側が外径方向に移動しようとする力F2が釣り合うため軸ずれなどが抑制される。
【0042】
また、密巻コイルチューブ33は、
図9に示すように、内視鏡1の挿入部2の湾曲部12または可撓管部13の湾曲形状に合わせて凸曲面41および凹曲面42が互いの円弧形状に沿って面接触しながら湾曲する。このとき、密巻コイルチューブ33は、湾曲した内側および外側を問わず、凸曲面41および凹曲面42の一部が常に面接触した状態で湾曲する。これにより、密巻コイルチューブ33は、軸ずれなどが抑制された状態で湾曲される。
【0043】
なお、密巻コイルチューブ33は、
図9および
図10に示すように、凸曲面41および凹曲面42の断面における円弧(仮想円S)の曲率半径Rが挿入部2の湾曲部12および可撓管部13が湾曲する曲率半径SRよりも小さな曲率半径(R<SR)となるように設定されている。
【0044】
即ち、密巻コイルチューブ33は、凸曲面41および凹曲面42の断面における円弧の曲率半径Rが挿入部2の湾曲部12および可撓管部13が最大に湾曲された状態の曲率半径(最少曲率半径)SRよりも小さく(R<SR)なるように設定されている。
【0045】
そのため、密巻コイルチューブ33は、圧縮された状態において、挿入部2の湾曲部12または可撓管部13が最大湾曲して湾曲角度が大きくなっても、凸曲面41および凹曲面42の互いが常に当接して面接触するため、圧縮力に耐えられなくなることでの急激なエネルギの解放が起こらず座屈なども抑制される。
【0046】
以上に説明したように、本実施の形態の内視鏡1に用いられるコイル構造を有した密巻コイルチューブ33は、内視鏡1の先端部11に設けられる鉗子起上台である処置具起上台21によってコシの強い処置具100などを起上して、内部に挿通する操作ワイヤ31の牽引力が増大して過度な圧縮力が生じても、凸曲面41側が内径方向に移動しようとする力F1と、基端側の凹曲面42側が外径方向に移動しようとする力F2とが相殺されることで軸ずれを抑制することができる構成となっている。
【0047】
さらに、密巻コイルチューブ33は、挿入部2の湾曲部12または可撓管部13が大きな角度で湾曲されたりしても、凸曲面41および凹曲面42の少なくとも一部が常に当接して面接触するため、座屈なども抑制することができる構成となっている。
【0048】
その結果、内視鏡1は、密巻コイルチューブ33に軸ずれ、座屈などが抑制されることで、操作レバー18の操作に対する操作ワイヤ31の牽引弛緩に所望の反応が得られなかったり、操作ワイヤ31が引っ掛かって操作不能となったりすることが防止される。
【0049】
(第1の変形例)
本変形例の密巻コイルチューブ33は、
図11に示すように、金属線40の凸曲面41および凹曲面42が異なる曲率半径R1,R2に設定されている。
【0050】
具体的には、直線状態の密巻コイルチューブ33において、先端側の凸曲面41の断面形状が密巻コイルチューブ33の中心軸X上の曲率中心O1を有する仮想円S1の一部の円弧となっており、基端側の凹曲面42の断面形状が密巻コイルチューブ33の中心軸X上の曲率中心O2を有する仮想円S2の一部の円弧となっている。
【0051】
そして、仮想円S1の曲率半径R1は、仮想線S2の曲率半径R2よりも小さく(R1<R2)となっている。即ち、凸曲面41の断面形状は、凹曲面42の断面形状の曲率半径R2よりも小さな曲率半径R1を有する円弧形状となっている。
【0052】
このような内視鏡1に用いられるコイル構造を有した密巻コイルチューブ33の構成としても、上述と同様の作用効果を有し、内視鏡1に用いられる密巻コイルチューブ33に軸ずれ、座屈などが抑制される。
【0053】
(第2の変形例)
本変形例の密巻コイルチューブ33は、
図12に示すように、先端側となる凸曲面41が曲率半径R1に設定されており、基端側が凹曲面42を有しておらず、凸曲面41を形成している円弧(仮想円S1)の接線方向に形成され、中心軸Xに対して先端側から基端側に向けて所定の角度θを有した平面43となっている。
【0054】
このような内視鏡1に用いられるコイル構造を有した密巻コイルチューブ33の構成としても、上述と同様の作用効果を有し、内視鏡1に用いられる密巻コイルチューブ33に軸ずれ、座屈などが抑制される。
【0055】
(第3の変形例)
本変形例の密巻コイルチューブ33は、
図13に示すように、金属線40の凸曲面41または凹曲面42を形成する曲率半径R1,R2を有したそれぞれの円弧(仮想円S1,S2)の曲率中心O1,O2が共に中心軸X上に位置していない構成となっている。
【0056】
このように、密巻コイルチューブ33は、直線状態の密巻コイルチューブ33において、金属線40の凸曲面41および凹曲面42のそれぞれの曲率中心O1,O2が直径Dの範囲内である外周部よりも内部側に収まっていれば、軸ずれ、座屈などが抑制される構成となる。
【0057】
なお、
図13においては、密巻コイルチューブ33の中心軸Xを境に、この中心軸Xに直交する方向に相反した金属線40の凸曲面41および凹曲面42が同一の曲率半径(ここではR1,R2、R1=R2)の円弧形状を有した構成となっているが、これに限定されることなく、それぞれの曲率中心O1,O2が密巻コイルチューブ33の直径Dの範囲内となる外周部よりも内部側の領域に位置していれば、中心軸Xに直交する方向に相反した凸曲面41または凹曲面42が異なる曲率半径を有する円弧形状としてもよいし、さらに中心軸に沿った前後方向の凸曲面41および凹曲面42の曲率半径R1,R2が異なる(R1≠R2)構成としてもよい。
【0058】
なお、以上に説明した内視鏡1に用いられるコイル構造は、内視鏡1の先端部11に設けられた処置具起上台21を起伏操作するための操作ワイヤ31が挿通する密巻コイルチューブ33を例示しているが、例えば、内視鏡1の挿入部2の硬度を可変する硬度可変用のコイルチューブ、内視鏡1の挿入部2の処置具チャンネル36に挿入される処置具100のシースを構成するコイルチューブなどにも適用可能である。
【0059】
また、以上に説明した内視鏡1に用いられるコイル構造は、例えば挿入部2内に設けられて緊縮されることで該挿入部2の硬度を変更するためのコイルに適用可能である。
【0060】
さらに、内視鏡1の操作部3に設けられたモータ等の駆動源から、挿入部2に設けられた何らかの被駆動部材に回転駆動力を伝達するためのフレキシブルシャフトを挿通するよう構成しても良い。なお、このコイル構造自体を、回転駆動力を伝達するための部材として用いても良い。
【0061】
以上の各実施の形態に記載した発明は、それら実施の形態および変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0062】
例えば、各実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【0063】
本出願は、2014年6月6日に日本国に出願された特願2014−117941号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の内容は、本願明細書、請求の範囲、および図面に引用されたものである。
内視鏡1に用いられるコイル構造は、両端が固定されるコイルチューブ33と、密巻に巻回することでコイルチューブ33を形成する線材40と、先端側となる金属線40の一面に形成された第1の当接面41と、基端側となる金属線40の他面に形成された第1の当接面41が当接する第2の当接面42と、を備え、第1の当接面41は、曲率中心O1がコイルチューブ33の外周部よりも内側に位置する断面円弧状の凸曲面に形成され、凸曲面は、コイルチューブ33の半径D/2よりも大きく、且つ、挿入部2の最大湾曲時の曲率半径SRよりも小さい曲率半径R1が設定されている。